特開2016-213909(P2016-213909A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日経ビーピーの特許一覧

<>
  • 特開2016213909-発酵熱を用いた発電システム 図000005
  • 特開2016213909-発酵熱を用いた発電システム 図000006
  • 特開2016213909-発酵熱を用いた発電システム 図000007
  • 特開2016213909-発酵熱を用いた発電システム 図000008
  • 特開2016213909-発酵熱を用いた発電システム 図000009
  • 特開2016213909-発酵熱を用いた発電システム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-213909(P2016-213909A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】発酵熱を用いた発電システム
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20161118BHJP
【FI】
   H02N11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-92318(P2015-92318)
(22)【出願日】2015年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】500073630
【氏名又は名称】株式会社日経ビーピー
(74)【代理人】
【識別番号】110001782
【氏名又は名称】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多喜 義彦
(57)【要約】
【課題】
本発明は、熱で発電する発電素子によって、被発酵物の発酵の際に発生する熱エネルギーを電力に変換する簡易的な発電システムを提供するとともに、発電した電力を発酵物の製造工程等に有効活用できるようにする発電システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、発酵熱を発生する被発酵物と、熱で発電する発電素子とを備え、被発酵物の発酵熱によって発電に必要な熱量を得る、発電システムに関する。本発明は、さらに、発電素子を耐食材料で封止した発電システムであることが好ましい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵熱を発生する被発酵物と、熱で発電する発電素子とを備え、被発酵物の発酵熱によって発電に必要な熱量を得る、発電システム。
【請求項2】
発電素子を耐食材料で封止した、請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
被発酵物を発酵させるための発酵槽を備え、発酵槽の内壁に発電素子を設置した、請求項1または2に記載の発電システム。
【請求項4】
発電素子が、正極と負極との間に、p型半導体およびn型半導体を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の発電システム。
【請求項5】
被発酵物が、堆肥を製造するための原料であり、家畜糞尿、木材、生ごみ、籾殻、米糠、落葉、および藁からなる群より選ばれる、請求項1〜4のいずれかに記載の発電システム。
【請求項6】
被発酵物が、発酵食品を製造するための原料であり、穀物、果物、乳製品、魚介、野菜、茶葉、および芋からなる群より選ばれる、請求項1〜4のいずれかに記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵熱を用いた発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電素子の代表的なものとして、熱電発電素子、太陽光発電素子、温度差発電素子等が知られている。熱電発電素子は、熱と電力を変換する熱電素子の一種であり、2種類の異なる金属又は半導体を接合して、両端に温度差を生じさせると起電力が生じるゼーベック効果を利用するものである。この熱電発電素子は、温度差によって大きな電位差を得るためにp型半導体、n型半導体を組み合わせて使用される。また、太陽光発電素子は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換するものであり、光電池とも呼ばれる。この太陽光発電素子は、一般的な一次電池や二次電池のように電力を蓄える蓄電池ではなく、光起電力効果によって光を電力に変換して出力する発電機であり、シリコン太陽電池、化合物半導体型太陽電池、色素増感型太陽電池等が知られている。また、温度差発電素子は、2種類の異なった半導体を用いた熱電変換素子(ペルチェ素子)を使用して、熱起電力を発生させるものである。
