(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-211058(P2016-211058A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】多孔金属板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23F 1/02 20060101AFI20161118BHJP
C23F 1/26 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
C23F1/02
C23F1/26
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-97659(P2015-97659)
(22)【出願日】2015年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】599009363
【氏名又は名称】三愛プラント工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502140204
【氏名又は名称】大森 整
(71)【出願人】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100172797
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 昌広
(72)【発明者】
【氏名】塩野入 正和
(72)【発明者】
【氏名】大森 整
(72)【発明者】
【氏名】山本 節夫
(72)【発明者】
【氏名】栗巣 普揮
【テーマコード(参考)】
4K057
【Fターム(参考)】
4K057WA11
4K057WB08
4K057WC08
4K057WE02
4K057WE03
4K057WE04
4K057WE07
4K057WE08
(57)【要約】
【課題】ミクロンオーダーの貫通孔を、必要とされる配列パターンに応じて高密度に形成でき、金属板の変質及び生産コストを抑制して大面積の金属板へ貫通孔を形成できる多孔金属板の製造方法を提供することにある。また、ミクロンオーダーの貫通孔が高密度に形成され、貫通孔形成に伴う金属板の変質が抑制された多孔金属板を提供することにある。
【解決手段】金属板の表面に、耐酸性保護膜の多孔パターンを形成し、無機酸を含むエッチング液で前記多孔パターンが形成された金属板を化学エッチング処理することにより、前記金属板に孔径が1〜100μmの貫通孔を形成することを特徴とする多孔金属板の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の表面に、耐酸性保護膜の多孔パターンを形成し、無機酸を含むエッチング液で前記多孔パターンが形成された金属板を化学エッチング処理することにより、前記金属板に孔径が1〜100μmの貫通孔を形成することを特徴とする多孔金属板の製造方法。
【請求項2】
金属板が、チタニウム製又はチタニウム合金製の金属板であることを特徴とする請求項1記載の多孔金属板の製造方法。
【請求項3】
エッチング液が、リン酸及び硫酸から選ばれる少なくとも一種、フッ酸並びに硝酸を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の多孔金属板の製造方法。
【請求項4】
エッチング液が、塩酸を含むことを特徴とする請求項3記載の多孔金属板の製造方法。
【請求項5】
エッチング液が、エッチング液全体に対する重量比で、フッ酸を3〜15%、硝酸を5〜25%含み、リン酸及び硫酸のどちらか一方を含む場合は、リン酸又は硫酸を30〜70%含み、リン酸及び硫酸の両方を含む場合は、リン酸と硫酸を合計で30〜70%含むことを特徴とする請求項3記載の多孔金属板の製造方法。
【請求項6】
エッチング液が、エッチング液全体に対する重量比で、塩酸を0.01〜15%含むことを特徴とする請求項4又は5記載の多孔金属板の製造方法。
【請求項7】
多孔パターンが、フォトリソグラフ法、インクジェット法、スーパーインクジェット法、ナノインプリント法又は印刷法により形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の多孔金属板の製造方法。
【請求項8】
隣接する貫通孔の中心間距離が4〜300μmである貫通孔を形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の多孔金属板の製造方法。
【請求項9】
複数の貫通孔が形成された多孔金属板であって、前記貫通孔は、耐酸性保護膜の多孔パターンを表面に形成した金属板を、無機酸を含むエッチング液で化学エッチング処理することにより形成され、孔径が1〜100μmであり、隣接する前記貫通孔の中心間距離が4〜300μmであることを特徴とする多孔金属板。
【請求項10】
