【解決手段】乗物に対して後方荷重が入力された際に状態が変化する車両用シートであって、上記状態の変化に付随して初期位置から移動する回動部材20と、回動部材20の移動を制限する係止ピン22と、を備える。そして、後方荷重の入力に伴って乗物の乗員から車両用シートに掛かる荷重が乗員の体格や体重等に応じて変化する場合において、荷重が所定値未満であるときに回動部材20が初期位置から移動して第一位置に到達すると、係止ピン22が回動部材20を第一位置に留めておく。一方、上記の荷重が所定値以上であると、回動部材20は、第一位置に到達した後に係止ピン22による移動制限を脱し、第一位置よりも初期位置から離れた第二位置に向けて更に移動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シートの所定部分の状態を変えることによる乗員への負荷を軽減する効果は、シートに着座する乗員の体格等によって異なる。このため、負荷軽減目的でシートの所定部分の状態を変える場合、その状態変化量(換言すると、変化後の状態)については、乗員の体格等を考慮した上で適切に設定する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、乗物に対して後方荷重が入力された際に状態が変化する乗物用シートとして、当該状態を乗員の体格等に応じて適切に変化させることが可能な乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、乗物に対して後方荷重が入力された際に状態が変化する乗物用シートであって、前記状態の変化に付随して初期位置から移動する移動部と、該移動部の移動を制限する移動制限部と、を備え、前記後方荷重の入力に伴って前記乗物の乗員から前記乗物用シートに掛かる荷重が前記乗員の身体に関する特徴量に応じて変化する場合において、前記荷重が所定値未満であるときには前記移動部が前記初期位置から移動して第一位置に到達すると、前記移動制限部が前記移動部を前記第一位置に留めておき、前記荷重が前記所定値以上であるときには、前記移動部は、前記第一位置に到達した後に前記移動制限部による移動制限を脱して前記第一位置よりも前記初期位置から離れた第二位置に向けて更に移動することにより解決される。
【0009】
以上のように構成された本発明の乗物用シートによれば、乗物に対して後方荷重が入力されたシート中の所定部分の状態が変化すると、当該状態の変化に付随して移動部が移動する一方で、移動制限部が移動部の移動を制限する。そして、後方荷重の入力に伴って乗物の乗員から乗物用シートに掛かる荷重が乗員の体格等に応じて変化する場合において、荷重が所定値未満であるときには移動部が初期位置から移動して第一位置に到達すると、移動制限部が移動部を第一位置に留めておく。これに対して、荷重が所定値以上であるとき、移動部は、第一位置に到達した後に移動制限部による移動制限を脱し、第一位置から第二位置に向けて更に移動する。このように本発明の乗物用シートでは、後方荷重の入力時における移動体の到達位置、換言すると、後方荷重の入力によって変化したシート中の所定部分の状態が乗員の体格等に応じて変わる。つまり、本発明の乗物用シートであれば、後方荷重の入力によって状態が変化する際、変化後の状態が乗員の体格等に応じて適切な状態となるように変化することとになる。
【0010】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記乗員の頭部を支えるヘッドレストを備えており、該ヘッドレストは、前記乗物に対して前記後方荷重が入力された際に前傾し、前記状態は、前記ヘッドレストの前傾度合いであり、前記移動部は、前記前傾度合いの変化に付随して移動し、前記移動部が前記第二位置に在るときの前記前傾度合いは、前記移動部が前記第一位置に在るときの前記前傾度合いよりも大きいとよい。
上記の構成では、後方荷重の入力によってヘッドレストの前傾度合いが変化する際の前傾度合いが、乗員の体格等に応じて適切に設定される。この結果、後方荷重の入力時にヘッドレストを前傾させることで乗員の頸部に掛かる負担を軽減させるとき、当該負担軽減の効果を乗員の体格等に応じて適切に発揮させることが可能となる。
【0011】
また、上記の乗物用シートにおいて、シートバック内に設けられ、前記乗員の背によって押される受圧部材を有し、該受圧部材は、前記乗物に対して前記後方荷重が入力された際に前記乗員の背によって押されて前記乗員の背と共に後方へ移動し、前記状態は、前後方向における前記受圧部材の位置であり、前記移動部は、前記受圧部材の位置の変化に付随して移動し、前記移動部が前記第二位置に在るときの前記受圧部材の位置は、前記移動部が前記第一位置に在るときの前記受圧部材の位置よりも後方であると更によい。
上記の構成では、後方荷重の入力によって受圧部材が後方移動する際の到達位置(移動後の位置)が、乗員の体格等に応じて適切に設定される。この結果、後方荷重の入力時に受圧部材を後方移動させることで乗員の頸部に掛かる負担を軽減させるとき、当該負担軽減の効果を乗員の体格等に応じて適切に発揮させることが可能となる。
【0012】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記移動制限部は、前記移動部が前記第一位置に到達した際に前記移動部と当接して前記移動部の移動を制限する当接部であり、該当接部は、閾値以上の押圧力にて押圧された際に変形し、前記荷重が前記所定値以上であるとき、前記移動部は、前記第一位置にて前記当接部と当接した上で前記閾値以上の押圧力にて前記当接部を押圧することで前記当接部を変形させ、前記当接部が変形することで前記当接部との当接状態を脱して前記第二位置に向けて移動すると一層よい。
