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特開2016-215218上型ホルダ、プレス機械、及び上型保持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-215218(P2016-215218A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】上型ホルダ、プレス機械、及び上型保持方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/02 20060101AFI20161125BHJP
   B21D 37/14 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   B21D5/02 F
   B21D5/02 C
   B21D37/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-100893(P2015-100893)
(22)【出願日】2015年5月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 晃庸
(72)【発明者】
【氏名】林 正明
【テーマコード(参考)】
4E050
4E063
【Fターム(参考)】
4E050FB03
4E063AA01
4E063BA07
4E063DA02
4E063DA18
4E063JA07
(57)【要約】
【課題】1つのクランプ部材で複数の上型を保持する場合であっても、上型ごとにクランプ力が大きく異なることを回避し、上型のズレ等を防止してワークを精度よく加工する。
【解決手段】プレス機械10のラム27に着脱可能に設けられるホルダ本体30と、上部41と下部42との間の支点部43でホルダ本体30に支持されて揺動可能であり、下部42とホルダ本体30との間で上型29を挟持可能なクランプ部材40と、クランプ部材40の上部41とホルダ本体30との間を進退可能であり、進退方向と直交する方向に所定寸法を有しかつ進入位置に応じてクランプ部材40の下部42をホルダ本体30に対して近接または離間させるクサビ部材50と、クサビ部材50を進退させる進退機構60と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械の上型を保持する上型ホルダであって、
前記プレス機械のラムに着脱可能に設けられるホルダ本体と、
上部と下部との間の支点部で前記ホルダ本体に支持されて揺動可能であり、前記下部と前記ホルダ本体との間で前記上型を挟持可能なクランプ部材と、
前記クランプ部材の前記上部と前記ホルダ本体との間を進退可能であり、進退方向と直交する方向に所定寸法を有しかつ進入位置に応じて前記クランプ部材の前記下部を前記ホルダ本体に対して近接または離間させるクサビ部材と、
前記クサビ部材を進退させる進退機構と、を備える、上型ホルダ。
【請求項2】
前記進退機構は、操作レバーと、前記操作レバーの回転に応じて前記クサビ部材を進退させる偏心カムと、を有する、請求項1記載の上型ホルダ。
【請求項3】
前記ホルダ本体に対して着脱可能に設けられかつ前記操作レバーの回転範囲を規制するストッパを有する、請求項2記載の上型ホルダ。
【請求項4】
前記クランプ部材の前記下部には、前記上型に形成された落下防止溝に挿入可能な落下防止キーが設けられ、
前記ストッパは、前記落下防止キーが前記落下防止溝に挿入した状態の範囲において前記操作レバーを回転可能とする、請求項3記載の上型ホルダ。
【請求項5】
前記ホルダ本体は、前記クサビ部材を進退方向に案内する案内部を有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の上型ホルダ。
【請求項6】
前記クランプ部材の前記下部が前記ホルダ本体に対して離間する方向に弾性力を付与する弾性部材を備える、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の上型ホルダ。
【請求項7】
前記クサビ部材の前記所定寸法は、前記進退方向と直交する方向における前記ホルダ本体の寸法の半分程度に設定される、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の上型ホルダ。
【請求項8】
上型と下型との間に配置されたワークを加工するプレス機械であって、
前記上型を保持する上型ホルダとして、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の上型ホルダが用いられる、プレス機械。
【請求項9】
プレス機械の上型を保持する方法であって、
前記プレス機械のラムに着脱可能に設けられるホルダ本体と、上部と下部との間の支点部で前記ホルダ本体に支持されて揺動可能なクランプ部材と、を用いて、
