【解決手段】情報処理端末200はまず待機状態に遷移する。ユーザは画像処理装置100の稼働状態を変化させる。画像処理装置100は稼働状態の変化を検知すると検知情報を送信する。情報処理端末200は一つの画像処理装置100から検知情報を受信すると、検知情報を送信してきた画像処理装置100に対して排他使用要求を送信する。画像処理装置100は、排他使用要求を受信すると、排他使用要求を送信してきた情報処理端末200に対して画像処理を実行する。一方で、情報処理端末200は複数の画像処理装置100から検知情報を受信したときは排他使用要求を送信しない。
前記画像処理装置の前記第一制御手段は、前記記憶手段に記憶されている識別情報と、前記開始要求に付与されている識別情報とが一致しているときに前記画像処理を実行し、前記記憶手段に記憶されている識別情報と、前記開始要求に付与されている識別情報とが一致していないときに前記画像処理を実行しないことを特徴とする請求項4に記載の画像処理システム。
前記情報処理端末の前記第二制御手段は、2つの画像処理装置から前記検知情報を受信した時刻の時間差が閾値以下であるときに、前記排他使用要求を前記第二通信手段に送信させないことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像処理システム。
複数の画像処理装置から前記検知情報を受信したときは、前記複数の画像処理装置のうち排他使用要求を送信する画像処理装置を選択するための画面を前記情報処理端末に表示すること請求項1ないし9のいずれか1項に記載の画像処理システム。
情報処理端末であって、請求項1ないし10のいずれか1項に記載された前記画像処理システムにおいて使用される前記情報処理端末であることを特徴とする情報処理端末。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<画像処理システム>
図1は画像読取システムである画像処理システム1の概略図である。
図1によれば複数の画像処理装置100がネットワークを介して情報処理端末200に接続されている。ただし、本実施形態は、一つの画像処理装置100が一つの情報処理端末200に接続される場合にも適用可能である。また、ネットワークはアクセスポイント300により構成されているが、複数のルーターやアクセスポイント、ネットワークスイッチなどが介在していてもよい。また、ネットワークはBluetooth(登録商標)のようなピコネットワークであってもよい。この場合、アクセスポイント300の機能はマスターとして動作する通信装置(画像処理装置100または情報処理端末200)に搭載されることになる。ここでは、画像処理装置100としてイメージスキャナを一例とするが、ユーザが用紙を手差しトレイにセットするプリンタであってもよい。
【0009】
図1に示すように、画像処理装置100a、100bおよび100cは画像の読取を行う画像読取装置である。情報処理端末200a、200bは、いずれかの画像処理装置に接続して画像の読取を指示するコンピュータである。情報処理端末200a、200bは、スマートフォンやデジタルカメラであってもよい。情報処理端末200a、200bと、画像処理装置100aないし100cは、たとえば、無線通信や有線通信によりアクセスポイント300と接続する。複数の画像処理装置100a〜100cはいずれも同一の機能を有する。そのため、複数の画像処理装置100a〜100cを総じて画像処理装置100として説明する。また、複数の情報処理端末200a〜200bは、いずれも同一の機能を有する。そのため、複数の情報処理端末200a〜200bを総じて情報処理端末200として説明する。
【0010】
<画像処理装置>
図2は画像処理装置100の概略断面図である。
図2に示すように、画像処理装置100のピックアップローラー110は、原稿Dをピックアップして搬送路内を搬送する。搬送ローラー111は搬送路を挟んで対向する位置に対になって配置され、原稿Dを搬送する。読取ユニット112は、搬送ローラー111によって搬送されてきた原稿Dを読み取るイメージセンサである。排出ローラー113は搬送路の出口側の端部に配置されており、搬送ローラー111によって搬送されてきた原稿Dを画像処理装置100の外部へ排出する。原稿センサ114は搬送路の入り口付近に配置されており、原稿Dの有無を示す検知信号を生成する。原稿センサ114は画像処理装置の稼働状態の変化を検知する検知手段の一例である。搬送路の入り口や搬送路の底面部は、原稿が載置される原稿載置手段として機能する。なお、給紙トレイやADF(自動原稿給紙装置)が原稿載置手段として設けられてもよい。
【0011】
<画像処理システムの機能>
