【解決手段】携帯用情報機器12は、上下動可能に弾性支持された複数のキートップ22を有するキーボード装置10が設けられた本体筐体16と、ディスプレイ18を有し、本体筐体16に対してヒンジ20によって開閉可能に連結されたディスプレイ筐体14とを備え、本体筐体16には、キートップ22に沿って設けられた回転軸部材50と、回転軸部材50の外周面からキートップ22側へと突出し、キートップ22に設けられた受け片40を下方に向かって押下可能な押圧片52とを有し、回転軸部材50が軸周りに回転し、押圧片52で受け片40を押し下げることで、キートップ22を押し下げて押下位置に保持するキー押下機構26が備えられる。
上下動可能に弾性支持された複数のキートップを有するキーボード装置が設けられた本体筐体と、ディスプレイを有し、前記本体筐体に対してヒンジによって開閉可能に連結されたディスプレイ筐体とを備えた携帯用情報機器であって、
前記本体筐体には、前記キートップに沿って設けられた回転軸部材と、該回転軸部材の外周面から前記キートップ側へと突出し、前記キートップに設けられた受け部を下方に向かって押下可能な押圧片とを有するキー押下機構が備えられ、
前記キー押下機構は、前記回転軸部材が軸周りに回転し、前記押圧片で前記受け部を押し下げることで、前記キートップを押し下げて押下位置に保持することを特徴とする携帯用情報機器。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るキーボード装置について、この装置を備えた携帯用情報機器との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るキーボード装置10を備えた携帯用情報機器12の平面図であり、携帯用情報機器12をノート型PCでの使用形態として上から見た図である。
図2は、
図1に示す携帯用情報機器12をノート型PCでの使用形態とした場合の側面図であり、
図3は、
図2に示す状態からディスプレイ筐体14を開き方向に回動させて360度位置としたタブレット型PCでの使用形態とした場合の側面図である。
【0024】
本実施形態に係る携帯用情報機器12は、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して90度〜150度程度の角度位置に回動させた状態ではノート型PCとして好適に使用でき(
図1及び
図2参照)、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して360度位置まで回動させた状態ではタブレット型PCとして好適に使用できる(
図3参照)、いわゆるコンバーチブル型PCである。本発明は、このようなコンバーチブル型PC以外、例えばディスプレイ筐体が180度程度までしか開かない一般的なノート型PC等、各種の携帯用情報機器やそれに搭載されるキーボード装置に適用できる。
【0025】
以下、
図1及び
図2に示すノート型PCでの使用形態を基準とし、ディスプレイ筐体14の内面(表面)14aに設けられたディスプレイ18を視認しながら本体筐体16の操作面である上面(表面)16aに設けられたキーボード装置10を操作する使用者から見た方向で、手前側を前側(前方)、奥側を後側(後方)と呼び、本体筐体16の厚み方向を上下方向、幅方向を左右方向と呼んで説明する。
【0026】
また説明の便宜上、本体筐体16に対するディスプレイ筐体14の角度位置について、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して完全に閉じた状態とし、互いの内面14aと上面16aが対面した姿勢を0度位置(
図2中に2点鎖線で示すディスプレイ筐体14参照)と呼ぶ。そしてこの0度位置を基準として、ディスプレイ筐体14を開き方向に回動させる方向で角度を刻みながら説明するものとし、例えばディスプレイ筐体14と本体筐体16とが直交した姿勢を90度位置と呼び、内面14aと上面16aが同一方向(上方)を向いて互いに平行した姿勢を180度位置(
図2中に2点鎖線で示すディスプレイ筐体14参照)と呼ぶ。さらに、ディスプレイ筐体14と本体筐体16の背面同士、つまりディスプレイ筐体14の外面(背面)14bと本体筐体16の下面(背面)16bとが対面した姿勢を360度位置(
図3参照)と呼ぶものとする。なお、0度位置、90度位置、180度位置及び360度位置等については、本体筐体16、ディスプレイ筐体14又はヒンジ20の構造により、角度数字の示す正確な角度位置から多少ずれた角度位置となることも当然生じるものであり、これらのずれた角度位置も含めて、本実施形態では0度位置等と呼んで説明している。
【0027】
図1〜
図3に示すように、携帯用情報機器12は、ディスプレイ18を有するディスプレイ筐体14と、キーボード装置10を有する本体筐体16とを備え、ディスプレイ筐体14と本体筐体16との間が左右一対のヒンジ20によって回動可能に連結されている。
【0028】
ディスプレイ筐体14は、ヒンジ20を通過した図示しないケーブルにより本体筐体16と電気的に接続されている。ディスプレイ18は、例えばタッチパネル式の液晶表示装置によって構成される。
【0029】
本体筐体16は、扁平な箱状に形成され、その後端縁部にヒンジ20が設けられている。本体筐体16の内部には、図示しない基板、演算装置及びメモリ等の各種電子部品が収納されると共に、キーボード装置10が上面16aに露出して設けられている。
【0030】
