(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-21134(P2016-21134A)
(43)【公開日】2016年2月4日
(54)【発明の名称】タッチペン及びそのペン先
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20160108BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20160108BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/044 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-144332(P2014-144332)
(22)【出願日】2014年7月14日
(71)【出願人】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100132595
【弁理士】
【氏名又は名称】袴田 眞志
(72)【発明者】
【氏名】川北 幸司
(72)【発明者】
【氏名】土橋 守幸
(57)【要約】
【課題】タッチパネルでの位置検出精度及び書き心地がよく、かつ、タッチパネルを傷つけることを防止することが可能なアクティブ式のタッチペン及びタッチペンのペン先を提供することを目的とする。
【解決手段】アクティブ式のタッチペンであって、ペン本体と、前記ペン本体に交換可能に装着されるペン先と、を備え、前記ペン先は、金属芯と、前記金属芯を覆う表面層と、前記金属芯と前記表面層の間に形成された中間層とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブ式のタッチペンであって、
ペン本体と、
前記ペン本体に交換可能に装着されるペン先と、
を備え、
前記ペン先は、
金属芯と、前記金属芯を覆う表面層と、前記金属芯と前記表面層の間に形成された中間層とを備えたことを特徴とするタッチペン。
【請求項2】
前記金属芯、前記表面層、及び前記中間層の摩耗強度は、前記金属芯>前記中間層>前記表面層であることを特徴とする請求項1に記載のタッチペン。
【請求項3】
前記ペン本体は、前記金属芯に電界を発生させる電子回路を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタッチペン。
【請求項4】
前記表面層は、フェルトであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のタッチペン。
【請求項5】
前記中間層は、POMであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載のタッチペン。
【請求項6】
前記中間層と前記表面層は異なる色で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のタッチペン。
【請求項7】
アクティブ式のタッチペンのペン先であって、
前記タッチペンのペン本体に交換可能に装着され、
金属芯と、前記金属芯を覆う表面層と、前記金属芯と前記表面層の間に形成された中間層とを備えたことを特徴とするタッチペンのペン先。
【請求項8】
前記金属芯、前記表面層、及び前記中間層の摩耗強度は、前記金属芯>前記中間層>前記表面層であることを特徴とする請求項7に記載のタッチペンのペン先。
【請求項9】
前記表面層は、フェルトであることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のタッチペンのペン先。
【請求項10】
前記中間層は、POMであることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれか1つに記載のタッチペンのペン先。
【請求項11】
前記中間層と前記表面層は異なる色で形成されていることを特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか1つに記載のタッチペンのペン先。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチペン及びそのペン先に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、携帯型情報機器(タブレット、ノートPC、スマートフォン、携帯電話、PDA等)、デジタルオーディオプレーヤー、携帯ゲーム機、カーナビゲーション装置、コピー機、金融機関のATM、及び駅や飲食店の自動券売機など多方面に利用されている。このようなタッチパネルの操作は、画像が表示されるディスプレイ表面の所望の位置を、指、タッチペンやスタイラスなどと呼ばれる専用のペン(以下、「タッチペン」と称す。)でタッチ又は押圧することにより行う。
【0003】
タッチパネルには、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式などがある。ここで、静電容量方式のタッチパネルでは、指先あるいはペンと導電膜との間で静電容量の変化を捉えることで、ディスプレイ上の入力位置を検出する。
【0004】