上記の構成では、後方荷重の入力時に乗員から乗物用シートに掛かる荷重が所定値以上であるとき、移動部が閾値以上の押圧力にて当接部を押圧することで当接部を変形させる。そして、当接部が変形することで、第一位置に在る移動部は、第二位置に向けて更に移動することが可能となる。このような構成であれば、当接部の強度を適当に設定することで、後方荷重の入力時に変化するシート状態を乗員の体格等に応じて変えることが可能となる。
【0013】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記当接部は、脆弱部が形成されたピンであり、
該ピンは、前記閾値以上の押圧力にて押圧された際に前記脆弱部を起点として変形すると尚よい。
上記の構成では、当接部としてのピンに脆弱部が形成されている。この脆弱部は、移動部が閾値以上の押圧力にてピンを押圧した際に変形起点として機能する。このような脆弱部がピンに形成されていることで、後方荷重の入力時に乗員から乗物用シートに掛かる荷重が所定値以上であるときには、確実にピンを変形させることが可能となる。この結果、当該荷重が所定値以上であるときには、第一位置に在る移動部を第二位置に向けて確実に移動させることが可能となる。
【0014】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記移動部は、前記第一位置に到達した際に前記移動制限部と当接する被当接部を有し、該被当接部は、閾値以上の押圧力にて押圧された際に変形し、前記荷重が前記所定値以上であるとき、前記移動部が前記第一位置に在るときに前記被当接部が前記移動制限部から前記閾値以上の押圧力にて押圧されることで変形し、前記被当接部が変形することで前記移動部は、前記移動制限部による移動制限を脱して前記第二位置に向けて移動することとしてもよい。
上記の構成では、後方荷重の入力時に乗員から乗物用シートに掛かる荷重が所定値以上であるとき、移動部の一部(具体的には被当接部)が変形する。そして、当該部分が変形することで、第一位置に在る移動部は、第二位置に向けて更に移動することが可能となる。このような構成であれば、被当接部の強度を適当に設定することで、後方荷重の入力時に変化するシート状態を乗員の体格等に応じて変えることが可能となる。
【0015】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記移動制限部は、前記移動部の移動を阻む向きの付勢力を前記移動部に対して付与する付勢部であり、該付勢部は、前記移動部が前記第一位置に到達する前後で異なる大きさの前記付勢力を付与し、前記第一位置に到達した前記移動部は、前記荷重が前記所定値未満であるときには、前記移動部が前記第一位置に到達した後の大きさとなった前記付勢力により前記第一位置に留まり、前記荷重が前記所定値以上であるときには、前記移動部が前記第一位置に到達した後の大きさとなった前記付勢力に抗して前記第二位置に向けて移動することとしてもよい。
上記の構成では、後方荷重の入力時に乗員から乗物用シートに掛かる荷重が所定値未満であるとき、付勢部からの付勢力によって移動部の移動が阻止され、上記荷重が所定値以上であるとき、移動部が付勢力に抗して第二位置に向けて移動する。このような構成であれば、付勢部が付与する付勢力の大きさ(厳密には、移動部が第一位置に到達した後の大きさ)を適当に設定することで、後方荷重の入力時に変化するシート状態を乗員の体格等に応じて変えることが可能となる。
【0016】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記移動制限部は、前記シートバック中、前記移動部に向かって突出した凸部であり、該凸部は、前記移動部に形成された貫通孔に挿通されており、前記移動部の移動に伴って前記貫通孔内を前後移動するとともに、前記移動部が前記第一位置に到達した際に前記貫通孔内に設けられた係止部と当接し、前記荷重が前記所定値以上であるとき、前記凸部が前記係止部を越えて前記貫通孔内を移動し、前記移動部が前記凸部と前記係止部との当接状態を脱して前記第二位置に向けて移動することとしてもよい。
上記の構成では、後方荷重の入力時に乗員から乗物用シートに掛かる荷重が所定値以上であるとき、凸部が係止部を越えて貫通孔を移動し、また、移動部が凸部と係止部との当接状態を脱して第二位置に向けて移動する。このような構成であれば、凸部や係止部の形状等を適当に設定することで、後方荷重の入力時に変化するシート状態を乗員の体格等に応じて変えることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、乗物への後方荷重の入力によって状態が変化する際、変化後の状態が乗員の体格等に応じて適切な状態となる。
また、本発明によれば、後方荷重の入力時にヘッドレストを前傾させることで乗員の頸部に掛かる負担を軽減させ、その負担軽減効果を乗員の体格等に応じて適切に発揮させることが可能となる。
また、本発明によれば、後方荷重の入力時に受圧部材を後方移動させることで乗員の頸部に掛かる負担を軽減させ、その負担軽減効果を乗員の体格等に応じて適切に発揮させることが可能となる。
