【解決手段】印画媒体Paを搬送する媒体搬送手段5と、印画媒体Paに印画された画像上に熱転写すべく保護層を形成したインクリボンPbを搬送するシート搬送手段たるリボン搬送手段4と、印画媒体Paの搬送方向と直交する主走査方向に発熱素子3が配列されたサーマルヘッド2と、媒体搬送手段5、リボン搬送手段4及びサーマルヘッド2を駆動制御する制御手段1とを備え、制御手段1は、画像の印画に用いる画像データに基づき、その画像を画する輪郭領域の外側の背景領域に保護層を転写する際は基準熱量でインクリボンPbに対する加熱を行い、輪郭領域に保護層を転写する際は基準熱量よりも低熱量又は高熱量側に熱量を変化させてインクリボンPbに対する加熱を行うように構成される。
前記制御手段はさらに、前記輪郭領域の内側の画像領域に保護層を転写する際も前記基準熱量よりも低熱量又は高熱量側に熱量を変化させて前記熱転写シートに対する加熱を行う請求項1に記載のプリンタ。
前記制御手段は、画像データを取得する画像データ取得手段と、取得した画像データから輪郭領域を抽出する輪郭抽出部と、この輪郭抽出部で抽出した領域に基づき保護層転写用の熱量データを生成する熱量データ生成部とを備えるものであって、前記輪郭抽出部は画像データのうち画素に対応するドットデータが所定画素以上連続する領域の両端位置を輪郭領域として抽出し、前記熱量データ生成部は前記輪郭抽出部が抽出する輪郭領域に基づいて所定領域に対し画素毎の熱量データを生成し、この熱量データに基づき前記サーマルヘッドを駆動制御して熱転写シートに対する加熱を行う請求項1〜4の何れかに記載のプリンタ。
前記画像データ取得手段は、画像データの取得に伴って、対応する領域において前記画像データに関連づけられた画素毎に保護層転写用の熱量データを取得し、前記制御手段は、この熱量データに基づき前記サーマルヘッドを駆動制御して熱転写シートに対する加熱を行う請求項1〜5の何れかに記載のプリンタ。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、サーマルヘッドの発熱素子に対する加熱制御を通じて染料または顔料を紙などの記録媒体に転写させることにより、印画媒体に印画する装置である。
【0003】
このようなサーマルプリンタに対し、写真等の画像を立体的に表現しようとする試みがされている。
【0004】
そのひとつに、加圧ローラを備え、加圧ローラで用紙を物理的に潰して凹凸を付けるようにしたものが知られている(特許文献1)。
【0005】
或いは、シート体を加熱するシート体加熱手段と、前記シート体を当接部材に当接させた状態で冷却するシート体冷却手段とを有し、前記シート体加熱手段により前記シート体の表面に画像情報に応じた表面性状を付与するようにしたものも知られている(特許文献2)
【0006】
さらに、印画媒体に形成された画像上に熱転写される保護層上に、上記サーマルヘッドの発熱素子への熱エネルギを選択的に変化させ印画媒体上に凹凸パターンを形成するに際して、上記サーマルヘッドの発熱素子列を、隣接する少なくとも2以上の発熱素子で構成される発熱素子群にランダムに分割し、上記発熱素子群を構成する発熱素子に同一の熱エネルギを印加し、隣接する発熱素子群間で異なる熱エネルギを印加するようにして、絹目調の風合いを出すようにしたものも知られている(特許文献3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のものは、プリント機構のほかに加圧部の機能が必要となり、構造の大型・複雑化やコストアップを招くとともに、加圧がローラの形状に依存するため、任意の凹凸をつけることができないという難点がある。
【0009】
また、特許文献2のものは、シート体の加熱部と冷却部の2つの機構が必要になり、やはり構造の大型・複雑化やコストアップを招くとともに、光沢部分、艶消し部分の2つしか表現できないという難点がある。
【0010】
さらに、特許文献3のものは、画像データを1枚分記憶することができる容量のメモリが必要となるうえに、最小パターンの繰り返しによるもので、背景に合わせて表現を変えるといった自由度に乏しいという難点がある。
【0011】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、別途新たな機構を導入することなく、既存の設備で画像の立体的表現を多様に行うことができるようにしたプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0013】