【0003】
ところで、被発酵物が発酵する際には発酵熱が発生するが、この発酵熱における熱エネルギーは有効活用されずに放熱されて失われていた。また、堆肥などの被発酵物の発酵に際しては、90℃近くまで被発酵物の温度が上昇し、その温度が数ヶ月にわたり維持される場合もあるが、そのような場合にも、この熱エネルギーは有効活用されず、放熱されて失われていた。なお、被発酵物とは、最終的な発酵物となる前の原料および発酵過程にある原料を意味しており、発酵熱を発生し得る発酵用原料を意味する。
【0004】
上記の問題を解決するために、例えば、堆肥の発酵熱を利用して発電を行う温度差発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような発電装置は、発電のために冷却機構を必要とするため、発電装置の構造が複雑になったり、構造の複雑化に伴って発電装置が大型化してしまったりすること等により、被発酵物の発酵態様に併せて発電を行う発電システムを構成するには不向きであるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−204442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱で発電する発電素子によって、被発酵物の発酵の際に発生する熱エネルギーを電力に変換する簡易的な発電システムを提供するとともに、発電した電力を発酵物の製造工程等に有効活用できるようにする発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発酵熱を発生する被発酵物と、熱で発電する発電素子とを備え、被発酵物の発酵熱によって発電に必要な熱量を得る、発電システムに関する。
【0008】
本発明は、さらに、発電素子を耐食材料で封止した、発電システムであることが好ましい。
【0009】
本発明は、さらに、被発酵物を発酵させるための発酵槽を備え、発酵槽の内壁に発電素子を設置した、発電システムであることが好ましい。
【0010】
本発明は、さらに、発電素子が、正極と負極との間に、p型半導体およびn型半導体を有する、発電システムであることが好ましい。
【0011】
本発明は、さらに、被発酵物が、堆肥を製造するための原料であり、家畜糞尿、木材、生ごみ、籾殻、米糠、落葉、および藁からなる群より選ばれる、発電システムであることが好ましい。
【0012】
本発明は、さらに、被発酵物が、発酵食品を製造するための原料であり、穀物、果物、乳製品、魚介、野菜、茶葉、および芋からなる群より選ばれる、発電システムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の発電システムによれば、被発酵物の発酵の際に発生する熱エネルギーを、熱で発電する発電素子によって、電力に変換することができるとともに、発電した電力を発酵物の製造工程等において有効活用することにより、発酵物の製造工程等にかかる電力の省エネルギー化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の発電システムに用いる発電素子の一例を示す模式的な構成図である。
図2】本発明の発電システムに用いる発電素子の一例を示す模式的な構成図である。
図3】本発明の発電システムの一例を示す模式的な構成図である。
図4】本発明の発電システムの一例を示す模式的な構成図である。
図5】本発明の発電システムの一例を示す模式的な構成図である。
図6】本発明の発電システムの一例を示す模式的な構成図である。
【0015】
[発電素子]
以下、本発明の発電システムに用いる発電素子について、図面を用いて説明するが、本発明に用いる発電素子はこれに限定されない。
【0016】
本発明に用いる発電素子10は、正極1と負極5との間に、p型半導体と、n型半導体とを有するものであれば、特に限定されず、正極1と負極5との間に、さらに、強誘電体を有するものであってもよく、強誘電体を有さないものであってもよい。本発明に用いる発電素子10としては、例えば、図1に示すように、正極1と、p型半導体層2と、強誘電体層3と、n型半導体層4と、負極5とがその順で配置された構造形態を有することが好ましい。また、図2に示すように、p型半導体層2と、強誘電体層3と、n型半導体層4とは、接触界面を増やすために、混合したヘテロジャンクション構造をとっていてもよい。こうした発電素子10は、従来の発電素子とは異なる新しい発電素子であり、高い電流を発生する発電現象を起こす。特に恒温槽中で常温(例えば25℃)から昇温することにより実現できる。