また、本発明によれば、移動制限部である当接部の強度を適当に設定することで、後方荷重の入力時に変化するシート状態を乗員の体格等に応じて変えることが可能となる。
また、本発明によれば、後方荷重の入力時に乗員から乗物用シートに掛かる荷重が所定値以上であるときには、当接部を構成するピンを確実に変形させ、第一位置に在る移動部を第二位置に向けて確実に移動させることが可能となる。
また、本発明によれば、移動部に設けられた被当接部の強度を適当に設定することで、後方荷重の入力時に変化するシート状態を乗員の体格等に応じて変えることが可能となる。
また、本発明によれば、移動部に付与される付勢力の大きさ(厳密には、移動部が第一位置に到達した後の大きさ)を適当に設定することで、後方荷重の入力時に変化するシート状態を乗員の体格等に応じて変えることが可能となる。
また、本発明によれば、凸部や係止部の形状等を適当に設定することで、後方荷重の入力時に変化するシート状態を乗員の体格等に応じて変えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について具体的に説明する。なお、以下では、乗物用シートユニットとして、車両(自動車)に搭載される車両用シートを例に挙げて説明することとする。ただし、本発明の乗物用シートは、車両以外の乗物、例えば航空機や船舶に搭載することも可能である。また、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0020】
<本実施形態に係る車両用シートの基本構成>
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向を意味し、具体的には車両の走行方向と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両用シートの幅方向(左右方向)を意味し、車両用シートが有するシートバックの幅方向と一致する方向である。また、以下では、特に断る場合を除き、車両用シートを構成する各機器や各部品の位置や状態等を説明する際には、通常時(正常に着座可能な状態にある時)の内容にて説明することとする。
【0021】
先ず、本実施形態に係る車両用シート(以下、本シートS)の基本構成について、
図1及び2を参照しながら説明する。
図1は、本シートSの基本構成の説明図であり、本シートSの外観を示す斜視図である。
図2は、本シートSの骨格をなすシートフレームSfを示す斜視図である。
【0022】
本シートSは、
図1に示すように、乗員の背を支えるシートバックS1、乗員の臀部を支えるシートクッションS2、及び乗員の頭部を支えるヘッドレストS3を備える。また、本シートSは、その骨格としてのシートフレームSfを内部に備えている。このシートフレームSfのうち、シートバックS1の骨格をなすシートバックフレームFは、
図2に示すように、正面視で方形枠をなしている。より具体的に説明すると、シートバックフレームFは、幅方向に一対備えられたサイドフレーム11と、サイドフレーム11の上端部同士を連結したアッパフレーム12と、サイドフレーム11の下端部同士を連結したロアメンバフレーム13と、を有する。
【0023】
なお、
図2に示すように、シートバックフレームFは、その上端部に後述のピラーガイド取り付けフレーム30を備えている。このピラーガイド取り付けフレーム30の前面には、角筒状のピラーガイド31が溶接にて取り付けられている。そして、ピラーガイド31の内部にヘッドレストS3のヘッドレストピラーHPが挿通されることで、ヘッドレストS3がヘッドレストピラーHP及びピラーガイド31を介してシートバックS1に支持されている。
【0024】
また、本実施形態に係るシートバックS1は、車両の後突時等、車両に後方荷重が入力された際に乗員の頸部に掛かる負担を軽減させるための措置(以下、頸部負担軽減措置)を採用している。頸部負担軽減措置について具体的に説明すると、シートバックフレームF中に設けられた受圧プレート14が頸部負担軽減措置として機能する。この受圧プレート14は、受圧部材に相当し、幅方向においてサイドフレーム11の間に配置された略長方形状の樹脂製プレートからなる。また、受圧プレート14の前面には不図示のクッションパッドが配置されている。
【0025】
上記の受圧プレート14は、通常時、本シートSに着座している乗員の背を後方から支える。その一方で、車両に対して後方荷重が入力された際、受圧プレート14は、乗員の背によって後方へ押されて乗員の背と共に後方に移動する。このような受圧プレート14の後方移動により、車両後突時には、乗員の背が受圧プレート14の後方移動に伴ってシートバックS1内に沈み込むようになる。この結果、乗員の頸部に掛かる負担が軽減されるようになる。
【0026】
受圧プレート14の後方移動を実現するための構成について
図2を参照しながら説明すると、受圧プレート14は、同図に示すように、一対のサイドフレーム11の間に架設された2本のワイヤ15によって支持されている。より詳しく説明すると、受圧プレート14は、その裏面に設けられた不図示の掛止部が各ワイヤ15に掛け止められることで、2本のワイヤ15によって支持されている。
【0027】
また、上記2本のワイヤ15のうち、下方に位置するワイヤ15は、サイドフレーム11に装着された回動部材20に掛け止めされている。この回動部材20は、移動部に相当し、略扇形形状の金属断片からなる。また、回動部材20は、回動軸20aを介して各サイドフレーム11の内側面に回動可能な状態で取り付けられている。