図3は画像処理装置100の内部構成とアクセスポイント300の内部構成と情報処理端末200の内部構成およびこれらの関連を示すブロック図である。
図3に示すように、画像処理装置100においてIP制御部120は第一制御手段の一例であり、画像処理装置100の各部を制御するCPUやASIC(特定用途集積回路)などである。画像処理部123は読取ユニット112から画像信号を受け取り、シェーディング補正などの画像処理を施して画像データを作成し、IPメモリ124に書き込む。IPメモリ124は、各種の設定値や画像データを記憶する記憶装置である。IPメモリ124はRAMやROMなどにより構成されている。IP通信部125は、ネットワークを介して情報処理端末と通信する第一通信手段の一例であり、画像処理装置100やアクセスポイント300と通信する通信装置である。IP通信部125は、たとえば、IEEEや3GPPなどの標準化団体により策定された無線LANの規格や有線LANの規格などの通信規格に準拠して動作する。
【0012】
情報処理端末200においてIT制御部220は第二制御手段の一例であり、情報処理端末200の各部を制御するCPUなどである。入出力部222は、ユーザ操作を受け付けたり、ユーザに情報を出力したりするユニットである。入出力部222は、たとえば、入力部として機能するタッチパネルや、グラフィカルインターフェイスを表示する表示部とを有している。ITメモリ223は各種の設定値や、画像処理装置100から受信した画像データを記憶する記憶装置である。ITメモリ223もRAMやROMなどの記憶装置を含む。IT通信部221は第二通信手段の一例であり、情報処理端末200やアクセスポイント300と通信する通信装置である。IT通信部221は、たとえば、IEEEや3GPPなどの標準化団体により策定された無線LANの規格や有線LANの規格などの通信規格に準拠して動作する。クロック部224は時刻を計時するリアルタイムクロックなどの時計である。クロック部224はネットワークタイムプロトコルなどを用いて、ネットワーク内に存在する他の情報処理端末のクロック部224と時刻情報を同期させているものとする。
【0013】
アクセスポイント300においてAP制御部320はアクセスポイント300の各部を制御するCPUなどである。APメモリ322は各種の設定値(SSIDやパスワードなど)を格納する記憶装置であり、ROMやRAMなどを含む。AP通信部321はアクセスポイント300や画像処理装置100と通信する通信装置である。AP通信部321は、たとえば、IEEEや3GPPなどの標準化団体により策定された無線LANの規格や有線LANの規格などの通信規格に準拠して動作する。たとえば、AP通信部321は、ビーコン信号を送信し、ビーコン信号を受信したIP通信部125やIT通信部221との間に無線通信のコネクションを確立して維持する。ビーコン信号は、たとえば、IEEE802.11シリーズに準拠して一定期間ごとに発信される信号であり、ネットワークの識別子であるSSIDを含む。
【0014】
アクセスポイント300は、アクセスポイント300と接続を維持しているすべての通信機器に対して、IPアドレスを割り当てる。アクセスポイント300はルーティングテーブルを作成し、IPアドレスと各通信機器のMACアドレスとを関連付けて管理する。IPアドレスは、画像処理システム1内に存在する全ての通信機器に割り当てられる一意の識別情報である。画像処理装置100内のIP制御部120は、IP通信部125を介してデータを送信する際は、送信先のIPアドレスを指定する。同様に、情報処理端末200内のIT制御部220は、IT通信部221を介してデータを送信する際は、送信先のIPアドレスを指定する。アクセスポイント300内のAP制御部320は、AP通信部321を介してデータを受信すると、データの送信先を確認する。AP制御部320はルーティングテーブルを参照し、送信先のIPアドレスが割り当てられた通信機器へAP通信部321を介してデータを送信する。
【0015】
<フローチャート>
図4は情報処理端末200が実行する処理を示すフローチャートである。
図5は画像処理装置100が実行する処理を示すフローチャートである。情報処理端末200のIT制御部220は、入出力部222を通じてアプリケーションの起動指示を受け付けると、アプリケーションのプログラムをITメモリ223のROMから読み出して実行する。
図4に示した処理はアプリケーションにしたがってIT制御部220により実行される。画像処理装置100は電源装置から電力を供給されて起動すると、IPメモリ124のROMから制御プログラムを読み出して
図5に示した処理を実行する。
【0016】