かかる静電容量方式のタッチパネルに用いるタッチペンは、パッシブペンとアクティブペンがある。パッシブペンは、一般的に、ペンホルダーと、このペンホルダーの先端に取り付けられた、導電性ゴム等の柔らかい材質のペン先とから主に構成される。ペン先に柔らかい材質を使用しているのは、静電容量の変化を検出するためにタッチパネルとの接触面積を大きくする必要があるためである。このように、パッシブペンでは、タッチパネルとの接触面積を大きくする必要があるため、ペン先を細くすることができず、細い文字の筆記等に向いていない。
【0005】
他方、アクティブペンは、主として、ペンホルダーと、このペンホルダーの先端に取り付けられたペン先と、ペン先から電界を発生させる、ペンホルダーの内部に設けられた電気回路とで構成されている。アクティブペンでは、ペン先から電界を発生させるため、タッチパネルでの位置検出精度が比較的よく、ペン先を細くすることができる。
図6〜
図8は、タッチペンのペン先の一例を示す模式断面図である。
【0006】
図6に示すように、ペン先として金属芯101をPOM(ポリアセタール)102で被覆したものを使用すると、タッチパネルでの位置検出精度はよいが滑り安いため書き心地があまりよくない。また、
図7に示すように、ペン先として導電性フェルト103を使用すると、書き心地がよいが金属芯を使用したものに比べて位置検出精度が低い。また、
図8に示すように、金属芯101にフェルト104を被覆したものは、位置検出精度及び書き心地がよいが、耐摩耗性が低いため摩耗によりフェルトが削れて金属芯が出ると、タッチパネルを傷つけてしまう場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−65147号公報
【特許文献2】実開平5−30941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、タッチパネルでの位置検出精度及び書き心地がよく、かつ、タッチパネルを傷つけることを防止することが可能なアクティブ式のタッチペン及びそのペン先を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、アクティブ式のタッチペンであって、ペン本体と、前記ペン本体に交換可能に装着されるペン先と、を備え、前記ペン先は、金属芯と、前記金属芯を覆う表面層と、前記金属芯と前記表面層の間に形成された中間層とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記金属芯、前記表面層、及び前記中間層の摩耗強度は、前記金属芯>前記中間層>前記表面層であることが望ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記ペン本体は、前記金属芯に電界を発生させる電子回路を備えることが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記表面層は、フェルトであることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記中間層は、POMであることが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記中間層と前記表面層は異なる色で形成されていることが望ましい。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、アクティブ式のタッチペンのペン先であって、前記タッチペンのペン本体に交換可能に装着され、金属芯と、前記金属芯を覆う表面層と、前記金属芯と前記表面層の間に形成された中間層とを備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記金属芯、前記表面層、及び前記中間層の摩耗強度は、前記金属芯>前記中間層>前記表面層であることが望ましい。
【0017】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記表面層は、フェルトであることが望ましい。
【0018】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記中間層は、POMであることが望ましい。
【0019】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記中間層と前記表面層は異なる色で形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、位置検出精度及び書き心地がよく、かつ、タッチパネルを傷つけることを防止することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係るコンピュータシステムの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のタッチペンのペン先の模式断面図である。
【
図4】
図4は、ペン本体にペン先を取り付けた状態(タッチペン)を示す模式断面図である。
【
図5】
図5は、ペン先の表面層が摩耗により削れた状態を説明するための図である。
【
図6】
図6は、タッチペンのペン先の一例を示す模式断面図である。
【
図7】
図7は、タッチペンのペン先の一例を示す模式断面図である。