【0017】
以下、本発明に用いる発電素子10の構成について説明する。
【0018】
(正極、負極)
正極1および負極5は、導電性材料であり、正極1の仕事関数が負極5の仕事関数と同じか高い材料を用いる。正極1の仕事関数が負極5の仕事関数より高い方が望ましい。正極1としては、銅、銅合金、SUS430等のステンレス鋼、錫めっき銅、銀、白金、金等を一例として挙げることができるが、これらの材料は、仕事関数を考慮して決定することができ、列記した前記正極材料に限定されない。負極5は、正極1とは異なる材料であればよく、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金、Mg−Al等のマグネシウム合金等の金属材料や、インジウム錫酸化物(ITO)等の導電性酸化物材料等を挙げることができるが、これらの材料は、仕事関数を考慮して決定することができ、列記した前記負極材料に限定されない。
【0019】
正極1および負極5の形状も特に限定されず、発電素子10の形状に応じた形状に加工することができる。例えば、発電素子10が、平面配置型用の発電素子10である場合には、正極1と負極5とを、p型半導体層2、強誘電体層3およびn型半導体層4を挟んで対向配置して構成できる。なお、この平面配置型の発電素子10は、正極1と負極5とを順次直列接続して直列配置型の発電素子複合体にしたり、正極1と負極5とを順次並列接続して並列配置型の発電素子複合体にしたりすることができる。また、発電素子10を、乾電池型用の発電素子としてもよく、その場合は、中心を負極棒とし、周りを正極管として構成できる。
【0020】
(p型半導体層)
p型半導体層2は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリフルオレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチエニレンビニレン、グラフェン、CuAlO2、CuGaO2、LiNiO2から選ばれるp型半導性高分子であることが好ましい。なお、ホール伝導が観測されれば、列記したp型半導体材料に限定されない。
【0021】
p型半導体層2の厚さは、発電素子10の作製方法によって異なり、特に限定されないが、例えば10μm以上、1000μm以下の範囲内であることが好ましい。なお、発電素子10中でのp型半導体層2の境界は、そのp型半導体特性を奏する限り、図1に示すようにはっきり区分けされていてもよいし、図2に示すように、p型半導体層2が強誘電体層3とn型半導体層4ともに、接触界面を増やすために、混合したヘテロジャンクション構造をとっていてもよい。したがって、上記の厚さ範囲も、p型半導体層2の作用を奏する範囲での厚さとして表すことができる。
【0022】
(強誘電体層)
強誘電体層3は、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、チタン酸ビスマスランタン、チタン酸カドミウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ビスマスフェライト、およびリチウムドープ酸化亜鉛から選ばれるいずれかの粒子を含むことが好ましい。なお、強誘電性が観測されれば、列記した強誘電性材料に限定されない。強誘電体層3は、前記材料の1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。この強誘電体層3は、強誘電性を有する層であり、強誘電性を有するので発電をし、また、その強誘電体層3がさらにn型半導性を有する場合には電子(キャリア)の移動も容易であり、発電素子の構成要素として極めて望ましい。
【0023】
強誘電体粒子の形状や粒径は特に限定されないが、全体的な形状が球形状または略球形状、楕円形状または略楕円形状であればよく、その表面がなめらかでも凹凸であってもよい。強誘電体粒子の平均粒径は、入手の容易さや素子作製上の問題がない範囲で各種の大きさのものを選択することができるが、平均粒径の大きいものほど誘電率も高いので好ましく用いることができる。また、強誘電体粒子の平均粒径を所望の値に設定することにより、表面積をコントロールできるという利点がある。強誘電体粒子の平均粒径は、原料の段階では走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができ、強誘電体層3を構成した後も走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0024】