S1で情報処理端末200のIT制御部220は入出力部222に初期画面を表示する。
図6はアプリケーションのユーザインタフェース(UI)を構成する初期画面の一例を示す図である。
図6に示すように、IT制御部220は、説明テキスト231と待機ボタン232とを含む初期画面の表示データを作成し、入出力部222に表示させる。説明テキスト231は、待機ボタン232を押し下げることをユーザに促すテキストである。
【0017】
S2でIT制御部220は入出力部222に対するユーザ操作を監視し、待機ボタン232が押し下げされたかどうかを調べる。IT制御部220は、待機ボタン232が押し下げされていない場合、一定時間スリープしてからS2に戻る。待機ボタン232が押し下げされている場合、IT制御部220はステップS3へ進む。
【0018】
S3でIT制御部220は、入出力部222に表示しているUIを更新し、IT通信部221が検知信号DETECTを受信するまで待機状態へ移行(遷移)する。つまり、情報処理端末200は、画像処理装置100と接続して画像処理を実行するための待機状態に遷移する。検知信号DETECTは、画像処理装置100における状態の変化を示す信号である。たとえば、IP制御部120がユーザ操作(例:原稿の載置)を検知したときに送信される信号である。
【0019】
図7は入出力部222に表示されるUIの一例を示す図である。
図7に示すように、説明テキスト241が入出力部222に表示される。説明テキスト241は、情報処理端末200の現在の状態を示すテキストやユーザに対する指示を示すテキストなどである。本実施例では、ユーザが原稿の読取を行わせようとする画像処理装置100に対して原稿をセットする行為はユーザが使用を希望する画像処理装置100の選択行為としてIT制御部220に認識される。
【0020】
ここで、画像処理装置100の動作を説明する。S21でIP制御部120は画像処理装置100の稼働状態が変化したかどうかを検知する。たとえば、IP制御部120は所定のユーザ操作が実行されたかどうかを検知する。より具体的には、IP制御部120は原稿センサ114によって原稿Dが検知されたかどうかを判定する。原稿センサ114によって原稿Dが検知されなかった場合、S21に戻る。原稿センサ114によって原稿Dが検知された場合、S22に進む。
【0021】
S22でIP制御部120はIP通信部125を介して検知信号DETECTを送信する。IP通信部125は、たとえば、画像処理システム1内に存在する全ての通信機器のIPアドレスを送信先IPアドレスとし、検知信号DETECTを送信する。これは、送信先IPアドレスとしてブロードキャストアドレスを設定することにより実行可能である。なお、IP通信部125が画像処理システム1内に存在する全ての通信機器のIPアドレスをリストアップして把握しているときは、リストップされているIPアドレスが検知信号DETECTに設定されてもよい。
【0022】
ここで情報処理端末200の説明に戻る。S3で検知信号DETECTが受信されるとS4に進む。S4でIP制御部120は、検知信号DETECTの送信元である画像処理装置100のIPアドレスを送信元IPアドレス情報SRC_IPとしてITメモリ223へ格納し、IT通信部221を介して接続要求信号CONNECTを送信する。接続要求信号CONNECTは、検知信号DETECTを送信してきた画像処理装置100に対して情報処理端末200が排他的に接続することを要求する信号である。検知信号DETECTの宛先アドレスとしては、送信元IPアドレス情報SRC_IPにより保持されているIPアドレスが設定される。
【0023】
ここで画像処理装置100の説明に戻る。S23でIP通信部125は接続要求信号CONNECTを受信したかどうかを判定する。接続要求信号CONNECTを受信すると、IP通信部125はS24に進む。
【0024】
S24でIP制御部120は接続要求信号CONNECTを送信してきた情報処理端末200に対して排他接続を許可できるかどうかを判定する。たとえば、IP制御部120はIPメモリ124に排他接続元IPアドレス情報CON_SRC_IPが格納されているかどうかを判定する。排他接続元IPアドレス情報CON_SRC_IPは、画像処理装置100に対して情報処理端末200による排他的な接続が実行されている間にわたってIPメモリ124に保持される情報である。排他接続元IPアドレス情報CON_SRC_IPは、排他的な接続が終了すると、IP制御部120によってIPメモリ124から消去される。IPメモリ124に排他接続元IPアドレス情報CON_SRC_IPが格納されていない場合は排他接続を許可できるため、IP制御部120はS25に進む。IPメモリ124に排他接続元IPアドレス情報CON_SRC_IPがすでに格納されている場合は排他接続を許可できないため、IP制御部120はS30へ進む。S30でIP制御部120は不許可を示す応答信号を作成して送信する。たとえば、IP制御部120は接続要求信号CONNECTに対応する応答信号である排他接続応答信号CON_RESにERR(エラー)を設定する。排他接続応答信号CON_RESの宛先には接続要求信号CONNECTの送信元アドレスが設定される。
