(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-211288(P2016-211288A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】耐火パネル及び外壁の耐火構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20161118BHJP
【FI】
E04B1/94 V
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-97535(P2015-97535)
(22)【出願日】2015年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 崇
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE03
2E001EA05
2E001EA09
2E001EA10
2E001FA04
2E001GA12
2E001GA42
2E001HA03
2E001HA32
2E001JA12
2E001KA01
2E001LA12
(57)【要約】
【課題】建物の外壁W等に設けられる耐火構造の十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保するとともに、施工性を高める。
【解決手段】火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とを接着剤により接着一体化して耐火パネル5とする。この耐火パネル5が建物の外壁Wに、火山性ガラス質複層板7を建物の外側に配置するように施工されている。また、耐火パネル5における火山性ガラス質複層板7の外面に、気体を遮蔽する不燃塗料の塗膜からなる気体遮蔽層10が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着剤により接着一体化されたことを特徴とする耐火パネル。
【請求項2】
請求項1において、
火山性ガラス質複層板の表面及び裏面の少なくとも一方に気体を遮蔽する気体遮蔽層が設けられていることを特徴とする耐火パネル。
【請求項3】
請求項1又は2において、
気体遮蔽層は、無機物を主成分とする不燃性塗料であることを特徴とする耐火パネル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの耐火パネルが建物の外壁に火山性ガラス質複層板を建物の外側に配置して施工されていることを特徴とする外壁の耐火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火パネル及び外壁に設けられる耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の建物が密集する地域では、火災が発生すれば延焼によって大きな被害が生じる可能性が高く、このような地域は防火地域や準防火地域とされ、建物はその階数や延べ面積に応じて要求される耐火性能を備えた基準による建築が義務付けられている。
【0003】
耐火構造を有する外壁構造として、鉄骨下地に木毛セメント板及び石膏ボードを積層した構造が知られている。一般的に、耐火性能は材料の重量及び厚さに比例して高くなるので、厚さ25mmの木毛セメント板及び42mmの石膏ボードを用いると、耐火性能が上昇する。しかし、その反面、このような厚さの木毛セメント板や石膏ボードの重量が増大するので、施工性が悪くなる。
【0004】
また、セメント系や珪酸カルシウム系の耐火材料は、自由水や結合水等の水分を多量に保持しており、加熱状態になると、この水分に起因して割れが発生することがあり、火災の際に可燃性の気体がその割れを通って屋内側に流入し、耐火性の悪化を招く。
【0005】
他方、特許文献1に示すように、石膏ボード(又は木毛セメント板)の屋外側にフェノールフォームを積層し、そのフェノールフォームの外側に金属外装板を当接させてビス止めした耐火性外壁構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−140834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この提案のものでは、フェノールフォームの使用によって軽量化が図られるものの、そのフェノールフォームは有機材料であるので、火災時の熱に弱くて劣化するだけでなく、経年変化に伴う劣化も避けられないという問題がある。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、外壁の耐火構造等に用いられる耐火パネルに改良を加えることにより、その耐火構造の十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保するとともに、施工性を高めようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく、この発明では、耐火パネルは、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着されて一体化されたものとした。
【0010】
すなわち、第1の発明の耐火パネルは、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着剤により接着一体化されたことを特徴とする。
【0011】
この第1の発明では、耐火パネルのうちの石膏ボードは約20%の結晶水を含んでおり、火災の際に加熱されると、この結晶水が熱分解して水蒸気となって徐々に放出され、温度の上昇を遅らせる働きをし、このことによって耐火性が得られる。
【0012】