キーボード装置10は、前後左右方向に並ぶように配列された複数のキースイッチ21と、各キースイッチ21の操作面を構成するキートップ22の周囲の隙間を埋めるフレーム(コスメティックフレーム)24とを備えたアイソレーション型のキーボード装置である。このためキーボード装置10では、隣接するキートップ22間がフレーム24によって区画され、それぞれが独立した構成となっている。
【0031】
フレーム24は、樹脂等で形成された1枚の板状部材に各キースイッチ21のキートップ22を挿通させる複数の孔部24a(
図6及び
図7参照)が形成された枠体である。フレーム24は、本体筐体16の上面16aと略面一又は多少低位置となるように取り付けられている。
【0032】
ところで、本実施形態に係るキーボード装置10は、0度位置及び360度位置での携帯用情報機器12の筐体厚みを可及的に薄型化とするため、キートップ22を通常操作時の使用位置よりも下方に押し下げた押下位置に押し下げ、この押下位置で保持するキー押下機構26を搭載している。
【0033】
次に、キーボード装置10の具体的な構成について説明する。
【0034】
図4は、
図1に示すキーボード装置10に設けられたキースイッチ21及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図5は、
図4に示すキースイッチ21のキー押下機構26による動作図であり、
図5(A)は、キートップ22が最も上方にある使用位置での側面図であり、
図5(B)は、
図5(A)に示す状態からキートップ22が押し下げられた状態を示す側面図であり、
図5(C)は、
図5(B)に示す状態からキートップ22がさらに押し下げられ、最も下方となる押下位置とされた状態を示す側面図である。
【0035】
図4及び
図5に示すように、キーボード装置10は、キートップ22をガイド機構28で上下動可能に支持したキースイッチ21と、キースイッチ21を上面側に支持するベースプレート30と、ベースプレート30の上面側に積層されたメンブレンシート32と、ベースプレート30の下面側に貼着された防水シート34とを備える。なお、
図5(A)〜
図5(C)はメンブレンシート32を省略して図示している。
【0036】
ベースプレート30は、薄いアルミニウム板等の金属板に切り起こし成形や打ち抜き成形を施したものである。ベースプレート30は、キースイッチ21の取付板となるものであり、当該キーボード装置10に配設される全てのキースイッチ21が1枚のベースプレート30を共用している。ベースプレート30の上面には、ガイド機構28を取り付けるためフック形状の係止片36,38がそれぞれ左右一対で前後に形成されている。フレーム24は、ベースプレート30の上面に設置される。
【0037】
メンブレンシート32は、例えば押圧された場合に接点が閉じる三層構造のスイッチシートであって、ベースプレート30の上に積層されている。メンブレンシート32は、固定接点及び可動接点が重なる位置が押圧された場合に、固定接点と可動接点とが密着することで接点を閉じるものである。メンブレンシート32は各所に貫通孔を有し、この貫通孔を通してガイド機構28がベースプレート30の上面に着地する。メンブレンシート32は、ベースプレート30の下に積層されてもよい。
【0038】
キートップ22は信号を入力するための操作部材であり、ベースプレート30の上方にガイド機構28を介して配設される。キートップ22は平面視で略四角形状であり、操作面となる上面22aと、上面22aの4辺の縁部から下方に延びた側面22bとを有し、樹脂等で成形される。前側の側面22bには左右一対の突出片39,39が前方に向かって突出形成され、後側の側面22bには左右一対の受け片(受け部)40,40が後方に向かって突出形成されている。上面22a及び各側面22bで囲まれたキートップ22の内側空間は、ガイド機構28及びラバードーム41の配設空間となっている(
図5(A)参照)。なお、
図5(B)及び
図5(C)はラバードーム41を省略して図示している。
【0039】
各突出片39は、側面22bから外方に突出した平面視略矩形形状の翼状部材であり、フレーム24の天面に当接することでキートップ22の上方への抜け止めとして機能する。各突出片39はキートップ22の上動方向での最高高さ位置を規定する機能も有する。
【0040】
各受け片40は、側面22bから外方に突出した平面視略矩形状の翼状部材であり、キー押下機構26によるキートップ22の下方への押し下げ力を受ける受け部である。各受け片40は、各突出片39と共に、キートップ22の上方への抜け止めとしての機能とキートップ22の上動方向での最高高さ位置を規定する機能も兼ねる。
【0041】
ラバードーム41は、キートップ22が押下された場合にメンブレンシート32を押圧すると共に、キートップ22の押下操作が解除された際にキートップ22を元の位置に復帰させるための弾性部材であり、メンブレンシート32とキートップ22との間に配設されている。つまりキートップ22は、ガイド機構28によって上下動可能にガイドされた状態でラバードーム41によって弾性支持されている。ラバードーム41は、シリコンゴム等、可撓性を有する弾性材料で形成されている。
【0042】
キースイッチ21では、キートップ22が押下操作されるとその操作力でラバードーム41が弾性変形すると共にメンブレンシート32が押圧され、メンブレンシート32は接点を閉じる。一方、キートップ22への押下操作が解除されると、ラバードーム41の弾性復元力によってキートップ22が元の位置(使用位置)に戻り、メンブレンシート32が接点を開く。
