【解決手段】数値制御プログラムによって駆動される噴流祖業装置における噴流の衝突領域R1を解析するための噴流衝突領域確認方法であって、コンピュータの記憶装置45に格納された噴流モデルM1、作業領域M21および作業深さdLが設定された被作業物モデルM2、並びに駆動パラメータおよび数値制御プログラムを使用して、コンピュータの演算処理装置が、被作業物モデルM2および噴流モデルM1を駆動パラメータおよび数値制御プログラムに基づいて移動させる駆動演算ステップと、駆動演算ステップによって移動させた噴流モデルM1と作業領域M21との衝突領域R1を求めて、衝突領域R1における作業深さdLを被作業物モデルM2から切除した衝突領域切除モデルM5を演算する切除演算ステップと、を実行する。
ノズルから噴出した噴流を被作業物に衝突させて所定の作業をする噴流作業装置の前記噴流の衝突領域をコンピュータによって解析するための噴流衝突領域確認方法であって、
コンピュータの記憶装置に格納された、前記噴流を表す噴流モデル、前記所定の作業をする作業領域および作業深さが設定され前記被作業物を表す被作業物モデル、並びに前記作業における作業装置の駆動動作を規定する駆動パラメータおよび数値制御プログラムを使用して、
前記コンピュータの演算処理装置が、
前記被作業物モデルおよび前記噴流モデルを前記駆動パラメータおよび前記数値制御プログラムに基づいて移動させる駆動演算ステップと、
この駆動演算ステップによって移動させた噴流モデルと前記作業領域との衝突領域を求めて、前記衝突領域における前記作業深さを前記被作業物モデルから切除した衝突領域切除モデルを演算する切除演算ステップと、
を実行することを特徴とする噴流衝突領域確認方法。
ノズルから噴出した噴流を被作業物に衝突させて所定の作業をする噴流作業装置の前記噴流の衝突領域をコンピュータによって解析するための噴流衝突領域確認装置であって、
入力装置と、
この入力装置によって、前記噴流を表す噴流モデル、前記所定の作業をする作業領域および作業深さが設定され前記被作業物を表す被作業物モデル、並びに前記作業装置の駆動動作を規定する駆動パラメータおよび数値制御プログラムを格納する記憶装置と、
演算処理装置と、を備え、
前記演算処理装置は、前記噴流モデルおよび前記被作業物モデルを前記駆動パラメータおよび前記数値制御プログラムに基づいて移動させる駆動演算手段と、
この駆動演算手段によって移動させた噴流モデルと前記作業領域との衝突領域を求めて、前記衝突領域における前記作業深さを前記被作業物モデルから切除した衝突領域切除モデルを演算する切除演算手段と、
を備えたことを特徴とする噴流衝突領域確認装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のように被作業物の塗膜が剥がれた領域から噴流衝突領域を確認する方法においては、次の問題があった。第1に、塗膜強度が強い場合において、実際に噴流が衝突した面積よりも塗膜が除去された面積が小さくなるため、塗膜の強度に影響されやすい。第2に、噴流は、被作業物表面に衝突したときに、噴流衝突領域における被作業物の表面の全周方向へ流れを変える。流れを変えた噴流が噴流衝突領域から拡大された領域まで塗膜を剥がしてしまうときがある。第3に、流れを変えた噴流が、2次噴流となって、被作業物の表面に衝突した場合に、その2次噴流の衝突領域の塗膜が剥がれるときがある。第4に、洗浄装置及び移動装置の移動プログラムが全て完成した時まで待たないと、作業対象部位に噴流が適切に衝突したか否かの検証ができない。
本発明は、噴流と被作業物との衝突部位を正確に検証することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑みて、本発明は、下記の構成を含みうる。
(1)ノズルから噴出した噴流を被作業物に衝突させて所定の作業をする噴流作業装置の前記噴流の衝突領域をコンピュータによって解析するための噴流衝突領域確認方法であって、コンピュータの記憶装置に格納された、前記噴流を表す噴流モデル、前記所定の作業をする作業領域および作業深さが設定され前記被作業物を表す被作業物モデル、並びに前記作業装置の駆動動作を規定する駆動パラメータおよび数値制御プログラムを使用して、前記コンピュータの演算処理装置が、前記被作業物モデルおよび前記噴流モデルを前記駆動パラメータおよび前記数値制御プログラムに基づいて移動させる駆動演算ステップと、この駆動演算ステップによって移動させた噴流モデルと前記作業領域との衝突領域を求めて、前記衝突領域における前記作業深さを前記被作業物モデルから切除した衝突領域切除モデルを演算する切除演算ステップと、を実行すること。
(2)前記切除演算ステップにおいて、前記噴流モデルの移動に伴って逐次拡張される前記衝突領域を求め、前記衝突領域が逐次拡張された前記衝突領域切除モデルを経時的に前記コンピュータの表示装置に表示すること。
(3)前記駆動演算ステップにおいて、前記噴流モデルは、前記数値制御プログラム中の噴出開始命令の発令時から、噴出停止命令の発令時までの区間において生成されること。
(4)前記作業領域は、複数設けられ、複数の前記作業領域は、当該作業領域に対する作業における前記被作業物モデル及び前記噴流モデルの姿勢に対応して設定されること。
(5)前記噴流モデルは、前記ノズルが回転する回転ノズルである場合には、非回転状態における前記回転ノズルから噴出した噴流を表す非回転時噴流モデルを当該回転ノズルの回転軸回りに回転させて求めた回転噴流モデルであること。
(6)前記記憶装置は、前記作業装置の形状モデルを更に収納し、
前記演算処理装置が、前記数値制御プログラムに基づいて移動中の前記噴流モデル及び前記作業装置の形状モデル、並びに前記切除中の前記被作業物モデルを継時的に画像表示装置に表示すること。