すなわち、本発明のプリンタは、印画媒体を搬送する媒体搬送手段と、前記印画媒体に印画された画像上に熱転写すべく保護層を形成した熱転写シートを搬送するシート搬送手段と、前記印画媒体の搬送方向と直交する主走査方向に発熱素子が配列されたサーマルヘッドと、前記媒体搬送手段、シート搬送手段及びサーマルヘッドを駆動制御する制御手段とを備えるものにおいて、前記制御手段は、前記画像の印画に用いる画像データに基づき、その画像を画する輪郭領域の外側の背景領域に保護層を転写する際は基準熱量で前記熱転写シートに対する加熱を行い、前記輪郭領域に保護層を転写する際は前記基準熱量よりも低熱量又は高熱量側に熱量を変化させて前記熱転写シートに対する加熱を行うように構成されたことを特徴とする。
【0014】
このようにすれば、加熱量が高いほど保護層の表面が粗くなって光の反射率が低下する結果、艶消し調になり、加熱量が低いほど保護層の表面が整って光の反射率が高くなる結果、光沢感が出る。このとき、艶消し調は奥側に窪んだように見え、光沢箇所は手前側に浮き出たように見える。このように本発明によれば、別途に機構を追加することなく、熱量差を利用して背景よりも輪郭領域を浮き上がった状態、或いは窪んだ状態の立体表現を当該画像に対して行うことができ、その表現も画像に則して多様に行うことが可能となる。
【0015】
或いは、本発明のプリンタは、印画媒体を搬送する媒体搬送手段と、前記印画媒体に形成された画像上に熱転写すべく保護層を形成した熱転写シートを搬送するシート搬送手段と、前記印画媒体の搬送方向と直交する主走査方向に発熱素子が配列されたサーマルヘッドと、前記媒体搬送手段、シート搬送手段及びサーマルヘッドを駆動制御する制御手段とを備えるものにおいて、前記制御手段は、画像の印画に用いる画像データに基づき、その画像を画する輪郭領域の外側の背景領域に保護層を転写する際は基準熱量で前記熱転写シートに対する加熱を行い、前記輪郭領域の内側の画像領域に保護層を転写する際は前記基準熱量よりも低熱量又は高熱量側に熱量を変化させて前記熱転写シートに対する加熱を行うように構成されたものであってもよい。
【0016】
このようにすれば、背景よりも画像領域を浮き上がった状態、或いは窪んだ状態の立体表現を当該画像に対して行うことができ、その表現も画像に則して多様に行うことが可能となる。
【0017】
さらに、制御手段は背景領域を基準にして輪郭領域、画像領域の双方に対し熱量を変化させて熱転写シートに対する加熱を行っても構わない。
【0018】
窪んだ状態、或いは浮き上がった状態を不自然なく表現するためには、輪郭領域に隣接する領域の熱量データには、当該輪郭領域から隣接領域に向かって段階的に熱量変化がつけてあることが望ましい。
【0019】
任意の画像に適切に対応するためには、前記制御手段は、画像データを取得する画像データ取得手段と、取得した画像データから輪郭領域を抽出する輪郭抽出部と、輪郭抽出部で抽出した領域に基づき保護層転写用の熱量データを生成する熱量データ生成部とを備えるものであって、輪郭抽出部は画像データのうち画素に対応するドットデータが所定画素以上連続する領域の両端位置を輪郭領域として抽出し、熱量データ生成部は前記輪郭抽出部が抽出する輪郭領域に基づいて所定領域に対し画素毎の熱量データを生成し、この熱量データに基づき前記サーマルヘッドを駆動制御して熱転写シートに対する加熱を行うように構成しておくことが望ましい。
【0020】
画像データが定型である場合等には、画像データ取得手段は、画像データの取得に伴って、対応する領域において前記画像データに関連づけられた画素毎に保護層転写用の熱量データを取得し、前記制御手段は、この熱量データに基づき前記サーマルヘッドを駆動制御して熱転写シートに対する加熱を行うように構成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した本発明によれば、既存の設備において熱転写シートに対する加熱用の熱量データに変化をつけるだけで、別途新たな機構を導入することなく、また下地となる画像の色味に影響を与えることなく、背景・人物・文字などの画像に対して適切な奥行き表現、遠近感を実現することを可能にする、優れたプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
