(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-213613(P2016-213613A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】開放型ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20161118BHJP
H04R 19/02 20060101ALI20161118BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
H04R1/10 101Z
H04R19/02
H04R1/02 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-94333(P2015-94333)
(22)【出願日】2015年5月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【テーマコード(参考)】
5D005
5D017
5D021
【Fターム(参考)】
5D005BA00
5D005BA02
5D005BA04
5D017AD05
5D017AD40
5D021CC08
5D021CC09
5D021CC19
(57)【要約】
【課題】振動板の後部側が保護ネットにより覆われる開放型のヘッドホンにおいて、大気に開放された後部側に放射される音波による前記保護ネットの振動を抑制し、異音の発生を防止する。
【解決手段】ヘッドホンユニット5を備え、前記ヘッドホンユニットの後部側が開放された開放型のヘッドホン1であって、前記ヘッドホンユニットの後に配置された保護ネット25と、前記保護ネットを保持する保持部材29を有し、後部側に配置される前記保護ネットは、後方に突出するドーム状に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドホンユニットを備え、前記ヘッドホンユニットの後部側が開放された開放型のヘッドホンであって、
前記ヘッドホンユニットの後に配置された保護ネットと、前記保護ネットを保持する保持部材を有し、
後部側に配置される前記保護ネットは、後方に突出するドーム状に形成されていることを特徴とする開放型ヘッドホン。
【請求項2】
前記保持部材は、前記ヘッドホンユニット後部側において、前記保護ネットの周端部が係止可能な係止部を有し、
前記保護ネットは、周端部が径方向外側に付勢する状態で前記係止部に係止していることを特徴とする請求項1に記載された開放型ヘッドホン。
【請求項3】
前記保護ネットは、少なくとも40〜60%の空間率を有する金属網により形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたコンデンサヘッドホン。
【請求項4】
前記ヘッドホンユニットは、固定極板に振動板が対向配置されたコンデンサヘッドホンユニットであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載された開放型ヘッドホン。
【請求項5】
前記ヘッドホンユニットは、動電型ヘッドホンユニットであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載された開放型ヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板の変位によって生じる音波のうち、耳側はイヤーパットで密閉され、外側は自由空間に放射される開放型ヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドホンにおいて、固定極に印加された音声信号の交流電圧により静電気を変化させ振動板を振動させるコンデンサ型のヘッドホンや、磁気回路においてコイルが設けられた振動板を振動させるダイナミック型のヘッドホンなどが知られている。
以下、コンデンサヘッドホンを例に説明する。コンデンサヘッドホンに用いられる電気音響変換器(コンデンサヘッドホンユニットと呼ぶ)には、シングル型と、プッシュプル型とがある。シングル型では、振動板の片側に固定極が配置され、プッシュプル型では、振動板の両側に固定極が配置される。前記シングル型では、低域共振周波数を下げることに問題があるため、全帯域型の実現が困難とされている。そのため、特許文献1、2に示されるように現在実用化されているものの殆どがプッシュプル型である。
【0003】
一例として、