(7)前記記憶装置は、前記作業装置の形状を表す作業装置モデルを更に格納し、前記演算処理装置は、前記駆動演算ステップにおいて、前記作業装置モデルを前記駆動パラメータおよび前記数値制御プログラムに基づいて駆動させ、前記切除演算ステップにおいて、前記噴流モデルの移動に伴って姿勢が変動する前記作業装置モデルを経時的に前記コンピュータの表示装置に表示すること。
(8)上記(1)ないし(6)の確認方法をコンピュータに実行させるプログラム、そのプログラムの記憶媒体。
(9)ノズルから噴出した噴流を被作業物に衝突させて所定の作業をする噴流作業装置の前記噴流の衝突領域をコンピュータによって解析するための噴流衝突領域確認装置であって、入力装置と、この入力装置によって、前記噴流を表す噴流モデル、前記所定の作業をする作業領域および作業深さが設定され前記被作業物を表す被作業物モデル、並びに前記作業における作業装置の駆動動作を規定する駆動パラメータおよび数値制御プログラムを格納する記憶装置と、演算処理装置と、を備え、前記演算処理装置は、前記噴流モデルおよび前記被作業物モデルを前記駆動パラメータおよび前記数値制御プログラムに基づいて移動させる駆動演算手段と、この駆動演算手段によって移動させた噴流モデルと前記作業領域との衝突領域を求めて、前記衝突領域における前記作業深さを前記被作業物モデルから切除した衝突領域切除モデルを演算する切除演算手段と、を備えた噴流衝突領域確認装置。
【0008】
ここで、被作業物とは、はつり、加工、バリ取り、塗装など、噴流によって加工、処理、洗浄等される噴流作業の対象物をいう。
【0009】
上記構成によれば、次のような作用効果を得る。
(1)本発明に係る噴流衝突領域確認方法および噴流衝突領域確認装置は、前記噴流を表す噴流モデルと、前記所定の作業をする前記被作業物を表す被作業物モデルと、記憶装置に格納して使用することで、演算処理装置によって、作業装置におけるノズルから噴出した噴流、および被作業物の3次元形状を忠実に再現して把握することができる。
また、被作業物モデルに対して作業領域および作業深さを設定することで、演算処理装置による演算を簡素化して迅速かつ円滑な動作を確保することができる。
また、演算処理装置によって、前記噴流モデルおよび前記被作業物モデルを前記駆動パラメータおよび前記数値制御プログラムに基づいて移動させる駆動演算ステップを実行することで、噴流モデルおよび被作業物モデルを前記駆動パラメータおよび前記数値制御プログラムに基づいて忠実に再現して移動させることができるため、正確に噴流衝突領域を把握することができる。
また、衝突領域切除演算ステップによって、前記衝突領域における前記衝突面から所定の深さを切除した当該被作業物の衝突領域切除モデルを演算することで、衝突領域を画像として表示装置等に表示したり、予め設定した所期の被作業物モデルと対比して衝突領域が適正に形成されているかどうかを判定したりすることができる。
(2)本発明に係る噴流衝突領域確認方法および噴流衝突領域確認装置は、前記噴流モデルの移動に伴って前記衝突領域が逐次拡張された前記衝突領域切除モデルを経時的に前記コンピュータの表示装置に表示することで、例えば、前記作業装置が実行する作業を工程順に忠実に再現して動画として表示することができるため、ユーザーが目視によって作業状態を正確に把握することができる。
(3)本発明に係る噴流衝突領域確認方法および噴流衝突領域確認装置は、前記噴流モデルは、前記数値制御プログラム中の噴出開始命令の発令時から、噴出停止命令の発令時までの区間において生成されることで、作業装置が噴流を生成して所定の作業をする期間のみを対象として、衝突領域切除モデルを求める。
このため、実際の作業装置における作業期間に正確に対応させることができるため、実際の噴流作業に対応させた衝突領域切除モデルの形状データを求めることができる。
(4)本発明に係る噴流衝突領域確認方法において、複数の異なる作業領域を設定する場合には、当該作業領域ごとに被作業モデルの姿勢(割り出し角度等)や噴流モデルの姿勢(噴出方向等)に適合するように作業領域を設定する。
(5)本発明に係る噴流衝突領域確認方法において、前記ノズルが回転する回転ノズルである場合には、非回転状態における非回転時噴流モデルを当該回転ノズルの回転軸回りに回転させて求めた回転噴流モデルに置換えることにより、前記回転ノズルから噴出した噴流の移動軌跡を簡略化して、噴流モデルと被作業物モデルとの衝突領域を簡便に演算できる。
(6)前記駆動パラメータおよび前記数値制御プログラムに基づいて駆動される前記作業装置の形状を表す作業装置モデル、前記噴流モデル、および前記被作業物モデルを継時的に表示装置に表示することができる。これにより、ユーザーが駆動中の作業の様子を観察できる。実際の作業装置では、噴流が飛散し、噴流の様子が観察できないところ、本発明によれば、ユーザーは克明に作業装置が作業をする様子を確認できる。
(7)本発明に係るプログラムは、コンピュータに前記噴流衝突領域確認方法を実行させ、前記噴流衝突領域確認装置として機能させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、噴流と被作業物との衝突部位を正確に検証する噴流衝突領域確認方法、噴流衝突領域確認装置、プログラム、およびコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
適宜図を参照して、本発明の実施形態に係る噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)について、適宜
図1から
図16を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、
図1に示すように、作業装置である洗浄装置10を例として説明する。
洗浄装置10は、被作業物である被洗浄物17に洗浄液の噴流31Fを衝突させて、被洗浄物17の表面に付着している異物やバリを除去する装置である。
【0013】
〈洗浄装置〉
洗浄装置10は、