【0043】
図5(A)〜
図5(C)に示すように、ガイド機構28は、キートップ22を上下動可能に支持するものであり、ベースプレート30とキートップ22との間に折り畳み可能に取り付けられている。本実施形態では、ガイド機構28として、筋交い状に取り付けられた内側枠42及び外側枠43を備えたパンタグラフ構造を用いている。
【0044】
例えば内側枠42は、前側に左右一対形成された軸部材42a,42aがベースプレート30の前側の係止片36に対して前後方向に移動可能且つ回転可能に係止され、後側に左右一対形成された図示しない軸部材がキートップ22の後側内面に形成された図示しない係止部に対して移動不能且つ回転可能に支承される。また外側枠43は、後側に左右一対形成された軸部材43a,43aがベースプレート30の後側の係止片38に対して移動不能且つ回転可能に支承され、前側に左右一対形成された図示しない軸部材がキートップ22の前側内面に形成された図示しない係止部に対して移動不能且つ回転可能に支承される。
【0045】
次に、このような各キースイッチ21のキートップ22を押下位置に保持するキー押下機構26について説明する。
【0046】
図6は、使用位置でのキートップ22の状態を示す要部拡大斜視図であり、
図7は、キー押下機構26によって押下位置に保持されたキートップ22の状態を示す要部拡大斜視図である。すなわち、
図6のキートップ22は使用者が押下操作可能となっており、
図7のキートップ22は使用者が押下操作不能となっている。また
図8は、キー押下機構26の構成を模式的に示す平面図である。
【0047】
図4及び
図5に示すように、キー押下機構26は、各キートップ22の後側部に沿って設けられた回転軸部材50と、回転軸部材50の外周面から各キートップ22側となる前方へと突出し、各キートップ22の受け片40の上面に当接配置され、受け片40を下方に向かって押下可能な押圧片(押下片)52とを備える。
【0048】
図8に示すように、回転軸部材50は、キーボード装置10の左右方向に並んだ各キートップ22の後側部に沿って設けられることで、キーボード装置10の前後方向に複数並んで配置されている。本実施形態の場合、キートップ22を前後方向に7列配置しているため、回転軸部材50も7本配置している。本実施形態の場合、最前列の回転軸部材50は最前列右側の3つのキートップ22にのみ対応していればよいため、他の回転軸部材50よりも短尺に構成されている。回転軸部材50は、例えばSUS材等で形成された硬質の線材(ワイヤ)であり、例えば直径1mm程度であって十分な剛性を有する。
【0049】
各回転軸部材50は、キーボード装置10のフレーム24の下面側で該キーボード装置10の左右方向に亘って延在している。各回転軸部材50は、フレーム24の左右両側部から突出した駆動端部50a,50aが、キーボード装置10の左右側部にそれぞれ設けられたスライド部材54,54のスリット54a,54aに回転可能な状態で係合している。これにより、回転軸部材50は、キーボード装置10の左右側部に設けられたスライド部材54,54のスリット54a,54a間に架け渡されている。なお、最前列の回転軸部材50は最前列右側の3つのキートップ22にのみ対応した短尺構造のため、右側のスライド部材54のスリット54aにのみ係合している。スライド部材54は後述するリンク機構56を構成するものであり、キーボード装置10の左右で前後方向にスライド可能である。
【0050】
図4及び
図5に示すように、回転軸部材50は、キートップ22の後側部に沿って左右方向に延在する直線状の基部50bと、基部50bの両端に設けられた駆動端部50aとを有する。駆動端部50aは、基部50bの端部を90度屈曲させたアーム部50cの先端から90度屈曲させて形成されており、基部50bと平行するように左右方向へと突出している。これにより、回転軸部材50の両端部はクランク形状となっている。
図6及び
図7に示すように、フレーム24の左右側面には各回転軸部材50に対応する位置に切欠部24bが設けられており、この切欠部24bを通過した基部50bの端部にアーム部50c及び駆動端部50aが設けられている。
【0051】
基部50bは、その左右方向の適宜箇所でベースプレート30又はフレーム24に設けられた軸受部58(
図4参照)によって回転可能に位置決め支持されている。これにより、左右のスライド部材54が前後方向に移動すると、駆動端部50aがスライド部材54のスリット54a内で回転しながら該スライド部材54と共に前後方向に移動し、その結果、軸受部58で軸支された基部50bを回転中心としてアーム部50cが前後方向に振り子状に揺動しつつ、基部50bが軸周りに回転する(
図5〜
図7参照)。
【0052】
図4及び
図5に示すように、押圧片52は、回転軸部材50の基部50bの外周面に外嵌固着された取付筒体60から屈曲形成されることで、基部50bの外周面からキートップ22側へと突出したものである。取付筒体60は、かしめ固定やスポット溶接によって基部50bに固着される。押圧片52は、取付筒体60の外周面から突出した板片であり、その先端に下方に向かって多少屈曲した押圧部52aが設けられている(
図5(A)〜
図5(C)参照)。
【0053】