金属板が、チタニウム製又はチタニウム合金製の金属板であることを特徴とする請求項9記載の多孔金属板の製造方法。
【請求項11】
貫通孔の孔径が金属板の一方の面から他方の面に向けて漸減していることを特徴とする請求項9又は10記載の多孔金属板。
【請求項12】
貫通孔の形成に伴う残留応力及び熱による変質がないことを特徴とする請求項9〜11のいずれか記載の多孔金属板。
【請求項13】
厚さが2〜100μmであることを特徴とする請求項9〜12のいずれか記載の多孔金属板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔金属板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属板(金属プレート)に多数の微細な貫通孔を形成したものが、医療用バリアメンブレンや生体情報計測のためのインプラント(埋入)用デバイス、化学プラント用フィルター、電池用フィルター等、医療、電池、化学、航空宇宙等の各種分野で注目されている。なかでも、チタニウムやチタニウム合金は生体親和性や耐食性に優れるとともに軽量かつ高強度であるため、医療用インプラント(埋入)材料、化学機器やフィルター用材料、航空宇宙用材料等として広い分野で注目を集めている。しかしながら、チタニウムやチタニウム合金は難加工性材料として知られており、特に微細加工が困難である。チタニウムやチタニウム合金等の金属材料に微細な貫通孔を形成する方法としては、軸径の非常に細いパンチで貫通孔をあける方法(特許文献1)、レーザー光の照射による方法(特許文献2)、エチレングリコールとアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含む電解液を用いた電解エッチングによる方法(特許文献3)等が提案されているが、これらの方法には以下の問題があった。
【0003】
機械加工である微細パンチによる精密プレス加工は金型の作製自体が非常に困難であり、貫通孔の縁にささくれが生じやすい。同じく機械加工であるマイクロドリル等の微細加工用切削工具を使用する方法は、一孔ずつ貫通孔を開けるため非常に時間がかかるとともに、貫通孔の縁にささくれが生じやすい。さらに切削工具の作製自体が非常に困難であるだけでなく、加工対象金属が切削工具へ溶着するため切削工具の寿命が短く、金属板への貫通孔の安定的な作製は困難であり、貫通孔の作製に関するコストも大きい。また、機械的な加工方法は、加工時に加えた力により金属板に残留応力が発生するため、加工後に時間経過に伴う多孔金属板の形状変化や耐食性の低下が生じる。レーザー、電子ビーム、プラズマ等を使用するドライエッチングによる方法は、熱による金属板の変質を完全に防ぐことができないため、加工により金属材料の特性が劣化し、多孔金属板の耐食性が悪化する。また、これらドライエッチングによる方法も高価な製造設備が必要となり生産コスト及び生産時間が増大する。電解エッチングによる方法は、保護膜による多孔パターンを金属板表面に形成して、保護膜のない部分(孔部)を電解エッチングして貫通孔を形成する方法であるが、金属露出面積が小さいため高電圧が必要となり多孔パターン保護膜の破壊が生じやすいほか、超音波を付与して電解液を攪拌する必要があるため、超音波の付与により電解液温度の制御が困難となる。
さらに、電解液に高濃度のエチレングリコールを含むため、保護膜にレジストを使用した場合、保護膜が溶解してしまい、高精度の加工が困難である。一方、金属材料に対する他の加工方法として化学エッチングによる方法があるが、化学エッチングでチタニウムやチタニウム合金をはじめとする様々な金属に、100μm以下の微細な貫通孔を高密度で形成することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−142831号公報
【特許文献2】特開2013−179967号公報
【特許文献3】特開2007−186776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ミクロンオーダーの貫通孔を、必要とされる配列パターンに応じて高密度に形成でき、金属板の変質及び生産コストを抑制して大面積の金属板へ貫通孔を形成できる多孔金属板の製造方法を提供することにある。また、ミクロンオーダーの貫通孔が高密度に形成され、貫通孔形成に伴う金属板の変質が抑制された多孔金属板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、金属板に孔径が1〜100μmというミクロンオーダーの貫通孔を高密度で安価に金属板の特性を損なうことなく形成することを目指して検討を開始した。本発明者らは、従来、金属板の表面部分の洗浄や凹凸形成のためのエッチングに使用されることが多く、ミクロンオーダーの貫通孔の形成への検討が行われていなかった化学エッチングについて検討を進めたところ、金属板の表面に、耐酸性保護膜の多孔パターンを形成し、前記多孔パターンが形成された金属板を、無機酸を含むエッチング液で化学エッチング処理することにより、化学エッチングであってもミクロンオーダーの微細な貫通孔を高密度で金属板に形成できることを見いだし、さらに難加工性材料であるチタニウム又はチタニウム合金に対しても適用可能であることを見い出したものである。