【0028】
また、回動部材20の前端部には、トーションばね25の一端部が掛け止めされている。このトーションばね25は、所定位置に回動部材20を留めておく目的で用いられた部材である。すなわち、通常時、回動部材20は、トーションばね25からの付勢力を付与されることで初期位置に留まっている。
【0029】
一方、車両後突時には、受圧プレート14が乗員の背によって後方へ押された際の荷重がワイヤ15を介して回動部材20へ伝達される。これにより、回動部材20がトーションばね25の付勢力に抗しながら回動軸20aを中心として後方へ回動する。このように回動部材20が後方回動することで下側のワイヤ15が後方へ移動し、これに伴って受圧プレート14が同じく後方移動する(厳密には、受圧プレート14の下端部が後方へ揺動する)。以上のように車両後突時には受圧プレート14が回動部材20の後方回動に連動して後方移動する。換言すると、車両後突時、回動部材20は、受圧プレート14の後方移動(位置の変化)に付随して初期位置から後方回動する。
【0030】
また、本実施形態では、第二の頸部負担軽減措置として、車両後突時にヘッドレストS3を前傾させる機構を備えている。以下、ヘッドレストS3の駆動機構について
図2及び3を参照しながら説明する。
図3は、ヘッドレストS3の駆動機構を示す図であり、シートバックフレームFの幅方向断面を幅方向一端側(後述の連結リンク40が取り付けられている側とは反対側)から見た図である。なお、
図3では、図示の都合上、回動部材20周りの一部の部品(例えば、トーションばね25等)について図示を省略している。
【0031】
ヘッドレストS3は、前述したように、ヘッドレストピラーHPがピラーガイド31に挿通されることでシートバックフレームFに支持されている。また、ピラーガイド31は、ピラーガイド取り付けフレーム30の前面に溶接されている。このピラーガイド取り付けフレーム30は、
図2に示すように、幅方向に沿って延出しており、上下方向においてアッパフレーム12と並ぶ位置に配置されている。
【0032】
また、ピラーガイド取り付けフレーム30の両端には、断面略L字状のリンクブラケット36が溶接等により固定されている。各リンクブラケット36は、アッパフレーム12(厳密にはサイドフレーム11との連結部分近傍)に溶接された回転支持部材38に軸37を介して連結されている。つまり、ピラーガイド取り付けフレーム30は、軸37を中心として回動可能な状態でシートバックフレームFに取り付けられている。そして、ピラーガイド取り付けフレーム30が回動すると、これに伴う形でヘッドレストS3が軸37を中心として回動し、前後方向に移動する。
【0033】
なお、
図2に示すように、ピラーガイド取り付けフレーム30にはコイルばね32の一端部が掛け止めされている。このコイルばね32は、所定位置にピラーガイド取り付けフレーム30を留めておく目的で用いられた部材である。すなわち、通常時、ピラーガイド取り付けフレーム30は、コイルばね32からの付勢力を付与されることで初期位置に留まっている。
【0034】
また、幅方向一端側(
図2では左側)に配設されているリンクブラケット36については、ピラーガイド取り付けフレーム30に接続されている側とは反対側にある端(具体的には下端)が自由端となっている。一方、幅方向他端側(
図2では右側)に配設されているリンクブラケット36については、
図3に示すように、ピラーガイド取り付けフレーム30に接続されている側とは反対側にある端部(具体的には下端部)が軸39を介して連結リンク40と接続されている。この連結リンク40は、幅方向他端側のリンクブラケット36の下端部と上述した回動部材20の所定部位と、の間に介在している。
【0035】
連結リンク40が幅方向他端側のリンクブラケット36と回動部材20とを連結していることで、回動部材20の回動動作が、連結リンク40を介してリンクブラケット36へ伝達される。これにより、リンクブラケット36が軸37を中心として回動するようになる。
【0036】
そして、リンクブラケット36が回動する結果、ピラーガイド取り付けフレーム30及びヘッドレストS3が前後移動するようになる。特に、車両後突等により車両に対して後方荷重が入力された場合には回動部材20が後方回動することになるが、このとき、ピラーガイド取り付けフレーム30がリンクブラケット36と共に前方へ回動し、これに伴ってヘッドレストS3が前傾する向きに回動する。
【0037】
以上のように車両後突時にはヘッドレストS3が回動部材20の後方回動に連動して前傾する。換言すると、車両後突時、回動部材20は、ヘッドレストS3の前傾度合いの変化に付随して初期位置から後方回動する。そして、車両後突時にヘッドレストS3が前傾することでヘッドレストS3が乗員の頭部に近付き、この結果、乗員の頸部に掛かる負担(衝撃)が軽減されるようになる。
【0038】
以上までに説明してきたように、本シートSは、車両後突により車両に対して後方荷重が入力された際に状態が変化する車両用シートである。具体的に説明すると、本シートSにおいて変化する状態とは、前後方向における受圧プレート14の位置、及び、ヘッドレストS3の前傾度合いである。
【0039】
