特開2016-210770(P2016-210770A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 呉 永昌の特許一覧

特開2016-210770牛樟芝の抽出物の調製方法及びその分析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-210770(P2016-210770A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】牛樟芝の抽出物の調製方法及びその分析方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20161118BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20161118BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20161118BHJP
   G01R 33/465 20060101ALI20161118BHJP
   G01R 33/32 20060101ALI20161118BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20161118BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20161118BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20161118BHJP
   A61K 31/575 20060101ALI20161118BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20161118BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20161118BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20161118BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20161118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161118BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
   A61K36/07
   G01N27/62 V
   G01N27/62 X
   G01N24/00 C
   G01N24/08 510Q
   G01N24/02 530K
   G01N30/88 C
   G01N30/72 C
   G01N30/06 Z
   A61K31/575
   A61P29/00
   A61P9/12
   A61P17/04
   A61P17/00
   A61P35/00
   A61P1/16
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-90880(P2016-90880)
(22)【出願日】2016年4月28日
(31)【優先権主張番号】104113995
(32)【優先日】2015年4月30日
(33)【優先権主張国】TW
(71)【出願人】
【識別番号】516129541
【氏名又は名称】呉 永昌
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呉 永昌
(72)【発明者】
【氏名】呂 美津
(72)【発明者】
【氏名】呉 東穎
(72)【発明者】
【氏名】杜 英齊
(57)【要約】      (修正有)
【課題】牛樟芝(Antrodia cinnamemea)の抽出物の調製及び分析の最適化、及び牛樟芝の抽出物におけるエルゴスタントリテルペノイド化合物及び/又はラノスタントリテルペノイド化合物を正確に定量する分析法の提供。
【解決手段】牛樟芝の抽出物の抽出率に関する重要なパラメータは、核磁気共鳴法及び液体クロマトグラフタンデム型質量分析法を用いて数学的及び統計的実験設計を使用して式(I)より算出され、このパラメーターに従う抽出方法、この抽出物を配合した薬剤、健康食品または他の製品。

【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第一パラメータ、第二パラメータ及び第三パラメータを選択するステップであって、前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータのそれぞれは、最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値を有し、前記最小値、前記最大値及び前記値のそれぞれをドメイン値−1、0と1に定義する前記ステップと、
(b)前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータの全ての前記ドメイン値−1、0と1を置換することによって複数の抽出条件を形成するステップと、
(c)前記複数の抽出条件のそれぞれを使用して牛樟芝の第一量を抽出した後、複数の牛樟芝の第一抽出物を取得するステップと、
(d)式Iにより、前記複数の牛樟芝の第一抽出物のそれぞれの抽出応答値を評価するステップであって、
【数1】
yが前記抽出応答値を表し、A(0、1、2 ...)は、それぞれの定数を表し、x(1、2、3)は、それぞれの前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータを表す前記ステップと、
(e)核磁気共鳴法で前記複数の牛樟芝の第一抽出物を分析し、前記複数の牛樟芝の第一抽出物のそれぞれにおいて総エルゴスタントリテルペノイドの第一特徴信号に対する第一積分面積値及び総ラノスタントリテルペノイドの第二特徴信号に対する第二積分面積値を取得するステップと、
(f)前記抽出応答値、前記第一積分面積値、前記第二積分面積値及び前記複数の抽出条件の特定の一つに基づいて、使用者の要求に応じて牛樟芝の第二量を抽出し、牛樟芝の第二抽出物を取得するステップと、
を含むことを特徴とする牛樟芝の抽出方法。
【請求項2】
前記牛樟芝は、牛樟芝の子実体、牛樟芝の菌糸体及びそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項3】
前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータは、温度、時間及びアルコール溶液の濃度であることを特徴とする請求項1に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項4】
前記温度の最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値のそれぞれは75℃、25℃及び50℃であることを特徴とする請求項3に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項5】
前記時間度の最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値のそれぞれは、90時間、30時間及び60時間であることを特徴とする請求項3に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項6】
前記アルコール溶液の濃度は、水とアルコールを配合することにより得られ、前記アルコールは、メタノール及びエタノールの一つであることを特徴とする請求項3に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項7】
前記アルコールは、エタノールであると、前記エタノール溶液は、水と前記エタノールを配合することにより得られた濃度を有し、前記エタノール溶液の濃度の最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値のそれぞれは、95%(v/v)、35%(v/v)及び65%(v/v)であることを特徴とする請求項6に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項8】
前記温度54.6℃、前記時間58.9分及び前記エタノール溶液の前記濃度95%(v/v)条件の下で、前記牛樟芝の前記総エルゴスタントリテルペノイドの抽出レベルは最大であることを特徴とする請求項3に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項9】
前記第二量は、前記第一量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項10】