【0007】
すなわち、本発明は以下に示す事項により特定されるものである。
(1)金属板の表面に、耐酸性保護膜の多孔パターンを形成し、無機酸を含むエッチング液で前記多孔パターンが形成された金属板を化学エッチング処理することにより、前記金属板に孔径が1〜100μmの貫通孔を形成することを特徴とする多孔金属板の製造方法。
(2)金属板が、チタニウム製又はチタニウム合金製の金属板であることを特徴とする上記(1)記載の多孔金属板の製造方法。
(3)エッチング液が、リン酸及び硫酸から選ばれる少なくとも一種、フッ酸並びに硝酸を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)記載の多孔金属板の製造方法。
(4)エッチング液が、塩酸を含むことを特徴とする上記(3)記載の多孔金属板の製造方法。
(5)エッチング液が、エッチング液全体に対する重量比で、フッ酸を3〜15%、硝酸を5〜25%含み、リン酸及び硫酸のどちらか一方を含む場合は、リン酸又は硫酸を30〜70%含み、リン酸及び硫酸の両方を含む場合は、リン酸と硫酸を合計で30〜70%含むことを特徴とする上記(3)記載の多孔金属板の製造方法。
(6)エッチング液が、エッチング液全体に対する重量比で、塩酸を0.01〜15%含むことを特徴とする上記(4)又は(5)記載の多孔金属板の製造方法。
(7)多孔パターンが、フォトリソグラフ法、インクジェット法、スーパーインクジェット法、ナノインプリント法又は印刷法により形成されることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか記載の多孔金属板の製造方法。
(8)隣接する貫通孔の中心間距離が4〜300μmである貫通孔を形成することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか記載の多孔金属板の製造方法。
(9)複数の貫通孔が形成された多孔金属板であって、前記貫通孔は、耐酸性保護膜の多孔パターンを表面に形成した金属板を、無機酸を含むエッチング液で化学エッチング処理することにより形成され、孔径が1〜100μmであり、隣接する前記貫通孔の中心間距離が4〜300μmであることを特徴とする多孔金属板。
(10)金属板が、チタニウム製又はチタニウム合金製の金属板であることを特徴とする上記(9)記載の多孔金属板の製造方法。
(11)貫通孔の孔径が金属板の一方の面から他方の面に向けて漸減していることを特徴とする上記(9)又は(10)記載の多孔金属板。
(12)貫通孔の形成に伴う残留応力及び熱による変質がないことを特徴とする上記(9)〜(11)のいずれか記載の多孔金属板。
(13)厚さが2〜100μmであることを特徴とする上記(9)〜(12)のいずれか記載の多孔金属板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、孔径が1〜100μmというミクロンオーダーの貫通孔を、金属板に残留応力の発生や熱の影響を与えずに、必要とされる配列パターンに応じて高密度に金属板に形成することができ、生産コストを抑制して大面積の金属板への適用が可能である多孔金属板の製造方法を提供することができる。また、本発明によると、孔径が1〜100μmというミクロンオーダーの貫通孔が、高密度に金属板に形成され、貫通孔の形成に伴う残留応力や熱による変質のない多孔金属板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の多孔金属板の製造方法の一実施形態を示す製造工程の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の多孔金属板の製造方法の他の実施形態を示す製造工程の概略図である。
【
図3】
図3は、実施例1での化学エッチング後のチタニウム板をエッチング面から観察した走査電子顕微鏡像である。
【
図4】
図4は、実施例1での化学エッチング後のチタニウム板をエッチング面と反対側の面から観察した走査電子顕微鏡像である。
【
図5】
図5は、実施例2での化学エッチング後のチタニウム板をエッチング面から観察した走査電子顕微鏡像である。
【
図6】
