(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-212144(P2016-212144A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】再帰反射シート
(51)【国際特許分類】
G02B 5/124 20060101AFI20161118BHJP
【FI】
G02B5/124
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-92724(P2015-92724)
(22)【出願日】2015年4月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩見 敏明
(72)【発明者】
【氏名】林 智博
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042EA04
2H042EA12
2H042EA17
2H042EA20
(57)【要約】
【課題】 外観の色ムラを抑制した再帰反射シートを提供する。
【解決手段】 本発明の再帰反射シート1は、光が入射する第一表面11と、金属層50が形成される第二表面12とを有し、第一表面11より入射する光を第二表面12で再帰反射させる光透過性の再帰反射層10と、第一表面11を所定模様にて部分的に覆う状態で、第一表面11に設けられる光不透過性の第一着色層20と、第一表面11のうち第一着色層20が設けられない部分と第一着色層20の表面のうち再帰反射層10とは接しない部分とからなる凹凸状の面に設けられると共に、再帰反射層10より低い全光線透過率を有する光透過性の第二着色層30と、を備え、第二着色層30は、凹凸状の面に追従して形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が入射する第一表面と、金属層が形成される第二表面とを有し、前記第一表面より入射する光を前記第二表面で再帰反射させる光透過性の再帰反射層と、
前記第一表面を所定模様にて部分的に覆う状態で、前記第一表面に設けられる光不透過性の第一着色層と、
前記第一表面のうち前記第一着色層が設けられない部分と前記第一着色層の表面のうち前記再帰反射層とは接しない部分とからなる凹凸状の面に設けられると共に、前記再帰反射層より低い全光線透過率を有する光透過性の第二着色層と、
を備え、
前記第二着色層は、前記凹凸状の面に追従して形成される
ことを特徴とする再帰反射シート。
【請求項2】
前記第二着色層の厚みは、前記第一着色層の厚みより小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の再帰反射シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は再帰反射シートに関する。
【背景技術】
【0002】
入射した光を光源に向かって再帰反射させる再帰反射シートは、道路標識、工事標識、車両用ナンバープレート等の標示板に広く利用されている。そして、標示板において、文字や数字等の標示情報には、標示板の背景となる再帰反射シートの外観の色とは異なる色が付与されている。
【0003】
このような標示板に用いられる再帰反射シートとして、蒸着型キューブコーナー再帰反射シートが知られている。この蒸着型キューブコーナー再帰反射シートは、鏡面反射層の金属色の影響を受けて再帰反射シートの外観が暗く、標示板に用いた場合に、昼間において標示情報が読み取りにくく、明度の改善が要求されている。
【0004】
そこで、明度の改善のために、本出願人により下記特許文献1の蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートが提案されている。この蒸着型三角錐型キューブコーナー再帰反射シートは、多数の反射素子と保持体層とからなる反射素子層、反射素子層の保持体層側の界面に設置された表面保護層、および、反射素子層の反射素子部側の界面に設置された鏡面反射層を有しており、当該表面保護層と反射素子層との間に、明度の改善のために、所定模様(繰り返しパターン)で着色印刷層を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−290013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の再帰反射シートは、明度は改善されたものの、着色印刷層が所定模様で設けられるため、シートの外観に色ムラが生じている。