ここで、本シートSの変化後の状態(受圧プレート14の位置、及び、ヘッドレストS3の前傾度合い)については、乗員の頸部に掛かる負担を適切に軽減し得る内容に設定されている。一方、変化後の状態に関する設定内容は、車両に対する後方荷重の入力に伴って乗員から本シートSに掛かる荷重、具体的には、乗員の背からシートバックS1に掛かる荷重の大きさに応じて異なってくる。また、当該荷重の大きさは、本シートSに着座する乗員の体格や体重その他の身体に関する特徴量に応じて変化する。なお、「乗員の身体に関する特徴量」とは、乗員の身体について数値化(定量化)し得る特徴のうち、上記の荷重に影響を及ぼす内容のことであり、乗員の体格、体型、体重、骨格形状、座高、肩幅等が挙げられる。
【0040】
以上の点を踏まえ、本シートSは、車両後突時における受圧プレート14の到達位置及びヘッドレストS3の前傾度合いが乗員の身体に関する特徴量に応じて適切な内容となるように設定されている。かかる点が本シートSの特徴的構成であり、以下において詳しく説明することとする。
【0041】
<本実施形態に係る車両用シートの特徴的構成>
本シートSでは、前述したように、車両後突時における受圧プレート14の到達位置及びヘッドレストS3の前傾度合いが乗員の身体に関する特徴量(例えば、体形や体重)に応じて異なっている。具体的に説明すると、本シートSでは、車両後突時における回動部材20の回動量が乗員の体型や体重に応じて変化する。かかる構成について
図4乃至9を参照しながら説明する。
図4は、回動部材20及びその周辺構造についての説明図であり、シートバックフレームの側方断面図を示している。
図5は、回動部材20及びその周辺を後方から見た図である。
図6は、回動部材20が後述する第一位置に到達したときの様子を示す図である。
図7は、回動部材20が後述する第二位置に到達したときの様子を示す図である。
【0042】
図8は、ヘッドレストS3が後述する第一到達位置に到達したときの様子を示す図である。
図9は、ヘッドレストS3が後述する第二到達位置に到達したときの様子を示す図である。なお、
図8及び9では、図示の都合上、回動部材20周りの一部の部品(例えば、トーションばね25等)について図示を省略している。
【0043】
回動部材20は、通常時は
図4に図示した初期位置に位置しており、車両後突時には当該初期位置から後方へ回動する。そして、回動部材20が所定位置まで後方回動すると、回動部材20の後端部に形成された被当接部としての後端舌状部21が、係止ピン22に当接する。この係止ピン22は、後端舌状部21と当接して回動部材20の後方回動を制限する移動制限部であり、回動部材20が後方回動した際に後端舌状部21が辿る回動軌跡中に配置されている。また、係止ピン22は、略円柱型のピンであり、
図5に示すようにサイドフレーム11の内側面から幅方向内側に向かって突出している。
【0044】
さらに、
図5に示すように、係止ピン22の外周面には溝状凹部22aが形成指されている。この溝状凹部22aは、脆弱部に相当し、係止ピン22の中で強度が弱くなった(脆くなった)部分であり、係止ピン22の外周面に沿って一周分形成されている。そして、係止ピン22に対して閾値以上の押圧力が作用すると、係止ピン22が溝状凹部22aを起点として変形し、厳密には破断変形する。ここで、閾値とは、係止ピン22が破断する際の押圧力として予め設定された値であり、任意の値に設定可能である。
【0045】
以上のような係止ピン22が設けられていることで、車両後突時に回動部材20が後方移動した際の到達位置が前後方向において複数設定されることになる。より具体的に説明すると、車両後突時、乗員の背によって受圧プレート14が後方へ押されることで回動部材20が初期位置から後方移動し、やがて
図6に図示の第一位置に到達する。このとき、乗員の背から受圧プレート14に掛かる荷重が所定値未満であるとき、回動部材20は、係止ピン22によって係止された状態、すなわち、後端舌状部21が係止ピン22に当接した状態のままで保持される。つまり、乗員の背から受圧プレート14に掛かる荷重が所定値未満であるとき、回動部材20は、係止ピン22による移動制限を受けて第一位置に留まるようになる。
【0046】
一方、乗員の背から受圧プレート14に掛かる荷重が所定値以上であるとき、回動部材20は、第一位置に到達して係止ピン22と当接すると、閾値以上の押圧力にて係止ピン22を押圧するようになる。これにより、係止ピン22は、溝状凹部22aを起点にして破断変形する。そして、係止ピン22が破断変形することにより、回動部材20は、後端舌状部21と係止ピン22との当接状態(換言すると、係止ピン22による回動制限)を脱して更に後方へ回動する。最終的に、回動部材20は、
図7に示すように後端舌状部21がサイドフレーム11の後壁と当接する位置、すなわち第二位置に到達する。なお、第二位置は、回動部材20が後方回動する際の終端位置であり、第一位置よりも初期位置から離れている。
【0047】
以上のように本シートSでは、乗員の背から受圧プレート14に掛かる荷重が所定値未満であるとき、回動部材20が初期位置から移動して第一位置に到達すると、係止ピン22が回動部材20を第一位置に留めておく。これに対して、上記の荷重が所定値以上であるとき、回動部材20は、第一位置に到達した後に係止ピン22を押圧して係止ピン22を破断変形させることで、係止ピン22による回動制限を脱して第二位置に向けて更に後方へ回動する。
【0048】
そして、
図6と
