【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.国際プラスチックフェア(IPF JAPAN 2014)平成26年10月28日〜平成26年11月1日に幕張メッセにて公開 2.平成26年度木質バイオマス加工・利用システム開発事業研究成果発表会 平成27年2月6日に 隠岐島文化会館2F会議室にて公開 3.平成26年度木質バイオマス加工・利用システム開発事業成果報告会 平成27年3月11日に TKP大手町カンファレンスセンターホール22Gにて公開
本発明は、ポリカーボネート40〜90質量%と、アセチル化リグノフェノール3〜30質量%と、リン系難燃剤5〜20質量%とを含み、酸化防止剤が0.07質量%以下である樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、難燃助剤0.2〜1.0質量%を含む樹脂組成物であることが好ましい。
ポリカーボネート40〜90質量%と、アセチル化リグノフェノール3〜30質量%と、リン系難燃剤5〜20質量%とを含み、酸化防止剤が0.07質量%以下である、樹脂組成物。
250℃の射出成形によって作製した13mm×127mm×3.1mmの試験片について、UL94V規格の難燃性試験を行った場合に、5つの試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒以下となる、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
250℃の射出成形によって作製した13mm×127mm×3.1mmの試験片について、UL94V規格の難燃性試験を行った場合に、燃焼性がV−0となる、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性プラスチックの一種であるポリカーボネートは、難燃性、透明性、機械的強度、耐熱性などに優れた樹脂として知られている。ポリカーボネートの難燃性をさらに高めるための方法として、従来は、ハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を一定量混合するという方法が行われていたが、ハロゲン系難燃剤は環境への負荷が大きく、リン系難燃剤は樹脂組成物の成形性や加工性を悪化させる傾向があるため、これらの使用量を低減させることが望まれていた。
【0003】
上記のような難燃剤の使用量を低減させた樹脂組成物として、近年、天然木質由来のリグノフェノールを、ポリカーボネートに混合させた樹脂組成物が検討されている(例えば、特許文献1〜4参照)。リグノフェノールをポリカーボネートに混合させることにより、樹脂組成物に難燃性を付与しつつ、他の難燃剤の使用量を低減させることができる。
【0004】
しかし、特許文献1〜4に記載された樹脂組成物は、樹脂組成物の混錬性や成形性等の加工性を、酸化防止剤などの安定剤を添加することによって担保してが、酸化防止剤は高価であることから、上記のような樹脂組成物を大量生産することは、経済効率の観点から困難となっていた。
【0005】
また、酸化防止剤の影響で、組成成分の相溶性や分散性が悪化して、樹脂組成物を成形した後の機械的強度が低下してしまうという問題もあった。さらに、酸化防止剤の種類によっては、他の組成成分の効力を大きく減弱させる場合があるという問題もあった。
【0006】
加えて、特許文献2〜4に記載された樹脂組成物は、黒色のリグノフェノールを用いているため、樹脂組成物に透明性をもたせることができなかった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0018】
本発明の樹脂組成物におけるポリカーボネートの含有量は、40〜90質量%であり、60〜90質量%であることが好ましく、80〜90質量%であることがより好ましい。ポリカーボネートの含有量が40質量%未満であると、機械的強度、耐熱性などの樹脂組成物の物性が低下する傾向にある。ポリカーボネートの含有量が90質量%を超えると、樹脂組成物の難燃性が低下する傾向にある。
【0019】
本発明の樹脂組成物におけるアセチル化リグノフェノールの含有量は、3〜30質量%であり、5〜20質量%であることが好ましく、7.5〜15質量%であることがより好ましい。アセチル化リグノフェノールの含有量が3質量%未満であると、樹脂組成物の難燃性が損なわれる傾向にある。アセチル化リグノフェノールの含有量が30質量%を超えると、樹脂組成物の粘度が低下し、ペレット化が困難になるなど、加工性や成形性が低下したり、樹脂組成物の透明性が低下したりする傾向にある。
【0020】
