【解決手段】基台8の上に垂直に立設した背面板9の前面にスクリーン版1を配置し、基台と位置決め材10で版を位置決めして固定部材11で固定する。サーマルヘッド17を駆動しながら各移動部MX,MY,MZによりX,Y,Z の各方向に移動し、スクリーンに所望の画像を製版する。スクリーン版は水平面に対して垂直なので、スクリーン上に埃等が落下してもスクリーン版の表面を滑って製版領域外へ移動し、付着しない。製版の品質が埃等のために低下する可能性は減少する。Z軸方向移動部MZにはZ方向の付勢手段があり、Z軸方向移動部MZでサーマルヘッドのZ方向の位置を調整すればサーマルヘッドが版を押す力を微妙に調整できる。
前記移動機構は、前記保持台に保持された前記スクリーン版の前記スクリーンの表面に平行な面内で互いに直交する2方向に前記サーマルヘッドをそれぞれ移動させる第1移動手段を具備し、
前記押圧機構は、前記スクリーンの表面に垂直な方向に前記サーマルヘッドを移動させる第2移動手段と、前記第2移動手段が前記サーマルヘッドを前記スクリーンの表面に当接させた際に前記サーマルヘッドを前記スクリーンの表面に所定の力で接触させる付勢手段を具備することを特徴とする請求項2に記載の製版装置。
前記保持台に保持された前記スクリーン版の上方に、前記スクリーンの表面よりも前方に突出したカバーを取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の製版装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載された製版装置によれば、スクリーン版を製版用テーブルの上に水平に配置し、感熱材が設けられているスクリーン版の表面を上側に露出した状態とするため、埃等の異物がスクリーン版の表面に落下して付着しやすく、製版時にはこれがサーマルプリントヘッドと感熱材の接触を阻害して製版不良が発生することがあった。
【0005】
このような不都合を回避するため、通常は、製版を開始する直前に、ブラシがけ等の清掃作業を行い、スクリーン版の表面に落下したホコリを除去しているが、ブラシがけを行なうことで静電気が発生し、更に別のホコリを吸着してしまうこともあった。
【0006】
また、前記特許文献1に記載された製版装置によれば、サーマルヘッド及びその支持部材からなる可動部の重量によってスクリーンを押圧し、製版に必要な押圧力を得ているため、この押圧力を可動部の重量以下に設定したり、微妙に増減させる調整を行うことはできなかった。このような押圧力の微妙な調整を可能とするためには、可動部の重量を任意の程度に軽減できるような調整機構を別途設ける必要があり、構造が複雑になり、装置の製造コストが増大してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術及びその課題に鑑みてなされたものであり、スクリーン印刷版の表面に落下してくる埃がスクリーンに付着するのを防いで製版不良の発生を可及的に減少させることができ、またサーマルヘッドやその支持部材の重量に影響されることなく、サーマルヘッドによるスクリーンの押圧力をサーマルヘッド等の重量よりも軽くしたり、微妙に調整することができる製版装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された製版装置は、
紗と感熱フィルムからなるスクリーンを枠体に貼り合わせてなるスクリーン版の前記スクリーンをサーマルヘッドで製版する製版装置であって、
前記スクリーンが傾斜した状態となるように前記スクリーン版を保持する保持台を有することを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された製版装置は、請求項1記載の製版装置において、
前記保持台に保持された前記スクリーン版の前記スクリーンの表面に沿って前記サーマルヘッドを移動させる移動機構と、
前記サーマルヘッドによって前記スクリーンの表面を所定の力で押圧する押圧機構と、
を有することを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載された製版装置は、請求項2に記載の製版装置において、
