【解決手段】本開示の出力測定装置用アダプタセットは、出力測定装置用アダプタと、磁石と、磁石を覆うように出力測定装置用アダプタを包装する包装体とを有する。出力測定装置用アダプタは、開口および凹部を有する本体部と、開口を介して本体部に挿入される係止部材とを有する。係止部材は、本体部に挿入された状態において本体部の外側に位置し、かつ、間隙を介して開口に対向する突出部を有する。磁石は、本体部の凹部内に配置される。包装体は、第1の方向に沿って本体部の外周を覆うフィルム本体を有する。フィルム本体は、第1の方向に沿って形成された開裂案内線と、開裂案内線によって区画される第1および第2の領域とを有する。第1の領域は、突出部と開口との間に配置される領域を含む。
開口および凹部を有する本体部と、前記開口を介して前記本体部に挿入される係止部材であって、前記本体部に挿入された状態において前記本体部の外側に位置し、かつ、間隙を介して前記開口に対向する突出部を有する係止部材とを有する出力測定装置用アダプタと、
前記凹部内に配置された磁石と、
前記磁石を覆うように前記出力測定装置用アダプタを包装する包装体と、
を備え、
前記本体部は、第1端、第2端および前記第1端と前記第2端とを結ぶ側面を有する胴体部と、光の強度を測定する出力測定装置と接続する接続部であって、前記第1端に位置する接続部とを有し、
前記胴体部は、前記側面に前記開口および前記凹部を有し、かつ、前記開口に連通する内部空間を有し、
前記係止部材は、前記開口を介して前記胴体部に挿入されることによって前記本体部に結合され、
前記包装体は、第1の方向に沿って前記本体部の外周を覆うフィルム本体を有し、
前記フィルム本体は、前記第1の方向に沿って形成された第1の開裂案内線と、前記第1の開裂案内線によって区画される第1の領域および第2の領域とを有し、
前記第1の領域は、前記突出部と前記開口との間に配置される領域を含む出力測定装置用アダプタセット。
前記フィルム本体は、前記開口と重ならない位置に、前記第2の方向に沿って形成された第2の開裂案内線を有する、請求項1から5のいずれかに記載の出力測定装置用アダプタセット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述したように、キャリブレーションを実施する際には、光の強度を測定する出力測定装置に、光ファイバーからの出射光が入射される。その際、光ファイバーを保持するためのアダプタを出力測定装置に接続することがある。光ファイバーをアダプタ内に挿入することにより、光ファイバーが保持される。以下では、出力測定装置に対して光ファイバーを一時的に保持するために用いられるアダプタを出力測定装置用アダプタと呼ぶ。このような出力測定装置用アダプタを用いることにより、レーザー治療装置の使用者が光ファイバーを手で保持することなく、光ファイバーの先端を出力測定装置に対して一時的に固定することができる。出力測定装置用アダプタを使用すると、出力測定装置用アダプタ本体内における光ファイバーの位置を一定に保ち得るので、光の出力をより正確に測定し得る。
【0011】
上述したように、キャリブレーション終了後は、施術のために出力測定装置用アダプタから光ファイバーが引き抜かれる。したがって、光ファイバーを出力測定装置用アダプタ内に固定できる一方で、その固定状態を容易に解除できると有益である。医療現場では、一般的に、施術を実施する者(医師など)は、ゴム手袋を着用している。ゴム手袋の着用の有無にかかわらず、簡易な操作で出力測定装置用アダプタに対する光ファイバーの固定を解除できると有益である。
【0012】
本開示の一態様の概要は、以下の通りである。
【0013】
[項目1]
開口および凹部を有する本体部と、開口を介して本体部に挿入される係止部材であって、本体部に挿入された状態において本体部の外側に位置し、かつ、間隙を介して開口に対向する突出部を有する係止部材とを有する出力測定装置用アダプタと、凹部内に配置された磁石と、磁石を覆うように出力測定装置用アダプタを包装する包装体とを備え、本体部は、第1端、第2端および第1端と第2端とを結ぶ側面を有する胴体部と、光の強度を測定する出力測定装置と接続する接続部であって、第1端に位置する接続部とを有し、胴体部は、側面に開口および凹部を有し、かつ、開口に連通する内部空間を有し、係止部材は、開口を介して胴体部に挿入されることによって本体部に結合され、包装体は、第1の方向に沿って本体部の外周を覆うフィルム本体を有し、フィルム本体は、第1の方向に沿って形成された第1の開裂案内線と、第1の開裂案内線によって区画される第1の領域および第2の領域とを有し、第1の領域は、突出部と開口との間に配置される領域を含む出力測定装置用アダプタセット。
【0014】
項目1の構成によれば、磁力を利用してレーザー治療装置などの筐体に出力測定装置用アダプタセットを一時的に取り付け得る。
【0015】
[項目2]
第1の開裂案内線は、窓部を含み、係止部材の突出部と窓部とは、第1端と第2端とを結ぶ第2の方向に沿って並んでおり、窓部における第1の方向に沿った幅は、突出部における第1の方向に沿った幅よりも大きい、項目1に記載の出力測定装置用アダプタセット。
【0016】
項目2の構成によれば、フィルム本体における第1の領域と第2の領域とを第1の開裂案内線に沿ってより確実に分離し得る。
【0017】
[項目3]
窓部の外形は、第1の方向に沿って延びる直線部分と、直線部分の両端を結ぶ曲線部分とを含み、直線部分および第1の開裂案内線は、直線部分の両端において接続されている、項目2に記載の出力測定装置用アダプタセット。
【0018】
項目3の構成によれば、第1の開裂案内線に沿って形成された切れ目をより確実に窓部に接続し得る。
【0019】
[項目4]
本体部は、胴体部の第2端に、弾性材料から構成された保持部を有し、保持部は、胴体部の第2端に向かって第2の方向に沿って延びるスリットを有する、項目1から3のいずれかに記載の出力測定装置用アダプタセット。
【0020】
項目4の構成によれば、光ファイバーをスリットに挟んで保持し得る。
【0021】
[項目5]
包装体は、フィルム本体の表面に表示された、出力測定装置用アダプタセットの取り扱い方法に関するインストラクションを含み、インストラクションは、青色で表示されている、項目1から4のいずれかに記載の出力測定装置用アダプタセット。
【0022】
項目5の構成によれば、出力測定装置用アダプタセットの誤使用を防止し得る。
【0023】
[項目6]
フィルム本体は、開口と重ならない位置に、第2の方向に沿って形成された第2の開裂案内線を有する、項目1から5のいずれかに記載の出力測定装置用アダプタセット。
【0024】
項目6の構成によれば、第1の開裂案内線に沿ってフィルム本体をより容易に切断し得る。
【0025】
[項目7]
胴体部の内部に挿入された光ファイバーを更に備え、光ファイバーは、胴体部の内部空間において、係止部材の先端によって保持されている、項目1から6のいずれかに記載の出力測定装置用アダプタセット。
【0026】
項目7の構成によれば、本体部に対する光ファイバーの固定の解除が容易である。
【0027】
[項目8]
光線力学的治療法に用いられる、項目1から7のいずれかに記載の出力測定装置用アダプタセット。
