【解決手段】有底筒状のホワイトバランス調整具50にスコープ先端部10Tを挿入した撮影状態において、ホワイトバランス調整具50に挿入されたスコープ先端部10Tを位置決めする際に指標となるガイド枠を画面に表示する表示手段を備え、ホワイトバランス調整具50の内部底面の縁の画像が表示された状態で、オペレータがホワイトバランス調整を許可するため操作ボタンを入力操作することによって、ホワイトバランス調整処理が実行される。
有底筒状のホワイトバランス調整具にスコープ先端部を挿入した撮影状態において、前記ホワイトバランス調整具に挿入されたスコープ先端部を位置決めする際に指標となるガイド枠を画面に表示する表示手段を備え、
前記ホワイトバランス調整具の内部底面の縁の画像が表示された状態で、オペレータがホワイトバランス調整を許可するため操作ボタンを入力操作することにより、ホワイトバランス調整処理が実行されることを特徴とする内視鏡装置。
R,G,Bの画像信号成分がそれぞれ1:1:1となるようにR,G,Bゲイン値を設定するホワイトバランス調整処理手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡装置では、ホワイトバランス調整処理を行う際、筒状のホワイトバランス調整用具を使用する。ビデオスコープ先端部を調整用具内部に挿入し、白色である筒底面をカラー撮像する。R、G、Bの比が1:1:1となるようにゲイン値を設定する。
【0003】
ホワイトバランス調整具内部における光の照射範囲は、スコープ先端部と筒底面との距離に応じて変化する。底面とスコープ先端部が接近しすぎると筒底面の一部のみ照射し、大きく離れると、筒底面および筒側面両方を含めた照射範囲になる。反射光の光強度も距離間隔に応じて変化し、このことはホワイトバランス値に影響する。
【0004】
スコープ先端部と筒底面との距離間隔を適切な距離間隔に維持するため、例えばホワイトバランス調整具内部に、スコープ先端部位置決め機構が設けられる(特許文献1参照)。そこでは、筒内部に弾性の保持筒を設け、スコープ先端部を保持筒に接触固定させて位置決めする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スコープ先端部のサイズはその種類(観察対象器官)によって様々であり、適切な距離間隔もスコープによって異なる。そのため、様々なサイズのスコープを調整具内部の位置決め機構によってスコープ先端部を適切な位置に位置決めすることは難しい。
【0007】
また、スコープ先端部に設けられる撮像素子のサイズ(画素数)、対物レンズのパワーといった撮像特性によってもスコープ先端部の適切な位置は異なる。
【0008】
したがって、スコープ先端部の構造、サイズ等に関わらず、スコープ先端部を調整具内部の底面と適切な距離間隔で位置決めすることが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の内視鏡装置は、有底筒状のホワイトバランス調整具にスコープ先端部を挿入した撮影状態において、ホワイトバランス調整具に挿入されたスコープ先端部を位置決めする際に指標となるガイド枠を画面に表示する表示手段を備える。
【0010】
そして、ホワイトバランス調整具の内部底面の縁の画像が表示された状態で、オペレータがホワイトバランス調整を許可するため操作ボタンを入力操作することにより、ホワイトバランス調整処理が実行される。
【0011】
表示手段は、径方向に幅をもつガイド枠を表示することが可能である。
【0012】
また表示手段は、スコープ先端部に設けられた撮像素子のマスクサイズに応じたサイズをもつガイド枠を表示することが可能である。
【0013】
例えば、内視鏡装置は、R,G,Bの画像信号成分がそれぞれ1:1:1となるようにR,G,Bゲイン値を設定するホワイトバランス調整処理手段を備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、様々な種類のスコープに対し、適切なホワイトバランス調整を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照して本実施形態である電子内視鏡装置について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態である電子内視鏡装置のブロック図である。
【0018】
電子内視鏡装置は、その挿入部分が体内へ挿入されるビデオスコープ10と、プロセッサ30とを備え、ビデオスコープ10はプロセッサ30に着脱自在に接続される。プロセッサ30には、モニタ60が接続されている。
【0019】
プロセッサ30は、白色光を放射するランプ32を備え、ランプ32から放射された光は、集光光学系34を介して、ビデオスコープ10内に設けられたライトガイド12に入射する。ライトガイド12に入射した光は、絞り(図示せず)、配光レンズ14を介してスコープ先端部10Tから射出し、被写体(観察部位)に照射される。
【0020】