前記クランプ部材の前記上部と前記ホルダ本体との間にクサビ部材を進入させることにより、前記クランプ部材の前記下部と前記ホルダ本体との間で前記上型を挟持させる、上型保持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上型ホルダ、プレス機械、及び上型保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレスブレーキのように、上型と下型とでワークを挟み込んで加工するプレス機械が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1のプレス機械では、ホルダ本体とクランプ部材との間で上型を保持する上型ホルダが用いられている。この上型ホルダは、クランプ部材の上部と下部とが支点部を中心に揺動可能に設けられ、クランプ部材の上部とホルダ本体との間に偏心カムを配置することで、支点部を中心としてクランプ部材を揺動させている。
【0003】
上記した偏心カムを回転させてクランプ部材の上部とホルダ本体との距離を大きくした場合、クランプ部材の下部をホルダ本体に対して近接させることにより、クランプ部材の下部とホルダ本体との間で上型をクランプする。また、偏心カムを回転させてクランプ部材の上部とホルダ本体との距離を小さくした場合、クランプ部材の下部がホルダ本体から離間することにより、上型のクランプが解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5048251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の上型ホルダでは、偏心カムによってホルダ本体との間の距離を変更するため、クランプ部材の上部の狭い範囲に対して力を作用させている。その結果、クランプ部材の幅方向においてクランプ力に差が生じてしまう。すなわち、偏心カムから近い部分ではクランプ力が強く、偏心カムから遠い部分ではクランプ力が弱くなってしまう。このため、例えば1つの上型ホルダ(1つのクランプ部材)に複数の上型を保持する場合には、偏心カムに近い上型は強くクランプされるが、偏心カムから遠い上型は弱くクランプされて、上型がずれてしまう可能性がある。このような上型のズレが生じると、ワークを精度よく加工できないといった問題がある。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、1つのクランプ部材で複数の上型を保持する場合であっても、上型ごとにクランプ力が大きく異なることを回避し、上型のズレ等を防止してワークを精度よく加工することが可能な上型ホルダ、プレス機械、及び上型保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上型ホルダは、プレス機械の上型を保持する上型ホルダであって、プレス機械のラムに着脱可能に設けられるホルダ本体と、上部と下部との間の支点部でホルダ本体に支持されて揺動可能であり、下部とホルダ本体との間で上型を挟持可能なクランプ部材と、クランプ部材の上部とホルダ本体との間を進退可能であり、進退方向と直交する方向に所定寸法を有しかつ進入位置に応じてクランプ部材の下部をホルダ本体に対して近接または離間させるクサビ部材と、クサビ部材を進退させる進退機構と、を備える。
【0008】
また、進退機構は、操作レバーと、操作レバーの回転に応じてクサビ部材を進退させる偏心カムと、を有してもよい。また、ホルダ本体に対して着脱可能に設けられかつ操作レバーの回転範囲を規制するストッパを有してもよい。また、クランプ部材の下部には、上型に形成された落下防止溝に挿入可能な落下防止キーが設けられ、ストッパは、落下防止キーが落下防止溝に挿入した状態の範囲において操作レバーを回転可能としてもよい。また、ホルダ本体は、クサビ部材を進退方向に案内する案内部を有してもよい。また、クランプ部材の下部がホルダ本体に対して離間する方向に弾性力を付与する弾性部材を備えてもよい。また、クサビ部材の所定寸法は、進退方向と直交する方向におけるホルダ本体の寸法の半分程度に設定されてもよい。
【0009】
本発明に係るプレス機械は、上型と下型との間に配置されたワークを加工するプレス機械であって、上型を保持する上型ホルダとして、上記した上型ホルダが用いられる。
【0010】
本発明に係る上型保持方法は、プレス機械の上型を保持する方法であって、プレス機械のラムに着脱可能に設けられるホルダ本体と、上部と下部との間の支点部でホルダ本体に支持されて揺動可能なクランプ部材と、を用いて、クランプ部材の上部とホルダ本体との間にクサビ部材を進入させることにより、クランプ部材の下部とホルダ本体との間で上型を挟持させることを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る上型ホルダによれば、所定寸法を有するクサビ部材によってクランプ部材の上部を広い範囲で押圧し、クランプ部材の下部をホルダ本体に対して近接させるため、クランプ部材の下部において、幅方向(クサビ部材の進退方向と直交する方向)の中央部と両端部とでクランプ力に大きな差が生じることを抑制できる。これにより、1つのクランプ部材に複数の上型を保持する場合であっても、上型ごとに適切なクランプ力でクランプすることができ、ワークを精度よく加工することができる。また、進退機構を操作してクサビ部材を進退させることで上型の保持または解放を行うので、作業者にとって上型の着脱を容易に行うことができる。
【0012】