前記移動機構が、前記保持台に保持された前記スクリーン版の前記スクリーンの表面に平行な面内で互いに直交する2方向に前記サーマルヘッドをそれぞれ移動させる第1移動手段を具備し、
前記押圧機構が、前記スクリーンの表面に垂直な方向に前記サーマルヘッドを移動させる第2移動手段と、前記第2移動手段が前記サーマルヘッドを前記スクリーンの表面に当接させた際に前記サーマルヘッドを前記スクリーンの表面に所定の力で接触させる付勢手段を具備することを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載された製版装置は、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の製版装置において、
前記保持台に保持された前記スクリーン版の上方に、前記スクリーンの表面よりも前方に突出したカバーを取り付けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された製版装置によれば、スクリーン版を保持台に保持させると、スクリーン版は水平面に対して傾斜した状態となる。このため、第1に、スクリーン版のスクリーン上に埃等が落下したとしても、この埃等は傾斜したスクリーン版の表面を滑って製版領域外へ移動するので、スクリーンの製版領域に埃等が付着する可能性は小さい。従って、製版時には、サーマルヘッドはスクリーンに対して埃等を介在させることなく正規の状態で接触できる可能性が高まるため、製版の品質が埃等のために低下する可能性は小さくなる。第2に、スクリーン版を水平面に平行に設置する従来タイプの装置に比べて装置の設置面積が小さくて済む。また、このように設置面積が小さく、水平面への投影面積が小さいことから、作業中等に装置内へ異物等が混入しにくく、万一混入した場合にも除去、清掃がし易い。第3に、前記従来タイプの装置に比べ、装置の近傍で作業する作業者がスクリーン版の全面を視認しやすいため作業性が良く、特に作業者から見て製版領域の奥側の見通しが良好であるため操作ミスが起こりにくい。第4に、保持台上に傾斜して設置されたスクリーン版は、保持台上における面方向の位置決めが自重でなされるため、保持台上の所要の位置に自動的かつ正確に位置決めでき、装着ミスが生じにくい。
【0013】
請求項2に記載された製版装置によれば、製版時、保持台に傾斜した状態で保持されたスクリーン版のスクリーンの表面にサーマルヘッドを接触させながら、サーマルヘッドを移動機構で移動させることができる。その際、サーマルヘッドがスクリーンの表面を押圧する押圧力は、押圧機構によって調整することができる。このため、傾斜したスクリーンに対するサーマルヘッドの押圧力を諸条件に合わせて微調整することができ、製版の品質を向上させることができる。
【0014】
請求項3に記載された製版装置によれば、製版時、傾斜したスクリーンの表面にサーマルヘッドを接触させながら、スクリーンの表面に平行な面内で互いに直交する2方向に沿ってサーマルヘッドを第1移動手段で移動させることができる。その際、サーマルヘッドがスクリーンの表面を押圧する押圧力は、スクリーンの表面に対して垂直な方向に関するサーマルヘッドの位置を第2移動手段によって設定することにより、サーマルヘッドをスクリーンの表面に向けて付勢する付勢手段の付勢力によって決まる。スクリーンの表面に垂直な方向に関するサーマルヘッドの位置を第2移動手段によって変えることにより、傾斜したスクリーンに対するサーマルヘッドの押圧力の微調整をより確実に行うことができ、製版の品質を一層向上させることができる。
【0015】
請求項4に記載された製版装置によれば、保持台に保持されたスクリーン版の上方に、スクリーンの表面よりも前方に突出したカバーが設けられているので、スクリーンの表面に埃等が落下しにくく、スクリーンの製版領域に埃等が付着する可能性は一層小さくなる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1実施形態に係る製版装置等について
図1〜
図6を参照して説明する。
図1及び