【
図8】
図8は、タッチペンのペン先の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るタッチペン及びそのペン先の実施の形態について説明する。本発明の構成要素は、本明細書の図面に一般に示してあるが、様々な構成で広く多様に配置し設計してもよいことは容易に理解できる。したがって、本発明のタッチペン及びそのペン先の実施の形態についての以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に示す本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の選択した実施の形態の一例を示すものであって、本明細書の特許請求の範囲に示す本発明と矛盾無く、装置、構成、構造についての選択した実施の形態を単に示すものである。当業者は、特定の細目の1つ以上が無くても、又は他の方法、部品、材料でも本発明を実現できることが理解できる。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るコンピュータシステムの概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、コンピュータシステム1は、タブレット型コンピュータ10と、タブレット型コンピュータ10に座標入力を与えるためのタッチペン20と、を備えている。タブレット型コンピュータ10は、略箱形状の筐体11の表面にタッチパネル12を収納すると共に、筐体11の内部に、タッチパネル12の表示及び座標検出を制御する駆動検出部等の各種電子部品を搭載した基板を収納している。
【0024】
タッチパネル12は、静電容量式のタッチパネルであり、指又はタッチペン20により、座標入力が可能に構成されている。タッチパネル12は、X方向及びY方向に複数配列されたITOを備えており、上述の駆動検出部で、タッチパネル12を駆動し、指による静電容量の変化、及びタッチペン20のペン先40により発生する所定周波数の交流電界による静電容量の変化を検出することで、指又はタッチペン20による座標入力が可能となっている。
【0025】
タッチペン20は、ペン本体30とペン本体30に対して交換可能に構成されたペン先40とを備えている。タッチペン20は、電源スイッチ31がONされると、周波数f1の交流電界(例えば、正弦波信号)を発生し、さらに、ペン先40が押下されると、周波数f2(但し、f2>f1)の交流電界を発生し、駆動検出部では、これらの交流電界による静電容量の変化を検出することができる。タブレット型コンピュータ10では、ペン先40がタッチパネル12にタッチされた場合に、カーソルを表示し、ペン先40をタッチパネル12で押下した場合に、描画(筆記)を開始することにしてもよい。
【0026】
図2は、
図1のペン先40の模式断面図、
図3は、
図1のペン本体30の模式断面図、
図4は、ペン本体30にペン先40を装着した状態(タッチペン)を示す模式断面図、
図5は、ペン先40の表面層が摩耗により削れた状態を説明するための図である。
【0027】
図2〜
図4において、ペン本体30は、中空のシリンダーであるペン本体部21と、ペン本体部21に収容される基板22と、を備えている。ペン本体部30は、電源スイッチ31が設けられている。ペン本体部1は、プラスチックなどの材料を用いてユーザが手で持って操作するのに好適な大きさ及び形状に形成されている。
【0028】
基板22には、ペン先40を摺動可能に保持するホルダー23と、バッテリ32、トランスデューサー33、コントロールIC34、圧力検出部35が搭載されている。ホルダー23は、ペン先40が挿入される挿入孔23aと、ペン先40を外向きに付勢するスプリング23bとを備えている。圧力検出部35は、ペン先40がタッチパネル12などに当接され、その押圧力によってペン先40がスプリング23bの弾性力に抗して押し込まれた際の圧力を検出して、コントロールIC34に出力する。なお、圧力検出部35でペン先40の押下を検出することとしたが、これに限られるものではなく、他の公知の検出方法を使用してもよい。
【0029】
バッテリ32は、リチウム電池やアルカリ電池等の電池である。電源スイッチ31は、バッテリ32とコントロールIC34間に電気的に接続され、バッテリ32から出力される電力をオン及びオフするために用いられる。電源スイッチ31がオフの状態では、タッチペン20は、タッチパネル12に接触するためのユーザの指をシミュレートするためにパッシブタッチペンとして用いられる。
【0030】
ユーザが、電源スイッチ31をオンすると、バッテリ32からコントロールIC34に電力が供給され、コントロールIC34は、電圧レベルを調整してトランスデューサー33及び圧力検出部35に電圧を供給する。トランスデューサー33は電圧が供給されると、発振を開始して正弦波信号を生成し、アクティブタッチペンとして用いられる。
【0031】
トランスデューサー33は、例えば、電圧制御発振器であり、ペン先40の金属芯41と電気的に接続されている。トランスデューサー33は、コントロールIC34により出力される電圧に基づいて正弦波信号(周波数f1,振幅A1)を生成し、正弦波信号をペン先40の金属芯41を通じて送信し、タッチパネル12はこれを受信する。