(a)第一パラメータ、第二パラメータ及び第三パラメータを選択するステップであって、前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータのそれぞれは、最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値を有し、前記最小値、前記最大値及び前記値のそれぞれをドメイン値−1、0と1に定義する前記ステップと、
(b)前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータの全ての前記ドメイン値−1、0と1を置換することによって複数の抽出条件を形成するステップと、
(c)前記複数の抽出条件のそれぞれを使用して牛樟芝の量を抽出した後、複数の牛樟芝の抽出物を取得するステップと、
(d)式Iにより、前記複数の牛樟芝の第一抽出物のそれぞれの抽出応答値を評価するステップであって、
【数2】
yが前記抽出応答値を表し、A(0、1、2 ...)は、それぞれの定数を表し、x(1、2、3)は、それぞれの前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータを表す前記ステップと、
(e)核磁気共鳴法で前記複数の牛樟芝の抽出物を分析し、前記複数の牛樟芝の抽出物のそれぞれにおいて総エルゴスタントリテルペノイドの第一特徴信号に対する第一積分面積値及び総ラノスタントリテルペノイドの第二特徴信号に対する第二積分面積値を取得するステップと、
(f)前記第一積分面積値、前記第二積分面積値及び前記抽出応答値を使用し、牛樟芝の抽出手順のための最適化パラメータを決定するステップと、
を含むことを特徴とする牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項11】
前記総エルゴトリテルペノイドのそれぞれは、第一親イオン、第一強度を有する第一娘イオン、第二強度を有する第二娘イオンを有し、
総ラノスタントリテルペノイドのそれぞれは、第二親イオン、第三強度を有する第三娘イオン、第四強度を有する第四娘イオンを有し、
前記分析方法は、(g)高速液体クロマトグラフタンデム型質量分析法で前記第一親イオン、前記第二親イオン、前記第一娘イオン、前記第二娘イオン、前記第三娘イオン及び前記第四娘イオンを分析するステップと、更に含むことを特徴とする請求項10に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項12】
(h)総エルゴトリテルペノイドのそれぞれのレベルと総ラノスタントリテルペノイドのそれぞれのレベルを計算するステップと、更に含むことを特徴とする請求項11に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項13】
(a)複数のパラメータを選択するステップであって、前記複数のパラメータのそれぞれは、最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値を有し、前記最小値、前記最大値及び前記値のそれぞれをドメイン値−1、0と1に定義する前記ステップと、
(b)前記複数のパラメータの全ての前記ドメイン値−1、0と1を置換することによって複数の抽出条件を形成するステップと、
(c)前記複数の抽出条件のそれぞれを使用して牛樟芝の量を抽出した後、複数の牛樟芝の抽出物を取得するステップと、
(d)重回帰で前記複数の牛樟芝の抽出物のそれぞれの抽出応答値を計算し、牛樟芝の抽出手順のための最適化パラメータを決定するステップと、を含むことを特徴とする牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項14】
前記ステップ(d)は、
(d1)核磁気共鳴法で前記複数の牛樟芝の抽出物を分析し、前記複数の牛樟芝の抽出物のそれぞれにおいて総トリテルペノイド特徴信号に対する積分面積値を取得するステップと、
(d2)前記積分面積値及び前記抽出応答値に基づいて、前記抽出手順のための前記最適化パラメータを決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項13に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項15】
前記ステップ(d1)は、(d2)前記積分面積値と前記抽出応答値に基づいて、抽出手順の最適パラメータを決定するステップを更に含むことを特徴とする請求項14に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願と優先権主張の相互参照】
【0001】
本出願は、2015年4月30日に出願された出願番号104113995号の台湾出願に基づく利益を主張し、その内容は参考として本明細書に取り入れるものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、牛樟芝の抽出物の調製方法及びその分析方法に関する。特に、本発明は、牛樟芝の抽出物の調製及び分析の最適化、及び牛樟芝の抽出物におけるエルゴスタントリテルペノイド化合物及び/又はラノスタントリテルペノイド化合物を正確に定量する分析法に関する。
【背景技術】
【0003】
牛樟芝(Antrodia cinnamemea、以下「AC」と略す)は、ぎゅうしょうし又はチャンチインと呼ばれ、台湾で固有の真菌であり、400〜2000メートルの高度で楠科の牛樟樹の心材の内壁(または暗い/湿度の高い木材表面)上に成長しているものである。したがって、ACの広い子実体を捜し出す又はヒダナシタケ目の菌類の形態学的外観を特定することは非常に困難である。更に、ACの生物学的に活性な成分は、潜在的な薬剤値を持っているので、単位重量当たりのACの価格は、依然として高い。
【0004】
ACの子実体が容易に見つからない、または人工的に培養されていないため、市場で普及しているのは、ACの菌糸体製品であり、抗癌活性を有し、治療に関連した症状と他の副作用が低減されるものとして販売される。また、ACの菌糸体製品は、最近、抗酸化剤、抗アレルギー剤及び免疫賦活性効果を有することが報告されている。これらの菌糸体製品は、野生の子実体と同様の活性成分を含有し、以前に報告された細胞傷害性のトリテルペノイド、ステロイド、免疫賦活性の多糖類と同様の活性成分を含有することが主張されている。
【0005】
従来のACは、炎症、高血圧症、かゆみ、皮膚及び肝臓癌を予防するために、健康食品として用いられている。従って、ACの菌糸結実体の抽出物は、肝癌、前立腺癌、膀胱癌、肺癌細胞とに対する潜在的な化学療法剤としてみなされる。しかし、各活性成分の活性機構と抗癌能力はまだ解明されていなく、研究されていない。
【0006】
トリテルペノイド成分は、ACの主要な二次代謝産物であり、最も知名度の高い活性成分である。現在では、ACのトリテルペノイドを評価するための定量的基準は、主に二つの方法に分けられている。一つの方法は、重量、すなわち抽出率に基づいて、エタノールを抽出溶媒として使用され、種々の抽出時間点を制御パラメータとして設定され、トリテルペノイドの決定された量を抽出性として評価される。しかし、得られた抽出物中の総トリテルペノイドの量、すなわちエルゴスタントリテルペノイドとラノスタントリテルペノイド及びそれらのそれぞれの量を決定することはできない。他の方法は、分光光度法である。ACの総トリテルペノイドの量は、特定の条件の下で、特定の試薬でACのトリテルペノイドの特定の官能基(すなわち、カルボキシル基(−COOH))を反応させることによって形成された複合体の色に基づいて、カラーメトリを使用して決定される。
【0007】
また、ほとんどのトリテルペノイドの分子構造中に二重結合が存在するので、紫外線波長領域に吸収ピークがある。従って、同様の吸収係数との総トリテルペノイドの量は、紫外線分光光度法を用いて、特定の波長で測定することができる。例えば、オレアノール酸(トリテルペノイド有機酸)は、サンプルの構成要素と類似している化学構造を有するので、様々な濃度でのオレアノール酸は、色を現像するために伝統的な現像薬(バニリン−氷酢酸−過塩素酸)と反応させ、サンプルは、カラーメトリを用いてサンプル中のトリテルペノイドの量を決定することにより現像薬と反応させる。発色現像の詳細な原理は、カルボキシル基が脱水され、二重結合の構造を作成し、二重結合シフトと二分子の縮合は、共役ジエン系を生成するために行われ、その後のカチオンは、色を表示するために、酸性反応で形成される。この方法は、総トリテルペノイドの専用の現像方法である。しかし、この方法は、容易に偽陽性を引き起こす。サンプル中の他の成分は、カルボキシル基と結合している場合、カルボキシル基が特定の現像試薬と反応して誤判定を生じ得る。上記の二つの方法は、ACで総トリテルペノイドを検出するための一般的な方法であるが、その精度が低い、定量化の基準として使用される場合、まだ改善の余地がある。また、台湾特許公開番号TW201416673Aには、牛樟芝のトリテルペノイドの定量方法が開示されており、牛樟芝の指紋パターンをクロマトグラフィーにより得られ、指定された区間内で吸収ピークと外部標準の積分面積比が比較され、トリテルペノイドの量を決定する。しかし、特許公開番号TW201416673Aには、サンプルの抽出方法及びサンプル中のエルゴスタントリテルペノイドとラノスタントリテルペノイドの総量と各々の量が開示されていない。また、台湾特許I407100には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して牛樟芝のトリテルペノイドを分析するための方法が開示されているが、牛樟芝の子実体に含まれるトリテルペノイドの定量的な方法が開示されていない。