アセチル化リグノフェノールは透明性を有する一方、アセチル化されていないリグノフェノールは黒色を呈するため、透明性を担保した樹脂組成物を得る観点から、アセチル化リグノフェノールが用いられる。
【0021】
アセチル化リグノフェノールのアセチル化度は、25モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。アセチル化リグノフェノールのアセチル化度が、25モル%未満であると、樹脂組成物の透明性が損なわれる傾向にある。
【0022】
アセチル化リグノフェノールのアセチル化度は、例えば、フーリエ変換赤外分光法により算出することができる。具体的には、アセチル化度が100%のアセチル化リグノフェノールをA
100、アセチル化度を測定するアセチル化リグノフェノールをA
xとした場合に、エステル単位の存在を表す波長1750cm
-1付近の赤外吸収スペクトルの吸光度を、A
100とA
xとについて測定し、A
xの吸光度をA
100の吸光度で除した値に100を掛けてアセチル化度を表すことができる。なお、アセチル化度100%のアセチル化リグノフェノールA
100とは、アセチル化される水酸基の存在を表す3400cm
-1付近の赤外吸収スペクトルの吸光度が、アセチル化されていないリグノフェノールA
0のものに対して、5%以下となるものであればよい。
【0023】
アセチル化リグノフェノールの原料となるリグノフェノールの製造方法は、特に限定されないが、例えば、木質バイオマスに酸とフェノール誘導体を添加して、木質バイオマス中のセルロース、ヘミセルロースを加水分解させ、木質バイオマス中のリグニンをフェノール誘導体により安定化することで得ることができる。リグノフェノールをアセチル化する方法は、特に限定されないが、例えば、リグノフェノールを有機溶媒に溶解させ、無水酢酸と反応させて、リグノフェノールのアセチル化を行うことができる。
【0024】
アセチル化リグノフェノールは、その分子構造に基づいて酸化防止剤としての効果も発揮する。また、アセチル化リグノフェノールは熱安定性が高いため、樹脂組成物の熱安定性の観点からも、混合材料として好適である。加えて、アセチル化リグノフェノールを樹脂組成物に混合することにより、樹脂組成物の耐熱性、耐久性等の物性も向上する傾向にある。
【0025】
なお、加工性の指標となるMFR値は、リグノフェノールにおいては、260℃で26g/10min程度、アセチル化リグノフェノールにおいては、260℃で12.5g/10min程度、ポリカーボネートにおいては、260℃で2.4g/10min程度となることが一般的である。そのため、加工性の向上効果は、アセチル化リグノフェノールよりも、リグノフェノールを混合した場合の方が大きくなるが、アセチル化リグノフェノールは、リグノフェノールよりも、引張り、伸び、曲げ等の機械的強度を向上させる傾向がある。
【0026】
本発明の樹脂組成物におけるリン系難燃剤の含有量は、5〜20質量%であり、5〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。リン系難燃剤の含有量が5質量%未満であると、樹脂組成物の難燃性が低下する傾向にある。リン系難燃剤の含有量が20質量%を超えると、樹脂組成物の粘度が低下して加工性が悪くなったり、樹脂組成物の透明性が低下したりする傾向にある。
【0027】
本発明に用いるリン系難燃剤の種類は、特に限定されないが、例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィンなどが挙げられる。これらの中でも、特に、樹脂組成物の難燃性および透明性を向上させる観点から、リン酸エステルを用いることが好ましい。リン酸エステルとしては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、または、これらの置換体若しくは縮合物等が挙げられる。
【0028】
本発明の樹脂組成物を、290℃の圧縮成形によって厚さ2mmの成形物としたときの全光線透過率は0.3%以上であることが好ましい。290℃の圧縮成形によって厚さ2mmの成形物としたときの全光線透過率が0.3%未満であると、樹脂組成物の透明性が損なわれる傾向にある。
【0029】
本発明の樹脂組成物を、290℃の圧縮成形によって厚さ2mmの成形物としたときに、全光線透過率を0.3%以上とするためには、アセチル化度が60モル%以上のアセチル化リグノフェノールを10質量%以下、リン系難燃剤を20質量%以下、難燃助剤を0.5質量%以下とすることが好ましい。樹脂組成物に含有させる混合材料の種類や量が多くなると、全光線透過率は損なわれる傾向にあり、樹脂組成物に含有させる混合材料の屈折率が、ポリカーボネートの屈折率と異なるほど、全光線透過率は損なわれる傾向にある。
【0030】