強誘電体層3は、強誘電体粒子で構成されているが、本発明に用いる発電素子の効果を阻害しない範囲で、強誘電性を有する他の無機物を含んでいてもよい。また、本発明に用いる発電素子の効果を阻害しない範囲で、導電性やn型半導性を有する他の無機物を含んでいてもよい。
【0025】
(n型半導体層)
n型半導体層4は、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズ、ガリウムドープ酸化亜鉛、アルミドープ酸化亜鉛、ニオブドープチタン酸ストロンチウム、および酸化カルシウムドープ酸化ジルコニウムから選ばれるいずれかの粒子を含むことが好ましい。なお、電子伝導が観測されれば、列記したn型半導体材料に限定されない。この粒子は、n型半導体粒子であり、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0026】
n型半導体粒子の粒子形状や粒径は特に限定されないが、全体的な形状が球形状または略球形状、楕円形状または略楕円形状であればよく、その表面がなめらかでも凹凸であってもよい。n型半導体粒子の平均粒径は、入手の容易さや素子作製上の問題がない範囲で各種の大きさのものを選択することができるが、平均粒径の大きいものほど導電率が高いので好ましく用いることができる。また、n型半導体粒子の平均粒径を所望の値に設定することにより、表面積をコントロールできるという利点がある。n型半導体粒子の平均粒径は、原料の段階では走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができ、n型半導体層4を構成した後も走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定することができる。
【0027】
n型半導体層4は、n型半導体粒子で構成されているが、本発明の効果を阻害しない範囲で、n型になり得る他の無機物を含んでいてもよい。
【0028】
n型半導体層4の抵抗は特に限定されないが、例えば2Ω以上、7Ω以下程度の範囲内が好ましい。n型半導体層4をこうした範囲の抵抗にすることによって、内部インピーダンスを下げて電流を取り出しやすくするという利点がある。n型半導体層4の抵抗は、LCRハイテスタによって測定することができる。n型半導体層4の抵抗が2kΩ未満の場合、より具体的には例えば1kΩ未満や100kΩ未満の場合は、そのn型半導体層4上に設けられる導電性のp型半導体層2がn型半導体層4中に浸入してショート状態になってしまい、発電素子として作動しないことがある。
【0029】
(発電素子の作製方法)
発電素子10は、上記構成を備えるものであれば、各種の方法で作製することができる。図1に示す発電素子10は、正極1と、p型半導体層2と、強誘電体層3と、n型半導体層4と、負極5とがその順で配置された構造形態であり、図2に示す発電素子10は、正極1と負極5とが、p型半導体層2と強誘電体層3とn型半導体層4とが混合したヘテロジャンクション構造である。
【0030】
この発電素子10の作製は特に限定されないが、正極1上に、n型半導体層4、強誘電体層3、p型半導体層2を順に形成する。p型半導体層2は、p型半導性高分子を例えば滴下または塗布して形成することができる。強誘電体層3とn型半導体層4は、それぞれの粒子を例えば加圧成形して形成することができる。
【0031】
こうして作製された発電素子部材は、平面的な直列構造または並列構造になるように接続することができる。発電素子部材を直列接続して発電素子複合体を構成する場合、隣り合う発電素子部材の正極1と負極5とを、カシメ、圧接、ロウ付け等で接続して直列構造にすることができる。また、発電素子部材を並列接続して発電素子複合体を構成する場合、長く延びる電極に、発電素子部材の正極1と負極5をそれぞれ、カシメ、圧接、ロウ付け等で接続して並列構造にすることができる。
【0032】
このような発電素子複合体は、複数の発電素子部材を接続して1次元的(直列配置)または二次元的(並列配置)に作製することができるが、厚さ方向に積層して三次元的な立体構造にすることもできる。
【0033】