【0028】
以下、図面を参照しながら本開示の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的または具体的な例を示す。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、あくまでも一例である。本明細書において説明される種々の態様は、矛盾が生じない限り互いに組み合わせることが可能である。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本開示の出力測定装置用アダプタセットの一例を示す。
図1に示す出力測定装置用アダプタセット100は、出力測定装置用アダプタ1と、出力測定装置用アダプタ1を包装する包装体3とを備える。なお、
図1においては図示されていないが、出力測定装置用アダプタセット100は、出力測定装置用アダプタ1と包装体3との間に配置された磁石を有している。後述するように、この磁石は、包装体3によって出力測定装置用アダプタ1に固定される。
【0030】
図示する例では、出力測定装置用アダプタ1の内部に光ファイバー2が挿入されている。出力測定装置用アダプタ1は、光ファイバー2を一時的に固定できるような構成を有する。後に図面を参照して詳しく説明するように、出力測定装置用アダプタ1は、アダプタ本体4と、アダプタ本体4に対して着脱自在に構成された係止部材5とを含む。アダプタ本体4に取り付けられた係止部材5は、アダプタ本体4から光ファイバー2が脱落しないように光ファイバー2を保持する。
【0031】
アダプタ本体4は、光ファイバー2の軸に沿って互いに対向する第1端Pおよび第2端Qを含む胴体部6と、胴体部6の第1端Pに位置する接続部7とを有する。胴体部6は、第1端Pと第2端Qとを結ぶ側面を有する。
図1に例示する構成では、包装体3は、胴体部6の側面を覆っている。図示するように、包装体3には、胴体部6の第1端Pと第2端Qとを結ぶ方向とは異なる第1の方向に沿って延びる開裂案内線(tear line)14が形成されている。包装体3の構成の詳細は、後述する。
図1に例示する構成では、アダプタ本体4は、胴体部6の第2端Qに接続された、チューブ形状を有する保持部9をさらに有している。この例では、保持部9を介して、光ファイバー2がアダプタ本体4内に挿入されている。
【0032】
出力測定装置用アダプタセット100は、例えば光線力学的治療法における、レーザー光を出射するレーザー治療装置本体のキャリブレーションに用いられ得る。
図2は、光線力学的治療法用のレーザー出力装置のキャリブレーションに出力測定装置用アダプタセット100を適用した例を示す。ここでは、レーザー出力装置と出力測定装置とが一体となっている装置におけるキャリブレーションを例示する。
図2に示すレーザー出力装置20は、レーザー光の出力端子22と、レーザー光の強度の測定のための測定端子24とをその前面に有している。
【0033】
レーザー出力装置20のキャリブレーションに際し、まず、出力測定装置用アダプタセット100を用意する。出力測定装置用アダプタセット100は、出力測定装置用アダプタ1に光ファイバー2の一端が接続された状態で、施術の実施される室内(例えば処置室または手術室)に持ち込まれ得る。典型的には、出力測定装置用アダプタセット100は、ガンマ線照射などによって予め滅菌されている。
【0034】
次に、出力測定装置用アダプタ1のアダプタ本体4に設けられた先端部8(
図1参照)を、レーザー出力装置20の測定端子24の内部に挿入する。先端部8を測定端子24の内部に挿入することにより、出力測定装置用アダプタセット100がレーザー出力装置20に固定される。出力測定装置用アダプタセット100がレーザー出力装置20に固定されることにより、出力測定装置用アダプタ1に接続された光ファイバー2が、測定端子24内の出力測定装置に光学的に結合される。次に、光ファイバー2の他端をレーザー出力装置20の出力端子22に接続する。光ファイバー2は、出力測定装置用アダプタ1に接続されていない側の端部に、レーザー出力装置20の出力端子22との接続のためのコネクタを有し得る。この例では、光ファイバー2の他端に取り付られたコネクタ2cを介して、光ファイバー2が出力端子22内のレーザー出力装置に光学的に結合される。測定端子24に対する光ファイバー2の接続および出力端子22に対する光ファイバー2の接続の順序は任意である。
【0035】
その後、レーザー出力装置20からレーザー光を出力すると、測定端子24へ光ファイバー2を通してレーザー光が入射する。出力測定装置20は、入射したレーザー光の強度を測定する。このように、レーザー出力装置20、光ファイバー2および出力測定装置が光学的に結合された状態でキャリブレーションが実行される。
【0036】
キャリブレーションの実施後、出力測定装置20から出力測定装置用アダプタセット100を取り外す。このとき、コネクタ2cが取り付けられている方の光ファイバー2の端部は、出力端子22に接続されたままでよい。出力測定装置20から出力測定装置用アダプタセット100を取り外した後、後述する手順により、出力測定装置用アダプタ1のアダプタ本体4から係止部材5(
図1参照)を取り外す。アダプタ本体4から係止部材5を取り外すことにより、出力測定装置用アダプタ1に対する光ファイバー2の固定が解除される。光ファイバー2の固定を解除した後、出力測定装置用アダプタ1の内部から光ファイバー2の端部を引き抜き、光ファイバー2を用いて施術を行う。
【0037】
このように、予め光ファイバー2が出力測定装置用アダプタ1内に挿入された状態の出力測定装置用アダプタセット100を出力測定装置に接続すれば、キャリブレーションの際、出力測定装置の使用者が光ファイバー2を手で保持する必要がない。したがって、本開示の実施形態によれば、光プローブの取り扱いのしやすさが向上し得る。
【0038】
以下、図面を参照しながら、出力測定装置用アダプタセット100の構造の詳細を説明する。
【0039】
図3および
図4は、出力測定装置用アダプタセット100の外観の一例を示す。参考のため、
図3および
図4には、互いに直交するx軸、y軸およびz軸が示されている。以下の説明において、他の図にもx軸、y軸またはz軸を示すことがある。
【0040】
(出力測定装置用アダプタのアダプタ本体)
図1を参照して説明したように、出力測定装置用アダプタセット100における出力測定装置用アダプタ1は、アダプタ本体4と、アダプタ本体4から取り外し可能な係止部材5とを含む。アダプタ本体4は、胴体部6と、胴体部6の第1端P側に設けられた、出力測定装置と接続する接続部7とを有する。なお、光の強度を測定する出力測定装置と出力測定装置用アダプタ1との間の接続の方法は特定の方法に限定されない。例えば、爪と孔との嵌合、ねじを用いた結合などを適用し得る。
【0041】
胴体部6および接続部7は、内部に光ファイバー2を挿入できる内部空間を有する。胴体部6の第2端Q側には不図示の貫通孔が設けられており、光ファイバー2はこの貫通孔から胴体部6の内部空間に挿入される。
図3および
