【課題】柔軟性に富み、かつ安定的に強い電気信号を発生する布帛状のトランスデューサー並びにそのトランスデューサーからの信号を用いたデバイスおよび/または電気信号を入力することにより機能するデバイスを提供する。
【解決手段】導電性繊維B及び圧電性繊維Aが電気的接続するように略同一平面上に配置されている圧電単位を複数含む織編物からなる、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、1つの圧電単位を構成する圧電性繊維Aと導電性繊維Bとが、繊維表面同士で直接接し、且つ/又は、導電性材料を介して間接的に接続されている。
導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を複数含む織編物からなる、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、1つの該圧電単位を構成する該圧電性繊維と該導電性繊維とが、繊維表面同士で直接接し、かつ/または、導電性材料を介して間接的に接続されていることを特徴とするトランスデューサー。
前記圧電単位は2本の前記導電性繊維および1本の前記圧電性繊維を含み、前記導電性繊維、前記圧電性繊維および前記導電性繊維が、この順序に配置されている、請求項1記載のトランスデューサー。
前記圧電単位中の前記導電性繊維が他の圧電単位中の導電性繊維および/または圧電性繊維に対して電気的接続しないように、絶縁性繊維が配置されている、請求項1記載のトランスデューサー。
複数の前記圧電単位を含有する織物であって、その織組織が平織、綾織、サテン織およびそれらの複合組織である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のトランスデューサー。
請求項1〜10のいずれか一項に記載のトランスデューサーと、印加された圧力に応じて前記トランスデューサーから電気信号を出力する出力手段と、前記出力手段から出力された電気信号を外部機器へ送信する送信手段と、を備えるデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように略同一平面上に配置されている圧電単位を複数含む織編物からなる、電気信号を出力または入力とするトランスデューサーであって、1つの該圧電単位を構成する該圧電性繊維と該導電性繊維とが、繊維表面同士で直接接し、かつ/または、導電性材料を介して間接的に接続されていることを特徴とするトランスデューサーによって達成される。以下に各構成について説明する。
(導電性繊維)
導電性繊維としては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられ、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。
【0012】
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。
【0014】
例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウ、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
【0015】
導電性繊維は、フィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントの径としては1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維の断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
【0016】
また、圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10
−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10
−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10
−3Ω・cm以下である。ただし、信号検出に強度が得られるのであれば導電性繊維の抵抗率はこの限りではない。
(圧電性繊維)
圧電性繊維は圧電性を有する繊維である。圧電性繊維は圧電性高分子からなることが好ましい。圧電性高分子としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸など圧電性を示す高分子であれば利用できるが、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。ポリ乳酸は溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。さらに、ポリ乳酸からなる圧電性繊維はその軸方向への引張や圧縮応力では、分極が小さく、圧電素子として機能させることが困難であるが、せん断応力によっては比較的大きな電気出力が得られ、せん断応力を圧電性高分子に付与しやすい構成体を有する本発明の圧電素子においては好ましい。
【0017】
圧電性高分子は、主としてポリ乳酸を含むことが好ましい。「主として」とは、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上のことを言う。
