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特開2016-214865編み合わされた折り畳み可能カテーテル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-214865(P2016-214865A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】編み合わされた折り畳み可能カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20161125BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61M25/00 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-99474(P2016-99474)
(22)【出願日】2016年5月18日
(31)【優先権主張番号】14/715,958
(32)【優先日】2015年5月19日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル−タル
(72)【発明者】
【氏名】アリエル・ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】エリカ・イブエリンヌ・ラブジョイ
(72)【発明者】
【氏名】デビー・エスター・ハイスミス
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ボッツァー
(72)【発明者】
【氏名】ロイー・ハイモビッヒ
【テーマコード(参考)】
4C160
4C167
【Fターム(参考)】
4C160KK04
4C160KK17
4C160MM33
4C167AA01
4C167BB02
4C167BB11
4C167BB26
4C167BB40
4C167BB42
4C167CC19
(57)【要約】
【課題】 カテーテルの遠位端を形成する。
【解決手段】 遠位端及び既定の外径を有するカテーテルからなる装置を提供する。この装置はまた複数の弾性フィラメントを含み、この各フィラメントが、それ自体に固定されている少なくとも1つの電極を有し、かつ、フィラメントをループとして保持するためのカテーテル遠位端内に固定される2つの端を有する。このループは、他のフィラメントの1つ又は2つ以上の他のループと相互に編み合わされ、これにより複数のフィラメントが開放格子を形成し、この開放格子は、非圧縮時に、カテーテルの外径の少なくとも5倍の大きさの格子直径になるまで拡張する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端及び既定の外径を有するカテーテルと、
複数の弾性フィラメントと、を含む装置であって、各フィラメントが、それ自体に固定されている少なくとも1つの電極を有し、かつ、前記フィラメントをループとして保持するために前記カテーテルの遠位端内に固定される2つの端を有し、前記ループは、他の前記フィラメントの1つ又は2つ以上の他のループと相互に編み合わされ、これにより前記複数のフィラメントが開放格子を形成し、該開放格子が、非圧縮時に、前記カテーテルの前記外径の少なくとも5倍の大きさの格子直径になるまで拡張する、装置。
【請求項2】
前記開放格子が圧縮されて、前記カテーテルの前記既定の外径に等しい直径を有する円筒内に収まる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
非圧縮時の前記開放格子が、仮想の球形の外被により囲まれるような寸法にされている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
非圧縮時の前記開放格子が、仮想の開放円錐形の外被により囲まれるような寸法にされている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
非圧縮時の前記開放格子が、前記相互に編み合わされたフィラメント間に開放空間を有し、該開放空間により画定される第1合計面積と前記フィラメントにより画定される第2合計面積との比が少なくとも5:1である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記各弾性フィラメントが、管腔を有するチューブを含み、前記少なくとも1つの電極が、前記管腔を通り抜ける導電性ワイヤに取り付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記格子の直径が、前記複数の弾性フィラメントの選択された部分間の最大距離を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