図4に従来のプッシュプル型コンデンサヘッドホンの主要部構成を示す。
図4は断面図である。図示するコンデンサヘッドホン50は、スピーカとしてのプッシュプル型のコンデンサヘッドホンユニット55を有している。このコンデンサヘッドホンユニット55は、振動板51と、その両側に一対の固定極61,62とを備えている。振動板51は、振動板リング63に所定のテンションがかけられた状態で張設されている。リング状の絶縁座64によって固定極61、62の周縁部が支持されている。
【0004】
前記振動板51には、極めて薄い(1〜3μm程度)高分子フィルムが用いられる。この高分子フィルムには、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリエチレンナフタレート(PEN)などが用いられる。振動板51の両面には、金属蒸着或いは高抵抗皮膜処理などにより、導電性が付与されている。振動板リング63は、黄銅合金などの導電材よりなる。
【0005】
また、固定極61,62には、黄銅合金やアルミニウムなどの金属板が用いられる。固定極61,62には、音を放出するための多数の孔(直径0.1〜1.0mm程度)が開けられている。多くの場合、固定極61,62には、振動板51との対向面にエレクトレット材が貼付されている。このエレクトレット材は、帯電処理した高分子フィルムである。このような構成において、振動板51と固定極61,62との間に成極電圧が印加され、固定極61、62に音声信号電圧が加えられる。振動板51と固定極61、62間に発生する静電気力によって、振動板51が変位する。その結果、振動板51から音波が放射される。
【0006】
ところで、
図4に示す開放型コンデンサヘッドホン50にあっては、振動板51の変位によって発生した音波のうち、耳側の音波はイヤーパット52で密閉されているため耳に加えられ、耳とは逆側(後部側と呼ぶ)の音波は自由空間に放射される。
コンデンサヘッドホンユニット55において、その振動板51は前記のように数μmの厚みであるため、変換効率を高めるためには、音響機械振動系のインピーダンスが低く設計されなければならない。このため音波が自由空間に効率良く放射されるためには、振動板の近傍にこれを妨げるような音響インピーダンスを形成する構造物が無いことが好ましい。
【0007】
前記コンデンサヘッドホンユニット55の前後には、湿度と埃の侵入を防止する防湿膜53、54が取り付けられ、さらにその外側には防湿膜を機械的に保護する保護ネット56、57が備えられる。前記のように振動板51の近傍に自由空間に放射することを妨げる音響インピーダンスがあると好ましくないため、一般的に保護ネット56、57には十分な空間率を確保するため、線径の細い金属網等(例えば、直径0.35mm、20メッシュ)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−27720号公報
【特許文献2】特開2008−42436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記線径が細い金属網では、その機械強度が低い。そのため、音波や振動が加えられると、このような金属網は容易に振動して音波を放射する。この保護ネットは耳に近接していることから、放射された音波は容易に耳に到達して音質を劣化させる(異音を発生させる)。
【0010】
また、前部側(耳側)ではイヤーパット52が周囲を密閉しているため、音圧が加わりやすい。しかし、粒子変位の振幅が小さいため、保護ネット57の振動も小さい。
一方、後部側(耳側とは反対側)は大気に開放されているため、
図5に示すように振動板中央から球面波として音波が放射される。そのため、保護ネットには空気分子の流れを伴う応力が加わる。より具体的には、音波が振動板中央から拡散し、音波の粒子変位の振幅が大きくなるため、保護ネットの中央部およびその付近が振動しやすくなる。このため、特に後部側の保護ネット56の機械強度は高くなければならない。
しかしながら、機械強度の高い線径が太い金属網の空間率は低い。このような金属網は不要な音響インピーダンスを構成し、自由空間への音波の放射を妨げる。そのため、細い線径で一定の空間率を備え、機械強度が高い保護ネットを用いた開放型コンデンサヘッドホンが望まれている。
