(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-215417(P2016-215417A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20161125BHJP
【FI】
B41J2/335 101H
B41J2/335 101C
B41J2/335 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】33
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-100324(P2015-100324)
(22)【出願日】2015年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】大野 茂美
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明良
(72)【発明者】
【氏名】中西 雅寿
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065HA08
2C065HA26
2C065JC02
2C065JC10
2C065JC14
2C065JH08
2C065JH11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サーマルプリントヘッドの製造において、発熱部を覆う保護層の効率的な形成を、電極層の損傷、断線といった不具合を発生させることなく行うことができるサーマルプリントヘッド、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】このサーマルプリントヘッド10Aは、基板100と、この基板100上の短手方向一方寄りに当該基板の長手方向に並ぶ複数の発熱部と、各発熱部に繋がる導体と、少なくとも複数の発熱部を覆う保護層150と、を備え、基板100には、所定厚みの桁部400が形成されており、桁部400における基板100の短手方向一方側の所定領域は保護層150に覆われており、保護層150で覆われた領域に対して境界402を挟んで桁部400における上記基板の短手方向他方側に位置する領域は保護層150に覆われていない。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板上の短手方向一方寄りに当該基板の長手方向に並ぶ複数の発熱部と、各発熱部に繋がる導体と、少なくとも上記複数の発熱部を覆う保護層と、を備えるサーマルプリントヘッドにおいて、
上記基板には、所定厚みの桁部が形成されており、当該桁部における上記基板の短手方向一方側の所定領域は上記保護層に覆われており、当該保護層で覆われた領域に対して境界を挟んで当該桁部における上記基板の短手方向他方側に位置する領域は上記保護層に覆われていないことを特徴とする、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
上記導体は、上記各発熱部から上記基板の短手方向他方側に延びる信号用導体を含む、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
上記桁部は、上記各発熱部よりも上記基板の短手方向他方側において、上記信号用導体を避けた領域に形成されている、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
上記桁部は、上記基板の長手方向両端部に形成されたものを含む、請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
上記桁部は、所定のペースト材料を印刷・焼成することにより形成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
上記ペースト材料は、ガラス系ペーストである、請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
上記信号用導体は、上記基板上に形成した下地層上に形成されており、上記桁部は、上記下地層と同一材料で形成されている、請求項5または6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
上記桁部は、上記下地層と同時に同一厚みで形成されたものである、請求項7に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
上記下地層は、上記信号用導体の上記基板の短手方向他方側の下層に形成されており、当該下地層の上記基板の短手方向一方側の端縁は、上記桁部における上記境界よりも上記基板の短手方向他方側に位置している、請求項7または8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
上記桁部は、上記下地層と独立している、請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
上記桁部は、上記下地層と連続している、請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
上記桁部は、平面視矩形である、請求項10に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
上記桁部は、平面視円形である、請求項10に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
上記信号用導体は、上記基板上に形成した下地層上に形成されており、上記桁部は、上記下地層に重ねて形成されている、請求項5または6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
