(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-211911(P2016-211911A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】姿勢検出装置、姿勢検出方法及び姿勢検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 21/22 20060101AFI20161118BHJP
【FI】
G01B21/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-94015(P2015-94015)
(22)【出願日】2015年5月1日
(71)【出願人】
【識別番号】515119893
【氏名又は名称】株式会社知能機械研究所
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】100112760
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 五雄
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 和人
(72)【発明者】
【氏名】登坂 博和
【テーマコード(参考)】
2F069
【Fターム(参考)】
2F069AA83
2F069AA93
2F069BB04
2F069BB40
2F069DD25
2F069GG04
2F069GG41
2F069GG64
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易に、複数の部位間における3次元姿勢の関係を、精度を確保しつつ検出することができる姿勢検出装置、方法を提供する。
【解決手段】慣性センサ110
j(j=1〜3)が、装着された部位の基準座標系に対する姿勢を検出し、四元数q
jとして出力する。四元数q
1,q
2,q
3を受け、相対姿勢導出部120が、絶対値が「1」の正規化四元数Nq
1,Nq
2,Nq
3を算出した後、それらの共役四元数(Nq
1)
*,(Nq
2)
*,(Nq
3)
*を算出する。相対姿勢導出部120が、(Nq
1)
*・Nq
2を算出することにより、慣性センサ110
1の装着部位に対する慣性センサ110
2の装着部位の相対姿勢を反映した正規化四元数Nq
12を算出する。相対姿勢導出部120が、(Nq
2)
*・Nq
3を算出することにより、慣性センサ110
2の装着部位に対する慣性センサ110
3の装着部位の相対姿勢を反映した正規化四元数Nq
23を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象物の第1部位に装着され、前記第1部位に固有の3次元座標系である第1座標系において定義される第1方向を基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第1部位の前記第1方向回りの回転角の1成分を検出する第1検出部と;
第2対象物の第2部位に装着され、前記第2部位に固有の3次元座標系である第2座標系において定義される第2方向を前記基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第2部位の前記第2方向回りの回転角の1成分を検出する第2検出部と;
前記第1検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第1検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第1四元数の共役四元数と、前記第2検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第2検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第2四元数との四元数積を算出することにより、前記第1部位に対する前記第2部位の姿勢情報を導出する相対姿勢導出部と;
を備えることを特徴とする姿勢検出装置。
【請求項2】
前記第1対象物と前記第2対象物とは同一物である、ことを特徴とする請求項1に記載の姿勢検出装置。
【請求項3】
前記第1部位の一方の端部と、前記第2部位の一方の端部とは、第1関節機構を介して接続されている、ことを特徴とする請求項2に記載の姿勢検出装置。
【請求項4】
前記第2部位の他方の端部と、一方の端部とが第2関節機構を介して接続された第3部位に装着され、前記第3部位に固有の3次元座標系である第3座標系において定義される第3方向を前記基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第3部位の前記第3方向回りの回転角の1成分を検出する第3検出部を更に備え、
