(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-214050(P2016-214050A)
(43)【公開日】2016年12月15日
(54)【発明の名称】熱発電装置
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20161118BHJP
H02K 35/02 20060101ALI20161118BHJP
【FI】
H02N11/00 A
H02K35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-106838(P2015-106838)
(22)【出願日】2015年5月8日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】515143050
【氏名又は名称】株式会社あぴろーど
(72)【発明者】
【氏名】山本 宏
(57)【要約】
【課題】 自励振動ヒートパイプが受熱状態にある時、自励的に発生する振動エネルギーを利用して熱の輸送と同時に発電が可能な熱発電装置を提供する。
【解決手段】 作動液体、気体、および、永久磁石20が封入された自励振動ヒートパイプ1の少なくとも一部にコイル30を備え、前記永久磁石20が前記コイル30を通過する際に、前記コイル30に生じる電気エネルギーを取り出す手段を設けることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動液体、気体、および、永久磁石が封入された自励振動ヒートパイプであって、前記自励振動ヒートパイプの一端が受熱状態に有り、他端が放熱状態にあるときに前記作動液体、前記気体、および前記永久磁石を作動させる前記自励振動ヒートパイプと、前記自励振動ヒートパイプの少なくとも一部にコイルと、前記永久磁石が前記コイルを通過する際に、前記コイルに生じる電気エネルギーを取り出す手段と、を具備することを特徴とする熱発電装置。
【請求項2】
前記受熱部と前記放熱部とを接続する連通部に設けられ、前記永久磁石の動きを規制する機能を有するストッパー部を、前記永久磁石の受熱部側、もしくは、放熱部側の少なくともどちらか一方に備えることを特徴とする請求項1に記載の熱発電装置。
【請求項3】
前記受熱部と前記放熱部とを接続する連通部において前記永久磁石の前記受熱部側と前記放熱部側に前記永久磁石と同一の極性同士が向き合うように反転用永久磁石を設置したことを特徴とする請求項1に記載の熱発電装置。
【請求項4】
前記自励振動ヒートパイプ中に封入した前記永久磁石の径は金属細管の内径より小さく、かつ径方向断面の形状に相似形の外形と一定の厚みを有するもの、もしくは、球状であって、前記金属細管中を容易に運動でき、かつ、1個もしくは、複数個を連結、もしくは、磁力の反発力による離間状態で使用することを特徴とする請求項1に記載の熱発電装置。
【請求項5】
前記自励振動ヒートパイプの前記永久磁石の表面が樹脂、セラミックス、あるいは金属等のコーティングが施されたことを特徴とする請求項1〜4の少なくともいずれか1項記載の熱発電装置。
【請求項6】
請求項1に記載の前記コイルは、前記自励振動ヒートパイプの外周部、あるいは、前記連通部を形成する複数の前記金属細管を束ねた金属細管群の外周部、あるいは、すべての前記金属細管を束ねた金属細管群の外周部、のいずれかに少なくとも1カ所設置されていることを特徴とする請求項1に記載の熱発電装置。
【請求項7】
請求項1、および、請求項6に記載の前記電気回路部であって、前記コイルに生じる電気エネルギー、すなわち、交流電流を直流電流に変換する整流回路と、前記直流電流を平滑化する平滑回路と、前記平滑化された直流電流を変圧する変圧回路、および、発生した電流を充電する充電回路とから構成される電気回路部を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自励振動ヒートパイプを用いた熱発電装置に関する。熱の効率的な移動と同時に発電が可能な装置を実現し、これまで有効に利用されずに環境中に放出されていた低温排熱の高度利用を可能にする。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱の発生源から熱を移動させ、支障の無いところで放出する、あるいは、熱を必要とする場所まで移動させるための高効率デバイスとしての自励振動ヒートパイプに関してはさまざまな考案がなされてきた。