なお、乾電池型用の発電素子としてもよく、その場合、底のある正極管の中に、n型半導体粒子や強誘電体粒子の投入と、p型半導性高分子材料の滴下または塗布とを繰り返し、それらを層状に形成することができる。なお、負極棒は、n型半導体層4と強誘電体層3とp型半導体層2との層状構造の形成前または形成後に、正極管の中央に、その正極管に接触しないようにして挿入すればよい。
【0034】
発電素子部材や発電素子複合体において、発電素子10に水分が侵入するのを避けることが好ましい。水分の侵入防止手段としては、周囲を封止材で充填したり、全体を封止材で覆ったりすることが好ましい。こうした水分の侵入防止手段により、発電素子10の発電電流値の低下を抑制することができる。
【0035】
(発電素子の具体例および性能)
本発明に用いる発電素子は、具体的には、図1に示す発電素子10のような構成とすることができる。正極1は、厚さ0.2mm、縦10mm、横10mmの平板状の銅部材とし、負極5は、厚さ0.2mm、縦10mm、横10mmの平板状のアルミニウム部材とすることができる。負極5の上に、ニオブ酸リチウム粒子からなる厚さ2mmのn型半導体層4を形成し、この強誘電性を有するn型半導体層4の上から、液状のp型半導性高分子であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホナート))を滴下し、n型半導体層4上にp型半導体層2を設け、その上から負極5を載せて発電素子10を作製することができる。以上のようにして、電極間抵抗が25kΩとなる発電素子10を得ることができる。
【0036】
発電素子10を恒温糟に入れ、負荷抵抗10Ωを接続し、恒温層中の温度を変化させながら、発電素子10の性能を評価すると、表1および表2に示すような結果を得ることができる。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
以上、本発明に用いる発電素子は、従来の発電素子とは異なる新しい発電素子である。この発電素子は、高い電流を発生する発電現象を起こすことができ、特に恒温槽中で常温(例えば25℃)から昇温することにより実現できる。
【0040】
上述した発電素子を発電システムに設置する際は、p型半導体と強誘電体とn型半導体とを混合した粉末を、銅などの正極板とアルミニウムなどの負極板とでラミネートして封止したバルク型の態様として、発電システムに備えることができる。
【0041】
また、p型半導体と強誘電体とn型半導体とを混合してペースト状にしたものを、銅などの正極板とアルミニウムなどの負極板とでラミネートしたフィルム型の態様として、発電システムに備えることもできる。
【0042】
上記のようなバルク型またはフィルム型の発電素子は、数cm角のものを直列または並列に連結しても用いてもよいし、数m角のものを直列または並列に連結して用いてもよい。
【0043】
また、本発明に用いる発電素子は、任意の形状に成形できるため、発電素子を設置する基材の表面は、平坦である必要はなく、局面状であってもよいし、凹凸を有するものであってもよい。
【0044】
なお、本発明に用いる発電素子を発電システムに設置する場合は、発電素子の近傍に吸熱性や保温性に優れる素材を設けると、発電素子の発電効率を高めることができる傾向にある。
【0045】
本発明に用いる発電素子は、熱で発電する発電素子であるため、発電のために温度差を必要としない。そのため、本発明に用いる発電素子は、発電のために発電素子の冷却も必要としない。したがって、本発明に用いる発電素子を発電システムに設置する際には、発電素子の一部を冷却するための冷却機構を設ける必要がない。そのため、発電システムの構造を複雑化せずにすむとともに、発電システムにおいて発生する熱源に対して、比較的自由な態様で発電素子を設けることができる。
【0046】
[被発酵物]
以下、本発明の発電システムに用いる被発酵物について説明するが、本発明の発電システムに用いる被発酵物は、これに限定されない。
【0047】
本発明に用いる被発酵物は、発酵の際に発酵熱を生じ得るものであれば、特に限定されない。被発酵物の発酵熱の温度は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましく、90℃以上であることが特に好ましい。被発酵物の発酵熱の温度が30℃未満であると、発電素子による発電量が低下する傾向にある。本発明に用いる発電素子は、発電素子に与えられる熱量が大きくなるほど、その発電量が増加する傾向にある。
【0048】