上記桁部は、上記基板に対する貼着物によって形成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
上記貼着物は、テープである、請求項14に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
基板と、この基板上の短手方向一方寄りに当該基板の長手方向に並ぶ複数の発熱部と、各発熱部に繋がる導体と、少なくとも上記複数の発熱部を覆う保護層と、を備えるサーマルプリントヘッドの製造方法であって、
上記複数の発熱部および上記導体の形成を終えた複数の基板中間体を上記複数の発熱部が臨むように上記基板の短手方向にずらせて積層保持し、スパッタリングまたはCVD法を施すことにより上記保護層を形成するにあたり、
上記基板中間体には、所定厚みの桁部を形成しておき、上記基板中間体の短手方向一方側の縁が、当該基板中間体が積層される下位の上記基板中間体における上記桁部の上記基板の短手方向中間部に位置するように複数の上記基板中間体を積層保持することを特徴とする、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項18】
上記導体は、上記各発熱部から上記基板の短手方向他方側に延びる信号用導体を含む、請求項17に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項19】
上記桁部は、上記各発熱部よりも上記基板の短手方向他方側において、上記信号用導体を避けた領域に形成する、請求項18に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項20】
上記桁部は、上記基板の長手方向両端部に形成されたものを含む、請求項19に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項21】
上記桁部は、所定のペースト材料を印刷・焼成することにより形成される、請求項17ないし20のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項22】
上記ペースト材料は、ガラス系ペースト材料である、請求項21に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項23】
上記信号用導体は、上記基板上に形成した下地層上に形成され、上記桁部は、上記下地層と同一材料で形成される、請求項21または22に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項24】
上記桁部は、上記下地層と同時に同一厚みで形成される、請求項23に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項25】
上記下地層は、上記信号用導体の上記基板の短手方向他方側の下層に形成されており、当該下地層の上記基板の短手方向一方側の縁は、上記桁部における上記境界よりも上記基板の短手方向他方側に位置している、請求項23または24に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項26】
上記桁部は、上記下地層と独立している、請求項25に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項27】
上記桁部は、上記下地層と連続している、請求項25に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項28】
上記桁部は、平面視矩形である、請求項26に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項29】
上記桁部は、平面視円形である、請求項26に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項30】
上記信号用導体は、上記基板上に形成した下地層上に形成されており、上記桁部は、上記下地層に重ねて形成されている、請求項21または22に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項31】
上記桁部は、上記基板に対する貼着物によって形成されている、請求項17ないし20のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項32】
上記貼着物は、テープである、請求項30に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【請求項33】
上記保護層の形成後、上記貼着物を除去する、請求項31または32に記載のサーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリントヘッド、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる薄膜型のサーマルプリントヘッドの製造において、発熱部の形成後にこの発熱部を覆う保護層を形成する場合、たとえば、特許文献1の
図11、
図12に示されているように、複数枚の基板をそれらの発熱部を露出させつつずらせ重ねた状態においてスパッタリング、あるいはCVD法を適用することが行われることがある。このような保護層の形成方法では、下位にある基板における保護層を形成する必要のない領域を上位に重ねた基板が都合よくマスクすることができるので、保護層の材料を節約することができるとともに、製造効率を上げることができる。
【0003】