図1に示すように、数値制御されてXYZ方向に自在に移動できるクイル11と、クイル11に設けられるタレット12と、タレット12のタレット面にそれぞれスピンドル13と共に取り付けられるノズル21、23、25を備えている。ノズル21、23、25の内、下向きに割り出した一つのノズル21は、C軸方向に回転又はその回転角度を位置決めできる。また、洗浄装置10は、被洗浄物17を載置する載置台16を備えている。載置台16は、被洗浄物17を載置した状態でA軸方向に自在に回転でき、回転角度を割り出しできる。
【0014】
なお、本実施形態においては、洗浄装置10の軸構成をタレット12に対して、XYZ軸方向、およびC軸方向の3軸構成とし、載置台16に対してA軸方向の1軸構成としたが、これに限定されるものではなく、種々の駆動軸構成を採用することができる。
【0015】
洗浄装置10は、洗浄装置10の駆動動作を制御する駆動パラメータおよび数値制御プログラムを使用してタレット12や載置台16の駆動動作、およびノズル21、23、25(適宜、「ノズル21等」という。)の洗浄動作を制御する。
駆動パラメータは、例えば、軸ストローク、軸速度、加速度等を設定するパラメータであり、数値制御プログラムは、いわゆるGコードと呼ばれ、移動目標座標を移動モードとともに記載したプログラムである。
【0016】
洗浄装置10は、クイル11の位置座標、載置台16の回転角度、ノズル21、23、25の割出角度、又はノズル21、23、25の回転速度をコンピュータ制御することにより、ノズル21、23、25の内、下向きに割り出したノズル21を被洗浄物17に対向させる。そして、下向きに割出したノズル21から被洗浄物17に向けて洗浄液を噴射することで、被洗浄物17に洗浄液の噴流31Fを衝突させる。被洗浄物17の、洗浄が必要な個所に噴流31Fを衝突させることで、その箇所に付着した異物やバリを除去する。
【0017】
なお、ノズル21、23、25の取付け個数、タレット12に取り付けられるノズルの種類は適宜変更できる。また、一つのタレット面に複数のノズルを回転又は回転角度の割り出しができるように取付けても良い。
【0018】
洗浄装置10は、ノズル21、23、25の内、タレット12によって下方に割出したノズル21からのみ洗浄液を噴射する。割り出したノズル21は、タレット12に回転軸14の周りに回転可能(C軸方向)に接続される。
【0019】
〈噴流衝突領域確認装置〉
図2に示すように、噴流衝突領域確認装置40は、洗浄装置10から噴出した噴流31Fが被洗浄物17に衝突する衝突領域R1(
図11)を解析するための装置であり、ワークステーション又は汎用パーソナルコンピュータで構成される。また、噴流衝突確認装置40は、数値制御装置の一部構成として組込まれても良い。噴流衝突領域確認装置40は、CAM(computer aided manufacturing)システムに好適に採用することができる。
【0020】
噴流衝突領域確認装置40は、演算処理装置であるCPU41と、入力装置42と、表示装置43と、出力装置44と、記憶装置45と、これらの装置を通信可能に接続するバス46と、を備えている。
入力装置42は、キーボード、スイッチ、タッチパネル、マウスその他のポインティングデバイス、又は、USBポート、光学ドライブ、LAN接続ポート、インターネット接続ポートその他の入出力ポートを含む。表示装置43は、GUI(Graphical user interface)を備えている。出力装置44は、スピーカ、プリンタ、又は、USBポート、光学ドライブ、LAN接続ポート、インターネット接続ポートその他の入出力ポートを含む。記憶装置45は、RAMその他の主記憶装置、及び磁気ドライブ、フラッシュメモリその補助記憶装置を含む。
【0021】
記憶装置45は、ユーザー(不図示)が入力装置42を使用して入力した種々のデータや数値制御プログラム、およびCPU41によって求められた演算結果を記憶することができる。
【0022】
記憶装置45は、
図2に示すように、CPU41に所定の演算動作を実行させる演算プログラムを格納する演算プログラム記憶手段45aと、噴流31Fの形状を表す噴流モデルM1、被洗浄物17の形状を表す被洗浄物モデルM2、洗浄装置10の形状を表す洗浄装置モデルM3、及びノズル21等の形状を表すノズルモデルM4(
図3参照)を格納する形状記憶手段45bと、洗浄装置10の駆動動作を規定する駆動パラメータを格納するパラメータ記憶手段45cと、駆動パラメータおよび数値制御プログラムを格納する数値制御プログラム記憶手段45dと、を備えている。
【0023】
CPU41は、
図2と
図3に示すように、被洗浄物モデルM2や噴流モデルM1等を仮想空間上で移動させる駆動演算手段41aと、被洗浄物モデルM2と噴流モデルM1との衝突領域R1(
図11参照)を求めて衝突領域切除モデルM5を演算する切除演算手段41bと、被洗浄物モデルM2や噴流モデルM1等の移動に伴う干渉を監視する干渉監視演算手段41cと、備え、記憶装置45に格納された演算プログラムによってこれらの演算処理を実行する。
【0024】
なお、CPU41に所定の演算動作を実行させる演算プログラムは、噴流衝突領域確認装置40とWAN、インターネットで接続される別のサーバーに記憶され、演算の一部をそのサーバーが請け負っても良い。
【0025】
駆動演算手段41aは、記憶装置45のパラメータ記憶手段45cに格納された駆動パラメータ、および数値制御プログラム記憶手段45dに格納された数値制御プログラムを使用して、仮想空間上で洗浄装置モデルM3を実際の洗浄装置10(
図1参照)と同様に駆動させる。駆動演算手段41aは、例えば、一般的なCAM上の機能として提供させる部品加工用のシミュレータを適用して実現することができる。
【0026】
このため、仮想空間上では、洗浄装置モデルM3を駆動させることで、載置台モデルM31が駆動して被洗浄物モデルM2をA軸方向に適宜回転させて作業面を割り出しながら、ノズルモデルM4とともに噴流モデルM1を移動させて実際の洗浄装置10(