前記相対姿勢導出部は、前記第2四元数の共役四元数と、前記第3検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第3検出部により検出された1成分をスカラ部の1成分とする第3四元数との四元数積を算出することにより、前記第2部位に対する前記第3部位の姿勢情報を導出する、
ことを特徴とする請求項3に記載の姿勢検出装置。
【請求項5】
前記同一物は手部である、ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の姿勢検出装置。
【請求項6】
第1対象物の第1部位に装着され、前記第1部位に固有の3次元座標系である第1座標系において定義される第1方向を基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第1部位の前記第1方向回りの回転角の1成分を検出する第1検出部と;第2対象物の第2部位に装着され、前記第2部位に固有の3次元座標系である第2座標系において定義される第2方向を前記基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第2部位の前記第2方向回りの回転角の1成分を検出する第2検出部と;を備える姿勢検出装置において使用される姿勢検出方法であって、
前記第1検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第1検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第1四元数の共役四元数を算出する第1算出工程と;
前記共役四元数と、前記第2検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第2検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第2四元数との四元数積を算出することにより、前記第1部位に対する前記第2部位の姿勢情報を導出する第2算出工程と;
を備えることを特徴とする姿勢検出方法。
【請求項7】
姿勢検出装置が有するコンピュータに、請求項6に記載の姿勢検出方法を実行させる、ことを特徴とする姿勢検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、姿勢検出装置、姿勢検出方法及び姿勢検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人体等の構造体の3次元姿勢の検出は、スポーツフォームの動作分析、スポーツ医療、リハビリテーション患者の生活活動分析、ロボット技術開発等の様々な分野において行われてきている。また、こうした3次元姿勢の検出結果は、アニメーションやゲームなどのキャラクターに人間らしい動きを再現させるためにも利用されている。このように、構造体の3次元姿勢の検出は、広範囲な分野において行われている。
【0003】
かかる構造体の3次元姿勢の検出の一つの技術として、対象部位(例えば、人体の頭部)の複数の所定位置に、赤外線を点滅発光する発光手段をマーカとして固定する技術が提案されている(特許文献1参照:以下、「従来例1」と呼ぶ)。この従来例1の技術では、対象部位を含む赤外線画像を撮影し、当該赤外線画像を用いて発光手段の3次元位置情報を検出する。そして、当該検出結果に基づいて、3次元空間における対象部位の姿勢を検出するようになっている。
【0004】
また、構造体の3次元姿勢の検出の一つの技術として、深度データを利用する技術も提案されている(特許文献2参照:以下、「従来例2」と呼ぶ)。この従来例2の技術では、深度センサに基づいて、頭部のトラッキング、手のトラッキング、姿勢推定等を行うようになっている。
【0005】
さらに、関節機構を介して接続された部位間の姿勢の関係を曲げセンサにより検出する技術が提案されている(特許文献3参照:以下、「従来例3」と呼ぶ)。この従来例3の技術では、曲げセンサが、手指の伸びる方向に沿って当該手指の関節を跨ぐように配置される。そして、曲げセンサによる検出結果に基づいて、関節機構を介して接続された部位間の姿勢関係を取得するようになっている。
【0006】
また、部位間の姿勢の関係を検出する技術ではないが、車両等の3次元姿勢を検出する技術として、四元数(クォータニオン)を利用する技術も提案されている(特許文献4参照:以下、「従来例4」と呼ぶ)。この従来例4の技術では、車両に設けられた車速センサ、2軸加速度センサ及び1軸ジャイロセンサによる検出結果に基づいて、基準座標系(グローバル系)における車両の3次元姿勢を算出するのに際して、四元数の演算子を用いるようになっている。
【0007】
なお、3次元の姿勢の検出や制御に際して四元数を利用することは広く行われており、近年においては、装着された部位の3次元姿勢の検出結果を四元数表現する慣性センサ素子が市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−127536号公報