図4に示すように、本実施形態の場合、取付筒体60及び押圧片52を1つのキートップ22について左右一対設けることで、キートップ22の左右一対の受け片40を押圧可能となっている。取付筒体60は、基部50bの長手方向に亘って延在した長尺な1本棒で構成されてもよく、押圧片52もこの取付筒体60の長手方向に亘って延在した長尺な1枚板で構成されてもよい。そうすると、1本の取付筒体60を回転軸部材50に固着させるだけで左右方向に並んだ各キートップ22に対して一度に押圧片52を対応させることができ、部品点数の削減と製造効率の向上が図られる。
【0054】
このようなキー押下機構26では、キートップ22が
図5(A)及び
図6に示す使用位置にある状態で、左右のスライド部材54が後方に移動し、これに伴って駆動端部50aが後方に移動すると、基部50bが軸周りに回転する。その結果、基部50bの外周面から突出した押圧片52の押圧部52aが下方向に揺動してキートップ22の受け片40を押し下げ、キートップ22を強制的に押し下げて押下位置とし、さらにこの押下位置で保持することができる(
図5(C)及び
図7参照)。なお、キートップ22の上面22aは、押下位置ではフレーム24の上面と面一又は僅かに低い位置となる(
図7参照)。このためキーボード装置10の上面が凹凸のない平面状に構成される。
【0055】
一方、キートップ22が
図5(C)及び
図7に示す押下位置にある状態で、左右のスライド部材54が押下動作時とは逆の前方に移動すると、基部50bも押下動作時とは逆方向に回転する。その結果、押圧片52の押圧部52aが上方向に揺動して受け片40に対する押圧作用が解除され、キートップ22はラバードーム41の付勢力によって上動し、使用位置に復帰する(
図5(A)及び
図6参照)。
【0056】
このようなキー押下機構26によるキートップ22の押下動作は、例えば本体筐体16の外面に設けた図示しない前後方向の操作スイッチによってスライド部材54を手動でスライドさせるか、或いは所定の操作スイッチの操作に基づき図示しないモータ等を用いた電動でスライド部材54をスライドさせることで動作させてもよい。但し、本実施形態に係る携帯用情報機器12では、ディスプレイ筐体14の開閉位置による使用者のキーボード装置10の使用の要否を考慮し、ヒンジ20とキー押下機構26との間をリンク機構56で連係させ、ディスプレイ筐体14の回動角度位置に応じてキー押下機構26を動作させる構成としている。
【0057】
そこで、次にディスプレイ筐体14の回動動作とキー押下機構26とを連動させるヒンジ20及びリンク機構56について説明する。
【0058】
先ず、ヒンジ20の構成例を説明する。
【0059】
図9は、本実施形態に係る携帯用情報機器12に用いられるヒンジ20の一構成例を模式的に示す平面図であり、左側のヒンジ20の構成を代表的に示している。以下、ヒンジ20として左側のヒンジ20を例示して説明するが、右側のヒンジ20は左側のヒンジ20と左右対称構造であって実質的に同一構造のため、その詳細な説明は省略する。
【0060】
図9に示すように、ヒンジ20は、左右方向に延在する第1シャフト(第1軸)62と、第1シャフト62と平行して設置された第2シャフト(第2軸)63と、第1シャフト62及び第2シャフト63を回転可能に軸支して収納する箱状のヒンジ筐体64とを備える(
図2及び
図3も参照)。
【0061】
第1シャフト62は、一端部がディスプレイ筐体14に設けられた図示しない嵌合孔に嵌入固定されることで該ディスプレイ筐体14と一体的に回転する。第2シャフト63は、一端部が本体筐体16に設けられた図示しない嵌合孔に嵌入固定されることで該本体筐体16と一体的に回転する。第1シャフト62及び第2シャフト63の大部分はヒンジ筐体64の内部に回転可能な状態で収納されている。これら第1シャフト62及び第2シャフト63は、例えば0度位置から180度位置までは第1シャフト62のみが回転し、180度位置から360度位置までは第2シャフト63のみが回転する構成とされている。勿論、他の回転角度位置で第1シャフト62及び第2シャフト63の回転が選択される構成であってもよく、第1シャフト62及び第2シャフト63が図示しない歯車列等によって同期回転する構成であってもよい。
【0062】
ヒンジ筐体64には本体筐体16の後端縁部に設けられた凸状部が入り込む凹状部64aが設けられており、この凹状部64aの一側面にはスパイラルピン66が突設されている。スパイラルピン66は本体筐体16側の第2シャフト63と同軸上に設けられ、ヒンジ筐体64の回動動作に連動して第2シャフト63と同軸で回転する。スパイラルピン66の外周面には、
図10に示す展開図に示された形状からなるレール溝68が螺旋状に形成されている。
【0063】
レール溝68は、スパイラルピン66の外周面で軸方向に沿って螺旋を描くように形成された第1作動部68a及び第2作動部68bと、第1作動部68a及び第2作動部68bの間に設けられ、スパイラルピン66の外周面で周方向に沿って形成された空振り部68cとを有する。第1作動部68aはスパイラルピン66の右側から左側に向かう溝であり、第2作動部68bはスパイラルピン66の左側から右側に向かう溝である。
図10に示すように、0度位置及び360度位置での第1作動部68a及び第2作動部68bの左右方向位置は一致し、60度位置及び180度位置での第1作動部68a及び第2作動部68bの左右方向位置は一致する。また空振り部68cは、左右方向にずれがなく、スパイラルピン66の周方向に沿った溝である。
【0064】
レール溝68には、リンク機構56を構成するヒンジリンク70の係合片70aが摺動可能に係合している。係合片70aは、ディスプレイ筐体14の0度位置から60度位置までの回動の間は第1作動部68aを移動し、60度位置から180度位置までの回動の間は空振り部68cを移動し、180度位置から360度位置までの回動の間は第2作動部68bを移動する。
