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特開2016-213194アモルファス金属製電流コレクターを有するデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-213194(P2016-213194A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】アモルファス金属製電流コレクターを有するデバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20161118BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
   H01M4/66 A
   H01M4/70 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-109870(P2016-109870)
(22)【出願日】2016年6月1日
(62)【分割の表示】特願2014-548037(P2014-548037)の分割
【原出願日】2012年12月20日
(31)【優先権主張番号】11194993.9
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】スタルダー,ミシェール
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクル,イヴ
(72)【発明者】
【氏名】マルロー・デール,アニエス
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017AS08
5H017BB16
5H017BB17
5H017CC01
5H017DD01
5H017EE01
5H017EE05
5H017EE08
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH05
5H017HH10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】曲げ応力に耐え、信頼性が高い可撓性を有する電池の提供。
【解決手段】セパレーター6によって分離されるカソード2及びアノード4を有する電気化学的デバイス1。2つの電流コレクター8を有し、これによって、アノード4及びカソード2は夫々、セパレーター6と電流コレクター8の間に配置される電池セル。2つの電流コレクター8の1つ以上は、1種類以上の金属成分を有する少なくとも部分的にアモルファスな材料で形成される電池セル。少なくとも一方の電流コレクター8の底面91に接着改善のために摩擦力を大きくする凹凸構造93を有する電池セル。2つの電流コレクター(8)はアモルファスな材料で完全に形成され、更に好ましくは、その材料が、Ti、Zr、Ni、Cu、Fe、Cr、Mn、V、W、又はAlから選ばれる一つ以上の元素を有し、アモルファスな材料の抵抗率が10−5Ω・m、好ましくは10−6Ω・mを有する電池セル。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレーター(6、60)によって互いに分離されるカソード(2、20)及びアノード(4、40)を有するセルであって、このセルは、さらに、電解質(3)及び2つの電流コレクター(8)を有し、これによって、前記アノード及び前記カソードはそれぞれ、前記セパレーターと電流コレクターの間に配置され、
前記2つの電流コレクターは、少なくとも1つの金属元素を有する少なくとも部分的にアモルファスな材料で形成され、さらに
前記2つの電流コレクターの少なくも1つはその底面(91)に接着改善のために摩擦力を大きくする凹凸構造(93)を有することを特徴とするセル。
【請求項2】
前記2つの電流コレクター(8)は、アモルファスな材料で完全に形成されることを特徴とする請求項1に記載のセル。
【請求項3】
前記材料は、Ti、Zr、Ni、Cu、Fe、Cr、Mn、V、W及びAlからなる群に含まれる元素を少なくとも1つ有することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のセル。
【請求項4】
前記アモルファスな材料は、抵抗率10-5 Ohm・mを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセル。
【請求項5】
前記アモルファスな材料は、抵抗率10-6 Ohm・mを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセル。
【請求項6】
前記アモルファスな材料は、銅を47.5重量%、ジルコニウムを47.5重量%、及びアルミニウムを5重量%有するアモルファス合金を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセル。
【請求項7】
前記2つの電流コレクター(8)のそれぞれの厚みは、1μmと50μmの間であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセル。