【0011】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、振動板の後部側が保護ネットにより覆われる開放型のヘッドホンにおいて、大気に開放された後部側に放射される音波による前記保護ネットの振動を抑制し、異音の発生を防止することができる開放型ヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するために、本発明に係る開放型ヘッドホンは、ヘッドホンユニットを備え、前記ヘッドホンユニットの後部側が開放された開放型のヘッドホンであって、前記ヘッドホンユニットの後に配置された保護ネットと、前記保護ネットを保持する保持部材を有し、後部側に配置される前記保護ネットは、後方に突出するドーム状に形成されていることに特徴を有する。
尚、前記保持部材は、前記ヘッドホンユニット後部側において、前記保護ネットの周端部が係止可能な係止部を有し、前記保護ネットは、周端部が径方向外側に付勢する状態で前記係止部に係止していることが望ましい。
また、前記保護ネットは、少なくとも40〜60%の空間率を有する金属網により形成されていることが望ましい。
また、前記ヘッドホンユニットとして、固定極板に振動板が対向配置されたコンデンサヘッドホンユニット、或いは、動電型ヘッドホンユニットを適用することができる。
【0013】
このように開放型のヘッドホンユニットの大気に開放された後部側において、保護ネットをドーム状に形成したことにより、ネットの面積が大きくなり、空気の連通可能な領域が拡大する。その結果、保護ネットの音響抵抗が小さくなり、保護ネットに囲われた空気室が等価的に大きくなる。そのため、開放型のヘッドホンユニットの後部側において音響インピーダンスが低下し、外部との音響的結合性が向上する。
また、保護ネットをドーム状に形成したことにより、ネットが平坦形状の場合よりも、振動板中央からネットまでの距離が長くなる。そのため、球面波として放射される音波による振動が抑制される。
さらに、前記保護ネットはネット周端部が径方向外側に付勢する状態で係止部に係止し支持される。そのため、保護ネットには応力が掛かり続け、保護ネットの張力が小さくなる。したがって、細径で空間率が高い金属網であっても、機械的強度が向上し、放射された音波による不要な振動が予防できる。
以上から、音波による保護ネットの振動を抑制し、ネットの振動に起因する異音の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、振動板の後部側が保護ネットにより覆われる開放型のヘッドホンにおいて、大気に開放された後部側に放射される音波による前記保護ネットの振動を抑制し、異音の発生を防止することができる開放型ヘッドホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係る開放型ヘッドホンとしてのコンデンサヘッドホンの主要部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のコンデンサヘッドホンの等価回路図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る開放型のヘッドホンの他の形態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、従来のコンデンサヘッドホンの主要部を示す断面図である。
【
図5】
図5は、コンデンサヘッドホンの音波の形状を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る開放型ヘッドホンとしてのコンデンサヘッドホンの主要部を示す断面図である。
図1のコンデンサヘッドホン1は、電気音響変換器としてコンデンサヘッドホンユニット5を備え、その後部側が大気に開放された開放型のヘッドホンである。
前記コンデンサヘッドホンユニット5は、図において左右に相対向して接着された一対の振動板リング6、7を備えている。また、それら振動板リング6,7の間には、薄い振動板8が張設されている。
【0017】
前記振動板リング6,7は、それぞれ円形の枠体に形成される。また、前記振動板リング6,7は、所定幅の枠面を有している。前記振動板リング6,7は金属製であり、例えばアルミニウム材や黄銅合金等から形成されてよい。
また、前記振動板8は、例えば厚さ1.5μmの薄いフィルム状に形成されている。この振動板8は、例えばPET、PPS、PENなどの高分子フィルムからなる。
【0018】
また、
図1において前記振動板4の前後両側には、所定間隔(例えば0.3〜1.0mm程度)を空けて、固定極9,10がそれぞれ配置されている。固定極9、10は、所定厚さ(約0.5mm)の金属板(例えば黄銅合金やアルミニウムなど)からなる。