このとき、結晶水の放出に伴い石膏ボードの強度が低下して割れが発生しようとするが、耐火パネルは、この石膏ボードが火山性ガラス質複層板と接着されて一体化されたものであり、火山性ガラス質複層板は表裏層がロックウールからなっており、繊維間を結合する有機系接着剤が加熱により徐々に分解するものの、繊維が絡み合った表裏層は大きな寸法変化が生じないので、この火山性ガラス質複層板により該火山性ガラス質複層板と一体化された石膏ボードの強度が保持されて、石膏ボードが破壊するのは抑制される。よって十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保することができる。また、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとの間に接着剤層が形成されているので、この火山性ガラス質複層板と石膏ボードとの間を火災時の高温のガスが通り難くなり、このことによって耐火性能をさらに高めることができる。
【0013】
また、耐火パネルは、予め火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着されて一体化されたものであるので、複数枚(例えば3枚)の石膏ボードを個々に施工する場合に比べて、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着一体化された耐火パネルを施工する分だけ施工の手間が少なくなり、施工性が向上する。
【0014】
しかも、上記複数枚の石膏ボードを建物の外壁に施工する場合、最も外側に位置する石膏ボードは、急な雨によって濡れたときにその強度が低下するので、高価な耐水石膏ボードを用いる必要があるが、本発明では、耐火パネルにおいて水による強度低下が比較的小さい火山性ガラス質複層板を外側に配置することで、高価な耐水石膏ボードを用いる必要がなく、急な雨による強度低下を安価に防止することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、火山性ガラス質複層板の表面及び裏面の少なくとも一方に気体を遮蔽する気体遮蔽層が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この第2の発明では、火山性ガラス質複層板の表面及び裏面の少なくとも一方に気体遮蔽層が設けられているので、火災時の高温のガス(気体)が火山性ガラス質複層板を通して例えば屋内側に流入しようとしても、それは気体遮蔽層によって遮蔽されるようになり、さらに耐火性能を高めることができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記気体遮蔽層は、無機物を主成分とする不燃性塗料であることを特徴とする。
【0018】
この第3の発明では、気体遮蔽層となる不燃性塗料は耐熱性があり、火災の炎に曝される部分にも使用することができる。
【0019】
第4の発明の外壁の耐火構造は、第1〜第3の発明のいずれか1つの耐火パネルが建物の外壁に火山性ガラス質複層板を建物の外側に配置して施工されていることを特徴とする。
【0020】
この第4の発明では、建物の外壁に設けられる耐火構造は、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着剤により接着一体化された耐火パネルが火山性ガラス質複層板を建物の外側に配置して施工されているので、耐火パネルのうちの石膏ボードの結晶水によって外壁の耐火性が得られる。また、結晶水の放出に伴い石膏ボードの強度が低下して割れが発生しようとしても、この石膏ボードに接着一体化された火山性ガラス質複層板により石膏ボードの強度が保持されて、石膏ボードの破壊が抑制され、十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保することができる。また、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとの間に接着剤層が形成されているので、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとの間を火災時の高温のガスが通り難くなり、耐火性能をさらに高めることができる。また、複数枚の石膏ボードを個々に施工する場合に比べて、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着一体化された耐火パネルを施工するだけで施工の手間が少なくなり、施工性が向上する。しかも、耐火パネルにおいて水による強度低下が比較的小さい火山性ガラス質複層板が建物の外側に配置されているので、高価な耐水石膏ボードを用いることが不要で、急な雨による強度低下の防止を安価に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によると、耐火パネルとして、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとを接着剤により接着一体化したことにより、石膏ボードに含まれる結晶水の熱分解による放出と、火山性ガラス質複層板及び石膏ボードの間の接着剤層による高温ガスの通過規制とによって耐火性が得られるとともに、結晶水の放出に伴い石膏ボードの強度が低下するのを火山性ガラス質複層板によって防いで石膏ボードの破壊を抑制でき、よって十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保することができる。また、複数枚の石膏ボードを個々に施工する場合に比べて、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着一体化された耐火パネルを施工する分だけ施工の手間が少なくなり、施工性が向上する。さらに、複数枚の石膏ボードを建物の外壁に施工する場合のように、高価な耐水石膏ボードを用いる必要がなく、急な雨に対する強度低下を安価に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る外壁の耐火構造を分解して示す斜視図である。