被写体で反射した光は、対物レンズ16によって結像し、CCD18の受光面に被写体像が形成される。CCD18の受光面上には、Cy、Ye、G、Mg、あるいはR、G、Bから成る色フィルタ要素をモザイク状に配列させた色フィルタ(図示せず)が配設されている。
【0021】
内視鏡観察中、1フィールド分の画素信号が所定時間間隔(NTSC方式の場合には1/60秒、PAL方式の場合には1/50秒)でCCD18から順次読み出される。読み出された1フィールド分の画素信号は、プロセッサ30の画像信号処理回路36へ順次送られる。
【0022】
画像信号処理回路36は、1フィールド分の画素信号に対し、ガンマ処理、ホワイトバランス処理、色変換処理、ノイズリダクション等などを施す。これにより、R、G、B画像信号が順次生成される。生成されたR、G、B画像信号は、メモリ38に一時的に格納された後、映像信号処理回路42を経てモニタ60へ送られる。
【0023】
システムコントロール回路40は、画像信号処理回路36、タイミングジェネレータ(図示せず)等へ制御信号を出力し、プロセッサ全体の動作を制御する。プロセッサ30のフロントパネルに設けられたホワイトバランス調整ボタン37が操作されると、ホワイトバランス調整具50を使ったホワイトバランス調整処理が実行可能となる。
【0024】
図2は、ホワイトバランス調整具50を示した側面図である。
図3は、ホワイトバランス調整具50の上から見た平面図である。
【0025】
ホワイトバランス調整具50は、スコープ先端部10Tが挿入可能な円筒状凹部50Oを設けた有底円筒体であり、内部底面50Bおよび内部側面50Cは白色にペイントされている。オペレータは、ホワイトバランス調整処理の間、スコープ先端部10Tをホワイトバランス調整具50内に入れて保持する。
【0026】
ホワイトバランス調整処理では、ホワイトバランス調整具50の内部底面50Bを被写体とする撮影が行われる。内部底面50Bを映し出す間、R、G、Bの画像信号成分がそれぞれ1:1:1となるようにR、G、Bゲイン値が設定される。
【0027】
R、G、Bゲイン値の設定(ホワイトバランス調整処理)終了後、オペレータは内視鏡観察を開始する。内視鏡作業中、画像信号処理回路36は、設定されたゲイン値に基いてホワイトバランス処理(ゲイン処理)を実行する。
【0028】
ホワイトバランス調整処理の間、オペレータはスコープ先端部10Tを適切な位置で保持しなければならない。スコープ先端部10Tと内部底面50Bとの適切な距離間隔Hは、モニタ60に表示されている映像によって維持される。以下では、スコープ先端部10Tの保持位置調整をアシストする画面表示について説明する。
【0029】
図4は、ホワイトバランス調整具内部を撮像したときの映像を示した図である。
図5は、スコープ先端部10Tが適切な位置にあるときの画面表示を示した図である。
図4、5を用いて、ホワイトバランス調整時の画面表示内容について説明する。
【0030】
図4(A)は、ホワイトバランス調整ボタン37を操作しないで撮影したときモニタ60の画面60Sに映し出される映像を示している。ホワイトバランス調整具50の内部底面50Bおよび内部側面50Cが白色であるため、モニタ60の画面60S全体が白色画像となる。
【0031】
その一方で、内部底面50Bの縁50Dが内部側面50Cとの境界線となるため、サークルライン状に縁の画像50Eが表示される。ただし、全体が白色画像であるため、視認は困難である。画面上におけるマスクMのサイズは、CCD18のマスクサイズに従う。マスクMの領域外は黒色画像となる。
【0032】
スコープ先端部10Tから照射される光は完全な平行光ではなく拡散光であり、スコープ先端部10Tと内部底面50Bとの距離によってその反射光の強度も異なる。したがって、ホワイトバランス調整具50の軸方向に沿って適切な位置でスコープ先端部10Tを保持し、そこでR、G、Bゲイン値を設定しなければ、不適切なホワイトバランス調整を行った観察画像を表示してしまう。
【0033】
そのため、ホワイトバランス調整具50の内部側面50Cにできるだけ照明光を照射せず、かつ、内部底面50B全体を照射可能なスコープ先端部10Tの位置を、適切なスコープ保持位置として定める必要がある。
【0034】
内部底面50B全体からの反射光がCCD18によって結像したとき、内部底面50Bの縁50Dを、撮像領域となるマスクMの両端にまで届くように画面に映し出される位置が適切なスコープ保持位置となっている。そこで、オペレータがこの適切な位置にスコープ先端部10Tを位置調整するための指標(ガイド)となる枠(以下、ガイド枠という)GFを画面表示する。
【0035】
ガイド枠GFは、内部底面50Bの縁50Dのサークル形状に合わせ、円状に形成されている。また、ガイド枠GFは径方向幅Jをもつ。径方向幅Jは、適宜カスタム調整することが可能である。
【0036】
一方、内部底面50Bの縁画像50Eは、上述したように視認困難であるため、縁の画像そのものを表示するのではなく、エッジ検出によって抽出される縁50Dを、円として標示する。すなわち、ガイド枠GFと対比できるようにマーキング表示、識別表示する。
【0037】