本発明の樹脂組成物における酸化防止剤の含有量は、0.07質量%以下であり、0.05質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以下であることがより好ましく、0質量%であることがさらに好ましい。酸化防止剤の含有量が0.07質量%を超えると、組成成分の相溶性や分散性が低下して、樹脂組成物を成形した後の機械的強度が低下する傾向にある。また、樹脂組成物の製造コストが増加して大量生産に不向きとなったり、樹脂組成物の透明性が損なわれたりする傾向もある。
【0031】
本発明の樹脂組成物に用いる酸化防止剤の含有量を上記範囲とするためには、後述するように、樹脂組成物の押出成形時に、圧縮比CRを1.0〜2.0に調整したスクリューを有する単軸混錬機を用いて、樹脂組成物にシェアがかかりにくくして、余分な発熱を防ぐ製造方法を用いることが重要である。
【0032】
また、酸化防止剤を用いる場合は、他の組成成分との相性によっては、樹脂組成物のペレット化を困難にさせるなど、樹脂組成物の加工性や成形性を低下させる傾向がある。一方、酸化防止剤を用いない場合は、そのような樹脂組成物の性能の低下が起こりにくいため、樹脂組成物の品質管理項目を低減することもできるようになる傾向にある。
【0033】
本発明の樹脂組成物に酸化防止剤を用いる場合、その種類は特に限定されないが、加工安定性、変色防止効果、色調安定性を向上させる観点からは、リン系酸化防止剤を用いることが好ましい。リン系酸化防止剤としては、例えば、トリデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジトリデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ジノニルフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリtert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジtert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2−tert−ブチル−4−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4'−n−ブチリデンビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジtert−ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、2,2'−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジtert−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、または9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドなどが挙げられる。
【0034】
本発明の樹脂組成物における難燃助剤の含有量は、0.2〜1.0質量%であることが好ましく、0.2〜0.5質量%であることがより好ましく、0.2〜0.3質量%であることがさらに好ましい。難燃助剤の含有量が0.2質量%未満であると、樹脂組成物の燃焼時に燃焼滴下物を生じやすくなり、発火しやすくなる傾向にある。難燃助剤の含有量が1.0質量%を超えると、樹脂組成物の透明性が低下したり、樹脂組成物の加工性が低下して樹脂組成物の製造が困難となったりする傾向にある。
【0035】
また、難燃助剤を用いる場合は、他の組成成分との相性によっては、樹脂組成物のペレット化を困難にさせるなど、樹脂組成物の加工性や成形性を低下させる傾向がある。一方、難燃助剤を用いない場合は、そのような樹脂組成物の性能の低下が起こりにくいため、樹脂組成物の品質管理項目を低減することもできるようになる傾向にある。
【0036】
本発明に用いる難燃助剤の種類は、特に限定されないが、例えば、フルオロエチレン構造を含む重合体または共重合体であることが好ましい。フルオロエチレン構造を含む重合体または共重合体としては、例えば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素原子を含まないエチレン系モノマーとの共重合体等が挙げられる。ポリフルオロオレフィン樹脂の中でも、より燃焼滴下物を生じにくくする観点から、ポリテトラフルオロエチレンを用いることが好ましい。
【0037】
なお、本発明の樹脂組成物には、本発明の趣旨に反しない限り、種々の添加剤を添加してもよい。
【0038】