【特許文献2】特表2007−514211号公報
【特許文献3】特開2009−112578号公報
【特許文献4】特開2009−053039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来例1の技術では、対象部位の3次元姿勢がいかなる姿勢であっても、マーカから射出された光を検出することができるようになっていなければ、マーカを見失う(いわゆるロストマーカ)問題が発生し得る。かかるロストマーカの問題を発生させないためには、対象部位を隈なく取り囲むように光検出器を配置することが必要となる。この結果、簡易に、対象部位の3次元姿勢を検出できるとはいいがたかった。
【0010】
また、上述した従来例2の技術では、深度センサと対象部位とが正対した場合には、検出精度が著しく低下する。このため、3次元姿勢の精度を確保するためには、検出方向が互いに異なる深度センサを用意することが必要であった。こうした場合には、複数の深度センサによる検出結果の解析も複雑なものとなってしまう。この結果、簡易に、対象部位の3次元姿勢を、検出精度を確保しつつ検出できるとはいいがたかった。
【0011】
また、上述した従来例3の技術では、1軸回りの回転姿勢は検出することが可能であるが、複数軸のそれぞれの軸回りの回転姿勢は検出するが困難である。この結果、対象部位の様々な3次元姿勢を検出できるとはいいがいたい。
【0012】
また、上述した従来例4の技術では、対象物における部位間の姿勢変化を考慮せずに、対象物の基準座標系における3次元姿勢を検出する。この結果、従来例4の技術のみでは、複数の部位間における3次元姿勢の関係を検出することはできない。
【0013】
このため、簡易に、複数の部位間における3次元姿勢の関係を検出することができる技術が望まれている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0014】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、簡易に、複数の部位間における3次元姿勢の関係を、検出精度を確保しつつ検出することができる姿勢検出装置、姿勢検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の姿勢検出装置は、第1対象物の第1部位に装着され、前記第1部位に固有の3次元座標系である第1座標系において定義される第1方向を基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第1部位の前記第1方向回りの回転角の1成分を検出する第1検出部と;第2対象物の第2部位に装着され、前記第2部位に固有の3次元座標系である第2座標系において定義される第2方向を前記基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第2部位の前記第2方向回りの回転角の1成分を検出する第2検出部と;前記第1検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第1検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第1四元数の共役四元数と、前記第2検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第2検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第2四元数との四元数積を算出することにより、前記第1部位に対する前記第2部位の姿勢情報を導出する相対姿勢導出部と;を備えることを特徴とする姿勢検出装置である。
【0016】
この姿勢検出装置では、第1対象物の第1部位に装着された第1検出部が、第1部位に固有の3次元座標系である第1座標系において定義される第1方向を基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、第1部位の第1方向回りの回転角の1成分を検出する。また、第2対象物の第2部位に装着された第2検出部が、第2部位に固有の3次元座標系である第2座標系において定義される第2方向を基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、第2部位の第2方向回りの回転角の1成分を検出する。
【0017】
次に、相対姿勢導出部が、第1検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、第1検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第1四元数を生成する。また、相対姿勢導出部が、第2検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、第2検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第2四元数を生成する。引き続き、相対姿勢導出部が、第1四元数の共役四元数と第2四元数とをこの順で乗算した四元数積を算出する。かかる四元数積は、第1部位に対する第2部位の3次元相対姿勢の情報となっている。