【0018】
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、より好ましくは99.3%以上、さらに好ましくは99.5%以上である。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電性繊維の形状変化によって十分な電気出力を得ることが難しくなる場合がある。圧電性高分子が、主としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度は99%以上であることが好ましい。
【0019】
圧電性繊維は繊維の繊維軸方向に一軸配向しかつ結晶を含むものであることが好ましく、より好ましくは結晶を有する一軸配向ポリ乳酸である。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶状態および一軸配向において大きな圧電性を示すためである。
【0020】
ポリ乳酸は加水分解が比較的早いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
【0021】
また、ポリ乳酸は他のポリマーとのアロイとして用いてもよいが、ポリ乳酸を主たる圧電性高分子として用いるならば、アロイの全重量を基準として少なくとも50重量%以上でポリ乳酸を含有していることが好ましく、さらに好ましくは70重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
【0022】
アロイとする場合のポリ乳酸以外のポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート共重合体、ポリメタクリレート等が好適な例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、本発明で目的とする圧電性を奏する限り、どのようなポリマーを用いてもよい。
【0023】
圧電性繊維は、フィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いて、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントの径としては1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。フィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
【0024】
このような圧電性高分子を圧電性繊維とするためには、高分子を繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができ、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等を採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。
【0025】
なお、上述の通りに、圧電性高分子がポリ乳酸である場合には、一軸延伸配向し、かつ結晶を含むとより大きな圧電性を示すことから、繊維は延伸することが好ましい。
(略同一平面上)
本発明の圧電素子において、導電性繊維と圧電性繊維は、略同一平面上に配置される。ここで略同一平面上とは、繊維の繊維軸が略平面上に配置されることを意味し、「略」とは、繊維同士の交差点で厚みが生じることが含まれることを意味するものである。
【0026】
例えば、2本の平行な導電性繊維の間に、1本の圧電性繊維が更に平行に引き揃えられた形態は、略同一平面上にある形態である。また、当該1本の圧電性繊維の繊維軸を、当該2本の平行な導電性繊維とは平行でない状態に傾けていても、略同一平面上にある。さらに、1本の導電性繊維と1本の圧電性繊維とを平行に引き揃え、もう1本の導電性繊維を、この引き揃えられた導電性繊維と圧電性繊維とに、交差させたとしても略同一平面上にある。
【0027】
略平面上に配置されることで、当該圧電単位を組み合わせて、布帛状の圧電素子を形成しやすく、布帛状の形態の圧電素子を利用すれば、トランスデューサーの形状設計に自由度を増すことができる。布帛の種類としては、織物、編物、不織布などが例示される。
【0028】
これらの、圧電繊維と導電繊維の関係は検出したい形状変化により適宜選択される。
(配置順序)
圧電単位における繊維の配置は、導電性繊維および圧電性繊維が電気的接続を提供するように配置されている限り特に限定されるものではない。例えば、圧電単位が2本の導電性繊維と1本の圧電性繊維からなら場合には、導電性繊維、圧電性繊維、導電性繊維が、この順に配置されていることが好ましい。このように配置することで、圧電単位の2本の導電性繊維同士が接触することがなくなり、導電性繊維に他の手段、例えば絶縁性物質を被覆するなどの技術を適用しなくても圧電単位として有効に機能させることができる。
【0029】
この際、導電性繊維と圧電性繊維とが互いに物理的に接する接点を有していることが望ましいが、導電性繊維と圧電性繊維との間隔が4mm以内の範囲であれば、物理的に接していなくても電気的接続を提供することができる。導電性繊維と圧電性繊維との間隔は、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、さらに好ましくは1mm以下、最も好ましくは0.5mm以下である。この間隔が4mm以上であると圧電性繊維の形状変化に伴う電気出力が小さくなり、トランスデューサーとして用いることが困難となる。