また、進退機構が、操作レバーと、操作レバーの回転に応じてクサビ部材を進退させる偏心カムと、を有するものでは、作業者が操作レバーを操作することにより、容易にクサビ部材を進退させることができ、上型の着脱を容易に行うことができる。また、ホルダ本体に対して着脱可能に設けられかつ操作レバーの回転範囲を規制するストッパを有するものでは、クランプ部材の揺動量を規制することができ、クランプ部材の下部が必要以上に開くことを防止できる。また、クランプ部材の下部に、上型に形成された落下防止溝に挿入可能な落下防止キーが設けられ、ストッパが、落下防止キーが落下防止溝に挿入した状態の範囲において操作レバーを回転可能とするものでは、操作レバーを回転させてクランプ部材の下部を開いたときでも、落下防止キーが上型の落下防止溝に挿入した状態を維持するので、上型の落下を防止できる。また、ホルダ本体が、クサビ部材を進退方向に案内する案内部を有するものでは、クサビ部材を進退方向に正確に案内することができる。また、クランプ部材の下部がホルダ本体に対して離間する方向に弾性力を付与する弾性部材を備えるものでは、クサビ部材が退避した場合、弾性部材の弾性力によってクランプ部材の下部をホルダ本体に対して確実に離間させることができる。また、クサビ部材の所定寸法が、進退方向と直交する方向におけるホルダ本体の寸法の半分程度に設定されるものでは、クランプ部材の上部を広い範囲で押圧できるので、クランプ部材の中央部と両端部とでクランプ力に差が生じることを効率よく抑制できる。
【0013】
本発明に係るプレス機械によれば、上型を保持する上型ホルダとして、上記の上型ホルダが用いられるため、1つのクランプ部材に複数の上型を保持する場合であっても、上型ごとに適切なクランプ力でクランプすることができる。これにより、上型のズレを抑制することができ、ワークの加工精度に向上させることができる。
【0014】
本発明に係る上型保持方法によれば、クランプ部材の上部とホルダ本体との間にクサビ部材を進入させることにより、クランプ部材の下部とホルダ本体とで上型を挟持するため、上型の着脱を容易に行うことができる。また、クランプ部材の下部において、幅方向(クサビ部材の進退方向と直交する方向)の中央部と両端部とでクランプ力に大きな差が生じることを抑制でき、1つのクランプ部材に複数の上型を保持する場合であっても、上型ごとに適切なクランプ力でクランプすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るプレス機械の一例を示す正面図である。
図2】プレス機械の一部を破断した右側面図である。
図3】実施形態に係る上型ホルダの一例を示す正面図である。
図4図3におけるA−A線に沿った断面図である。
図5図3におけるB−B線に沿った断面図である。
図6】クランプ部材で上型を支持した状態の一例を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図7】クランプ部材により上型をクランプした状態の一例を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。
図8】クランプ部材を開いた状態の一例を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面においては、実施形態を説明するため、一部または全部を模式的に記載するとともに、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現した部分を含んでいる。また、本実施形態において方向を示す場合は、図1のプレス機械10の正面図を基準として上側、下側、左側及び右側と規定し、図1の紙面の手前側を前側、紙面後方を後側と規定する。従って、図1の紙面の上下方向及び左右方向がプレス機械10の上下方向D1及び左右方向D2であり、紙面に垂直の方向がプレス機械10の前後方向D3である。なお、上下方向D1と、左右方向D2と、前後方向D3と、は互いに直交している。
【0017】
図1は、実施形態に係るプレス機械10の正面図である。図2は、プレス機械10の一部を破断した右側面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態のプレス機械10は、プレスブレーキであって、本体フレーム11と、下型12を支持するテーブル13と、一対の側板14と、を備える。本体フレーム11は、プレス機械10の外郭を形成する。
【0018】
下型12は、固定側(下側)の金型であり、左右方向D2に長く形成されている。下型12は、図2に示すように、例えば、成形用のV字状の凹部12aを有する。テーブル13は、本体フレーム11の前面側に取り付けられており、下型12を固定している。側板14は、本体フレーム11の左右の側部にそれぞれ取り付けられている。また、側板14のそれぞれには、上下の二箇所に、内側に突出するガイド板18が形成されている。一対の側板14の間には、前面側の上部に上部カバー板15 が取り付けられている。
【0019】
プレス機械10は、複数の駆動機構17を備える。複数の駆動機構17は、本体フレーム11の上部カバー板15の後方に並べて配置されている。駆動機構17のそれぞれは、不図示の支持フレーム等によって支持されている。駆動機構17は、後述するラム27を上下方向D1に昇降させる任意の機構が用いられ、例えば、ボールねじまたはナットを電動モータ等により回転させる機構や、油圧または空圧シリンダを用いた機構など、が採用される。