図4に例示する構成では、接続部7は、胴体部6と一体成形された部分と、先端部8とを有する。この例では、先端部8は、円錐台形状を有している。光ファイバー2は、その先端が先端部8の先端付近に達するようにアダプタ本体4に挿入される。
【0042】
先端部8は、少なくとも、出力測定装置用アダプタセット100が用いられるレーザー出力装置から出射されるレーザー光を透過可能な材料から形成される。先端部8を構成する材料の例は、ポリスチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリフェニルサルホン(Polyphenylsulfone)、ポリアミド(例えばナイロン)、ポリカーボネートなどである。例えばポリスチレンおよびポリプロピレンなど、ガンマ線滅菌が可能な材料を用いて接続部7(ここでは、先端部8と、接続部7のうち胴体部6に一体成形された部分)が構成されていると、ガンマ線照射によって出力測定装置用アダプタセット100を滅菌し得るので有益である。
【0043】
胴体部6は、第1端Pと第2端Qとを結ぶ側面を有する。
図3および
図4に例示する構成において、胴体部6の形状は、概ね四角柱である。すなわち、ここでは、光ファイバー2の軸に垂直な面(yz面)で切断したときにおける、胴体部6の側面の断面形状は、概ね四角形であり、胴体部6の側面は、上面、底面、正面および背面を含んでいる。
図3および
図4は、出力測定装置用アダプタセット100の上面図および正面図にそれぞれ相当する。なお、「上面」、「底面」、「正面」および「背面」の用語は、胴体部6に含まれる面を区別するために便宜的に用いられており、出力測定装置用アダプタセット100の姿勢を限定する意図ではない。
【0044】
胴体部6は、その側面に、胴体部6の内部空間に連通する開口16を有する。この例では、開口16は、胴体部6の上面に設けられている。出力測定装置用アダプタ1の係止部材5は、この開口16を介して胴体部6に挿入される。これにより、アダプタ本体4に対して係止部材5が結合される。この係止部材5は、アダプタ本体4(ここでは胴体部6)に対して着脱可能に構成されている。
【0045】
また、胴体部6は、その側面に凹部18を有する。ここでは、凹部18は、胴体部6の底面に設けられている。
図4に示すように、この凹部18内には、磁石30が配置されている。包装体3は、凹部18内に配置された磁石30を覆うようにして出力測定装置用アダプタ1を覆っている。そのため、通常、出力測定装置用アダプタ1に包装体3が取り付けられた状態においては、磁石30は、出力測定装置用アダプタ1の外部からは観察されない。磁石30の機能は、後述する。
【0046】
胴体部6は、例えば樹脂から形成される。胴体部6を構成する材料は、接続部7を構成する材料と共通であってもよいし、接続部7を構成する材料と異なっていてもよい。ガンマ線滅菌が可能な材料から胴体部6が構成されていると、ガンマ線照射によって出力測定装置用アダプタセット100を滅菌し得るので有益である。
【0047】
図3および
図4に示すように、アダプタ本体4は、胴体部6の第2端Q側に設けられた貫通孔と接続する保持部9を有し得る。ここで説明する例では、保持部9は、チューブ形状を有している。本明細書中において、「チューブ形状」は、円筒形状に限定されない。「チューブ形状」は、軸に垂直な断面で切断したときの輪郭が多角形状、不定形状などである形状を広く含む。
【0048】
保持部9は、例えばゴムなどの弾性材料から構成される。本明細書において、「弾性材料」とは、国際ゴム硬さが40IRHD以上60IRHD以下である材料を意味する。国際ゴム硬さは、JIS K 6253:2012に準拠した測定方法によって測定する。保持部3は、ポリウレタン、シリコーン(silicone)、エチレンプロピレンゴム、スチレンーブタジエンゴム、ニトリルゴムまたはラテックスゴムなどから形成され得る。ポリウレタン、シリコーン(silicone)、エチレンプロピレンゴム、スチレンーブタジエンゴム、ニトリルゴムおよびラテックスゴムは、ガンマ線滅菌が可能な材料である。保持部9は、弾性材料以外の材料から構成された部分を含んでいてもよい。保持部9は、接続部7および胴体部6を構成する材料とは異なる材料から形成されていてもよい。保持部9は、光ファイバー2の急峻な折れ曲がりを防止する。
【0049】
出力測定装置用アダプタ1に接続される光ファイバー2には、レーザー光の導光に適した種々の光ファイバーを使用できる。例えば、光ファイバー2は、シングルモードまたはマルチモード光ファイバーであってもよいし、グレーデッドインデックス型ポリマー光ファイバー(GI・POF)、バンドルファイバーなどであってもよい。光ファイバー2のコアの直径に特に制限はなく、例えば、400μm程度である。光ファイバー2は、ガンマ線による滅菌処理が可能なタイプであってもよい。
【0050】
(出力測定装置用アダプタの係止部材)
係止部材5は、開口16を介して胴体部6に挿入されることによって出力測定装置用アダプタのアダプタ本体4に結合される。係止部材5は、アダプタ本体4の胴体部6に挿入された状態においてアダプタ本体4の外側に位置する突出部13を有する。
図4に示すように、係止部材5がアダプタ本体4に挿入された状態においては、突出部13の下面(胴体部6の上面に対向する面)と、胴体部6に設けられた開口16との間に、間隙dが形成されている。別の言い方をすれば、突出部13は、間隙dを介して開口16に対向する。また、
図3および
図4からわかるように、係止部材5がアダプタ本体4に挿入された状態においては、包装体3の少なくとも一部が、突出部13の下面と開口16との間に配置されている。
【0051】
胴体部6の上面の法線方向から見たときにおける突出部13の形状は、例えば長方形状である(
図3参照)。もちろん、突出部13の形状は、
図3に示す形状に限定されない。
図4に示すように、突出部13は、平板形状であり得る。つまり、突出部13の表面(下面と反対側の面)は平坦であり得る。ただし、突出部13の表面の形状は、
図4に示す形状に限定されず、例えば凹凸を有する形状であってもよいし、丸みを有する形状であってもよい。係止部材6の形状の詳細、および、係止部材6を用いて光ファイバー2を出力測定装置用アダプタ1内部に固定する方法は、後述する。
【0052】
係止部材5を構成する材料は、接続部7を構成する材料または胴体部6を構成する材料と同様であり得る。ガンマ線滅菌が可能な材料から係止部材5が構成されていると、ガンマ線照射によって出力測定装置用アダプタセット100を滅菌し得るので有益である。
【0053】
(包装体)
出力測定装置用アダプタ1を包装する包装体3は、出力測定装置用アダプタ1のアダプタ本体4の外表面を覆うフィルム本体3bを有する。
図3および
図4に例示する構成において、フィルム本体3bは、胴体部6の柱状形状の周方向に沿って胴体部6の外周を覆っている。
【0054】
フィルム本体3bは、典型的には、チューブ形状を有する。フィルム本体3bの形状は、アダプタ本体4の外周を覆うことができる形状であればよく、チューブ形状に限定されない。チューブ形状の軸に沿った長さも特定の長さに限定されない。フィルム本体3bがチューブ形状を有する場合における、チューブ形状の軸に垂直な面で切断したときの断面形状も特定の形状に限定されず、例えば、円、多角形などであり得る。
