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特開2016-210842加水燃料油、加水燃料油製造装置および加水燃料油の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-210842(P2016-210842A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】加水燃料油、加水燃料油製造装置および加水燃料油の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/32 20060101AFI20161118BHJP
【FI】
   C10L1/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-93242(P2015-93242)
(22)【出願日】2015年4月30日
(71)【出願人】
【識別番号】510208240
【氏名又は名称】デア・ジャパン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515118069
【氏名又は名称】東 悠斗
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】浅川 員司
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013AA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】装置のメンテナンスが容易であると共に、界面活性剤などを使用しなくとも燃料油と水が分離しにくく、内燃機関に対して悪影響を及ぼすことがない加水燃料油を製造できる装置を提供する。
【解決手段】加水燃料油製造装置Aは、水から不純物を除去しクラスターを微細化して機能水を精製する機能水精製部A1と、排液部を有する一次撹拌タンク1と、このタンク内に機能水を噴霧供給する送水管11および噴霧器110と、排液管を有すると共に、内部に炭酸ガス噴射管13が導入されている二次撹拌タンク12がある。更に、油水混合液を一次撹拌タンク1から導出して、錫触媒のある混合系改質器25を経由後、二次撹拌タンク12に循環させる混合液循環部200。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水から不純物を除去し、クラスターを微細化して機能水を精製する機能水精製部と、
排液部を有する一次撹拌タンクと、
該一次撹拌タンク内に機能水を噴霧しながら供給する機能水供給部と、
前記一次撹拌タンク内に配され、排液部を有すると共に、内部に炭酸ガス噴射管が導入されている二次撹拌タンクと、
前記一次撹拌タンクの排液部から導出され前記二次撹拌タンクへ戻ると共に、錫触媒処理部を通る送液路を有し、燃料油と水の混合液を、前記一次撹拌タンク、前記送液路、前記二次撹拌タンクの順で循環させる混合液循環部と、
前記一次撹拌タンクまたは前記混合液循環部の前記送液路から油水混合液を回収可能な回収部とを備える
加水燃料油製造装置。
【請求項2】
前記機能水精製部が、
水を貯溜する第1の貯溜タンクと、
該第1のタンクに貯溜した水を逆浸透膜、またはイオン交換樹脂で処理する不純物除去部と、
該不純物除去部で不純物を除去した水を貯溜する第2の貯溜タンクと、
該第2の貯溜タンク内に配置してあるマイクロ・ナノバブル発生装置と、
前記第2の貯溜タンクから導出され前記第2の貯溜タンクへ戻ると共に、希少鉱物触媒処理部およびセラミックス処理部を通る送水路を有し、前記第2の貯溜タンク内の水を前記第2の貯溜タンク、前記送水路の順で循環させる水循環部とを有する
請求項1の加水燃料油製造装置。
【請求項3】
前記マイクロ・ナノバブル発生装置にバブリングガスとして酸素を送る酸素供給部を有する、
請求項2の加水燃料油製造装置。
【請求項4】
不純物を除去しクラスターを微細化した水の酸素含有量を過飽和状態まで増やし、この水を希少鉱物触媒処理部およびセラミックス処理部に通し処理して精製した機能水を、一次撹拌タンク内に収容した燃料油に噴霧し、この燃料油と機能水を前記一次撹拌タンクから、錫触媒処理部を通る送液路、前記一次撹拌タンク内に配された二次撹拌タンクの順で循環させて所要時間撹拌し、生成されたミセル状の油水混合液を油水分離して得られた
加水燃料油。