図7とを対比すると分かるように、回動部材20が第二位置に在るとき、受圧プレート14の位置は、回動部材20が第一位置に在るときの位置よりも後方位置である。つまり、回動部材20が第二位置に在るとき、乗員の背がシートバックS1内により深く沈み込むようになる。
【0049】
また、回動部材20が第一位置に在るとき、ヘッドレストS3は、
図8に図示の位置(以下、第一到達位置)にある。第一到達位置は、通常時のヘッドレストS3の位置よりもやや前傾した位置となっている。一方、回動部材20が第二位置に在るとき、ヘッドレストS3は、
図9に図示の位置(以下、第二到達位置)にある。第二到達位置は、第一到達位置よりも更に前傾した位置となっている。つまり、回動部材20が第二位置に在るとき、ヘッドレストS3の前傾度合いは、回動部材20が第一位置に在るときの前傾度合いよりも大きいことになる。
【0050】
以上の結果、例えば乗員が女性又は小柄な男性である場合には、車両後突時に受圧プレート14に掛かる荷重が所定値未満となり、回動部材20が第一位置に到達した後に係止ピン22によって同位置に留められるようになる。この結果、乗員がシートバックS1内に沈み込む際の沈み込み量がより小さくなり、且つ、車両後突直後における乗員の頭部とヘッドレストS3との間隔がより大きくなる。
【0051】
一方で、例えば乗員が大柄な男性である場合には、車両後突時に受圧プレート14に掛かる荷重が所定値以上となり、回動部材20が第一位置に到達した後に係止ピン22を破断変形させることで第一位置から第二位置に向けて更に回動するようになる。この結果、乗員がシートバックS1内に沈み込む際の沈み込み量がより大きくなり、且つ、車両後突直後における乗員の頭部とヘッドレストS3との間隔がより小さくなる。
【0052】
以上までに説明してきた特徴的構成を備えることにより、本シートSでは、車両後突時における受圧プレート14の到達位置やヘッドレストS3の前傾度合いが、乗員の体型や体重等に応じて切り替わるようになっている。つまり、受圧プレート14の到達位置やヘッドレストS3の前傾度合いは、車両後突時に変化する際、乗員の体型や体重等に適した内容に変化することになる。この結果、車両後突時に乗員の頸部に掛かる負担を軽減させる目的で受圧プレート14の到達位置やヘッドレストS3の前傾度合いを変化させる際、変化後の状態を、乗員の体型や体重等を考慮して適切に設定することが可能となる。
【0053】
<特徴的構成の変形例>
次に、本シートSの特徴的構成に関する変形例(具体的には、第一変形例、第二変形例及び第三変形例)について説明する。なお、以下の説明中、先に説明した構成例と重複する内容については説明を省略することとする。また、変形例についての説明図(具体的には、
図10〜12)では、先に説明した構成例と重複する機器・部品に対して、先に説明した構成例にて用いた符号と同一の符号を付している。
【0054】
(第一変形例について)
以下、第一変形例について
図10の(A)及び(B)を参照しながら説明する。
図10の(A)及び(B)は、第一変形例に係る回動部材20を示す図である。
【0055】
先に説明した構成例では、車両後突時に回動部材20が第一位置に到達すると同位置にて係止ピン22と当接することとした。このとき、受圧プレート14に掛かる荷重が所定値以上であると、回動部材20が係止ピン22を閾値以上の押圧力にて押圧する結果、係止ピン22が破断変形することとした。これにより、回動部材20が第一位置から第二位置に向けて更に後方回動するようになる。
【0056】
これに対して、第一変形例では、受圧プレート14に掛かる荷重が所定値以上であるとき、回動部材20が変形することになっている。より詳細に説明すると、第一変形例では、
図10の(A)に示すように、回動部材20の後端部に形成された被当接部としての後端舌状部21に切れ込み21bが形成されている。この切れ込み21bは、後端舌状部21に対して閾値以上の押圧力が作用した際に当該後端舌状部21の変形基点として機能する。具体的に説明すると、後端舌状部21に対して閾値以上の押圧力が作用すると、後端舌状部21が切れ込み21bを起点として折れ曲がる。この結果、後端舌状部21は、切れ込み21bよりも後方に位置する部分(以下、最後端部21a)が幅方向内側に倒れるように折れ曲がり、
図10の(B)に示すようにより短くなる。
【0057】
以上のように構成された回動部材20が設けられた第一変形例では、車両後突時に回動部材20が後方回動すると、折れ曲がり前の後端舌状部21が最後端部21aにてサイドフレーム11の後壁に当接する。第一変形例では、このときの回動部材20の位置が第一位置に相当し、サイドフレーム11の後壁が移動制限部に相当する。
【0058】
そして、車両後突時に受圧プレート14に掛かる荷重が所定値未満であるとき、第一変形例に係る回動部材20は、最後端部21aにてサイドフレーム11と当接すると、その時点での位置、すなわち第一位置に留められる。
【0059】
一方、上記荷重が所定値以上であるとき、第一変形例に係る回動部材20は、第一位置に到達するとサイドフレーム11の後壁から閾値以上の反力(換言すると、押圧力)を受けるようになる。後端舌状部21は、かかる押圧力に押圧される結果、切れ込み21bを起点にして折れ曲がるように変形する。このような後端舌状部21の変形により、第一変形例に係る回動部材20は、第一位置から更に後方に向けて回動し、最終的に
図10の(B)に示すように幅方向内側に倒れた最後端部21aにてサイドフレーム11の後壁と当接する位置まで回動する。かかる位置が、第一変形例での第二位置に相当する。