【0018】
したがって、本発明の姿勢検出装置によれば、第1部位に対する第2部位の3次元相対姿勢を、検出精度を確保しつつ検出することができる。
【0019】
本発明の姿勢検出装置では、前記第1対象物と前記第2対象物とを同一物とすることができる。この場合には、同一構造体における2つの部位間における3次元相対姿勢を検出することができる。例えば、同一の人体の異なる部位間の相対姿勢を検出することができる。
【0020】
ここで、前記第1部位の一方の端部と、前記第2部位の一方の端部とは、第1関節機構を介して接続されているとしてもよい。この場合には、第1関節機構を利用して行われる第1部位に対する第2部位の運動により変化する第1部位に対する第2部位の相対姿勢を検出することができる。例えば、人体の上腕に対する下腕の相対姿勢を検出することができる。
【0021】
さらに、前記第2部位の他方の端部と、一方の端部とが第2関節機構を介して接続された第3部位に装着され、前記第3部位に固有の3次元座標系である第3座標系において定義される第3方向を前記基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第3部位の前記第3方向回りの回転角の1成分を検出する第3検出部を更に備え、前記相対姿勢導出部は、前記第2四元数の共役四元数と、前記第3検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第3検出部により検出された1成分をスカラ部の1成分とする第3四元数との四元数積を算出することにより、前記第2部位に対する前記第3部位の姿勢情報を導出する構成とすることができる。
【0022】
この場合には、第3部位に装着された第3検出部が、第3部位に固有の3次元座標系である第3座標系において定義される第3方向を基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、第3部位の第3方向回りの回転角の1成分を検出する。次に、相対姿勢導出部が、第3検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、第3検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第3四元数を生成する。引き続き、相対姿勢導出部が、第2四元数の共役四元数と第3四元数とをこの順で乗算した四元数積を算出する。かかる四元数積は、第2部位に対する第3部位の3次元相対姿勢の情報となっている。このため、第1部位に対する第2部位の3次元相対姿勢に加えて、第2部位に対する第3部位の3次元相対姿勢を検出することができる。
【0023】
なお、第1対象物と第2対象物とを同一物とする場合には、前記同一物を手部とすることができる。この場合には、指の曲がりに対応する当該指の構成部位間における相対姿勢を検出することができる。
【0024】
本発明の姿勢検出方法は、第1対象物の第1部位に装着され、前記第1部位に固有の3次元座標系である第1座標系において定義される第1方向を基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第1部位の前記第1方向回りの回転角の1成分を検出する第1検出部と;第2対象物の第2部位に装着され、前記第2部位に固有の3次元座標系である第2座標系において定義される第2方向を前記基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、前記第2部位の前記第2方向回りの回転角の1成分を検出する第2検出部と;を備える姿勢検出装置において使用される姿勢検出方法であって、前記第1検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第1検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第1四元数の共役四元数を算出する第1算出工程と;前記共役四元数と、前記第2検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、前記第2検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第2四元数との四元数積を算出することにより、前記第1部位に対する前記第2部位の姿勢情報を導出する第2算出工程と;を備えることを特徴とする姿勢検出方法である。
【0025】