図6は、実施例2での化学エッチング後のチタニウム板をエッチング面と反対側の面から観察した走査電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の多孔金属板の製造方法は、金属板の表面に、耐酸性保護膜の多孔パターンを形成し、無機酸を含むエッチング液で前記多孔パターンが形成された金属板を化学エッチング処理することにより、前記金属板に孔径が1〜100μmの貫通孔を形成することを特徴とする。本発明の製造方法における金属板は、特に限定されるものではないが、金属板を構成する金属としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、チタニウム、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、タンタル、これらの合金等を挙げることができる。金属板の厚さは、特に限定されるものではないが、本発明の製造方法によると、例えば、厚さが2〜100μm、あるいは2〜50μm、あるいは2〜30μmという薄い金属板に孔径が1〜100μmというミクロンサイズの微細な貫通孔を高密度に形成することができ、孔径が1〜50μm、あるいは1〜30μmという微細な貫通孔を高密度に形成することができる。本発明の製造方法は、生体親和性及び耐食性に優れ、生体インプラント(埋入)デバイス等の医療用途や化学プラント用フィルター等の化学用途など様々な用途への利用が可能であるが、難加工性の金属材料でありミクロンサイズの貫通孔の形成が難しいチタニウム又はチタニウム合金製の金属板においても、例えば、厚さが2〜100μm、あるいは2〜50μm、あるいは2〜30μmという厚さのチタニウム又はチタニウム合金製の金属板に、孔径が1〜100μm、あるいは1〜50μm、あるいは1〜30μmというミクロンサイズの微細な貫通孔を高密度に形成することができる。ここで、本発明における貫通孔の孔径とは、貫通孔の開口部が円である場合は、その直径のことであり、貫通孔の開口部が円と異なる形状の場合は、開口部の面積と同じ面積を有する円の直径(円に換算した直径)のことであり、貫通孔の一方の面の開口部と他方の面の開口部との孔径が異なる場合は、小さい方の開口部の孔径をいう。また、本発明の製造方法は、孔径が1〜100μmというミクロンサイズの微細な貫通孔を、例えば、その中心間距離が4〜300μmの間隔で、あるいは4〜150μmの間隔で、あるいは4〜90μmの間隔で金属板に形成することができ、高密度に形成できる。そのため、例えば、1mm
2あたり150個以上の貫通孔を形成することができる。
【0011】
本発明の製造方法における耐酸性保護膜を形成する材料は、金属板の表面に多孔パターンを形成でき、酸を含むエッチング液で化学エッチングされ難いものであれば特に限定されないが、例えば、フォトレジスト等の光硬化性樹脂、ポリメタクリル酸メチル等の熱可塑性樹脂などの有機化合物、ファインセラミックス等の絶縁酸化物、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等の炭素及び炭化物微粒固体などを挙げることができる。本発明における多孔パターンの形成方法は、特に限定されないが、例えば、フォトリソグラフ法をはじめ、インクジェット法、スーパーインクジェット法、ナノインプリント法や各種印刷法等を挙げることができ、印刷法としては、オフセット印刷法、活版印刷法等を挙げることができる。フォトリソグラフ法、インクジェット法、スーパーインクジェット法及びナノインプリント法は、孔径が1〜20μmの貫通孔を形成する場合に特に好適であり、印刷法は、孔径が10〜100μmの貫通孔を低コストで形成する場合に特に好適である。本発明の製造方法では、金属板の表面に、耐酸性保護膜からなる多孔パターンを形成し、無機酸を含むエッチング液で、多孔パターンが形成された金属板を化学エッチング処理して、耐酸性保護膜で覆われていない金属板の露出部分(多孔パターンの孔部分)を溶解させることにより、金属板に貫通孔が形成される。
【0012】
本発明におけるエッチング液は、無機酸を含む。本発明における無機酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、フッ酸、硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸等を挙げることができる。なかでも、ミクロンオーダーの貫通孔を高密度に安定して形成する観点から、リン酸及び硫酸から選ばれる少なくとも一種と、フッ酸並びに硝酸を含むことが好ましく、リン酸、硫酸、フッ酸及び硝酸を含むことがより好ましい。さらに金属板の材質によっては塩酸を加えることがより望ましい。リン酸及び硫酸は、エッチング液の比重を高め、エッチング液の粘度を増加させることができる。粘度が高いと溶解した金属イオンが液中に拡散することを阻害し、金属表面近傍に滞留する。これにより局所的に酸の濃度が低下することで過剰な金属の溶解反応が抑制される。またこれらの酸を混合することで界面活性作用も生じることから、金属溶解時に発生する水素ガスのエッチング面からの円滑な排出がしやすくなる。フッ酸及び塩酸は、各種の金属を溶解させることができ、特に、フッ酸はチタニウムやチタニウム合金を溶解させることができる。硝酸は、フッ酸と共に各種金属を溶解させることができるが、チタニウムやチタニウム合金の場合、チタニウムやチタニウム合金の表面を不動態化させることができる。