図1参照)と同様の動作を行う。
【0027】
切除演算手段41bは、駆動演算手段41aによって移動させた噴流モデルM1とユーザーまたは初期設定によって設定された作業領域M21との衝突領域R1を求めて、衝突領域R1における作業深さdL(
図11参照)を被洗浄物モデルM2から切除した衝突領域切除モデルM5を演算する。
【0028】
干渉監視演算手段41cは、被洗浄物モデルM2と洗浄装置モデルM3との干渉を監視する装置であり、洗浄装置モデルM3の駆動によって移動する被洗浄物モデルM2がノズルモデルM4、および載置台モデルM31に干渉しないように監視する装置である。
【0029】
図3は、表示装置43の代表的な表示画面(GUI)を示している。表示装置43は、駆動演算手段41a、切除演算手段41bによって仮想空間上で駆動する洗浄装置モデルM3、洗浄装置モデルM3の駆動に伴って移動するノズルM4、噴流モデルM1、及び、洗浄装置モデルM3と共に移動する被洗浄物モデルM2、および噴流モデルM1によって衝突領域R1が切除される衝突領域切除モデルM5を表示する。このときに、被洗浄物17の形状データ47aの衝突領域R1を強調して表示できる(
図10参照)。
【0030】
噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、洗浄装置10から噴出された実際の噴流31Fを所定の3次元形状の形状データからなる噴流モデルM1(
図4と
図11の噴流31を参照)として記憶装置45の形状記憶手段45b(
図2参照)に記憶する。そして、噴流衝突領域確認装置40が設定した理論上の噴流31(
図4参照)と被洗浄物17との衝突領域R1(
図11参照)を演算する。
【0031】
〈噴流の形状データ〉
洗浄装置10における種々のノズルに適用する噴流モデルM1(噴流31〜36)について、
図4から
図9を参照しながら詳細に説明する。
図4を参照して、下向きに棒状の噴流を噴出するノズル21における噴流モデルM1(噴流31)について説明する。ノズル21は、スピンドル13に固定されるフランジ29と、Z軸方向に延びる軸部13bと、からなる。ノズル21は、軸部21aの先端から、回転軸14と同軸に、Z軸方向に棒状の噴流31を噴出する。
【0032】
噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、噴流31の径d1をノズル21の噴口21bの開口径と同一の円柱形として噴流31の形状データとして設定することができる。実際には、噴流31F(
図1参照)は、噴口21bから離れるにしたがって、次第に広がりを持つため、厳格に適用する必要を有するような場合には、噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)が設定する噴流31の形状データは、円柱形状ではなく噴口21bの開口径から所定の広がりをもつ形状データとしても良い。
【0033】
洗浄装置10において、噴流31F(
図1参照)は、被洗浄物17、載置台16、又は洗浄装置10のスプラッシュカバー(不図示)に接触するまでの決まっていない長さをもつ。
CPU41(
図2参照)は、噴流31の長さを一定の有効長さLとして、有効長さLを噴流の形状データとして設定することができる。例えば、CPU41は、噴口21bの開口径や噴流の圧力等の使用条件から有効長さLを演算して求めて、記憶装置45に格納することができる。噴流に有効長さLを与える事で、不定形の噴流に形を与えて噴流の形状データが形成する3次元形状のモデルを「噴流モデルM1(噴流31)」として設定することができる。
このように、CPU41が演算して求めた演算結果を記憶装置45に格納することを、単に「噴流衝突領域確認装置40が設定する」ということがある。なお、本実施形態においてはCPU41が有効長さLを演算したが、これに限定されるものではなく、予めノズル21の規格データとして設定してもよいし、ユーザが入力装置42を介して設定してもよい。
【0034】
噴流31の有効長さLは、噴流31の有効範囲(噴流31が洗浄等の作業能力を発揮しうる範囲)として利用する。
【0035】
洗浄装置10において、例えば、20〜50MPaの高圧で被洗浄物17のバリ取り又は洗浄を行う場合、実際の噴流31F(
図1参照)は、噴口21bからある程度の距離LAまで、棒状の流れとなる。そして、噴流31Fは、噴口21bからの距離LAから距離LBまで、周囲の流体(例えば空気)を巻き込んで気泡が生じた乱れた流れとなり、距離LBを過ぎると液滴状の流れとなる。そして、バリ取り又は洗浄に有効な範囲は、長くても距離LB程度までと考えられる。
この場合においては、噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、噴流31の有効長さLを、距離LBに設定できる。噴流31の有効長さLは、作業の種類、噴流31の形状を考慮して、適宜設定できる。
【0036】
このように構成した場合、噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、ノズル21の噴口21bと被洗浄物17との距離が遠くなりすぎて噴流31の有効長さLを超える場合には、噴流31と被洗浄物17との衝突が十分に行われていないことを判断できる。
【0037】
なお、洗浄装置10は、噴流31に替えて、中実円錐又は中空円錐の噴射形状の噴流を利用できる。この場合には、噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、噴流形状を有効長さLの円錐形状を噴流の形状データとして設定する。
【0038】
図5を参照して、扇形の噴流32を噴出する扇形ノズル22について説明する。扇形ノズル22は、フランジ29と、Z軸方向に延びる軸部22aを備えている。扇形の噴流32は、軸部22aの先端から軸部22aの中心軸を中心に、厚みd2をもち、先端角A[°]の広がりをもつ。噴流32の厚みd2は、噴口22bの開口径と同一とできる。