【0003】
しかし、自励振動ヒートパイプの振動エネルギーを利用した発電技術に関しては少数の考案がなされているに過ぎない。また、それらの考案は後述のように装置が大型、複雑で、高コストなものになる、あるいは、複雑な微細加工が必要であるがきわめて微小な発電量しか得られないという欠点を有している。
【0004】
ここで、自励振動ヒートパイプとは、細管(主として金属)が受熱部と放熱部の間で複数回往復するように、かつ、ループ状になるように配列され、気相と液相の二相の作動液体(熱媒体)が封入されていることを特徴とするヒートパイプである。自励振動ヒートパイプは熱媒体の振動流によって熱媒体が輸送されるため、高効率、自由度の大きな取り付け姿勢等の特徴を有する。
【0005】
細管内に封入されている液相と気相とからなる熱媒体は受熱部に熱が加えられると液相からの核沸騰が生じ、断続的な圧力振動が発生する。一方、放熱部では、気相の凝集が起こり、核沸騰による気泡の急激な発生と瞬断により、圧力波が伝播する。この圧力波は細管内のすべての蒸気泡群に弾性的かつ間欠的圧縮作用を及ぼすことにより、作動流体の振動を起こす。
【0006】
同時に、気泡の発生と凝集による熱媒体の循環が起こる。この液相熱媒体の受放熱による顕熱輸送と、気相熱媒体による潜熱輸送の効果によって、従来の毛細管力を用いたヒートパイプと比べて格段に高い熱輸送能力を持っている。この自励振動ヒートパイプが動作中に生じる振動エネルギーを利用して発電する技術については、これまでにいくつかの提案がなされている。
【0007】
特許文献1には、自励振動ヒートパイプの作動液として電磁流体を封入し、振動により生じたエネルギーを、パイプの外部に設置したコイルと磁石により、鎖交磁束を変化させることにより発電を行っている。
【0008】
特許文献2では、自励振動ヒートパイプが設置されている基板に圧電体を張り付け、自励振動ヒートパイプの動作中に基板に伝わる振動エネルギーを電気に変換する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−034233号公報
【特許文献2】特開2009−290960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では装置の大型化、複雑化、および材料単価の高額化や装置単価に見合った発電量が得られない等の問題がある。
【0011】
特許文献1では、自励振動ヒートパイプの作動液として導電性流体や強磁性超微粒子等の電磁流体を用いる事例が示されている。何れの場合も、自励振動ヒートパイプを挟み込む形で一定の体積を有するコイルを設置し、さらに、パイプとコイルを挟み込む形で磁石を設置するため、磁石の大型化、ひいては装置全体の大型化が避けられない。さらに、発生する電力が電磁流体の体積に依存するため、小型化による発電効率の低下が著しいという問題がある。
【0012】
導電性流体として例示されている金属ナトリウムを用いた場合、沸騰が発生する温度が500℃から1000℃と高温であるため、500℃以下の熱源には適用が不可能で、現在最も嘱望されている低温排熱の有効利用は不可能となる。また、用いる材料にも著しい制限が生じ、極めて高コストの装置になるという問題が生じる。
【0013】
また、例示されている高濃度のマグネタイト超微粒子は磁石の間を通過する際に磁化され、N極とS極に分極し、磁石とヒートパイプの間に設置されたコイルに誘導電流が生起する仕組みであるが、強磁性超微粒子が磁化され、分極すると同時に異なる極性の超微粒子同士が強固に結合して凝集し、作動液としての機能が大幅に低下する可能性が高いという欠点を有する。
【0014】
さらに、パイプに電極を組み込むため、パイプと電極を絶縁する必要が生じ、複雑なパイプ構造になり製造工程が煩雑で高コストになることが避けられない。
【0015】
特許文献2では、自励振動ヒートパイプの動作時に生じる振動エネルギーを圧電素子により電気に変換する装置が示されている。ヒートパイプを保持基板に設置し、保持基板に密接して圧電素子を取り付けることにより、ヒートパイプ内に生じた振動エネルギーが取り付け基板を介して圧電素子に伝わり電気に変換する仕組みである。
【0016】
しかし、ヒートパイプ内で生じた振動エネルギーを直接利用するのでは無く、基板を介して間接的に利用するため、エネルギーの利用効率が悪く、μwattレベルの極めて微少な電力が得られるに過ぎず、限定された用途にしか対応できないという問題がある。
【0017】