そのため、このような再帰反射シートを標示板に使用した場合、標示板の背景の色が不均一となるため、この背景上に設けられる標示情報が読み取りにくいという問題が生じる虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、蒸着型再帰反射シートにおいて、明度が優れるとともに、外観の色ムラを抑制した再帰反射シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の再帰反射シートは、光が入射する第一表面と、金属層が形成される第二表面とを有し、前記第一表面より入射する光を前記第二表面で再帰反射させる光透過性の再帰反射層と、前記第一表面を所定模様にて部分的に覆う状態で、前記第一表面に設けられる光不透過性の第一着色層と、前記第一表面のうち前記第一着色層が設けられない部分と前記第一着色層の表面のうち前記再帰反射層とは接しない部分とからなる凹凸状の面に設けられると共に、前記再帰反射層より低い全光線透過率を有する光透過性の第二着色層と、を備え、前記第二着色層は、前記凹凸状の面に追従して形成されることを特徴とする。
【0009】
このような再帰反射シートでは、第二着色層が第一着色層に追従して形成されることにより、隣り合う第一着色層との間隙において、第二着色層の表面は、第一着色層と第一表面とからなる凹凸状の面に沿って起伏する。よって、当該間隙において、第一着色層の輪郭部付近に位置する第二着色層の部分が、当該間隙の中央部付近に位置する第二着色層の部分より厚くなることにより、第一着色層の輪郭部から当該間隙の中央部にかけて、色を漸次淡くすることができる。そのため、外観の色ムラの原因となる第一着色層の色と金属層の色との濃淡差に対して、その濃淡の変化が緩やかになるため、外観の色ムラを低減することができる。したがって、本発明の再帰反射シートは、明度改善のために、第一着色層が所定模様で設けられても、第二着色層により、外観の色ムラを抑制することができる。そして、本発明の再帰反射シートを標示板に使用した際には、標示板の明度を十分に確保でき、標示情報を読み取りやすくすることができる。
【0010】
また、前記第二着色層の厚みは、前記第一着色層の厚みより小さいことが好ましい。
【0011】
光透過性を有する着色層においては、層の厚みや着色剤の濃度を均一に制御することは困難であるため、着色層の全領域に亘って同一な色とすることは難しい。そのため、第二着色層においても、層の厚みや着色剤の濃度のバラツキにより、色のバラツキが多少ながらも生じている。そして、第二着色層を第一着色層より薄く形成した場合、厚みのバラツキが一層大きくなるため、第二着色層は、同系の様々な色が混在することになる。そのため、隣り合う第一着色層同士の各間隙において、第二着色層は、第一着色層の色と金属層の色との濃淡差に対して、その濃淡の変化を緩やかにするだけでなく、その濃淡の変化度合いや変化のさせ方を間隙毎に異ならせることができる。そして、それにより生じる視覚効果により、外観の色ムラをより一層抑制することができる。したがって、本発明の再帰反射シートを標示板に使用した際には、標示板の明度を十分に確保でき、標示情報をより一層読み取りやすくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、明度が優れるとともに、外観の色ムラを抑制した蒸着型再帰反射シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態における再帰反射シートの断面の様子を示す図である。
【
図2】第1実施形態における再帰反射シートの第一表面を正面から視た場合の様子を示す図である。
【
図3】第1実施形態における再帰反射シートの断面の様子を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「色ムラ」とは、あるシートの表面において、部分によって色の濃淡が異なり、表面の色が均一でなくなっているさまを意味する。また、本明細書において、「第一着色層の厚み」とは、再帰反射シートの厚み方向の断面において、再帰反射層の第一表面からの第一着色層の上面(略平坦面に相当する部分)までの距離を意味する。また、本明細書において、「第二着色層の厚み」とは、再帰反射シートの厚み方向の断面において、再帰反射層の第一表面と接する部分の厚みであって、再帰反射層の第一表面からの第二着色層の上面(略平坦面に相当する部分)までの距離を意味する。なお、各層のそれぞれの厚みは、再帰反射シートの任意の位置10点において、該当する部分の厚みを測定し、相加平均した厚みとする。
【0015】
本発明に好適となる第1実施形態について図面を用いながら詳細に説明する。
図1は、第1実施形態における再帰反射シートを示す図である。
図1に示すように、本実施形態における再帰反射シート1は、再帰反射層10、第一着色層20、第二着色層30、表面保護層40、金属層50および粘着剤層60を主な構成要素として備える。
【0016】
再帰反射層10は、光が入射する第一表面11と、金属層50が形成される第二表面12とを有し、第一表面11より入射する光を第二表面12で再帰反射させる光透過性の層である。
【0017】
再帰反射層10は、