遠位端及び既定の外径を備えたカテーテルを提供することと、
複数の弾性フィラメントを、前記カテーテルの遠位端内に固定することと、を含む方法であって、各フィラメントが、それ自体に固定されている少なくとも1つの電極を有し、かつ、前記フィラメントをループとして保持するために前記カテーテルの遠位端内に固定される2つの端を有し、前記ループは、他の前記フィラメントの1つ又は2つ以上の他のループと相互に編み合わされ、これにより前記複数のフィラメントが、開放格子を形成し、該開放格子が、非圧縮時に、前記カテーテルの前記外径の少なくとも5倍の大きさの格子直径になるまで拡張する、方法。
【請求項9】
前記開放格子が圧縮されて、前記カテーテルの前記既定の外径に等しい直径を有する円筒内に収まる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
非圧縮時の前記開放格子が、仮想の球形の外被により囲まれるような寸法にされる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
非圧縮時の前記開放格子が、仮想の開放円錐形の外被により囲まれるような寸法にされる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
非圧縮時の前記開放格子が、前記相互に編み合わされたフィラメント間に開放空間を有し、該開放空間により画定される第1合計面積と前記フィラメントにより画定される第2合計面積との比が少なくとも5:1である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記各弾性フィラメントが、管腔を有するチューブを含み、前記少なくとも1つの電極が、前記管腔を通り抜ける導電性ワイヤに取り付けられている、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記格子の直径が、前記複数の弾性フィラメントの選択された部分間の最大距離を含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的にカテーテルに関し、具体的にはカテーテルの遠位端の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
アブレーションなどの心臓の医療処置中、アブレーションのためのエネルギーは、心臓に接触する電極を介して心臓に注入される高周波エネルギーであり得る。この電極、又はその他の電極は、心臓が拍動する際の信号を取得することにより、心臓の状態をモニターするのに使用することもできる。今日のアブレーション処置は通常、比較的多数の電極を同時に使用し、そのような電極は、バスケット、ペントアレイ(pent-array)又はラッソーカテーテルなどの特殊設計されたカテーテル内に提供され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態は、装置を提供するものであり、この装置は、
遠位端及び既定の外径を有するカテーテルと、
複数の弾性フィラメントと、を含み、この各フィラメントが、それ自体に固定されている少なくとも1つの電極を有し、かつ、フィラメントをループとして保持するためにカテーテルの遠位端内に固定される2つの端を有する。このループは、他のフィラメントの1つ又は2つ以上の他のループと相互に編み合わされ、これにより複数のフィラメントが開放格子を形成し、この開放格子は、非圧縮時に、カテーテルの外径の少なくとも5倍の大きさの格子直径になるまで拡張する。
【0004】
典型的に、この開放格子は圧縮されて、カテーテルの既定の外径に等しい直径を有する円筒内に収まる。
【0005】
本開示の一実施形態において、非圧縮時の開放格子は、仮想の球形の外被により囲まれるような寸法にされる。あるいは、非圧縮時の開放格子は、仮想の開放円錐形の外被により囲まれるような寸法にされる。
【0006】
本開示の更なる一実施形態において、非圧縮時の開放格子は、相互に編み合わされたフィラメント間に開放空間を有し、この開放空間により画定される第1合計面積とフィラメントにより画定される第2合計面積との比は少なくとも5:1である。
【0007】
本開示のまた更なる一実施形態において、各弾性フィラメントは、管腔を有するチューブからなり、少なくとも1つの電極が、この管腔を通り抜ける導電性ワイヤに取り付けられている。
【0008】
別の一実施形態において、格子の直径は、複数の弾性フィラメントの選択された部分間の最大距離を含む。
【0009】