また、圧電素子に半導体技術を駆使して、微細加工を施すため、製造工程が煩雑になるうえ、得られる電力が極めて微少であるため、発電コストが高く、応用範囲が限定されるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前述の問題点をすべて解消する、単純な構成かつ低コストの熱発電デバイスに関するものである。具体的には、非磁性で熱伝導性の良好な金属細管に液相と気相の熱媒体、および、永久磁石を封入し、パイプの外周部にコイルを設置した極めて単純な構造の自励振動ヒートパイプであって、熱の効率的な移動と同時に発電が可能な熱発電装置に関するものである。
【0019】
作動液として、熱源に最適な物質を選択できるため、自励振動ヒートパイプとしての特性を何ら損なうこと無く、効率的な熱輸送と同時に持続的な発電が可能で、これまで利用の進まなかった150℃以下の低温熱源の高度利用に道を拓くものである。
【0020】
図1の基本構成図に示す様に、ヒートパイプ内に生じた振動エネルギーにより作動液と作動液中に浮遊した状態の永久磁石が作動液と共に振動して、パイプ内を往復運動し、あるいは、逆支弁を設けて一方向に周回させて、ヒートパイプの外周部に設置されたコイル部分を通過する際に電磁誘導によりコイルに生じる電流を利用するシンプルな構造であり、装置が熱源から受熱状態にある限り発電が可能な、低コストの熱発電装置である。
【0021】
コイルはパイプに直接巻き付けて作製できるため、特許文献1に例示されているような大型で複雑な装置と異なり、従来の自励振動ヒートパイプと外観上は殆ど変わりない、小型で単純な構成の装置である。
【発明の効果】
【0022】
自励振動ヒートパイプは熱の発生源から余分な熱を吸収し、支障の無い所で放出する、あるいは、熱を必要とする所へ効率的に輸送するデバイスである。本来、非常に可能性に満ちたデバイスであるにもかかわらず、これまで、ゲーム機専用パソコンの電源部で大量に発生する熱の放熱、冷却以外に主たる用途が見出されていなかった。
【0023】
本発明は自励振動ヒートパイプの本来の特徴である熱の効率的な輸送を活かしつつ、発電の機能を付加し、応用範囲の拡大を実現するものである。特に、これまで利用されずに大気中に放散されていた150℃以下の低温排熱を利用した発電に新たな道を開くものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図3】磁石をパイプ内に設置したストッパー部の概略図
【
図4】磁石をパイプ外に設置したストッパー部の概略図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の最適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。ただし、以下の説明において特に断らない限り、方向や向きに関する記述は、当該発明の便宜上、図面に対応するものであり、例えば実施品、製品または権利範囲等を限定するものではない。
【0026】
図1は本発明の基本構成図を示す。自励振動ヒートパイプ1は熱伝導に優れかつ非磁性の金属材料(例えば、銅やアルミニウムの金属細管)で構成されている。金属パイプの注入口(図示してはいない)から永久磁石20を挿入した後、排気口(図示してはいない)から高真空に排気し、次いで適切な量の液相と気相の熱媒体を導入し、封止する。通常、液相の熱媒体が一部気化したものが気相の熱媒体に相当する。熱媒体には、熱源の温度と用途に応じて幅広い選択が可能である。
【0027】
永久磁石20は小型で高性能の永久磁石が市販されており、それらを目的に応じて適宜選択可能である。また、目的に合わせて作製することも可能である。本実施例では磁石の外側をポリイミド樹脂でコーティングした外径1mm、厚み3mmのネオジム磁石を用いた。
【0028】
ヒートパイプ1の一端が受熱部2で受熱状態に置かれ、他端が放熱部3で放熱状態に置かれると、ヒートパイプ1にはヒートパイプの高音部11とヒートパイプの低温部12が生起し、ヒートパイプ内に生じた振動エネルギーにより作動液と共に浮遊状態の永久磁石20が振動し、ヒートパイプの作動条件に応じてヒートパイプの一定区間内を往復運動し、あるいは、ヒートパイプ全体にわたって一方向に周回運動し、ヒートパイプの外周部に設置されたコイル30部分を通過する際に電磁誘導によりコイル30には電流が発生する。
【0029】