【請求項8】
前記2つの電流コレクター(8)のそれぞれの厚みは、5μmと25μmの間であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセル。
【請求項9】
前記2つの電流コレクター(8)の厚みは、互いに等しくないことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のセル。
【請求項10】
前記2つの電流コレクター(8)のそれぞれの縁部分(81)は、前記それぞれの電流コレクターの中央域(80)よりも厚いことを特徴とする請求項9に記載のセル。
【請求項11】
前記少なくとも部分的にアモルファスな材料は、少なくとも1種類の金属成分を有し、さらに、結晶成分を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のセル。
【請求項12】
前記電流コレクター(8)の少なくとも1つは、溶融スピニングによって作られることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のセルの製造方法。
【請求項13】
前記2つの電流コレクター(8)の少なくとも1つは電気分解によって作られることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のセルの製造方法。
【請求項14】
前記セルは、充電可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレーターによってお互い分離されるカソードとアノードを有する電気化学的デバイスに関し、この電気化学的デバイスは、さらに、2つの電流コレクターを有し、これによって、アノード及びカソードはそれぞれ、セパレーターと電流コレクターの間に配置される。このデバイスは、電池又はセルであることができる。
【背景技術】
【0002】
多くの既存の電池及びセルの中で、薄膜電池と呼ばれる電池が知られている。図1に示すこのような電池は、セパレーターによってお互い分離されるカソード及びアノードを有する。この電池は、さらに、カソード及びアノードと、この電池の外側の電気回路との間で電子を輸送する2つの電流コレクターを有する。
【0003】
これらの電池ないし電気化学的デバイスの応用用途の1つは、可撓性を有する電池を得る用途である。このために、電流コレクター及びセパレーターは、可撓性を有する必要性がある。薄膜電池の柔軟性を大きく制限する要素の1つは、電流コレクターである。電流コレクターは、最良の導電率を有する必要がある電池の要素である。なぜなら、電流が移動する距離が断然最も大きいからである(電池の全寸法にわたって − 他の要素では電流は最短の寸法、すなわち、厚み、のみを移動する)。電流コレクターにおける抵抗が高すぎると、電池の電圧降下、そして、熱の形態でエネルギーが発散することをもたらす。このため、電流コレクターには一般に金属が用いられる。なぜなら、周囲温度下のいくつもの材料の中で最良の導電率を有するからである。図1に示すように、電流コレクターが金属シートの形状であり、電池の外側に配置される場合、電流コレクターは、電解質の蒸発及び電池にとって有害な気体(バッテリーの種類に依存する − 例えば、CO2、O2、H2)の流入を防ぐバリヤー層としても機能する。
【0004】
しかし、高分子や複合材料のような大きな可撓性を有する材料を他の電池要素に用いることができる。金属シートを電流コレクターとして使用することは、電池の可撓性に対して負の影響をもたらす。また、電流コレクターは、電池の端部に一般に設けられるので、したがって、電流コレクターは最も高い曲げ応力、すなわち、外側での最も高い曲率半径における牽引応力、及び、内側での最も小さい曲率半径における圧縮応力、を受ける要素である。結果的に、曲率半径が1.5cm未満の約100回の曲げを経ると、電流コレクターにおいて亀裂が発生する。このような亀裂は、曲げの数が増えると多くなり、電池内の活性層を損傷させる皺(しわ)を形成する。これによって、容量が減り、このことは徐々に顕著になり、最終的には電池をだめにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より多くの曲げ応力に耐え、より信頼性が高い可撓性を有する電池を提案することによって、従来技術の上記課題を克服する、電池のような電気化学的デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、セパレーターによってお互い分離されるカソード及びアノードを有するセルに関する。この電池は、さらに、電解質及び2つのコレクターを有する。これによって、アノード及びカソードがそれぞれ、セパレーターと電流コレクターの間に配置される。この電池において、2つの電流コレクターは、少なくとも部分的にアモルファス金属材料で形成される。
【0007】
このセルのいくつかの有利な実施形態は、従属請求項の主題を形成する。
【0008】
第1の有利な実施形態において、2つのコレクターは、アモルファス材料で完全に形成される。