この実施形態のプリンタであるサーマルプリンタ1は、
図1及び
図2に示すように、通電されることにより発熱する複数の発熱素子3が1ラインを構成するように配列されたサーマルヘッド2と、紙や樹脂などの印画媒体Paをサーマルヘッド2へ供給する媒体搬送手段5と、染料または顔料を塗布した熱転写シートであるインクリボンPbをサーマルヘッド2へ供給するシート搬送手段たるリボン搬送手段4と、制御手段1とを有している。この実施形態において、発熱素子3の配列方向を主走査方向、これに直交する用紙送り方向を副走査方向と称する。
【0025】
発熱素子3は、印画媒体Paにおける印画領域の主走査方向の1ラインを構成する画素毎に対応して設けられ、通電による発熱でインクリボンPbの染料または顔料を印画媒体Paへ転写することにより、印画データの対応する画素に印画を行うものであり、印画媒体PaをインクリボンPbとともに副走査方向に移動させて供給することにより、副走査方向の何れか一方向に設定された印刷方向に沿って順に画素の印画を行う。
【0026】
例えば、この実施形態では
図3に示すように、インクリボンPbにY(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)の有色三原色を配列したものが用いられ、これらを混色して必要な色を印画媒体Pa上に表現する。また、これら三原色に引き続き、保護層であるOP層(オーバーコート層)が形成されている。本明細書にいう「印画データ」とは、有色の印画を行うために必要なデータ、換言すればOP層転写前の下地画像の印画に必要なデータをいい、モノクロ用の印画データも含まれる。
【0027】
そして、
図2に示す制御手段1からの指令により、ヘッド駆動回路61、通電回路62、リボン駆動回路63、用紙送り駆動回路64が協働してプリント動作を実現する。
図4は、制御手段1の基本構成を示している。制御手段1はCPU11,ROM12,RAM13、およびインターフェース(I/F)14を少なくとも備えるもので、I/F14には周辺ハードリソースとして、
図2に示した前記ヘッド駆動回路61、通電回路62、リボン駆動回路63、用紙送り駆動回路64のほか必要なものが接続され、ROM12には印画に必要なプログラムとして、少なくとも印画制御ルーチンが格納されている。
【0028】
CPU11はROM12に記憶された印画制御ルーチンを必要に応じ呼び出して実行し、周辺ハードウェアと協働して
図2に示す画像データ取得部15、印画制御部16、保護層(OP層)転写データ生成部17としての役割を担う。
【0029】
画像データ取得部15は、印画指令に伴って外部から入力される印画データをRAM13に記憶する。この印画データは印画すべき画素(ドット)ごとに与えられた熱量データとして階調値と色データを含んでいる。
【0030】
印画制御部16は、印画制御ルーチンに従って、
図5に示すように、プリント開始とともにイエロープリント処理S1、マゼンダプリント処理S2、シアンプリント処理S3を行い、引き続きOPプリント処理S4を行って、最後に図示しない媒体カット手段及び排出手段を通じて印画媒体Paのカット・排出処理S5を行い、プリントを終了する。
【0031】
基本的なルーチンについて説明すると、
図1及び
図2に示す副走査方向に沿ってY色印画データが存在する先頭ラインの画像データを呼び出すとともに、印画媒体Paの対応するラインを用紙送り駆動回路64を通じてサーマルヘッド2の発熱素子3に対向する印画位置にまで搬送するとともに、リボン駆動回路63を通じてインクリボンPbのY色領域の先頭(或いは所定位置)をサーマルヘッド2の発熱素子3による印画位置に送り込んで、ヘッド駆動回路61によりサーマルヘッド2をヘッドダウンし、通電回路62により当該ラインを構成する画素ごとに指定された階調に応じた通電パルスを生成して、当該画素に対応する発熱素子3に通電を行う。通電を終えると、印画媒体PaおよびインクリボンPbを副走査方向に1ライン分若しくは必要ライン分搬送して、次のラインについて画像データの取得、通電パルスの生成、通電を行う。このような動作を繰り返し、1頁内に含まれているY色印画データについての印画を終了する。この後、M色印画に移り、M色印画データが存在する先頭ラインの画像データを呼び出し、サーマルヘッド2をヘッドアップして印画媒体Paの対応するラインを印画位置まで戻すとともに、インクリボンPbのM色領域の先頭(或いは必所定位置)をサーマルヘッド2の発熱素子3による印刷部に送り込み、サーマルヘッド2のヘッドダウン後、印画媒体PaとインクリボンPbを送りながら通電パルスの生成、発熱素子3への通電を行う。以下同様の動作を通じて、Y色、M色、C色までの染料または顔料を重畳させることで、印画媒体Pa上に画像データに対応した画像を実現する。