しかしながら、このような保護層の形成方法を採用する場合、基板の裏面にバリ等の突起が存在すると、その下位に位置する基板上の微細な電極層を損傷、または断線させることがある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−56046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、薄膜型のサーマルプリントヘッドの製造において、発熱部を覆う保護層の効率的な形成を、電極層の損傷、断線といった不具合を発生させることなく行うことができる技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0007】
本発明の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、この基板上の短手方向一方寄りに当該基板の長手方向に並ぶ複数の発熱部と、各発熱部に繋がる導体と、少なくとも上記複数の発熱部を覆う保護層と、を備えるサーマルプリントヘッドにおいて、上記基板には、所定厚みの桁部が形成されており、当該桁部における上記基板の短手方向一方側の所定領域は上記保護層に覆われており、当該保護層で覆われた領域に対して境界を挟んで当該桁部における上記基板の短手方向他方側に位置する領域は上記保護層に覆われていないことを特徴とする。
【0008】
好ましい実施の形態では、上記導体は、上記各発熱部から上記基板の短手方向他方側に延びる信号用導体を含む。
【0009】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記各発熱部よりも上記基板の短手方向他方側において、上記信号用導体を避けた領域に形成されている。
【0010】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記基板の長手方向両端部に形成されたものを含む。
【0011】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、所定のペースト材料を印刷・焼成することにより形成されている。
【0012】
好ましい実施の形態では、上記ペースト材料は、ガラス系ペースト材料である。
【0013】
好ましい実施の形態では、上記信号用導体は、上記基板上に形成した下地層上に形成されており、上記桁部は、上記下地層と同一材料で形成されている。
【0014】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記下地層と同時に同一厚みで形成されたものである。
【0015】
好ましい実施の形態では、上記下地層は、上記信号用導体の上記基板の短手方向他方側の下層に形成されており、当該下地層の上記基板の短手方向一方側の縁は、上記桁部における上記境界よりも上記基板の短手方向他方側に位置している。
【0016】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記下地層と独立している。
【0017】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記下地層と連続している。
【0018】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、平面視矩形である。
【0019】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、平面視円形である。
【0020】
好ましい実施の形態では、上記信号用導体は、上記基板上に形成した下地層上に形成されており、上記桁部は、上記下地層に重ねて形成されている。
【0021】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記基板に対する貼着物によって形成されている。
【0022】
好ましい実施の形態では、上記貼着物は、テープである。
【0023】
本発明の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドの製造方法は、基板と、この基板上の短手方向一方寄りに当該基板の長手方向に並ぶ複数の発熱部と、各発熱部に繋がる導体と、少なくとも上記複数の発熱部を覆う保護層と、を備えるサーマルプリントヘッドの製造方法であって、上記複数の発熱部および上記導体の形成を終えた複数の基板中間体を上記複数の発熱部が臨むように上記基板の短手方向にずらせて積層保持し、スパッタリングまたはCVD法を施すことにより上記保護層を形成するにあたり、上記基板中間体には、所定厚みの桁部を形成しておき、上記基板中間体の短手方向一方側の縁が、当該基板中間体が積層される下位の上記基板中間体における上記桁部の上記基板の短手方向中間部に位置するように複数の上記基板中間体を積層保持することを特徴とする。
【0024】
好ましい実施の形態では、上記導体は、上記各発熱部から上記基板の短手方向他方側に延びる信号用導体を含む。
【0025】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記各発熱部よりも上記基板の短手方向他方側において、上記信号系導体リードを避けた領域に形成する。
【0026】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記基板の長手方向両端部に形成されたものを含む。
【0027】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、所定のペースト材料を印刷・焼成することにより形成される。
【0028】
好ましい実施の形態では、上記ペースト材料は、ガラス系ペースト材料である。
【0029】
好ましい実施の形態では、上記信号用導体は、上記基板上に形成した下地層上に形成され、上記桁部は、上記下地層と同一材料で形成される。
【0030】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記下地層と同時に同一厚みで形成される。
【0031】
好ましい実施の形態では、上記下地層は、上記信号用導体の上記基板の短手方向他方側の下層に形成されており、当該下地層の上記基板の短手方向一方側の縁は、上記桁部における上記境界よりも上記基板の短手方向他方側に位置している。