本発明の一実施形態により、更に方法が提供され、この方法は、
遠位端及び既定の外径を備えたカテーテルを提供することと、
複数の弾性フィラメントを、カテーテルの遠位端内に固定することとを含み、この各フィラメントが、それ自体に固定されている少なくとも1つの電極を有し、かつ、フィラメントをループとして保持するためにカテーテルの遠位端内に固定される2つの端を有し、このループは、他のフィラメントの1つ又は2つ以上の他のループと相互に編み合わされ、これにより複数のフィラメントが、開放格子を形成し、この開放格子が、非圧縮時に、カテーテルの外径の少なくとも5倍の大きさの格子直径になるまで拡張する。
【0010】
本開示は、以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せて読むことで、より完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による、低侵襲性の医療システムの概略図である。
図2】本発明の実施形態による、プローブの遠位端の異なる概略図である。
図3】本発明の実施形態による、プローブの遠位端の異なる概略図である。
図4】本発明の実施形態による、プローブの遠位端の異なる概略図である。
図5】本発明の実施形態による、プローブの遠位端の異なる概略図である。
図6】本発明の実施形態による、プローブの遠位端の異なる概略図である。
図7】本発明の別の一実施形態による、非圧縮時の開放格子を示す2つの図である。
図8】本発明の別の一実施形態による、非圧縮時の開放格子を示す2つの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概説
ペントアレイ(pent-array)、ラッソー、又はバスケットカテーテルなどの多くのカテーテルは、心臓の壁に対して実施されるアブレーションなどの医療処置中に、心臓の壁の形状にぴったり一致するよう、心臓の壁に押し当てられ得る。加えて、これらのタイプのカテーテルは比較的鋭い領域(ペントアレイ又はラッソーカテーテルの場合はスプラインの端、バスケットカテーテルの場合はバスケットの遠位端)を有する。ペントアレイ又はラッソーカテーテルのように、開放端構造を備えたカテーテルの場合は、操作中にその形状を維持するのが難しい。(ペントアレイカテーテルの場合は、端が重なり合いやすい。ラッソーカテーテルの場合は、ラッソー端が他のラッソーと絡まりやすく、更に、これらの影響に対抗するために比較的大きな力が必要である。)これらのすべてのタイプのカテーテルについて、このような必要な力と鋭い領域の組み合わせは、上述のような医療処置中のカテーテルの使用中に、望ましくない結果をもたらし得る。
【0013】
本発明の実施形態は、これらの問題を両方とも克服する。複数の弾性フィラメントがカテーテルの遠位端に取り付けられており、各フィラメントには、取り付けられた少なくとも1つの電極がある。各フィラメントの両端はカテーテル内(典型的には遠位端の遠位先端内)に固定されており、これにより各フィラメントは、鋭い領域のないループを形成する。フィラメントにより形成されるループは、互いに編地状に相互に編み合わされ、これにより複数のフィラメントが開放格子を形成する。フィラメントの弾性により、この開放格子は圧縮形態又は非圧縮形態で存在することができる。
【0014】
圧縮形態においては、圧縮された開放格子を備えたカテーテルが、カテーテルの遠位端を所望の位置(典型的には心臓に対して実施される処置中の心臓内の望ましい位置)にガイドするためのシース内に挿入されていてよい。望ましい位置において、圧縮された開放格子がシースから出て、非圧縮状態になり、非圧縮形態の開放格子を形成する。
【0015】
非圧縮形態の開放格子は比較的大きく、カテーテルの遠位端の外径に比べて少なくとも5倍の大きさの格子直径を有し、これによって、格子の電極が、心臓の壁に接触することができる。しかしながらフィラメントに弾性があり、鋭い縁がないことにより、心臓に対する外傷が防止される。
【0016】
上述のように編地状にフィラメントのループを相互に編み合わせて互いに交差させることにより、ループで形成される非圧縮状態の開放格子が、その形状を維持することができる。
【0017】
システムの説明
ここで図1を参照すると、この図は、本発明の一実施形態による、低侵襲性の医療システム20の概略図である。システム20は、典型的には身体器官への医療処置中に使用され、本明細書の記載では、身体器官は、例として、心臓を含むと想定され、このシステムは、心内心電図(ECG)信号をサンプリングし、典型的には記録及び解析するよう適用される。しかしながら、システム20は、他の身体器官からの信号をサンプリングするよう適用され得ることが理解されるであろう。