【
図2】
図2は、外壁の耐火構造の水平断面図である。
【
図4】
図4は、実施例及び比較例の表面温度の上昇平均値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0024】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る外壁の耐火構造を示し、この耐火構造は建物の外壁Wに設けられる。外壁Wは、建物の骨組みをなす横胴縁1の屋外側に配置される石膏ボード2と、この石膏ボード2の屋外側に配置される本発明の実施形態に係る耐火パネル5と、この耐火パネル5の屋外側に配置される防水材12と、この防水材12の屋外側に通気金具(図示せず)を介して隙間を空けて配置される窯業系サイディング13(外装材)とを備え、これらは重ねられて釘やビス(図示せず)により横胴縁1に取付固定されている。
【0025】
上記石膏ボード2は、例えば厚さ9.5mmの矩形板材からなる。また、防水材12は、例えばポリエチレン不織布からなる透湿性防水シートやアスファルト防水紙等からなる。
【0026】
上記耐火パネル5は、壁厚さ方向の略中央部に配置されて耐火構造の要部をなすものであり、
図3にも示すように、内側の石膏ボード6と外側の火山性ガラス質複層板7(例えば大建工業(株)製の商品名「ダイライト」等)とからなる。この耐火パネル5における石膏ボード6は、耐火パネル5内側の上記石膏ボード2と同じで、例えば厚さ9.5mmの矩形板材からなる。一方、火山性ガラス質複層板7は、石膏ボード6と同じ大きさで、例えば厚さ12.5mmで比重が0.5〜0.9の矩形板材からなり、施工性及び熱を伝え難い点から比重の低いものが好ましい。
【0027】
そして、上記火山性ガラス質複層板7の裏面と石膏ボード6の表面との間には接着剤層8が介在されており、火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とは接着剤層8の接着剤により接着一体化されて耐火パネル5を構成している。
【0028】
上記耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とを接着する接着剤は、特に限定されず、例えば酢酸ビニル系等の一般的な接着剤を使用することができる。また、接着剤は、火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6との接着面の全体に均一に塗布してもよく、或いは接着面への線状塗布や点状塗布であっても構わない。こうして接着面に接着剤を塗布した後に火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とを接着面で重ねて積層し、プレス又は複数枚を接着剤が硬化するまで堆積して一体化すればよい。
【0029】
さらに、耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7において、屋外側の面になる表面には気体遮蔽層10が一体的に設けられている。この気体遮蔽層10は、例えば火災時に発生する高温の可燃性ガス等の気体が耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7や石膏ボード6、或いは耐火パネル5内側の石膏ボード2を通過するのを遮蔽するためのものであり、例えば無機物を主成分とする不燃性塗料が用いられ、その塗料が塗布されて塗膜として形成される。この不燃性塗料は、例えば膨潤性の高い珪酸塩鉱物(バーミキュライトやベントナイト等)を主成分とし、アクリル樹脂やウレタン樹脂等で耐水性を持たせた塗料が好ましい。尚、気体遮蔽層10の透湿抵抗の一例を挙げると、不燃性塗料が塗布されていない火山性ガラス質複層板7が0.0009m
2・s・Pa/ngに対して、塗布されたものは0.0033m
2・s・Pa/ngで、気体が透過し難いことを示している。
【0030】
各耐火パネル5は、その周縁部で隣接する他の耐火パネル5と互いに突き合わされ、その突き合わせ部分を継ぎ目とした状態で壁面に沿って並べられて施工されている。
【0031】
したがって、この実施形態に係る外壁Wの耐火構造では、石膏ボード2の外側に耐火パネル5が施工され、この耐火パネル5は、外側の火山性ガラス質複層板7と内側の石膏ボード6とを接着剤層8を介して接着一体化されたものである。この耐火パネル5のうちの石膏ボード6は約20%の結晶水を含んでいるので、火災の際に耐火パネル5が加熱されると、この石膏ボード6に含まれる結晶水が熱分解し水蒸気となって徐々に放出され、このことで石膏ボート6延いては耐火パネル5の温度の上昇を遅らせる働きをし、よって耐火パネル5ないし外壁構造の耐火性が得られる。
【0032】
そして、石膏ボード6は、上記結晶水の放出に伴い強度が低下して割れが発生しようとするが、耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7は表裏層がロックウールからなっており、繊維間を結合する有機系接着剤が加熱により徐々に分解するものの、繊維が絡み合った表裏層は大きな寸法変化が生じない。このような火山性ガラス質複層板7が石膏ボード6と接着により一体化されているので、この火山性ガラス質複層板7により石膏ボード6の強度が保持されて、石膏ボード6が破壊するのは抑制される。このことにより、耐火パネル5ないし外壁構造の十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保することができる。しかも、火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6との間に接着剤層8が形成されているので、この火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6との間を火災時の高温のガスが通り難くなり、このことによって耐火構造の耐火性能をさらに高めることができる。