【0032】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記下地層と独立している。
【0033】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記下地層と連続している。
【0034】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、平面視矩形である。
【0035】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、平面視円形である。
【0036】
好ましい実施の形態では、上記信号用導体は、上記基板上に形成した下地層上に形成されており、上記桁部は、上記下地層に重ねて形成されている。
【0037】
好ましい実施の形態では、上記桁部は、上記基板に対する貼着物によって形成される。
【0038】
好ましい実施の形態では、上記貼着物は、テープである。
【0039】
好ましい実施の形態では、上記保護層の形成後、上記貼着物を除去する。
【0040】
このような構成によれば、上位にある基板中間体の短手方向一方側の縁が下位にある基板中間体に設けた桁部に必ず載るので、仮に上位にある基板中間体の短手方向一方側の縁の下面にバリが突出していたとしても、このバリが下位にある基板中間体の上面に接触することが回避される。したがって、複数の基板中間体をそれらの発熱部を露出させつつ、短手方向にずらせて積層した状態でスパッタリング、あるいはCVD法によって保護層を形成する際に、上位にある基板中間体に生じたバリが下位にある基板中間体上の信号用導体を破損、または断線させるといった不都合の発生を解消することができる。
【0041】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの全体略示平面図である。
【
図2】
図1に示すサーマルプリントヘッドの拡大部分平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う切断端面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に沿う切断端面図である。
【
図5】
図2のIII-III線に沿う切断端面に相当する部分において、ヘッド基板の製造工程を説明する図である。
【
図6】
図2のIV-IV線に沿う切断端面に相当する部分において、ヘッド基板の製造工程を説明する図である。
【
図7】ヘッド基板の裏面縁部に形成されるバリの態様の説明図である。
【
図8】
図6に続くヘッド基板の製造工程を示す図であって、ヘッド基板は、
図2のIV-IV線に沿う切断端面に相当する端面で示している。
【
図9】
図5に続くヘッド基板の製造工程を示す図であって、ヘッド基板は、
図2のIII-III線に沿う切断端面に相当する端面で示している。
【
図10】
図8に続くヘッド基板の製造工程を示す図であって、ヘッド基板は、
図2のIV-IV線に沿う切断端面に相当する端面で示している。
【
図11】
図9に続くヘッド基板の製造工程を示す図であって、ヘッド基板は、
図2のIII-III線に沿う切断断面に相当する端面で示している。
【
図12】本発明の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドの拡大部分平面図である。
【
図13】
図12のXIII-XIII線に沿う切断端面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドの拡大部分平面図である。
【
図17】本発明の第4実施形態に係るサーマルプリントヘッドの切断端面図であって、第2実施形態についての
図13に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0044】
図1〜
図11は、本発明の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Aを示す。
図1〜
図4示すように、このサーマルプリントヘッド10Aは、ヘッド基板100と、回路基板300と、このヘッド基板100と回路基板300の下位においてこれらを搭載する放熱板500とを有する。ヘッド基板100は、その短手方向一方寄りにこのヘッド基板100の長手方向に並ぶ複数の発熱部110と、各発熱部110に繋がる導体200と、少なくとも複数の発熱部110を覆う保護層150と、を基本的に有する。回路基板300には、駆動ICが搭載されている。
【0045】
ヘッド基板100は、少なくともその上面(主面)100aは絶縁性をもっており、たとえば、アルミナセラミックによって形成される。このヘッド基板100はまた、平面視長矩形状をしているとともに、所定の厚みを有する。このヘッド基板100は、集合基板の状態で各単位基板領域に発熱部110やリード用導体200等を一括形成した後に、たとえば、レーザスクライブを経て単位基板に分割して得られる。
【0046】
ヘッド基板100は、いわゆる薄膜型と称されるタイプに分類されるサーマルプリントヘッド用に構成されたものであり、以下その構成を具体的に説明する。
【0047】
ヘッド基板100の主面100aの短手方向一方寄り(
図2の上方、
図3、
図4の左方)には、部分グレーズ130が形成されている。この部分グレーズ130は、
図3に示すように、断面においてなだらかな山状に突出した形態をもっており、ヘッド基板100の短手方向一方側の縁100bに対して平行をなすように直線状に延びている。この部分グレーズ130は、ガラス系ペーストを印刷、焼成することによって形成される。この部分グレーズ130の基板短手方向(副走査方向)の幅は、たとえば500〜700μm、頂部の高さはたとえば18〜50μmである。