図2は、第1実施形態の製版装置の製版対象であるスクリーン版1を示している。スクリーン版1は、断面が矩形の棒材を矩形に組み合わせて構成した枠体2と、この枠体2の一方の面に所定の張力で弛みなく貼り合わせたスクリーン3とによって構成されている。スクリーン3は、ポリエステル等の繊維を規則的なパターンに編んだ紗4と、ポリエステル等からなる感熱フィルム5とを貼り合わせたシート体であって、紗4の側が枠体2の一方の面に貼り付けられ、枠体2とは反対側にある感熱フィルム5の側が、後述するサーマルヘッド27の熱によって製版される。
【0018】
図3及び
図4(a)に示すように、製版装置6は、前記スクリーン版1を保持する保持台7を備えている。保持台7は、下面の4隅に設けられた脚部によって水平な設置面上に水平に載置される矩形状の基台8と、その基台8の上面の奥側の一長辺に沿って垂直に立設された矩形の背面板9とを有している。背面板9の前面の一側方には、垂直な一短辺に平行かつ基台8の上面に垂直な位置決め片10が取り付けられている。スクリーン版1を保持台7に保持させる場合には、スクリーン版1の枠体2の露出した他方の面を背面板9の表面に当接させ、枠体2の下面を基台8の上面に当接させ、枠体2の一側面を位置決め片10に当接させる。そして、枠体2の他側面の短辺を固定部材11によって背面板9に対して固定する。
【0019】
図4(b)に示すように、固定部材11は、スクリーン版1の前面であるスクリーン3及び枠体2の側面に接する係止部12と、係止部12が枠体2の側面に接している部分から外方に張り出して背面板9に磁着する固定部13とを有している。なお、このような固定部材11でスクリーン版1を背面板9の所定位置に固定するためには、固定部材11のうち、少なくとも固定部13が磁石からなり、背面板9のうち固定部13が接する部分が磁性体から構成されていることが必要である。
【0020】
上述したように、スクリーン版1は、その背面を製版装置6の保持台7の前面に接するように配置し、その枠体2の2辺を位置決め片10及び基台8の上面にそれぞれ突き当てて他の1辺で固定される。このように、スクリーン版1は、保持台7上における面方向の位置決めが自重でなされるため、保持台7上の所要の位置に対する位置決めを自動的かつ正確に行うことができ、装着ミスが生じにくい。
【0021】
この実施形態では、スクリーン版1の製版面であるスクリーン3は、水平面に対して傾斜した状態となるように保持されている。ここで前記「傾斜」とは、水平面に対する角度が0度を越え(0度は含まない)、90度以下(90度を含む)の角度を意味する。本実施形態の傾斜角度は90度である。本実施形態のような傾斜角度が90度の場合を除き、上記傾斜範囲にある本発明のスクリーン版1のスクリーン3は、真上から視認した場合には、実面積より狭い平面投影面積のスクリーン3が見える状態となる。
【0022】
スクリーン版1をこのような傾斜状態に保持させるようにしたのは、第1には、埃等がスクリーン版1のスクリーン3上に落下して製版領域内で付着するのを可及的に防止するためである。本実施形態では、スクリーン版1は製版装置6に傾斜して設定されるため、埃等がスクリーン3の上に落ちても表面を滑ってスクリーン3の製版領域外へ出てしまい、スクリーン3の製版領域に埃等が付着して残る可能性は小さくなる。特に、土埃や砂埃は静電気でスクリーン3に付着することがなく、その重量で落下しやすいのでスクリーン3の傾斜によって排除しやすい。従って、製版時には、後述するサーマルヘッド27とスクリーン3の間に埃等は介在しにくく、製版の品質が埃等のために低下する可能性が小さくなる。
【0023】
スクリーン版1を傾斜状態に保持させたことによるその他の効果としては、第2に、スクリーン版1を水平面に平行に設置する従来タイプの装置に比べ、水平面への投影面積が小さく、装置の設置面積が小さくて済む点が挙げられる。また、このため、作業中等に装置内へ異物等が落下、混入しにくく、万一混入した場合にも除去、清掃がし易い。
【0024】