この姿勢検出方法では、第1算出工程において、第1検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、第1検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第1四元数の共役四元数を算出する。引き続き、第2算出工程において、第1四元数の共役四元数と、第2検出部により検出された3成分をベクトル部の成分とし、第2検出部により検出された1成分をスカラ部の成分とする第2四元数とを、この順で乗算した四元数積を算出する。かかる四元数積は、第1部位に対する第2部位の3次元相対姿勢の情報となっている。
【0026】
したがって、本発明の姿勢検出方法によれば、第1部位に対する第2部位の3次元相対姿勢を、検出精度を確保しつつ検出することができる。
【0027】
本発明の姿勢検出プログラムは、姿勢検出装置が有するコンピュータに、本発明の姿勢検出方法を実行させる、ことを特徴とする姿勢検出プログラムである。この姿勢検出プログラムを、姿勢検出装置が有するコンピュータに実行させることにより、姿勢検出装置により、上述した本発明の姿勢検出方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明の姿勢検出装置によれば、簡易に、複数の部位間における3次元姿勢の関係を、検出精度を確保しつつ検出することができる。また、本発明の姿勢検出方法を姿勢検出装置が使用することにより、簡易に、複数の部位間における3次元姿勢の関係を、検出精度を確保しつつ検出することができる。また、本発明の姿勢検出プログラムを姿勢検出装置が有するコンピュータが実行することにより、簡易に、複数の部位間における3次元姿勢の関係を、検出精度を確保しつつ検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る姿勢検出装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の構成要素の配置例を説明するための図である。
【
図3】
図1の相対姿勢導出部の処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態を、
図1〜
図3を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
[本実施形態で利用する原理]
まず、本実施形態で利用する原理について説明する。
【0032】
なお、以下の説明においては、「q」との記載は、四元数を表しているものとする。この四元数qは、周知のように、4つの成分を有している。このため、四元数の表記に際しては、「q(X,Y,Z,W)」とも記載する。ここで、「(X,Y,Z)」をベクトル成分V(q)とも呼び、「W」をスカラ成分S(q)と呼ぶものとする。
【0033】
また、四元数q
1と四元数q
2との積は、やはり四元数となっている。そして、四元数同士の積については、交換法則が、一般には成立しない。
【0034】
また、四元数qの共役四元数を「q
*」と表記するものとする。この共役四元数q
*を成分表示すると、(−X,−Y,−Z,W)となる。そして、四元数qと共役四元数q
*との積の値は、次の(1)で表される。
q・q
*=q
*・q=X
2+Y
2+Z
2+W
2 …(1)
ここで、(q・q
*)
1/2を四元数qの絶対値と呼び、|q|と記すものとする。
【0035】
このため、絶対値が「1」の正規化四元数Nqが、次の(2)式により算出される。
Nq=q/|q| …(2)
【0036】
さて、特定部位に対する固有の3次元座標系において定義される特定方向を、基準3次元座標系において表現した場合の3成分をベクトル成分V(q)とし、特定部位の当該特定方向回りの回転角をスカラ成分S(q)とする四元数qは、当該特定部位の基準3次元座標における姿勢に対応している。こうして基準3次元座標における特定部位の姿勢に対応する四元数を用いることにより、3次元オイラー角を用いる場合に生じ得るジンバルロックの発生を回避することができるようになっている。
【0037】
かかる基準3次元座標における特定部位の姿勢に対応する四元数による表現を行った場合の第1部位の姿勢に対応する四元数が「q
1」であり、第2部位の姿勢に対応する四元数が「q
2」であったとする。この場合、第1部位に対する第2部位の相対姿勢の四元数を「q
12」とすると、次の(3)式が成立する。
q
2=q
1・q
12 …(3)
【0038】
(3)式の両辺に左側から四元数q
1の共役四元数q
1*を乗じると、次の(4)式の通りとなる。
q
1*・q
2=q
1*・q
1・q
12=|q
1|
2・q
12 …(4)
【0039】
このため、第1部位に対する第2部位の相対姿勢を反映した四元数q
12と、第1部位の姿勢を反映した四元数q
1及び第2部位の姿勢を反映した四元数q
2との関係は、次の(5)式で表される通りとなる。
q
12∝q
1*・q
2 …(5)
【0040】
なお、正規化四元数Nq
1,Nq
2を用いると、次の(6)式により、第1部位に対する第2部位の相対姿勢を反映した正規化四元数Nq