【0009】
第2の有利な実施形態において、この材料は、Ti、Zr、Ni、Cu、Fe、Cr、Mn、V、W及びAlからなる群に含まれる少なくとも1つの元素を有する。
【0010】
第3の有利な実施形態において、この材料は、10-5 Ω・mの最大抵抗率を有する。
【0011】
別の有利な実施形態において、この材料は10-6 Ω・mの最大抵抗率を有する。
【0012】
別の有利な実施形態において、この材料は、銅を47.5重量%、ジルコニウムを47.5重量%、及びアルミニウムを5重量%を有する。
【0013】
別の有利な実施形態において、電流コレクターの厚みは、1μmと50μmの間にある。
【0014】
別の有利な実施形態において、電流コレクターの厚みは、5μmと25μmの間にある。
【0015】
別の有利な実施形態において、2つの電流コレクターの厚みは等しくない。
【0016】
別の有利な実施形態において、電流コレクターの縁部分は、電流コレクターの中央領域よりも厚い。
【0017】
別の有利な実施形態において、2つの電流コレクターの少なくとも1つは、その底面において構造を有する。
【0018】
別の有利な実施形態において、前記少なくとも部分的にアモルファスな材料は、少なくとも1種類の金属成分を有し、さらに結晶成分を有する。
【0019】
別の有利な実施形態において、2つの電流コレクターの少なくとも1つは、溶融スピニングによって作られる。
【0020】
別の有利な実施形態において、2つの電流コレクターの少なくとも1つは電気分解によって作られる。
【0021】
別の有利な実施形態において、当該デバイスは、セルないし電池である。
【0022】
別の有利な実施形態において、セルないし電池は、充電可能である。
【0023】
本発明の電池の利点の1つは、有利な弾性特性を有するということである。実際に、アモルファス物質の場合、弾性限界σeを増やすことによって、比σe/Eが増える(Eはヤング率)。このように、材料が元の形状に戻らなくなる応力を大きくすることができる。比σe/Eがこのように改善したことによって、より大きな変形が可能になる。これによって、電池に対して頻繁な頻度でより大きい曲げ応力をかけることができる。
【0024】
本発明に係る電気化学的デバイスの目的、利点及び特徴は、本発明の少なくとも1つの実施形態についての以下の詳細な説明を読むことでより明確になるであろう。これらの実施形態は、限定する意図のない例として添付図面に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1-3】電池の原理の概略断面図を示す。
図4】本発明に係る電池の第1の変形例の概略断面図を示す。
図5】本発明に係る電池の第1の変形例の代替例の概略断面図である。
図6】本発明に係る電池の第2の変形例の概略断面図を示す。
図7】本発明に係る電池の第3の変形例の概略断面図を示す。
図8】本発明に係る電池の電流コレクターを製造する方法の概略図である。
図9】本発明に係る電池の第5の変形例の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明に係る電気化学的デバイス1を示す。この電気化学的デバイス1は、セパレーター6によってお互い分離されるカソード2及びアノード4を有する。電池は、さらに、2つの電流コレクター8を有し、これによって、アノード4及びカソード2はそれぞれ、セパレーター6と電流コレクター8の間に配置される。このようにして、アノード電流コレクター9b及びカソード電流コレクター9aが設けられる。各電流コレクターは、底面91及び上面90を有する。セパレーター6は、概して、高分子又は複合材料で形成される。電気化学的デバイス1は、さらに、カソード2とアノード4の間でイオンを交換するための電解質を有する。図1に示すように、この電解質は、セパレーター6内に直接組み入れられていてもよく、これにおいて、セパレーター6は、液体ないしゲル電解質で充填された孔を有する多孔性セパレーター6である。図2に示すように、アノード20とカソード40が多孔性の場合、これらの孔にも電解質が充填される。電解質は全体が固形の層3によって形成されていてもよく、これは、図3に示すように、セパレーターを置き換える。
【0027】
この電気化学的デバイス1は、例えば、時計、スマートカード、遠隔通信機器の電源として使用することができる。この電気化学的デバイス1は、電池又はセルであることができ、その電池又はセルは、充電可能であっても充電不能であってもよい。用語「電気化学的デバイス」、「電池」又は「セル」は、本発明を特定するために使用することができる。
【0028】
多くの曲げを経ても電流コレクター8において亀裂の発生を防ぐことができ、かつ、可撓性を有する膜によって電気化学的デバイス1を作ることが望ましい場合、材料の弾性変形の範囲内に留まり、また、応力を受ける領域において材料が良好な耐疲労性を有することが必要である。一般に、与えられた合金に対して、応力のレベルが弾性限界から離れると、疲労破損に至るまでのサイクル数を大幅に増やすことができる。特定の応力より小さい場合、疲労破損が発生しない。この特性変化はヴェーラー曲線によって一般に表される。