【0060】
以上のように第一変形例では、車両後突時に受圧プレート14に掛かる荷重が所定値以上であると、回動部材20が第一位置に在るときに後端舌状部21がサイドフレーム11の後壁から閾値以上の押圧力にて押圧されることで変形する。その後、回動部材20は、後端舌状部21が変形することでサイドフレーム11による回動制限を脱し、第一位置から第二位置に向けて更に回動するようになる。
【0061】
以上のように構成された第一変形例において、後端舌状部21の強度を適切な値に設定すれば、車両後突時に変化するシート状態(具体的には、受圧プレート14の位置やヘッドレストS3の前傾度合い)を乗員の体格や体重等に応じて適切に変えることが可能となる。この結果、車両後突時にシート状態を変化させることで乗員の頸部に掛かる負担を軽減させる効果が、乗員の体型や体重等を反映して適切に発揮されるようになる。
【0062】
(第二変形例について)
以下、第二変形例について
図11を参照しながら説明する。
図11は、第二変形例に係る移動制限部についての説明図であり、
図3と対応した図である。なお、図示の都合上、
図11中、回動部材20周りの一部の部品(例えば、トーションばね25等)について図示を省略している。
【0063】
先に説明した構成例では、回動部材20が後方回動して第一位置に到達した際に、移動制限部(具体的には係止ピン22)が回動部材20の一部に当接して回動部材20の回動を制限することとした。
【0064】
これに対して、第二変形例では、回動部材20に対して回動(移動)を阻む付勢力を付与することで回動部材20の回動を制限することになっている。より詳細に説明すると、第二変形例では、二つの付勢ばねが移動制限部として利用されている。一方の付勢ばね(以下、第一付勢ばね51)は、
図11に示すように、サイドフレーム11と連結リンク40との間に張架されている。
【0065】
第一付勢ばね51は、車両後突時に受圧プレート14に荷重が作用したとき(換言すると、回動部材20が後方回動するとき)には常に付勢力を発生させる。この付勢力は、連結リンク40を介して回動部材20まで伝達され、回動部材20の後方回動を阻む向きに作用する。なお、第一付勢ばね51の付勢力は、比較的小さくなっている。このため、第二変形例に係る回動部材20は、車両後突時には、容易に第一付勢ばね51の付勢力に容易に抗しながら後方回動することが可能である。
【0066】
もう一方の付勢ばね(以下、第二付勢ばね52)は、
図11に示すようにサイドフレーム11と第二の連結リンク41との間に張架されている。ここで、第二の連結リンク41は、回動部材20とサイドフレーム11との間に介在したリンク部材であり、回動部材20の回動動作に連動して揺動する。
【0067】
また、第二の連結リンク41には、第二付勢ばね52の一端部が係合される長孔41aが形成されている。この長孔41aの内縁面の下端に第二付勢ばね52の一端部が掛かるようになると、第二付勢ばね52が付勢力を発生させるようになる。この付勢力は、回動部材20に伝達され、回動部材20の後方回動を阻む向きに作用する。なお、第二付勢ばね52の付勢力は、比較的大きくなっている。このため、第二変形例において第二付勢ばね52の付勢力に抗して回動部材20を後方回動させるためには、受圧プレート14に作用する荷重が所定値以上となる必要がある。
【0068】
以上のように第二変形例では、二つの付勢ばねが付勢部として機能し、車両後突時には回動部材20の後方回動を阻む向きの付勢力を回動部材20に対して付与する。ここで、各付勢ばねの付勢力について説明すると、第一付勢ばね51は、回動部材20が初期位置よりも後方に回動した場合(厳密には、回動部材20の後方回動に伴って連結リンク40が変位した場合)に付勢力を発生させる。一方で、第二付勢ばね52は、回動部材20が第一位置に到達した時点で付勢力を発生させる。
【0069】
より詳しく説明すると、回動部材20が第一位置まで到達する前の段階において、第二付勢ばね52の一端部は、第二の連結リンク41に形成された長孔41a内に挿通されていながらも当該長孔41aの内縁面には係合していない。その後、回動部材20が第一位置に到達すると、第二付勢ばね52の一端部が長孔41aの内縁面の下端部に係合するようになる。これにより、第一付勢ばね51の付勢力に加えて、第二付勢ばね52の付勢力が更に回動部材20に加わるようになる。
【0070】
以上のように第二変形例では、回動部材20の後方回動を阻む付勢力の大きさが、回動部材20が第一位置に到達する前後で異なっている。そして、第二変形例では、回動部材20が第一位置に到達する前後で付勢力の大きさを異ならせることで、車両後突時における回動部材20の到達位置が切り替わるようになっている。
【0071】
具体的に説明すると、車両後突時に受圧プレート14に荷重が作用すると、第二変形例に係る回動部材20は、初期位置から第一位置へ向かって後方移動する。この間、回動部材20には第一付勢ばね51の付勢力しか作用しないので、回動部材20は第一位置まで容易に到達する。その後、回動部材20が第一位置に到達すると、第一付勢ばね51及び第二付勢ばね52双方の付勢力が回動部材20に作用するようになる。この時点で上記の荷重が所定値未満であると、回動部材20は、両付勢ばねの付勢力(すなわち、回動部材20が第一位置に到達した後の大きさとなった付勢力)によって第一位置に留まるようになる。これに対して、上記の荷重が所定値以上であると、回動部材20は、両付勢ばねの付勢力に抗して第二位置に向けて更に後方回動する。
