特開2016-210828(P2016-210828A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2016-210828ボールペン用油性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-210828(P2016-210828A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】ボールペン用油性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/18 20060101AFI20161118BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
   C09D11/18
   B43K7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-92466(P2015-92466)
(22)【出願日】2015年4月29日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】中村 尚嗣
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA09
2C350HA12
2C350HC03
2C350NA02
2C350NA19
2C350NC02
2C350NC10
2C350NC44
4J039BC19
4J039BC52
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039CA04
4J039CA07
4J039EA48
4J039GA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた潤滑効果を付与でき、高級脂肪酸と併用しても、長期経時によるチップの腐食を生じることがなく、軽い筆感と均一な筆跡からなる優れた筆記性能を長期に亘って発現できるボールペン用油性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンの提供。
【解決手段】着色剤と有機溶剤と式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体を含むボールペン用油性インキ組成物、及びそれをを内蔵したボールペン。

〔RはH又はCH;R及びRはH又は2−エチルへキシル基;R又はRのいずれかで少なくとも一方が2−エチルへキシル基〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と有機溶剤と下記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体を含むボールペン用油性インキ組成物。
【化1】
〔式中のRはH又はCHであり、R、RはH又は2−エチルへキシル基のいずれかであり少なくとも一方が2−エチルへキシル基である〕
【請求項2】
高級脂肪酸を含むことを特徴とする請求項1記載のボールペン用油性インキ組成物。
【請求項3】
前記ベンゾトリアゾール誘導体がインキ組成物全量中0.1〜10重量%の範囲で添加される請求項1又は2に記載のボールペン用油性インキ組成物。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載のボールペン用油性インキ組成物を内蔵したボールペン。
【請求項5】
ボールペンチップが洋白製である請求項4記載のボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボールペン用油性インキ組成物に関する。更には、チップの腐食を抑制できるボールペン用油性インキ組成物とそれを用いたボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油性ボールペンにおいては、1万〜数万mPa・sの高粘度のインキが用いられている。前記高粘度油性インキを用いたボールペンは筆感が重いため、オレイン酸等の脂肪酸を添加することでチップを構成するボールとボール受け座との潤滑性を向上させて筆感を軽くする試みがなされているが、高筆圧での筆記や長距離の筆記によってボール受け座が摩耗を生じるものであった。そこで、前述の摩耗を抑制するべく、潤滑剤としてベンゾトリアゾールやトリルトリアゾールを用いた技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献の技術では、潤滑剤としてベンゾトリアゾールやトリルトリアゾールを単体で、又は高級脂肪酸(オレイン酸)と併用することで、ベンゾトリアゾールやトリルトリアゾールがボール受け座の表面に膜を形成して、ボールとボール受け座の摩擦を低減することで潤滑性(筆感)を向上させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−64290号公報
【0005】
しかしながら、前記構成の油性インキをボールペン形態で長期間保管した際、ボール受け座が金属腐食を生じてしまい、均一な筆跡が得られなくなったり、筆記感が重くなる等の不具合を生じるものであった。特に、潤滑性をより高めるために高級脂肪酸を併用した場合やチップを構成する金属が銅を含む場合には腐食が顕著であり、筆記できなくなることがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はインキ粘度が高い油性インキであっても、優れた潤滑効果を付与できるとともに、高級脂肪酸と併用した場合やチップが銅を含む場合であっても、長期経時によるチップの腐食を生じることがなく、軽い筆感と均一な筆跡からなる優れた筆記性能を長期に亘って発現できるボールペン用油性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、着色剤と有機溶剤と下記一般式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体を含むボールペン用油性インキ組成物を要件とする。