【0033】
加えて、耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7の外側の表面に気体遮蔽層10が不燃性塗料の塗膜として設けられているので、火災時の高温のガス(気体)が屋外側から耐火パネル5及び石膏ボード2を通して屋内側に流入しようとしても、それは火山性ガラス質複層板7表面の気体遮蔽層10によって遮蔽されるようになり、さらに耐火構造の耐火性能を高めることができる。
【0034】
この気体遮蔽層10は、無機物を主成分とする不燃性塗料であり、この不燃性塗料は耐熱性があるので、火災の炎に曝される部分にも使用することができる。
【0035】
また、耐火パネル5は、予め火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とが接着されて一体化されたものであるので、耐火構造として、仮に例えば3枚の石膏ボードを個々に施工する場合に比べて、火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とが接着一体化された耐火パネル5を内側の石膏ボード2と共に施工するだけで済み、施工の手間が少なくなって施工性を向上させることができる。
【0036】
そして、上記のように3枚の石膏ボードを建物の外壁に施工する場合、最も外側に位置する石膏ボードが急な雨によって濡れると、そのときに強度が低下するので、その最外層の石膏ボードとしては高価な耐水石膏ボードを用いる必要がある。これに対し、本実施形態では、耐火パネル5が外側に配置され、その耐火パネル5において水による強度低下の比較的小さい火山性ガラス質複層板7が外側に配置されているので、高価な耐水石膏ボードを用いる必要がなく、急な雨に起因する強度低下を安価に防止することができる。
【0037】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、外壁の壁厚さ方向に耐火パネル5及び石膏ボード2が積層されているが、石膏ボード2の内側にさらに複数の石膏ボード(無機板)を積層してもよい。或いは、上記石膏ボード2は省略して耐火パネル5のみであってもよい。耐火パネル5のみであっても、その火山性ガラス質複層板7に設けられた気体遮蔽層10による高温ガスの遮蔽効果により耐火性能が得られるとともに、軽量で薄い耐火パネル5による施工性の向上が図られる。
【0038】
また、上記実施形態では、気体遮蔽層10が耐火パネル5における火山性ガラス質複層板7の表面に設けられているが、火山性ガラス質複層板7の裏面(屋内側の面)に設けられていてもよく、或いは火山性ガラス質複層板7の表面及び裏面の両方に設けられていてもよい。要は、火山性ガラス質複層板7の表面及び裏面の少なくとも一方に気体遮蔽層10を設けて気体の通過を遮蔽するようにすればよい。
【0039】
さらに、上記実施形態では、外壁Wの屋外側に窯業系サイディング13を配置しているが、金属系サイディング(金属外装材)、木材、モルタルを有する外装材であってもよい。
【0040】
また、建物の構造が木造軸組構造、木造枠組構造、軽量又は重量の鉄骨構造であっても本発明を適用することができる。
【0041】
そして、本発明の耐火パネル5は、外壁W以外の耐火構造にも適用できるのは勿論である。
【実施例】
【0042】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0043】
(実施例)
上記実施形態に記載したように(
図1及び
図2参照)、軽量鉄骨に厚さ12.5mmの石膏ボードを釘を使用して打ち付け、その石膏ボード上から耐火パネルを釘を使用して軽量鉄骨に打ち付けた。耐火パネルは、厚さ9.5mmの石膏ボードと厚さ12.5mmの火山性ガラス質複層板(大建工業(株)製の商品名「ダイライト」)とを酢酸ビニル樹脂接着剤により接着一体化したもので、火山性ガラス質複層板が屋外側になるように配置した。また、火山性ガラス質複層板の屋外側の表面には、不燃性塗料の塗布によって気体遮蔽層を一体的に設けた。耐火パネルと石膏ボードとを合わせた合計の厚さは34.5mmである。
【0044】
その後、耐火パネルの上に防水シートを貼り、窯業系サイディングを施工した。そして、この実施例の構造の試験片として、耐火パネルと石膏ボードとを重ねたものを用いた。
【0045】
(比較例)
軽量鉄骨に厚さ12.5mmの石膏ボードを釘を使用して打ち付け、その石膏ボード上から厚さ12.5mmの2枚の火山性ガラス質複層板(大建工業(株)製の商品名「ダイライト」)を重ねてそれぞれ釘を使用して軽量鉄骨に打ち付けた。各火山性ガラス質複層板の屋外側の表面には、不燃性塗料の塗布によって気体遮蔽層を一体的に設けた。2枚の火山性ガラス質複層板と石膏ボードとを合わせた合計の厚さは37.5mmである。
【0046】
その後、耐火パネルの上に防水シートを貼り、窯業系サイディングを施工した。この比較例の構造の試験片として、2枚の火山性ガラス質複層板と石膏ボードとを重ねたものを用いた。
【0047】
(耐火性の試験)
実施例及び比較例の各試験片を1m角の小型炉に入れ、その表面(実施例では耐火パネルにおける火山性ガラス質複層板の表面、比較例では外側の火山性ガラス質複層板の表面)に炎を当てて1時間加熱し、そのときの試験片裏面の温度を6〜8箇所測定した。すなわち、この試験は、試験片の表面に炎が当てられたときに裏面の温度がどの程度上昇するかを調べたものであり、これらの裏面温度の上昇値の平均値(ケルビン)を
