(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-212362(P2016-212362A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】疑似音発生楽器
(51)【国際特許分類】
G10K 15/04 20060101AFI20161118BHJP
【FI】
G10K15/04 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-103205(P2015-103205)
(22)【出願日】2015年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】515136904
【氏名又は名称】永島 喜甦
(72)【発明者】
【氏名】永島 喜甦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】広い会場においても広範囲に疑似音が届くようになる疑似音発生楽器を提供する。
【解決手段】左右一対の支柱1を備え、該支柱のそれぞれの一方側に演奏者が握る握り部1aが形成され、支柱のそれぞれの他方側に円形状の開口部が形成されており、該開口部には左右の支柱を連結するように棒状の主軸が嵌め込まれており、該主軸はその中央部で左右2G,2Hに分割され、該分割された部分は平板状の左右の主軸受板3にそれぞれ固定されており、該左右の主軸受板は主軸受板連結部材4に連結されると共に前記主軸受板と主軸受板連結部材との間には弾性体が介在されており、前記主軸受板連結部材は軸部を備え、該軸部が左右の支柱との間に介在される連係棒に形成された開孔に回動可能に嵌め込まれていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の支柱を備え、該支柱のそれぞれの一方側に演奏者が握る握り部が形成され、前記支柱のそれぞれの他方側に円形状の開口部が形成されており、該開口部には左右の支柱を連結するように棒状の主軸が嵌め込まれており、該主軸はその中央部で左右に分割され、該分割された部分は平板状の左右の主軸受板にそれぞれ固定されており、該左右の主軸受板は主軸受板連結部材に連結されると共に前記主軸受板と主軸受板連結部材との間には弾性体が介在されており、前記主軸受板連結部材は軸部を備え、該軸部が左右の支柱との間に介在される連係棒に形成された開孔に回動可能に嵌め込まれていることを特徴とする疑似音発生楽器。
【請求項2】
前記主軸が嵌め込まれる前記支柱の開口部には平板状の共鳴板が設けられていることを特徴とする請求項1記載の疑似音発生楽器。
【請求項3】
前記共鳴板は、前記主軸の端部が位置する部分に開口部が形成されていることを特徴とする請求項2記載の疑似音発生楽器。
【請求項4】
前記主軸は、支柱の開口部に嵌め込まれる嵌め込み部が嵌め込み方向に向かって細くなるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3に記載の疑似音発生楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
日本古来の民謡で木造伝馬船や、漁船の櫓を漕ぐときに、櫓ベソから出る軋み音に似た音を出す疑似音発生楽器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば音戸の舟歌などで使用され、櫓を漕ぐときの音に似せた音を出す楽器として
図6、
図7で示すような楽器がある。この従来技術の楽器では支柱20、20を備え、一方の支柱20に角穴21を形成し、他方の支柱20に丸穴22を形成している。そして棒状の主軸23の一方の端部を角形状とし、他方の端部を丸形状として、それぞれ角穴21と丸穴22とに挿入した構造が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来技術では、演奏者が左右の支柱20、20を両手で持って互い違いに前後に押し引きすることで疑似音が発生する。この時、主軸23の一方は支柱20の角穴21に挿入されて回動不能に固定されているが、主軸23の他方は支柱の20の丸穴22に挿入されて回動可能となっている。このため、演奏者が左右の支柱20、20を両手で持って互い違いに前後に押し引きすることで、主軸23の他方の端部と支柱20の丸穴22との間で回動による摩擦音が発生し、この摩擦音が櫓を漕ぐときの軋み音を表現するようになっているものである。
【0004】
前記した従来の疑似音発生楽器においては、主軸が回動する時に生じる摩擦音が一方側から発生するのみであるため、広い会場では広範囲に届きにくく、観客が聞いていて満足できない状態となっていた。さらに一方側からのみ疑似音が発生する構成のため、その操作に不慣れであると疑似音が発生しにくく操作する人の技術が必要となってくるという問題がある。
【0005】
また、前記した従来技術を改良するためには、主軸の両端を丸棒状として左右の支柱に嵌め込んで主軸の両方を回動可能として左右から疑似音を発生させることが考えられるが、この場合、主軸は一本で構成されているため、左右から生じる疑似音に濁りが生じて澄んだ疑似音が発生しないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記した課題を解決するために左右一対の支柱を備え、該支柱のそれぞれの一方側に演奏者が握る握り部が形成され、前記支柱のそれぞれの他方側に円形状の開口部が形成されており、該開口部には左右の支柱を連結するように棒状の主軸が嵌め込まれており、該主軸はその中央部で左右に分割され、該分割された部分は平板状の左右の主軸受板にそれぞれ固定されており、該左右の主軸受板は主軸受板連結部材に連結されると共に前記主軸受板と主軸受板連結部材との間には弾性体が介在されており、前記主軸受板連結部材は軸部を備え、該軸部が左右の支柱との間に介在される連係棒に形成された開孔に回動可能に嵌め込まれていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明においては、好ましくは、前記主軸が嵌め込まれる前記支柱の開口部には平板状の共鳴板が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明においては、好ましくは、前記共鳴板は、前記主軸の端部が位置する部分に開口部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに本発明においては、好ましくは、前記主軸は、支柱の開口部に嵌め込まれる嵌め込み部が嵌め込み方向に向かって細くなるようにテーパ状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、前記した構成とすることで、主軸の左右の端部が左右の支柱との間でそれぞれ回動する時に生じる摩擦音、つまり櫓を漕ぐときの疑似音が両方から発生するようになり、広い会場においても広範囲に疑似音が届くようになる。