【0065】
本発明を、例えばディスプレイ筐体14が少なくとも90度位置までは開閉可能、例えば180度位置程度まで開閉可能な一般的なノート型PCに適用する場合は、上記のような2軸構造のヒンジ20に代えて1軸構造のヒンジ機構を用いてもよい。この場合、レール溝68は、例えば
図10中の0度位置から90度位置或いは180度位置までの範囲で構成される。
【0066】
次に、ヒンジ20によるディスプレイ筐体14の回動動作とキー押下機構26によるキートップ22の押下動作とを連動させるリンク機構56について説明する。
【0067】
図11は、0度位置及び360度位置でのリンク機構56の状態を模式的に示す平面図であり、
図12は、60度位置でのリンク機構56の状態を模式的に示す平面図である。
図11及び
図12では、左側のヒンジ20及びこれと連動するリンク機構56を例示して説明するが、右側のヒンジ20及びこれと連動するリンク機構56は左側のものと左右対称構造であって実質的に同一構造のため、その詳細な説明は省略する。
【0068】
図11及び
図12に示すように、リンク機構56は、本体筐体16の内部で動作するものであり、本体筐体16の内面で左右方向に移動可能に支持されたヒンジリンク70と、本体筐体16の内面に対して一端側の回動軸72を中心として回動可能に支持された揺動部材74と、揺動部材74の回動軸72とは反対側の他端側に対して作用ピン76介して回転可能に連結されたスライド部材54とを備える。
【0069】
ヒンジリンク70は、後方へと突出してスパイラルピン66のレール溝68に係合する係合片70aを有したL字形状のプレートである。ディスプレイ筐体14が回動されてスパイラルピン66が回転すると、ヒンジリンク70は、係合片70aがレール溝68の第1作動部68a及び第2作動部68bに位置している際には左右方向にスライド移動し、係合片70aが空振り部68cに位置している際には移動しない(
図10参照)。
【0070】
揺動部材74は、回動軸72が設けられたヒンジリンク70側の一端側に膨らんだ湾曲形状を有する略三角形状のプレートである。揺動部材74は、回動軸72の後側となる位置でヒンジリンク70との間が連結ピン78によって互いに回転可能な状態で連結されている。揺動部材74の回動軸72とは反対側の他端側は、作用ピン76によってスライド部材54と回転可能に連結されている。
【0071】
スライド部材54は、図示しないガイド構造によって本体筐体16に対して前後方向にスライド可能に設けられた長尺矩形状のプレートである。スライド部材54は、その後端部に作用ピン76が突設されており、この作用ピン76が揺動部材74に回転可能に連結されている。
【0072】
このようなリンク機構56では、スパイラルピン66の回転を受けてヒンジリンク70が左右方向にスライド移動すると、連結ピン78が力点となると共に回動軸72が回動支点となって揺動部材74が回動し、作用ピン76が作用点となってスライド部材54が前後方向に移動する(
図11及び
図12参照)。
【0073】
次に、リンク機構56によって連動するディスプレイ筐体14の回動動作とキー押下機構26の動作の関係を説明する。
【0074】
先ず、ディスプレイ筐体14が0度位置にある場合は、
図11に示すように初期位置にあるヒンジリンク70によって揺動部材74が図中で最も時計方向に回動した位置にあり、作用ピン76が最も後方となる位置にある。このため、スライド部材54も最も後側に移動した位置にある。この際、ヒンジリンク70の係合片70aはヒンジ20のスパイラルピン66に形成されたレール溝68の第1作動部68aの始点となる位置に位置している(
図10参照)。
【0075】
この状態では、
図5(C)及び
図7に示すように、回転軸部材50の駆動端部50aがスライド部材54によって最も後側に移動した位置にあり、キートップ22は受け片40が押圧片52によって押し下げられた押下位置に保持されている。従って、キートップ22の上面22aがフレーム24の上面と面一又は僅かに低い位置にあり、キーボード装置10の上面が平面上に構成されている。このため、本体筐体16に対して閉じられたディスプレイ筐体14のディスプレイ18がキートップ22に干渉することがなく、携帯用情報機器12の板厚が可及的に薄型化されている。
【0076】
次に、ディスプレイ筐体14が0度位置から開き方向に回動されるとヒンジ20のヒンジ筐体64も回動し、スパイラルピン66が回転する。0度位置から60度位置の間では、ヒンジリンク70の係合片70aがレール溝68の第1作動部68aに位置している(
図10参照)。このため、0度位置から60度位置の間でのスパイラルピン66の回転により、ヒンジリンク70が進動方向(
図11中で左側)に押し出し移動されて揺動部材74を
図11中で反時計方向に回動させ、作用ピン76を介してスライド部材54を前方へと進動させる。
【0077】
スライド部材54が前方に移動すると、回転軸部材50の駆動端部50aも前方に移動するため、回転軸部材50は押圧片52の押圧部52aが上に移動する方向に回転する(
図5(B)参照)。その結果、押圧片52による受け片40の押圧作用が解除されるため、ラバードーム41の付勢力によってキートップ22も押圧片52と共に上方に移動する。
【0078】
そして60度位置では、
図10に示すように係合片70aが第1作動部68aの終点となる位置に位置するため、