【0030】
形態としては、例えば、2本の導電性繊維が平行に配置され、1本の圧電性繊維が、これら2本の導電性繊維に交わるように配置された形態などを挙げることができる。さらには、2本の導電性繊維を経糸(または緯糸)として配し、1本の圧電性繊維を緯糸(または経糸)として配してもよい。この場合は2本の導電性繊維同士は接触していないことが好ましく、2本の導電性繊維の間には好ましくは絶縁性物質、例えば絶縁性繊維を介在させる形態の他、導電性繊維が接触しやすい表面にのみ絶縁性物質を被覆し、圧電性繊維とは直接導電性繊維が接触するようにする形態も採用することができる。
(絶縁性繊維)
本発明の圧電単位は、絶縁性繊維を含み、該絶縁性繊維は、圧電単位中の導電性繊維が、他の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように導電性繊維と圧電性繊維の間に配されることがある。この際、絶縁性繊維は布帛の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。また、圧電単位中の導電性繊維が、他の圧電単位中の導電性繊維並びに圧電性繊維に接しないように配されることもある。
【0031】
圧電単位にこのように絶縁性繊維を配置することで、圧電単位を複数組み合わせた場合でも導電性繊維が接触することがなく、トランスデューサーとしての性能を向上させることが可能である。
【0032】
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が10
6Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは10
8Ω・cm以上、さらに好ましくは10
10Ω・cm以上がよい。
【0033】
絶縁性繊維として例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
【0034】
絶縁性繊維は、フィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントを用いても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントを用いてもよい。マルチフィラメントとして用いる方が絶縁特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントとして用いる場合、その糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは50μm〜1000μmである。マルチフィラメントとして用いる場合は、その単糸径は0.1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメントのフィラメント数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
【0035】
また、布帛に柔軟性を持たせる目的で、公知のあらゆる形状の繊維も用いることができる。
(圧電単位の組み合わせ形態)
本発明において、複数の並列した圧電単位を含有する織編物であることが好ましい。このような形態であることで、圧電素子として、形状の変形自由度(フレキシブルさ)を向上させることが可能である。
【0036】
このような織編物形状は複数の圧電単位を含み、圧電素子としての機能を発揮する限り何らの限定は無い。織物形状または編物形状を得るには、通常の織機または編機により製編織すればよい。一枚の布帛に複数の圧電単位を導入する場合は、製織もしくは製編の際に連続して作製しても、別々に作成した複数の布帛を接合することで作製してもよい。
【0037】
織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。
【0038】
編物の種類は、丸編物(緯編物)であってもよいし経編物であってもよい。丸編物(緯編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。更には、カットパイルおよび/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛織物、立毛編み物であってもよい。
【0039】
なお、圧電単位が織り組織ないし編み組織に組み込まれて存在する場合、圧電性繊維そのものに屈曲部分が存在するが、圧電素子としての圧電性能を効率よく発現させるためには、圧電性繊維の屈曲部分が小さい方が好ましい。従って、織物と編み物とでは織物の方が好ましい。
【0040】
この場合でも、上述の通り、圧電性繊維の屈曲部分が小さい方が、圧電性能が効率よく発現することから、織組織としては平織よりは綾織りが好ましく、綾織よりもサテン織(朱子織)が好ましい。特にサテン織(朱子織)のなかでも、飛び数が3〜7の範囲にあると、織組織の保持と圧電性性能とを高い水準で発揮することから好ましい。
【0041】
なお、織組織は、検出したい形状変化により適宜選択される。例えば曲げを検出したい場合には、平織構造、圧電性繊維と導電性繊維が平行関係であることが好ましく、捩じりを検出したい場合には、朱子織構造、圧電性繊維と導電性繊維が直行関係であることが好ましい。