図4に示す。
【0048】
この
図4を見ると、実施例の方が比較例よりも高いものの、その差は5Kで誤差範囲と言え、両者は実質的に同じである。従って、実施例は、総厚さが比較例よりも薄くなっているにも拘わらず比較例と同程度の遮熱性が得られることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、外壁の耐火構造に関して軽量の薄い無機板により施工性を高め、耐火性能の向上を図ることができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0050】
W 外壁
2 石膏ボード
5 耐火パネル
6 石膏ボード
7 火山性ガラス質複層板
8 接着剤層
10 気体遮蔽層
【手続補正書】
【提出日】2016年8月19日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火パネル及び外壁に設けられる耐火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部の建物が密集する地域では、火災が発生すれば延焼によって大きな被害が生じる可能性が高く、このような地域は防火地域や準防火地域とされ、建物はその階数や延べ面積に応じて要求される耐火性能を備えた基準による建築が義務付けられている。
【0003】
耐火構造を有する外壁構造として、鉄骨下地に木毛セメント板及び石膏ボードを積層した構造が知られている。一般的に、耐火性能は材料の重量及び厚さに比例して高くなるので、厚さ25mmの木毛セメント板及び42mmの石膏ボードを用いると、耐火性能が上昇する。しかし、その反面、このような厚さの木毛セメント板や石膏ボードの重量が増大するので、施工性が悪くなる。
【0004】
また、セメント系や珪酸カルシウム系の耐火材料は、自由水や結合水等の水分を多量に保持しており、加熱状態になると、この水分に起因して割れが発生することがあり、火災の際に可燃性の気体がその割れを通って屋内側に流入し、耐火性の悪化を招く。
【0005】
他方、特許文献1に示すように、石膏ボード(又は木毛セメント板)の屋外側にフェノールフォームを積層し、そのフェノールフォームの外側に金属外装板を当接させてビス止めした耐火性外壁構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−140834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この提案のものでは、フェノールフォームの使用によって軽量化が図られるものの、そのフェノールフォームは有機材料であるので、火災時の熱に弱くて劣化するだけでなく、経年変化に伴う劣化も避けられないという問題がある。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、外壁の耐火構造等に用いられる耐火パネルに改良を加えることにより、その耐火構造の十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保するとともに、施工性を高めようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成すべく、この発明では、耐火パネルは、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着されて一体化されたものとした。
【0010】
すなわち、第1の発明
は、建物の外壁に施工される外壁の耐火構造用の耐火パネル
に係るものであり、この耐火パネルは、
外壁の外側部に配置される火山性ガラス質複層板と、外壁の内側部に配置される石膏ボードとを備え、該火山性ガラス質複層板と
該石膏ボードと
の間の全面に亘り接着剤からなる接着剤層が設けられ、該火山性ガラス質複層板と該石膏ボードとが
該接着剤層の接着剤により接着一体化されたことを特徴とする。
【0011】
この第1の発明では、耐火パネルのうちの石膏ボードは約20%の結晶水を含んでおり、火災の際に加熱されると、この結晶水が熱分解して水蒸気となって徐々に放出され、温度の上昇を遅らせる働きをし、このことによって耐火性が得られる。
【0012】
このとき、結晶水の放出に伴い石膏ボードの強度が低下して割れが発生しようとするが、耐火パネルは、この石膏ボードが火山性ガラス質複層板と接着されて一体化されたものであり、火山性ガラス質複層板は表裏層がロックウールからなっており、繊維間を結合する有機系接着剤が加熱により徐々に分解するものの、繊維が絡み合った表裏層は大きな寸法変化が生じないので、この火山性ガラス質複層板により該火山性ガラス質複層板と一体化された石膏ボードの強度が保持されて、石膏ボードが破壊するのは抑制される。よって十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保することができる。また、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとの間に接着剤層が形成されているので、この火山性ガラス質複層板と石膏ボードとの間を火災時の高温のガスが通り難くなり、このことによって耐火性能をさらに高めることができる。
【0013】
また、耐火パネルは、予め火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着されて一体化されたものであるので、複数枚(例えば3枚)の石膏ボードを個々に施工する場合に比べて、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着一体化された耐火パネルを施工する分だけ施工の手間が少なくなり、施工性が向上する。
【0014】