【0018】
以下の説明は、システム20が、プローブ24を用いて心臓22から心内ECG信号を感知すると想定する。プローブ24は典型的に、カテーテルを含み、本明細書においてはカテーテル24とも称される。プローブの遠位端26は、被験者30の体内に挿入される。プローブの遠位端26は、下記に詳しく述べられるように、ECG信号を感知する複数の電極28を含む。プローブを心臓22に挿入する前に、シース34の遠位端が望ましい位置になるまで、被験者にシースを挿入しておくことができる。シースの遠位端が正しく配置されたら、プローブ24の遠位端26がシースの遠位端から出るよう、プローブをシース34内に挿入することができる。本明細書の記載では、ユーザー32は典型的に医療専門家であり、このシース及びプローブを挿入すると想定される。
【0019】
システム20は、ECGモジュール44と通信する処理ユニット42を備えるシステムプロセッサ40によって制御され得る。プロセッサ40は、典型的にはマウス又はトラックボールなどの位置指示デバイスを含む、オペレーティングコントロールを備える、コンソール50上に据え付けられてもよい。コンソール50はまた、例えばカテーテル24の近位端52など、システム20の他の要素に接続され得る。医療専門家32は、位置指示デバイスを用いてプロセッサと対話し、このプロセッサは、以下に説明するように、システム20によって生じた結果を医療専門家に画面54上で提示するために使用され得る。
【0020】
画面は、分析の結果及びECGモジュール44によるECG信号の処理を表示する。典型的には、得られたECG信号は、電位対時間グラフの形態で画面54上に提示され、このようなグラフの概略例60を図1に示す。しかしながら、得られたECG信号はまた、局所興奮時間(LAT)などの、ECG信号と関連付けられる他の結果を導出するために、プロセッサ40によって用いられてもよい。これらの結果は、典型的には、心臓22の内面の三次元(3D)マップ64の形態で画面54上に提示される。
【0021】
プロセッサ40は、プロセッサのメモリ内に記憶されたソフトウェアを用いてシステム20を操作する。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して、電子的形態でプロセッサ40にダウンロードされてもよいし、又は代替的若しくは追加的に、磁気メモリ、光メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体上に提供かつ/若しくは記憶されてもよい。
【0022】
プロセッサ40は典型的に他のモジュールを含み、例えばプローブ追跡モジュール、及びアブレーションモジュール(調節された電力を、1つ又は2つ以上の電極28、又は遠位端の他の1つ又は2つ以上の電極に提供する)を含む。簡単にするために、このようなモジュールは図1には示していない。Biosense Webster(Diamond Bar,CA)により製造されるCarto(登録商標)システムは、このようなモジュールを使用する。
【0023】
図2、3、4、5及び6は、本発明の実施形態による、プローブ24の遠位端26の異なる概略図である。図2は、シース34の遠位端から外に出る前の、又は再び収容された後の、プローブの遠位端を示す。図3は、シース34から外に出ている、又は再び収容されている時の、プローブの遠位端26を示す。図4及び5は、シース34から完全に外に出ている時のプローブの遠位端26を、2つの異なる方向で示している。図6は、遠位端26に取り付けられた単独ループの断面の模式図である。
【0024】
遠位端26は複数の可撓性の弾性フィラメント100を含み、各フィラメント100は典型的に、ニチノールチューブなどの導電性要素で形成されている。図6に示すように、各フィラメントは2つの末端102、104を有し、この両方ともカテーテル24の遠位端26(典型的には遠位端の先端110)に固定されており、これにより各フィラメントがループを形成している。カテーテルの遠位端26は外径dを有する。フィラメント100が導電性の場合、例えばニチノールで形成されている場合には、通常これは絶縁材料で覆われている。あるいは、フィラメント100は、絶縁材料から形成され得る。
【0025】
各フィラメント100は、そのフィラメントに固定された少なくとも1つの電極28を有する。フィラメントがチューブの形態である場合、導電性ワイヤ116は、フィラメント100が導電性の場合は絶縁されており、これがフィラメントの穴を通って電極に取り付けられていてよく、このワイヤはチューブの管腔内を通って供給されここを通り抜け(図6に図示)、カテーテル24の遠位端26及び近位端52を通ってコンソール50に至っていてよい。このようにして、電極により取得された信号は、プロセッサ49で解析することができる。あるいは、フィラメント100が管状でない場合は、ワイヤ116はフィラメントの外側に接着され得る。