【0048】
部分グレーズ130の上面には、この部分グレーズ130が延びる方向に直線状に並ぶ複数の発熱部110が形成されている。この発熱部110は、部分グレーズ130を含むヘッド基板100上に抵抗体220を層状に形成するとともに、部分グレーズ130の頂部において所定幅の領域に抵抗体220が露出するように導体200を層状に積層形成することにより形成される。抵抗体200は、たとえばTaSiO
2やTaNを材料とし、スパッタリング、またはCVD法により、たとえば厚み300〜2000Åに形成される。導体200は、たとえばAlを材料とし、スパッタリング、またはCVD法により、たとえば厚み0.3〜0.8μmに形成される。なお、導体200としては、Al層の下層にTa層を薄膜形成してもよい。本実施形態の場合、導体200は、ヘッド基板100の短手方向一方側から櫛歯状に延びて先端が部分グレーズ130上に至るコモン用導体202と、ヘッド基板100の短手方向他方側から各別に延びて先端が部分グレーズ130上において上記各コモン用導体202の先端と対向する信号用導体201とを含む。コモン用導体202は、コモン電極パターン202aに共通に接続されている。各信号用導体201は、ヘッド基板100の短手方向他方側に終端部201aを有しており、この終端部201aには、ワイヤボンディング用のパッド212が形成されている。なお、上記コモン用導体202、信号用導体201および各発熱部110を形成するために抵抗体層220および各導体層210に対し行うパターニングは、ヘッド基板100上に積層させた抵抗体層220および導体層210にフォトリソ法によるエッチングを施すことにより行うことができる。
【0049】
各信号用導体201のヘッド基板100の短手方向他方側の部分201bは、ヘッド基板100に形成した下地層140の上に積層して形成されている。この下地層140は、たとえばガラス系ペーストを印刷、焼成することにより、たとえば2〜100μmの厚みに形成される。この下地層140上にワイヤボンディング用のパッド212が位置することになり、これにより、上記パッド212へのワイヤボンディングを適切に行うことができる。なお、本実施形態では、下地層140のヘッド基板100の短手方向一方側の端縁140aは、ヘッド基板100の長手方向に延びており、かつ、部分グレーズ130から離間して位置させられている。
【0050】
ヘッド基板100における上記信号用導体201が存在しない所定位置に、桁部400が形成されている。この桁部400は、上記下地層140の形成時に同時に形成される。したがって、この桁部400は、下地層140と同じガラス系ペーストを印刷、焼成することにより、下地層140の厚みと同じ厚み(たとえば2〜100μm)に形成される。本実施形態において、この桁部400は、下地層140に対して離間した位置に、独立して設けられている。この桁部400の平面視形状は、本実施形態では矩形状であるが、これに限定されない。円形、三角形等、どのような平面形状をもっていてもよい。また、本実施形態において、この桁部400は、ヘッド基板100の長手方向の両端部に2箇所形成されているが、この桁部400の数は限定されない。なお、この桁部400のヘッド基板100の短手方向の位置は、短手方向一方側の端縁400aが、上記下地層140の端縁140aよりもヘッド基板100の短手方向一方側にずれていることが必要である。
【0051】
保護層150は、後記する方法によって、たとえばSiNやSiCを材料とし、スパッタリング、またはCVD法により、たとえば2〜8μmの厚みに形成される。本実施形態では、この保護層150は、ヘッド基板100の短手方向一方側の縁100bから短手方向他方側への所定幅の領域をヘッド基板100の長手方向全長にわたって覆い、発熱部110、コモン用導体202、および、信号用導体201を保護している。この保護層150のヘッド基板100の短手方向他方側の端縁150bは、ヘッド基板100の長手方向に直線状に延びており、桁部400をヘッド基板100の長手方向に横断しているとともに、上記下地層140の上記端縁140aよりもヘッド基板100の短手方向一方側にずれて位置している。
【0052】
したがって、
図4に良く表れているように、桁部400におけるヘッド基板100の短手方向一方側の領域は保護層150に覆われ、この保護層150で覆われた領域に対して境界402を挟んで反対側(ヘッド基板100の短手方向他方側)の領域は、保護層150で覆われていない。また、信号用導体201のうち、上記下地層140の上に形成されている部分は、上記保護層150に覆われておらず、したがって、ワイヤボンディング用のパッド212は、露出させられている。
【0053】
上記のように構成されたヘッド基板100は、放熱板500の上に重ね固定されるとともに、この放熱板500にはまた、駆動IC310が搭載された回路基板300が上記ヘッド基板100と隣接するようにして固定される。駆動IC310と上記信号用導体201のワイヤボンディング用のパッド212との間、および駆動IC310と回路基板300上の適所間は、ボンディングワイヤ320によって結線される。また、コモン電極パターン202aの適所と回路基板300上の適所間もまた、ボンディングワイヤ(図示略)によって結線される。そして、駆動IC310およびこれに結線されるボンディングワイヤ320は、たとえば、エポキシ系の保護樹脂330で覆われる。
【0054】
駆動IC310に入力される制御信号により、選択された信号用導体201への通電がオンさると、当該信号用導体201と上記部分グレーズ130上で対向するコモン用導体202との間に露出する抵抗体(発熱部110)が選択的に昇温させられ、これにより、部分グレーズ130の頂部領域に接触する感熱記録媒体(図示略)が発色し、あるいは、インクリボンの昇華性インクが記録紙に転写されて、印字が行われる。
【0055】
次に、上記構成のヘッド基板100の製造工程を