【請求項5】
水の不純物を除去し、クラスターを微細化した機能水を精製する工程と、
一次撹拌タンク内に収容した所要量の燃料油に前記機能水を噴霧する工程と、
前記一次撹拌タンクから、錫触媒処理部を通る送液路、前記一次撹拌タンク内に配された二次撹拌タンクの順で循環させて所要時間撹拌する工程と、
前記循環経路において燃料油と機能水の混合液が前記一次撹拌タンク内に入る前に、前記二次撹拌タンク内で炭酸ガスによりバブリングして前記一次撹拌タンク内に入れる工程と、
燃料油と機能水を混合した油水混合液の循環による撹拌を所要時間継続してミセル状の油水混合液をつくる工程と、
前記ミセル状の油水混合液を、油水分離器により加水燃料油と水に分離する工程とを備える
加水燃料油の製造方法。
【請求項6】
前記機能水を精製する工程が、
水の不純物を除去する工程と、
不純物を除去した水を所要量貯水し、貯水した水を所要温度まで加温する工程と、
該加温した水をマイクロ・ナノバブル発生装置により酸素を入れて所要時間バブリングする工程と、
該バブリングした水を、希少鉱物触媒処理部、およびセラミックス処理部に所要の時間通水、循環させて機能水をつくる工程とを有する
請求項5の加水燃料油の製造方法。
【請求項7】
前記機能水を精製する工程において、バブリングした水を、希少鉱物触媒処理部、および前記セラミックス処理部に所要の時間通水、循環させる際に、水に所要量の酸素を混ぜる
請求項5または6の加水燃料油の製造方法。
【請求項8】
製造された加水燃料油を順次原料の燃料油として、請求項5の加水燃料の製造方法を複数回繰り返す
加水燃料油の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水燃料油、加水燃料油製造装置および加水燃料油の製造方法に関するものである。更に詳しくは、燃料油と水を混合、撹拌する部分では、比較的容易に手に入る一般的な装置を使用できるようにすることにより製造装置のメンテナンスが容易であると共に、界面活性剤などの添加物は使用せず、製造後、時間が経過しても燃料油と水が分離しにくく、内燃機関に対して悪影響を及ぼすことがない加水燃料油、加水燃料油製造装置および加水燃料油の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染などの地球環境問題の一対策として、または資源の有効活用のための一対策として、エマルジョン燃料(加水燃料)が注目されている。エマルジョン燃料は、重油、灯油、軽油などの燃料油に所要量の水と界面活性剤を添加し、機械的に撹拌して、燃料油中に水を細かく分散させた燃料である。エマルジョン燃料は、例えばボイラー用の燃料として、あるいは船舶や作業機械のディーゼルエンジン用の燃料として使用され、燃料の使用量の削減や炭酸ガスの削減に寄与できるものとされている。
【0003】
このようなエマルジョン燃料は、様々な方法で製造可能であり、例えば、(a)界面活性剤などの添加剤を加えて燃料油に加水する技術(一例として、特許文献1)、(b)超音波により燃料油に加水する技術(一例として、特許文献2)、あるいは(c)燃料油と水を同時に噴霧して燃料油に加水する技術(一例として、特許文献3)などの技術で製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−107170号公報
【特許文献2】特開2009−191261号公報
【特許文献3】特開2010−174212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のエマルジョン燃料には、次のような課題があった。
まず、特許文献1に記載の界面活性剤を使用するエマルジョン燃料は、撹拌機など、一般的な装置で製造できる利点があるが、燃料油と水が次第に分離する現象が起こるため、最適な状態で使用するには、製造直後に使用する必要があった。近年では、多少、期間を延長できるものが出てきているが、分離現象は不可避であり、使い勝手がよくない。また、界面活性剤などの添加剤による内燃機関への悪い影響が懸念されるため、使用が敬遠される傾向もあった。
【0006】
特許文献2に記載の超音波を使用するエマルジョン燃料は、燃料油と水が超音波振動などの作用により、安定した燃料を連続的に作成することができる。しかし、エマルジョン燃料を製造するにあたり、超音波振動付与装置などの特別な装置や、それらの装置の制御を行う制御装置など、特殊で高度な装置を用意する必要があった。更に、特許文献2に記載のエマルジョン燃料は、界面活性剤などの添加剤も使用しており、特許文献1と同様の課題もあった。