【化1】
〔式中のRはH又はCHであり、R、RはH又は2−エチルへキシル基のいずれかで少なくとも一方が2−エチルへキシル基である〕
更に、高級脂肪酸を含むこと、前記ベンゾトリアゾール誘導体がインキ組成物全量中0.1〜10重量%の範囲で添加されることを要件とする。
更には、前記いずれかのボールペン用油性インキ組成物を内蔵したボールペンを要件とし、前記ボールペンのボールペンチップが洋白製であることを要件とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、インキ粘度が高い油性インキであっても、優れた潤滑効果が得られるとともに、高級脂肪酸を用いた場合や、洋白等の銅を含むチップを用いた場合であっても、長期経時によるチップの腐食を生じることがなく、軽い筆感と均一な筆跡からなる優れた筆記性能を長期に亘って発現できるボールペン用油性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ボールペン用油性インキ組成物中に、前記一般式(1)のベンゾトリアゾール誘導体を添加することにより、高粘度であっても優れた潤滑効果が得られるものである。また、高級脂肪酸を併用することでより高い潤滑性能が得られるとともに、従来、併用によって生じていたチップ等の金属腐食を抑制することが可能な油性インキが得られる。
【0010】
前記一般式(1)のベンゾトリアゾール誘導体は、分岐アルキルを有するアミノメチル基を備えたベンゾトリアゾールであり、アミノメチル基の作用によって、従来のベンゾトリアゾールやトリルトリアゾールよりも高い潤滑性能を発現するとともに、高級脂肪酸を併用した際の金属腐食を抑制することが可能となる。
前記ベンゾトリアゾール誘導体としては、1−(2−エチルへキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾール、1−〔N,N−ビス(2−エチルへキシル)アミノメチル〕ベンゾトリアゾール、1−(2−エチルへキシルアミノメチル)メチルベンゾトリアゾール、1−〔N,N−ビス(2−エチルへキシル)アミノメチル〕メチルベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0011】
前記ベンゾトリアゾール誘導体は単独で用いられる他、高級脂肪酸と併用することができ、特に限定されるものではないが、好ましくはインキ組成物中の0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜5重量%の範囲で適用される。前記配合量においては、特に高い潤滑性能が得られる。
【0012】
前記高級脂肪酸は従来から潤滑剤として油性インキに添加されるものであり、前記ベンゾトリアゾール誘導体と併用することで、潤滑性能を向上させることができる。
前記高級脂肪酸としては、炭素数6〜22の高級脂肪酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸や、オレイン酸、リノレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸が適用できる。前記高級脂肪酸は単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよく、好ましくは油性インキ組成物中の0.1重量%〜10重量%の範囲で適用される。
【0013】
更に、必要に応じて汎用の潤滑剤を添加することもでき、長鎖アルキル基を有するノニオン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等が例示できる。
【0014】
前記有機溶剤としては、油性ボールペン用の従来汎用のものが適用でき、例えば、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ギ酸n−ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピル等を例示できる。
前記有機溶剤は一種又は二種以上を混合して、インキ組成中40〜95重量%の範囲で用いられる。
【0015】
前記着色剤としては、従来から油性インキに適用される汎用の染料、顔料が適宜用いられる。
前記染料としては、例えば、カラーインデックスにおいてソルベント染料として分類される有機溶剤可溶性染料が挙げられる。