図12に示すように最も進動した位置にあるヒンジリンク70によって揺動部材74が図中で最も反時計方向に回動した位置にあり、作用ピン76が最も前方となる位置にある。このため、スライド部材54も最も前側に移動した位置にある。
【0079】
この状態では、
図5(A)及び
図6に示すように、回転軸部材50の駆動端部50aはスライド部材54によって最も前側に移動した位置にあり、キートップ22が最も上動した位置である使用位置にあり、また最も上方に移動した押圧片52によって受け片40の最高高さ位置が規定される。従って、当該携帯用情報機器12では、ディスプレイ筐体14を60度位置まで開いた段階でキートップ22がフレーム24の上面から上方に突出した使用位置となるため、キーボード装置10が使用可能な状態となる。
【0080】
続いて、90度位置から180度位置の間は、ヒンジリンク70の係合片70aがレール溝68の空振り部68cに位置しているため(
図10参照)、ヒンジ筐体64が回動してスパイラルピン66が回転してもヒンジリンク70は移動しない。すなわちスライド部材54の位置も変化しないため、
図5(A)及び
図6に示すように、キートップ22は使用位置に維持される。つまり携帯用情報機器12では、ノート型PCとしての使用が想定される60〜180度位置の間ではキーボード装置10が使用可能な状態に維持される。
【0081】
次に、ディスプレイ筐体14が180度位置からさらに開き方向に回動されると、ヒンジリンク70の係合片70aがスパイラルピン66のレール溝68の第2作動部68bを移動する(
図10参照)。このため、180度位置から360度位置の間でのスパイラルピン66の回転により、ヒンジリンク70が0度位置から60度位置の間とは反対の退動方向(
図12中で右側)に引き寄せ移動され、揺動部材74を
図12中で時計方向に回動させ、作用ピン76を介してスライド部材54を後方へと退動させる。
【0082】
スライド部材54が180度位置(
図12に示す60度位置と同位置)での状態から後方に移動すると、回転軸部材50の駆動端部50aも後方に移動するため、回転軸部材50は押圧片52が下に移動する方向に回転する(
図5(B)参照)。その結果、押圧片52の押圧部52aによって受け片40が押圧作用を受け、ラバードーム41の付勢力に抗してキートップ22が押圧片52と共に下方に移動する。
【0083】
そして360度位置では、
図10に示すように係合片70aが第2作動部68bの終点となる位置に位置するため、
図11に示すように最も退動した位置にあるヒンジリンク70によって揺動部材74が図中で最も時計方向に回動した位置にあり、作用ピン76が最も後方となる位置にある。このため、スライド部材54も最も後側に移動した位置にある。
【0084】
この状態では、
図5(C)及び
図7に示すように、0度位置の場合と同様、回転軸部材50の駆動端部50aはスライド部材54によって最も後側に移動した位置にあり、キートップ22は受け片40が押圧片52によって押し下げられた押下位置に保持されている。このため、キートップ22の上面22aがフレーム24の上面と面一又は僅かに低い位置にあってキーボード装置10の上面が平面上に構成されている。従って、本体筐体16に対して反転され、タブレット型PCでの背面となる本体筐体16の上面16aが平板状に構成され、キートップ22による凹凸形状がないため、タブレット型PCとして使用する際、キーボード装置10が邪魔になることがない。
【0085】
一方、360度位置にあるディスプレイ筐体14を閉じ方向に回動動作させる場合には、上記の開き方向への回動動作と逆方向の動作が生じる。すなわち、ディスプレイ筐体14が360度位置から180度位置へと回動されるのに伴い、スライド部材54が前方へと移動して押圧片52の受け片40に対する押圧作用が解除される方向に回転軸部材50を回転させる。これにより、キートップ22が最も上動した使用位置に復帰する。そして、180度位置から60度位置まではキートップ22の使用位置が維持され、ディスプレイ筐体14が60度位置から0度位置へと回動されるのに伴い、今度はスライド部材54が後方へと移動して押圧片52が受け片40を押し下げる方向に回転軸部材50を回転させる。これにより、キートップ22がフレーム24の上面と面一又は僅かに低い位置となるため、ディスプレイ18とキートップ22とが干渉することなくディスプレイ筐体14を閉じることができる。
【0086】
ところで、上記した構成例では、スライド部材54が前後方向にスライドした際、全ての回転軸部材50が同時に回転し、全てのキートップ22を同時に上下動する。このため、キートップ22を上下動させるヒンジ20及びリンク機構56の各部材には全てのキートップ22をラバードーム41の付勢力に抗して押し下げるために必要な荷重が付与されることから各部材の負荷も大きなものとなる。そこで、各回転軸部材50の回転タイミングを異ならせる構成を用いれば、各部材の負荷を低減し、各部材をより小型化及び薄型化することができる。
【0087】
図13(A)〜
図13(C)は、各回転軸部材50を異なるタイミングで回転させる時間差構造を有したスライド部材80によって回転軸部材50を回転させる構成例を模式的に示す動作図である。
図13(A)は、スライド部材80が最も前側に移動した60度位置での状態を示す図であり、
図13(B)は、
図13(A)に示す状態からスライド部材80が後方に移動し、一部の回転軸部材50が回転を開始した状態を示す図であり、