【0039】
噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、扇形の噴流32に対しては、一定の有効長さLをもつ、軸部22aの先端を頂点とする二等辺三角形を厚み方向にd2だけ引き延ばした形状を噴流32の噴流モデルM1として設定する。
【0040】
なお、
図4及び
図5は、Z軸方向に噴射するノズル21,22を例示したが、噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、X軸方向又はY軸方向に軸部の先端付近から噴射するノズルであっても、重力の影響は噴流の噴射速度に対して無視できる程度であるから、同様に適用することができる。
【0041】
図6と
図7を参照して、回転ノズル23について説明する。
噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、
図6に示すように、ノズルが回転する回転ノズル23である場合には、非回転状態(停止時)における回転ノズル23から噴出した噴流33の形状データが形成する非回転時の噴流モデルM1を求める。
そして、
図7に示すように、非回転時の噴流モデルM1を回転ノズル23の回転軸14の回りに回転させて回転噴流モデル34を求める。そして、この回転噴流モデル34を回転ノズル23を回転させた場合の噴流モデルM1として適用する。
【0042】
具体的には、
図6に示すように、停止時の回転ノズル23は、フランジ29と、Z方向に延びる軸部23aと、軸部23aの先端に固定され、XY方向に広がる直方体のブロック23bとを備えている。回転ノズル23は、ブロック23bの各頂点付近から、Z方向に棒状の噴流33を噴出する。噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、棒状の噴流33を非回転時の噴流モデルM1として設定する。
【0043】
図7を参照して、回転ノズル23を回転させたときの回転体形状24について説明する。ブロック24bは、停止時のブロック23b(
図6参照)を回転軸14を中心に回転させた回転体形状である。回転噴流モデル34は、停止時の噴流33(
図6参照)を回転軸14を中心に回転させた回転体形状であり、厚みd3の中空円筒状をなす。回転噴流モデル34の直径Dは、回転ノズル23の噴口23cの配置された配置径D(ピッチサークル径)と同一とする。回転噴流モデル34の厚みd3は、回転ノズル23の噴口23cの開口径と同一に設定する。
【0044】
このようにして、噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、回転噴流モデル34の形状を回転ノズル23の噴流の形状データとして設定する。噴流33(
図6参照)の径d3および有効長さLは上述のノズル21(
図4参照)と同様に設定する。
【0045】
実際には、洗浄装置10において、回転ノズル23を回転軸14を中心に回転させながらXY平面上を移動すると、噴流(34)の軌跡は、XY平面上でわずかに螺旋運動をする。しかし、回転噴流モデル34を回転ノズル23を回転させた場合の噴流モデルとして設定することで、回転ノズル23の使用形態に近似させることができるため、衝突領域の演算が容易になる。
【0046】
なお、回転噴流モデル34の形状を中空円筒に替えて、中実円筒形状を利用できる。中実円筒を用いた場合には、移動軌跡が噴流の配置径Dよりも短いときに、噴流接触部位の演算の正確性が落ちる。しかし、棒状噴流のノズルと同様に回転ノズルを扱えるため、非常に便利である。
【0047】
なお、回転ノズル23の噴流を、直線棒状の噴流33(
図6参照)に替えて、扇形の噴流32を利用できる。この場合、回転ノズルを回転させたときの噴流は、円錐台の形状として利用できる。
【0048】
〈洗浄ランス〉
図8と
図9を参照して、噴流を拡散して噴出するノズルである洗浄ランス25について説明する。
図8に示すように、洗浄ランス25は、フランジ29と、Z方向に延びる軸部25aと、を備えている。軸部25aの先端から、噴射する方向が回転軸14に対してθ1の角度をもって棒状の噴流35を複数箇所(例えば、回転軸に対して対象位置に2か所)から噴出する。噴流35の径d4は、噴口25bの開口径と同一である。軸部25aは、複数の噴流35によるXY方向の反力を相互に打ち消すように噴出口を備えることができる。噴流35は、有効長さLとする。洗浄ランス25は、回転軸14を中心に回転する。
【0049】
図9を参照して、洗浄ランス25(
図8参照)が回転した状態にある洗浄ランス26について説明する。回転時の洗浄ランス26の形状は、停止時の洗浄ランス25を、回転軸14を中心に回転した形状である。洗浄ランス26から生ずる噴流36は、長さL、厚みd4の円錐面を成す。円錐面と回転軸14が成す角度はθ1である。
洗浄ランス25(
図8参照)を回転させながら回転軸14に沿って軸方向に移動させると、回転軸14を中心とする円筒面状の噴流35の軌跡は、円筒面に沿ってらせん形状をなす。噴流35(
図8参照)の回転形状を円錐面の噴流36として設定することで、噴流36と被洗浄物17との衝突領域を簡便に演算できる(
図11参照)。
【0050】
なお、噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、軸26aの先端から噴射する複数の噴流35(
図8参照)が、回転軸14から異なる角度をもっている場合には、それぞれの噴流35を回転軸14に沿って回転して形成される複数の円錐面をそれぞれの噴流35の噴流モデルM1として設定できる。
【0051】
なお、噴流31(
図4)、噴流32(
図5)、噴流34(
図7)、噴流36(