【0008】
したがって、出願人は、上記の制限に対処するために、実験と研究を重ねた結果を通じて、本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術でAC及びその特定のトリテルペノイド化合物の抽出物の抽出率を定量化することができないという問題を克服し、総トリテルペノイドの量を認定し制御するようにACを抽出するための最適な手順を確立するために、本発明においては、ACの抽出手順の開始を分析し、トリテルペノイドの正確な定量標準を確保し、ACの原料品質を制御することが開発されている。本発明では、抽出物の抽出率に影響を及ぼし得る重要なパラメータは、数学的及び統計的実験設計を使用して分析され、牛樟芝の抽出物及びその特定のトリテルペノイド化合物は、核磁気共鳴法及び液体クロマトグラフタンデム型質量分析法(HPLC-tandem MS)を用いて定量され確認される。エルゴスタントリテルペノイド及びラノスタントリテルペノイド化合物の総含有量とそれぞれの含有量は、上記の技術を用いて薬剤、健康食品または他の製品に含まれているかどうかを分析、判定または定量することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載の「ACの抽出物」という用語は、ACの子実体から抽出した抽出物、ACの菌糸体またはそれらの組み合わせを指し、すなわち、ACの子実体の抽出物、ACの菌糸体の抽出物又はACの子実体及び菌糸体の抽出物である。好ましくは、抽出物は、本明細書に記載のACの子実体、ACの菌糸体又はそれらの組み合わせをアルコールで抽出した抽出物である。本明細書におけるアルコールは、好ましくは、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)又はそれらの組み合わせである。好ましくは、本明細書に記載のアルコール、メタノール及び/又はエタノールの濃度は、アルコール、メタノール及び/又はエタノールを水と共に配合することによって引き起こされる濃度である。本明細書に記載の「牛樟芝」、「AC」及び「ACの抽出物」は、トリテルペノイドと命名されるエルゴスタントリテルペノイド及び/又はラノスタントリテルペノイドを含む。エルゴスタントリテルペノイド及びラノスタントリテルペノイドのすべての種類は、総エルゴスタントリテルペノイド及び総ラノスタントリテルペノイドと命名される。総エルゴスタントリテルペノイド及び総ラノスタントリテルペノイドは、総トリテルペノイドと命名される。また、エルゴスタントリテルペノイド及びラノスタントリテルペノイドを実際に含んでいるか、含有することが発表されている単剤薬、併用薬、処方薬、非処方薬、健康食品、飲料又はそのようなものは、本発明における「ACの抽出物」という用語の定義に含まれている。
【0011】
本発明は、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド(式I〜X)及びラノスタントリテルペノイド(式XI〜XIV)を含む効率的な投薬量の医薬組成物を以下のように開示している。
【0012】
エルゴスタントリテルペノイド化合物は、antcin K(式I、式II)、antcin C (式III、式IV)、樟芝酸C(式V、式VI)、樟芝酸B(式VII)、樟芝酸A(式VIII、式IX)及び/又はantcin A (式X)(立体異性的な純粋化合物と呼ばれる)を含んでもよく、ラノスタントリテルペノイド化合物は、ジデヒドロスルフレン酸(式XI)、スルフレン酸(式XII)、ジデヒドロエブリコ酸(式XIII)及び/又はエブリコ酸(式XIV)を含んでもよい。
【0013】
本発明は、ACにおける少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物の量を検出するための方法を開示する。前記方法は、アルコールでACの子実体又は菌糸体を抽出し、ACの抽出物を得るステップと、H核磁気共鳴法(NMR)を用いてACの抽出物を検出し、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物がACの抽出物に存在するかどうかを確認するステップと、を含む。
【0014】
更に、前記検出ステップは、H NMRを用いて少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物のC−28メチレン信号を検出するステップを更に含む。
【0015】
また、前記検出方法は、同時に少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物の量を検出するために使用される。前記方法は、1H NMRを用いてACの抽出物を検出し、少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物がACの抽出物に存在するかどうかを確認するステップと、H NMRを用いて前記少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物のC−28メチレン信号を検出するステップと、を更に含む。
【0016】
本発明は、抽出物におけるエルゴスタントリテルペノイド化合物の総量を検出するための方法を開示する。前記方法は、特定のエルゴスタントリテルペノイド化合物を使用し様々な濃度での標準品を調製し、前記標準品のH NMRスペクトルを行い、前記標準品の検量線を計算するステップと、H NMRを用いて抽出物におけるエルゴスタントリテルペノイド化合物のC−28メチレン信号を分析するステップと、前記検量線から前記C−28メチレン信号の積分面積比を決定し、抽出物におけるエルゴスタントリテルペノイド化合物の総量を計算するステップと、を更に含む。
【0017】
前記検出方法によれば、本発明は、抽出物におけるラノスタントリテルペノイド化合物の総量を検出するための方法を開示する。前記方法は、特定のエルゴスタントリテルペノイド化合物を使用し様々な濃度での標準品を調製し、前記標準品のH NMRスペクトルを行い、前記標準品の検量線を計算するステップと、H NMRを用いて抽出物におけるラノスタントリテルペノイド化合物のC−28メチレン信号を分析するステップと、前記検量線から前記C−28メチレン信号の積分面積比を決定し、抽出物におけるラノスタントリテルペノイド化合物の総量を計算するステップと、を更に含む。
【0018】
また、抽出物におけるエルゴスタントリテルペノイド及びラノスタントリテルペノイド化合物の総量を検出するための方法は、ピラジンを使用して1H NMRスペクトルの内部コントロールとするステップと、抽出物におけるC−28メチレン信号がδH 4.82(2H, br d)に存在するかどうかを検出するステップと、抽出物におけるC−28メチレン信号がδH 4.63 (1H, s)とδH 4.70 (1H, s)に存在するかどうかを検出するステップと、を更に含む。C−28メチレン信号がδH 4.82 (2H, br d), δH 4.63 (1H, s) 及びδH 4.70 (1H, s)に存在することは、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物が抽出物に存在することを示す。
【0019】
本発明は、ACにおける少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物を抽出する方法を開示する。前記方法は、ACの子実体及び/又はACの菌糸体を提供し、微粉末に粉砕するステップと、アルコールを抽出溶媒として使用して抽出操作を行い、異なる抽出パラメーターを設計し、ACの子実体及び/又はACの菌糸体のアルコール抽出物を取得するステップと、を含む。前記抽出物は、エルゴスタントリテルペノイド化合物(立体異性的な純粋化合物)及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物を含む。
【0020】
好ましくは、抽出方法は、個々の独立した抽出パラメータとして第一パラメータ(温度)、第二パラメータ(時間)と第三パラメータ(例えばエタノールの濃度など)を設定するステップと、核磁気共鳴法(NMR)でエルゴスタントリテルペノイド化合物及びラノスタントリテルペノイド化合物のC−28メチレン信号の積分面積値(すなわち、抽出応答値)を決定するステップと、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物および少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物の抽出パラメータの適切なセットを取得するために、それぞれの抽出パラメータを設計し、パラメータとその重要性の各個の独立したパラメータ又はパラメータとの相互関係を分析することにより抽出を行うステップと、下記式Iのように、重回帰分析により、独立した抽出パラメータの抽出応答値との間の変化を計算するステップと、