【0020】
ラム27は、接続部26を介して駆動機構17に接続され、駆動機構17に吊り下げられた状態で配置される。ラム27は、金属等により形成された板状の部材であり、例えば、数十kg〜数百kgの重量を有している。ラム27の後面側には、不図示のブラケットにより支持され、かつガイド板18を挟み込む一対のローラ27aが形成されている。このローラ27aがガイド板18にガイドされることにより、ラム27を上下方向D1にガイドしている。
【0021】
ラム27の下方には、複数の上型ホルダ28が取り付けられている。複数の上型ホルダ28は、上下方向D1に直交する左右方向D2に並んだ状態で取り付けられている。上型ホルダ28は、左右方向D2に移動可能に設けられ、上型ホルダ28同士の間隔は任意に設定可能である。上型ホルダ28は、ラム27に対して着脱可能に設けられる。上型ホルダ28のそれぞれは、上型29を挟み込んで保持可能である。なお、上型ホルダ28の詳細については後述する。また、ラム27は、図示のものに限定されず、任意の形状のものが適用可能である。上型29は、上型ホルダ28で保持された際、下型12の凹部12aに対向して配置される。また、上型29は、下型12の凹部12aに進入する先端部を有している。これらラム27、上型ホルダ28、及び上型29は、一体となって上下方向D1に移動する。
【0022】
図3は、実施形態に係る上型ホルダ28の一例を示す正面図である。図4は、図3におけるA−A線に沿った断面図である。図3及び図4に示すように、上型ホルダ28は、ホルダ本体30と、クランプ部材40と、クサビ部材50と、進退機構60とを備える。
【0023】
ホルダ本体30は、ラム27に着脱可能に設けられる。ホルダ本体30は、ラム27の下端部分に取り付けられる取付部31と、上型29を支持する上型支持部32と、を有する。取付部31及び上型支持部32は、一体で形成される。取付部31及び上型支持部32は、一部材で形成されてもよいし、別部材で形成され互いにボルト等によって連結されたものでもよい。取付部31は、矩形の板状に形成され、上部に鉤状部31aが形成される。鉤状部31aは、ラム27の下部に形成された凹部27aに掛けられる(図4参照)。なお、凹部27aは、ラム27の左右方向D2のほぼ全体にわたって形成される。
【0024】
取付部31は、固定部35によりラム27に固定される。固定部35は、押圧部材35a及び締結部材35bを有する。押圧部材35aは、左右方向D2から見て略C字型の長尺の部材である。押圧部材35aは、図4に示すように、取付部31の鉤状部31aが凹部27aに掛けられた状態で取付部31の上部の段部31bに当接し、取付部31の上部をラム27側に押し当てる。また、押圧部材35aは、段部31bに当接されることにより、上下方向D1における取付部31の位置ずれを規制する。
【0025】
締結部材35bは、ボルト等が用いられ、押圧部材35aをラム27に締結する。ラム27の凹部27aには、締結部材35bを挿入可能な複数の挿入穴27bが予め形成される。複数の挿入穴27bは、左右方向D2に所定の間隔で配置される。押圧部材35aが締結部材35bによってラム27に締結されることにより、取付部31がラム27に対して固定される。なお、取付部31がラム27に固定された状態から締結部材35bの締結を緩めることにより、鉤状部31aが凹部27aに掛けられた状態が維持され、ホルダ本体30を落下させずに凹部27aに沿って左右方向D2に移動させることが可能である。なお、ホルダ本体30は、ラム27に対して着脱可能であれば、その取り付け構造については任意である。
【0026】
クランプ部材40は、ホルダ本体30との間で上型29を挟持可能である。クランプ部材40は、例えば矩形の板状に形成される。クランプ部材40は、上部41と下部42との間の支点部43でホルダ本体30に揺動可能に支持される。クランプ部材40は、複数のボルト45によってホルダ本体30に取り付けられる。クランプ部材40の支点部43には、図4に示すように、凹部43aが形成され、凹部43aに皿バネ46が配置されている。クランプ部材40は、凹部43aの皿バネ46を挟んでボルト45により締結される。皿バネ46は、ボルト45のヘッド部45aと凹部43aとの間に配置され、支点部43をホルダ本体30に押し付けるように作用する。クランプ部材40は、この支点部43を揺動軸として上部41及び下部42がホルダ本体30に対して近接または離間するように互いに逆方向に揺動可能となっている。
【0027】
クランプ部材40の上部41には、図4に示すように、傾斜部41aが形成される。傾斜部41aは、支点部43から上方に向けて、ホルダ本体30から離れる方向に傾いた状態で形成される。したがって、上部41では、下方から上方にかけてホルダ本体30との間隔が徐々に広がるように形成される。
【0028】