コイル30は一本の銅線で所定の長さで所定の巻き数になるように形成され、ヒートパイプ1の連通部10の外周部の所定の位置に固定される。あるいは、外周部の所定の位置に直接コイルを形成しても良い。コイルの両端は、コイルに生じた電流を利用するための
図6に示す整流回路40、平滑回路41、変圧回路42、充電部43からなる回路部が接続され電源として利用可能となる。
【0030】
コイルと金属細管は電気的に絶縁する必要があるため、コイルに用いる銅線はテフロン樹脂で代表されるような各種の絶縁物を被覆した銅線を用いる。実施例以外にも、さまざまな絶縁方法があり、コイル設置部分の金属細管の外周部にあらかじめアルミナ等のセラミックス管を外挿して固定し、アルミナ管の外周部にコイルを固定しても良い。絶縁材料としては熱源の温度に応じて最適な材料を選択することが可能である。
【0031】
次に本発明の主要な構成要素であるストッパーの実施例と効果について
図2を参照して説明する。
図2では受熱部2と放熱部3とを接続する連通部10に設けられ、前記作動液体の運動を妨げること無く永久磁石20の動きを規制する機能を有するストッパー部が示されている。このストッパー部は、連通部10の所定の位置に、塑性加工により、三角錐状凹部14や半球状凹部15のような成型を施すことにより形成される。
【0032】
両方を同一の形状、あるいは異なる形状の組み合わせで用いても良い。あるいは1カ所のみのストッパー部の設置にあってはどちらか一方のみを用いても良い。両方に設けた場合は、両ストッパー間で永久磁石20が往復運動することにより逆支弁の機能を付加することが出来ると同時に、永久磁石を効率的に往復運動させ、コイルを通過する頻度を高めて発電効率を上げることができる。しかし、片側のみの設置であっても永久磁石20の運動を規制し、コイルを通過する頻度を高めると同時に熱媒体の受熱部への逆流防止効果を発現させる効果がある。
【0033】
次に磁石の反発力を利用したストッパー部の実施例と効果について
図3を参照して説明する。
図3は永久磁石を細管内に組み込んだストッパー部を示す。連通部10を形成する細管の一部に細管の内径と同一の内径を有するリング状の永久磁石21と22を、浮遊する永久磁石20と同一の極性同士が向き合うように設置する。こうすることにより磁力の反発力によって永久磁石20の運動の向きが転換され、2つのリング状永久磁石21、22からなるストッパー間で効率的な往復運動が可能となる。
図3の実施例では永久磁石20のS極に対峙して外側端面がN極に、内側端面がS極に着磁されたリング状永久磁石21が、永久磁石20のN極に対峙して外側端面がS極に、内側端面がN極に着磁されたリング状永久磁石22が配置されている。
【0034】
リング状永久磁石21、22を組み込むには、リング状磁石を嵌入しうる大きさの径と肉厚を有する細管13を用い、嵌入孔を形成したのちにリング状磁石21、22を嵌入し、金属細管を挿入したのちに所定の方法で、溶着する。
【0035】
なお、
図2のストッパーでは永久磁石20はストッパー14、あるいは、15に衝突し、衝撃を受けるために、長期的に衝撃を受け続けた場合、摩耗や損傷を生じる可能性がある。しかし、
図3に示す実施例においては磁力による非接触の反転効果により機械的な接触や衝撃は生じないためより長寿命の動作が可能となる。
【0036】
図4に磁力の反発力を利用した別の形態のストッパー示す。本実施例では金属細管の外径よりも大きい内径を有するリング状永久磁石23,24が金属細管の外側に挿入され、所定の位置に固定されたストッパー部が図示されている。
【0037】
永久磁石20のS極に対峙してリング状永久磁石23の外側端面がN極に、内側端面がS極に着磁されており、永久磁石20のN極に対峙してリング状永久磁石24の外側端面がS極に、内側端面がN極に着磁されている。このため、永久磁石20は2つのリング状永久磁石の間を非接触で往復運動を行い効率良く発電を行うことが可能となる。また、リング状永久磁石は金属細管の曲げ加工前にコイルの設置数量に応じた数量を金属細管の外側に外挿でき任意の位置で固定することによりストッパーとすることができ、自由度の大きな設計が低コストで可能となる。
【0038】
次に、本発明に用いる磁石について説明する。前記ヒートパイプ中を浮遊する永久磁石20は、径が金属細管の内径より小さく、径方向断面の形状に相似形の外形と一定の厚みを有するもの、もしくは、球状であって、前記金属細管中を容易に運動できるかぎり、各種の材料からなる多様な永久磁石を必要に応じて選択可能である。
【0039】