【数1】
yが前記抽出応答値を表し、A(0, 1, 2, 3, 12, 13, 23, 11, 22, 23)は、それぞれの定数を表し、x(1、2、3)は、それぞれの独立した制御パラメータを表す前記ステップと、を含む。
【0021】
本発明は、抽出物における少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド組成物のそれぞれの量を検出するための方法をさらに開示する。前記方法は、アルコールでACの子実体、菌糸体又は子実体と菌糸体の混合物を抽出し、アルコール抽出物を得るステップと、H核磁気共鳴法(NMR)を用いてアルコール抽出物を検出し、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物がアルコール抽出物に存在するかどうかを確認するステップと、少なくとも一つのエルゴのトリテルペノイド化合物が存在する場合に、HPLCを使用して、アルコール抽出物における少なくとも一つのエルゴのトリテルペノイド化合物の量(立体異性的な純粋化合物)を検出るステップと、を含む。
【0022】
また、前記検出方法は、同時に少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物のそれぞれの量を検出するために使用される。前記検出方法は、1H NMRを用いてアルコール抽出物を検出して、アルコール抽出物に少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物があるかどうかを確認するステップと、少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物が存在する場合に、HPLCを使用して、アルコール抽出物における少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物の量を検出するステップと、を含む。全波長検出器及び/又は全波長検出器及びタンデム質量分析計からなる検出器は、HPLC法で使用されている。
【0023】
また、前記検出方法は、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物のpKa値を計算するステップと、単離のための移動相のpH値を調整するステップと、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物と同一のクロマトグラフィーのスペクトル内の少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物を分析するステップと、を更に含む。
【0024】
更に、前記検出方法は、アルコール抽出物、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物に対応する標準品をクロマトグラフィーするステップと、アルコール抽出物と標準品とのHPLCのスペクトルを比較するステップと、タンデム質量分析計を使用して、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物の親イオン(擬似イオンピーク)、第一強度での娘イオン、第二強度での娘イオンを分析して、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物がアルコール抽出物のHPLCのスペクトルに現れると、少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物がアルコール抽出物に存在するかどうかを決定するステップと、様々な濃度での標準品を調製し、標準品の検量線を計算するステップと、タンデム質量分析計を用いて、アルコール抽出物における少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物の標準品の信号を分析するステップと、標準品の検量線を比較して積分面積比を取得し、アルコール抽出物における少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物のそれぞれの量を計算するステップと、を更に含む。
【0025】
本発明の概念によれば、本発明は、併用薬における少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物の総量及びそれらのそれぞれの量、単剤薬における少なくとも一つのエルゴスタントリテルペノイド化合物及び少なくとも一つのラノスタントリテルペノイド化合物の総量及びそれらのそれぞれの量、別の漢方薬のサンプルに少なくとも一つの前記それらの二種類の化合物が存在するかどうか、或いは少なくとも一つの前記それらの二種類の化合物の総量及びそれらのそれぞれの量が存在するかどうかを検出するために使用することができる。又、単剤薬、併用薬又は他の漢方薬におけるそれらの二種類の特定の化合物の比率を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下の詳細な説明と添付の図面を参照した後、当業者は本発明の目的および利点をより容易に明らかにする。
図1】熱還流を介して抽出されたACのエタノール抽出物における総トリテルペノイドの1H NMRスペクトル(DMSO-d6, 400 MHz)である。
図2】超音波振動を用いて抽出されたACのエタノール抽出物における総トリテルペノイドの1H NMRスペクトル(DMSO-d6, 400 MHz)である。
図3】最適な抽出条件の下で総エルゴスタントリテルペノイド化合物及び総ラノスタントリテルペノイド化合物の予測値を示す図である。
図4(A)】本発明におけるACの子実体のエタノール抽出物の最適なHPLCのスペクトルを示す図である。
図4(B)】本発明におけるACの子実体のエタノール抽出物の最適なHPLCのスペクトルを示す図である。
図5】本発明におけるHPLC−MSの内部標準品の構造式、すなわち、ガノデリン酸A(ganoderic acid A)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下のように、本発明を実施例に基づいて詳述するが、あくまでも例示であって、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載されており、さらに特許請求の範囲の記載と均等な意味及び範囲内での全ての変更を含んでいる。
【0028】
IUPAC命名及び本発明において抽出されたエルゴスタントリテルペノイド化合物の構造式E1〜E12(式(formula)I〜X)は、以下に詳細に記載されている。
【化1】
【化2】
【化3】
【0029】
IUPAC命名及び本発明において抽出されたラノスタントリテルペノイド化合物の構造式L1〜L4(式(formula)XI〜XIV)は、以下に詳細に記載されている。
【化4】
【化5】
【0030】
実験1:NMRスペクトルの分析
トリテルペノイド化合物は、ACの主な二次代謝産物であり、エルゴスタントとラノスタンに分ける。本発明では、ACの抽出物における総エルゴスタントトリテルペノイド化合物と総ラノスタントリテルペノイド化合物の絶対量は、NMRを用いて分析する(ACの子実体のエタノール抽出物は、ただの例示であるが、本発明に限定されるものではない)。
【0031】
以下のように検出の実験手順が記載されている。まず、適切な重水素溶媒が選択され、その後、これらの二種類の化合物の標準品は、それぞれ異なる濃度の検量線を作製するために選択される。内部標準品の一定量は、標準品に添加され、内部標準品の目標信号に対する各標準品の特徴信号の積分面積比を算出する。濃度対積分値は、線形回帰を用いて説明され、これにより二種類の化合物の標準品の検量線が得られる。次に、特定の濃度のACの子実体のエタノール抽出物を調製し、等量の重水素溶媒と内部標準品は、NMRスペクトル分析を実行するために添加される。二種類の化合物の特性信号及び内部標準品の目標信号が積分され、積分比を算出し、検量線に基づいて、ACの子実体のエタノール抽出物における二種類の化合物の絶対総量が得られた。
【0032】