【0029】
本発明は、アモルファス金属の電流コレクター8を用いることになる。一般に純金属というよりも合金である、アモルファス金属(ないし金属性ガラス)の弾性変形は、結晶性金属よりも約2〜4倍高い。
【0030】
有利なことに、少なくとも1つ、好ましくは、2つの、電流コレクター8は、少なくとも部分的にアモルファス金属によって形成される。「少なくとも部分的にアモルファスな材料」とは、意図した応用用途に必要な厚みに対して、当該材料が少なくとも部分的にアモルファス相で固化することができることを意味する。
【0031】
本発明の電気化学的膜デバイスが使用される応用用途においては、電気化学的デバイス1の総厚みは、概して0.4mmである。この電気化学的デバイス1の電流コレクター8の厚みは、1〜50μmの範囲で多様性を有することができる。好ましくは、厚みは5μmと25μmの間である。
【0032】
実際に、これらのアモルファスな金属合金の利点は、製造時に、アモルファス材料を形成する原子が、結晶材料の場合と同様に、特定の構造で配置されてはいないという事実に起因して発生する。したがって、結晶性金属のヤング率Eとアモルファス金属のヤング率Eが接近していても、弾性限度σeは異なる。したがって、アモルファス金属は、結晶性金属の弾性限界σeCよりも2〜4倍大きい弾性限界σeAを有する。このことは、アモルファス金属が、弾性限界σeに到達するまでにより高い応力を受けることができるということを意味する。
【0033】
また、最小曲率半径が最大許容変形に反比例するので、このことは、従来技術の場合のように結晶性金属を用いずに、アモルファス金属を用いることによって、少なくとも2倍小さい曲率半径の曲げが可能であることを意味する。また、結晶性金属の曲率半径と同じ曲率半径の曲げであれば、疲労破損のリスクが減る。なぜなら、アモルファス金属の弾性限界は、概して、同様な化学組成の結晶性金属の弾性限界よりも2〜4倍大きいからである。実際に、相対的な周期的な応力がアモルファス金属では著しく小さくなり、破損までのサイクル数を相当に増加させることができる。
【0034】
驚くことに、本発明に係るアモルファス金属製電流コレクターを使用して組み立てられたセルの可撓性は、結晶性金属を用いるセルの可撓性よりも10倍を超えて大きい。これは、電池の内部が当該コレクターによって保護されるという事実に起因する。実際に、結晶性金属の場合、セルが曲げられ、これに応じてコレクターが曲げられると、皺が形成される。この皺は、局所的に非常に大きな曲率で発生する(半径1cmで典型的に曲がるセルの場合、1mmより小さい曲率半径で皺が発生する)。アモルファス金属は屈曲される際に皺を形成しないので、局所的な変形(活性層の剥離及び破壊)を回避することができる。結果的に、セルの内部は非常に小さな曲率半径を有し、皺の発生から保護される。これによって、可撓性を大きくすることができる。典型的には、セルを破損せずに、1セルの厚み25μm、総厚み0.4mmを有する、アモルファス金属で完全に作られた2つの電流コレクターを用いて、少なくとも1500回の半径1cmの曲げが可能である。今日、市場で入手可能な膜電池の中で、150回の半径1cmの曲げに耐えることができるセルは存在しない。セル電流コレクターをアモルファス金属で作ってこのように実現した可撓性の改善は、優れた当業者がアモルファス金属の機械的性質を分析することによって予測することができる2〜4倍という値の増加率よりもはるかに大きいものである。
【0035】
電流コレクター8に用いることができるためには、電流コレクター8の材料は、電極の電位の荷電状態と放電状態の間にある電極の電気化学ポテンシャルウィンドウの内部で安定していなければならず、これによって、電流コレクターのいかなる腐食をも防ぐ。同様に、電流コレクター8の材料は、電極及び電解質3を形成する物質と化学的に反応するものであってはならない。電流コレクター8の安定性は、熱力学的、動力学的なものであったり、不動態化によって実現することができる。電流コレクター8の電気抵抗は、大きすぎてはならず、これによって、電気化学的デバイス1のパワーや効率に影響を与えないようにする。典型的には、コレクター8に用いる合金の抵抗は、10-5 Ω・mを超えてはならず、より好ましくは、10-6 Ω・mを超えてはならない。
【0036】
結果的に、以下の化学元素で作られたアモルファス合金が、本応用用途にとって特に関心事である。すなわち、Ti、Zr、Ni、Cu、Fe、Cr、Mn、V、W及びAlである。本応用用途に用いることができるアモルファス合金の例は、Cu47.5Zr47.5Al5である。高い機械的性質と組み合わさったこの合金の良好な導電率(δe〜1600MPa; E〜87GPa; εe〜2%)によって、この合金を特に有利な候補としている。
【0037】
また、導電率をさらに増加させるために、アモルファス金属のマトリックスと、及び第2の非常に高い伝導性物質との相(例えば、純銅)の複合材を用いることも想定することができる。
【0038】