この作用により、硝酸はフッ酸によるチタニウムの溶解反応を抑制し、反応を制御することができる。本発明における無機酸のエッチング液中の含有量は、特に限定されないが、リン酸及び硫酸から選ばれる少なくとも一種と、フッ酸並びに硝酸を含む場合は、エッチング液全体に対する重量比で、リン酸及び硫酸のどちらか一方を含む場合は、リン酸又は硫酸を30〜70%、リン酸及び硫酸の両方を含む場合は、リン酸と硫酸を合計で30〜70%、フッ酸を3〜15%、硝酸を5〜25%を含むことが好ましい。また、エッチング液の残部は水とすることができる。リン酸及び硫酸については、エッチング液の粘度が高すぎると、金属の溶解反応が極度に抑制され、処理時間が長くなるおそれがあるので、リン酸又は硫酸のエッチング液中の含有割合は、リン酸及び硫酸のどちらか一方を含む場合は、リン酸又は硫酸の含有割合として、リン酸及び硫酸の両方を含む場合は、リン酸及び硫酸の合計の含有割合として、重量比で30〜70%であることが好ましく、30〜60%であることがより好ましく、40〜60%であることが更に好ましい。また、リン酸と硫酸の両方を含む場合、片方の酸を1%以上含有し、合計で前記含有割合となることが好ましいが、リン酸と硫酸の両方を含む場合のリン酸のエッチング液中の含有割合は、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましい。さらに、リン酸と硫酸との配合割合は、重量比でリン酸:硫酸が69:1〜5:2であることが好ましい。基材の厚さが極端に薄い場合、反応を抑制するためにリン酸及び/又は硫酸を70%により近い配合で含有させることも可能である。フッ酸については、フッ酸の濃度が高ければ金属の溶解速度が大きくなり処理時間の短縮につながるが、反応の制御が困難になり、貫通孔の径のばらつきが発生するおそれがある。また、フッ酸は揮発性であるため、高濃度であると有毒ガスが発生しやすくなるとともにエッチング液中のフッ酸濃度が時間とともに変化してしまい、安定した溶解速度を保つことができなくなる。一方、極端に濃度が低いと溶解反応の進行が遅くなりすぎてしまい、処理時間が長くなってしまうことから、フッ酸のエッチング液中での含有割合は、重量比で3〜15%であることが好ましく、5〜12%であることがより好ましい。硝酸については、硝酸の濃度が高ければ溶解反応はより抑制されるが、高すぎると処理時間が長くなってしまうこと、及び揮発性であるため有毒ガスが発生しやすくなるとともに、エッチング液中の硝酸濃度が時間とともに変化してしまい、エッチング液の安定性を保つことが困難となることから、硝酸のエッチング液中での含有割合は、重量比で5〜25%が好ましく、5〜22%がより好ましく、8〜18%であることが更に好ましい。塩酸については、塩酸の濃度が高ければ金属の溶解速度が大きくなり処理時間の短縮につながるが、反応の制御が困難になり、貫通孔の径のばらつきが発生するおそれがある。また、塩酸は揮発性であるため、高濃度であると有毒ガスが発生しやすくなるとともにエッチング液中の塩酸濃度が時間とともに変化してしまい、安定した溶解速度を保つことができなくなる。一方、極端に濃度が低いと溶解反応の進行が遅くなりすぎてしまい、処理時間が長くなってしまうことから、塩酸を含む場合は、塩酸のエッチング液中での含有割合は、重量比で0.01〜15%であることが好ましく、2〜13%であることがより好ましく、5〜10%であることが更に好ましい。また、本発明におけるリン酸、硫酸、フッ酸、硝酸及び塩酸には、水に溶解して、リン酸イオン、硫酸イオン、フッ素イオン、硝酸イオン又は塩素イオンを生成するこれらの塩も含まれる。これらの塩としては、例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、硫酸銅、硫酸銀、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸銅、硝酸銀、塩化亜鉛等を挙げることができる。エッチング液中でのこれらの塩の含有割合は、前記各イオン濃度が、リン酸、硫酸、フッ酸、硝酸及び塩酸を用いた場合における各イオン濃度と同じになることが好ましい。
【0013】
本発明における化学エッチング処理は、金属板の表面をエッチング液で化学エッチングできれば特に限定されず通常の処理方法を用いることができ、例えば、表面に多孔パターンが形成された金属板を、エッチング液中に浸漬して化学エッチングを行うことができる。以下に本発明の製造方法により、多孔金属板を製造する場合の一実施形態を示す(