前記ソルベント染料の具体例としては、バリファストブラック3806(C.I.ソルベントブラック29)、同3807(C.I.ソルベントブラック29の染料のトリメチルベンジルアンモニウム塩)、スピリットブラックSB(C.I.ソルベントブラック5)、スピロンブラックGMH(C.I.ソルベントブラック43)、バリファストレッド1308(C.I.ベーシックレッド1の染料とC.I.アシッドイエロー23の染料の造塩体)、バリファストイエローAUM(C.I.ベーシックイエロー2の染料とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンイエローC2GH(C.I.ベーシックイエロー2の染料の有機酸塩)、スピロンバイオレットCRH(C.I.ソルベントバイオレット8−1)、バリファストバイオレット1701(C.I.ベーシックバイオレット1とC.I.アシッドイエロー42の染料の造塩体)、スピロンレッドCGH(C.I.ベーシックレッド1の染料の有機酸塩)、スピロンピンクBH(C.I.ソルベントレッド82)、ニグロシンベースEX(C.I.ソルベントブラック7)、オイルブルー613(C.I.ソルベントブルー5)、ネオザポンブルー808(C.I.ソルベントブルー70)等が挙げられる。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料、アルミニウム粉やアルミニウム粉表面を着色樹脂で処理した金属顔料、透明又は着色透明フィルムにアルミニウム等の金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、フィルム等の基材に形成したアルミニウム等の金属蒸着膜を剥離して得られる厚みが0.01〜0.1μmの金属顔料、金、銀、白金、銅から選ばれる平均粒子径が5〜30nmのコロイド粒子、蛍光顔料、蓄光性顔料、熱変色性顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料等が挙げられる。
前記着色剤は一種又は二種以上を併用してもよく、インキ組成物中3〜40重量%の範囲で用いられる。
【0016】
更に、筆跡の滲み抑制、定着性向上、堅牢性等を付与する目的で樹脂を添加することができる。前記樹脂としては、先の有機溶剤に対して可溶なものであれば特に限定されることなく適用でき、例えば、ケトン樹脂、アミド樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリメタクリル酸エステル、ケトン−ホルムアルデヒド樹脂、α−及びβ−ピネン・フェノール重縮合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物等が挙げられる。
これらの樹脂は一種又は二種以上を混合して用いてもよく、インキ組成中0.5〜40重量%、好ましくは1〜35重量%の範囲で用いられる。0.5重量%未満では筆跡の紙への滲み抑制、定着性向上、堅牢性付与等の充分な効果を発揮できず、40重量%を越えて添加すると、樹脂の溶剤への溶解性が低下し、インキの流動性が低下することがある。
【0017】
更に、本発明の油性インキ組成物には、必要に応じて上記成分以外に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防錆剤、粘度調整剤、顔料分散剤、消泡剤、剪断減粘性付与剤、界面活性剤等の各種添加剤を使用できる。
前記添加剤はいわゆる慣用的添加剤と呼ばれるもので、公知の化合物から適宜必要に応じて使用することができる。
【0018】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドロキシトルエン、フラボノイド、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸誘導体、α−トコフェロール、カテキン類等が使用できる。
紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル5′−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、p−安息香酸−2−ヒドロキシベンゾフェノン等が使用できる。
防錆剤としては、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等が使用できる。
消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン等が使用できる。
【0019】
更に、剪断減粘性付与剤を添加することによって、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止することができる。
前記剪断減粘性付与剤としては、従来公知の化合物を用いることが可能であり、例えば、架橋型アクリル樹脂、架橋型アクリル樹脂のエマルションタイプ、架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体、非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体非架橋型N−ビニルカルボン酸アミド重合体又は共重合体の水溶液、水添ヒマシ油、脂肪酸アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス等のワックス類、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ジベンジリデンソルビトール、デキストリン脂肪酸エステル、N−アシルアミノ酸系化合物、スメクタイト系無機化合物、モンモリロナイト系無機化合物、ベントナイト系無機化合物、ヘクトライト系無機化合物、シリカ等が例示できる。
【0020】
前記ボールペン用油性インキ組成物を充填するボールペンの筆記先端部(チップ)の構造は、従来汎用の機構が有効であり、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属製のパイプや金属材料の切削加工により形成したチップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。特に、本発明においては経時による金属腐食を抑制できるため、安価であり柔らかい筆感が得られる洋白等、銅を含む材料を用いることが可能となる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等からなる汎用のものが適用でき、直径0.1mm〜2.0mm、好ましくは0.2mm〜1.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