しかも、上記複数枚の石膏ボードを建物の外壁に施工する場合、最も外側に位置する石膏ボードは、急な雨によって濡れたときにその強度が低下するので、高価な耐水石膏ボードを用いる必要があるが、本発明では、耐火パネルにおいて水による強度低下が比較的小さい火山性ガラス質複層板を外側に配置することで、高価な耐水石膏ボードを用いる必要がなく、急な雨による強度低下を安価に防止することができる。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、火山性ガラス質複層板の表面及び裏面の少なくとも一方に気体を遮蔽する気体遮蔽層が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この第2の発明では、火山性ガラス質複層板の表面及び裏面の少なくとも一方に気体遮蔽層が設けられているので、火災時の高温のガス(気体)が火山性ガラス質複層板を通して例えば屋内側に流入しようとしても、それは気体遮蔽層によって遮蔽されるようになり、さらに耐火性能を高めることができる。
【0017】
第3の発明は、
第2の発明において、上記気体遮蔽層は、無機物を主成分とする不燃性塗料であることを特徴とする。
【0018】
この第3の発明では、気体遮蔽層となる不燃性塗料は耐熱性があり、火災の炎に曝される部分にも使用することができる。
【0019】
第4の発明の外壁の耐火構造は、第1〜第3の発明のいずれか1つの耐火パネルが建物の外壁に火山性ガラス質複層板を建物の外側に配置して施工されていることを特徴とする。
【0020】
この第4の発明では、建物の外壁に設けられる耐火構造は、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着剤により接着一体化された耐火パネルが火山性ガラス質複層板を建物の外側に配置して施工されているので、耐火パネルのうちの石膏ボードの結晶水によって外壁の耐火性が得られる。また、結晶水の放出に伴い石膏ボードの強度が低下して割れが発生しようとしても、この石膏ボードに接着一体化された火山性ガラス質複層板により石膏ボードの強度が保持されて、石膏ボードの破壊が抑制され、十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保することができる。また、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとの間に接着剤層が形成されているので、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとの間を火災時の高温のガスが通り難くなり、耐火性能をさらに高めることができる。また、複数枚の石膏ボードを個々に施工する場合に比べて、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着一体化された耐火パネルを施工するだけで施工の手間が少なくなり、施工性が向上する。しかも、耐火パネルにおいて水による強度低下が比較的小さい火山性ガラス質複層板が建物の外側に配置されているので、高価な耐水石膏ボードを用いることが不要で、急な雨による強度低下の防止を安価に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によると、耐火パネルとして、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとを接着剤により接着一体化したことにより、石膏ボードに含まれる結晶水の熱分解による放出と、火山性ガラス質複層板及び石膏ボードの間の接着剤層による高温ガスの通過規制とによって耐火性が得られるとともに、結晶水の放出に伴い石膏ボードの強度が低下するのを火山性ガラス質複層板によって防いで石膏ボードの破壊を抑制でき、よって十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保することができる。また、複数枚の石膏ボードを個々に施工する場合に比べて、火山性ガラス質複層板と石膏ボードとが接着一体化された耐火パネルを施工する分だけ施工の手間が少なくなり、施工性が向上する。さらに、複数枚の石膏ボードを建物の外壁に施工する場合のように、高価な耐水石膏ボードを用いる必要がなく、急な雨に対する強度低下を安価に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る外壁の耐火構造を分解して示す斜視図である。
【
図2】
図2は、外壁の耐火構造の水平断面図である。
【
図4】
図4は、実施例及び比較例の表面温度の上昇平均値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0024】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る外壁の耐火構造を示し、この耐火構造は建物の外壁Wに設けられる。外壁Wは、建物の骨組みをなす横胴縁1の屋外側に配置される石膏ボード2と、この石膏ボード2の屋外側に配置される本発明の実施形態に係る耐火パネル5と、この耐火パネル5の屋外側に配置される防水材12と、この防水材12の屋外側に通気金具(図示せず)を介して隙間を空けて配置される窯業系サイディング13(外装材)とを備え、これらは重ねられて釘やビス(図示せず)により横胴縁1に取付固定されている。
【0025】
上記石膏ボード2は、例えば厚さ9.5mmの矩形板材からなる。また、防水材12は、例えばポリエチレン不織布からなる透湿性防水シートやアスファルト防水紙等からなる。
【0026】
上記耐火パネル5は、壁厚さ方向の略中央部に配置されて耐火構造の要部をなすものであり、