図1)。まず、(1)金属板(基材)を用意し、必要に応じて基材の洗浄を行う。基材の洗浄は、通常行われている方法で行うことができる。次に、(2)金属板の一方の面(表の面)の表面にレジストを塗布する。その後、(3)レジストを定着させるために、必要に応じてプリベーキングを行う。次に、(4)多孔パターンが形成されたフォトマスクをレジスト膜上に設置して、露光する。露光後、(5)フォトマスクをはずして、現像を行い、露光部のレジストを除去する。これにより、貫通孔を形成する箇所のレジストが除去される。次に、(6)金属板の他方の面(多孔パターンを形成した面と反対の面:裏面)がエッチングされるのを防ぐために、金属板の他方の面にレジストを塗布する。(7)必要に応じてポストベーキングを行う。こうして得られた表面に多孔パターンが形成された金属板をエッチング液に浸漬して化学エッチング処理を行う。金属板を所定の時間エッチング液に浸漬することにより、多孔パターンの孔部に、貫通孔が形成される。浸漬処理を行った後は、過剰なエッチング反応を防ぐために、金属板をエッチング液から取り出して、エッチング液を水により洗い流し、さらに残留している微量なエッチング液をアルカリ溶液によって中和させる。その後、レジストはく離液、アセトン等の有機溶媒、アルカリ溶液などでレジストを除去して多孔金属板を得ることができる。また、本発明の製造方法における多孔パターンの形成及び化学エッチング処理は、金属板の片方の面に限られるものではない。一方の面からの化学エッチング処理により貫通孔を形成した後、他方の面から再度同様の化学エッチング処理を行ってもよく、
図2に示すように、一方の面からの化学エッチング処理により途中まで孔を形成した後、他方の面から同様の化学エッチング処理を行って、孔を貫通させて貫通孔を形成してもよい。
図2に示す実施形態では、
図1の場合と同様に、金属板の一方の面(表の面)に耐酸性保護膜の多孔パターンを形成し([工程1])、化学エッチング処理を行うが、化学エッチング処理を途中で終了し([工程2])、他方の面(裏面)の表面に、表裏対称となるように同じ多孔パターンをレジスト塗布、プリベーキング、露光、現像により耐酸性保護膜で形成し、表の面にエッチングを防ぐためのレジストを塗布、ポストベーキングを行ってから([工程3])、化学エッチング処理([工程4])を行うことにより、両表面から形成される孔を貫通させて貫通孔を形成している。また、表の面及び裏面に多孔パターンを形成してから、表裏同時に化学エッチングを行うこともできる。片面から化学エッチングした場合、金属露出部が深さ方向に溶解するとともに横方向へも溶解が進行することによって孔径が一方の面から他方の面に向かって漸減した貫通孔を得ることができ、表裏両表面からエッチングした場合、孔径の変化の少ない貫通孔を得ることができる。
【0014】
本発明における化学エッチング処理は、処理時間や処理温度は、特に限定されず、使用する金属板の材質、厚さ、形成する貫通孔の孔径や貫通孔間の間隔に応じて選択することができる。化学エッチング処理を行う際のエッチング液の温度は、例えば、常温程度とすることができ、液温を上げるとエッチング速度を速めることができるが、過度にエッチング液の温度を上げると溶解反応の制御が困難になり貫通孔径のばらつきが生じるおそれがあるほか、含まれる酸の揮発によるエッチング液の配合率変化や有毒ガスの発生が顕著になるおそれがあるため、20〜40℃程度が好ましい。また、本発明における化学エッチング処理は、金属板の厚さを考慮して、金属の溶解速度が毎分0.3〜10μmとなるように各種条件を設定することが好ましい。本発明の製造方法によると、深さ方向のエッチングが横方向のエッチングに対して優位な異方性の化学エッチングが実現できるので、孔の横方向の広がりを抑えることができるため貫通孔間の間隔を狭くすることができ、高密度に貫通孔を形成できる。また、深さ方向のエッチングが横方向のエッチングに対して優位なことから、耐酸性保護膜の多孔パターンにほぼ近い形状及び配列の貫通孔を形成できるので、必要とされる配列パターンに適合した貫通孔を形成できる。さらに、本発明の製造方法は、貫通孔の形成時に、機械的な力や熱を加えないため、金属板に残留応力が発生せず、熱による金属板の形状変化や特性の劣化も生じない。このため、本発明の製造方法により製造された多孔金属板は、貫通孔の形成加工後も高い耐食性を有する。本発明の製造方法によれば、貫通孔形成時に変形や変質することが問題となる厚さの薄い金属板、例えば、2〜100μm、あるいは2〜50μm、あるいは2〜30μmといった厚さの金属板であっても、変形や特性の劣化がない多孔金属板を製造することができる。また、深さ方向のエッチングが横方向のエッチングに対して優位な異方性の化学エッチングが行えるので、厚さの厚い金属板、例えば、前記範囲の中で比較的厚みのある50〜100μmといった厚さの金属板であっても、貫通孔間の間隔を狭くして高密度に貫通孔を形成できる。本発明の製造方法は、電解エッチング法のように電圧を印加する必要がなく、金属板をエッチング液に浸漬することにより貫通孔の形成ができるので、多孔パターンを形成する耐酸性保護膜の破壊や、金属板における印加電圧のばらつきが生じず、小面積の金属板から大面積の金属板まで、金属板の面積にかかわらず均一な貫通孔を形成することができ、コストも抑制できる。さらに、本発明の製造方法によると、機械加工による貫通孔の孔縁部でのささくれ(バリ)の発生や、レーザー加工による貫通孔の孔縁部でのドロス(溶融物の付着)の発生がないため、均一な貫通孔を形成することができると共に、バリやドロスの除去工程を必要とせず、工程を簡略化できる。