本発明に用いる被発酵物は、堆肥を製造するための原料であることが好ましい。堆肥を製造する際には、堆肥の原料となる被発酵物の発酵によって、70〜90℃程度の温度が1〜3ヶ月程度持続する場合もあり、50℃程度の温度が1年近く続く場合もある。そのため、堆肥を製造するための原料は、発電素子による発電のための熱源として好ましい。堆肥を製造する際の発酵熱を上昇させたり持続させたりするためには、至適生育温度が80℃以上の超好熱菌を堆肥原料に添加したり、堆肥原料の撹拌や切り返しを適宜行うことが好ましい。
【0049】
堆肥を製造するための原料となる被発酵物は、特に限定されないが、例えば、家畜糞尿、木材、生ごみ、籾殻、米糠、落葉、または藁などが挙げられる。これらの堆肥を製造するための原料は、堆肥の製造の際に、高温の発酵熱を長期間にわたり発生し続けるため、発電素子による発電のための熱源として好ましい。
【0050】
被発酵物となる家畜糞尿は、特に限定されないが、例えば、牛糞、豚糞、鶏糞、または馬糞などが挙げられる。被発酵物となる木材は、特に限定されないが、例えば、樹皮(バーク)、大鋸屑、または竹などが挙げられる。
【0051】
本発明に用いる被発酵物は、発酵食品を製造するための原料であってもよい。発酵食品を製造するための原料は、発酵食品を製造する際の発酵によって、30℃以上に発熱し得るものであれば、本発明に用いる発電素子による発電のための熱源となることができる。発酵食品を製造するための原料となる被発酵物は、特に限定されないが、例えば、穀物、果物、乳製品、魚介、野菜、茶葉、または芋などが挙げられる。
【0052】
被発酵物となる穀物は、特に限定されないが、例えば、清酒、蒸留酒、ならびに米麹などを製造するための米など、パンなどを製造するための小麦など、ビールなどを製造するための大麦など、または納豆、味噌、もしくは醤油などを製造するための大豆などが挙げられる。被発酵物となる果物は、特に限定されないが、例えば、ワインなどを製造するための、ブドウ、リンゴ、サクランボ、またはヤシの実などが挙げられる。被発酵物となる乳製品は、特に限定されないが、例えば、チーズ、またはヨーグルトなどを製造するための、牛乳、または豆乳などが挙げられる。その他、魚介、野菜、茶葉、または芋なども、発酵する際に30℃以上に発熱し得るものであれば、本発明の発電システムに用いる被発酵物として利用することができる。
【0053】
その他、本発明の発電システムに用いることができる被発酵物として、メタン、またはバイオエタノールなどが挙げられる。
【0054】
[発電システム]
以下、上述した発電素子および被発酵物を備える本発明の発電システムについて説明するが、本発明の発電システムは、これに限定されない。
【0055】
本発明の発電システムの一例を図3および図4に示す。図3に示す発電システムは、堆肥などの原料を大規模に発酵させる場合に用いることができる発電シート100の模式図を表している。発電シート100は、図4に示すように、堆肥など原料となる被発酵物120に対して、被せたり、挟み込んだり、下に敷いたりして、被発酵物120の発酵熱を利用して発電を行うことができる。
【0056】
図3は、発電素子102を備えた発電シート100の水平断面図を表す。図3の発電シート100においては、複数の発電素子102が導線105によって連結されている。導線105は、発電素子102を構成する負極103および正極104に接続されている。発電素子102で発電された電力は、導線105を介して、蓄電装置110のバッテリー112に蓄電される。
【0057】
発電素子102で発電された電力の電圧は、バッテリー112に蓄電される前に、DC/DCコンバータ111によって、蓄電に適した電圧に変換される。また、バッテリー112には、蓄電量をモニタするための、蓄電量モニタ114が接続されていることが好ましい。
【0058】
発電シート100には、温度センサ106が複数設けられていることが好ましい。温度センサ106を設けることにより、発酵温度にムラがある場合は、より温度の高い場所に発電シート100を移動させたりすることにより、発電効率を高めることができる。温度センサ106は、導線107によって、蓄電装置110の温度モニタ113に接続されている。温度モニタ113によって、被発酵物の温度を確認することができる。
【0059】
発電素子102、導線105、温度センサ106、および導線107は、2枚のシート101によって挟まれて封止されている。シート101の素材は、熱伝導性が良好な素材であれば、特に限定されない。また、シート101の被発酵物に接する面は、耐食材料などでコーティングされていることが好ましい。