【0025】
S25でIP制御部120は排他接続を許可することを示す応答信号を作成して送信する。たとえば、IP制御部120は排他接続応答信号CON_RESにOKを設定して送信する。さらに、IP制御部120は、排他接続要求信号CONNECTの送信元IPアドレスを排他接続元IPアドレス情報CON_SRC_IPとしてIPメモリ124に格納する。
【0026】
ここで情報処理端末200の説明に戻る。S5でIT制御部220は接続応答信号CON_RESを受信したかどうかを判定する。接続応答信号CON_RESを受信すると、IT制御部220はS5の待機ループを抜けてS6に進む。
【0027】
S6でIT制御部220は接続応答信号CON_RESを解析し、排他接続が許可されたかどうかを判定する。IT制御部220は、接続応答信号CON_RESにOKが設定されていれば、排他接続が許可されたと判定してS7に進み、接続応答信号CON_RESにERRが設定されていれば、排他接続が拒絶されたと判定してS13に進む。S13でIT制御部220は、入出力部222にエラー画面を表示し、情報処理端末200の一連の動作を終了する。
【0028】
図8はエラー画面の一例を示す図である。
図8に示すように情報処理端末200内のIT制御部220は説明テキスト251を含むエラー画面を入出力部222に表示する。説明テキスト251には、たとえば、排他接続に失敗したことを示すメッセージや、ユーザがどのように対処すべきかを示唆するメッセージなどが含まれうる。
【0029】
S7でIT制御部220は入出力部222に読取待機画面を表示する。
図9は読取待機画面の一例を示す図である。
図9に示すようにIT制御部220は説明テキスト261および読取ボタン262を含む読取待機画面の表示データを作成して入出力部222に渡すことで、入出力部222に読取待機画面を表示させる。説明テキスト261は、排他接続が許可されたことを示すメッセージや、どのようなユーザ操作によって読み取りが開始されるかを示すガイダンスなどが含まれていてもよい。読取ボタン262は、読み取りの開始を指示するためのUIである。読み取りの開始を指示することが可能なUIであれば、必ずしもボタンでなくてもよい。
【0030】
S8でIT制御部220は読み取りの開始を指示するユーザ操作が実行されたかどうかを判定する。たとえば、IT制御部220は入出力部222に対するユーザ操作を示す入力信号に基づき、読取ボタン262が押し下げされたかどうかを判定する。読取ボタン262が押し下げされていない場合、IT制御部220はS8を繰り返し実行して待機する。読取ボタン262が押し下げされた場合、S9に進む。
【0031】
S9でIT制御部220はIT通信部221を介して読取要求信号IMG_REQを送信する。IT制御部220はITメモリ223に格納されている送信元IPアドレス情報SRC_IPを読取要求信号IMG_REQの送信先IPアドレスに設定し、読取要求信号IMG_REQを送信する。
【0032】
ここで画像処理装置100の説明に戻る。S26でIP制御部120はIP通信部125により読取要求信号IMG_REQを受信したかどうかを判定する。読取要求信号IMG_REQを受信すると、S27に進む。
【0033】
S27でIP制御部120は画像処理部123や読取ユニット112を制御して原稿Dの読み取りを実行して画像データIMGを作成し、画像データIMGを転送するための読取応答信号IMG_RESを生成して送信する。たとえば、IP制御部120は、モーターなどの駆動手段を駆動してピックアップローラー110や搬送ローラー111を回転させ、原稿Dを搬送する。読取ユニット112は原稿Dを光学的に読み取り、読み取った結果である画像データIMGをIPメモリ124に格納する。IPメモリ124に画像データIMGが格納されると、IP制御部120は、画像処理部123に対し、画像データIMGに対する画像処理を指示する。画像処理部123は、シェーディング補正や色補正等種々の画像処理を画像データIMGに施す。画像読取の動作は、原稿センサ114が原稿Dの存在を検知している間、繰り返し実行される。IP制御部120は、原稿センサ114が原稿Dをもはや検知しなくなると、画像の読み取りを終了し、画像データIMGを読取応答信号IMG_RESに設定する。IP通信部125は、IPメモリ124に格納された排他接続元IPアドレスCON_SRC_IPを送信先IPアドレスとし、読取応答信号IMG_RESを送信する。