【0026】
フィラメントは遠位端26に固定されており、これにより、各フィラメントが形成するループが相互に編み合わせられ、開放格子を形成する。開放格子のループは、編地状に配置されており、これにより互いに絡み合って交差し、かつ互いに対してスライドできるようになっている。構成要素フィラメントの弾性により、この開放格子は、図2に示すように、圧縮された開放格子118として、圧縮形態になり得る。フィラメントの開放格子はまた、非圧縮状態の開放格子120として、非圧縮形態にもなり得る。開放格子120の2つの図を、図4及び図5に示す。フィラメントが遠位端に固定されている場合、これらは、非圧縮状態の開放格子120が既定の形状を有するように配置され、この既定の形状は、仮想の外被内にフィットするような寸法にされる。開放格子120の場合、これは球形を有し、球形の仮想の外被124により囲まれ得る寸法にされる。
【0027】
非圧縮状態の開放格子120は、相互に編み合わされたフィラメント100で形成されており、これらの間には開放空間130がある(図4及び5)。一実施形態において、この開放空間の合計面積と、フィラメント100の合計面積との比は、少なくとも20:1であり、これらの面積は両方とも、仮想外被の中心からの投影により、外被表面に生成される、開放空間及びフィラメントの面積として画定される。他の実施形態において、この比は少なくとも5:1であり得る。
【0028】
非圧縮状態の開放格子120はまた、格子直径Dを有し、これは、格子を形成するフィラメント100の任意の2か所間の最大距離である。いくつかの実施形態において、格子直径Dはあるいは、非圧縮状態の開放格子を取り囲む寸法の仮想外被上の点間の最大距離と見なすことができ、よって、球形の仮想外被124の場合、格子直径Dは、外被124の直径に相当する。格子直径Dは、カテーテルの遠位端26の外径dの少なくとも5倍の大きさであり、典型的にはdの20倍以上の大きさである。
【0029】
上述のように、システム20を用いた典型的な心臓処置において、シース34が最初に挿入され、このシースの遠位端が心臓22に対して望ましい位置にされる。フィラメント100は圧縮されて、圧縮された開放格子118を形成し、これによりフィラメントがシース34に入ることができる。いくつかの実施形態において、圧縮された開放格子118は、遠位端26の外径と同じ直径dを有する円筒内に収まるほど十分に小さい。格子が圧縮形態である時、遠位端26とそれに取り付けられたフィラメントをシース内に押し込み、シースの奥まで達するようにすることができる。図2は、取り付けられたフィラメント100を備えた遠位端26がシース34内にある状態の模式図であり、図3は、フィラメントがシースから出た時の遠位端及びフィラメントの模式図である。
【0030】
フィラメント100は、シースから出ると圧縮から解放されて非圧縮状態になり、非圧縮状態の開放格子120を形成する。処置の終了時に、遠位端26を近位方向に引っ張ることができ、これによりフィラメント100がシースによって圧縮され、圧縮された開放格子118としてシース内に再び入る。
【0031】
図7及び8は、本発明の別の一実施形態による、非圧縮時の開放格子220を示す2つの図である。以下に記載の違いは別として、非圧縮状態の開放格子220は非圧縮状態の開放格子120(図4及び5)と概ね同様であり、両方の格子において、及び両方の図群において同じ参照番号で示されている要素の構造及び操作は概ね同様である。よって、格子220は、複数の相互に編み合わされたフィラメント100で形成され、各フィラメントは少なくとも1つの電極28を有する。各フィラメントは、フィラメントのそれぞれの端が遠位先端110に固定され、これにより各フィラメントがループ形状になっている。編み合わされたフィラメント100の間には空間130がある。
【0032】
しかしながら、非圧縮状態の開放格子120とは違って、非圧縮状態の開放格子220の既定の形状は、開いた手袋又は円錐形であり、格子220は円錐形の仮想外被224に取り囲まれた寸法になる。格子120と同様に、格子220は格子直径Dを有し、これは格子220を形成するフィラメント100の任意の2か所間の最大距離に等しい。あるいは、この格子直径は、外被224上の点間の最大距離と見なすことができる。格子120と同様に、非圧縮状態の開放格子220のフィラメント100は圧縮されて、圧縮された開放格子を形成し、これがシース34内に入ることができる。