【0007】
また、特許文献3に記載の同時噴霧によるエマルジョン燃料は、噴霧する事により加水される水が均一になるため、安定した燃焼効率のよい燃料をつくることができるが、燃料油と水を同時噴霧する際にノズルに目詰まりが起こらないようにするためのメンテナンスの煩雑さや、この煩雑さを解消するために特殊ノズルにする際のコストの問題などの課題があった。更に、特許文献3に記載のエマルジョン燃料は、各種添加剤も使用しており、特許文献1と同様の課題もあった。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、燃料油と水を混合、撹拌する部分では、比較的容易に手に入る一般的な装置を使用できるようにすることにより製造装置のメンテナンスが容易であると共に、界面活性剤などの添加物は使用せず、製造後、時間が経過しても燃料油と水が分離しにくく、内燃機関に対して悪影響を及ぼすことがない加水燃料油を製造できる加水燃料油、加水燃料油製造装置および加水燃料油の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、水から不純物を除去し、クラスターを微細化して機能水を精製する機能水精製部と、排液部を有する一次撹拌タンクと、一次撹拌タンク内に機能水を噴霧しながら供給する機能水供給部と、一次撹拌タンク内に配され、排液部を有すると共に、内部に炭酸ガス噴射管が導入されている二次撹拌タンクと、一次撹拌タンクの排液部から導出され二次撹拌タンクへ戻ると共に、錫触媒処理部を通る送液路を有し、燃料油と水の混合液を、一次撹拌タンク、送液路、二次撹拌タンクの順で循環させる混合液循環部と、一次撹拌タンクまたは混合液循環部の送液路から油水混合液を回収可能な回収部とを備える加水燃料油製造装置である。
【0010】
(2)本発明は、機能水精製部が、水を貯溜する第1の貯溜タンクと、第1のタンクに貯溜した水を逆浸透膜、またはイオン交換樹脂で処理する不純物除去部と、不純物除去部で不純物を除去した水を貯溜する第2の貯溜タンクと、第2の貯溜タンク内に配置してあるマイクロ・ナノバブル発生装置と、第2の貯溜タンクから導出され第2の貯溜タンクへ戻ると共に、希少鉱物触媒処理部およびセラミックス処理部を通る送水路を有し、第2の貯溜タンク内の水を第2の貯溜タンク、送水路の順で循環させる水循環部とを有する、上記(1)の発明に係る加水燃料油製造装置である。
【0011】
この場合は、第1の貯溜タンクに所要量の水を入れ、この水を不純物除去部の逆浸透膜、またはイオン交換樹脂により処理して純水または純水に近い水とする。この水を第2の貯溜タンクに入れてマイクロ・ナノバブル発生装置でバブリングし、水に酸素を多く取り込むようにする。
なお、マイクロ・ナノバブル発生装置で発生するバブルの直径は、例えば0.001〜0.05mmであるが、これに限定はされない。
【0012】
そして、バブリングにより水に酸素を取り込みながら、水循環部により水を第2の貯溜タンク、送水路の順で循環させ、送水路の経路中にある希少鉱物触媒処理部およびセラミックス処理部で繰り返し処理して、水のクラスターを微細化し、機能水を精製することができる。
【0013】
(3)本発明は、マイクロ・ナノバブル発生装置にバブリングガスとして酸素を送る酸素供給部を有する、上記(2)の発明に係る加水燃料油製造装置である。
【0014】
この場合は、油水混合液をつくっている機能水に含まれる酸素の量が増えて、最大では機能水のその温度における酸素の飽和量を超える過飽和状態まで含ませることができる。この機能水にて製造された加水燃料油は、燃焼性が向上したり総発熱量(総カロリー)が増えるなど、燃料油としての性能が上がる。
【0015】
(4)本発明は、不純物を除去しクラスターを微細化した水の酸素含有量を過飽和状態まで増やし、この水を希少鉱物触媒処理部およびセラミックス処理部に通し処理して精製した機能水を、一次撹拌タンク内に収容した燃料油に噴霧し、この燃料油と機能水を一次撹拌タンクから、錫触媒処理部を通る送液路、一次撹拌タンク内に配された二次撹拌タンクの順で循環させて所要時間撹拌し、生成されたミセル状の油水混合液を油水分離して得られた加水燃料油である。
【0016】