【0032】
OP層の基本的なルーチンも上記と同様であるが、ここでは画像データ取得部15が取得した画像データを用いるのではなく、画像データを利用して保護層転写データ生成部17にOP転写用の熱量データを生成させ、この熱量データを用いて印画を行う。この実施形態における熱量データは、
図6にOP画像イメージ図として示すように、外側の背景領域A3に対して、図形を画する輪郭領域A1が窪み(暗い状態)、その内側の画像領域A2が浮き上がった立体画像を表現するデータとして生成する。このために
図2に示す保護層転写データ生成部17は、取得した画像データから輪郭を抽出する輪郭抽出部17aと、この輪郭抽出部17aで抽出した輪郭に基づき輪郭領域A1、背景領域A3、画像領域A2のうち必要な箇所の画素に対してOP用の熱量データを生成する熱量データ生成部17bとを備える。
【0033】
輪郭抽出部17aは、画像データによって印画されるべき画素(ドット)が所定画素以上連続する領域を抽出し、その領域を抽出対象とする。例えば、
図7の「TEST」印刷例において、必要に応じ主走査方向を行、副走査方向を列と呼ぶこととすると、主走査方向に沿ってX番目の発熱素子3によって印画されるべき列方向の画素が副走査方向にY番目の行からY+b番目の行まで連続していることを検出する。そして、そのb(あるいはb+1)が所定ドット(例えば120ドット)以上であるか否かを判断する。所定ドットに満たない箇所は、狭い領域であって陰影をつけても視覚的効果が期待できないため、抽出対象外とする。所定ドット以上と判断すると、
図8に示すようにその両端ドット(Y、Y+b)を含む所定ドット幅を輪郭領域A1に設定する。
図7の例では、このような輪郭領域A1は主走査方向にX番目の列からX+a番目までの列まで続いているため、この輪郭領域A1がライン方向に連なった部位が「T」の上横線を画する上下一対の輪郭線として認識される。
【0034】
このような輪郭領域A1が抽出されると、熱量データ生成部17bは
図8に示す一対の輪郭領域A1、A1の内側にある画像領域A2、外側の背景領域A3に対して、熱量データを生成する。この実施形態の熱量データ生成には、
図4に示すI/F14に接続された図示しない入力部を通じて、画像を浮き彫りにするモードと、画像を窪ませるモードとが選択可能とされており、ここでは前述の画像を浮き彫りにするモードが選択されたとして説明を進める。この場合、
図9に示すように背景領域A3を基準熱量として、輪郭領域A1を高熱量に、画像領域A2を低熱量に設定されており、領域A1→A2間、A1→A3間で段階的に熱量を変化させた熱量データが生成される。例えば、熱量データの階調が0階調〜255階調まであるとし、仮に背景領域A3を100階調、輪郭領域A1を120階調、画像領域A2を50階調に設定されているとすると、
図9のC部を拡大した
図10に示すように、輪郭領域A1は5ドットに亘って120階調とされ、ここから画像領域A2へは3ドットごとに5階調を下げながら画像領域A2の設定熱量である50階調につなげられ、背景領域A3へは5ドットごとに3階調下げながら背景領域A3の基準熱量である100階調につなげられる処理が行われる。
【0035】
階調すなわち加熱量が高いほどOP層の表面が粗くなって光の反射率が低下する結果、艶消し調になり、加熱量が低いほどOP層の表面が整って光の反射率が高くなる結果、光沢感が出る。このとき、艶消し調は奥側に窪んだように見え、光沢箇所は手前側に浮き出たように見える。
【0036】
これにより、
図7の「T」の横線部分は
図6のA部のように輪郭領域A1が背景領域A3に対して窪み(濃くなり)、内側の画像領域A2が背景領域A3に対して浮き彫りになった(明るくなった)ハイライトの状態でOP層が転写される。