本発明は、NMRスペクトル分析を用いてACの子実体のエタノール抽出物における総エルゴスタントリテルペノイド化合物及び総ラノスタントリテルペノイド化合物の絶対量の分析を行う。以下のような実験条件が記載されている。異なる濃度を有する二種類の化合物の標準品が調製され、それぞれは樟芝酸A(エルゴスタントリテルペノイド)とジデヒドロエブリコ酸(ラノスタントリテルペノイド)である。内部標準品(ピラジン、0.132 mg)を添加し、NMRスペクトル分析のための最適な重水素化溶媒であるDMSO-d6溶液(0.9 ml)に溶解する。NMR装置は、Varian UNITY plus 400 MHz分光計であり、スキャン時間は10回(7分間)であり、スペクトル幅は、6002.4 Hzであり、インパルス強度の幅は、6.3μsである。前記試験溶媒は、DMSO-d6溶液、CDCl3又はC5D5Nであってもよいが、これらに限定されるものではない。表1と2を参照してください。二種類の化合物の標準品のC−28メチレン特性信号の始点と終点は、手動で選択され、ピークの積分面積を算出し、内部標準品ピラジン(δH 8.66)の目標信号と標準品のC−28メチレン特性信号との積分面積比を算出する。標準品(樟芝酸A)の特性プロトン(C−28メチレン)吸収信号は、δH 4.82 (2H, br d)に位置し、標準品(ジデヒドロエブリコ酸)の特性プロトン(C−28メチレン)吸収信号は、δH 4.63 (1H, s)と 4.70 (1H, s)に位置する。前記実験は、三重で行われ、相対標準偏差値(RSD%)を決定する。
【0033】
表3を参照下さい。濃度対積分比は、線形回帰によって記載され、この定量分析方法に使用されるために、二種類の化合物の標準品の検量線(標準曲線と回帰分析の決定係数)が得られる。
【0034】
実験2:ACの子実体におけるエルゴスタントリテルペノイドとラノスタントリテルペノイド化合物の抽出方法の設計
ACの乾燥子実体は、微粉末に粉砕され、又は断片に切断され、1:10〜1:20(重量/体積)の比で75°Cのエタノール溶液95%(v / v)に添加し、2時間還流及び/又は超音波発振をする。抽出物は、一晩冷却された後、4°Cに析出される。フィルターを用いて抽出物から上清をろ過し、沈殿物を30分間3000rpmで遠心分離することによって除去される。抽出物(すなわちACの子実体のエタノール抽出物)を凍結乾燥し、−70℃で保存されている。
【0035】
実験1のNMRスペクトル分析から、エタノール抽出物における総エルゴスタントリテルペノイド化合物と総ラノスタントリテルペノイド化合物の積分面積比が知られている。これにより、総エルゴスタントリテルペノイド化合物と総ラノスタントリテルペノイド化合物の濃度が算出される。
【0036】
図1と2を参照してください。 図1図2のそれぞれは、熱還流と超音波振動を用いて抽出されたACのエタノール抽出物における総トリテルペノイドの1H NMRスペクトルである。本発明では、二つの異なる抽出方法を使用して予備実験を実行し、NMRスペクトルから、総エルゴスタントリテルペノイド及び総ラノスタントリテルペノイドの特徴信号に対する積分面積値が有意差がないことが知られており、NMRスペクトル分析を使用してACの子実体における総エルゴスタントリテルペノイド及び総ラノスタントリテルペノイドの濃度との適切さを証明する。
【0037】
実験3:ACの子実体におけるエルゴスタントリテルペノイド化合物とラノスタントリテルペノイド化合物の濃度の抽出パラメータの設計
本発明では、数学と統計を用いて、ACの子実体におけるエルゴスタントリテルペノイド化合物とラノスタントリテルペノイド化合物に影響を与える抽出パラメータを分析し、制御又は修正の参照/基礎として応用する。予備実験からの実際のデータによると、パラメータとの間の相互関係の数学的モデルが確立され、このモデルに従って極値(最大値と最小値を含む)が見出される。
【0038】
本発明では、実験設計のモデルを使用して各抽出パラメータのための三つのドメイン値(−1、0、+1)を確立しており、最適な抽出条件を調査し、範囲が最大値と最小値を含める必要があることを示す。本発明の実験において、三つの独立した抽出パラメータは、最適な抽出法を評価するための第一パラメータ(温度)、第二パラメータ(時間)及び第三パラメータ(エタノールの濃度)である。抽出条件の相対応答値は、NMRスペクトル分析を使用してACの子実体のエタノール抽出物における総エルゴスタントリテルペノイド及び総ラノスタントリテルペノイドの特徴信号に対する積分面積値に基づいて決定される。三つの制御パラメータのそれぞれの最大値及び最小値が存在することを予備実験から知られており、16種類の抽出条件(ドメイン値−1、0、+1の順列)がある数学と統計モデルに設計され、中心点を6回通過させること(0)がモデルの設計の「不適合度」及びエラー情報(表4と5参照)を意味する。
【0039】
三つのパラメータ及びその最大値、最小値と最大値と最小値との間の中間値は、ACの最適な抽出手順のための制御パラメータであることに留意すべきである。当業者であれば、制御パラメータとして、複数(例えば、2、3、4またはそれ以上)のパラメータを使用することが実行できることを十分に理解できる。更に、複数のパラメータは、温度、時間及びエタノールの濃度に限定されるものではない。ACの抽出に関与するパラメータは、例えば圧力、断片化されたACの研削レベル、溶液中のACの重量体積比などの制御パラメータとしてもよい。パラメータの最大値、最小値と最大値と最小値との間の中間値は、ACの最適な抽出手順のための制御パラメータとすることに加えて、パラメータの最大値、最小値と最大値と最小値との間の任意値は、ACの最適な抽出手順のための制御パラメータとしてもよい。
【0040】
実験4:ACの子実体におけるエルゴスタンとラノスタントリテルペノイド化合物の最適な抽出パラメータ
ACの乾燥した子実体の微粉末(70mg)を秤量し、16種類の異なる抽出条件及び超音波振動を使用して抽出を実行する。16種類の条件で得られた抽出物は、ロータリーエバポレーターを用いて乾燥される。各抽出物(6mg)を同量の重水素化溶媒及び内部標準品に加え(0.132mgの内部標準品ピラジンを、0.6mLのDMSO-d6に溶解される)、NMRスペクトル分析を行い、さまざまな条件の下でACのエタノール抽出物における総エルゴスタントリテルペノイドと総ラノスタントリテルペノイドの特徴信号に対する積分面積値が評価される。
【0041】
表6を参照してください。表6は、NMRスペクトによって決定される16種類の抽出条件から得られた応答値を示す。表6に示すように、温度50℃、時間30分及びエタノールの濃度95%という抽出条件下、総エルゴスタンと総ラノスタントリテルペノイド化合物の最適な積分面積値のそれぞれは、40.33と13.59である。
【0042】
独立したパラメータに応答する抽出応答値の変動は、重回帰分析を用いて、上記の結果を計算し、以下の式Iで表される。
【数2】
yが抽出応答値を表し、A(0, 1, 2, 3, 12, 13, 23, 11, 22, 33)は、それぞれの定数を表し、x(1、2、3)は、それぞれの独立した制御パラメータを表す。直線性、二次項、クロス乗積及びP値(有意)は、表7に含まれている。変動解析は、総エルゴスタンと総ラノスタントリテルペノイドの決定係数(R)は、0.90よりも大きいことが明らかになり、それぞれが0.97と0.94である。前記データは、確立されたモデルにより、約95%の応答値(ばらつき)が独立した制御パラメータによってに生成された又はパラメータとの間に生成されたことを十分に説明できることを証明する。また、モデルの「不適合度」は、実験設計の欠乏に応じるために使用される。結果、P値が0.05より大きい、すなわち0.09と0.61であり、これは、本発明で設計されたモデルが反応の変動を十分かつ正確に予測できることを示す。又、このモデルに設計された条件下で、総エルゴスタン及び総ラノスタントリテルペノイドのP値は0.001未満であることは、回帰分析から明らかにする(表8参照)。従って、本発明で設計されたモデルは、非常に正確なデータであると認める。本発明の実験設計では、16種類の条件から得られる応答値の全ては、重回帰式を用いて十分に説明することができる。確立された回帰モードを使用して、異なる抽出パラメータの下で、ACの総エルゴスタン及び総ラノスタントリテルペノイドの量の変動を予測することができる。
【0043】
上記式(I)は、三つの抽出パラメータで重回帰分析をする式である。当業者であれば、二つ、四つまたはそれ以上の抽出パラメータを使用して重回帰分析をする場合、式(I)及びその解析的と統計的方法論は、適当に修正、変更することができ、前記修正と変更も本発明の特許請求の範囲に入ることを理解できる。
【0044】
確立されたモデルから得られたデータの正当性と不適合度を評価することに加えて、独立した制御パラメータ及び独立した制御パラメータと間の相互関係を分析する(表8参照)。エルゴスタントリテルペノイドの独立したパラメータについては、第三パラメータ(エタノールの濃度)のP値が0.01未満であり、他の独立したパラメータの単項式のクロス乗積(温度、時間及びエタノールの濃度)及び他の独立したパラメータの単項式の平方(温度、時間及びエタノールの濃度)が0.05よりも大きく、これはエタノールの濃度がACのエルゴスタントリテルペノイドを抽出するための重要な制御パラメータであることを示す。ラノスタントリテルペノイドの独立したパラメータと同じであり、第三パラメータ(エタノールの濃度)のP値が0.01未満である。又、第一パラメータ(温度)の平方(X12)のP値は、0.05よりも小さく、これは温度も重要な制御パラメータであり、エタノールの濃度がACのラノスタントリテルペノイドを抽出するための重要な制御パラメータであることを示す。