(5)本発明は、水の不純物を除去し、クラスターを微細化した機能水を精製する工程と、一次撹拌タンク内に収容した所要量の燃料油に機能水を噴霧する工程と、一次撹拌タンクから、錫触媒処理部を通る送液路、一次撹拌タンク内に配された二次撹拌タンクの順で循環させて所要時間撹拌する工程と、循環経路において燃料油と機能水の混合液が一次撹拌タンク内に入る前に、二次撹拌タンク内で炭酸ガスによりバブリングして一次撹拌タンク内に入れる工程と、燃料油と機能水を混合した油水混合液の循環による撹拌を所要時間継続してミセル状の油水混合液をつくる工程と、ミセル状の油水混合液を、油水分離器により加水燃料油と水に分離する工程とを備える加水燃料油の製造方法である。
【0017】
(6)本発明は、機能水を精製する工程が、水の不純物を除去する工程と、不純物を除去した水を所要量貯水し、貯水した水を所要温度まで加温する工程と、加温した水をマイクロ・ナノバブル発生装置により酸素を入れて所要時間バブリングする工程と、バブリングした水を、希少鉱物触媒処理部、およびセラミックス処理部に所要の時間通水、循環させて機能水をつくる工程とを有する、上記(5)の発明に係る加水燃料油の製造方法である。
【0018】
(7)本発明は、機能水を精製する工程において、バブリングした水を、希少鉱物触媒処理部、およびセラミックス処理部に所要の時間通水、循環させる際に、水に所要量の酸素を混ぜる、上記(5)または(6)の発明に係る加水燃料油の製造方法である。
【0019】
この場合は、油水混合液をつくっている燃料油と機能水に含まれる酸素の量が増えて、最大では酸素の過飽和状態まで含ませることができる。この機能水にて製造された加水燃料油は、燃焼性が向上したり総発熱量(総カロリー)が増えるなど、燃料油としての性能が上がる。
【0020】
(8)本発明は、製造された加水燃料油を順次原料の燃料油として、上記(5)の発明に係る加水燃料の製造方法を複数回繰り返す加水燃料油の製造方法である。
【0021】
この場合、製造される加水燃料油の量は、例えば加水燃料の製造方法を三回繰り返すことで、一回目の原料である燃料油の量と比較して15〜20%程度増える。また、燃料としての単位量当たりの総発熱量(総カロリー)も増える。なお、繰り返す回数は特に限定しないが、試行では、七回以上繰り返してもほとんど増量しなくなるので、費用対効果を考えれば、五回ないし六回が好ましい。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲にいう「機能水」の用語は、水道水などの水から、水に含まれる微細な異物(砂、微生物など)、塩類、あるいは残留塩素などの不純物を除去して純度の高い水(純水または純水に近い水)とし、更にクラスターを微細化した水の意味で使用している。
なお、「水のクラスター」とは、水の原子や分子が相互作用によって数個、数十個またはそれ以上結合したものをいう。
【0023】
(作用)
本発明の加水燃料油製造装置の作用を説明する。
機能水精製部によって、水道水などの水に含まれる微細な異物、塩類、あるいは残留塩素などの不純物を除去し、更にクラスターを微細化して機能水を精製する。
所要量の燃料油を一次撹拌タンクに入れ、一次撹拌タンク内の燃料油に機能水供給部によって所要量の機能水を噴霧する。
【0024】
混合液循環部によって、一次撹拌タンク内の燃料油と機能水を撹拌するように、一次撹拌タンク、送液路、二次撹拌タンク、戻って一次撹拌タンクの順で循環させる。油水混合液が循環する際には、送液路において錫触媒処理部によって処理される。また、二次撹拌タンクへ送られた油水混合液には、炭酸ガス噴射管から炭酸ガスが噴射されてバブリング(曝気)が行われる。
【0025】
バブリングが行なわれ、泡を生じた油水混合液は、二次撹拌タンクでオーバーフローによって、または排液部からの排出によって一次撹拌タンク内に入り、更に送液路へ送られ、上記と同様に循環する。この循環による撹拌作業を所要の時間行うことにより、油水混合液は充分に撹拌され、ミセル状(多数の分子またはイオンが集まってできる、溶媒との親和性の高いコロイド粒子状のもの、あるいは混じり合わない液体のうちの一方または両親媒性物質、またはその混合物の異なる分子が層状に分布しているもの)になる。
【0026】
循環している油水混合液が、所定のミセル状となったら、回収部からミセル状の油水混合液を回収して、本発明の加水燃料油を得る原液とする。なお、加水燃料油は、油水分離器により、燃料油と結合されていない水と、燃料油と機能水が結合された加水燃料油を分離することにより得られる。