図5は、図3におけるB−B線に沿った断面図である。図3及び図5に示すように、上部41には、弾性部材47が設けられている。弾性部材47は、ボルト48を介してホルダ本体30に取り付けられる。このボルト48は、クランプ部材40の上部41の揺動を許容した状態でホルダ本体30に固定される。弾性部材47は、上部41の凹部41bとボルト48のヘッド部48aとの間に収縮した状態で配置される。弾性部材47の復元力により、上部41には、ホルダ本体30に対して近接する方向に弾性力が付与される。これにより、下部42には、ホルダ本体30に対して離間する方向に弾性力が付与された状態となる。
【0029】
クランプ部材40の下部42は、ホルダ本体30に対して近接することで上型29に当接し、上型支持部32との間で上型29を保持することできる。下部42のうち上型支持部32に対向する部分には、図4及び図5に示すように、落下防止キー49が設けられる。落下防止キー49は、上型支持部32側に突出して形成された突起部である。落下防止キー49は、左右方向D2に伸びた状態で形成される。落下防止キー49は、上型29に形成された落下防止溝29aに挿入可能である。なお、上型29の落下防止溝29aは、左右方向D2に平行に形成される。上型29は、落下防止溝29aに落下防止キー49が挿入された状態で上型ホルダ28に装着される。なお、落下防止キー49は、不図示のボルト等によってクランプ部材40に固定されており、着脱可能である。従って、落下防止溝29aがない上型29では、落下防止キー49と取り外して使用可能である。
【0030】
本実施形態では、図1に示すように、1つの上型ホルダ28に対して複数の上型29が保持されてワークWの加工を行う場合がある。この場合、複数の上型29のそれぞれについて、落下防止溝29aに落下防止キー49が挿入される。
【0031】
クサビ部材50は、図4に示すように、クランプ部材40の上部41とホルダ本体30との間を上下方向D1に進退可能に配置される。クサビ部材50は、ホルダ本体30に設けられた案内部36(図3参照)によって進退方向である上下方向D1に案内される。案内部36は、上下方向D1に沿った一対の壁部であり、クサビ部材50の左右方向D2の端面に当接して、クサビ部材50を上下方向D1に案内する。なお、案内部36としては、上記した構成に限定されず、例えば、クサビ部材50の一部に突起を形成し、かつ、ホルダ本体30に上下方向D1の溝部を形成し、突起を溝部で案内するものでもよい。案内部36によって、クサビ部材50は上下方向D1に正確に案内される。なお、クサビ部材50の表面や、クサビ部材50と接触するホルダ本体30やクランプ部材40の表面には、互いの摺動をスムーズにするために摩擦抵抗を低減する表面処理等が施されてもよい。
【0032】
クサビ部材50は、上部41に当接する部分に傾斜面51が形成されている。傾斜面51は、下端に向けて前後方向D3の厚さが薄くなるように形成される。また、傾斜面51は、傾斜角度の異なる第1面51aと第2面51bとを有している。第1面51aは、第2面51bよりも下方に配置される。第1面51aよりも第2面51bの方が、上部41に対して傾斜が急になっている。なお、傾斜面51として、2つの傾斜角度を持つことに限定されず、傾斜角度が1つまたは3つ以上持つものでもよい。また、傾斜面51は、傾斜角度を連続的に変化させてもよい。
【0033】
クサビ部材50は、上部41とホルダ本体30との間に対して進入することにより、進入位置に応じて上部41をホルダ本体30から離間する方向に押す。これにより、クランプ部材40は揺動し、下部42がホルダ本体30に近接する方向に移動する。また、クサビ部材50(傾斜面51)は、左右方向D2に所定寸法を有している。このため、上部41のうち左右方向D2の所定寸法にわたる領域がクサビ部材50によって押されることになる。この所定寸法は、例えば左右方向D2におけるホルダ本体30の寸法の半分程度に設定されるが、ホルダ本体30の寸法の半分より大きな寸法に設定されてもよく、また、ホルダ本体30の寸法の半分より小さな寸法に設定されてもよい。このように、左右方向D2に広い範囲で上部41を押圧できるため、クランプ部材40の下部42うち、左右方向D2の中央部と両端部とでクランプ力に差が生じることが抑制される。
【0034】
進退機構60は、クサビ部材50を上下方向D1に進退させる。進退機構60は、偏心カム61と、操作レバー62とを有している。偏心カム61は、軸部61a及び偏心部61bを有している。軸部61aは、円柱状に形成され、前後方向D3に平行に配置される。軸部61aは、ホルダ本体30に対して、前後方向D3に平行な中心軸AX1の軸周り方向に回転可能に支持される。
【0035】
偏心部61bは、円盤状に形成され、軸部61aと一体で設けられる。偏心部61bの中心軸AX2は、軸部61aの中心軸AX1に対して、ずれた位置に配置される。これにより、中心軸AX1まわりにおいては、偏心部61bの周縁までの距離が異なっている。偏心部61bは、クサビ部材50に形成された開口部50aに挿入されている。開口部50aは、上下方向D1において偏心部61bの径よりわずかに大きな幅を有し、かつ左右方向D2に長い長円状に形成されている(図3参照)。偏心カム61は、軸部61aが中心軸AX1の軸周り方向に回転することにより、偏心部61bが軸部61aと一体となって回転する。偏心部61bが中心軸AX1まわりに回転することにより、クサビ部材50の開口部50aの内周面が偏心部61bで押され、クサビ部材50を上下方向D1に移動させる。