図3にも示すように、内側の石膏ボード6と外側の火山性ガラス質複層板7(例えば大建工業(株)製の商品名「ダイライト」等)とからなる。この耐火パネル5における石膏ボード6は、耐火パネル5内側の上記石膏ボード2と同じで、例えば厚さ9.5mmの矩形板材からなる。一方、火山性ガラス質複層板7は、石膏ボード6と同じ大きさで、例えば厚さ12.5mmで比重が0.5〜0.9の矩形板材からなり、施工性及び熱を伝え難い点から比重の低いものが好ましい。
【0027】
そして、上記火山性ガラス質複層板7の裏面と石膏ボード6の表面との間には接着剤層8が介在されており、火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とは接着剤層8の接着剤により接着一体化されて耐火パネル5を構成している。
【0028】
上記耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とを接着する接着剤は、特に限定されず、例えば酢酸ビニル系等の一般的な接着剤を使用することができる。また、接着剤は、火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6との接着面の全体に均一に塗布してもよく、或いは接着面への線状塗布や点状塗布であっても構わない。こうして接着面に接着剤を塗布した後に火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とを接着面で重ねて積層し、プレス又は複数枚を接着剤が硬化するまで堆積して一体化すればよい。
【0029】
さらに、耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7において、屋外側の面になる表面には気体遮蔽層10が一体的に設けられている。この気体遮蔽層10は、例えば火災時に発生する高温の可燃性ガス等の気体が耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7や石膏ボード6、或いは耐火パネル5内側の石膏ボード2を通過するのを遮蔽するためのものであり、例えば無機物を主成分とする不燃性塗料が用いられ、その塗料が塗布されて塗膜として形成される。この不燃性塗料は、例えば膨潤性の高い珪酸塩鉱物(バーミキュライトやベントナイト等)を主成分とし、アクリル樹脂やウレタン樹脂等で耐水性を持たせた塗料が好ましい。尚、気体遮蔽層10の透湿抵抗の一例を挙げると、不燃性塗料が塗布されていない火山性ガラス質複層板7が0.0009m
2・s・Pa/ngに対して、塗布されたものは0.0033m
2・s・Pa/ngで、気体が透過し難いことを示している。
【0030】
各耐火パネル5は、その周縁部で隣接する他の耐火パネル5と互いに突き合わされ、その突き合わせ部分を継ぎ目とした状態で壁面に沿って並べられて施工されている。
【0031】
したがって、この実施形態に係る外壁Wの耐火構造では、石膏ボード2の外側に耐火パネル5が施工され、この耐火パネル5は、外側の火山性ガラス質複層板7と内側の石膏ボード6とを接着剤層8を介して接着一体化されたものである。この耐火パネル5のうちの石膏ボード6は約20%の結晶水を含んでいるので、火災の際に耐火パネル5が加熱されると、この石膏ボード6に含まれる結晶水が熱分解し水蒸気となって徐々に放出され、このことで石膏ボート6延いては耐火パネル5の温度の上昇を遅らせる働きをし、よって耐火パネル5ないし外壁構造の耐火性が得られる。
【0032】
そして、石膏ボード6は、上記結晶水の放出に伴い強度が低下して割れが発生しようとするが、耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7は表裏層がロックウールからなっており、繊維間を結合する有機系接着剤が加熱により徐々に分解するものの、繊維が絡み合った表裏層は大きな寸法変化が生じない。このような火山性ガラス質複層板7が石膏ボード6と接着により一体化されているので、この火山性ガラス質複層板7により石膏ボード6の強度が保持されて、石膏ボード6が破壊するのは抑制される。このことにより、耐火パネル5ないし外壁構造の十分な耐火性を長期間に亘り安定して確保することができる。しかも、火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6との間に接着剤層8が形成されているので、この火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6との間を火災時の高温のガスが通り難くなり、このことによって耐火構造の耐火性能をさらに高めることができる。
【0033】
加えて、耐火パネル5の火山性ガラス質複層板7の外側の表面に気体遮蔽層10が不燃性塗料の塗膜として設けられているので、火災時の高温のガス(気体)が屋外側から耐火パネル5及び石膏ボード2を通して屋内側に流入しようとしても、それは火山性ガラス質複層板7表面の気体遮蔽層10によって遮蔽されるようになり、さらに耐火構造の耐火性能を高めることができる。
【0034】
この気体遮蔽層10は、無機物を主成分とする不燃性塗料であり、この不燃性塗料は耐熱性があるので、火災の炎に曝される部分にも使用することができる。
【0035】
また、耐火パネル5は、予め火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とが接着されて一体化されたものであるので、耐火構造として、仮に例えば3枚の石膏ボードを個々に施工する場合に比べて、火山性ガラス質複層板7と石膏ボード6とが接着一体化された耐火パネル5を内側の石膏ボード2と共に施工するだけで済み、施工の手間が少なくなって施工性を向上させることができる。
【0036】