【0055】
フィルム本体3bは、チューブ形状の周方向に沿って形成された第1の開裂案内線14を有する。したがって、第1の開裂案内線14に沿って容易にフィルム本体3bを切断し得る。本明細書における「開裂案内線」は、フィルム本体における切り取りの方向(フィルム本体の裂ける方向といってもよい。)を規制する機能を有する構造を広く含む。例えば、第1の開裂案内線14は、小孔の配列から形成されたミシン目(perforation)であり得る。第1の開裂案内線14の具体的な態様はミシン目に限定されず、切り取りの方向に沿って、他の部分よりも薄い部分(溝)を設けてもよい。例えば、第1の開裂案内線14は、フィルム本体3bの厚さ方向に沿って表面から途中までに入れられた切れ込みであってもよい。このような切れ込みは、例えば、所定の形状の刃を有する型、レーザー、熱を用いて形成することができる。フィルム本体3bにおける切り取りの方向に沿って、フィルム本体3bよりも高い強度を有するリボンを配置してもよい。ここで説明する例では、第1の開裂案内線14は、直線状のミシン目の形で形成されている。また、この例では、第1の開裂案内線14は、フィルム本体3bの表面と裏面とを結ぶ半円形状の窓部(開口)14wを含んでいる(
図3参照)。
【0056】
図5は、
図3および
図4に示すフィルム本体3bの展開図である。
図5は、胴体部6の第1端Pと第2端Qとを結ぶ方向(
図3および
図4に示すx軸方向)に沿って切断されることによって切り開かれた状態のフィルム本体3bを示している。説明の便宜のため、
図5には、アダプタ本体4に係止部材5が挿入された状態における突出部13も併せて図示されている。
【0057】
図示するように、フィルム本体3bは、第1の方向(ここでは胴体部6の周方向)に沿って延びるように形成された第1の開裂案内線14によって区画される2つの領域を有する。以下、第1の開裂案内線14によって区画される2つの領域のうち、アダプタ本体4の接続部7に近い方を第1の領域R1と呼び、保持部9に近い方を第2の領域R2と呼ぶ。
図3および
図4を参照して説明したように、包装体3の少なくとも一部は、突出部13の下面と開口16との間に位置する。
図5に示すように、ここでは、第1の領域R1は、突出部13に重なる部分を含んでいる。
【0058】
一方、この例では、第2の領域R2は、突出部13とは重なっていない。すなわち、この例では、第2の領域R2は、アダプタ本体4と突出部13との間には形成されていない。
図5に例示する構成では、突出部13の上面に対して垂直な方向から見たときに、第1の開裂案内線14は、突出部13と重ならない位置に形成されている。ここでは、第1の開裂案内線14は、突出部13の長方形状の4つの辺のうち、フィルム本体3bの上方に位置し、かつ、第1の方向に平行な辺Sdからわずかに外側に形成されている。例えば、第1の開裂案内線14は、辺Sdよりも約1mm程度外側に形成され得る。
【0059】
後に詳しく説明するように、包装体3が第1の開裂案内線14を有することにより、第1の開裂案内線14に沿って包装体3を切り取ることができる。これにより、フィルム本体3bのうち、第2の領域R2に対応する部分を胴体部6上に残した状態で、第1の領域R1に対応する部分を胴体部6から分離することができる。このとき、第1の領域R1が、突出部13と開口16との間に配置される領域を含んでいるので、第1の領域R1に対応する部分を持ち上げることにより、第1の領域R1に対応する部分とともに係止部材5を引き上げることができる。したがって、係止部材5をアダプタ本体4から簡単に引き抜くことができる。
【0060】
図5に例示する構成において、第1の開裂案内線14は、胴体部6の第1端Pと第2端Qとを結ぶ方向(ここではx軸方向)に沿って係止部材5の突出部13と並ぶように配置された窓部14wを含んでいる。この例では、窓部14wは、半円形状を有している。図示するように、窓部14wにおける第1の方向に沿った幅W1は、突出部13における第1の方向に沿った幅W2よりも大きい。
【0061】
このような窓部14wを第1の開裂案内線14の途中に設けておくと、胴体部6の全周にわたってフィルム本体3bを切断せずとも、フィルム本体3bの第1の領域R1と第2の領域R2とを分離できるので有益である。特に、係止部材5の突出部13の近傍に窓部14wを設けることにより、第1の開裂案内線14に沿ってフィルム本体3bを切断する際に、突出部13が干渉することによってフィルム本体3bが意図せぬ方向に向けて切断されたり、突出部13の近傍において第1の領域R1と第2の領域R2とを完全に分離できなかったりすることを防止し得る。つまり、フィルム本体3bへのこのような窓部14wの形成は、フィルム本体3bにおける第1の領域R1および第2の領域R2の分離をより容易にする。
【0062】
図5に示す例では、窓部14wの外形は、第1の方向に沿って延びる直線部分14sと、直線部分14sの両端に接続する曲線部分14tとを含んでいる。また、直線部分14sは、その両端において第1の開裂案内線14に接続されている。したがって、第1の開裂案内線14に沿ってフィルム本体3bを窓部14wに向けて切断する際、切れ目が直線部分14sの両端に到達すれば、フィルム本体3bの第1の領域R1と第2の領域R2とが分離される。すなわち、胴体部6の全周にわたってフィルム本体3bを切断する必要がない。なお、窓部14wの形状は、半円形状に限定されず、任意の形状であり得る。胴体部6の第1端Pと第2端Qとを結ぶ方向に沿って突出部13と並び、かつ、突出部13に重ならない位置に、突出部13よりも幅の大きな開口を形成しておけば同様の効果が得られる。
【0063】
図5に例示する構成では、フィルム本体3bは、胴体部6の底面側に、フィルム本体3bの周縁から接続部7(
図5に示すx軸の負方向)に向かって突出する半円形状のタブTを有している。ここでは、フィルム本体3bの長方形状の周縁とタブTの円弧上の周縁との接続点である肩部Tsを起点として、x軸方向に沿って延びる第2の開裂案内線15がフィルム本体3bに形成されている。
図5では、フィルム本体3bは、2本の第2の開裂案内線15aおよび15bを有している。これらの第2の開裂案内線15aおよび15bは、フィルム本体3bの周縁のうち、タブTが設けられた周縁とは反対側の周縁までは延びておらず、第2の開裂案内線15aおよび15bの終点は、フィルム本体3b内に位置する。タブTが胴体部6の底面側に設けられていることからわかるように、第2の開裂案内線15aおよび15bは、胴体部6の開口16(
図3参照)とは重ならない位置に設けられている。なお、この例では、第1の開裂案内線14は、第2の開裂案内線15aまたは15bと交わる位置から延びており、タブTを含む、2本の第2の開裂案内線15aおよび15bの間の領域には、第1の開裂案内線14は形成されていない。
【0064】