本発明の樹脂組成物において、JIS K 7210に基づいて測定した260℃におけるMFRは、10〜50g/10minであることが好ましく、10〜30g/10minであることがより好ましく、10〜20g/10minであることがさらに好ましい。260℃におけるMFRが10g/10min未満であると、樹脂組成物の加工性が低下したり、樹脂組成物の歩留まりや生産性が低下したりする傾向にある。260℃におけるMFRが50g/10minを超えると、樹脂組成物の加工性が低下することによって、射出成形した樹脂組成物の外観が悪化したり、樹脂組成物の成形条件が安定しなくなったりするなどして、樹脂組成物を用いた製品に均一性がなくなる傾向にある。
【0039】
UL94V規格の難燃性試験とは、主に樹脂等の燃焼性を評価するために行われる試験である。燃焼性は、V−0、V−1またはV−2の三段階で評価される。V−0は難燃性が高いことを示し、V−1は難燃性が低いことを示す。V−2は、難燃性が低く、かつ、燃焼滴下物を生じやすいことを示す。なお、樹脂の燃焼の態様は、炎を上げて燃える有炎燃焼と、炎を上げずに燃える無炎燃焼とに分類することができる。
【0040】
本発明の樹脂組成物において、250℃の射出成形によって作製した13mm×127mm×3.1mmの試験片について、UL94V規格の難燃性試験を行った場合に、5つの試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒以下となることが好ましい。5つの試験片の有炎燃焼時間の合計が50秒を超えると、燃焼性の判定はV−1またはV−2となり、難燃性が低下する傾向にある。
【0041】
本発明の樹脂組成物において、250℃の射出成形によって作製した13mm×127mm×3.1mmの試験片について、UL94V規格の難燃性試験を行った場合、燃焼性はV−0となることが好ましい。燃焼性の判定がV−1となると、難燃性が低下する傾向にある。燃焼性の判定がV−2となると、樹脂組成物またはその塗装物品の燃焼時に燃焼滴下物を生じやすくなり、発火しやすくなる傾向にある。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、単軸混錬機のスクリューを用いて製造することが好ましい。混練に伴うシェアが強くなると、組成成分の分散性は良くなる傾向にあるが、熱の発生により組成成分が熱分解しやすくなる傾向にある。一方、混練に伴うシェアが弱くなると、熱は発生しにくくなる傾向にあるが、組成成分の分散性は悪くなる傾向にある。以上のような観点から、組成成分の分散性を良好にするとともに、組成成分の熱分解を抑制できるように、混練に伴うシェアを好適に調整することが好ましい。
【0043】
混練に伴うシェアを好適に調整するための方法は、特に限定されないが、例えば、スクリューの形状を、
図1に示すスクリュー1のような形状とすることが好ましい。スクリューが上記の形状であることにより、組成成分の分散性を良好にするとともに、組成成分の熱分解を抑制することができる傾向にある。一方、スクリューの形状が、
図2に示すスクリュー2のような形状であると、組成成分の分散性が悪くなったり、組成成分の熱分解が引き起こされたりする傾向にある。
【0044】
本発明の樹脂組成物の製造に用いる単軸混錬機のスクリューにおいて、スクリューの圧縮比CRは、1.0〜2.0であることが好ましく、1.2〜1.8であることがより好ましく、1.5〜1.7であることがさらに好ましい。スクリューの圧縮比CRを上記範囲に調整することにより、樹脂組成物の余分な発熱を防ぐことができ、安定剤がなくても、樹脂組成物を均一に混錬することができる。
【0045】
なお、スクリューの圧縮比CRは、スクリューの計量部(先端部)における1ピッチ辺りの体積に対するスクリューの供給部における1ピッチ辺りの体積の比によって表すことができる。具体的には、スクリューの直径をD、供給部の溝の深さをHf、計量部(先端部)の溝の深さをHmとしたときに、圧縮比CRは、CR=Hf(D−Hf)/Hm(D−Hm)として表すことができる。
【0046】
図1に示すスクリュー1の圧縮比CRは1.6であり、
図2に示すスクリュー2の圧縮比CRは2.25である。
【0047】
上記のように、樹脂組成物にかかるシェアを調整できるスクリューを有する単軸混錬機を用いることにより、樹脂組成物中の含有成分を均一に混錬することができる。樹脂組成物中の含有成分が均一に混錬されることにより、樹脂組成物の難燃性や成形後の機械的強度が向上する傾向にある。
【0048】
また、上記のように、樹脂組成物にかかるシェアを調整できるスクリューを有する単軸混錬機を用いない場合は、樹脂組成物の難燃性や成形後の機械的強度が損なわれるだけでなく、ポリカーボネートおよびリグノフェノールが分解されやすくなったり、樹脂組成物の押出成形時に二酸化炭素の気泡が発生したりするなど、樹脂組成物の物性および成形性も損なわれる傾向にある。また、樹脂組成物の混錬時に発生する熱も、ポリカーボネートおよびリグノフェノールの分解を引き起こし、樹脂組成物の物性および成形性を損なう傾向にある。