図5、
図6、
図8〜
図11を参照して説明する。なお、
図5、
図9、
図11において、ヘッド基板100は、
図2のIII-III線に沿う切断端面に相当する端面で示し、
図6、
図8、
図10において、ヘッド基板100は、
図2のIV-IV線に沿う切断端面に相当する端面で示している。
【0056】
図5(a)に示すように、ヘッド基板100の短手方向一方側寄りの上面に、部分グレーズ130を印刷、焼成により形成する。この部分グレーズ130の形成には、上記したように、たとえば、ガラス系ペーストを用いる。
【0057】
次に、
図5(b)および
図6(b)に示すように、ヘッド基板100の短手方向他方側寄りの上面に、下地層140を、ヘッド基板100の長手方向両端部に桁部400を、印刷、焼成により形成する。これら下地層140と桁部400とは、同一のガラス系ペーストを用いて同時に形成する。下地層140と桁部400を形成するためのガラスペーストは、軟化点温度が上記部分グレーズ130の形成に用いるガラス系ペーストよりも低いものが用いられる。
【0058】
次に、
図5(c)および
図6(c)に示すように、抵抗体層220を、TaSiO
2やTaNを材料としたスパッタリング、またはCVD法により、たとえば厚み300〜2000Åの厚みに形成する。
【0059】
次に、
図5(d)および
図6(d)に示すように、導体層210を、Alを用いたスパッタリング、またはCVD法により、たとえば0.3〜0.8μmの厚みに形成する。なお、Al層の形成に先立って、Taによる厚み0.1μm以下の薄膜層を形成しておくこともできる。
【0060】
次いで、
図5(e)に示すように、抵抗体層220および導体層210に対してフォトリソ法を用いた所定のエッチング処理を行うことにより、パターニングされたコモン用導体202および信号用導体201を形成する。こうして形成された信号用導体201は、ヘッド基板100の長手方向に隣接するものどうしが分離され、また、各信号用導体201の先端とコモン用導体202との間に、抵抗体層130が露出させられる。こうして露出させられた抵抗体層220が、発熱部110を形成する。なお、本実施形態では、
図6(e)に示すように、桁部400の上面に抵抗体層220およびその上層の導体層210を残置させているが、これに限らず、抵抗体層220および導体層210をエッチングにより除去してもよい。
【0061】
以上の工程は、複数行、複数列の単位基板領域が形成された集合基板(図示略)に対して行われ、この集合基板にたとえばレーザスクライブ法によって切断溝を形成し、この切断溝に沿って集合基板を分割することによって各単位ヘッド基板100が得られる。
【0062】
レーザスクライブ法は、集合基板の裏面側からレーザスポットを切断予定ラインに沿って移動させながら、高出力レーザを断続的に照射することにより行われる。この方法によってスクライブされ、かつ分割された単位ヘッド基板100の裏面周部には、
図7に示すように、高熱で溶融したセラミック材料が盛り上がって固化したような、数μm(たとえば2μm)以下の突出量の鋭利な突起(バリ)120が発生することがある。
【0063】
上記したように分割されたヘッド基板100に対する保護層150の形成は、次のようにして行われる。
【0064】
まず、
図8および
図9に示すように、複数枚のヘッド基板100を、それらの短手方向一方側の上面所定幅領域、すなわち、部分グレーズ130および発熱部110が形成された短手方向所定幅領域を露出させるようにずらせながら積層保持する。このとき、
図8に表れているように、上位のヘッド基板100の下面の上記短手方向一方側の縁100bが、下位のヘッド基板100の桁部400上に位置するようにする。すなわち、上位のヘッド基板100の上記縁100bが、下位のヘッド基板100の桁部400の中間部に載るようにする。この状態において、桁部400の厚みは上記したようにたとえば2〜100μmであるので、上位のヘッド基板100に裏面に突起(バリ)120が生じていたとしても、この突起(バリ)120の突出量が上記桁部400の厚み以下である限りにおいて、当該突起(バリ)120が下位のヘッド基板100の上面の信号用導体201に接触することはなく、信号用導体201を損傷、断線させるといった不具合は起こり得ない。
【0065】
より詳しくは、上位のヘッド基板100の裏面の縁100bの、ヘッド基板100の長手方向中間部のみに上記突起(バリ)120が生じ、下位のヘッド基板100の桁部400に載る部位に上記突起(バリ)120が生じていない場合であっても、桁部400の厚みが上記突起(バリ)120の突出量を上回る限りにおいて、上位のヘッド基板100の突起(バリ)120が下位のヘッド基板100の信号用導体201に接触し、かつ、これを損傷、断線させるといったことはない。
【0066】
そして、上位のヘッド基板100の縁100bの裏面側において、上記桁部400に載る部位に上記突起(バリ)120が生じている場合には、その突起(バリ)120の突出量だけさらに上位のヘッド基板100を下位のヘッド基板100から遠ざけることができるため、なおさら、上位のヘッド基板100の突起(バリ)120が下位のヘッド基板100の信号用導体201に接触することはなく、信号用導体201を損傷、断線させるといった可能性は低くなる。
【0067】
次いで、
図10および
図11に示すように、スパッタリング、あるいはCVD法により、複数のヘッド基板100における発熱部110を含むヘッド基板100の短手方向所定幅領域に、保護層150が一括形成され、
図1〜
図4に示し、かつ上記した構成のヘッド基板100が得られる。
【0068】