【0036】
例えば、図3に示すように、偏心部61bの中心軸AX2が軸部61aの中心軸AX1に対して上下方向D1の下方に配置された場合、偏心部61bの周縁が最も下方に突出した状態となり、クサビ部材50が最も下方に位置し、クランプ部材40とホルダ本体30との間に最も進入する。この場合、クランプ部材40の上部41は、クサビ部材50の傾斜面51によってホルダ本体30から最も離間する位置まで押され、これにより下部42がホルダ本体30に最も近接した状態となる。したがって、この状態では上型29をクランプすることが可能である。以下、このようなクランプ部材40の状態を全閉状態と表記する。
【0037】
また、例えば、偏心部61bの中心軸AX2が中心軸AX1の下方から外れた場合は、クサビ部材50が上方に移動し、クランプ部材40とホルダ本体30との間から退避していく。この場合、クランプ部材40の上部41は、弾性部材47(図5参照)によってホルダ本体30側に押圧され、ホルダ本体30に近接する。これにより、下部42は、ホルダ本体30から離間していく。このように、クサビ部材50の進入位置によりクランプ部材40の下部42はホルダ本体30から離間する量を変えていく。以下の説明では、下部42が上型29から離れ、下部42の落下防止キー49が上型29の落下防止溝29aから抜けた状態となったクランプ部材40の状態を全開状態と表記する。この全開状態では、落下防止キー49が落下防止溝29aから抜けているため、上型29を上型ホルダ28から下方に抜き取ること、または、下方から上型29を上型ホルダ28に差し込むことが可能である。
【0038】
また、クサビ部材50の進入位置によっては、上記した全閉状態と全開状態との間の状態にクランプ部材40の下部42をホルダ本体30から離間させることが可能である。例えば、クサビ部材50が所定の進入位置では、クランプ部材40の下部42が上型29から離れるが、下部42に設けられる落下防止キー49が上型29の落下防止溝29aに挿入された状態とすることも可能である。以下、このようなクランプ部材40の状態を半開状態と表記する。この半開状態では、クランプ部材40による保持が解放された状態で、上型29が落下防止キー49に係止されて上型ホルダ28に支持される。したがって、半開状態では、上型29が上型ホルダ28から落下することを防止できる。
【0039】
なお、半開状態では、上型29が落下防止キー49に係止されているため、上型29を上型ホルダ28の下方に抜き取ることができず、また、上型29を上型ホルダ28の下方から装着することはできない。この半開状態においては、上型ホルダ28の左右方向D2に上型29を移動させることで上型ホルダ28から上型29を抜き取ることが可能であり、また、上型ホルダ28の左右いずれかの端部から上型29を差し込んで、落下防止溝29aに落下防止キー49を挿入し、左右方向D2に上型29を移動させることで上型29の装着が可能である。
【0040】
操作レバー62は、偏心カム61の軸部61aに固定される。操作レバー62を中心軸AX1の軸周りに回転させることにより、偏心カム61を回転させることが可能である。操作レバー62を回転することにより、クランプ部材40を全閉状態、半開状態、全開状態にすることができる。例えば、図3に示すように、クランプ部材40が全閉状態となる場合の操作レバー62の位置を全閉位置P1とし、半開状態となる場合の操作レバー62の位置を半開位置P2とし、全開状態となる場合の操作レバー62の位置を全開位置P3として、それぞれ設定される。なお、操作レバー62が全開位置P3から反時計回りに超える所定範囲では、クランプ部材40が全開状態となる。
【0041】
ホルダ本体30には、ストッパ63が装着されている。ストッパ63は、ホルダ本体30に対して着脱可能に設けられる。ストッパ63が装着された状態では、操作レバー62の回転が規制される。ストッパ63は、操作レバー62が半開位置P2よりも反時計回りの移動を規制し、全開位置P3側に移動しないように配置される。したがって、ストッパ63が配置されている場合、操作レバー62は全閉位置P1と半開位置P2との間を回転可能である。これにより、操作レバー62を反時計回りに回転させてもストッパ63により回転が規制され、下部42と上型支持部32との間が全開となることを防止でき、上型29の落下を防止できる。
【0042】
なお、上記したように、クサビ部材50の傾斜面51は、傾斜角度の異なる第1面51aと第2面51bとを有している。第1面51aよりも第2面51bの方が、上部41に対して傾斜が急になっているので、操作レバー62を全閉位置P1から時計回りに回転させる場合には第1面51aにより上部41が緩やかに押圧される。また、半開位置P2から操作レバー62を時計回りに回転させると、全閉位置P1に達する段階で第2面51bにより上部41が強い力で押圧される。これにより、操作レバー62が全閉位置P1にある場合に、上型29に対して強いクランプ力を与えることができる。
【0043】