図1に示すように、キューブコーナー型の反射素子部と、複数の反射素子部を保持する保持体層部とからなる層である。なお、三角錐や六角錐等の反射素子部を最密充填状に形成して再帰反射層10が採用された場合、反射性能が優れるので好ましい。このような再帰反射層10は、例えば、特開2008−70898に開示されている。
【0018】
このような再帰反射層10の材料としては、光学的特性に優れたものが良い。例えば、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0019】
また、再帰反射層10は、複数の微小ガラス球と、各微小ガラス球の一部を露出させる状態で、複数のガラス球を保持する保持層と、保持層から露出する微小ガラス球を覆う状態で保持層に積層され、微小ガラス球の焦点位置を調整する焦点層とから構成しても良い。この場合、保持層の焦点層側とは反対側の表面が第一表面となり、焦点層の保持層側とは反対側の表面が第二表面となる。このような再帰反射層10は、例えば、特開昭59−71848に開示されている。
【0020】
第一着色層20は、再帰反射層の第一表面11に所定模様で設けられ、可視光を透過しない光不透過性の層とされる。この第一着色層20は印刷により形成されることが好ましい。第一着色層20の材料は、樹脂成分、着色剤の他に、必要に応じて、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、架橋剤等の各種添加剤を配合しても良く、粘度調整等のために溶剤を配合しても良い。
【0021】
第一着色層20の材料のうち樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、着色剤の分散性とその安定性、溶剤に対する溶解性、耐候性、印刷適性、フィルムとの密着性等の優れるメラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、これらを単独または、2種以上組み合わせて共重合したものを使用できる。
【0022】
第一着色層20の材料のうち着色剤としては、特に限定されるものではないが、白色の有機顔料や無機顔料等が挙げられる。白色の無機顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛等を挙げることができる。
【0023】
図2は、第1実施形態における再帰反射シートの第一表面11を正面から視た場合の様子を示す図である。なお、理解容易のため、
図2における第一着色層20は斜線を付している。
図2に示すように、第一着色層20は、再帰反射層10の第一表面11を所定模様で部分的に覆い、独立した複数の領域で構成される。
【0024】
なお、第一着色層20を構成する領域の形状は、
図2の例では円形状になっているが、当該第一着色層20を構成する領域の全部または一部の形状を例えば矩形状や台形状等種々の形状に変更しても良い。また、第一着色層20を構成する各領域の大きさは、
図2の例では同じになっているが異なっていても良い。さらに、
図2の例では第一着色層20を構成する各領域が所定間隔ごとに行方向および列方向に沿って並べて配置されているが、当該第一着色層20を構成する各領域がランダムに配置されていても良い。また、第一着色層20は独立した複数の領域で構成されているが、第一着色層20は独立した複数の領域を区画しても良い。
【0025】
また、このような第一着色層20の面積の、再帰反射層10における第一表面11の面積に対する比率は、特に限定されるものではないが、50%以上80%以下であることが好ましい。なお、第一着色層20の面積とは、再帰反射層10の第一表面11のうち、第一着色層20を構成する各領域で覆われている部分の面積の総和のことである。上記比率が50%以上である場合、再帰反射シートの明度をより一層向上させることができる。また、上記比率が80%以下である場合、所望の再帰反射性能を得やすくなる
【0026】
第二着色層30は、可視光を透過する光透過性の層であって、再帰反射層10より低い全光線透過率を有する。また、第2着色層30は、第一表面11のうち第一着色層20が設けられない部分と第一着色層20の表面のうち再帰反射層10とは接しない部分とからなる凹凸状の面に追従するように、当該凹凸状の面の全面に設けられる。また、第二着色層30の厚みは、第一着色層10の厚みより小さい。さらに、第二着色層30の再帰反射層10側とは逆側の表面は、凹凸状の面に沿って当該凹凸状の面と略同形状に起伏している。
【0027】
第二着色層30の材料としては、例えば、樹脂成分、着色剤の他に、必要に応じて、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、架橋剤等の各種添加剤を配合しても良く、粘度調整等のために溶剤を配合しても良い。
【0028】