【0072】
以上のように第二変形例では、車両後突時に受圧プレート14に掛かる荷重が所定値以上であるときに回動部材20が第一付勢ばね51及び第二付勢ばね52双方の付勢力に抗し、第一位置に到達した後に第二位置に向けて更に後方回動する。反対に、上記の荷重が所定値未満であるとき、回動部材20は、上記二つの付勢ばねの付勢力に抗することができずに第一位置に留まるようになる。
【0073】
以上のように構成された第二変形例において、各付勢ばねの付勢力、特に第二付勢ばね52が付与する分の付勢力を適切な値に設定すれば、車両後突時に変化するシート状態(具体的には、受圧プレート14の位置やヘッドレストS3の前傾度合い)を乗員の体格や体重等に応じて適切に変えることが可能となる。この結果、車両後突時にシート状態を変化させることで乗員の頸部に掛かる負担を軽減させる効果が、乗員の体型や体重等を反映して適切に発揮されるようになる。
【0074】
なお、上述のケースでは、回動部材20が第一位置に到達する前後で付勢力の大きさを異ならせるために、付勢力を発生させるタイミングが異なる複数の付勢ばね(具体的には第一付勢ばね51及び第二付勢ばね52)を用いることとした。ただし、これに限定されるものではなく、付勢部が単一の部材により構成され、当該部材が、回動部材20が第一位置に到達する前後で異なる大きさの付勢力を付与するものであってもよい。
【0075】
(第三変形例について)
以下、第三変形例について
図12を参照しながら説明する。
図12は、第三変形例に係る回動部材20及びその周辺構造を示す図である。
【0076】
第三変形例に係る回動部材20には、
図12に示すように、前後方向に延出した貫通孔60が形成されている。この貫通孔60は、同図に示すように略V字状に屈曲しており、後方に向かうに連れて下がるように傾斜した前方部と、後方に向かうに連れて上がるように傾斜した後方部と、を有する。さらに、後方部の中途位置には、貫通孔60の内縁面が丘状に隆起することで構成された係止部62が形成されている。
【0077】
また、第三変形例では、シートバックS1の所定部位、より具体的にはシートバックフレームFのサイドフレーム11に略円柱状の凸部61が形成されている。この凸部61は、第三変形例における移動制限部に相当し、上記サイドフレーム11の内側面から幅方向内側に向かって突出しており、より厳密に、回動部材20の貫通孔60に向かって突出している。また、凸部61は、
図12に示すように貫通孔60に挿通されている。
【0078】
そして、回動部材20が回動すると、これに伴って凸部61が回動部材20に対して貫通孔60内を前後方向に相対移動するようになる。より具体的に説明すると、回動部材20が初期位置に在るとき、凸部61は、
図12に示すように、貫通孔60内において屈曲部分に位置している。かかる状態から回動部材20が後方回動すると、凸部61が回動部材20に対して相対移動し、貫通孔60の傾斜部(後方部)を上がるように移動する。
【0079】
そして、凸部61は、回動部材20の後方回動に伴って貫通孔60内を後方へ移動すると、やがて貫通孔60内で上述の係止部62と当接するようになる。このように凸部61と係止部62とが当接することで、凸部61の相対移動、すなわち回動部材20の後方回動が制限されるようになる。なお、第三変形例では、このときの回動部材20の位置が第一位置に相当する。
【0080】
また、回動部材20が第一位置に到達した時点で受圧プレート14に掛かる荷重が所定値未満であるとき、凸部61が係止部62に係止され続け、回動部材20は、その時点での位置、すなわち第一位置に留められる。一方、上記の荷重が所定値以上であるとき、凸部61が係止部62を乗り越えて貫通孔60内を移動するようなる。つまり、上記の荷重が所定値以上であると、第三変形例に係る回動部材20は、第一位置から更に後方へ移動する。最終的に、回動部材20は、後端舌状部21がサイドフレーム11の後壁に当接する位置まで回動する。かかる位置が、第三変形例での第二位置に相当する。
【0081】
以上のように第三変形例では、車両後突時に受圧プレート14に掛かる荷重が所定値以上であると、係止部62に当接していた凸部61が係止部62を乗り越えるように回動部材20が後方回動する。つまり、第三変形例に係る回動部材20は、凸部61と係止部62との当接状態を脱し、第一位置から第二位置に向けて更に回動するようになる。
【0082】
以上のように構成された第三変形例において、凸部61や係止部62の形状等を適切な値に設定すれば、車両後突時に変化するシート状態(具体的には、受圧プレート14の位置やヘッドレストS3の前傾度合い)を乗員の体格や体重等に応じて適切に変えることが可能となる。この結果、車両後突時にシート状態を変化させることで乗員の頸部に掛かる負担を軽減させる効果が、乗員の体型や体重等を反映して適切に発揮されるようになる。
【0083】
なお、上述のケースでは、車両後突時に受圧プレート14に掛かる荷重が所定値以上であると、係止部62に当接していた凸部61が係止部62を乗り越えることで回動部材20が第二位置へ向かうこととした。ただし、これに限定されるものではなく、上記の荷重が所定値以上であるときに、凸部61が係止部62を破断変形させる(すなわち、破壊する)ことで回動部材20が第二位置へ向かうこととしてもよい。