なお、操作レバー62が全閉位置P1から時計回りに回転しないように、ホルダ本体30にストッパが設けられてもよい。また、操作レバー62は、偏心カム61の軸部61aに取り外し可能であってもよい。この場合、上型29の装着または取り外しの際を除いて操作レバー62が取り外されるので、ワークWの加工時等に上型ホルダ28の前面側の出っ張りをなくし、加工されたワークWが操作レバー62に接触するのを防止できる。また、偏心カム61を操作レバー62で操作することに代えて、偏心カム61を電気モータ等のアクチュエータで回転させてもよい。また、上記ではホルダ本体30に備えるストッパ63により操作レバー62の可動範囲の規制及び解放を行うが、これに限定されない。例えば、操作レバー62側に可動範囲の規制及び解放を行うような構成が適用されてもよい。例えば、操作レバー62に突出または没入可能な爪部が設けられ、この爪部がホルダ本体30の一部に係止される範囲を操作レバー62の可動範囲とし、また、この操作レバー62において爪部を没入させる動作を行うことにより操作レバー62の可動範囲を拡げるものでもよい。
【0044】
また、上記においては、クサビ部材50の進退機構60として偏心カム61を用いているが、これに限定されず、ボールねじ機構などの他の機構が用いられてもよい。また、偏心カム61の偏心部61bが円盤状であることに限定されず、他のカム形状であってもよい。例えば、図3に示す全閉位置P1から操作レバー62を時計回りに回転させ、位置P3で半開状態となり、位置P2で全開状態となるようなカム形状が用いられてもよい。この場合においても上記と同様に、ストッパ63によって操作レバー62が位置P3を超えて回転するのを規制するので、クランプ部材40が全開状態となるのを防止できる。
【0045】
次に、上型ホルダ28に上型29を装着する手順について、図6図8を参酌して説明する。図6は、クランプ部材40に上型29を支持した状態の一例を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。図7は、クランプ部材40により上型29をクランプした状態の一例を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。図8は、クランプ部材40を開いた状態の一例を示し、(A)は平面図、(B)は断面図である。まず、図6(A)及び(B)に示すように、作業者は、操作レバー62を半開位置P2に配置する。これにより、クランプ部材40が半開状態となる。半開状態では、図6(A)に示すように、偏心カム61の偏心部61bが軸部61aから下方に距離L1だけ突出した状態となる。
【0046】
また、半開状態では、下部42の落下防止キー49によって上型29を下方から差し込むことができないため、作業者は、上型ホルダ28の左右いずれかの端部から上型29を左右方向D2に差し込み、上型29の落下防止溝29aに落下防止キー49を挿入する。この状態では、落下防止溝29aが落下防止キー49に係止されることにより、上型29は、クランプ部材40に支持された状態となる。なお、1つの上型ホルダ28に複数の上型29を装着する場合、上記と同様に、上型ホルダ28の左右いずれかの端部から左右方向D2に上型29を差し込んで支持させる。
【0047】
なお、複数の上型29は、互いに接触した状態で配置されてもよく、また、互いに間隔をあけた状態で配置されてもよい。また、いずれの上型29も落下防止溝29aが落下防止キー49に係止されることにより、クランプ部材40に支持された状態となる。また、落下防止溝29aを持たない上型29の場合は、上型29を上型ホルダ28の下方からクランプ部材40と上型支持部32との間に差し込む。この場合、クランプ部材40を全閉状態とするまで、例えば作業者が上型29を支持する。
【0048】
次に、図7(A)及び(B)に示すように、作業者は、操作レバー62を時計回りに回転させて全閉位置P1に配置させる。これにより、クランプ部材40が全閉状態となる。全閉状態では、図7(A)に示すように、半開状態の場合に比べて偏心部61bが中心軸AX1を中心として時計回りに回転し、軸部61aから下方に距離L2だけ突出した状態となる。
【0049】
この距離L2は、上記した距離L1よりも大きい。したがって、クサビ部材50は、偏心部61bによって下方に移動し、クランプ部材40の上部41とホルダ本体30との間に進入する。クランプ部材40の上部41は、このクサビ部材50によってホルダ本体30から離間する方向に押され、下部42がホルダ本体30側に近接する方向に移動する。これにより、下部42が上型29を上型支持部32側へ押圧する。上型29は、下部42と上型支持部32との間で挟持されて保持される。なお、全閉状態において上型29を挟持する際、クランプ部材40の支点部43に配置された皿バネ46(図4参照)の弾性力が利用される。
【0050】
全閉状態において、クランプ部材40の下部42と上型支持部32との間隔は、標準の上型29の厚さに基づいて設定されている。ただし、上型29が標準より厚い場合であっても、全閉状態とした際に支点部43の皿バネ46を前後方向D3に収縮させることにより、クランプ部材40の下部42と上型支持部32との間で厚い上型29を挟持することが可能である。
【0051】