【0042】
また、圧電性繊維であるポリ乳酸は帯電しやすいため、誤作動しやすくなる場合がある。このような場合には、信号を取り出そうとする圧電繊維を接地(アース)して使用することもできる。接地(アース)する方法としては信号を取り出す導電性繊維とは別に、導電性繊維を配置することが好ましい。この場合、導電性繊維の体積抵抗率としては10
−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10
−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10
−3Ω・cm以下である。
(圧電性繊維と導電性繊維の接点)
本願の織編物は、圧電性繊維と導電性繊維が十分な接点を有することを特徴とする。本願の布帛のトランスデューサーとしての機能は、圧電性繊維の変形が圧電性繊維表面に静電分極を生じさせ、この静電分極に由来する電気信号が導電性繊維を通じて取り出されることに由来しているため、圧電性繊維と導電性繊維が十分な接点を有することで両者間の接触抵抗が低減され、強い電気信号を得ることが可能となる。
【0043】
ここで十分な接点を有するとは、単に織編物を作成しただけでは生じない、圧電性繊維と導電性繊維との間の豊富な導通面積を有する状態を指す。
【0044】
十分な接点を有する状態の1つの好ましい形態として、圧電性繊維および/または導電性繊維が、その交点において互いの表面に沿って扁平に変形した状態が挙げられる。このような状態は、布帛を織る際に緯糸および経糸の張力を強くして織るか、あるいは布帛に対して強い力によるプレスおよび/または加熱雰囲気中でのプレスを実施することで得られる。この場合、圧電性繊維と接触する導電性繊維との接触界面において分子レベルの侵入あるいは化学的結合の形成が生じ粘着した状態が好ましいが、粘着せず、それぞれの繊維表面の変形によって接触面積が増大している状態も、十分な接点を有する状態とみなすことができる。繊維同士が粘着した場合は、交差部分の繊維断面を観察したとき、圧電性繊維と導電性繊維との界面が不明瞭になっている状態を指す。また、接触面積が増大している場合は、交差部分の繊維断面を観察したとき、交差した相手の繊維表面形状に合わせて圧電性繊維または導電性繊維が著しく扁平に変形している状態を指す。このように著しく扁平に変形しているかどうかは、以下の方法で評価することができる。
【0045】
布帛をその状態が変化しないよう、接着剤を含浸させたのち固化して薄いシート状に固定する。フェザーカッターにて導電性繊維と交差している部分の圧電性繊維の垂直断面を切り出し、断面を顕微鏡で観察する。圧電性繊維の断面上に、布帛がなす平面に平行なx軸と、このx軸に垂直なy軸を取る。断面を観察する繊維がモノフィラメントの場合、フィラメント1本の繊維断面が全て入る最小の大きさの長方形を、各辺がx軸とy軸に平行になるように描き、この長方形のx軸方向の辺の長さをx
1、y軸方向の辺の長さをy
1とする。断面を観察する繊維がマルチフィラメントの場合、1本のマルチフィラメント中の全てのフィラメントの断面が入る最小の大きさの長方形を、各辺がx軸とy軸に平行になるように描き、この長方形のx軸方向の辺の長さをx
1、y軸方向の辺の長さをy
1とする。
【0046】
これらの測定結果から下記式(1)より扁平率を計算する。
【0047】
扁平率 = x
1÷y
1 (1)
10カ所以上の異なる点について扁平率を計算し、その平均値を採用する。扁平率の平均値が2.0以上である場合、本願では交差部分の圧電性繊維が、交差した相手の導電性繊維表面形状に合わせて著しく扁平に変形している、すなわち圧電性繊維が導電性繊維に交差する交点において、十分な接点を有する状態にあると判断する。交差部分の圧電性繊維がより扁平に変形していた方が、交差点での接触面積を増大させ、好ましい。そのため、扁平率は2.3以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。
【0048】
また、圧電性繊維にマルチフィラメントを用いた布帛の場合、マルチフィラメントを構成するフィラメント間の空隙が圧縮されて密集したマルチフィラメントを構成することが、できる限り多くの圧電性フィラメントを導電性フィラメントの近傍に存在せしめ圧電性に由来する電気信号を取り出しやすくする観点から、好ましい。
【0049】
上記のような扁平率を達成するため、従来公知のプレス方法が好ましく用いられる。特に圧電性繊維としてポリ乳酸繊維を用いる場合は、そのガラス転移点である60℃と融点の間の温度、好ましくは70℃から160℃の間で、10分以内の熱プレスを行うことが好ましい。さらに、圧電性繊維の融解開始温度近傍(ポリ乳酸であれば140℃から160℃の間)で、かつ導電性繊維及び絶縁性繊維の融解が起こらない温度で熱プレスを行うことがさらに好ましい。熱プレスは、連続式に実施可能なロールプレス機で行うことが好ましい。
【0050】
また、圧電性繊維あるいは導電性繊維にマルチフィラメントを用いた場合は、上記のような扁平率を達成するため、マルチフィラメントの撚り数は少ないことが好ましい。撚り数が大きすぎると繊維は扁平に変形しにくくなり、接点を十分に大きくすることができないため、好ましくない。かかる観点から、撚り数は1mあたり1000以下、好ましくは500以下、さらに好ましくは300以下であることが好ましい。