図5に示すフィルム本体3bを用いる場合、例えばキャリブレーションの終了後、タブTをつまみながら、タブTを第2の開裂案内線15aおよび15bの延びる方向に沿って引っ張ることができる。これにより、第2の開裂案内線15aおよび15bに沿ってフィルム本体3bを切ることができる。第2の開裂案内線15aおよび15bに沿ってフィルム本体3bを切ると、肩部Tsが角部として現れる。したがって、肩部Tsをつまみながら、フィルム本体3bを第1の開裂案内線14に沿って切ることができる。このように、タブTおよび第2の開裂案内線15を設けておくことにより、フィルム本体3bにおける第1の領域R1および第2の領域R2の分離がより容易になる。
【0065】
第2の開裂案内線15は、第1の開裂案内線14と同様に、ミシン目、切れ込みなどであり得る。なお、第2の開裂案内線15は、第1の開裂案内線14と異なる構成を有していてもよく、例えば、第1の開裂案内線14がミシン目であり、第2の開裂案内線15が切れ込みであってもよい。なお、第2の開裂案内線15がミシン目である場合、フィルム本体3bの外縁近傍にある小孔が、他の部分の小孔とは異なる形状を有していてもよい。例えば、フィルム本体3bの外縁近傍の小孔が、第2の開裂案内線15の延びる方向に長軸を有する長円形状であってもよい。このとき、フィルム本体3bの外縁近傍の小孔は、その一部のみがフィルム本体3bと重なるような配置を有していてもよい。言い換えれば、フィルム本体3bの外縁と小孔の輪郭が連続することにより、フィルム本体3bの端部にスリット状のノッチが形成されていてもよい。このように、フィルム本体3bの端部の形状をノッチ状とすることにより、第2の開裂案内線15の方向に沿った切断が容易になる。さらに、2以上の方向に沿って延伸を行うことにより、フィルム本体3bに第2の軸をもたせてもよい。すなわち、フィルム本体3bにおいて、第2の開裂案内線15の方向に切り取りが進みやすいように、延伸時の第2の軸方向を設定してもよい。
【0066】
なお、フィルム本体3bは、
図5に示すように、チューブ形状の軸方向(x軸方向)においてタブTとは反対側に、切り欠きCfを有し得る。切り欠きCfの輪郭は、典型的には、タブTの輪郭に整合する形状である。フィルム本体3bは、例えば、長尺のフィルム、または、ある軸方向に沿って延びる筒状を有するフィルムを一定の長さで切断することによって作製される。このような製造方法を採用する場合、切断部の形状を調整することにより、チューブ形状の端部にタブTを有する同一形状の複数のフィルム本体3bを容易に作製することができる。
【0067】
図5に示すように、フィルム本体3bの表面に、文字、図形、記号、または、これらの組み合わせなどから形成された表示3aが付与されていてもよい。表示3aは、出力測定装置用アダプタセット100の取り扱い方法に関するインストラクションであり得る。フィルム本体3bの表面に、出力測定装置用アダプタセット100の取り扱い方法に関するインストラクションを表示することにより、誤った使用方法のもとでの使用に起因する出力測定装置用アダプタセット100の破損および/または汚損の発生を抑制し得る。
【0068】
図5に例示する構成では、表示3aは、数字「1」とその下に描かれた図形、数字「2」とその下に描かれた台形、数字「3」とそれに隣接して描かれた矢印、および、数字「4」とそれに隣接して描かれた矢印を含む。これらは、キャリブレーション実施後における出力測定装置用アダプタセット100の取り扱い方法を示している。すなわち、数字「1」とその下に描かれた図形は、キャリブレーション実施後、まず、タブTをつまみながらタブTを図の下方に移動させることを示している(手順1)。これにより、
図6に示すように、第2の開裂案内線15aおよび15bに沿ってフィルム本体3bが切断され、タブTと第2の開裂案内線15aおよび15bに挟まれた領域を含むリボン状の部分がフィルム本体3bに形成される。数字「2」とその下に描かれた台形は、肩部Tsをつまみながら肩部Tsを図の左右にそれぞれ移動させることを示している(手順2)。これにより、
図7に示すように、第1の開裂案内線14に沿ってフィルム本体3bが切断される。切れ目が窓部14wに到達すると(
図5参照)、フィルム本体3bの第1の領域R1と第2の領域R2とが分離される。数字「3」とそれに隣接して描かれた矢印は、リボン状状の第1の領域R1を持ち上げ、係止部材5(固定ピン)を引き抜くことを示している(手順3、
図8参照)。後述するように、リボン状の第1の領域R1を持ち上げることにより、胴体部6から係止部材5が引き抜かれ、出力測定装置用アダプタ1に対する光ファイバー2の固定が解除される。数字「4」とそれに隣接して描かれた矢印は、胴体部6の第1端Pから第2端Qに向かう方向に沿って光ファイバー2をアダプタ本体4から引き抜くことを示している(手順4)。これにより、アダプタ本体4から光ファイバー2を分離することができる(
図9参照)。上記の手順1〜4は、出力測定装置用アダプタ1が出力測定装置に接続された状態で実行されてもよいし、出力測定装置用アダプタ1が出力測定装置から取り外された後に実行されてもよい。
【0069】
図5に示す例では、表示3aは、キャリブレーション後(パワーチェック後)にフィルムをめくることを示す説明文も含んでいる。
図5に示す例では、さらに、表示3aは、施術の途中においてキャリブレーションの必要が生じた際に参照できるように、施術途中におけるキャリブレーションの手順に関するインストラクションも含んでいる。ここでは、表示3aは、2つの円を含んでおり、一方の円の中に、光ファイバー2の端部を先端部8の先端に達するように光ファイバー2をアダプタ本体4に挿入することが示されている。他方の円の中には、保持部9に設けられたスリットに、光ファイバー2のうち保持部9の外側にある部分を挟むことにより、光ファイバー2を固定することが示されている。なお、保持部9にスリットが設けられた態様、および、そのような態様における施術途中のキャリブレーションの手順は実施の形態2として説明される。
【0070】
フィルム本体3b上の表示3aが青色であると有益である。本発明者らの検討によれば、表示3aの色が青色であると、ガンマ線の照射による変色を抑制し得る。したがって、表示が変色することに起因する表示内容の誤認識を防止し得る。また、変色が抑制された鮮明な表示を実現し得るので、表示が青色であることは、医師などの施術者は、表示内容を迅速に把握することが可能になる。したがって、迅速な処置を実現し得る。表示3aは、キャリブレーションの手順、出力測定装置用アダプタセット100の廃棄の手順などに関するインストラクションを含んでいてもよい。また、例えば、係止部材5および/または保持部9が青色であってもよい。なお、本明細書において、「青色」は、CIE 1931 xyY色空間における色度図上のxの値が0.3以下かつyの値が0.4以下である色を意味する。色度図上のxの値およびyの値は、色彩計または分光測色計を用いて測定し得る。
【0071】
フィルム本体3bは、熱により収縮する特性を持つ熱収縮性フィルムから構成され得る。熱収縮性フィルムは、樹脂フィルムをある軸方向に沿って延伸することにより得られる。このような熱収縮性フィルムは、上記の軸方向に沿っての引き裂きが容易である。したがって、第1の開裂案内線14の方向に沿って切り取りが進みやすいように延伸時の軸方向を設定してもよい。フィルム本体3bが熱収縮性フィルムから構成される場合、包装体3は、アダプタ本体4(ここでは胴体部6)を覆うようにして装着された後、加熱される。加熱により、熱収縮を利用してフィルム本体3bをアダプタ本体4に対してより密着させ得る。