【0027】
本発明の加水燃料油製造装置において使用される各機器は、特殊で高度なものではなく、ごく一般的な装置だけで構成されており、装置のメンテナンスが容易にできる。また、加水燃料油製造装置で製造される加水燃料油は、界面活性剤などの添加物は使用していないので、製造後、時間が経過しても燃料油と水が分離しにくく、長期にわたり内燃機関の燃料として支障なく使用できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、燃料油と水を混合、撹拌する部分では、比較的容易に手に入る一般的な装置を使用できるようにすることにより製造装置のメンテナンスが容易であると共に、界面活性剤などの添加物は使用しないので、製造後、時間が経過しても燃料油と水が分離しにくく、内燃機関に対して悪影響を及ぼすことがない加水燃料油、加水燃料油製造装置および加水燃料油の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る加水燃料油製造装置の構造を示し、主に加水燃料油製造装置を構成する油水撹拌部の構造を示す説明図である。
図2】本発明に係る加水燃料油製造装置を構成する機能水精製部の構造を示す説明図である。
図3】本発明に係る加水燃料の製造方法において、各工程の進行を経時的に説明した工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1図2を参照する。
【0031】
図1に示すように、加水燃料油製造装置Aは、水道水などの水を処理して不純物を除去すると共に、水のクラスターを微細化し、酸素含有量を過飽和状態まで増やす機能水精製部A1と、機能水精製部A1で精製された機能水と燃料油(軽油)を混合、撹拌してミセル状の油水混合液をつくる油水撹拌部A2を備えている。
【0032】
<機能水精製部A1>
機能水精製部A1で精製される水(機能水という)は、後述する油水撹拌部A2で燃料油と混合、撹拌される水として使用される。
【0033】
図2に示すように、機能水精製部A1は、第1の貯溜タンクである一次準備タンク4を有している。一次準備タンク4には、給水管40から水道水が供給される。一次準備タンク4からは送水管41が導出されて不純物除去部である逆浸透膜ユニット5に接続されている。送水管41の経路中には、プランジャーポンプ42が設けられ、逆浸透膜ユニット5に送る水に所定の圧力を付与できるようにしている。また、逆浸透膜ユニット5の代替としてイオン交換樹脂を採用することもできる。
【0034】
なお、逆浸透膜ユニット5は、逆浸透膜ユニット5で処理できなかった水を一次準備タンク4に戻す経路(図示省略)と、処理後の塩素などの不純物を含んだ水を排出する経路(図示省略)を備えている。逆浸透膜ユニット5から導出された送水管50は、第2の貯溜タンクである循環用貯水タンク6に導入されている。
【0035】
循環用貯水タンク6の底部には、マイクロ・ナノバブル発生装置60が配置されている。マイクロ・ナノバブル発生装置60には、循環用貯水タンク6の外部に配置されている送気ポンプ61から送気管62を介して酸素が送られる。送気ポンプ61には、酸素供給部を構成する酸素ボンベ63が送気管64を介し接続されている。これにより、循環用貯水タンク6内の水に酸素によるバブリングを行うことができる。
【0036】
循環用貯水タンク6において、マイクロ・ナノバブル発生装置60から遠い側の底部には、送水管70が接続されており、送水管70は希少鉱物触媒処理部である希少鉱物触媒装置7に接続されている。希少鉱物触媒装置7は、中空のケース78を有し、ケース78の内部には、石英ガラス製の透明な触媒容器71、72が並行して配置され、触媒容器71、72の内部には、希少鉱物触媒79が充填されている。
【0037】
触媒容器71、72の近傍には、触媒容器71に対してブラックライト710が配置され、触媒容器72に対して滅菌灯(殺菌灯)720が配置されている。希少鉱物触媒としては、例えば二酸化チタン、または二価鉄が採用されるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
ブラックライト710は、触媒容器71に対して長波長の紫外線を照射し、滅菌灯720は、触媒容器72に対して殺菌力を持つ紫外線を照射して、触媒容器71、72内の希少鉱物触媒79の触媒作用を高めることができる。触媒容器71、72において、一方の触媒容器71の基端部には、上記送水管70が接続されている。送水管70の経路中には、循環用ポンプ73が設けられている。