第二着色層30の材料のうち樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、着色剤の分散性とその安定性、溶剤に対する溶解性、耐候性、印刷適性、フィルムとの密着性等の優れるメラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、結晶性樹脂であるポリオレフィン樹脂やナイロン樹脂が挙げられ、これらを単独または、2種以上組み合わせて共重合したものを使用できる。
【0029】
第二着色層30の材料のうち着色剤としては、特に限定されるものではないが、白色の有機顔料や白色の無機顔料等が挙げられる。白色の無機顔料としては、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛等を挙げることができる。
【0030】
また、第二着色層30の色は、外観の色ムラをより一層抑制する観点より、第一着色層20と同系色であることが好ましい。なお、第一着色層20と第二着色層30とを同系色とするためには、第二着色層30の着色剤として、第1着色層20と同じ着色剤を使用し、第二着色層30の着色剤の濃度を第一着色層より薄くすること等によって、同系色とすることができる。
【0031】
第二着色層30の全光線透過率の、再帰反射層10における全光線透過率に対する比率は、特に限定されるものではないが、70%以上90%以下であることが好ましい。上記比率が70%以上である場合、第一着色層20の色と金属層50との色の濃淡差がより小さくなり、外観の色ムラをより一層抑制できる。また、上記比率が90%以下である場合、所望の再帰反射性能を得やすくなる。なお、第二着色層30の全光線透過率は、着色剤の含有量を変更することにより調整することができる。
【0032】
表面保護層40は、再帰反射シートの厚み方向に対して最も外側に配置される光透過性の層である。この表面保護層40の材料としては、例えば、再帰反射層10と同様のものが挙げられる。
【0033】
金属層50は、再帰反射層10の第二表面12に設けられる層である。この金属層50の材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、ニッケル等の金属が挙げられる。
【0034】
粘着剤層60は、金属層50において再帰反射層10に対向する一方の面とは逆側の他方の面に設けられる。この粘着剤層60の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ニトリルゴム系樹脂、シリコーンゴム系樹脂等が挙げられる。
【0035】
なお、再帰反射シート1が未使用時である場合には、粘着剤層60において金属層50に対向する一方の面とは逆側の他方の面に剥離層70が設けられ、当該粘着剤層60にゴミ等が付着することを防止する。一方、再帰反射シート1を使用する場合には、標示板等の被着体に貼り付けるために、剥離層70を粘着剤層60から剥離する。
【0036】
図3は、第1実施形態における再帰反射シートの断面の一部の様子を拡大して示す図である。本実施形態では、
図3に示すように、隣り合う第一着色層20の間隙に設けられる第二着色層30において、第一着色層20の輪郭部近傍に設けられる部分の第二着色層30が、当該間隙の中央部近傍に設けられる部分の第二着色層より厚くなる。その厚みの変化に起因して、第二着色層30の色は、第一着色層20の輪郭部から当該間隙の中央部にかけて漸次淡くなる。それにより、外観の色ムラの原因となる色の濃淡差に対して、その濃淡の変化を緩やかにすることができ、ひいては外観の色ムラを抑制することとができる。したがって、第1実施形態における再帰反射シート1の外観は従来と比べて均一に見せることができるため、外観の色ムラを抑制することができる。そして、第1実施形態における再帰反射シート1を標示板に使用した際には、標示板の明度を十分に確保でき、標示情報を読み取りやすくすることができる。
【0037】
また、本実施形態では、第二着色層30は、第一着色層20より薄く形成されている。このようにした場合、第二着色層30の厚みのバラツキが一層大きくなるため、第二着色層30は、同系の様々な色が混在することになる。そのため、隣り合う第一着色層20同士の各間隙において、第二着色層30は、第一着色層20の色と金属層の色との濃淡差に対して、その濃淡の変化を緩やかにするだけでなく、その濃淡の変化度合いや変化のさせ方を間隙毎に異ならせることができる。そして、それにより生じる視覚効果により、外観の色ムラを一段と抑制することができる。したがって、第1実施形態における再帰反射シート1を標示板に使用した際には、標示板の明度を十分に確保でき、標示情報をより一層読み取りやすくすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ・・・再帰反射シート
10・・・再帰反射層
11・・・第一表面
12・・・第二表面
20・・・第一着色層
30・・・第二着色層
40・・・表面保護層
50・・・金属層
60・・・粘着剤層
70・・・剥離層