図9)のそれぞれの有効長さLは、共通の長さとしてよいが、噴流毎に変更できる。
【0052】
<被洗浄物モデル>
図11を参照して、被洗浄物モデルM2について説明する。被洗浄物モデルM2は、被洗浄物17の立体的形状を表すモデルであり、例えば立体的形状の内部を表現できるソリッドモデルを適用する。被洗浄物モデルM2は、洗浄装置モデルM3を仮想空間上で駆動させることで被洗浄物モデルM2も移動したり、形状が変化したりするが、姿勢や形状が変化した状態が逐次演算される。洗浄装置モデルM3から衝突領域R1における作業深さdLが切除されたソリッドモデルを衝突領域切除モデルM5という。被洗浄物モデルM2、衝突領域切除モデルM5は、形状記憶手段45bに格納される。
【0053】
被洗浄物モデルM2には、予めユーザーまたは切除演算手段41bにおける初期設定によって、作業領域M21(M21A,M21B)と、作業深さdLと、が設定される。設定された作業領域M21は、形状記憶手段45bに格納される。
【0054】
作業領域M21(M21A,M21B)は、洗浄装置10(
図1参照)が被洗浄物17に対して洗浄を行う作業領域を被洗浄物モデルM2に対して設定した作業領域であり、噴流モデルM1が被洗浄物モデルM2に衝突する被洗浄物モデルM2の外表面に対して設定する。作業深さdLは、作業の内容に応じて適宜、ユーザーまたは切除演算手段41bにおける初期設定によって設定され、パラメータ記憶手段45cに格納される。
【0055】
作業領域M21および作業深さdLは、被洗浄物17(被洗浄物モデルM2)やノズル21等(ノズルモデルM4)の姿勢によって、被洗浄物モデルM2に対する作業工程ごとに、複数設定することができる。
具体的には、第1の作業工程では、噴流モデルM1が
図11の上側の第1の外表面(M21A)に衝突して、第1の作業領域M21Aに対して作業し、第2の作業工程では、被洗浄物モデルM2の姿勢が変わって
図11において上下が反転されて、図示は省略するが、噴流モデルM1が
図11の下側の第2の外表面(M21B)に衝突して、第2の作業領域M21Bに対して作業するような作業形態である。
【0056】
このような作業形態において、ユーザーが作業領域を設定する場合には、噴流モデルM1が
図11の上側の第1の作業領域M21Aに対して作業をする作業工程においては、第1の作業領域M21Aを作業領域として設定し、噴流モデルM1が図の下側の第2の作業領域M21Bに対して作業をする作業工程においては、第2の作業領域M21Bを作業領域として設定する。
【0057】
作業領域M21の設定は、ユーザーが行ってもよいが、切除演算手段41bが初期設定(作業領域設定手段41b1)として作業深さdLに基づいて演算し、設定することもできる。
【0058】
切除演算手段41bが作業領域を設定する場合には、作業領域設定手段41b1は、第1の作業工程において、噴流モデルM1が噴流の噴出方向において被洗浄物モデルM2の第1の外表面(M21A)に衝突してから第2の外表面(M21B)を貫通する場合は、第1と第2の外表面(M21A,M21B)のうち、ノズルモデルM4から見てノズルモデルM4に近い第1の外表面(M21A)に対して作業領域M21Aおよび作業深さdLを設定する。
【0059】
第2の作業工程においても同様に、被洗浄物モデルM2の姿勢が変わって
図11において上下が反転されると、作業領域設定手段41b1は、噴流モデルM1が噴流の噴出方向において被洗浄物モデルM2の第2の外表面(M21B)に衝突してから第1の外表面(M21A)を貫通するため、第1と第2の外表面(M21A,M21B)のうち、ノズルモデルM4から見てノズルモデルM4に近い第2の外表面(M21B)に対して作業領域M21Bおよび作業深さdLを設定する。
【0060】
切除演算手段41bは、第1の作業工程においては、ノズルモデルM4に近い作業領域M21Aに対して衝突領域R1を求めて、衝突領域R1における作業深さdLが切除された衝突領域切除モデルM5を演算する。また、被洗浄物モデルM2の姿勢が変わって
図11において上下が反転された場合には、第1と第2の外表面(M21A,M21B)のうち、ノズルモデルM4に近い第2の外表面(M21B)に対して作業領域M21Bおよび作業深さdLを設定する。
【0061】
作業領域M21における作業深さdLは、被洗浄物モデルM2の表面の内側にごく薄い厚みdLをもつ形状として設けられる。作業領域M21は、被洗浄物モデルM2の表面に対して、複数の表面毎、又は種別毎に分割して設けることができる。
【0062】
作業深さdLの厚みは、加工前と加工後の被洗浄物17の形状が大きく変わらない程度に設定する。例えば、作業深さdLの厚みは、0.001mmから1mmの範囲から決定される。作業が洗浄の場合には、厚みdLは、非常に小さく設定できる。洗浄の前後で形状の変化はほとんど視認されないためである。作業がサンドブラストの場合、厚みdLは、例えば0.5mmなど、作業の深さに応じて設定され得る。
【0063】
作業領域M21は、被洗浄物モデルM2のうち、洗浄装置10における載置台16(
図1参照)や図示しない配管等によって噴流31Fが遮られ、被洗浄物17に接触しえない部分を除いて設定され得る。
【0064】
噴流衝突領域確認装置40は、衝突領域R1を求める作業領域M21を設定することで、洗浄装置10(
図1参照)における噴流31Fが遮られるため噴流31Fが接触しない箇所を再現できる。
【0065】
切除演算手段41bは、被洗浄物モデルM2において、作業領域M21(M21A,M21B)として設定されていない領域を非作業領域M22とする。
【0066】
なお、本実施形態においては、作業深さdLを被洗浄物モデルM2の表面から内側に設定したが、これに限定されるものではなく、被洗浄物モデルM2の表面から外側(塗装膜のように肉盛りする方向)に作業深さdLを設定してもよい。作業領域M21が被洗浄物17の外側に設けられた場合、非作業領域M22は、被洗浄物17の形状データと同一の領域で定められる。