【0015】
本発明の多孔金属板は、複数の貫通孔が形成された多孔金属板であって、前記貫通孔は、耐酸性保護膜の多孔パターンを表面に形成した金属板を、無機酸を含むエッチング液で化学エッチング処理することにより形成され、孔径が1〜100μmであり、隣接する前記貫通孔の中心間距離が4〜300μmであることを特徴とする。本発明の多孔金属板における耐酸性保護膜を形成する材料、多孔パターンの形成方法、エッチング液に含まれる酸の種類、化学エッチングの方法は、本発明の多孔金属板の製造方法における場合と同様である。本発明の多孔金属板は、耐酸性保護膜の多孔パターンを表面に形成した金属板を、無機酸を含むエッチング液で化学エッチング処理することにより形成されているので、貫通孔の形成時に機械的な力を受けておらず、熱の影響も受けていないので、残留応力や熱的変質のない多孔金属板であり機械的加工方法やドライエッチング等の熱の発生を伴う加工方法で貫通孔が形成された多孔金属板とは多孔金属板として異なる。本発明の多孔金属板における金属板は、特に限定されるものではないが、金属板を構成する金属としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、チタニウム、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、タンタル、これらの合金等を挙げることができる。なかでも、生体親和性及び耐食性に優れ、医療用バリアメンブレンや生体情報計測のためのインプラント(埋入)用デバイス、化学プラント用フィルター、電池用フィルター等、医療、電池、化学、航空宇宙等の各種用途に好適に使用できるので、チタニウム又はチタニウム合金が好ましい。貫通孔の孔径は、医療用のバリアメンブレンやインプラントでは細菌侵入阻害や生体適合促進の観点から、化学プラント用等のフィルターでは微粒塵捕捉の観点から、1〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。また、金属板の厚さは、特に限定されるものではないが、化学プラントや電池用フィルターでは腐食による減厚など耐食性の観点から、2〜100μmが好ましい。また、医療用バリアメンブレンやインプラントでは生体埋入の観点から、2〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましく、2〜30μmが更に好ましい。本発明の多孔金属板における貫通孔は、その孔径が金属板の一方の面から反対側の他方の面に向けて漸減していることが好ましい。貫通孔がこのような形状をしていると、医療用のバリアメンブレンでは鞭毛を持つ細菌や細長い細菌の侵入を防御でき、また化学プラントや電池用フィルターでは細長い形状や複雑な形状を持つ塵を有効に捕捉できる。
【0016】
以下、本発明を実施例に基づき更に説明する。但し、本発明は実施例に示す様態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
金属基材として、高い生体親和性と耐食性を有するJIS1種の純チタニウム(TR270C)板(10mm×10mm、厚さ20μm)を用い、このチタニウム板に、貫通孔を形成した。
図1に本発明の多孔金属板の製造工程を示す。製造工程は、工程1の金属板の表面に耐酸性保護膜による多孔パターンを形成する工程と、工程2の化学エッチング処理工程から構成される。以下に実施例について工程毎に説明する。
【0018】
[工程1]耐酸性保護膜による多孔パターンの形成工程(フォトレジスト法)
(1)基材の洗浄:超音波洗浄機を用いてチタニウム板をアセトンで5分間、アルカリ溶液55分間洗浄した。
(2)レジスト塗布:スピンコーターを用いてチタニウム板を回転させ、チタニウム板上(表の面上)にレジスト溶液S1818G(ロームアンドハース社)を滴下し、厚さ2μmのレジスト膜を塗布した。なお、厚さ20μmのチタニウム板に多数の微小孔を精度よく開けるにはレジスト膜厚が1〜2μmの範囲が好適であった。
(3)プリベーキング:残留している有機溶媒の除去とレジスト膜の基材への密着性を向上させるため、90℃で30分間のベーキングを行った。なお、種々のベーキング温度で試行した結果、最適なプリベーキング条件は、ベーキング時間が30分間では80〜120℃であった。
(4)露光:塗布したレジストにマスクアライナーを用いて多孔パターンを形成した。形成したパターンは、孔径20μm、周期70μmである。なお、種々のパターン孔径で試行した結果、貫通孔のチタニウム板裏面(上記(2)でレジストを塗布した面と反対の面)での孔径を20μmとする場合、レジストパターンの孔径の範囲は5〜20μmであった。