12が算出される。
Nq
12=(Nq
1*)・Nq
2 …(6)
【0041】
[構成]
次に、一実施形態に係る姿勢検出装置の構成について説明する。
【0042】
図1に示されるように、本実施形態に係る姿勢検出装置100は、慣性センサ110
1〜110
3を備えている。また、姿勢検出装置100は、相対姿勢導出部120を備えている。
【0043】
上記の慣性センサ110
j(j=1〜3)のそれぞれは、対応する部位に固有の3次元座標系において定義される特定方向を基準3次元座標系において表現した場合の3成分、及び、対応する部位の特定方向回りの回転角の1成分を検出する。そして、検出された当該3成分をベクトル成分V(q
j)とし、検出された当該1成分をスカラ成分S(q
j)とする四元数q
jを相対姿勢導出部120へ送る。
【0044】
なお、慣性センサ110
jとしては、検出結果を四元数として出力する市販の慣性センサを採用することができる。
【0045】
上記の相対姿勢導出部120は、慣性センサ110
1〜110
3から送られた四元数q
1〜q
3を受ける。そして、相対姿勢導出部120は、四元数q
1〜q
3に基づいて、慣性センサ110
1〜110
3に対応する部位間の相対姿勢を導出する。そして、相対姿勢導出部120は、導出された相対姿勢の情報ATDを、無線通信を利用して情報処理装置200へ送信する。
【0046】
なお、相対姿勢導出部120による相対姿勢の導出処理については、後述する。
【0047】
図2には、慣性センサ110
1〜110
3及び相対姿勢導出部120の配置位置がしめされている。この
図2に示されるように、慣性センサ110
1は、人の手部HNDの手背部に装着される。また、慣性センサ110
2は、示指の基節骨対応部位に装着される。また、慣性センサ110
3は、示指の中節骨対応部位に装着される。さらに、相対姿勢導出部120は、手首部の背面側に装着される。
【0048】
なお、本実施形態では、慣性センサ110
j(j=1〜3)と相対姿勢導出部120とは、配線部材WR
jにより接続されている。そして、慣性センサ110
jは、検出結果である四元数q
jを、配線部材WR
jを介して相対姿勢導出部120へ送るようになっている。
【0049】
[動作]
次に、上記のように構成された姿勢検出装置100の動作について、相対姿勢導出部120により行われる相対姿勢の導出処理に主に着目して説明する。
【0050】
なお、慣性センサ110
j(j=1〜3)のそれぞれは既に動作を開始しており、検出結果である四元数q
jを逐次相対姿勢導出部120へ送っているものとする。
【0051】
こうした状況のもとで、相対姿勢導出部120により行われる相対姿勢の導出処理が行われる。かかる相対姿勢の導出処理では、
図3に示されるように、まず、ステップS11において、相対姿勢導出部120が、四元数q
1〜q
3を取得する。
【0052】
引き続き、ステップS12において、相対姿勢導出部120が、慣性センサ110
1の装着部位に対する慣性センサ110
2の装着部位の相対姿勢を反映した四元数q
12を算出する。また、相対姿勢導出部120が、慣性センサ110
2の装着部位に対する慣性センサ110
3の装着部位の相対姿勢を反映した四元数q
23を算出する。
【0053】
かかる算出に際して、相対姿勢導出部120は、まず、次の(7)〜(9)式により、正規化四元数Nq
1,Nq
2,Nq
3を算出する。
Nq
1=q
1/|q
1| …(7)
Nq
2=q
2/|q
2| …(8)
Nq
3=q
3/|q
3| …(9)
【0054】
引き続き、相対姿勢導出部120は、正規化四元数Nq
1,Nq
2,Nq
3の共役四元数(Nq
1)
*,(Nq
2)
*,(Nq
3)
*を算出する。そして、相対姿勢導出部120は、次の(10),(11)式により、正規化四元数Nq
12,Nq
23を算出する。
Nq
12=(Nq
1)
*・Nq
2 …(10)
Nq
23=(Nq
2)
*・Nq
3 …(11)
【0055】
こうして、ステップS12の処理が終了すると、処理はステップS13へ進む。このステップS13では、相対姿勢導出部120が、算出された四元数Nq
12,Nq
23を、慣性センサ110
1の装着部位に対する慣性センサ110
2の装着部位の相対姿勢、及び、慣性センサ110
2の装着部位に対する慣性センサ110
3の装着部位の相対姿勢の情報ATDとして、情報処理装置200へ送る。
【0056】
次いで、ステップS14において、相対姿勢導出部120が、新たな四元数q
1〜q
3を取得する。引き続き、ステップS15において、相対姿勢導出部120が、上述したステップS12の場合と同様にして、新たな正規化四元数Nq
12,Nq
23を算出する。そして、ステップS16において、相対姿勢導出部120が、ステップS15において新たに算出された正規化四元数Nq
12,Nq
23を、新たな相対姿勢の情報ATDとして、情報処理装置200へ送る。