【0037】
この場合、
図7に示す「T」の横線部分の端部(長手方向両端)のD部については輪郭を拾っていないため、
図6のイメージ図においてB部のような濃淡処理はされない。
【0038】
そこで、主走査方向に対しても上記と同様に、輪郭抽出部17aによりドットの連続した領域の両端検出を行い、熱量データ生成部17bにより背景領域A3を基準熱量として、輪郭領域A1を高熱量に、画像領域A2を低熱量にし、領域A1−A2間、A1−A3間で段階的に熱量を変化させた熱量データを生成すれば、
図7に示すTの横線の端部にあるD部の輪郭領域A1が
図6のイメージ図のB部と同様に艶消し調になって窪んで(濃く)みえ、内側の画像領域A2(D部とD部の間)が背景領域A3よりも浮き彫りになった(明るくなった)状態でOP層が転写される
【0039】
このとき、画像領域A2の各画素には、副走査方向に対する処理によって生成される熱量データと、主走査方向に対する処理によって生成される熱量データの2つが与えられるが、副走査方向を優先すれば主走査方向の端部(
図7のD部)の輪郭が明るくなり、主走査方向を優先すれば副走査方向の端部(
図7のE部)の輪郭が明るくなる。そこで、D部に対してもE部に対しても、ともに艶消し状態にして内側の画像領域A2のみを浮き上がらせるには、主、副両走査方向の輪郭検出を通じて得られる熱量データに対して双方を充足するための適宜の処理を行えばよい。処理の一例としては、主、副両走査方向の輪郭検出を通じて得られる熱量データのうち、高い方(艶消し状態になる方)を選択すれば、
図7に示す主走査方向の端部D、副走査方向の端部Eともに、輪郭領域A1を艶消し調として窪んだ状態にし、画像領域A2の中央にいくほど明るく浮き上がった状態の表現を両立させることができる。勿論、処理の仕方はこれに限らない。
【0040】
これにより、画像が
図6左下の「her」の描画のようにどのような図形、曲線であっても、輪郭領域A1を好適に抽出してそこを窪んだ(濃い)状態にし、その内側を浮き彫りの(明るい)状態、外側の背景を通常濃度とする立体表現をOP層を通じて実現することができる。
【0041】
なお、上記画像を浮き彫りにするモードでは、
図9に示したように輪郭領域A1にOP層を転写する際は背景領域A3にOP層を転写する際の基準熱量よりも高熱量側に熱量を変化させ、輪郭領域A1の内側の画像領域A2にOP層を転写する際は前記基準熱量よりも低熱量側に熱量を変化させて前記インクリボンPbに対する加熱を行ったが、画像を窪ませるモードが選択された場合は、
図11に示すように、輪郭領域A1にOP層を転写する際は背景領域A3にOP層を転写する際の基準熱量よりも高熱量側に熱量を変化させ、或いは、輪郭領域A1の内側の画像領域A2にOP層を形成する際に前記基準熱量より高熱量側に熱量を変化させて前記インクリボンPbに対する加熱を行うようにしてもよい。図示例では輪郭領域A1、画像領域A2ともに高熱量側に変化させているが、この場合、輪郭領域A1の熱量の方が画像領域A2の熱量より若干高くなるように設定して、輪郭がぼやけないようにしている。領域間で段階的に熱量変化がつけられているのは上記と同様である。
【0042】
勿論、背景領域A3にOP層を転写する際の基準熱量に対して、輪郭領域A1にOP層を転写する際の熱量の大小、画像領域A2にOP層を転写する際の熱量の大小の組み合わせは上記以外によることもできる。
【0043】
以上のように、本実施形態のプリンタは、印画媒体Paを搬送する媒体搬送手段5と、印画媒体Paに印画された画像上に熱転写すべくOP層を形成した熱転写シートたるインクリボンPbを搬送するシート搬送手段たるリボン搬送手段4と、印画媒体Paの搬送方向と直交する主走査方向に発熱素子3が配列されたサーマルヘッド2と、媒体搬送手段5、リボン搬送手段4及びサーマルヘッド2を駆動制御する制御手段1とを備えるものである。そして、制御手段1は、画像の印画に用いる画像データに基づき、その画像を画する輪郭領域A1の外側の背景領域A3にOP層を転写する際は基準熱量でインクリボンPbに対する加熱を行い、輪郭領域A1にOP層を転写する際は基準熱量よりも低熱量又は高熱量側に熱量を変化させてインクリボンPbに対する加熱を行うようにしている。
【0044】