【0034】
ここで情報処理端末200の説明に戻る。S10でIT制御部220はIT通信部221により読取応答信号IMG_RESを受信したかどうかを判定する。読取応答信号IMG_RESが受信されると、S11に進む。
【0035】
S11でIT制御部220は読取応答信号IMG_RESに含まれる画像データIMGをレンダリングしてUIの表示データを作成し、入出力部222に表示する。
図10は読取画像を表示するUIの一例を示す図である。
図10に示すようにIT制御部220は画像データIMGのサムネイル画像271を作成し、入出力部222に表示する。
【0036】
S12でIT制御部220は排他接続を解除するための解除信号DISCONを、IT通信部221を介して送信する。IT通信部221は、ITメモリ223に格納された送信元IPアドレス情報SRC_IPを送信先IPアドレスとして解除信号DISCONを送信する。さらに、IT制御部220は、ITメモリ223に格納された送信元IPアドレス情報SRC_IPを削除する。以上の動作を終えると、情報処理端末200は、一連の動作を終了する。
【0037】
ここで画像処理装置100の説明に戻る。S28でIP制御部120はIP通信部125により解除信号DISCONを受信したかどうかを判定する。解除信号DISCONが受信されると、IP制御部120は、IPメモリ124に格納されていた排他接続元IPアドレス情報CON_SRC_IPを削除し、画像処理装置100の一連の動作を終了する。
【0038】
このように情報処理端末200は画像処理装置100の状態を監視し、画像処理装置100の稼働状態が変化すると、稼働状態が変化した画像処理装置100に自動的に接続する。よって、ユーザは、画像処理装置100のリストから所望の画像処理装置100を選択する手間を省けるようになり、情報処理端末200から画像処理装置100に接続する際の利便性が向上しよう。
【0039】
ところで、オフィス環境などでは多数の画像処理装置100が設置され、多数のユーザによってこれらが共有されることがある。たとえば、複数のユーザがそれぞれ自己の情報処理端末200でアプリケーションを起動して、それぞれ異なる画像処理装置100に対して同時刻に原稿をセットしてしまうことが考えられる。たとえば、ユーザAが情報処理端末200aを使用しており、画像処理装置100aに原稿をセットし、ユーザBが情報処理端末200bを使用しており、画像処理装置100bに原稿をセットしたと仮定する。この場合、ユーザAの情報処理端末200aと、ユーザBが原稿をセットした画像処理装置100bとがペアリングされてしまうかもしれない。ユーザBの原稿がユーザAには秘匿されるべき原稿であった場合、誤ったペアリングによって情報漏洩が発生してしまう。そこで、本実施例では、画像処理装置と情報処理端末との誤ったペアリングを抑制することを目的とする。
【0040】
ここでは上述したS3のステップが以下のようなステップに置換されるものとする。とりわけ、情報処理端末200内のIT制御部220は、IT通信部221により検知信号DETECTを受信すると、検知信号DETECTの送信元IPアドレスである送信元IPアドレス情報SRC_IPの付加情報として、クロック部224から取得したクロック時間CPU_TIMEをSRC_IPと対(ペア)にしてIPメモリ124に格納する。
【0041】
図11はS3と置換される複数のステップを示すフローチャートである。
図11に示すように、S31でIT制御部220は複数の検知信号DETECTを受信したかどうかを判定する。上述したように、IT制御部220は、検知信号DETECTを受信すると、検知信号DETECTに含まれている送信元IPアドレス情報SRC_IPをITメモリ223に記憶させるように構成されている。そこで、IT制御部220は、ITメモリ223に複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPが格納されているかどうかを判定することで、複数の検知信号DETECTを受信したかどうかを判定してもよい。なお、IT制御部220は、所定期間にわたって継続して検知信号DETECTを検知するものとする。これは、情報処理端末から画像処理装置までユーザが移動するのに時間がかかる可能性があることや、複数の画像処理装置から検知信号DETECTを受信する可能性があるからである。ITメモリ223に複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPが格納されている場合、IT制御部220はS32に進む。ITメモリ223に複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPが格納されていない場合は、上述したS4へ進む。