【0051】
十分な接点を有する状態のもう1つの好ましい形態として、圧電性繊維と導電性繊維との間に導電性材料による間接接点が設けられた状態が挙げられる。間接接点に用いられる導電性材料は圧電性繊維と導電性繊維との間に介在して電気的に導通させる機能を有するものであれば何でも用いることができ、はんだ、金属やカーボンなどの導電性フィラーを含有する導電ペースト、導電性粘着剤あるいは導電性接着剤などが好適に用いられる。特に布帛の変形を効率的に圧電性繊維に伝えて圧電機能を発現させやすくし、間接接点を長期間安定的に保持できるため、接着力を有する導電性接着剤がさらに好ましい。導電性材料は繊維表面にあらかじめ塗布あるいは繊維中に含有させた後に、織りあるいは編み工程を経て、布帛の状態で必要に応じて表面析出あるいは硬化工程を実施することもできるし、布帛の状態とした後に導電性材料を塗布あるいは含浸することもできる。異なる導電性繊維間の短絡防止や、意図しない部分の導通を防止するため、導電性材料は導電性繊維に塗布あるいは導電性繊維中に含有させた後に、織りあるいは編み工程を経て、布帛の状態で必要に応じて表面析出あるいは硬化工程を経る方法を取ることが好ましい。
【0052】
本願の目的の達成のため、上記に挙げた緯糸・経糸を強く張った織りやプレスによる直接接点面積の増加、および導電性材料による間接接点の設置は、いずれかを用いてもよいし、複数を組み合わせて実施することもできる。
(複数の圧電素子)
また、圧電素子を複数並べて用いることも可能である。並べ方としても一次元的に一段で並べても、二次元的に重ねて並べても良く、さらには布状に編織して用いたり、組み紐に製紐したりしてもよい。それによって布状、紐状の圧電素子を実現することも可能となる。布状、紐状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、圧電素子以外の他の繊維と組み合わせて、混繊、交織、交編等を行ってもよく、また、樹脂などに組み込んで使ってもよい。
(圧電素子の適用技術)
本発明のトランスデューサーはいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができる。
図3は、本発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第1の具体例を示すブロック図である。例えば、本発明のトランスデューサー11と、印加された圧力に応じてトランスデューサー11から出力される電気信号を増幅する増幅手段12と、増幅手段12で増幅された電気信号を出力する出力手段13と、出力手段13から出力された電気信号を外部機器(図示せず)へ送信する送信手段14とからなるデバイス101を構成すれば、トランスデューサー11の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号を容易に取り出すことができるので、様々な用途に適用可能である。なお、送信手段14による送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、適用される装置に応じて適宜決定すればよい。
【0053】
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、トランスデューサー11から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
【0054】
具体的な例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、タッチパネル、人や動物の表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーが挙げられる。例えば人に用いる場合には、接触や動きを検出し、医療用途などの関節などの動きの情報収集、アミューズメント用途、失われた組織やロボットを動かすためのインターフェースとして用いることができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面感圧センサーや形状変化センサーとして用いることができる。
【0055】
さらには、本発明のセンサーは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。
【0056】
また、本発明のトランスデューサーは電気信号を出力として取り出すことができるため、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。
図4は、本発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第2の具体例を示すブロック図である。例えば、本発明のトランスデューサー11と、印加された圧力に応じてトランスデューサー11から出力される電気信号を増幅する増幅手段12と、増幅手段12で増幅された電気信号を出力する出力手段13とからなるデバイス102を構成すれば、トランスデューサー11の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号を他のデバイスを動かすための電力源として用いたりあるいは蓄電装置に蓄電したりすることができる。
【0057】