【0021】
前記油性インキ組成物を収容する軸筒は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる成形体が、インキの低蒸発性、生産性の面で好適に用いられる。
前記軸筒にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記軸筒とチップを連結してもよい。
前記軸筒内に収容されるインキ組成物は、粘度に応じて軸筒前部にインキ保留部材を装着し、軸筒内に直接インキ組成物を収容する方法と、多孔質体或いは繊維加工体に前記インキ組成物を含浸させて収容する方法を用いることもできる。
【0022】
更に、前記軸筒として透明、着色透明、或いは半透明の成形体を用いることにより、インキ色やインキ残量等を確認できる。
尚、前記軸筒は、ボールペン用レフィルの形態として、前記レフィルを外軸内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
【0023】
前記軸筒を用いたボールペンは、キャップ式、出没式のいずれの形態であっても適用できる。出没式ボールペンとしては、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で外軸内に収納されており、出没機構の作動によって外軸開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
前記ノック式は、外軸後端部や外軸側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記回転式は、外軸に回転部(後軸等)を有し、該回転部を回すことによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成、或いは、外軸に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンレフィルの筆記先端部を外軸前端開口部から出没させる構成を例示できる。
尚、前記出没式ボールペンは、外軸内に一本のボールペンレフィルを収容したもの以外に、複数のボールペンレフィルを収容してなる複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。また、前記ボールペンレフィルを構成するインキ収容管は樹脂製であってもよいし、金属製であってもよい。
【0024】
前記ボールペンレフィルに収容したインキの後端にはインキ逆流防止体(液栓)を配することもできる。
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド、脂肪酸デキストリン等を添加することもできる。また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することも可能である。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の表に実施例及び比較例のボールペン用油性インキの組成を示す。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)保土ヶ谷化学工業(株)製、商品名:スピロンブラックGMH−S
(2)オリエント化学工業(株)製、商品名:バリファストバイオレット1701
(3)オリエント化学工業(株)製、商品名:バリファストブルー1621
(4)顔料分散剤、積水化学工業(株)製、商品名:エスレックBL−10
(5)日油(株)製、商品名:ナイミーンL207
(6)日立化成工業(株)製、商品名:ハイラック110H
(7)ISPJapan(株)製、商品名:K−90
(8)1−(2−エチルへキシルアミノメチル)ベンゾトリアゾール
(9)1−〔N,N−ビス(2−エチルへキシル)アミノメチル〕ベンゾトリアゾール
(10)1−〔N,N−ビス(2−エチルへキシル)アミノメチル〕メチルベンゾトリアゾール
【0028】
インキの調製
有機溶剤に各成分を添加して、60℃で、ディスパーにて400rpm、3時間攪拌することで各インキを調製した。
【0029】
ボールペンレフィルの作製
直径0.7mmの超硬ボールを回転可能に抱持した洋白製切削チップ(PREMEC社製、code.2383)をポリプロピレン製パイプの先端部に接続したインキ収容筒内に、前記実施例及び比較例で得られる油性インキを充填することでボールペンレフィルを得た。
【0030】
前記ボールペンレフィルを横置きで20℃にて3年間静置した後、該ボールペンレフィルを用いて以下の試験を行った。
【0031】
筆記試験
筆記可能であることを確認した各ボールペンレフィルを、パイロットコーポレーション社製スーパーグリップの外装に組み付けてボールペンとした後、JIS P3201筆記用紙Aに手書きで螺旋状の丸を連続筆記した際の筆感を確認した。
【0032】
腐食試験
各ボールペンレフィルのチップから、ボールを前方向に引き抜いた後、マイクロスコープを用いて200倍及び1000倍にてチップのボール受け座部分を観察した。
【0033】
試験結果を以下の表に示す。
【表2】
【0034】
尚、試験結果の評価の記号の内容は以下のとおり。
筆記試験
○:滑らかな筆感が安定して得られる。
×:ゴロゴロした筆感である、または筆感が重たい。
腐食試験
○:金属光沢があり、腐食部分は認められない。
×:金属光沢が失われている、更に腐食部分が見られる。