【0072】
フィルム本体3bを構成する材料の例は、ポリオレフィン(polyolefin)、ポリスチレン(polystyrene)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリプロピレン(polypropylene)などである。これらは、ガンマ線滅菌が可能な材料である。特に、これらの中でもポリスチレンはガンマ線の照射による変色が起こりにくいので、フィルム本体3bがポリスチレンから形成されていると有益である。
【0073】
(磁石)
図10は、胴体部6の柱状形状の軸を含む平面(ここではzx面)で胴体部6を切断したときの断面を模式的に示す。
図10においては、胴体部6の上半分および光ファイバー2の図示は省略されている。図示するように、胴体部6は、その側面(ここでは底面)に凹部18を有しており、この凹部18内には、磁石30が配置されている。ここでは、磁石30のN極とS極を結ぶ方向は、胴体部6の上面と底面とを結ぶ方向(
図10中のz方向)に平行である。磁石30は、典型的には、胴体部6に接合されておらず、包装体3が出力測定装置用アダプタ1を覆うことにより、出力測定装置用アダプタ1に固定される。
【0074】
図11は、
図2に示す出力測定装置20の筐体に出力測定装置用アダプタセット100を取り付けた状態を示す。典型的には、出力測定装置の筐体は、少なくとも一部に鉄から構成された部分を有する。そのため、包装体3によって出力測定装置用アダプタ1に固定された磁石30を出力測定装置用アダプタセット100が有することにより、出力測定装置の筐体に出力測定装置用アダプタセット100を一時的に固定することが可能である。例えば
図2を参照して説明した出力測定装置20の筐体における上面および側面が鉄から構成されている場合、出力測定装置20の上面または側面に出力測定装置用アダプタセット100を取り付けることができる。したがって、例えば、キャリブレーションの終了後、光ファイバー2が引き抜かれた後のアダプタ本体4を出力測定装置20の上面または側面に一時的に取り付けておくことができる。これにより、アダプタ本体4の紛失を予防し得る。アダプタ本体4から引き抜かれた光ファイバー2の先端は、例えば内視鏡のバイオプシー用チャネル(または吸引用チャネル)に挿入され、照射対象に向けられる。
【0075】
フィルム本体3bは、鉄板などと比較して厚さが小さい。そのため、胴体部6の凹部18内に配置された磁石30を包装体3のフィルム本体3bによって胴体部6に固定することにより、例えば鉄板を用いて磁石30を胴体部6に固定した場合と比較して、より大きな吸着力が得られる。発明者らの検討によれば、厚さが50μmのポリスチレンフィルムを用いることにより、フィルム表面における磁束密度として100mTの値が得られている。厚さが1mmの鉄板に対する吸引力は、例えば0.40kgw程度であり得る。吸引力は、N極またはS極が鉄板に対向するようにして鉄板上に磁石を置き、鉄板の表面に垂直に磁石を引っ張ることによって鉄板から磁石を引き離すとき、磁石が鉄板から離れる瞬間における力の大きさを意味する。吸引力は、例えばフォースゲージを用いて測定し得る。
【0076】
典型的には、凹部18は、胴体部6においてフィルム本体3bの第2の領域R2(
図5参照)と重なる位置に設けられる。この場合、第1の開裂案内線14に沿ってフィルム本体3bを切ることによって第1の領域R1を除去しても、胴体部6から磁石30が脱落することはない。そのため、使用後の出力測定装置用アダプタセット100の処分が容易である。
【0077】
次に、
図12および
図13A〜
図13Cを参照しながら、係止部材6を用いた光ファイバー2の固定機構を説明する。
【0078】
図12は、出力測定装置用アダプタ1の内部を示す。
図12は、包装体3を取り外し、胴体部6と、胴体部6に一体成形されている接続部7の一部分とを示す断面図である。
図12は、アダプタ本体4の内部に挿入された光ファイバー2および係止部材5を併せて示している。なお、
図12は、胴体部6の底面に平行かつ光ファイバー2の軸を含む平面で胴体部6を切断したときにおける断面斜視図である。図示する例において、胴体部6および接続部7の内部には、胴体部6の長手方向に沿って中央に溝が形成されており、その溝に光ファイバー2が配置されている。典型的には、光ファイバー2は、軸に垂直な断面における形状が円である。光ファイバー2を配置するための溝の断面は、円の一部が欠損したC形の形状であり得る。
【0079】
光ファイバー2は、係止部材5と嵌合する嵌合用部材10を有し得る。嵌合用部材10は、例えばプラスチックから構成されている。嵌合用部材10のプラスチックの表面は、光ファイバー2の被覆を傷つけないような加工が施されていると有益である。嵌合用部材10は、光ファイバー2の周面の少なくとも一部を覆っている。嵌合用部材10は、係止部材5と嵌合する。この嵌合構造を以下にさらに詳しく説明する。
【0080】
図13Aは、係止部材5および光ファイバー2を拡大して示す。
図13Aに例示する構成において、嵌合用部材10には、凹部11が形成されている。この凹部11は、例えば、光ファイバー2の軸に垂直な断面において、光ファイバー2の直径方向に沿って対向する2箇所に形成されている。ここでは、係止部材5が挿入される方向および光ファイバー2の軸の両方に垂直な方向において嵌合用部材10の両側に、光ファイバー2の軸に沿った方向に一定の幅を持つ溝が、嵌合用部材10の上方から下方にわたって形成されている。これらの2つの溝のそれぞれは、光ファイバー2側に底面を有している。
【0081】
係止部材5は、互いに対向する少なくとも2本の脚部12を有し得る。この脚部12は、アダプタ本体4の内部に挿入される部分である。図示する例では、脚部12は互いに対向し、それぞれが直方体形状を有する。図示するように、脚部12は、突出部13と接続している。突出部13は、係止部材5をアダプタ本体4の内部へ挿入したときにアダプタ本体4の外部に配置される。上述したように、係止部材5は、胴体部6に設けられた開口16に挿入される。開口16は、例えば胴体部6の中央よりも接続部7側に設けられる。典型的には、開口16の面積は、突出部13の面積よりも小さい。したがって、脚部12は、開口16よりアダプタ本体4の内部へ挿入されることに対して、突出部13は、開口16を通過せずアダプタ本体4の外部に突出する。突出部13の上面から脚部12の先端までの長さの範囲は、典型的には、18mm〜23mmである。突出部13の上面から脚部12の先端までの長さは、21±2mmであり得る。
【0082】
典型的には、光ファイバー2の軸に沿った方向における凹部11の幅は、脚部12の幅よりもわずかに大きい。また、互いに対向する脚部12の間隔は、凹部11の底面間の距離よりも大きい。更に、対向する脚部12の間隔は、2つの凹部11の深さと凹部11の底面間の距離とを足し合わせた長さよりも小さい。このような構成とすることで、脚部12は、嵌合用部材10の上方から胴体部6内にスライドされることにより、凹部11を挟み込むことができる。