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、トランスデューサー11から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
【0058】
このような具体例としては、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
【0059】
一方、本発明のトランスデューサーはいずれの様態であっても、電気信号が入力されることで、力学的な力を発生させることができる。
図5は、本発明のトランスデューサーを用いたデバイスの第3の具体例を示すブロック図である。例えば、外部機器(図示せず)から電気信号を受信する受信手段15と、受信手段15により受信した電気信号が印加される本発明のトランスデューサー11とからなるデバイス103を構成すれば、入力された電気信号に応じた力をトランスデューサー11に発生させることができる。
【0060】
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、トランスデューサー11から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
【0061】
電気信号を入力とする用途の具体的な例としては、布帛状とした圧電素子に電気信号を印加して、布帛表面に載置した対象物を移動させたり、対象物を包んだり、圧縮したり、振動させることができる。また布帛を構成する各圧電素子へ印加する電気信号を制御することによりさまざまな形状を表現することが可能である。さらには、布帛自体が振動することによりスピーカーとして機能させることも可能である。
【0062】
他の例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、人や動物や物の表面に圧力を与えるアクチュエーター、関節部の曲げ、捩じり、伸縮をサポートするアクチュエーターがある。例えば人に用いる場合には、接触や動きや圧力を与えるアミューズメント用途や失われた組織を動かすことができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面を膨らませたり、伸ばしたりするアクチュエーター、関節部に曲げ、捩じり、伸縮などの動きを与えるアクチュエーターとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面を動かすアクチュエーターや、電気信号で形状変化するハンカチ、風呂敷、袋など布状のあらゆる形状のアクチュエーターとして用いることができる。
【0063】
さらには、本発明のアクチュエーターは布帛状であるため、伸縮性と柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面形状を変えるアクチュエーターとして用いることができる。
【0064】
なお、本発明のトランスデューサーは電気信号を入力として動くことができるため、その振動により音を発生させるスピーカーとして用いることもできる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に記載するが本発明はこれによって何らの限定を受けるものではない。
(1)繊維の扁平率の測定
布帛をエポキシ系接着剤にて固定したシートを作成し、フェザーカッターにて他の繊維と交差している部分の圧電性繊維の垂直断面を切り出し、断面を顕微鏡で観察した。繊維断面上に、布帛がなす平面に平行なx軸と、このx軸に垂直なy軸を取った。断面を観察する繊維がモノフィラメントの場合、フィラメント1本の繊維断面が全て入る最小の大きさの長方形を、各辺がx軸とy軸に平行になるように描き、この長方形のx軸方向の辺の長さをx
1、y軸方向の辺の長さをy
1とした。断面を観察する繊維がマルチフィラメントの場合、1本のマルチフィラメント中の全てのフィラメントの断面が入る最小の大きさの長方形を、各辺がx軸とy軸に平行になるように描き、この長方形のx軸方向の辺の長さをx
1、y軸方向の辺の長さをy
1とした。
【0066】
これらの測定結果から下記式(2)より扁平率を計算した。
【0067】
扁平率 = x
1÷y
1 (2)
10カ所以上の異なる点について扁平率を計算し、その平均値を採用した。
(2)ポリ乳酸の光学純度:
布帛を構成する1本(マルチフィラメントの場合は1束)のポリ乳酸繊維0.1gを採取し、5モル/リットル濃度の水酸化ナトリウム水溶液1.0mLとメタノール1.0mLを加え、65℃に設定した水浴振とう器にセットして、ポリ乳酸が均一溶液になるまで30分程度加水分解を行い、さらに加水分解が完了した溶液に0.25モル/リットルの硫酸を加えpH7まで中和し、その分解溶液を0.1mL採取して高速液体クロマトグラフィー(HPLC)移動相溶液3mLにより希釈し、メンブレンフィルター(0.45μm)によりろ過した。この調整溶液のHPLC測定を行い、L−乳酸モノマーとD−乳酸モノマーの比率を定量した。1本のポリ乳酸繊維が0.1gに満たない場合は、採取可能な量に合わせ他の溶液の使用量を調整し、HPLC測定に供するサンプル溶液のポリ乳酸濃度が上記と同等から100分の1の範囲になるようにした。
<HPLC測定条件>
カラム:住化分析センター社製「スミキラル(登録商標)」OA−5000(4.6m mφ×150mm)、