(5)レジスト除去:レジストパターンを形成したチタニウム板を現像液MF−CD−26(ロームアンドハース社)に浸漬し、レジストの露光部(孔部)を除去して、レジストによる多孔パターンを形成した。
(6)裏面へのレジスト塗布:裏面の化学エッチングを防止するために、チタニウム板の裏面にレジストを塗布した。
(7)ポストベーキング:表の面と裏面に形成されたレジスト膜とチタニウム板の密着性を向上させるために、120℃で30分間のベーキングを行った。なお、種々のベーキング温度を試行した結果、最適なポストベーキング条件はベーキング時間が30分間では90〜140℃であった。
【0019】
[工程2]化学エッチング
リン酸(89重量パーセント)を1.5L、硫酸(75重量パーセント)を0.5L、フッ酸(55重量パーセント)を1L及び硝酸(67.5重量パーセント)を1L混合したものをエッチング液とした。エッチング液の各成分の濃度は重量比でリン酸38%、硫酸10%、フッ酸11%、硝酸16%及び残部は水である。エッチング液を入れた容器を湯煎し、30℃に保った状態で[工程1]で得られた多孔パターンを表面に形成したチタニウム板(以下、試料という。)を容器に浸漬して、化学エッチングを行った。化学エッチング時間は5分間とした。
【実施例2】
【0020】
実施例1と同じ金属基材に同様の工程で耐酸性保護膜による多孔パターンを形成し、組成の異なるエッチング液で化学エッチングを行った。
[工程2]化学エッチング
リン酸(89重量パーセント)を2L、フッ酸(55重量パーセント)を1.5L及び硝酸(67.5重量パーセント)を2L、水を0.5L混合したものをエッチング液とした。エッチング液の各成分の濃度は重量比でリン酸36%、フッ酸12%、硝酸22%及び残部は水である。エッチング液を入れた容器を湯煎し、30℃に保った状態で[工程1]で得られた試料を容器に浸漬して、化学エッチングを行った。化学エッチング時間は3分間とした。
【0021】
[評価方法]
試料は、孔を形成する過程で深さ方向のエッチングが横方向のエッチングに対して優位な異方性エッチングが進行しているか調べるために、孔が貫通していない3段階のエッチング深さの多孔を形成した試料と、貫通孔について調べるために裏面孔径が20μmの貫通孔が形成された試料の合計4種類を作製した。化学エッチング後の試料の評価は、開孔径やエッチング深さはレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK9700)で評価し、表面形態および貫通孔径は走査電子顕微鏡SU3500(日立ハイテクノロジーズ社製)でチタニウム板の表裏を観察し評価した。
【0022】
表1に、実施例1の工程1の後、実施例1で使用したエッチング液でエッチング時間を変更することで3段階のエッチング度合でエッチングした試料の深さ方向のエッチング量と横方向のエッチング量を示す。ここで横方向のエッチング量は開口部の孔径からレジストパターン膜の開孔径を差し引いた値の半値とした。いずれのエッチング度合においても深さ方向のエッチング量が横方向のエッチング量の2倍程度であることがわかる。すなわち「深さ方向のエッチング量」/「横方向のエッチング量」が1より大である。これは、本発明の多孔金属板の孔形成過程において横方向のエッチングに対して深さ方向のエッチングが優位な異方性エッチングが実現できていることを示している。貫通孔が形成された試料は、5分間エッチング液に浸漬したものである。
【0023】
【表1】
【0024】
実施例1で作製した多孔チタニウム板を、エッチング面(表の面)から観察した走査電子顕微鏡像を
図3に、裏面から観察した走査電子顕微鏡像を
図4に示す。表側の開孔径が45μm、裏側の開孔径が20μmであり、孔径が表から裏にかけて漸減している貫通孔が得られた。また、隣接する貫通孔との中心間距離は、70μmであり、貫通孔が1mm
2あたり200穴を超える高密度で形成されていることが確認された。
【0025】
実施例2で作製した多孔チタニウム板を、エッチング面(表の面)から観察した走査電子顕微鏡像を
図5に、裏面から観察した走査電子顕微鏡像を
図6に示す。表側の開孔径が50μm、裏側の開孔径が22μmであり、孔径が表から裏にかけて漸減している貫通孔が得られた。また、隣接する貫通孔との中心間距離は、70μmであり、貫通孔が1mm
2あたり200穴を超える高密度で形成されていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の多孔金属板の製造方法は、医療用バリアメンブレンや生体情報計測のためのインプラント(埋入)用デバイス、化学プラント用フィルター、電池用フィルター等、医療、電池、化学、航空宇宙等の各種分野での様々な用途に利用できる多孔金属板を製造することができ、本発明の多孔金属板は、医療用バリアメンブレンや生体情報計測のためのインプラント(埋入)用デバイス、化学プラント用フィルター、電池用フィルター等、医療、電池、化学、航空宇宙等の各種分野での様々な用途に利用できる。