また、その際に、左右から生じる疑似音は、主軸がその中央で分割されているため、一方から発生した疑似音と、他方から発生する疑似音とが干渉しないため、左右から発生する疑似音に濁りが生じることなく澄んだ疑似音が発生するようになるという効果を有する。
【0011】
また、前記主軸が嵌め込まれる前記支柱の開口部に平板状の共鳴板を設けるようにした場合は、主軸と支柱との間で生じる摩擦音、つまり櫓を漕ぐときの疑似音が共鳴板によって共鳴するため、さらに広範囲に疑似音が届くようになるという効果を有する。
【0012】
また、前記共鳴板には、前記主軸の端部が位置する部分に開口部を形成した場合には、この開口部から摩擦音、つまり櫓を漕ぐときの疑似音が放出されて広範囲に疑似音が届くようになるという効果を有する。
【0013】
さらに、前記主軸の両端部をテーパ状とした場合には、前記支柱の開口部に嵌め込む際にその嵌め込みがスムーズとなるとともに、摩擦音、つまり櫓を漕ぐときの疑似音が発生しやすくなるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】本発明の実施例の支柱と連係棒の関係を示す断面図。
【
図6】本発明の実施例の主軸受板連結部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
本発明について
図1ないし
図5に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように疑似音発生楽器Aは、左右一対の木材で形成された支柱1、1を備えている。そして、この支柱1、1は、その一方側に演奏者が握る握り部1a、1aが形成されており、他方側には丸穴状の開口部1b、1bが形成されている。
【0016】
前記左右の支柱1、1の開口部1b、1bには、木材で形成された丸棒状の主軸2が嵌め込まれている。そして、この主軸2は左右2G、2Hに分割されており、外分割された側は木材で形成された四角状で平板状の主軸受板3、3が取り付けられている。この取り付けは、主軸2G、2Hの分割された側の端部2bを角状に形成し、主軸受板側には角状の溝を形成して両者を嵌込み結合している。
【0017】
一方、主軸2G、2Hの外方側の端部2a、2aは、支柱1の開口部1b、1bに対して嵌め込まれる嵌め込み部は、その嵌め込み(差し込み)方向に向かって細くなるようにテーパ状(角度α)に形成されている。さらに、このテーパ状の部分には網目状に溝が形成されている。(
図5参照)
【0018】
前記主軸受板3、3は、その下方側において平板状の主軸受板連結部材4と、この主軸受板連結部材4の両面に配置された弾性体7、7を挟んでボルト・ナットを介して連結されている。そして、この主軸受板連結部材4は、その下側に丸棒状の芯棒4aが下向きに延びるように設けられている。(
図6参照)
なお、前記した弾性体7、7は、牛皮で構成されている。この場合、左右から発生する疑似音が互いに干渉しないように牛皮で遮断されるため擬似音に濁りが生じることなく澄んだ疑似音が発生するようになる。
【0019】
前記主軸受板連結部材4の心棒4aは、左右の支柱1、1に形成された開孔1c、1cに両端部5b、5bが差し込まれる連係棒5の中央部に形成された穴5aに差し込まれている。なお、心棒4aにはスプリング9が嵌め込まれている。また、前記した支柱1、1の開孔1c,1cは、
図4に示すように中心の間隔が小さくなるような断面が山型形状となっている。この構成によって連係棒5が傾いたり捩じられたりしてもその挙動が許容されるようになっている。
【0020】
前記主軸2G、2Hの外方側の端部2a、2aが嵌め込まれる支柱1,1の外面側にはスペース材11、11を挟んで共鳴板6、6が設けられている。この共鳴板6、6は、開孔6a、6aが形成されており、主軸2G、2Hの外方側の端部2a、2aが嵌め込まれて嵌合固定されている。
なお、スペース材11、11、および共鳴板6、6は木材で構成されている。
【0021】
前記した支柱1、1の上端部と主軸受板3、3の上端部とはスプリング8が張設されている。このスプリング8は、例えば該スプリング8の両端部に設けられている引っ掛け部が、前記支柱1、1の上端部と主軸受板3、3の上端部に設けられるフック部材に係止されるように構成されている。
【0022】
前記した構成に基づいて本発明の作用を説明する。演奏者が支柱1、1の握り部1a、1aを左右の手で握り、この支柱1、1を互い違いに前後方向に押し引きする。すると、主軸2G、2Hは、その端部2b、2bが主軸受板3、3に回動不可に固定されているため、外方側の端部2a、2aが支柱1、1の開口1b、1b及び共鳴板6の開孔6a、6a内で回動する。この回動する時の摩擦音が櫓を漕ぐときの疑似音として両方から発生するようになり、広い会場においても広範囲に疑似音が届くようになる。
【0023】
また、その際に、左右から生じる疑似音は、主軸がその中央で分割されているため、一方から発生した疑似音と、他方から発生した疑似音とが干渉しないため、左右から発生する疑似音に濁りが生じることなく澄んだ疑似音が発生するようになる。
【0024】
また、主軸2G、2Hの外方側の端部2a、2aテーパ状部分には網目状の溝を形成している。このため、支柱1、1を押し引きした際に生じる主軸の2G、2Hの端部2a、2bと支柱1、1の開口部1b、1bとの間での摩擦が滑らかになり、摩擦音、つまり擬似音に濁りが生じ難くなるという利点がある。
【符号の説明】
【0025】
1 支柱
2 主軸
3 主軸受板
4 主軸受板連結部材
5 連係棒
6 共鳴板
7 弾性体
8 スプリング