そして、上記のように3枚の石膏ボードを建物の外壁に施工する場合、最も外側に位置する石膏ボードが急な雨によって濡れると、そのときに強度が低下するので、その最外層の石膏ボードとしては高価な耐水石膏ボードを用いる必要がある。これに対し、本実施形態では、耐火パネル5が外側に配置され、その耐火パネル5において水による強度低下の比較的小さい火山性ガラス質複層板7が外側に配置されているので、高価な耐水石膏ボードを用いる必要がなく、急な雨に起因する強度低下を安価に防止することができる。
【0037】
(その他の実施形態)
尚、上記実施形態では、外壁の壁厚さ方向に耐火パネル5及び石膏ボード2が積層されているが、石膏ボード2の内側にさらに複数の石膏ボード(無機板)を積層してもよい。或いは、上記石膏ボード2は省略して耐火パネル5のみであってもよい。耐火パネル5のみであっても、その火山性ガラス質複層板7に設けられた気体遮蔽層10による高温ガスの遮蔽効果により耐火性能が得られるとともに、軽量で薄い耐火パネル5による施工性の向上が図られる。
【0038】
また、上記実施形態では、気体遮蔽層10が耐火パネル5における火山性ガラス質複層板7の表面に設けられているが、火山性ガラス質複層板7の裏面(屋内側の面)に設けられていてもよく、或いは火山性ガラス質複層板7の表面及び裏面の両方に設けられていてもよい。要は、火山性ガラス質複層板7の表面及び裏面の少なくとも一方に気体遮蔽層10を設けて気体の通過を遮蔽するようにすればよい。
【0039】
さらに、上記実施形態では、外壁Wの屋外側に窯業系サイディング13を配置しているが、金属系サイディング(金属外装材)、木材、モルタルを有する外装材であってもよい。
【0040】
また、建物の構造が木造軸組構造、木造枠組構造、軽量又は重量の鉄骨構造であっても本発明を適用することができる。
【0041】
そして、本発明の耐火パネル5は、外壁W以外の耐火構造にも適用できるのは勿論である。
【実施例】
【0042】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0043】
(実施例)
上記実施形態に記載したように(
図1及び
図2参照)、軽量鉄骨に厚さ12.5mmの石膏ボードを釘を使用して打ち付け、その石膏ボード上から耐火パネルを釘を使用して軽量鉄骨に打ち付けた。耐火パネルは、厚さ9.5mmの石膏ボードと厚さ12.5mmの火山性ガラス質複層板(大建工業(株)製の商品名「ダイライト」)とを酢酸ビニル樹脂接着剤により接着一体化したもので、火山性ガラス質複層板が屋外側になるように配置した。また、火山性ガラス質複層板の屋外側の表面には、不燃性塗料の塗布によって気体遮蔽層を一体的に設けた。耐火パネルと石膏ボードとを合わせた合計の厚さは34.5mmである。
【0044】
その後、耐火パネルの上に防水シートを貼り、窯業系サイディングを施工した。そして、この実施例の構造の試験片として、耐火パネルと石膏ボードとを重ねたものを用いた。
【0045】
(比較例)
軽量鉄骨に厚さ12.5mmの石膏ボードを釘を使用して打ち付け、その石膏ボード上から厚さ12.5mmの2枚の火山性ガラス質複層板(大建工業(株)製の商品名「ダイライト」)を重ねてそれぞれ釘を使用して軽量鉄骨に打ち付けた。各火山性ガラス質複層板の屋外側の表面には、不燃性塗料の塗布によって気体遮蔽層を一体的に設けた。2枚の火山性ガラス質複層板と石膏ボードとを合わせた合計の厚さは37.5mmである。
【0046】
その後、耐火パネルの上に防水シートを貼り、窯業系サイディングを施工した。この比較例の構造の試験片として、2枚の火山性ガラス質複層板と石膏ボードとを重ねたものを用いた。
【0047】
(耐火性の試験)
実施例及び比較例の各試験片を1m角の小型炉に入れ、その表面(実施例では耐火パネルにおける火山性ガラス質複層板の表面、比較例では外側の火山性ガラス質複層板の表面)に炎を当てて1時間加熱し、そのときの試験片裏面の温度を6〜8箇所測定した。すなわち、この試験は、試験片の表面に炎が当てられたときに裏面の温度がどの程度上昇するかを調べたものであり、これらの裏面温度の上昇値の平均値(ケルビン)を
図4に示す。
【0048】
この
図4を見ると、実施例の方が比較例よりも高いものの、その差は5Kで誤差範囲と言え、両者は実質的に同じである。従って、実施例は、総厚さが比較例よりも薄くなっているにも拘わらず比較例と同程度の遮熱性が得られることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、外壁の耐火構造に関して軽量の薄い無機板により施工性を高め、耐火性能の向上を図ることができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0050】
W 外壁
2 石膏ボード
5 耐火パネル
6 石膏ボード
7 火山性ガラス質複層板
8 接着剤層
10 気体遮蔽層
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁に施工される外壁の耐火構造用の耐火パネルであって、
上記外壁の外側部に配置される火山性ガラス質複層板と、
上記外壁の内側部に配置される石膏ボードと、を備え、
上記火山性ガラス質複層板と上記石膏ボードとの間の全面に亘り接着剤からなる接着剤層が設けられ、該火山性ガラス質複層板と該石膏ボードとが該接着剤層の接着剤により接着一体化されたことを特徴とする外壁の耐火構造用の耐火パネル。
【請求項2】
請求項1において、
火山性ガラス質複層板の表面及び裏面の少なくとも一方に気体を遮蔽する気体遮蔽層が設けられていることを特徴とする外壁の耐火構造用の耐火パネル。
【請求項3】
請求項2において、
気体遮蔽層は、無機物を主成分とする不燃性塗料であることを特徴とする外壁の耐火構造用の耐火パネル。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの耐火パネルが建物の外壁に火山性ガラス質複層板を建物の外側に配置して施工されていることを特徴とする外壁の耐火構造。