【0042】
S32でIT制御部220は複数の応答信号が同時刻(または所定の時間範囲内)に受信されたものであるかどうかを判定する。たとえば、IT制御部220はITメモリ223に格納されている複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPのうち、クロック時間CPU_TIMEが等しい複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPが存在するかどうかを判定する。クロック時間CPU_TIMEが等しい複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPが存在する場合、S33へ進む。クロック時間CPU_TIMEが等しい複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPが存在しなかった場合、上述したS4へ進む。なお、IT制御部220は、複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPにそれぞれ関連付けられているクロック時間CPU_TIMEを比較し、最新のクロック時間CPU_TIMEに対応づけられている送信元IPアドレス情報SRC_IPを送信先IPアドレスとして選択する。なお、最新のクロック時間CPU_TIMEではない古いクロック時間CPU_TIMEに関連付けられている送信元IPアドレス情報SRC_IPをIT制御部220が削除してもよい。
【0043】
S33でIT制御部220はエラー画面を入出力部222に表示させる。さらに、IT制御部220は、ITメモリ223に格納された送信元IPアドレス情報SRC_IPを削除し、S31に戻る。
【0044】
図12はエラー画面の一例を示す図である。
図12に示すようにIT制御部220はテキスト情報291を入出力部222に表示する。テキスト情報291には、接続エラーが発生した原因を示すテキストやユーザに対するアドバイスを示すテキストなどが含まれてもよい。
【0045】
以上で説明したように本実施例によれば、複数の画像処理装置100の状態が同時に変化したことが検知されると、ユーザに対して画像処理装置100の状態変化のリトライを促すことができる。その結果、情報処理端末200から画像処理装置100に接続する際の利便性が向上しよう。
【0046】
なお、本実施例に係る方法および構成は、本発明を実施するための一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本実施例に係る画像処理装置100は原稿Dが原稿台に載置されると検知信号DETECTを送信するものとして説明した。しかし、本発明の画像処理システム1はこの方法に限定されるものではない。たとえば、画像処理装置100に押下可能なボタンスイッチが設けられてもよい。IP制御部120はボタンスイッチが押し下げされたことを検知すると、検知信号DETECTを送信してもよい。
【0047】
本実施例では、画像処理装置100は検知信号DETECTを送信すると接続要求信号CONNECTを受信するまで待機するものとして説明した。しかし、画像処理システム1はこの方法に限定されるものではない。たとえば、IP制御部120は接続要求信号CONNECTを受信するまで一定の間隔で検知信号DETECTを送信し続けるように構成されてもよい。また、画像処理装置100と情報処理端末200とが接続されている間、一定間隔で検知信号DETECTが送信され続けてもよい。
【0048】
また、情報処理端末200は、クロック時間CPU_TIMEが等しい複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPが存在したときにはエラー画面を表示して接続要求信号CONNECTを送信しないものとして説明した。しかし、本発明の画像処理システム1はこの方法に限定されるものではない。たとえば、IT制御部220は複数のIPアドレス情報SRC_IPのそれぞれに対応づけられているクロック時間CPU_TIMEの差を計算してもよい。IT制御部220はその差がある一定の閾値以下であれば、エラー画面を表示し、接続要求信号CONNECTの送信を禁止する構成としてもよい。また、その閾値は、固定値ではなく、ユーザによって変更されてもよい。
【0049】