熱発電装置1台につき、1個もしくは、複数個を用いても、1つのストッパー部に1個もしくは複数個の永久磁石を用いても良い。複数個を用いる場合は磁石の異なる極性同士を向き合わせて連結状態のままで使用しても良い。あるいは、同一極性同士を向き合わせて磁力の反発力による離間状態で使用しても良い。発電効率の観点からは離間状態で用いることがより望ましい。
【0040】
本発明に用いる永久磁石はできる限り磁束密度が高く、強い磁力を有することが望ましい。また、各種の作動液体に曝されること、激しい振動や衝撃に耐えること、広い温度範囲の受熱環境におかれることを勘案すると化学的に安定で、優れた機械的強度が必要となる。このため、永久磁石20の外表面に何らかの保護膜を形成することが望ましい。本実施例では、磁石の外側をポリイミド樹脂でコーティングした外径1mm、厚み2mmのネオジム磁石を用いている。
【0041】
表面保護膜としては前記実施例にとどまらず、エポキシ樹脂、シリコンラバー等の樹脂やタングステンカーバイドや窒化チタン等のセラミックス薄膜、ニッケル、モリブデン、タングステン等の金属薄膜を各種の方法により形成したものであっても良い。
【0042】
機械的な衝撃を緩和する方法として、薄膜形成以外にも、一定の厚みを有する樹脂や各種の緩衝材を永久磁石の外表面に貼り付け、あるいは、包み込むようにしても良い。
【0043】
次にコイルを設置する方法について説明する。コイル30は一本の銅線で所定の長さで所定の巻き数になるように形成され、ヒートパイプ1の連通部10の外周部の所定の位置に固定される。コイルの両端は、コイルに生じた電流を利用するための
図6に示す整流回路40、平滑回路41、変圧回路42、充電部43からなる回路部が接続され電源として利用可能となる。
【0044】
実施例で図示してあるのはすべて1つのコイルのみであるが用途に応じてさまざまな変形が可能である。例えば、
図1に示すようにヒートパイプ全体で1個のみのコイルを設置しても良い。逆に、すべての連通部に1個、あるいは、複数個のコイルを設置して発電の効率を図っても良い。
【0045】
連通部にコイルを設置する空間的な余裕が無い場合には、前記連通部を形成する複数の前記金属細管を束ねた金属細管群の外周部、あるいは、すべての前記金属細管を束ねた金属細管群の外周部、のいずれかに少なくとも1カ所、あるいは複数個のコイルを設置しても良い。
図5では2本の金属細管を束ねるようにしてコイル31を、6本の金属細管を束ねるようにしてコイル32を形成した例を図示している。
図5では図示していないが、コイル設置部分にはこれまでに詳述した、永久磁石、ストッパー等が設けられていることは言うまでもない。
【0046】
通常ではコイル設置が不可能な形状のヒートパイプに対しても本発明は有効となる。一定の厚みを有する金属板、例えば、アルミニウム板に機械加工を施し、細溝をループ状に彫り込んだ後に、同じ材質の平板を上蓋として所定の方法により接着した平板型の自励振動ヒートパイプ(いわゆるヒートレーン)では形成した各細管にコイルを付与することは不可能であるが、ヒートパイプを形成する平板全体を周回するようにコイルを形成することは容易であり、あらゆる形状の自励振動ヒートパイプに有効な方法となる。
【0047】
コイル30、31および32に生じる電気エネルギーは直流の状態で利用されるのが一般的である。本実施例では、得られた交流電流を直流電流に変換する整流回路40と、得られた直流電流を平滑化する平滑回路41と、前記平滑化された直流電流を変圧する変圧回路42、および、発生した電流を充電する充電回路43とから構成される電気回路部を備えて各種の用途に供することが可能となる。
【0048】
各回路は詳細には述べないが、用途により各種の変形が可能である。充電回路も各種のコンデンサーや蓄電池を用いることが可能で用途や発電量に応じて最適なデバイスを選択可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 ヒートパイプ
2 受熱部
3 放熱部
10 連通部
11 ヒートパイプの高温部
12 ヒートパイプの低温部
13 リング状磁石を組み込んだ細管
14 三角錐状凹部のストッパー部
15 半球状凹部のストッパー部
20 永久磁石
21 パイプ内設置リング状永久磁石
22 パイプ内設置リング状永久磁石
23 パイプ外周部設置永久磁石
24 パイプ外周部設置永久磁石
30 コイル
31 コイル(2本の細管を周回)
32 コイル(6本の細管を周回)
40 整流回路
41 平滑回路
42 変圧回路
43 充電回路