【0067】
以上のように構成された本実施形態に係る噴流衝突領域確認装置40による噴流衝突領域確認方法について、主として
図10と
図11を参照しながら説明する。
図10に示すように、先ず、ユーザー(不図示)は、被洗浄物モデルM2、洗浄装置モデルM3、および載置台モデルM31を記憶装置45(
図2参照)に格納する(S1)。戴置台モデルM31は、戴置台17の形状及び配管、クランプ装置その他の付帯装置の形状を正確に再現されている。
【0068】
次いで、ユーザー(不図示)は、洗浄装置10に装着されるノズル21等(
図1参照)の各々のノズルモデルM4(
図3参照)を、入力装置42を介して、記憶装置45に格納する。併せて、ユーザーは、ノズルモデルM4から噴出する噴流31、34、36の噴流モデルM1を、入力装置42を介して、記憶装置45に格納する(S2)。
【0069】
ユーザーは、入力装置42を介して、洗浄装置10の駆動動作を規定する駆動パラメータおよび数値制御プログラムを入力する(S3)。入力された駆動パラメータは、パラメータ記憶手段45cに格納される。入力された数値制御プログラムは、数値制御プログラム記憶手段45dに格納される。
【0070】
CPU41(
図2参照)は、駆動演算手段41a(
図2参照)によって駆動演算ステップ(S4)と、切除演算手段41b(
図2参照)によって切除演算ステップ(S5)と、干渉監視演算手段41c(
図2参照)による干渉監視演算ステップ(S6)と、を実行する。
【0071】
駆動演算手段41a(
図2参照)は、パラメータ記憶手段45cに格納された駆動パラメータ、および数値制御プログラム記憶手段45dに格納された数値制御プログラムを使用して、仮想空間上で洗浄装置モデルM3を実際の洗浄装置10(
図1参照)と同様に駆動させる。つまり、駆動演算手段41aは、洗浄装置モデルM3を駆動させることで、載置台モデルM31が駆動して被洗浄物モデルM2をA軸方向に適宜回転させて作業面を割り出しながら、ノズルモデルM4とともに噴流モデルM1を移動させて、洗浄装置モデルM3に対して実際の洗浄装置10(
図1参照)と同様の動作を行わせる(S4)。
【0072】
かかる構成により、本発明の実施形態に係る噴流衝突領域確認方法は、駆動演算手段41aによって、記憶装置45に格納されている駆動パラメータ、および数値制御プログラムを利用して洗浄装置モデルM3を駆動させるため、正確な時間軸に対する洗浄装置10(
図1参照)と同様の動作を仮想空間上で再現できる。
【0073】
切除演算手段41b(
図2参照)は、複数の作業領域M21A,M21Bのうち、第1の作業工程においては、ユーザーまたは切除演算手段41bにおける初期設定によって設定された作業領域M21(
図11参照)のみに対して衝突領域R1を求めて、衝突領域R1における作業深さdLが切除された衝突領域切除モデルM5を演算する(S5)。時間軸に対する変化した衝突領域切除モデルM5の形状は、形状記憶手段45bに記憶される。
【0074】
本発明の実施形態に係る噴流衝突領域確認方法は、切除演算ステップS5において、駆動パラメータ及び数値制御プログラムによって忠実にその動きが再現された洗浄装置モデルM3から噴流モデルM1と被洗浄物モデルM2との衝突領域R1(
図11参照)が精密に演算される。また、作業領域M21は、被洗浄物モデルM2の表面のごく近傍の作業深さdLを切除するため、噴流モデルM1によって作業領域M21が切除された後の衝突領域切除モデルM5の形状は、切除前の形状と大きく変化しない。特に、dLが殆ど0であるときにおいては、衝突領域切除モデルM5は、その形状が被洗浄物モデルM2と見分けできず、衝突領域が強調表示されただけのように見える。dLが0でないため、記憶装置45は、一部の表面が切除された切除モデルM5を格納できる。切除モデルM5の形状が被洗浄物モデルM2の形状と異なるため、噴流衝突領域確認装置40は、噴流モデルM1と被洗浄物モデルM2との衝突領域R1(
図11参照)を認識できる。
このため、本発明の実施形態に係る噴流衝突領域確認方法は、噴流モデルM1と被洗浄物モデルM2との衝突領域R1(
図11参照)を明瞭に表せる。
【0075】
このときに、切除演算手段41bは、切除された範囲である、衝突領域R1に、着色又は輪郭線表示することにより強調表示できる。噴流モデルM1によって、被洗浄物モデルM2が加工されることにより、噴流モデルM1による衝突領域R1が記憶装置45に記憶される。
【0076】
干渉監視演算手段41cは、駆動演算手段41aによって駆動している、洗浄装置モデルM3(載置台モデルM31及びノズルモデルM4とを含む。)と、被洗浄物モデルM2とが干渉しないことを監視する(
図10のS6)。ステップS4ないしS6は、同時に処理され得る。表示装置43は、上述のように、ステップS4ないしS6の洗浄状況を表示する。
【0077】
図11では、噴流31(
図4参照)の噴流モデルM1を例にとって説明したが、ノズル21の形状およびノズル21から噴出する噴流31の形状が異なっても、同様に、噴流モデルM1と被洗浄物モデルM2との衝突領域R1を求めて、衝突領域R1における作業深さdLが切除された衝突領域切除モデルM5を演算することは上述の説明と変わりない。
【0078】
図11に示すように、噴流衝突領域確認装置40が、複数の作業領域M21(M21A,M21B)を設けた場合には、切除演算手段41b(
図2参照)は、洗浄工程において、使用しているノズルの種類、ノズルの姿勢(例えばC軸座標値)、被洗浄物モデルM2の姿勢によって、その洗浄工程の間、複数の作業領域M21(M21A,M21B)のうち、ノズルモデルM4に近い作業領域M21Aに対して衝突領域R1を求めて、衝突領域R1における作業深さdLが切除された衝突領域切除モデルM5を演算する。
【0079】
また、切除演算手段41b(