なお、本実施例に係る方法及び構成は、本発明を実施するための一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本実施例に係る情報処理端末200は、クロック時間CPU_TIMEが等しい複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPが存在したときにはエラー画面を表示して送信要求信号CONNECTを送信しないものとして説明した。しかし、本発明の画像処理システム1はこの方法に限定されるものではない。たとえば、IT制御部220は、複数の送信元IPアドレス情報SRC_IPを入出力部222の画面上に表示し、接続要求信号CONNECTを送信する画像処理装置をユーザによって選択させてもよい。
【0050】
上述した画像処理装置100は画像読取装置であるものとして説明したが、これは説明の便宜上のものである。画像処理装置100はプリンタや複合機などの画像形成装置であってもよい。
【0051】
図13は画像処理装置が画像形成装置である一例を示す図である。画像処理装置100は、画像形成ユニット115を有している。画像形成ユニット115の手差しトレイなど給紙部には原稿センサ114が設けられている。つまり、ユーザは印刷を希望する画像形成装置に用紙を設定することで、当該画像形成装置と自己の情報処理端末200とを接続させることができるようになる。この場合、情報処理端末200において印刷対象が選択されると、S1ないしS7が実行される。S8では印刷開始ボタンの押し下げ検知される、S9では印刷ジョブのデータが送信される。S10で印刷終了を示す応答信号が受信されることになる。S11では印刷完了を示すUIが表示されることになる。また、画像処理装置100では、S26で印刷ジョブのデータが受信され、画像処理部123で印刷ジョブのデータがYMCKの印刷データに変換され、画像形成ユニット115が印刷ジョブを実行する。印刷が完了すると、S27に進み、IP制御部120は印刷終了を示す応答信号を送信する。このように、画像処理装置100は画像読取装置であってもよいし、画像形成装置であってもよい。
【0052】
<まとめ>
上述したように、画像処理システム1は、一つ以上の画像処理装置100と、画像処理装置100とネットワークを介して接続される一つ以上の情報処理端末200とを有する。画像処理装置100は画像処理装置100の稼働状態の変化を検知するセンサ(例:原稿センサ114やスイッチなど)を有している。IP制御部120は画像処理装置100の稼働状態の変化が検知されると、当該稼働状態が変化したことを示す検知情報(例:検知信号DETECT)を、ネットワークを介して情報処理端末200に送信するようIP通信部125を制御する。また、IP制御部120は検知情報を受信した情報処理端末200から送信される、画像処理装置100を排他的に使用することを要求する排他使用要求(例:接続要求信号CONNECT)をIP通信部125に受信させる。また、画像処理部123は、排他使用要求を送信してきた情報処理端末200に対して画像処理を実行する。情報処理端末200は、IT通信部221やIT制御部220を有している。IT制御部220は、画像処理装置100と接続するための待機状態に遷移する。IT制御部220は、待機状態においてIT通信部221により検知情報が受信されると、ユーザによる画像処理装置100の指定を待たずに、当該検知情報を送信してきた画像処理装置100に対して当該画像処理装置100を排他的に使用することを要求する排他使用要求を送信するようにIT通信部221を制御する。このように、本実施例によれば、IT制御部220は、ユーザによる画像処理装置100の指定に依存することなく、画像処理装置100に排他使用要求を送信する。よって、ユーザは一覧から画像処理装置100を選択する手間を省けるようになるため、情報処理端末200から画像処理装置100へ接続する際の利便性がさらに向上する。
【0053】
図11を用いて説明したように、IT制御部220は、一つの画像処理装置100から検知情報を受信したときは排他使用要求を送信するようにIT通信部221を制御し、複数の画像処理装置100から検知情報を受信したときは排他使用要求をIT通信部221に送信させないように制御してもよい。これにより、意図していない画像処理装置と譲歩要処理端末とがペアリングしにくくなろう。たとえば、あるユーザがセットした原稿の読取結果が他のユーザの端末に送信されてしまうことを抑制できるようになろう。
【0054】