【0032】
コントロールIC34は、圧力検出部35の圧力検出結果に基づいて、ペン先40の押下を検出した場合には、トランスデューサー33に出力する電圧を変更し、正弦波信号(周波数f2(但し、f2>f1),振幅A1)を生成させる。
【0033】
本実施の形態では、タッチパネル12での位置検出精度及び書き心地がよく、かつ、タッチパネル12を傷つけることを防止するために、ペン先40を、金属芯41と、金属芯41を覆う表面層43と、金属芯41と表面層43の間に形成された中間層42とで形成している。摩耗強度(耐摩耗性)は、金属芯41>中間層42>表面層43とすることが望ましい。
【0034】
金属芯41は、略キノコ形状を呈し、ホルダー23の挿入孔23aに挿入される挿入部41aと、ペン本体部21から突出する頭部41bとで構成されている。金属芯41は、例えば、アルミニウム、亜鉛、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、イリジウム、ロジウム、コバルト、オスミウム、ルテニウム、鉄等の金属材料を使用することができ、例えば、導電性・経済性・抗菌性等の点から、金、銀、銅等の材料が望ましい。
【0035】
中間層42は、金属芯41の頭部41bを被覆する。中間層42は、表面層43よりも摩耗強度(耐摩耗性)の高い材料が望ましく、例えば、POM(ポリアセタール)等のゴム材料を使用することができる。また、中間層42は、タッチパネル12を傷つけないように、タッチパネル12の表面のガラスの強度(例えば、JISの「H」規格で表現される)よりも強度の小さいものが望ましい。中間層22は、導電性及び非導電性の材料のいずれを使用してもよい。金属芯41から交流電界が発生するため、中間層22を非導電性の材料としても、タッチパネル12で高い位置検出精度で検出することができる。
【0036】
表面層43は、中間層42を被覆する。表面層43は、摩擦抵抗(摩擦係数)の高い材料が望ましく、例えば、フェルト等のプラスチック材料を使用することができる。これは、紙とペンを用いた筆記と同等の書き心地に近づけるためには、表面の摩擦抵抗を大きくすることが望ましいためである。また、表面層43は、タッチパネル12を傷つけないように、タッチパネル12の表面のガラスの強度(例えば、JISの「H」規格で表現される)よりも強度の小さいものが望ましい。また、表面層43は、導電性又は非導電性の材料を使用することができる。金属芯41から交流電界が発生するため、表面層43を非導電性の材料としても、タッチパネル12で高い位置検出精度で検出することができる。
【0037】
なお、表面層43が摩耗により削れて中間層32が露出したことが容易に認識できるように、中間層42と表面層43は、異なる色で形成するのが望ましく、例えば、中間層42を赤色、表面層43を黒色や白色で形成してもよい。
【0038】
例えば、
図5に示すように、ペン先40の使用による摩耗により表面層43が削れても、金属芯41が露出せず、中間層42が露出するため、タッチパネル12を傷つけることを防止することができる。また、中間層42と表面層43を異なる色で形成することにより、ユーザは中間層42の表面が露出したことを容易に視認することができる(例えば、中間層42の赤色が露出する)。ユーザは、中間層42が露出した場合にペン先40を交換すればよく、ユーザは、ペン先40の交換時期を容易に判断することができる。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、アクティブ式のタッチペン20において、ペン本体30と、ペン本体30に交換可能に装着されるペン先40と、を備え、ペン先40は、金属芯41と、金属芯41を覆う表面層43と、金属芯41と表面層43の間に形成された中間層42とを備えているので、タッチパネル12位置検出精度及び書き心地がよく、かつ、タッチパネル12を傷つけることを防止することが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、金属芯41、表面層43、及び中間層42の摩耗強度は、金属芯>中間層>表面層としたので、表面層43が削れても表面層43よりも摩耗強度の高い中間層42あるため、金属芯41が露出してタッチパネル12を傷つけることを防止することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、中間層42と表面層43を異なる色で形成することとしたので、ユーザは、表面層43が削れて、中間層42が露出したことを容易に判断することができ、容易にペン先40の交換時期を判断することが可能となる。
【0042】
本発明に係るタッチペン及びそのペン先は、各種タッチパネルに利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 コンピュータシステム
10 タブレット型コンピュータ
11 筐体
12 タッチパネル
20 タッチペン
21 ペン本体部
22 基板
23 ホルダー
23a 挿入孔
23b スプリング
30 ペン本体
31 電源スイッチ
32 バッテリ
33 トランスデューサー
34 コントロールIC
35 圧力検出部
40 ペン先
41 金属芯
41a 挿入部
41b 頭部
42 中間層
43 表面層