【0039】
また、他方の触媒容器72の基端部には、送水管74が導出され、送水管74の先端側は、上記循環用貯水タンク6に導入されている。触媒容器71、72の先端部は、接続管75で接続されている。また、送水管74の経路中には、セラミックス処理部である水改質器76が設けられている。水改質器76は、中空容器の内部に多孔質のセラミックス粒を充填した構造である。
【0040】
循環用貯水タンク6内の水は、投げ込みヒーター8(便宜上、図2に図示)などを使用して所要の温度に加温することができる。なお、循環用貯水タンク6、送水管70、循環用ポンプ73、希少鉱物触媒装置7、送水管74および水改質器76は、水循環部700を構成している。
【0041】
<油水撹拌部A2>
図1に示すように、油水撹拌部A2は、一次撹拌タンク1を備えている。一次撹拌タンク1は、上部側が上開口円筒形状で、下部側が漏斗状に形成されたタンク本体10を有している。タンク本体10には、機能水を供給する機能水供給部である送水管11の先端部が導入されている。送水管11の先端部には、機能水を噴霧する噴霧器110が取り付けられている。なお、機能水精製部A1の循環用貯水タンク6につながる送水管11の経路中には、モーターポンプ19が設けられている。
【0042】
タンク本体10の底部中心部には、下方へ向け排液管100が設けられている。排液管100は、送液管21の中間部に接続されている。送液管21の基端部は、プランジャーポンプ2の吸引側に接続されており、送液管21の先端部には、回収部である排出バルブ22が設けられている。なお、排出バルブ22を閉じることで、排液管100を通る排液(撹拌された混合液)は、プランジャーポンプ2で吸引され、プランジャーポンプ2を停止し、排出バルブ22を開けることで、完成品(ミセル状の油水混合液)として回収することができる。
【0043】
プランジャーポンプ2の排出側には、送液管23が接続され、送液管23の先端側は、後述する二次撹拌タンク12の上方に位置しており、送液管23の先端部には圧力調整バルブ24が設けられている。また、送液管23の経路中には、鉱石触媒を内蔵した混合液改質器25が設けられている。混合液改質器25は、中空容器の内部に粒状の錫触媒250を適量充填した構造である。
【0044】
一次撹拌タンク1の内部の上部側には、二次撹拌タンク12が上記タンク本体10の上部の円筒形状部の内壁に固定して配されている。二次撹拌タンク12は、上部側が上部開口円筒形状で、下部側が漏斗状に形成されており、底部中心部には、排液管120が設けられている。排液管120の先端とタンク本体10の下部の漏斗状部の内面との間には、隙間(符号省略)が設けられており、排液が円滑にできるようにしている。
【0045】
また、二次撹拌タンク12には、送液管23と共に、炭酸ガス噴射管13が導入されている。炭酸ガス噴射管13には、送気管30の一端が接続され、送気管30の他端は炭酸ガスボンベ3に接続されている。炭酸ガス噴射管13は、循環しながら二次撹拌タンク12に溜まる油水混合液を炭酸ガス(二酸化炭素ガス)でバブリング(曝気)するものである。なお、一次撹拌タンク1、送液管21、プランジャーポンプ2、送液管23、混合液改質器25、二次撹拌タンク12は、混合液循環部200を構成する。
【0046】
図1ないし図3を参照し、本発明の加水燃料油の製造方法と共に、加水燃料油製造装置Aの作用を説明する。
また、室内環境準備として、環境温度(室温)を30℃〜38℃、湿度30%前後に整える。この環境は、この室温、および湿度に限定するものではなく、適宜設定することが可能である。
【0047】
加水燃料油は、機能水を精製した後、燃料油と機能水とを混合、撹拌してミセル状の油水混合液をつくり、これを油水分離器で分離して得られる。
【0048】
<A.機能水の精製>
図2を参照する。
(1)一時準備タンク4に貯溜した水道水をプランジャーポンプ42で逆浸透膜ユニット5に所要の圧力で圧送して通し、不純物を除去する。また、逆浸透膜でなく、イオン交換樹脂(陰・陽)に通す時には、まず不織布フィルターにて錆などの不純物を除去し、活性炭に通して残留塩素を除去した後、通水を行うようにする。
【0049】