たとえば、情報処理端末200のIT制御部220は、2つの画像処理装置100から検知情報を受信した時刻の時間差が閾値以下であるときに、排他使用要求をIT通信部221に送信させない。これにより、意図していない画像処理装置と譲歩要処理端末とがペアリングしにくくなろう。その結果、あるユーザがセットした原稿の読取結果が他のユーザの端末に送信されてしまうことを抑制できるようになろう。
【0055】
S24に関して説明したように、画像処理装置100のIP制御部120は、排他使用要求を受信すると、当該排他使用要求を送信してきた情報処理端末以外の情報処理端末200によって当該画像処理装置100が使用されているかどうかに基づき、当該排他使用要求を送信してきた情報処理端末200によって当該画像処理装置100を排他的に使用可能かどうかを判定する判定手段として機能してもよい。
【0056】
S25に関して説明したように、IP制御部120が排他的に使用可能と判定すると、排他的に使用可能であることを示す使用可能情報(例:OKを設定された接続応答信号CON_RES)を送信するようにIP通信部125を制御する。S6ないしS9に関して説明したように、情報処理端末200のIT制御部220は、IT通信部221によって使用可能情報が受信されると、画像処理の開始を要求する開始要求(例:読取要求信号IMG_REQ)を送信するようにIT通信部221を制御する。
【0057】
S30に関して説明したように、画像処理装置100のIP制御部120は排他的に使用不可能と判定すると、排他的に使用不可能であることを示す使用不可能情報(例:ERRを設定された接続応答信号CON_RES)を送信するようにIP通信部125を制御する。
【0058】
S6やS13に関して説明したように、情報処理端末200のIT制御部220は、IT通信部221によって使用不可能情報が受信されると、画像処理を実行できないことを示す情報を表示装置に表示させてもよい。これによりユーザは画像処理装置100を使用できなかったことを容易に理解できるようになろう。
【0059】
画像処理装置100は、当該画像処理装置100を排他的に使用している情報処理端末200の識別情報を記憶するとともに、当該情報処理端末200による当該画像処理装置100の使用が終了すると当該識別情報が消去されるIPメモリ124を有していてもよい。IP制御部120は、IPメモリ124に識別情報が記憶されているかどうかに基づき、画像処理装置100を排他的に使用可能かどうかを判定してもよい。このように情報処理端末200の識別情報を記憶しておくことで、簡単に、画像処理装置100を排他的に使用可能かどうかを判定できるようになる。
【0060】
S26について、IP制御部120は、IPメモリ124に記憶されている識別情報と、開始要求(例:IMG_REQ)に付与されている識別情報とが一致しているときに画像処理を実行してもよい。また、IP制御部120は、IPメモリ124に記憶されている識別情報と、開始要求に付与されている識別情報とが一致していないときに画像処理を実行しないように構成されてもよい。オフィス環境では多数の画像処理装置100や多数の情報処理端末200が存在しうる。よって、他の情報処理端末200が接続許可を得た画像処理装置100に対して他の情報処理端末200から読取要求信号IMG_REQが届いてしまうことがあるかもしれない。よって、接続許可を取った情報処理端末200の識別情報と読取要求を送信してきた情報処理端末200の識別情報とが一致したときに画像の読み取りを実行させることで、他人の端末に読取結果が送信されてしまうことを抑制できるようになろう。
【0061】
画像処理装置100の稼働状態はユーザ操作に応じて変化するものである。たとえば、画像処理装置100が画像読取装置である場合、状態検知を行うセンサは、ユーザによって原稿載置部に原稿が載置されたことを検知する原稿センサ114により実現される。
図13を用いて説明したように、画像処理装置100が画像形成装置である場合、状態検知を行うセンサは、ユーザによって給紙トレイに原稿が載置されたことを検知する原稿センサ114により実現される。
【0062】
状態検知を行うセンサとしては、所定のユーザ操作を受け付ける受付手段(ボタンなどのスイッチなど)が画像処理装置100に設けられてもよい。状態検知を行うセンサは、受付手段によってユーザ操作が受け付けられたことを検知するように構成されてもよい。このように、画像処理装置100に設けられたスイッチに対するユーザによるスイッチ操作に基づきユーザが使用を希望する画像処理装置が認識されてもよい。
【0063】
なお、情報処理端末200のIT制御部220は、複数の画像処理装置から検知情報を受信したときは、複数の画像処理装置のうち排他使用要求を送信する画像処理装置を選択するための画面を情報処理端末200の表示装置(入出力部222)に表示してもよい。