固定極9,10には、多数の孔(図示せず)が開けられている。この多数の孔は、振動板からの音声波を放出するために設けられている。尚、固定極9,10の振動板8との対向面には、高分子フィルムを帯電処理してなるエレクトレット材が貼付されている。
また、この一対の固定極9,10の一面側の周縁部には、絶縁座11、12が当接している。この絶縁座11、12は絶縁性材料からなる枠体である。絶縁座11、12は、接着剤により固定極9,10を支持している。
【0019】
また、前記絶縁座11,12は、コンデンサヘッドホンユニット5の周縁部に配置された断面L字状のバッフル板13の一方の面に、接着剤によって固定されている。前記バッフル板は、環状であり、所定幅を有する。バッフル板13の他方の面、即ち聴者の耳部側(図において下側)には、イヤーパッド2が設けられている。イヤーパッド2は、所定幅と高さを有する環状である。また、イヤーパッド2は、頭部に当接することで、空気室を形成する。
【0020】
また、前記のように構成されたコンデンサヘッドホンユニット5の前後には、固定極8,9から所定間隔を空けて湿度と埃の侵入を防止する防湿膜21、22が取り付けられている。耳側(前部側)の防湿膜22は、前記バッフル板13と絶縁座12とに狭持されることで固定された環状の支持部材27の内側に張設されている。また、外側(後部側)の防湿膜21は、絶縁座11と環状の保持部材29とに狭持されることで固定された環状の支持部材28の内側に張設されている。
【0021】
さらに、耳側(前部側)の前記防湿膜22の外側には、防湿膜22を機械的に保護する保護ネット24が設けられている。この保護ネット24は略平坦状に形成される。保護ネット24には、例えば細い線径で十分な空間率を有する金属網等(例えば、線径0.35mm、20メッシュ)が用いられる。強度と音波の放射効率から、40〜60%の空間率を有する金属網が適している。前記保護ネット24は、バッフル板13と支持部材27とに狭持され支持されている。
【0022】
一方、耳側とは反対側(後部側)の前記防湿膜21の外側にも、同様に防湿膜21を機械的に保護する保護ネット25が設けられている。この保護ネット25は、図示するように後方に突出するドーム状(半球状)に形成される。保護ネット25には、前記保護ネット24と同様に、例えば細い線径で十分な空間率を有する金属網等(例えば、直径0.35mm、20メッシュ)が用いられる。また、この保護ネット25は、保持部材29の内周面に形成された溝部29a(係止部)にその周端部(ネット周縁部)が係止されることで支持されている。このとき、保護ネット25は、ネット周端部が径方向外側に付勢する状態で前記溝部29aに係止されている。すなわち、ドーム状の保護ネット25の開口部(ネット周縁部を円周とする円)の径は、保持部材29の内周の径よりも大きい。
このように大気(自由空間)に開放された後部側に配置される保護ネット25にあっては、ドーム状に形成されることによって、ネットが平坦の場合よりも開口面が大きくなり、音波の通過可能な面積が大きくなる。さらに、保護ネットが平坦の場合と比較して、保護ネット25はドーム形状であるため、保護ネット25の中央部の音源からの距離が遠くなる。また、保護ネット25は保持部材29の内周面に形成された溝部29aに係止して支持されるため、保護ネット25の周端部には応力が加わる。したがって、保護ネット25の機械的強度は向上する。さらに、保護ネット25の張力はこの応力によって発生しないため、保護ネット25の不要な振動が抑制される。
【0023】
また、
図2は
図1のコンデンサヘッドホン1の機械等価回路図である。
図2において、Z
eは聴者の耳のインピーダンス、s
fはイヤーパッド2内の容積のスチフネス、m
0は振動板8の等価質量、s
0は振動板8のスチフネス、r
0は音孔の音響抵抗、s
bは保護ネット25に囲われた容積のスチフネス、r
1は保護ネット25の音響抵抗である。
ここで、大気に開放された後部側において、振動板8の後部(防湿膜21の後部)には、保護ネット25により覆われた空気室(スチフネスs
b)が形成されている。この空気室が無い場合には、振動板8の駆動を阻害する要因がないため、音響的には好ましい。本発明の構成にあっては、保護ネット25をドーム状に形成しているため、ネットが平坦の場合よりも、ネット全体の面積が大きくなる。即ち、空気の連通可能な領域が大きくなり、音響抵抗r