【0045】
本発明では、ACの子実体のトリテルペノイドの抽出手順は、数学と統計を用いたモデルの設計に伴う検証モードであり、ACのトリテルペノイド化合物の最適な抽出手順の三つの予測値(温度54.6℃時間58.9分及びエタノールの濃度95%)を取得する(図3参照)。抽出手順の重要な制御パラメータは、エタノールの濃度であり、エルゴスタン及びラノスタントリテルペノイドにおけるP値が0.05未満である。ラノスタントリテルペノイドの別の重要な制御パラメータは、第一パラメータ(温度)の平方であり、そのP値が0.014であることが表8から分かる。前記条件(温度54.6℃時間58.9分及びエタノールの濃度95%)の下で最適な手順のための最大予測値は、本発明の設計されたモデルを使用して得ることができる。即ち、温度が55℃に近い場合、ラノスタントリテルペノイドのための最高の抽出率に到達することが可能である。温度を更に上げる又は下げると、抽出率が低下する。超音波振動で抽出率を増大させるため、パラメータ「時間」は、二種類の化合物に対する統計的有意性を示さない要素である。本発明では、抽出率が60分の超音波振動の後に飽和状態に達したことが見出されている。
【0046】
従って、当業者は、実験3と4及び抽出パラメータに基づいて、少量のACを抽出し、NMRスペクトル分析及び重回帰分析に基づいて、抽出手順のための最適なパラメータまたはユーザの要求に応じるパラメータを見つけ、その後、抽出手順のための最適なパラメータまたはユーザの要求に応じるパラメータを使用して大量のACを抽出する。そのため、得られたAC抽出物は、総ラノスタントリテルペノイド化合物に対する総エルゴスタントリテルペノイド化合物の最適な比率、総エルゴスタント及び総ラノスタントリテルペノイド化合物の最大量、又はユーザの要求に応じる比率や量を含んでいる。
【0047】
実験5:総エルゴスタンと総ラノスタントリテルペノイド化合物の絶対量の分析
最適な手順から得られた抽出物の二種類の化合物の積分比を検量線を用いて計算された後、総エルゴスタントリテルペノイド化合物の絶対量は、513±0.18 μg/mgであり、総ラノスタントリテルペノイド化合物の絶対量は、187±0.25 μg/mgである。本発明における統計モデルは、高速、省エネと効率的な抽出手順をし、ACのエルゴスタンとラノスタントリテルペノイドの抽出率を増加させる。
【0048】
実験6:エルゴスタントリテルペノイド化合物とラノスタントリテルペノイド化合物のHPLC分析
具体的には、ACの子実体に含まれるエルゴスタン及びラノスタントリテルペノイドの化学構造は、カルボキシル基を有するため、より良好なクロマトグラフィーの効果が酸性移動相で得られる。
エタノール抽出物は、アセトニトリル(CH3CN)-H2O(0.1%有機酸)又はMeOH-H2O (0.1%有機酸)であるとき、ACの子実体のエタノール抽出物のエルゴスタンとラノスタントリテルペノイドのより良いHPLCスペクトルが得られることが決定される。この条件で、エルゴスタンとラノスタントリテルペノイド化合物の保持時間は、同時に測定することができるが、エルゴスタントリテルペノイド立体異性混合物を完全に分離することができない。本発明では、より良い分離と解像度を取得するために、トリテルペノイド化合物の解離定数をさらに分析し、次いで、SPARC化学の自動推論ソフトウェア(Sparc Performs Automated Reasoning in Chemistry)を使用して、各エルゴスタンとラノスタントリテルペノイド化合物(12種類のエルゴスタントリテルペノイドE1〜E12と4種類のラノスタントリテルペノイドL1〜L4)の酸性係数を計算する(表9参照)。これらの2種類のトリテルペノイド化合物の酸性係数は、4.40〜4.60の範囲にある。次に、五つの移動相のpH値(すなわち3.75、4.00、4.25、4.50及び5.00)を用意し、HPLCスペクトルを実行し、次いでHPLCスペクトルを分析する。最適なクロマトグラフィー条件を探すために、解析結果は、そのクロマトグラフィースペクトルにおける各トリテルペノイド化合物の分解能(Resolution, Rs)に従って評価される。
【0049】
HPLCの条件が次のように記載されている。HPLC装置は、Agilent 1200 HPLCシステム(Agilent Technologies社)であり、検出器は、API 4000トリプル四重極分析計(アプライドバイオシステム、フォスターシティー、CA、USA)であり、HPLCカラムは、Agilent EC-C18(150×4.6mm)であり、移動相中の溶媒AとBは、CH3CNと純水である(HPLCグレードH2Oに0.1%酢酸と酢酸アンモニウム(10 mM)を添加し、最終pH値は3.75、4.00、4.25、4.50及び5.00である)。流速は、1.3ml/分である。カラム温度は室温であり、検出波長は、UV 254 nmである。溶媒系の条件は次のように記載されている。移動相は、溶媒AとBを含み、線形勾配は、0〜15分(39%A〜44%A)、15〜17.5分(44%A〜45%A)、17.5〜22.5分(45%A〜47%A)、22.5〜27.5分(47%A〜50%A)、27.5〜30分(50%A〜53%のA)、30〜35分(53%A〜55%A)、35〜45分(55%A〜65%A)、45〜55分(65%A〜98%のA)及び55〜60分(98%A〜100%A)。流速及びカラムの温度は、上記と同様である。
【0050】
結果、移動相のpH値が4.25である場合、各エルゴスタンとラノスタントリテルペノイド化合物はより良い解像度が得られることを示している(図4(A)と(B)参照)。最適なHPLCスペクトルにおいて、二つずつのエルゴスタントリテルペノイド化合物は、良好な分解能と隔離効果を有し、したがって、液体クロマトグラフタンデム型質量分析法(HPLC-tandem MS、例えば、トリプル四重極分光計)の定量分析に適用することができる。また、サンプルは、12種類のエルゴスタンと4種類のラノスタントリテルペノイド化合物を含む。スペクトルは、二つのラノスタントリテルペノイド化合物(すなわちジデヒドロスルフレン酸(L1)とジデヒドロエブリコ酸(L3))の信号だけを示すが、化合物L1とL2(スルフレン酸)は、同様の構造を有し、化合物L3とL4(エブリコ酸)は、同様の構造を有する。グループ1(L1とL3)とグループ2(L2とL4)との間の構造の違いについて、グループ1は、2組の二重結合(C7-C8とC9-C11)を有し、グループ2は、1組の二重結合(C8-C9)を有する。化合物L1とL2のピークが重なり、化合物L3とL4のピークが重なるが、それらの分子量(Mw)は異なっている。ラノスタントリテルペノイド化合物の定性的及び定量的測定は、液体クロマトグラフタンデム型質量分析法(HPLC-tandem MS)と分子量が異なる特性を使用して上記の最適化されたHPLC条件の下で行うことができる。
【0051】
実験7:各エルゴスタントリテルペノイド化合物と各ラノスタントリテルペノイド化合物の量についての分析
また、ACの子実体のエタノール抽出物における16種類のトリテルペノイド化合物(E1〜E12とL1〜L4)の定量分析は、液体クロマトグラフタンデム型質量分析法(HPLC-tandem MS)を使用して行われ、検出器は、高い定量精度のトリプル四重極分析計であり、イオンスキャンモードは、複数の反応モニタリング(MRM)のために使用される。この実験において、分子量516のガノデリン酸A(図5参照)は内部標準品であり、16種類のトリテルペノイド化合物と類似している物理的、化学的及びクロマトグラフィー特性を有するものである。液体クロマトグラフィー/質量分析計(LC-MS/ MS)は、Agilent 1200 HPLCシステムとAPI 4000トリプル四重極分光計である。検出のためのイオン源は、負イオンモードを伴うエレクトロスプレーイオン(ESI)である。
【0052】
16種類のトリテルペノイド化合物(E1〜E12とL1〜L4)と内部標準品(ガノデリン酸A)から二対の娘イオンをそれぞれ選択し、第一強度での娘イオンは、定量イオンとして機能し、第二強度での娘イオンは、定性イオンとして機能する。最適な質量スペクトルパラメータ、抽出イオンクロマトグラム(XIC)及び16種類のトリテルペノイド化合物の娘イオンのスペクトルの結果は、表10を参照してください。16種類のトリテルペノイド化合物を同時に検出するために、五つの異なる濃度(10〜1000 ng/ml)の各標準品を調製し、内部標準品の定量イオンに対する各濃度での各化合物の積分比を算出し、検量線を製作する。表10の結果は、16種類のトリテルペノイド化合物の各々についての線形回帰の決定係数(R)が0.99であることを示す。表11は、HPLC−MSの定量方法を用いて測定するACのエタノール抽出物における16種類のトリテルペノイド化合物の個々の量を示す。