図4(C)には、エッジ検出に基いて描画された縁画像(以下、抽出縁画像という)SCが図示されている。抽出縁画像SCは、実質的に径方向幅をもたないサークルラインとして表示される。縁画像50Eからエッジを検出する方法としては、Hough変換がここでは適用される。
【0038】
さらに、ガイド枠GFと抽出縁画像SCとを画面上で比較し易くするため、マスクMの境界部分が画面から消去される。ここでは、有彩色検出方法によってマスクMを除去する。具体的には、ガイド枠GFおよび抽出縁画像SCをそれぞれ特定の色で描き、有彩色のエッジ部分以外を除去する。これにより、マスク境界部分およびマスク領域外が画面から消去される。
【0039】
したがって、ホワイトバランス調整ボタン37が押下されると、
図4(C)に示すように、抽出縁画像SCとガイド枠GFのみが画面表示される。抽出縁画像SCは、スコープ先端部10Tの位置がホワイトバランス調整具50の軸方向に沿って移動すると、その表示位置、サイズも変化する。オペレータは、抽出縁画像SCとガイド枠GFとを一致させるように、スコープ先端部10Tの位置を調整する。
【0040】
図5には、抽出縁画像SCが、径方向幅Jをもつガイド枠GFに収まっている画面を示している。抽出縁画像SCがガイド枠GFに収まるとき、スコープ先端部10Tが適正な位置にあるとみなすことができる。
【0041】
その一方で、エッジ検出によって描かれる抽出縁画像SCは、ノイズなどの影響によって必ずしも真円になるとは限らない。そこで、抽出縁画像SCとガイド枠GFとの一致度合いを計り、抽出縁画像SCの表示位置がガイド枠GFの表示位置に相応するとみなせる場合、適正位置にスコープ先端部10Tが保持されていると判断する。
【0042】
図6は、システムコントロール回路40によって実行されるホワイトバランス調整処理のフローチャートを示した図である。
図7は、
図6のステップS102のサブルーチンを示した図である。スコープ先端部10Tをホワイトバランス調整具50に挿入してホワイトバランス調整ボタン37が操作されると、処理が開始される。
【0043】
メモリ38に格納された撮影画像を取得した後(S101)、
図7に示すホワイトバランスチェック処理が行われる。まず、ガイド枠GFが表示されるとともに、エッジ検出によって内部底面50Bの縁50Dが検出され、抽出縁画像SCが表示される(S201、S202)。そして、有彩色検出によって他の画像部分を画面から除去し、ガイド枠GFと抽出縁画像SCのみが画面表示される(S203)。
【0044】
そして、ガイド枠GFと抽出縁画像SCとを照合するため、その一致度合いを表す整合率X(%)を演算し(S204)、整合率が閾値X0(%)を超えているか否かが判断される(S205)。ここで、整合率Xは、サークルラインである抽出縁画像SCが、そのサークル全体の中でガイド枠GFの領域内に収まっている割合によって求められる。
【0045】
整合率Xが閾値X0を超えている場合、ホワイトバランス調整可能と判断し、整合率Xが閾値X0以下である場合、ホワイトバランス禁止と判断する(S206、S207)。
【0046】
図6のステップS103では、
図6のサブルーチンによってホワイトバランス許可が決定されたか否かが判断される。ホワイトバランス許可が決定された場合、抽出縁画像SCとガイド枠GFが画面消去され(S104)、ホワイトバランス調整処理が実行される(S105)。これにより、R、G、Bが1:1:1となるようにゲイン値が設定される。
【0047】
一方、ホワイトバランス調整が許可されなかった場合、ステップS101に戻り、ステップS101〜S103が繰り返される。オペレータは、ガイド枠GF領域内に抽出縁画像SCが収まるようにスコープ先端部10Tの位置を調整する。
【0048】
このように本実施形態によれば、ホワイトバランス調整具50を用いたホワイトバランス調整処理において、ガイド枠GFを表示するとともに、ホワイトバランス調整具50の内部底面50Bの縁50Dをエッジ検出によって抽出し、サークルラインの抽出縁画像SCを表示する。そして、抽出した抽出縁画像SCがガイド枠GFに収まる場合、ホワイトバランス調整処理の実行を許可する。
【0049】
画面表示によってスコープ先端部の位置を調整するため、ホワイトバランス調整具内部を特別な構造にすることなく、正確な位置でスコープ先端部を位置決めすることができる。特に、ガイド枠がマスク(撮像領域)に応じて定まるため、スコープ先端部のサイズ、撮像特性等に関係なく適切な位置へスコープ先端部を保持することが可能となる。
【0050】
ガイド枠は、マスク領域を目一杯使わないようにしてもよい。また、ガイド枠の位置をスコープの種類に合わせてメモリに記憶させてもよい。ガイド枠と抽出した縁画像の一致度合いは、整合率以外によって判断することも可能である。
【0051】
自動的にホワイトバランス調整せずに、オペレータが画面表示から自らホワイトバランス調整を許可し、操作ボタンなどを入力してホワイトバランス調整処理を実行させてもよい。
【0052】
なお、内部底面の縁を明確に検出するため、赤色など特定の色で縁をマーキングしてもよい。あるいは、縁に沿って特定の色の波長をもつ光を発光するLEDを複数配列させ、スコープ先端部表示中に点灯させてもよい。