図2参照)は、他の工程において、横向き噴射のノズルを利用する場合には、その時々の姿勢において、ノズルの噴流が向く側の作業領域M21を、ノズルの円周方向の位置決め角度を表すC軸座標に基づいて、衝突領域R1を演算する。
【0080】
切除演算ステップ(S5)において、予め設定した作業領域M21Aに対して衝突領域R1における作業深さdLを切除することで、噴流モデルM1が被洗浄物モデルM2を貫通した場合に、貫通した裏面側を切除せず、噴流が接触した表面側のみを切除するため、本来噴流が衝突しない被洗浄物の裏側に表側のノズルの軌跡が写らない。したがって、ノズル及び被洗浄物17の姿勢が種々変化する洗浄装置10による、噴流と被洗浄物17との衝突領域R1を、コンピュータ上で正確に再現できる。
【0081】
ただし、洗浄装置10が被洗浄物17、又はノズルの姿勢を変更できない場合には、複数の作業領域M21を設けることを要しない。また、被洗浄物17の洗浄対象箇所が特定の面に集中しており、被洗浄物17の裏面に対しての噴流の突き抜けが問題とならない場合においても、同様である。
【0082】
載置台16についても、上述の被洗浄物と同様に、噴流が衝突する部位を演算できる。このように構成すれば、ユーザーは、載置台16や載置台16に配設された配管等の付帯装置の表面の内、噴流34と衝突する位置を特定できる。載置台16の付帯装置としてプラスチックス材料や配管の一部が露出している場合、これらの付帯装置は噴流34によってダメージを受けやすい。上記の場合には、載置台16や載置台16の付帯装置のダメージを受ける部位を確認できる利点がある。
【0083】
なお、噴流衝突領域確認装置40は、切除演算手段41b(
図2参照)に対して、噴流34が、載置台16や付帯装置との衝突部57を切除しないように設定できる。
【0084】
駆動演算ステップS4、切除演算ステップS5、干渉監視演算ステップS6の各機能は、部品加工用の切削シミュレータを応用して実現され得る。
【0085】
図12は、洗浄ランス26によって、被洗浄物17の凹部18を洗浄して凹部18内に形成された洗浄対象である円周溝等(不図示)に生じるバリ等を除去する作業における噴流衝突領域確認装置40の表示装置43を示す図である。
図12に示すように、洗浄ランス26は、回転軸14を中心に回転した状態で被洗浄物17の洗浄対象である凹部18に挿入される。洗浄ランス26は、その円錐面状に広がる噴流36により、凹部18の内面を洗浄する。凹部18の内面に、バリが生じていれば、バリに噴流36が直接接触する。バリは、噴流36の動圧を受けて、折れて除去される。
【0086】
洗浄ランス26は、方向53に沿って移動する。噴流36は、地点54で発現し、洗浄対象である円周溝等(不図示)に生じるバリ等を通過して、地点55で消滅する。噴流36は、地点54から地点55まで、洗浄ランス26と一体となって移動する。軌跡50は、噴流36が通過する範囲を示す。地点54で噴出を開始して凹部18内の地点55で噴出を停止することで、噴流36の空間上、時間上の出現範囲を正確に再現できる。噴流36の出現、消失が再現されなければ、噴流36と被洗浄物17との衝突領域R1の範囲が正確に再現されない。噴流36の出現、消失が再現されるため、衝突領域R1を精密に演算できる。
【0087】
噴流衝突領域確認装置40は、駆動演算ステップ(S4)において、噴流モデルM1は、数値制御プログラム中の噴出開始命令の発令時である地点54から、噴出停止命令の発令時である地点55までの区間において生成する。かかる構成により、噴流衝突領域確認装置40は、洗浄装置10における洗浄動作を忠実に再現して、噴流36の接触領域R1を確認することができる。
【0088】
切除演算手段41b(
図2参照)は、噴流36の軸方向移動に伴って、噴流36と作業領域M21との衝突領域R1を切除する。作業領域M21は、被作業物の表面から所定の作業深さdLに設定されているため、切除演算手段41bは、噴流36の通過によって、凹部18の表面のごく近傍のみを削除する。そして、切除後の形状は、切除前の形状と比較してほとんど変化しない。
【0089】
噴流衝突領域確認装置40(
図2参照)は、洗浄完了後に、噴流31、32、34,36によって表面が削られた被洗浄物17の衝突領域切除モデルM5を、記憶装置45に記憶できる。CPU41(
図2参照)は、洗浄完了後の衝突領域切除モデルM5と洗浄前の被洗浄物モデルM2とを比較し、切除した部位を着色して表示できる。ユーザーは、表示装置43に表示された衝突領域切除モデルM3を確認することで、噴流31、32、34,36と被洗浄物17との衝突領域R1(
図13参照)を認識できる(
図3参照)。
【0090】
なお、ノズル21、23、23、25、26のそれぞれによって生じた衝突領域R1(
図3参照)を異なる色に着色して表示装置43に表示できる。衝突領域R1が着色された場合には、衝突領域R1が明瞭に判別できる。ノズルの種類ごとに衝突領域R1の色を変えると、ノズルの種類毎の洗浄箇所を明確に表せられる。
【0091】
以上の実施形態では、洗浄装置10を例に挙げて説明したが、被塗装物に、塗料である噴流を噴射して塗装を行う塗装機、砥粒を噴射して表面を削り取るサンドブラスト装置など、噴流を利用して作業するあらゆる装置に対して同様に適用できる。
また、上記の実施形態では、数値制御される洗浄装置について説明したが、特別の制御言語を用いる汎用ロボットを使用する各種装置に対して適用できる。その場合には、制御言語をデコードして仮想空間内を、噴流モデルM1、被洗浄物モデルM2、作業装置モデルM3、ノズルモデルM42が移動できるよう、駆動演算手段が構成される。
また、上記した実施形態では、本発明を噴流衝突領域確認装置40として説明したが、コンピュータに実行させるプログラムとして、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に保存して又は電気通信回線を通して提供することもできる。