【0053】
以上の説明によると、当業者であれば本発明の技術思想を逸脱しない範囲で、多様な変更及び修正が可能であることが分かる。従って、本発明の技術的な範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限らず、特許請求の範囲によって定めなければならない。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9-1】
【表9-2】
【表10】
【表11】
図1
図2
図3
図4(A)】
図4(B)】
図5
【手続補正書】
【提出日】2016年7月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第一パラメータ、第二パラメータ及び第三パラメータを選択するステップであって、前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータのそれぞれは、最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値を有し、前記最小値、前記最大値及び前記値のそれぞれをドメイン値−1、0と1に定義する前記ステップと、
(b)前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータの全ての前記ドメイン値−1、0と1を置換することによって複数の抽出条件を形成するステップと、
(c)前記複数の抽出条件のそれぞれを使用して牛樟芝の第一量を抽出した後、複数の牛樟芝の第一抽出物を取得するステップと、
(d)式Iにより、前記複数の牛樟芝の第一抽出物のそれぞれの抽出応答値を評価するステップであって、
【数1】
yが前記抽出応答値を表し、A(0、1、2 ...)は、それぞれの定数を表し、x(1、2、3)は、それぞれの前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータを表す前記ステップと、
(e)核磁気共鳴法で前記複数の牛樟芝の第一抽出物を分析し、前記複数の牛樟芝の第一抽出物のそれぞれにおいて総エルゴスタントリテルペノイドの第一特徴信号に対する第一積分面積値及び総ラノスタントリテルペノイドの第二特徴信号に対する第二積分面積値を取得するステップと、
(f)前記抽出応答値、前記第一積分面積値、前記第二積分面積値及び前記複数の抽出条件の特定の一つに基づいて、使用者の要求に応じて牛樟芝の第二量を抽出し、牛樟芝の第二抽出物を取得するステップと、
を含むことを特徴とする牛樟芝の抽出方法。
【請求項2】
前記牛樟芝は、牛樟芝の子実体、牛樟芝の菌糸体及びそれらの組み合わせであり、
前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータは、温度、時間及びアルコール溶液の濃度であり、
前記第二量は、前記第一量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項3】
前記温度の最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値のそれぞれは75℃、25℃及び50℃であり、
前記時間度の最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値のそれぞれは、90時間、30時間及び60時間であり、
前記アルコール溶液の濃度は、水とアルコールを配合することにより得られ、前記アルコールは、メタノール及びエタノールの一つであり、
前記温度54.6℃、前記時間58.9分及び前記エタノール溶液の前記濃度95%(v/v)条件の下で、前記牛樟芝の前記総エルゴスタントリテルペノイドの抽出レベルは最大であることを特徴とする請求項に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項4】
前記アルコールは、エタノールであると、前記エタノール溶液は、水と前記エタノールを配合することにより得られた濃度を有し、前記エタノール溶液の濃度の最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値のそれぞれは、95%(v/)、35%(v/v)及び65%(v/v)であることを特徴とする請求項に記載の牛樟芝の抽出方法。
【請求項5】
(a)第一パラメータ、第二パラメータ及び第三パラメータを選択するステップであって、前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータのそれぞれは、最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値を有し、前記最小値、前記最大値及び前記値のそれぞれをドメイン値−1、0と1に定義する前記ステップと、
(b)前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータの全ての前記ドメイン値−1、0と1を置換することによって複数の抽出条件を形成するステップと、
(c)前記複数の抽出条件のそれぞれを使用して牛樟芝の量を抽出した後、複数の牛樟芝の抽出物を取得するステップと、
(d)式Iにより、前記複数の牛樟芝の第一抽出物のそれぞれの抽出応答値を評価するステップであって、
【数2】
yが前記抽出応答値を表し、A(0、1、2 ...)は、それぞれの定数を表し、x(1、2、3)は、それぞれの前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータを表す前記ステップと、
(e)核磁気共鳴法で前記複数の牛樟芝の抽出物を分析し、前記複数の牛樟芝の抽出物のそれぞれにおいて総エルゴスタントリテルペノイドの第一特徴信号に対する第一積分面積値及び総ラノスタントリテルペノイドの第二特徴信号に対する第二積分面積値を取得するステップと、
(f)前記第一積分面積値、前記第二積分面積値及び前記抽出応答値を使用し、牛樟芝の抽出手順のための最適化パラメータを決定するステップと、
を含むことを特徴とする牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項6】
前記総エルゴトリテルペノイドのそれぞれは、第一親イオン、第一強度を有する第一娘イオン、第二強度を有する第二娘イオンを有し、
総ラノスタントリテルペノイドのそれぞれは、第二親イオン、第三強度を有する第三娘イオン、第四強度を有する第四娘イオンを有し、
前記分析方法は、(g)高速液体クロマトグラフタンデム型質量分析法で前記第一親イオン、前記第二親イオン、前記第一娘イオン、前記第二娘イオン、前記第三娘イオン及び前記第四娘イオンを分析するステップと、更に含むことを特徴とする請求項に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項7】
(h)総エルゴトリテルペノイドのそれぞれのレベルと総ラノスタントリテルペノイドのそれぞれのレベルを計算するステップと、更に含むことを特徴とする請求項に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項8】
(a)複数のパラメータを選択するステップであって、前記複数のパラメータのそれぞれは、最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値を有し、前記最小値、前記最大値及び前記値のそれぞれをドメイン値−1、0と1に定義する前記ステップと、
(b)前記複数のパラメータの全ての前記ドメイン値−1、0と1を置換することによって複数の抽出条件を形成するステップと、
(c)前記複数の抽出条件のそれぞれを使用して牛樟芝の量を抽出した後、複数の牛樟芝の抽出物を取得するステップと、
(d)重回帰で前記複数の牛樟芝の抽出物のそれぞれの抽出応答値を計算し、牛樟芝の抽出手順のための最適化パラメータを決定するステップと、を含むことを特徴とする牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項9】
前記ステップ(d)は、
(d1)核磁気共鳴法で前記複数の牛樟芝の抽出物を分析し、前記複数の牛樟芝の抽出物のそれぞれにおいて総トリテルペノイド特徴信号に対する積分面積値を取得するステップと、
(d2)前記積分面積値及び前記抽出応答値に基づいて、前記抽出手順のための前記最適化パラメータを決定するステップと、を含むことを特徴とする請求項に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【請求項10】
前記ステップ(d1)は、(d2)前記積分面積値と前記抽出応答値に基づいて、抽出手順の最適パラメータを決定するステップを更に含むことを特徴とする請求項に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