電流コレクター8を作るために溶融スピニング法が用いられる。図8に示すこの方法は、原理的には、加熱システム14によって加熱した温かい液体18(例えば、溶融金属)のタンクを用いることを伴う。この加熱システム14は、圧力システムであってもよく、この加熱システムから細い線が出ており、これは落ちると、良好な熱伝導性の金属シリンダー16(例えば、銅製)に接触する。この溶融スピニングホイールは、高速で回転し、そして冷却される。これは、別の冷たい液体、例えば液体窒素、又は水との接触によって、冷たい状態を維持する。タンクに圧力をかけることによって、液体が放出されることを可能にする。液体はホイールと接触して冷却され、厚みがあっても薄くてもよい固体の材料片を形成することができる。その厚みは、液体金属の流量や良熱伝導性が良い金属シリンダーの回転速度を操作することによって調整される。
【0039】
電流コレクター8を作る別の方法として、電解質堆積法がある。この方法は、金属又は金属合金を導電性の支持体上に電流によって堆積させる原理に基づいている。
【0040】
この方法において、2つの電極が、堆積される金属カチオンを含む槽に浸される。2つの電極間に電流又は電位差を与えることによって、支持体として機能するカソードに所望の金属カチオンを堆積させる。製造後に、形成された金属又は合金が、物理的又は化学的手段によってカソードから絶縁される。
【0041】
電流コレクター8の厚みを調整するために、電気分解の継続時間が調整される。これによって、継続時間が長いほど、堆積される材料の量が大きくなる。
【0042】
堆積される材料が合金であれば、いくつかの種類の金属カチオンが槽に含まれる。電流コレクター8を形成する合金の組成は、電流、温度及び槽の組成のパラメーターを調整することによって調整することができる。パルス状の電流を用いることによって、材料の延性特性を改善したり変更したりできる。
【0043】
冶金的ないし物理的な製造手法と比較して、低温度で水媒体においてこのプロセスが行われれば、そのプロセスによってアモルファスな状態の金属を形成することができる。
【0044】
本発明による電気化学的デバイス1の第1の製造上の変形例は、図4に示されており、電気化学的デバイス1が電流コレクター8によって閉じられる。これは、電流コレクター8が構造11を形成することを意味する。これを実現するために、各電流コレクター8は、周辺縁部分8aを有する、例えば、長方形の板である、滑らかな板の形態である。このようにして、この周辺縁部分8aがハウジング8bを定める。このハウジング8bには、アノード2又はカソード4の材料が配置される。このようにして、これら2つのコレクター8は、セパレーター6によって分離される。このセパレーター6は、第1の表面7a及び第2の表面7bを有する。図4に示すように、アノードコレクタ9bの周辺縁部分8aがセパレーター6の第1の表面7aに結合され、カソードコレクタ9aの周辺縁部分8aが、セパレーターの第2の表面7bに結合されるように各要素が組み立てられる。これらの結合は、セパレーター6の端部6aで行われるのが好ましい。
【0045】
図5に示すこの第1の変形例の代替例において、セパレーター6によって電流コレクター8どうしが結合してしまうことがあり得なくなる。したがって、電池1は、ジョイント10を有し、これは、セパレーターに固定され、それに対して、アノードコレクタ9bの周辺縁部分8a及びカソードコレクタ9aの周辺縁部分8bが結合される。
【0046】
図6に示した第2の変形例において、電流コレクター8は、単に、アモルファス金属で作られた滑らかな金属シートである。セパレーター6とアノードコレクタ9bの間にアノード材4が配置され、セパレーター6とカソードコレクタ9aの間にカソード材2が配置される。この変形では、このように配置された電気化学的デバイス1を、レジン層12、あるいは真空パックされているラミネートされたポリエチレン/アルミニウム/ポリエチレンの袋によって巧妙に包む。その後で、伝導性の舌体14が、コレクター8に予め固定され、電池端子を形成する。
【0047】
図7に示した第3の変形例において、コレクター8の底面91を構成することができる。実際に、電気化学的デバイス1を曲げることができるので、電流コレクター8と、カソード2又はアノード4を形成する電解質との間で剪断力が発生する。もしこれらの剪断応力が大きすぎる場合、電池1が剥離しやすくなる。
【0048】
各電流コレクター8の底面91を構成することによって、電流コレクター8と、カソード2又はアノード4を形成する電解質との間の摩擦力が増える。結果的に、ねじりの際に、この構造によって与えられる付加的な接着力によって剥離限界を後退させる。
【0049】
この接着が効率的であるために、接着が改善されるように構造93を構成しなければならない。四角形のフィルムの形状の電気化学的デバイス1の例について説明する。電気化学的デバイス1の幅に平行な軸に沿って曲げられる場合、この構造は同じ方向に配置されなければならない、すなわち、電池1の幅に平行にである。反対に、電気化学的デバイス1の長さに平行な軸に沿って曲げられる場合、この構造93は同じ方向に配置されなければならない。すなわち、電気化学的デバイス1の長さに平行にである。