このため、加熱量が高いほどOP層の表面が粗くなって光の反射率が低下する結果、艶消し調になり、加熱量が低いほどOP層の表面が整って光の反射率が高くなる結果、光沢感が出る。このとき、艶消し調は奥側に窪んだように見え、光沢箇所は手前側に浮き出たように見える。このように本実施形態によれば、別途に機構を追加することなく、熱量差を利用して背景よりも輪郭が浮き上がった状態、或いは窪んだ状態の立体表現を当該画像に対して行うことができ、その表現も画像に則した形で行うことが可能となる。しかも、印画領域全体へのOP層の加熱制御ではなく、特定画像に対応する領域のみでのOP層の加熱制御であるので、RAM13に印画領域データ1枚分の容量を確保する必要はなく、大きな負荷となることもない。
【0045】
また、これに併せて制御手段1は、輪郭領域A1の内側の画像領域A2にOP層を転写する際は基準熱量よりも低熱量又は高熱量側に熱量を変化させてインクリボンPbに対する加熱を行うようにしているので、背景よりも画像が浮き上がった状態、或いは窪んだ状態の立体表現を当該画像に対して同時に行うことができ、その表現も画像に則した形で行うことが可能となる。
【0046】
さらにまた、輪郭領域A1に隣接する領域A2、A3の熱量データには、輪郭領域A1から隣接領域A2、A3に向かって段階的に熱量変化がつけてあるので、領域A1−A2間、A1−A3間に不自然な境界ができることを有効に回避することができる。
【0047】
特に、この実施形態の制御手段1は、画像データを取得する画像データ取得手段15と、取得した画像データから輪郭領域A1を抽出する輪郭抽出部17aと、輪郭抽出部17aで抽出した領域に基づきOP層転写用の熱量データを生成する熱量データ生成部17bとを備え、輪郭抽出部17aは画像データのうち画素に対応するドットデータが所定画素以上連続する領域の両端位置を輪郭領域A1として抽出し、熱量データ生成部17bは輪郭領域A1に基づいて内側の画像領域A2、その外側の背景領域A3に対し画素毎の熱量データを生成し、この熱量データに基づきサーマルヘッド2を駆動制御して画像OP層を転写するようにしているので、画像データが手書き入力ツール等によって任意に与えられたとしても、当該画像データに倣い、画像の色調に影響を及ぼすことなくOP層の印画のみのデータを適切に生成することができる。
【0048】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。例えば、予めプリンタにスタンプのような画像データが用意されている場合には、画像データとともに当該画像データに対して立体表現を施すための保護層転写データを用意しておき、
図12に示すように、画像データ取得手段15が画像データの取得に伴って、対応する領域に関連づけられた画素毎に加熱量を設定された保護層転写データを取得してRAM13等に一時記憶し、制御手段1が、このOP用熱量データに基づき媒体搬送手段5、リボン搬送手段4及びサーマルヘッド2を駆動制御してOP層を転写するようにしてもよい。
【0049】
このようにすれば、頻繁に使用する画像については逐一演算せずとも熱量データを瞬時に取り出して利用することができる。
【0050】
また、下地となる画像は必ずしも有色画像の全てである必要はない。例えば、写真を取り込み、そのうえにペンツール等を用いて字を重ねて描いた際に、その字の部分のみを下地となる画像データとして、その画像データ部分に本発明を適用して転写するOP層の熱量データ生成を行ってもよい。
【0051】
さらに、上記実施形態では輪郭領域A1から画像領域A2や背景領域A3に向かって
図10に示したような比較的緩やかな熱量勾配をつけた例を示したが、輪郭領域A1を境により急峻な熱量差をつけるようにしても構わない。
図13はその一例を示すもので、輪郭領域A1は3ドットに亘って200階調とされ、ここから画像領域A2へは最初の3ドットで22×3=66階調下げ、さらにそこから3ドットごとに5階調を下げながら画像領域A2の設定熱量である100階調につなげられており、背景領域A3へは1ドットごとに10階調下げながら背景領域A3の基準熱量(この例では150階調)につなげられる処理が行われている。このようにすれば、輪郭をよりにシャープに表現することができるようになる。
【0052】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。