図13(C)は、
図13(B)に示す状態からスライド部材80がさらに後方に移動し、一部の回転軸部材50が回転を終了し、一部の回転軸部材50が回転を開始した状態を示す図である。
【0088】
図13(A)〜
図13(C)に示すスライド部材80は、上記したスライド部材54と比べて、スリット54aとは形状の異なるスリット80a〜80dを有する。なお、スライド部材80にもスライド部材54と同様に7本の回転軸部材50にそれぞれ対応する7つのスリットが形成されているが、
図13(A)〜
図13(C)では4つのスリット80a〜80dのみを図示し、他のスリットの図示は省略している。
【0089】
各スリット80a〜80dは、回転軸部材50の駆動端部50aが挿入される前後方向の溝の幅が異なる構成となっている。すなわち、最も前側にあるスリット80aの幅W1を基準とすると、その後側のスリット80bの幅W2は幅W1の2倍とされ、スリット80cの幅W3は幅W1の3倍とされ、スリット80dの幅W4は幅W1の4倍とされ、他の図示していないスリットについても同様な比率で構成されている。
【0090】
図13(A)に示す60度位置の状態において、スライド部材80は上記したスライド部材54と同様に最も前側に移動した位置にあり、この状態では各回転軸部材50の駆動端部50aも各スリット80a〜80dの後壁に当接して最も前側に移動した位置にある。このため、上記したようにキートップ22は使用位置にある(
図5(A)及び
図6参照)。
【0091】
この状態からディスプレイ筐体14が開き方向に回動し、スライド部材80が後方に移動すると、先ず、最も狭幅のスリット80aに係合している最も前側の回転軸部材50の駆動端部50aがスリット80aの前壁に当接して後方に移動し、この回転軸部材50のみが回転し始める(
図13(B)参照)。一方、他のスリット80b〜80dに係合している回転軸部材50は、スライド部材80が後方に移動した場合であっても、その駆動端部50aが各スリット80b〜80dの前壁に当接するまでの間は各スリット80b〜80b内を移動するため回転しない。
【0092】
従って、
図13(C)に示すようにスライド部材80がさらに後方に移動すると、最も前側のスリット80aに係合している回転軸部材50に続いて、他のスリット80b〜80dに係合している回転軸部材50も順に回転し始める。この際、回転が終了した回転軸部材50、すなわち
図13(C)中ではスリット80a,80bに係合していた回転軸部材50は、いずれも回転が終了した時点でキートップ22を押下位置まで押し下げており、その後は駆動端部50aがスライド部材80の上面上を摺接する。これにより、一旦押下位置に押し下げられたキートップ22を他のキートップ22が押下位置となるまでの間、押下位置のままで保持しておくことができる。
【0093】
そして、ディスプレイ筐体14が60度位置となって全ての回転軸部材50が回転を終了した際には、全ての回転軸部材50の駆動端部50aがスライド部材80の上面上に位置するため、全てのキートップ22が押下位置に保持される。また、ディスプレイ筐体14を開いた状態から閉じ操作した場合は、前側の回転軸部材50の駆動端部50aから順にスリット80d〜80aに挿入され、最終的に60度位置では
図13(A)に示す状態に戻る。
【0094】
このように、スライド部材80は、各スリット80a〜80dの幅を異ならせることで各回転軸部材50の回転タイミングを異ならせる時間差構造を有する。これにより、各回転軸部材50に対応する各列のキートップ22毎にその上下動のタイミングがずれるため、キートップ22を上下動させるヒンジ20及びリンク機構56の各部材にかかる負荷が分散される。その結果、これら各部材の負荷が低減され、各部材の小型化及び薄型化を図ることができる。
【0095】
なお、上記のように各スリット80a〜80dに係合された各回転軸部材50を全て異なるタイミングで駆動する以外にも、例えば隣り合うスリット80a,80bの幅W1,W2を同幅とし、スリット80c,80dの幅W3,W4を同幅且つ幅W1,W2よりも幅広とし、回転軸部材50を例えば2本ずつ同時に駆動する構成等としてもよい。
【0096】
以上のように、本実施形態に係るキーボード装置10では、左右方向に並んだ複数のキートップ22に沿って設けられた回転軸部材50と、回転軸部材50の外周面からキートップ22へと突出し、各キートップ22に設けられた受け片40を下方に向かって押下可能な押圧片52とを有し、回転軸部材50が軸周りに回転し、押圧片52で受け片40を押し下げることで、キートップ22を押し下げて押下位置に保持するキー押下機構26を備える。また本実施形態に係る携帯用情報機器12では、ディスプレイ筐体14をヒンジ20によって開閉可能に支持した本体筐体16にキー押下機構26を備えている。
【0097】
このように、当該キーボード装置10及び携帯用情報機器12では、キートップ22を押し下げて押下位置に保持するためのキー押下機構26を、キーボード装置10(本体筐体16)の内部に搭載した回転軸部材50及び押圧片52で構成している。このため、キーボード装置10や本体筐体16、さらにはディスプレイ筐体14の外面にキー押下機構26の構成要素が露出しないため、製品の外観品質を確保することができる。
【0098】