【0060】
発電シート100のシート面積は特に限定されないが、数m角のシート面積とすることにより、大規模な発電をすることが可能となる。
【0061】
発電シート100によって発電を行う際には、図4に示すように、2組の発電シート100aおよび発電シート100bで被発酵物120を覆うようにして発電を行うことができる。発電シート100aによって発電された電力は、導線105aを介して蓄電装置110aのバッテリーに蓄電される。また、発電シート100bによって発電された電力は、導線105bを介して蓄電装置110bのバッテリーに蓄電される。
【0062】
発電素子によって発電した電力は、原料となる被発酵物の破砕、混合、もしくは乾燥に用いる機械など、切返し、通気、もしくは移動のためのショベルローダもしくはコンベヤなど、ふるい分け、造粒、もしくは袋詰めのための装置など、または脱臭もしくは集塵のための設備など、堆肥の製造に用いる機械類の電力として用いることができる。このような構成とすることにより、従来よりも少ない電力で堆肥の製造を行うことができるようになるため、堆肥製造の省エネルギー化を実現することができる。
【0063】
本発明の発電システムの一例を図5に示す。図5は、堆肥を工業的に製造するための装置の模式図を表している。堆肥製造装置300は、原料容器310、撹拌容器320、および堆肥容器330を備え、堆肥製品340を製造する。
【0064】
原料容器310においては、発酵用原料311を、原料投入口312に投入する。投入された発酵用原料311は、粉砕部313において細かく粉砕される。粉砕部313は、例えば、回転軸314に粉砕歯315を備える構成とすることができる。なお、発酵用原料311が、粉砕を要するほど大きなものでない場合は、粉砕部313を設けない態様としてもよい。
【0065】
粉砕された発酵用原料311は、原料槽316に投入される。原料槽316の内壁317には、発電素子層318が設けられている。発酵用原料311が、原料槽316の中にある間に、発酵が開始されて発酵熱が生じるような場合には、発電素子層318の発電素子によって発電が行われる。
【0066】
発酵用原料311は、原料容器310の原料排出口319から排出され、撹拌容器320の原料投入口321に投入される。原料排出口319には、発酵用原料311の排出を制御するための制御扉を設けることができる。また、原料排出口319の近傍には、発酵用原料311を原料排出口319へ送り出すための機構を設けることができる。
【0067】
原料投入口321から撹拌槽322に投入された発酵用原料311は、回転軸323に設けられた撹拌翼324によって撹拌される。撹拌槽322の内壁には、発電素子層325が設けられている。発酵用原料311は、撹拌槽322の中で撹拌されることにより、好適に発酵して発酵熱を発生する。この発酵熱によって、発電素子層325の発電素子による発電が行われる。
【0068】
撹拌槽322の上方には、排気口326が設けられていることが好ましい。排気口326を設けることにより、発酵により生じた気体や臭気を排気することが可能となる。排気された気体や臭気は、排気路327を通って撹拌容器320の外に排出される。
【0069】
発酵用原料311は、撹拌槽322において発酵し、堆肥331となる。撹拌槽322の下方には、排出扉328が設けられており、自動または手動によって開閉する。排出扉328が開かれている場合は、堆肥331は、堆肥排出口329から排出され、堆肥容器330の堆肥槽332に投入される。
【0070】
堆肥槽332の内壁333には、発電素子層334が備えられている。堆肥331が、堆肥槽332の中においても発酵していたり、または発酵熱が残っていたりするような場合には、発電素子層334の発電素子によって発電が行われる。
【0071】
製造された堆肥331は、堆肥容器330の堆肥排出口335から排出され、堆肥製品340として袋詰めされて、小分けされる。
【0072】
以上のように、被発酵物となる発酵用原料311を発酵させるための発酵槽となる原料槽316、撹拌槽322、および堆肥槽332の内壁に発電素子を設置することにより、発酵熱を利用した発酵を行うことができる。
【0073】
なお、発酵槽の内壁に発電素子を設置する場合は、発酵槽の内側に発電素子を設置する態様としてもよいし、発酵槽の外側に発電素子を設置する態様としてもよい。発酵槽の内側に発電素子を設置する場合は、発電素子が発酵熱を受けやすくなり、発電効率が高くなる傾向にある。発酵槽の外側に発電素子を設置する場合は、発電素子に接続する導線等の配線が容易になる傾向にある。