移動相:1.0ミリモル/リットルの硫酸銅水溶液
移動相流量:1.0ミリリットル/分
検出器:UV検出器(波長254nm)
注入量:100マイクロリットル
L乳酸モノマーに由来するピーク面積をS
LLAとし、D−乳酸モノマーに由来するピーク面積をS
DLAとすると、S
LLAおよびS
DLAはL−乳酸モノマーのモル濃度M
LLAおよびD−乳酸モノマーのモル濃度M
DLAにそれぞれ比例するため、S
LLAとS
DLAのうち大きい方の値をS
MLAとし、光学純度は下記式3で計算した。
【0068】
光学純度(%) = S
MLA÷(S
LLA+S
DLA)×100 (3)
(ポリ乳酸の製造)
実施例において用いたポリ乳酸は以下の方法で製造した。
【0069】
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100重量部に対し、オクチル酸スズを0.005重量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の重量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
(圧電性繊維)
240℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24filamentのマルチフィラメント一軸延伸糸を得て、圧電性繊維Aとした。圧電性繊維Aの光学純度は99.8%であった。さらに、圧電性繊維Aを8本束ねて圧電性繊維Dとした。
(導電性繊維)
三ツ冨士繊維工業製の銀メッキナイロン 品名『AGposs』を使用した。この繊維の体積抵抗率は1.1×10
−3Ω・cmであった。この繊維を導電性繊維Bとした。
【0070】
東邦テナックス(株)製の炭素繊維マルチフィラメントである品名『HTS40 3K』を導電性繊維Eとして用いた。当該導電性繊維Eは直径7.0μmのフィラメント3000本を1束としたマルチフィラメントであり、体積抵抗率は1.6×10−3Ω・cmであった。
(絶縁性繊維)
280℃にて溶融させたポリエチレンテレフタレートを24ホールのキャップから22g/minで吐出し、800m/minにて引き取った。この未延伸糸を80℃、2.5倍に延伸し、180℃で熱固定処理することによりすることにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント延伸糸を得た。この繊維を絶縁性繊維Cとした。
【0071】
280℃にて溶融させたポリエチレンテレフタレートを48ホールのキャップから45g/minで吐出し、800m/minにて引き取った。この未延伸糸を80℃、2.5倍に延伸し、180℃で熱固定処理することによりすることにより167dTex/48フィラメントのマルチフィラメント延伸糸を得た。このマルチフィラメント延伸糸を4束まとめて、絶縁性繊維Fとした。
実施例1
図1に示すように経糸に圧電性繊維A、絶縁性繊維Cを配し、緯糸に導電性繊維B、絶縁性繊維Cに配した朱子織物を作製した。
【0072】
朱子織物に対し、110℃、1MPaの圧力で5分間プレス処理を実施し、圧電性繊維Aと導電性繊維Bとが繊維表面同士で接する朱子織物を得た。
【0073】
朱子織物中の圧電性繊維Aを、導電性繊維Bとの交点で垂直に切断し、走査型電子顕微鏡による観察に基づき扁平率を測定した結果、扁平率は2.74であり、交点において著しく扁平に変形し、圧電性繊維は導電性繊維との十分な直接接点を有していた。
【0074】
プレス処理後の朱子織物中の圧電性繊維Aを挟む一対の導電性繊維Bを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に接続した。当該信号線を繋いだ状態で布帛を曲げたり捩じったりしたところ、S/N=19.3の強い電圧信号が得られた。
実施例2
図2に示すように経糸に絶縁性繊維Fを配し、緯糸に圧電性繊維D、導電性繊維E、絶縁性繊維Fを配した平織物を作製した。さらに、圧電性繊維Dと導電性繊維Eとが近接する点Gに、ミクロピペットを用いて導電性接着剤ドータイトD−363(藤倉化成株式会社製)を付着させたあと常温にて5時間乾燥し、導電性材料を介した間接的な接点を作成した。
【0075】
該平織物中の圧電性繊維Dを挟む一対の導電性繊維Eを信号線としてオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に接続した。当該信号線を繋いだ状態で、導電性接着剤を付着させた点の近傍の布帛を曲げたり捩じったりしたところ、S/N=15.6の強い電圧信号が得られた。
比較例1
実施例1で作成した朱子織物を用い、プレス処理なしに、実施例1と同様の評価を行った。扁平率は1.73であり、交点において著しく扁平に変形せず、圧電性繊維は導電性繊維との十分な直接接点を有していなかった。さらに圧電特性について実施例1と同様に評価したところ、電圧信号のS/N=8.1であり、実施例1においてプレス処理を施した朱子織物と比べて信号が弱く、ノイズの影響を受けやすかった。
比較例2
実施例2で作成した平織物を用い、導電性接着剤を使用せずに、実施例2と同様に評価したところ、電圧信号のS/N=6.8であり、実施例2において導電性接着剤を使用した平織物と比べて信号が弱く、ノイズの影響を受けやすかった。