(2)不純物を除去した水を循環用貯水タンク6に所要量(例えば100L程度)貯水し、貯水した水を、投げ込みヒーター8などにより30℃〜32℃程度まで加温する。なお、環境温度がその温度に近ければ、ヒーターを使用せず、環境温度にて行うこともできる。
【0050】
(3)所定の温度まで加温した水をマイクロ・ナノバブル発生装置60により、所要時間(例えば5〜100(L)の場合で1〜2時間程度)バブリングを行う。このバブリングの時間は、水の量によって適宜設定できる。なお、マイクロ・ナノバブル発生装置60のエアポンプには、酸素ボンベ63から酸素(酸素濃度99.5%)を送り込むようにし、水に酸素以外の気体を極力含有させないようにする。
【0051】
(4)バブリングした水を、循環用ポンプ73によって、希少鉱物触媒装置7の紫外線を照射した希少鉱物触媒79、および水改質器76のセラミックスに30〜40分間通水、循環させて処理する。光触媒である希少鉱物触媒79は、二酸化チタン、二価鉄などを混合した粒状物であり、これに水を通すことで水に活性酸素種が発生し、また、多孔質のセラミックスに通すことでクラスターを微細化できる。なお、上記30〜40分間の通水により、水のpHが7前後になる。
【0052】
なお、水循環部700において、循環する水に酸素(酸素濃度99.5%)を適量含ませて一緒に循環させるようにする。これにより、機能水の含酸素量を増やして、最大で酸素を過飽和状態で含ませることができる。
【0053】
(5)上記工程を経ることにより、水の不純物を除去し、更に水のクラスターを微細化すると共に、酸素を過飽和状態で含んだ機能水を精製することができる。
【0054】
<B.燃料油と機能水の混合、撹拌>
図3をあわせて参照する。
(1)図3の時間軸T0において、先の方法で精製した機能水と燃料油(軽油)を、それぞれ2.5(L)ずつ用意する。燃料油はあらかじめ湯せんしておき、温度を機能水の温度(例えば32℃)と合わせるようにする。なお、機能水と燃料油の量は、上記に限定せず、装置の規模に合わせて適宜設定できる。また、機能水と燃料油の量の比も上記1:1に限定せず、適宜設定が可能である。
【0055】
(2)一次撹拌タンク1の中に先に2.5(L)の燃料油を入れ、プランジャーポンプ2の電源をONにして燃料油を循環させる。そして、プランジャーポンプ2の吐出圧力の圧力調整をして、圧力調整バルブ24において、混合、撹拌時に1.0MPaになるように、プランジャーポンプ2の圧力を例えば0.7MPaに設定する。これにより、上記条件下においては、短時間で効果的な撹拌が可能になり、所定のミセル状の油水混合液がより短時間で得られる。
【0056】
なお、油水混合液の流れの圧力が1.0MPaに満たない場合は、撹拌効率に劣り、より長い時間撹拌を行っても所定のミセル状の油水混合液が得にくい傾向がある。また、油水混合液の流れの圧力が1.0MPaを超える場合は、撹拌が短時間でできても、圧力が強すぎて所定のミセル状の油水混合液が得にくい傾向がある。また、プランジャーポンプ2の圧力の好適な設定値は、機能水と燃料油の量の違いなど、各種条件により異なる場合があり、その際は適宜調整される。
そして、プランジャーポンプ2の圧力調整後は、プランジャーポンプ2の電源をOFFにする。
【0057】
(3)機能水は、例えば容器(図示省略)に入れておき、送水管11の吸い込み側の端部をセットしておく。また、炭酸ガス噴射管13から噴射される炭酸ガスの量は、例えば3L/minというように、あらかじめ設定しておく。炭酸ガスの噴射量と噴射時間は、例えば油水混合液の量(燃料油と機能水を合わせた量)によって適宜調整することができる。
【0058】
(4)図3の時間軸T1において、プランジャーポンプ2の電源をONにして、燃料油の撹拌を開始する。同時に、モーターポンプ19の電源をONにして、一次撹拌タンク1内において、燃料油に対して送水管11の噴霧器110から機能水を噴霧して供給し混合する。
【0059】
(5)図3の時間軸T2において、機能水の噴霧が全量終了したら、モーターポンプ19の電源をOFFにする。なお、プランジャーポンプ2による油水混合液の循環は継続されている。
【0060】
(6)同時に、炭酸ガス噴射管13の先端の噴射口から炭酸ガスを噴射し、二次撹拌タンク12において、循環する油水混合液に対して、炭酸ガスによるバブリングを開始し、所要時間(例えば30秒間)継続する。また、燃料油と機能水を混合した油水混合液の温度が環境温度より下がらないように、一次撹拌タンク1内の温度調整を行うようにする。