このような保護層150の形成方法では、上位のヘッド基板100が下位のヘッド基板100における保護層150を形成する必要のない領域を都合よくマスクすることができる。これにより、別途のマスクを必要とすることなく、また、保護層150の形成材料を節約しつつ、保護層150の形成を効率よく行うことが可能となり、しかも、上記したように、レーザスクライブ法を利用した先進的かつ効率的な基板分割方法を採用しながらも、このような基板分割方法によってヘッド基板100の裏面周囲に生じうる突起(バリ)120によってヘッド基板100の表面に形成された微細な幅の信号用導体201が損傷、断線するといった不具合の発生を回避することができる。
【0069】
本実施形態においては、桁部400は、下地層140と同時形成されているので、桁部を設けるための別途の工程は必要ない。
【0070】
図12、
図13は、本発明の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Bを示す。これらの図において、
図1〜
図4に示し、かつ上記した第1実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Aと同一または類似の部材または部分には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Bのヘッド基板100に設ける桁部400は、下地層140から一体的に延出した形態をもっている。すなわち、信号用導体201の下位にヘッド基板100の長手方向に延びて形成される下地層140の両端部から信号用導体201のない領域に半島状に一体延出し、先端平面視が矩形状をした桁部400が設けられている。この桁部400の端縁(ヘッド基板100の短手方向一方側の端)400aは、やはり、下地層140の端縁140aに対してヘッド基板100の短手方向一方側にずれて位置させられている。そして、本実施形態においても、桁部400におけるヘッド基板100の短手方向一方側の領域は保護層150に覆われ、この保護層150で覆われた領域に対して境界402を挟んで反対側(ヘッド基板100の短手方向他方側)の領域は、保護層150で覆われていない。また、信号用電極層201のうち、上記下地層140の上に形成されている部分は、上記保護層150に覆われておらず、ワイヤボンディング用のパッド212は、露出させられている。本実施形態において、桁部400は、下地層140と一体に連続しているから、当然に、下地層140と同時に形成される。また、桁部400の先端形状は、矩形にかぎらず、円弧状等、どのような形状をしていてもよい。
【0072】
ヘッド基板100に対する保護層150の形成は、
図5〜
図11を参照して上述したのと同様にして行われる。
図12、
図13において、境界402の位置は、保護層150の形成時に当該ヘッド基板100の上位に積層されるヘッド基板100の端縁100bの位置を示す。
【0073】
この実施形態に係るヘッド基板100においても、第1実施形態について上述したのと同様の利点を享受することができることは、明らかであろう。
【0074】
図14、
図15、
図16は、本発明の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Cを示す。これらの図において、
図1〜
図4に示し、かつ上記した第1実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Aと同一または類似の部材または部分には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0075】
本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Cのヘッド基板100に設ける桁部400は、下地層140に重ねてガラス系ペーストを印刷、焼成することによって、たとえば2〜100μmの厚みで設けられている。この桁部400の平面視形状は、矩形である。この桁部400の形成には、下地層140の形成に用いるガラス系ペーストよりも軟化点が低いガラス系ペーストが用いられる。下地層140は、信号用導体201の下層にたとえば2〜100μmの厚みに形成されるが、本実施形態では、そのヘッド基板100の短手方向一方側の端縁140aは、部分グレーズ130に対して比較的近接した位置に及んでおり、長手方向の端部は、ヘッド基板100の両端部まで及んでいる。桁部400はまた、信号用導体201、コモン用導体202、ないしコモン用配線パターン201aを形成する以前に形成され、本実施形態では、
図14および
図16に示されるように、コモン電極パターン202aが桁部400の上をヘッド基板100の短手方向に横断して延びている。本実施形態において、保護層150は、ヘッド基板100の短手方向一方側の所定幅領域を覆い、そのヘッド基板100の短手方向他方側の端縁150bは、下地層140の端縁140aよりもヘッド基板100の短手方向他方側に変位して位置させられ、かつ、桁部400の中間部をヘッド基板100の長手方向に横断している。したがって、本実施形態においても、桁部400におけるヘッド基板100の短手方向一方側の領域は保護層150に覆われ、この保護層150で覆われた領域に対して境界402を挟んで反対側(ヘッド基板100の短手方向他方側)の領域は、保護層150で覆われていない。また、信号用導体201のうち、ヘッド基板100の短手方向他方側の部分は、上記保護層150に覆われておらず、ワイヤボンディング用のパッド212は、露出させられている。ワイヤボンディング用のパッド212と回路基板300上の配線パターンとの間はボンディングワイヤ320で結線され、このボンディングワイヤ320は、駆動IC310を覆う保護樹脂330で覆われている。本実施形態においても、桁部の平面視形状は、矩形にかぎらず、円弧状等、どのような形状をしていてもよい。さらに、本実施形態では、桁部400の上面にコモン電極パターン202aが横断しているが、コモン電極パターン202aを、桁部400を避けるようにして形成して、桁部400の上面にコモン電極パターン202aを形成しないようにすることもできる。