【0083】
このように、係止部材5の脚部12は、胴体部6の外表面に設けられた開口16を介して胴体部6に挿入される。係止部材5(典型的にはその先端)によって、光ファイバー2が胴体部6の内部空間において保持される。すなわち、係止部材5は、胴体部6に挿入された状態において光ファイバー2を保持する。
【0084】
図13Bおよび
図13Cは、出力測定装置用アダプタ1を光ファイバー2の軸に垂直な面(yz面)で切断したときの断面を示す。
図13Bおよび
図13Cにおいては、包装体3の図示が省略されている。
【0085】
図13Bは、アダプタ本体4へ係止部材5を挿入しはじめている状態を示す。
図13Bに示す状態においては、まだ嵌合用部材10の凹部11と係止部材5の脚部12とは嵌合していない。
図13Cは、嵌合用部材10の凹部11と係止部材5の脚部12とが嵌合した状態を示す。これらの図からわかるように、胴体部6に設けられた開口16を介して、脚部12が凹部11を挟むように係止部材5をアダプタ本体4の内部へ挿入することによって、嵌合用部材10と係止部材5とが嵌合され得る。これにより、光ファイバー2が係止部材5によって固定され得る。係止部材5をアダプタ本体4から外部へ引き抜けば、係止部材5と嵌合用部材10の固定状態が解除され、光ファイバー2をアダプタ本体4から引き出すことができる。
【0086】
図13Aに例示する構成において、係止部材5は、突出部13と2つの脚部との間に溝部19を有する。
図13Cに示すように、係止部材5において溝部19を介して対向する2つの面のうち、脚部12に近い側の面Ssは、典型的には、係止部材5が胴体部6に挿入された状態において胴体部6の上面(この例では開口16が設けられている面)と整合する。
【0087】
図13Cに示すように、突出部13は、係止部材5が胴体部6に挿入された状態において、間隙dを介して胴体部6の開口16と対向する。なお、
図13C中に示す間隙dは、あくまでも説明のために誇張して描かれており、実際の間隙の大きさを示すわけではない。なお、図示する例では、開口16と対向する突出部13の下面(面Ssと対向している面)は、典型的には、開口16の輪郭によって規定される平面と平行である。しかしながら、突出部13の配置はこの例に限定されない。突出部13の下面は、開口16の輪郭によって規定される平面と平行でなくともよい。なお、突出部13の下面は、典型的には、平坦である。
【0088】
図14Aは、出力測定装置用アダプタ1を突出部13の主面(突出部13の上面または下面であり、ここでは
図14Aに示す上面Su)に対して垂直な方向から見たときの上面図である。
図14Bは、
図14Aに対応する側断面図である。
図14Aに示すように、ここでは、第1の開裂案内線14は、突出部13の長方形状の辺Sdと平行に形成されている。図示するように、包装体3のフィルム本体3bの少なくとも一部は、突出部13と、胴体部6の開口16との間に配置される。ここでは、フィルム本体3bのうち、第1の領域R1における一部が、間隙d(
図13C参照)内に配置されている。
【0089】
図15は、係止部材5をアダプタ本体4から引き出すときの動作を説明するための図である。例えばキャリブレーションの終了後、第1の開裂案内線14に沿って包装体3を分断することにより、第1の領域R1と第2の領域R2とを分離する。フィルム本体3bが第1の開裂案内線14を有しているので、ハサミなどの道具を使用せずとも、所定の方向に沿って包装体3を分断することができる。上述したように、第1の領域R1は、突出部13と開口16との間に配置される領域を含んでいる。そのため、第1の開裂案内線14に沿って包装体3を切り取ると、第1の領域R1の一部は、溝部19内に残る。したがって、第1の領域R1(典型的にはリボン状)を持ち上げることによって係止部材5を持ち上げることができる(
図8を参照して説明した手順3)。これにより、胴体部6から係止部材5を容易に分離できる。すなわち、光ファイバー2の保持を容易に解除して、アダプタ本体4から光ファイバー2を引き出すことができる。なお、第1の領域R1によって安定して係止部材5を持ち上げる観点から、突出部13と重ならないような位置にフィルム本体3bにおける窓部14wを形成すると有益である。
【0090】
このように、本開示によれば、キャリブレーションの終了後、出力測定装置に対する光ファイバー2の保持を容易に解除できる。例えば医療現場では、出力測定装置用アダプタ1の使用者は、衛生管理のためゴム手袋を装着している場合が多い。出力測定装置用アダプタセット100が包装体3を備えることにより、ゴム手袋を装着していたとしても、包装体3を利用して係止部材5を胴体部6から容易に引き抜くことができる。また、係止部材5のうち、アダプタ本体4から突出している部分(ここでは突出部13)が小さい場合であっても、突出部13を直接指先でつまむ場合と比較して、係止部材5を胴体部6から簡単に引き抜くことができる。したがって、本開示によれば、例えば医療の現場など、素早く正確に作業することが求められる場面において、小さな部品を手作業で扱う場合であっても迅速な作業が可能になる。
【0091】
本開示の実施形態では、胴体部6を覆う第2の領域R2から分離された第1の領域R1をつまみながら係止部材5を引き抜く。そのため、出力測定装置用アダプタ1内における光ファイバー2の固定を解除する際に、係止部材5に直接触れる必要がない。したがって、出力測定装置用アダプタ1の汚染を抑制し得、施術の対象者(例えば患者)への感染リスクを低減し得る。
【0092】
(係止部材の変形例)
図16は、出力測定装置用アダプタセットに用いられる係止部材の変形例を示す。
図16に示す係止部材5aは、全体としてL字状であり、溝部19(
図15参照)を有しない。すなわち、
図16に示す係止部材5aは、互いに対向する2つの脚部12aと、脚部12aに対してほぼ垂直に接続された突出部13とを有する。
【0093】
図15に示す係止部材5のように、溝部19を有する係止部材5を使用する場合、胴体部6の開口16に係止部材5を挿入してから、例えば柱状形状を有する胴体部6の長手方向に沿ってフィルム本体3bをスライドさせれば、アダプタ本体4に包装体3を装着することができる。その後、必要に応じてフィルム本体3bを加熱することにより、フィルム本体3bを胴体部6に密着させる。
【0094】
これに対し、
図16に示す係止部材5aは、溝部19を有していない。そのため、アダプタ本体4に包装体3を装着してから、胴体部6の開口16に係止部材5aの脚部12aを挿入することができる。なお、胴体部6の開口16は、係止部材5aの脚部12aが挿入できる大きさであればよい。このような係止部材5aを用いる場合、フィルム本体3bの第1の領域R1は、開口16上に配置される領域を含み得る。このとき、突出部13は、フィルム本体3bの厚さと同じかフィルム本体3bの厚さよりも大きい間隙を介して開口16に対向する。
【0095】
図17は、係止部材5aをアダプタ本体4から引き出すときの動作を説明するための図である。係止部材5aを有する出力測定装置用アダプタセットも、