【0057】
こうして、ステップS16の処理が終了すると、処理はステップS14へ戻る。以後、ステップS14〜S16の処理が繰り返される。この結果、慣性センサ110
1の装着部位に対する慣性センサ110
2の装着部位の相対姿勢、及び、慣性センサ110
2の装着部位に対する慣性センサ110
3の装着部位の相対姿勢が逐次検出され、検出結果が逐次、相対姿勢の情報ATDとして、情報処理装置200へ送られる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態では、慣性センサ110
1が、手部HNDの手背部位の基準3次元座標系に対する姿勢を検出し、検出結果を四元数q
1として出力する。また、慣性センサ110
2が、示指の基節骨対応部位の基準3次元座標に対する姿勢を検出し、検出結果を四元数q
2として出力する。さらに、慣性センサ110
3が、示指の中節骨対応部位の基準3次元座標に対する姿勢を検出し、検出結果を四元数q
3として出力する。
【0059】
これらの四元数q
1,q
2,q
3を受けると、相対姿勢導出部120が、絶対値が「1」の正規化四元数Nq
1,Nq
2,Nq
3を算出した後、正規化四元数Nq
1,Nq
2,Nq
3の共役四元数(Nq
1)
*,(Nq
2)
*,(Nq
3)
*を算出する。そして、相対姿勢導出部120が、上述した(10),(11)式により、慣性センサ110
1の装着部位に対する慣性センサ110
2の装着部位の相対姿勢を反映した正規化四元数Nq
12、及び、慣性センサ110
2の装着部位に対する慣性センサ110
3の装着部位の相対姿勢を反映した正規化四元数Nq
23を算出する。
【0060】
したがって、本実施形態によれば、手背部位に対する示指の基節骨対応部位の相対姿勢、及び、示指の基節骨対応部位に対する示指の中節骨対応部位の相対姿勢を、簡易に、検出精度を確保しつつ検出することができる。
【0061】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0062】
例えば、上記の実施形態では、慣性センサ110
mの装着部位に対する慣性センサ110
nの装着部位の相対姿勢を反映した正規化四元数Nq
mnを、(Nq
m)
*・Nq
nを算出することにより求めるようにした。これに対し、慣性センサ110
mの装着部位に対する慣性センサ110
nの装着部位の相対姿勢を反映した四元数を、(q
m)
*・q
nを算出することにより求めるようにしてもよい。
【0063】
また、人の手部における手背部位に対する示指の基節骨対応部位の相対姿勢、及び、示指の基節骨対応部位に対する示指の中節骨対応部位の相対姿勢を検出するようにした。これに対し、示指に代えて、又は、示指と併せて、他の指について、実施形態と同様の姿勢検出を行うようにしてもよい。
【0064】
また、人体における任意の複数の部位間に関する相対姿勢を検出するようにしてもよい。また、人以外の構造体、例えばロボット等の任意の複数の部位間の相対姿勢を検出するようにしてもよい。さらに、同一の構造体における任意の複数の部位間に関する相対姿勢を検出するのではなく、異なる複数の物体における部位間に関する相対姿勢を検出するようにしてもよい。
【0065】
また、上記の実施形態では、慣性センサと相対姿勢導出部とを有線接続するようにしたが、無線通信を利用して接続するようにしてもよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、相対姿勢導出部を手首部に装着するようにしたが、人体の他の部位に装着するようにしてもよい。
【0067】
さらに、相対姿勢導出部を人体等の構造体から離隔した位置に配置するようにしてもよい。こうした場合には、情報処理装置の機能の一部として、相対姿勢導出部の機能を実装するようにしてもよい。
【0068】
なお、相対姿勢導出部を、CPU(Central Processing Unit)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行することにより、上記の実施形態における相対姿勢導出部の機能を実行するようにしてもよい。このプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明の姿勢検出装置は、第1部位に対する第2部位の相対姿勢を検出する姿勢検出装置に適用できる。また、本発明の姿勢検出方法は、姿勢検出装置が第1部位に対する第2部位の相対姿勢を検出する際に使用される方法に適用できる。また、本発明の姿勢検出プログラムは、第1部位に対する第2部位の相対姿勢を検出する際に、姿勢検出装置が有するコンピュータが実行するプログラムに適用できる。
【符号の説明】
【0070】
100…姿勢検出装置、110
1…慣性センサ(第1検出部)、110
2…慣性センサ(第2検出部)、110
3…慣性センサ(第3検出部)、120…相対姿勢導出部、200…情報処理装置。