【0076】
ヘッド基板100に対する保護層150の形成は、
図5〜
図11を参照して上述したのと同様にして行われる。
図14、
図16において、境界402の位置は、保護層150の形成時に当該ヘッド基板100の上位に積層されるヘッド基板100の端縁100bの位置を示す。
【0077】
この実施形態に係るヘッド基板100においても、第1実施形態について上述したのと同様の利点を享受することができることは、明らかであろう。
【0078】
図17は、本発明の第4実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Dを示す。これらの図においても、
図1〜
図4に示し、かつ上記した第1実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Aと同一または類似の部材または部分には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0079】
本実施形態に係るサーマルプリントヘッド10Dのヘッド基板100に設ける桁部400は、ヘッド基板100における信号用導体201が形成されていない、たとえば、ヘッド基板100の長手方向両端部の領域に、たとえば、30〜100μmの厚みのテープ410等のシート状の貼着物を設けることによって形成されている。このテープ410は、保護層150を設ける以前に設けられる。そして、このテープ410を貼着するべき位置は、ヘッド基板100上に下地層140が設けられる場合には、テープ410のヘッド基板100の短手方向一方側の端縁410aが下地層140の端縁140aよりもヘッド基板100の短手方向一方側にずれるように設定される。そして、本実施形態においても、桁部400におけるヘッド基板100の短手方向一方側の領域は保護層150に覆われ、この保護層150で覆われた領域に対して境界402を挟んで反対側(ヘッド基板100の短手方向他方側)の領域は、保護層150で覆われていない。また、信号用導体201のうち、上記下地層140の上に形成されている部分は、上記保護層150に覆われておらず、ワイヤボンディング用のパッド212は、露出させられている。また、桁部400の平面視形状は、矩形にかぎらず、円形等、どのような形状をしていてもよい。
【0080】
ヘッド基板100に対する保護層150の形成は、
図5〜
図11を参照して上述したのと同様にして行われる。
図14において、境界402の位置は、保護層150の形成時に当該ヘッド基板100の上位に積層されるヘッド基板100の端縁100bの位置を示す。テープ410は、保護層150の形成工程後、そのまま残置させておいてもよいし、除去してもよい。
【0081】
なお、本実施形態のように、桁部400をテープ410等の貼着物で形成する場合、ヘッド基板100上に下地層140が形成されているかどうかは、問われない。
【0082】
この実施形態に係るヘッド基板100においても、第1実施形態について上述したのと同様の利点を享受することができることは、明らかであろう。
【0083】
もちろん、この発明の範囲は上述した実施形態に限定されず、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0084】
たとえば、実施形態では、発熱部110の形態が、部分グレーズ130上において、部分グレーズ130の一方側(ヘッド基板100の短手方向一方側)のコモン電極パターン202aから櫛歯状に延びるコモン用導体202と、部分グレーズ130の他方側(ヘッド基板100の短手方向他方側)から延びる信号用導体201とが対向する領域に露出する抵抗体層220によって形成することとしたが、たとえば、特開2012−111051号公報に記載されているような、いわゆる折り返し式の導体を形成し、部分グレーズ上において、コモン側の導体と信号側の導体を対向させて発熱部110を形成するタイプの薄膜型サーマルプリントヘッドにおいて、ヘッド基板に保護層を形成する場合にも同様に本発明を適用することができる。
【0085】
また、実施形態では、部分グレーズ130上に発熱部110を設けているが、たとえば、ヘッド基板100上にいわゆる全面グレーズを形成し、この全面グレーズ上の所定部位に発熱部110を形成するタイプの薄膜型サーマルプリントヘッドにおいて、保護層150を形成する場合にも同様に本発明を適用することができる。この場合、全面グレーズを形成するためのガラス系ペーストよりれ軟化温度が低いガラス系ペーストを所定厚みに印刷、焼成することにより桁部400を形成したり、テープ等の貼着物を設けることにより桁部400を形成したりすればよい。
【0086】
さらに、実施形態では、ヘッド基板100には駆動ICを搭載せず、放熱板500上にヘッド基板100と隣接させて配置した回路基板300上に駆動IC310を搭載しているが、ヘッド基板100上に駆動ICを搭載するタイプのサーマルプリントヘッドにおいて、ヘッド基板100に保護層150を形成する場合にも同様に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
10A サーマルプリントヘッド
10B サーマルプリントヘッド
10C サーマルプリントヘッド
10D サーマルプリントヘッド
100 ヘッド基板
100a 主面(ヘッド基板の)
100b 縁(短手方向一方側)
110 発熱部
130 部分グレーズ
140 下地層
140a 端縁(下地層の)
150 保護層
150b 端縁
201 信号用導体
201a 終端部
201b 下地層上に形成される部分(信号用導体)
212 パッド(ワイヤボンディング用)
202 コモン用導体
202a コモン電極パターン
210 導体層
220 抵抗体層
300 回路基板
310 駆動IC
320 ボンディングワイヤ
330 保護樹脂
400 桁部
400a 端縁
410 テープ
500 放熱板