図15を参照して説明した使用例と同様に使用することができる。例えばキャリブレーションの終了後に、第1の開裂案内線14に沿って包装体3を分断することにより、第1の領域R1と第2の領域R2とを分離する。ここでは、第1の領域R1は、突出部13と重なる領域を含んでいるので、第1の開裂案内線14に沿って包装体3を切り取り、第1の領域R1を持ち上げることによって係止部材5aを持ち上げることができる。これにより、胴体部6から係止部材5aを容易に分離できる。
【0096】
(包装体の変形例)
図18Aおよび
図18Bは、包装体3が有するフィルム本体の他の一例を示す。
図18Bは、
図18Aに示すフィルム本体3baを上下反転させた状態を示している。
【0097】
図18Aおよび
図18Bに示すフィルム本体3baは、
図5を参照して説明したフィルム本体3bと同様に、チューブ形状の軸に沿ってチューブ形状の端部から突出するタブTaを有している。ここでは、タブTaの形状は台形である。図示する例では、タブTaの左右に、チューブ形状の軸に沿って延びる開裂案内線15aおよび15bが設けられている。ここでは、開裂案内線15aおよび15bは、フィルム本体3baの外縁から、第1の開裂案内線14を越えて延びている。
【0098】
図18Aおよび
図18Bに示すフィルム本体3baを用いる場合、例えばキャリブレーションの終了後、タブTaをつまみながら、タブTaを開裂案内線15aおよび15bの延びる方向に沿って引っ張ることができる。これにより、開裂案内線15aおよび15bに沿ってフィルム本体3baを切ることができる(
図6を参照して説明した手順1)。このとき、タブTaを切り取ってもよい。開裂案内線15aおよび15bに沿ってフィルム本体3baを切ることにより、開裂案内線15aを挟んでタブTaと連続していた部分、および、開裂案内線15bを挟んでタブTaと連続していた部分を指先でつまむことができる。これらの部分を指先でつまんで第1の開裂案内線14に沿って引っ張ることにより、第1の開裂案内線14に沿って包装体3を容易に第1の領域R1と第2の領域R2とに分割することができる(
図7を参照して説明した手順2)。
【0099】
フィルム本体3baを有する包装体3も、
図15を参照して説明した使用例と同様に使用できる。すなわち、第1の開裂案内線14に沿って包装体3を切り取り、第1の領域R1(典型的にはリボン状)を持ち上げることによって係止部材5を持ち上げることができる。したがって、光ファイバー2の保持を容易に解除することができる。
【0100】
包装体3は、胴体部6の長手方向に沿って接続部7とは反対側の端部から第1の開裂案内線14まで延びる第3の開裂案内線17を有していてもよい。このようにすると、第1の領域R1の分離後、第3の開裂案内線17に沿って包装体3を切り取ることにより、フィルム本体3baのうちの第2の領域R2に対応する部分をアダプタ本体4から簡単に取り外すことができる。すなわち、包装体3の交換が容易になる。また、胴体部6の凹部18に収容された磁石30(例えば
図10参照)をアダプタ本体4から取り出すことができるので、磁石30を他の部材と分別して廃棄または回収することができる。
【0101】
図18Aおよび
図18Bに示す例では、フィルム本体3baは、第1の開裂案内線14からフィルム本体3baの外縁まで延び、かつ第3の開裂案内線17と連続する開裂案内線17aをさらに有している。この開裂案内線17aは、第3の開裂案内線17と同じ方向に沿って延びるように形成されている。このような開裂案内線17aを設けておくことにより、第3の開裂案内線17に沿ってのフィルム本体3baの切り取りをより容易とできる。
【0102】
図19は、包装体3が有するフィルム本体のさらに他の一例を示す。
図19に示すフィルム本体3bbは、外縁から第1の開裂案内線14に向かって延びるスリットSLを有する。スリットSLの両側には、角部Tbが形成されている。スリットSLから第1の開裂案内線14に達する切れ込みなどをさらに形成しておいてもよい。このような切れ込みを設けておくことにより、フィルム本体3bbの外縁から第1の開裂案内線14に向けてのフィルム本体3bbの切り取りが容易になる。スリットSLに代えてノッチを設けてもよい。
【0103】
図19に例示する構成では、フィルム本体3bbは、第1の開裂案内線14からフィルム本体3bbの外縁まで延びる開裂案内線17をさらに有している。上述したように、包装体3におけるフィルム本体は、胴体部6を覆う。この開裂案内線17は、包装体3がアダプタ本体4に装着された状態において胴体部6の長手方向に沿って延びるように形成されている。開裂案内線17は、典型的には、フィルム本体3bbの端部のうち、包装体3がアダプタ本体4に装着された状態において接続部7とは反対側の端部にまで延びている。
【0104】
(実施の形態2)
図20は、本開示の出力測定装置用アダプタセットの他の一例を示す。
図20に示す出力測定装置用アダプタセット100Aは、出力測定装置用アダプタ1Aと、出力測定装置用アダプタ1Aを包装する包装体3とを備える。出力測定装置用アダプタ1Aのアダプタ本体4Aは、胴体部6の第1端Pと第2端Qとを結ぶ方向に沿って延びるスリット9sが設けられた保持部9Aを有する。スリット9sは、保持部9Aにおいて胴体部6の第2端Qから遠い方の端部から第2端Qに向かって延びている。
【0105】
スリット9sの幅は、光ファイバー2の直径と同じかやや小さい。そのため、スリット9sに光ファイバー2を挿入することにより、
図21に示すように、出力測定装置用アダプタ1Aのアダプタ本体4Aに光ファイバー2を一時的に固定することができる。このような態様によれば、アダプタ本体4から係止部材5を分離した後であっても、光ファイバー2をアダプタ本体4に固定することが可能である。したがって、施術中に再度キャリブレーションを実施する必要が生じても、アダプタ本体4Aを出力測定装置用アダプタとして使用することが可能である。施術中に再度キャリブレーションを実施する場合、光ファイバー2の先端を例えば内視鏡から引き出し、光ファイバー2の先端がアダプタ本体4Aの先端部8の先端付近に達するように、光ファイバー2の先端を保持部9A側からアダプタ本体4A内に挿入する。その後、光ファイバー2を保持部9Aのスリット9sに挟めば、光ファイバー2をアダプタ本体4Aに固定することができる。キャリブレーションの終了後は、光ファイバー2をスリット9sから外すことにより、アダプタ本体4Aに対する光ファイバー2の固定を容易に解除することができる。保持部9Aにおける、スリット9sの本数、位置および長さは、任意に設定可能である。
【0106】
また、
図22に示すように、光ファイバー2の先端付近を保持部9Aのスリット9sに保持させてもよい。保持部9Aがスリット9sを有するので、施術者は、アダプタ本体4Aを光ファイバー2のホルダーとして利用することが可能である。例えば、包装体3によってアダプタ本体4Aに保持された磁石30の磁力によってアダプタ本体4Aを出力測定装置の筐体に取り付け、
図21に示すように光ファイバー2の先端をスリット9sに挟んでもよい。このように、本開示の実施の形態2によれば、施術者は、光ファイバー2から一時的に手を離して他の作業を行うことが容易である。