【0049】
従来の樹脂組成物では、高価な酸化防止剤を含んだものを用いる必要があったが、本発明の樹脂組成物においては、酸化防止剤を必ずしも必要としないため、従来の樹脂組成物と同等のコストで大量の樹脂組成物を製造することができるようになる。
【0050】
また、酸化防止剤を用いる場合は、他の組成成分との相性によっては、樹脂組成物のペレット化を困難にさせるなど、樹脂組成物の加工性や成形性を低下させる傾向がある。一方、酸化防止剤をほとんど用いない場合は、そのような樹脂組成物の性能の低下が起こりにくいため、樹脂組成物の品質管理項目を低減することもできるようになる傾向にある。
【0051】
本発明の樹脂組成物の成形品は、難燃性とある程度の透明性が要求される種々の成形品に適用することができる。本発明の樹脂組成物の成形品としては、例えば、リチウムイオン電池のケース、電気電子機器のボディーケース、コネクター、モジュラープラグ、道路・スタジアム・アーケード等の透明部材などが挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0053】
(実施例1)
<樹脂組成物の作製>
ポリカーボネート(出光興産株式会社製、タフロンFN2200)74.7質量%、アセチル化リグノフェノール(株式会社藤井基礎設計事務所製、リグノフェノール;アセチル化度85モル%)15.0質量%、リン系難燃剤(株式会社ADEKA製、アデカスタブFP−800)10.0質量%、難燃助剤としてのポリテトラフルオロエチレン(出光ライオンコンポジット株式会社製)0.3質量%を、
図1に示すスクリュー(圧縮比CR=1.6)を備えた単軸混錬押出機(株式会社日本油機製、バンビSRV−H3000)に供給し、スクリュー回転数25rpm、押出速度10kg/hr、270℃の条件で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0054】
(実施例2および3、比較例1および2)
ポリカーボネート、アセチル化リグノフェノール、リン系難燃材、難燃助剤を表2に示す組成で混合した以外は、実施例1と同様の方法を用いて、樹脂組成物のペレットを得た。
【0055】
(比較例3)
樹脂組成物として、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(旭化成ケミカルズ株式会社製、ザイロン)を用いた。
【0056】
<MFRの測定>
実施例または比較例で得られた樹脂組成物について、JIS K 7210に従い、メルトインデクサーD4003(日本ダイニスコ株式会社製)を用いて、試験温度260℃、試験荷重1.2kgfの条件でMFRを測定した。MFRの測定結果を表2に示す。
【0057】
<全光線透過率の測定>
実施例または比較例で得られた樹脂組成物を、厚さ2mmの平板状として、100℃のオーブンで約12時間予備加熱し、圧縮成形機(湯浅鉄工所製、油圧成形プレス30T)を用いて、290℃、4MPaの条件下、約5分間、加熱および加圧をして、厚さ2mmの平板状の成形物を得た。得られた成形物について、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製、HZシリーズ)を用いて、JIS K 7361−1に従い、全光線透過率を測定した。全光線透過率の測定結果を表2に示す。
【0058】
<UL94V規格の難燃性試験>
実施例または比較例で得られた樹脂組成物を、射出成形機(住友重機工業株式会社製、SE18DUZ)を用いて、250℃で射出成形し、100℃で12時間乾燥させた。得られた成形物を13mm×127mm×3.1mmの短冊状として、UL94V試験のための試験片を作製し、温度22℃、湿度33RH%の条件下で48時間放置した。試験片の上方をクランプで支持して試験片を垂直に保持し、燃焼滴下物による発火の判定のために、乾燥した外科用脱脂綿を試験片の真下に置いた。
【0059】
試験片に対して垂直にメタンガスバーナーの火炎をあて、試験片の下端3/4を火炎中に10秒間保持し、その後バーナーの火炎を試験片から離した。試験片に着火した炎が消えた場合は、直ちにさらに10秒間バーナーの火炎を試験片に当て、再度バーナーの火炎を試験片から離した。以上の試験を5枚の試験片に対して行った。
【0060】
<燃焼性の評価>
燃焼性の評価は、以下の表1に記載の5つの判定基準に基づいて行った。燃焼性の評価および有炎燃焼時間の合計は表2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】