16種類のトリテルペノイド化合物(E1〜E12とL1〜L4)と内部標準品(ガノデリン酸A)から二対の娘イオンをそれぞれ選択し、第一強度での娘イオンは、定量イオンとして機能し、第二強度での娘イオンは、定性イオンとして機能する。最適な質量スペクトルパラメータ、抽出イオンクロマトグラム(XIC)及び16種類のトリテルペノイド化合物の娘イオンのスペクトルの結果は、表10を参照されたい。16種類のトリテルペノイド化合物を同時に検出するために、五つの異なる濃度(10〜1000 ng/ml)の各標準品を調製し、内部標準品の定量イオンに対する各濃度での各化合物の積分比を算出し、検量線を製作する。表10の結果は、16種類のトリテルペノイド化合物の各々についての線形回帰の決定係数(R)が0.99であることを示す。表11は、HPLC−MSの定量方法を用いて測定するACのエタノール抽出物における16種類のトリテルペノイド化合物の個々の量を示す。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1](a)第一パラメータ、第二パラメータ及び第三パラメータを選択するステップであって、前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータのそれぞれは、最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値を有し、前記最小値、前記最大値及び前記値のそれぞれをドメイン値−1、0と1に定義する前記ステップと、
(b)前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータの全ての前記ドメイン値−1、0と1を置換することによって複数の抽出条件を形成するステップと、
(c)前記複数の抽出条件のそれぞれを使用して牛樟芝の第一量を抽出した後、複数の牛樟芝の第一抽出物を取得するステップと、
(d)式Iにより、前記複数の牛樟芝の第一抽出物のそれぞれの抽出応答値を評価するステップであって、
【数3】
yが前記抽出応答値を表し、A(0、1、2 ...)は、それぞれの定数を表し、x(1、2、3)は、それぞれの前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータを表す前記ステップと、
(e)核磁気共鳴法で前記複数の牛樟芝の第一抽出物を分析し、前記複数の牛樟芝の第一抽出物のそれぞれにおいて総エルゴスタントリテルペノイドの第一特徴信号に対する第一積分面積値及び総ラノスタントリテルペノイドの第二特徴信号に対する第二積分面積値を取得するステップと、
(f)前記抽出応答値、前記第一積分面積値、前記第二積分面積値及び前記複数の抽出条件の特定の一つに基づいて、使用者の要求に応じて牛樟芝の第二量を抽出し、牛樟芝の第二抽出物を取得するステップと、
を含むことを特徴とする牛樟芝の抽出方法。
[2]前記牛樟芝は、牛樟芝の子実体、牛樟芝の菌糸体及びそれらの組み合わせであることを特徴とする[1]に記載の牛樟芝の抽出方法。
[3]前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータは、温度、時間及びアルコール溶液の濃度であることを特徴とする[1]に記載の牛樟芝の抽出方法。
[4]前記温度の最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値のそれぞれは75℃、25℃及び50℃であることを特徴とする[3]に記載の牛樟芝の抽出方法。
[5]前記時間度の最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値のそれぞれは、90時間、30時間及び60時間であることを特徴とする[3]に記載の牛樟芝の抽出方法。
[6]前記アルコール溶液の濃度は、水とアルコールを配合することにより得られ、前記アルコールは、メタノール及びエタノールの一つであることを特徴とする[3]に記載の牛樟芝の抽出方法。
[7]前記アルコールは、エタノールであると、前記エタノール溶液は、水と前記エタノールを配合することにより得られた濃度を有し、前記エタノール溶液の濃度の最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値のそれぞれは、95%(v/v)、35%(v/v)及び65%(v/v)であることを特徴とする[6]に記載の牛樟芝の抽出方法。
[8]前記温度54.6℃、前記時間58.9分及び前記エタノール溶液の前記濃度95%(v/v)条件の下で、前記牛樟芝の前記総エルゴスタントリテルペノイドの抽出レベルは最大であることを特徴とする[3]に記載の牛樟芝の抽出方法。
[9]前記第二量は、前記第一量よりも多いことを特徴とする[1]に記載の牛樟芝の抽出方法。
[10](a)第一パラメータ、第二パラメータ及び第三パラメータを選択するステップであって、前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータのそれぞれは、最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値を有し、前記最小値、前記最大値及び前記値のそれぞれをドメイン値−1、0と1に定義する前記ステップと、
(b)前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータの全ての前記ドメイン値−1、0と1を置換することによって複数の抽出条件を形成するステップと、
(c)前記複数の抽出条件のそれぞれを使用して牛樟芝の量を抽出した後、複数の牛樟芝の抽出物を取得するステップと、
(d)式Iにより、前記複数の牛樟芝の第一抽出物のそれぞれの抽出応答値を評価するステップであって、
【数4】
yが前記抽出応答値を表し、A(0、1、2 ...)は、それぞれの定数を表し、x(1、2、3)は、それぞれの前記第一パラメータ、前記第二パラメータ及び前記第三パラメータを表す前記ステップと、
(e)核磁気共鳴法で前記複数の牛樟芝の抽出物を分析し、前記複数の牛樟芝の抽出物のそれぞれにおいて総エルゴスタントリテルペノイドの第一特徴信号に対する第一積分面積値及び総ラノスタントリテルペノイドの第二特徴信号に対する第二積分面積値を取得するステップと、
(f)前記第一積分面積値、前記第二積分面積値及び前記抽出応答値を使用し、牛樟芝の抽出手順のための最適化パラメータを決定するステップと、
を含むことを特徴とする牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
[11]前記総エルゴトリテルペノイドのそれぞれは、第一親イオン、第一強度を有する第一娘イオン、第二強度を有する第二娘イオンを有し、
総ラノスタントリテルペノイドのそれぞれは、第二親イオン、第三強度を有する第三娘イオン、第四強度を有する第四娘イオンを有し、
前記分析方法は、(g)高速液体クロマトグラフタンデム型質量分析法で前記第一親イオン、前記第二親イオン、前記第一娘イオン、前記第二娘イオン、前記第三娘イオン及び前記第四娘イオンを分析するステップと、更に含むことを特徴とする[10]に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
[12](h)総エルゴトリテルペノイドのそれぞれのレベルと総ラノスタントリテルペノイドのそれぞれのレベルを計算するステップと、更に含むことを特徴とする[11]に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
[13](a)複数のパラメータを選択するステップであって、前記複数のパラメータのそれぞれは、最大値、最小値及び前記最大値と前記最小値との間の値を有し、前記最小値、前記最大値及び前記値のそれぞれをドメイン値−1、0と1に定義する前記ステップと、
(b)前記複数のパラメータの全ての前記ドメイン値−1、0と1を置換することによって複数の抽出条件を形成するステップと、
(c)前記複数の抽出条件のそれぞれを使用して牛樟芝の量を抽出した後、複数の牛樟芝の抽出物を取得するステップと、
(d)重回帰で前記複数の牛樟芝の抽出物のそれぞれの抽出応答値を計算し、牛樟芝の抽出手順のための最適化パラメータを決定するステップと、を含むことを特徴とする牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
[14]前記ステップ(d)は、
(d1)核磁気共鳴法で前記複数の牛樟芝の抽出物を分析し、前記複数の牛樟芝の抽出物のそれぞれにおいて総トリテルペノイド特徴信号に対する積分面積値を取得するステップと、
(d2)前記積分面積値及び前記抽出応答値に基づいて、前記抽出手順のための前記最適化パラメータを決定するステップと、を含むことを特徴とする[13]に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
[15]前記ステップ(d1)は、(d2)前記積分面積値と前記抽出応答値に基づいて、抽出手順の最適パラメータを決定するステップを更に含むことを特徴とする[14]に記載の牛樟茸の抽出手順のパラメータを最適化するための分析方法。
【外国語明細書】
2016210770000001.pdf