【0033】
本発明の実施形態は、非圧縮状態の開放格子120及び220を参照して上述された具体的な形状以外に、他の形状も含むことが理解されよう。例えば、遠位先端110に固定されたフィラメント100で形成され、この全体が圧縮されてシース24内にフィットし得る他の非圧縮状態の開放格子は、楕円体又は放物面形状である。すべてのそのような開放格子は、本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0034】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に詳細に示し説明したものに限定されないことが認識されよう。むしろ、本発明の範囲には、上記で説明した様々な特徴の組み合わせ及び部分的な組み合わせ、並びに、上記の説明を読むことで当業者には想到されるであろう、従来技術には開示されていないそれらの変形例及び改変例が含まれるものである。
【0035】
〔実施の態様〕
(1) 遠位端及び既定の外径を有するカテーテルと、
複数の弾性フィラメントと、を含む装置であって、各フィラメントが、それ自体に固定されている少なくとも1つの電極を有し、かつ、前記フィラメントをループとして保持するために前記カテーテルの遠位端内に固定される2つの端を有し、前記ループは、他の前記フィラメントの1つ又は2つ以上の他のループと相互に編み合わされ、これにより前記複数のフィラメントが開放格子を形成し、該開放格子が、非圧縮時に、前記カテーテルの前記外径の少なくとも5倍の大きさの格子直径になるまで拡張する、装置。
(2) 前記開放格子が圧縮されて、前記カテーテルの前記既定の外径に等しい直径を有する円筒内に収まる、実施態様1に記載の装置。
(3) 非圧縮時の前記開放格子が、仮想の球形の外被により囲まれるような寸法にされている、実施態様1に記載の装置。
(4) 非圧縮時の前記開放格子が、仮想の開放円錐形の外被(virtual open conical envelope)により囲まれるような寸法にされている、実施態様1に記載の装置。
(5) 非圧縮時の前記開放格子が、前記相互に編み合わされたフィラメント間に開放空間を有し、該開放空間により画定される第1合計面積と前記フィラメントにより画定される第2合計面積との比が少なくとも5:1である、実施態様1に記載の装置。
【0036】
(6) 前記各弾性フィラメントが、管腔を有するチューブを含み、前記少なくとも1つの電極が、前記管腔を通り抜ける導電性ワイヤに取り付けられている、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記格子の直径が、前記複数の弾性フィラメントの選択された部分間の最大距離を含む、実施態様1に記載の装置。
(8) 遠位端及び既定の外径を備えたカテーテルを提供することと、
複数の弾性フィラメントを、前記カテーテルの遠位端内に固定することと、を含む方法であって、各フィラメントが、それ自体に固定されている少なくとも1つの電極を有し、かつ、前記フィラメントをループとして保持するために前記カテーテルの遠位端内に固定される2つの端を有し、前記ループは、他の前記フィラメントの1つ又は2つ以上の他のループと相互に編み合わされ、これにより前記複数のフィラメントが、開放格子を形成し、該開放格子が、非圧縮時に、前記カテーテルの前記外径の少なくとも5倍の大きさの格子直径になるまで拡張する、方法。
(9) 前記開放格子が圧縮されて、前記カテーテルの前記既定の外径に等しい直径を有する円筒内に収まる、実施態様8に記載の方法。
(10) 非圧縮時の前記開放格子が、仮想の球形の外被により囲まれるような寸法にされる、実施態様8に記載の方法。
【0037】
(11) 非圧縮時の前記開放格子が、仮想の開放円錐形の外被により囲まれるような寸法にされる、実施態様8に記載の方法。
(12) 非圧縮時の前記開放格子が、前記相互に編み合わされたフィラメント間に開放空間を有し、該開放空間により画定される第1合計面積と前記フィラメントにより画定される第2合計面積との比が少なくとも5:1である、実施態様8に記載の方法。
(13) 前記各弾性フィラメントが、管腔を有するチューブを含み、前記少なくとも1つの電極が、前記管腔を通り抜ける導電性ワイヤに取り付けられている、実施態様8に記載の方法。
(14) 前記格子の直径が、前記複数の弾性フィラメントの選択された部分間の最大距離を含む、実施態様8に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】
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