【0074】
また、発電素子層318、発電素子層325、および発電素子層334に用いる発電素子は、耐食材料で封止することが好ましい。耐食材料で発電素子を封止することにより、発電素子の劣化等を防止することができる。
【0075】
発電素子を封止するための耐食材料は、特に限定されないが、例えば、プラスチックや金属合金など、種々の材料が挙げられる。
【0076】
発電素子によって発電した電力は、撹拌容器320における撹拌のための電力など堆肥製造装置300の稼働電力として用いることができる。また、発電素子によって発電した電力は、蓄電用のバッテリーを備えることにより、蓄電することができる。発電素子による発電量が少ない場合は、堆肥製造装置300にバッテリーから電力を供給する態様としてもよい。また、発電素子またはバッテリーから堆肥製造装置300に供給される電力量が少ない場合は、堆肥製造装置300に外部電源から電力を供給する態様としてもよい。以上のような構成とすることにより、従来よりも少ない電力で発酵用原料の発酵を行うことができるようになるため、堆肥製造の省エネルギー化を実現することができる。
【0077】
本発明の発電システムの一例を図6に示す。図6に示す発電システムは、家庭用の堆肥製造装置、いわゆるコンポストの模式図である。
【0078】
図6に示すコンポスト400は、図6(a)に示すように、蓋部401、外装部402を備える。コンポスト400の撹拌槽403の中には、回転軸404に設けられた撹拌翼405が備えられている。
【0079】
コンポスト400の撹拌槽403には、図6(b)に示すように、発酵用原料406を投入することができる。撹拌槽403においては、回転軸404が回転することにより、撹拌翼405が発酵用原料406を撹拌する。発酵用原料406が撹拌されることにより、発酵用原料406が好適に発酵し、発酵熱を発生する。
【0080】
コンポスト400の撹拌槽403の内壁に、図6(c)に示すように、発電素子層407を設けることにより、発酵用原料406が発酵熱を発生する際に、発電素子層407の発電素子によって発電を行うことができる。
【0081】
以上のように、被発酵物となる発酵用原料406を発酵させるための発酵槽となる撹拌槽403の内壁に発電素子を設置することにより、発酵熱を利用した発酵を行うことができる。
【0082】
なお、発酵槽の内壁に発電素子を設置する場合は、発酵槽の内側に発電素子を設置する態様としてもよいし、発酵槽の外側に発電素子を設置する態様としてもよい。発酵槽の内側に発電素子を設置する場合は、発電素子が発酵熱を受けやすくなり、発電効率が高くなる傾向にある。発酵槽の外側に発電素子を設置する場合は、発電素子に接続する導線等の配線が容易になる傾向にある。
【0083】
また、発電素子層407に用いる発電素子は、耐食材料で封止することが好ましい。耐食材料で発電素子を封止することにより、発電素子の劣化等を防止することができる。
【0084】
発電素子を封止するための耐食材料は、特に限定されないが、例えば、プラスチックや金属合金など、種々の材料が挙げられる。
【0085】
発電素子によって発電した電力は、コンポスト400における撹拌のための電力等として用いることができる。また、発電素子によって発電した電力は、蓄電用のバッテリーを備えることにより、蓄電することができる。発電素子による発電量が少ない場合は、コンポスト400にバッテリーから電力を供給する態様としてもよい。また、発電素子またはバッテリーからコンポスト400に供給される電力量が少ない場合は、コンポスト400に外部電源から電力を供給する態様としてもよい。以上のような構成とすることにより、従来よりも少ない電力で発酵用原料の発酵を行うことができるようになるため、堆肥製造の省エネルギー化を実現することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 正極(正極板)
2 p型半導体層
3 強誘電体層
4 n型半導体層
5 負極(負極板)
10 発電素子
11 基材
12、14、16 発電素子
13、15、17 接着剤
100 発電シート
102 発電素子
105 導線
106 温度センサ
110 蓄電装置
120 被発酵物
300 堆肥製造装置
310 原料容器
311 発酵用原料
318 発電素子層
320 撹拌容器
325 発電素子層
330 堆肥容器
331 堆肥
334 発電素子層
340 堆肥製品
400 コンポスト
406 発酵用原料
407 発電素子層
図1
図2
図3
図4
図5
図6