【0061】
(7)燃料油と機能水を混合した油水混合液が循環し撹拌される際には、送液管23の経路中にある混合液改質器25の錫触媒250(純度99.99%)を通過し、更に二次撹拌タンクにて油水混合液が上記バブリングにより混合、撹拌されて次第にミセル状になる。なお、炭酸ガスによるバブリングは、特に撹拌初期において行うのがよい。そして、ミセル状となった油水混合液は、二次撹拌タンク12の上部よりオーバーフローして、例えば滝のような状態にて流れ落ち、一部は排液管120から一次撹拌タンク1に排出される。
【0062】
(8)上記撹拌は、図3の時間軸T3のバブリング終了後も継続され、撹拌開始から所要時間(燃料油と機能水の合計が5(L)なら5分間程度)にて終了する。撹拌時間は油水混合液の量によって適宜調整することができる。なお、時間軸T1から時間軸T4までの撹拌時間は、15分間程度であるが、これに限定はされない。
【0063】
(9)図3の時間軸T4の撹拌終了後においては、加水燃料油を得る原液となるミセル状の油水混合液ができる。そして、プランジャーポンプ2の電源をOFFにし、排出バルブ22を開けてミセル状の油水混合液を容器に取り出し、容器を24時間、水槽につけて保管する。水槽の水の温度は例えば35℃とする。水の温度、および水槽につける時間は、上記に限定されず、適宜設定することができる。
【0064】
(10)容器に入ったミセル状の油水混合液を24時間保管したあと、水槽から取り出す。
【0065】
(11)水槽から取り出したミセル状の油水混合液を油水分離器(図示省略)で、燃料油と結合されなかった機能水と、燃料油と機能水が結合された加水燃料油に分離し、加水燃料油を得る。
なお、加水燃料油には、一回目の撹拌の原料となった燃料油と比べて8%程度の加水燃料油の量の増加が見られた。
【0066】
(12)以下、できた加水燃料油を順次上記手順における原料となる燃料油として使用し、上記と同じ手順を複数回繰り返した。例えば、上記手順を三回繰り返すことにより、一回目の撹拌の原料となった燃料油と比べて20%程度の加水燃料油の量の増加が見られた。
【0067】
また、表1、および表2に示すように、量が増加した加水燃料油(表1では新油と表記)の成分や特性の検査を行ったところ、全て軽油相当のJIS規格に入っていることが確認された。更に、表1に示すように単位量あたりの総発熱量(総カロリー)の若干の増加も見られた。
【0068】
なお、表1は一回目の撹拌の原料となった燃料油と、二回目の撹拌作業終了で得られた加水燃料油の成分と特性を比較したデータであり、表2は、表1の加水燃料油とは別に製造され、三回目の撹拌作業終了で得られた加水燃料油の成分と特性を表したデータである。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
なお、加水燃料油製造装置Aにおいて使用される各機器は、特殊で高度なものではなく、ごく一般的な装置だけで構成されており、装置のメンテナンスが容易にできる。また、加水燃料油製造装置Aで製造される加水燃料油は、界面活性剤などの添加物は使用していないので、製造後、時間が経過しても燃料油と水が分離しにくく、長期にわたり内燃機関の燃料として支障なく使用できる。
【0072】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
A 加水燃料油製造装置
A1 機能水精製部
4 一次準備タンク
40 給水管
41 送水管
42 プランジャーポンプ
5 逆浸透膜ユニット
50 送水管
6 循環用貯水タンク
60 マイクロ・ナノバブル発生装置
61 送気ポンプ
62 送気管
63 酸素ボンベ
64 送気管
7 希少鉱物触媒装置
70 送水管
71、72 触媒容器
710 ブラックライト
720 滅菌灯
73 循環用ポンプ
74 送水管
75 接続管
76 水改質器
78 中空のケース
79 希少鉱物触媒
700 水循環部
8 投げ込みヒーター
A2 油水撹拌部
1 一次撹拌タンク
10 タンク本体
100 排液管
11 送水管
110 噴霧器
12 二次撹拌タンク
120 排液管
13 炭酸ガス噴射管
19 モーターポンプ
2 プランジャーポンプ
21 送液管
22 排出バルブ
23 送液管
24 圧力調整バルブ
25 混合液改質器
250 錫触媒
200 混合液循環部
3 炭酸ガスボンベ
30 送気管
図1
図2
図3