しかも回転軸部材50を軸周りに回転させ、その外周面から突出した押圧片52によって各キートップ22を押し下げる構成としている。このため、押圧片52は、その回転中心となる回転軸部材50の軸心からその先端の押圧部52aまでの突出長に基づく大きなモーメントによって回転軸部材50の回転力を増幅した押圧力でキートップ22を押し下げることができる。その結果、上記特許文献2のようにスライドする板ばねによって直接的に且つ強制的にキートップを押し下げる構成に比べて、キー押下機構26の各部品やヒンジ20、リンク機構56等の負荷を低減でき、これら各部品の破損を抑制できると共に各部品を小型軽量化することも可能となり、キーボード装置10や携帯用情報機器12の薄型化にも貢献する。
【0099】
さらに当該携帯用情報機器12では、回転軸部材50の力点となる駆動端部50aは、基部50bからアーム部50cを介してオフセットした位置に配置されている。このため、このアーム部50cの長さ分のモーメントが作用することで回転軸部材50を小さな駆動力で回転させることができ、ヒンジ20やリンク機構56の負荷を一層低減できる。
【0100】
この場合、キートップ22は、受け片40が押圧片52によって押し下げられた場合には、その頂面となる上面22aがキーボード装置10の上面(本実施形態ではフレーム24の上面又は本体筐体16の上面16a)と面一又は該上面よりも低位置となる押下位置になる一方、受け片40に対する押圧片52の押下作用が解除されて上方に復帰した場合には、その上面22aがキーボード装置10の上面より上方に突出して上下動可能な使用位置になる。従って、キーボード装置10の使用が不要な状態、例えば携帯用情報機器12を0度位置や360度位置とした状態ではキートップ22が押下位置となることで携帯用情報機器12の板厚を可及的に薄型化することができる。一方、キーボード装置10の使用が必要な状態、例えば携帯用情報機器12を90度位置から150度位置とした状態ではキートップ22が使用位置となることで、使用者は十分な上下ストロークを持ってキートップ22を押下操作することができ、高い操作性が得られる。
【0101】
回転軸部材50は、左右方向に並んだキートップ22の前側部又は後側部に沿って設けられることで、前後方向に複数並んで配置される。これにより、各列毎のキートップ22を共通の回転軸部材50で押し下げることができるため、キー押下機構26の部品点数を低減でき、構成も簡素化できる。
【0102】
キー押下機構26は、前後方向に並んだ回転軸部材50の各列毎又は複数列毎の回転タイミングを異ならせることで、前後方向の各列毎又は複数列毎のキートップ22の押し下げタイミングを異ならせる時間差構造を有する。これにより、各列のキートップ22毎にこれを上下動させるヒンジ20及びリンク機構56の各部材にかかる負荷が分散されるため、その負荷が低減され、より小型化及び薄型化を図ることができる。しかもこのような時間差構造を用いると、例えばディスプレイ筐体14を0度位置から開き操作した際にはディスプレイ筐体14の開き角度の増加に応じて前側の列のキートップ22から順にウェーブするように上方に移動して使用位置に復帰し、同様に例えばディスプレイ筐体14を90度位置から閉じ操作した際にはディスプレイ筐体14の開き角度の減少に応じて後側の列のキートップ22から順にウェーブするように下方に移動して押下位置となるため、使用者に視覚的な演出効果を与えることができる。
【0103】
また、コンバーチブル型PCのである当該携帯用情報機器12ではキートップ22は、0度位置及び360度位置では押下位置に保持される一方、0度位置と180度位置の間に設定された所定の角度範囲(本実施形態では60度位置から180度位置の間)において受け片40に対する押圧片の押下作用が解除されることで上方に復帰し、上下動可能な使用位置になる。これにより、キーボード装置10が不要であって可及的に薄型化し或いは可及的に平板状に構成したい0度位置及び360度位置ではキートップ22が押下位置となり、キーボード装置10が必要となる0度位置と180度位置の間に設定された所定の角度範囲では使用位置となるため、高い利便性が得られる。
【0104】
略同様に、上記したように携帯用情報機器12を一般的なノート型PCとして構成した場合には、ヒンジ20は、本体筐体16とディスプレイ筐体14との間を0度位置から少なくとも90度位置程度まで回動可能に連結した必要があり、この際、キートップ22は、0度位置において押下位置に保持される一方、0度位置と90度位置の間に設定された所定の角度位置(本実施形態では60度位置)において受け片40に対する押圧片52の押下作用が解除されることで上方に復帰し、上下動可能な使用位置になる。
【0105】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0106】
上記実施形態では、回転軸部材50をその押下対象となるキートップ22の後側部に沿って配置した構成を例示したが、回転軸部材50は押下対象となるキートップ22の前側部に沿って配置されてもよく、前後側部の両方に配置されてもよい。さらに、回転軸部材50はキースイッチ21の配列仕様によっては前後方向に配列されたキートップ22の側部に前後方向に沿って設けられてもよい。
【0107】
上記実施形態では、例えば0度位置で押下位置にあるキートップ22を60度位置で使用位置にするように構成したが、このキートップ22の押下動作の切換角度は60度位置以外であっても勿論よい。但し、ノート型PCやコンバーチブル型PCでは、通常90度位置〜150度位置程度の角度範囲でキーボード装置10の使用が必要となるため、前記切換角度は、少なくとも90度位置より小さい角度位置であって、0度位置よりも大きい角度位置であることが好ましい。