1は小さくなる。また、保護ネットが平坦な場合と比較して、振動板8の後部側の容積が大きくなる。そのため、等価的に前記スチフネスが小さくなる。これらの結果、自由空間への音波の放射を妨げる音響インピーダンスを形成する構造物が無く、自由空間、すなわち、大気との音響インピーダンスの整合が取れ、振動板8の駆動がスムーズになる。
【0024】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、コンデンサヘッドホンユニット55の大気に開放された後部側において、保護ネット25をドーム状に形成したことにより、ネットにより形成された球面の面積が大きくなり、空気の連通可能な領域を拡大することができる。その結果、保護ネット25の音響インピーダンスが小さくなり、さらに、保護ネット25に囲われた空気室が等価的に大きくなるため、スチフネスが低下する。そのため、外部との音響的結合性(音響的マッチング)が向上する。
また、保護ネット25をドーム状に形成したことにより、ネットが平坦形状の場合よりも振動板中央からネットまでの距離が長くなり、球面波として放射される音波による振動の発生を抑制することができる。
さらに、前記保護ネット25は、ネット周端部が径方向外側に付勢する状態で溝部29aに係止し支持されるため、保護ネット25に応力を与え続けることができ、細径で開口が高い金属網であっても機械的強度を確保することができる。
また、前記応力により、保護ネット25は張力が発生しない状態で保持部材29の内周面に支持される。
以上から、音波による保護ネット25の振動を抑制し、ネットの振動に起因する異音の発生を防止することができる。
【0025】
尚、前記実施の形態にあっては、振動板の両側に固定極が配置されるプッシュプル型のコンデンサヘッドホンを例に説明したが、振動板の片側に固定極が配置されるシングル型のコンデンサヘッドホンの場合にも本発明を適用することができる。
【0026】
また、前記実施の形態においては、ヘッドホンユニットとして、コンデンサヘッドホンユニットを用いた開放型のヘッドホンについて説明したが、これに限らず、本発明に係るヘッドホンを開放型のダイナミック型ヘッドホンに適用することができる。
例えば、
図4は、本発明に係るヘッドホンを開放型のダイナミック型ヘッドホンに適用した場合の断面図である。
図4に示すように、ヘッドホン30は、電気音響変換器であるヘッドホンユニット31を備える。ヘッドホンユニット31は、振動板32、磁気回路部33を含んで構成されている。図示しない音声再生機器からヘッドホンユニット31のボイスコイル34に音声信号が電流として通電されることにより、振動板32が振動してスピーカとして動作する。振動板32が振動することで、ヘッドホンユニット31から音声が放音される。
【0027】
また、ヘッドホン1は、ヘッドホンユニット31を支持する環状のバッフル板35を有している。その一方の面側に、ヘッドホン装着の際に聴者の耳部に宛がわれるイヤーパッド36が接合されている。
一方、前記イヤーパッド36とは反対側(後部側)には、ヘッドホンユニット31を機械的に保護するドーム状(半球状)の保護ネット37が設けられている。バッフル板35の後部側には、環状の保持部材37が設けられており、この保持部材37の内周面に形成された溝部37a(係止部)にその周端部(ネット周端部)が係止されることで、保護ネット37は支持されている。保護ネット37には、例えば細い線径で十分な空間率を有する金属網等(例えば、直径0.35mm、20メッシュ)が用いられる。
【0028】
本発明にあっては、このように開放型のダイナミック型ヘッドホンの場合においても、大気に開放されたユニット後部側に、前記ドーム状の保護ネット37を設けることにより、前記コンデンサヘッドホンに適用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0029】
尚、これまで説明した実施形態において、保護ネットの構成例として、金属網を例に説明したが、これに限らない。金属網に代えて、樹脂製の網であっても良い。樹脂性の保護ネットが用いられたヘッドホンは、軽量で良好な装着感を提供する。
【符号の説明】
【0030】
1 コンデンサヘッドホン(開放型ヘッドホン)
2 イヤーパッド
5 コンデンサヘッドホンユニット
8 振動板
9 固定極
10 固定極
25 保護ネット
29 保持部材
29a 溝部(係止部)
30 ダイナミックヘッドホン(開放型ヘッドホン)
31 ダイナミックヘッドホンユニット
32 振動板
33 磁気回路
34 ボイスコイル
37 保持部材
37a 溝部(係止部)
38 保護ネット