また、クサビ部材50は左右方向D2に所定寸法を有するため、クサビ部材50によってクランプ部材40の上部41が広い範囲で押圧される。これにより、クランプ部材40の下部42において、左右方向D2の中央部と両端部とでクランプ力に大きな差が生じることが抑制される。従って、下部42の左右方向D2の中央部と端部とでそれぞれ上型29を保持する場合でも、端部で保持した上型29に対して適切な保持力を付与することができる。
【0052】
上記のように、上型29を上型ホルダ28に装着した後、プレス機械10によってワークWの加工を行う。ワークWの加工について、図1及び図2を参酌して説明する。先ず、上型29が上方に退避した状態で、下型12上にワークWを配置する。プレス機械10は、不図示のワーク位置決め機構を有しており、作業者は、ワークWの先端を位置決め機構に突き当てることによりワークWを下型12上で位置決めする。
【0053】
続いて、駆動機構17を駆動して、上型29(ラム27)を降下させる。ワークWは、上型29と下型12との間に挟み込まれることにより、所定の曲げ加工が施される。なお、曲げ加工に際して、駆動機構17によって上型29を下方に押し付けるのではなく、ラム27等の自重を用いて上型29を降下させ、ワークWの曲げ加工を行うようにしてもよい。曲げ加工の終了後は、駆動機構17を駆動して上型29(ラム27)を上昇させ、上型29を元の位置に退避させることにより、曲げ加工が施されたワークWを取り出す。
【0054】
また、上型ホルダ28に装着している上型29を交換する場合、作業者は、操作レバー62を反時計回りに回転させて半開位置P2に戻し、クランプ部材40を半開状態にする。その後、作業者は、上型29を左右方向D2に移動させることにより、クランプ部材40の左右いずれかの端部から上型29を抜き取る。続いて、新たな上型29をクランプ部材40の左右いずれかの端部から差し込むことにより上型29をクランプ部材40に支持させる。続いて、操作レバー62を全閉位置P1に回転させて上型29をクランプする点は上記と同様である。
【0055】
なお、上型29の交換を行う場合、操作レバー62を全開位置P3に移動させてもよい。図8(A)及び(B)は、操作レバー62を全開位置P3に移動させた状態を示す図である。図8(A)及び(B)に示すように、ストッパ63を取り外すことにより、操作レバー62が半開位置P2からさらに反時計回りに回転可能となり、全開位置P3まで移動させることができる。
【0056】
全開状態では、下部42が上型29から大きく離れ、下部42の落下防止キー49が上型29の落下防止溝29aから抜けた状態となる。これにより、上型29を下方に抜き取ることができる。また、全開状態では、落下防止キー49がじゃまにならないので、上型29を上型ホルダ28の下方からクランプ部材40と上型支持部32との間に差し込むことが可能である。これにより、作業者が上型ホルダ28の前面側から上型29の交換作業等を行うことができる。
【0057】
このように、本実施形態によれば、所定寸法を有するクサビ部材50によってクランプ部材40の上部41を広い範囲で押圧し、クランプ部材40の下部42をホルダ本体30に対して近接させるため、クランプ部材40の下部42において、左右方向D2の中央部と両端部とでクランプ力に大きな差が生じることを抑制できる。これにより、1つのクランプ部材40で複数の上型29を挟み込む場合であっても、上型29ごとに適切なクランプ力を付与することができ、上型29のズレ等を防止できる。これにより、ワークWを精度よく加工することができる。また、進退機構60を操作してクサビ部材50を進退させることで上型29の保持または解放を行うので、作業者にとって上型29の着脱を容易に行うことができる。
【0058】
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した実施形態では、操作レバー62の回転範囲を規制するストッパ63がホルダ本体30に対して着脱される構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、他の機構が用いられてもよい。例えば、全閉位置P1、半開位置P2及び全開位置P3の各位置において、操作レバー62が回転しないようにロックされるような構成が採用されてもよい。
【0059】
また、上記した実施形態では、弾性部材47(図5参照)により、クランプ部材40の下部42がホルダ本体30から離間する方向に弾性力を付与しているが、これに限定するものではなく、例えば、磁力などを用いてクランプ部材40の下部42がホルダ本体30から離間する方向に力を付与するものでもよい。この場合、上部41とホルダ本体30との間では互いに引きつけあう方向に磁力を作用させ、また、下部42とホルダ本体30との間では互いに反発する方向に磁力を作用させるものでもよい。
【符号の説明】
【0060】
D1…上下方向(進退方向) D2…左右方向 D3…前後方向 P1…全閉位置 P2…半開位置 P3…全開位置 W…ワーク 10…プレス機械 12…下型 27…ラム 28…上型ホルダ 29…上型 29a…落下防止溝 30…ホルダ本体 36…案内部 40…クランプ部材 41…上部 42…下部 43…支点部 47…弾性部材 49…落下防止キー 50…クサビ部材 60…進退機構 61…偏心カム 62…操作レバー 63…ストッパ
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8