【0050】
それにもかかわらず、各電流コレクター8の底面91を長さ方向及び幅方向に構成することができる。この構成によって、電池1を長さ方向及び幅方向に曲げることが可能になる。
【0051】
これらの構造93を作るために様々な方法を用いることができる。第1の手法は、電流コレクター8の製造時に直ちに構造を作ることを伴う。すなわち、図8に示した溶融スピニングステップの際にである。これを達成するために、溶融金属がシリンダーに送られて材料片を形成し、材料片が直ちに構成される。シリンダー16はその表面に、電流コレクター8にて形成されなければならない構造93の反対形状(ネガ)のダイ17を有することが明らかである。結果的に、この溶融スピニングステップの際、シリンダー16の反対形状によって液体金属が、アモルファス形態に直ちに固化する。
【0052】
別の手法として、熱間加工の原理を用いるものがある。
【0053】
この方法は、電流コレクター8を2つの間に配置し、全体的に又は部分的なアモルファス構造を保持するために所定時間押しながら、ガラスの遷移温度Tgと結晶化温度Txの間の温度範囲内で加熱することを伴う。これは、アモルファス金属特有の弾性特性を維持する目的で行われる。いったん押圧が終了すると、電流コレクター8はアモルファス状態を維持するように急冷される。この形状形成方法によって、精密な幾何学的構成を非常に精密に再現することができる。なぜなら、TgとTxの間では、合金の粘性が大きく減少するからである。これは、合金がそのアモルファス状態を失わずにダイの詳細形状のすべてに合致するようになるからである。
【0054】
また、これらの構造93を形成するためには、組み立てられるカソード支持体を選択することによって、製造の際に直ちに電流コレクター8を電解質によって形成することもできる。この解析の特徴の1つは、高いレベルの精度で様々な表面の形を複製することができることであり、これには、本発明の必要条件として記載されるもののような複雑な形が含まれる。
【0055】
第4の変形例において、予め曲げられた薄膜電池1を想定することができる。これは、薄膜電気化学的デバイス1が当然曲げられることを意味する。実際に、電気化学的デバイス1を非直線的な場所に配置することができる。例えば、腕時計の腕輪、意図した装置や物体へと内蔵させるために電池を折り曲げるような場合である。このように、内蔵を単純にするために、電気化学的デバイス1が非線形の形を有することは当然有利である。これは、薄膜電気化学的デバイス1を弾性的又は可塑的に変形する必要がなく、したがって、薄膜電気化学的デバイス1は、より脆くてもよいということも意味する。
【0056】
この種の電気化学的デバイス1を製造するために熱間加工技術が用いられる。各電流コレクター8は、2つのダイ間に配置され、次に、ガラス温度Tgと結晶化温度Txの間の温度に加熱される。このように、アモルファス金属の粘性が、アモルファス特性を失わずに増加する。次に、電流コレクター8は、曲がった輪郭を有する2つのダイによって押され、これによって、ダイの一方は、凸面の輪郭を有し、ダイの他方は、凹面の輪郭を有する。急冷ステップによって、アモルファスな状態が保持され、電流コレクター8を固化する。もちろん、ダイの輪郭は、所望の曲面を得るように計算される。
【0057】
同じ目的のために、所望の曲面を有するカソード支持体を用いることによって、製造の際に電解質によって、予め曲げられた電流コレクター8を直ちに形成することができる。
【0058】
図9に示した第5の変形例において、電流コレクター8は均一でない変形状態を示している。これを達成するために、各コレクター8は、変異しているないし不均一な厚み94を有する。実際に、所定の応力に対して、電流コレクター8の変形状態は、その厚みに応じて異なる。このように、所定の厚みの電流コレクター8は、2倍の厚みを有する電流コレクター8よりも変形することが明らかである。変異している厚み94を有する電流コレクター8を備えるということは、厚みがより大きい領域の変形が、厚みがより小さい領域の変形よりも小さくなるように、電流コレクター8を形成することができることを意味する。具体的には、電流コレクター8の周辺領域81が、中央領域80よりも厚いことが有利である。実際に、中央領域80は、概して、最も大きな変形を経験しなければならない領域である。したがって、この中央域80は、あまりにも早く可塑的に変形しないように容易に変形することができなければならない。反対に、電流コレクター8の縁部分81は、小さな応力及び変形しか受けない。したがって、縁部分の厚みが異なること、具体的には、より厚いことが可能である。
【0059】
添付した請求の範囲によって定められた本発明の範囲から逸脱せずに、上記の本発明の様々な実施形態に対して、当業者にとって明らかな様々な変更及び/又は改善及び/又は組み合わせを行うことができることは明らかであろう。
【0060】
第1の製造上の変形例において、したがって、コレクター8は、熱間成形によって固定することができる。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9