第3に、前記従来タイプの装置に比べ、装置の近傍で作業する作業者がスクリーン版1の全面を視認しやすいため作業性が良く、特に作業者から見て製版領域の奥側の見通しが良好であるため操作ミスが起こりにくい点が挙げられる。これは、特に大版のスクリーン版を設置して製版する際に顕著な効果である。
【0025】
このように、スクリーン3に対して埃等が付着しにくい等の傾斜による効果を得る観点からは、傾斜角度の最適値は80度〜85度がもっとも好ましい。但し、以上説明した第1実施形態では装置としての設計・製作が容易で製造コストを低く抑えるとの観点も含めて、上述したように傾斜角度を90度としている。この傾斜角度でも実用上十分な作業性を得ることはできる。
【0026】
図3及び
図4(a)中に示すように、この製版装置6及び製版装置6に設置されたスクリーン版1には、後述するサーマルヘッド27による製版動作の方向を規定する基準として、XYZの直交座標系が想定されている。すなわち、背面板9の表面及びスクリーン版1の製版面であるスクリーン3の面
内において、水平な横方向がX軸方向であり、背面板9の表面及びスクリーン版1の製版面であるスクリーン3の面内において、X軸方向と直交する垂直な縦方向がY軸方向であり、背面板9の表面及びスクリーン版1の製版面であるスクリーン3の面に対して垂直な方向がZ軸方向である。
【0027】
なお、本実施形態では、保持台7の背面板9が水平面に対して垂直であるため、各軸の定義は上述のようになったが、保持台7の背面板9が水平面に対して垂直以外の角度で傾斜している場合(後述する第5実施形態の
図12のような場合)は、X軸方向は同じであるが、Y軸方向は、背面板9の表面及びスクリーン版1の製版面内において、X軸方向に垂直な方向であり、Z軸方向は、背面板9の表面及びスクリーン版1の製版面に対して垂直な方向である。
【0028】
図3及び
図4に示すように、製版装置6は、保持台7上のスクリーン版1の表面に沿ってサーマルヘッド27を移動させる移動機構として第1移動手段を有している。第1移動手段は、保持台7上のスクリーン版1の表面に平行な面内でサーマルヘッド27をX軸方向に移動させるX軸方向移動部MXと、同Y軸方向に移動させるY軸方向移動部MYから構成される。
【0029】
図3及び
図4(a)に示すように、X軸方向移動部MXは、Y軸方向に平行な縦長の部材であり、X軸方向に沿って任意に往復移動することができる。このX軸方向移動部MXをX軸方向に任意に往復移動させるための機構について説明する。
基台8の前端の内部には、X軸方向に平行にX軸方向駆動軸15が設けられており、このX軸方向駆動軸15は基台8の内部に設けられたX軸方向駆動源16により所望の方向に回転駆動することができる。また、背面板9の上端の内部には、X軸方向に平行にX軸方向案内軸17が設けられている。そして、X軸方向移動部MXの下端部には、X軸方向駆動軸15に螺合する第1ナット部18が設けられており、また、X軸方向移動部MXの上端部には、Z軸方向に平行な連結体19を介して第1摺動体20が設けられており、この第1摺動体20はX軸方向案内軸17に摺動自在に挿通されてX軸方向に移動可能となっている。従って、X軸方向駆動源16を駆動してX軸方向駆動軸15を回動させれば、これに螺合した第1ナット部18はX軸方向駆動軸15に沿って移動するので、X軸方向移動部MXは上端部をX軸方向案内軸17に案内されてX軸方向に移動することができる。
【0030】
図3及び
図4(a)に示すように、Y軸方向移動部MYは、X軸方向移動部MXに設けられており、X軸方向移動部MXの中でY軸方向に沿って任意に往復移動することができる。このY軸方向移動部MYをY軸方向に任意に往復移動させるための機構について説明する。
X軸方向移動部MXは、Y軸方向に平行な2本のY軸方向案内軸21,21と、2本のY軸方向案内軸21,21の間にY軸方向に平行に設けられた1本のY軸方向駆動軸22とを有している。このY軸方向駆動軸22はX軸方向移動部MXの内部に設けられたY軸方向駆動源23により所望の方向に回転駆動することができる。そして、Y軸方向移動部MYは、2本のY軸方向案内軸21,21に摺動自在にそれぞれ挿通された2個の第2摺動部24,24(
図3及び
図5(a)参照)と、Y軸方向駆動軸22に螺合した第2ナット部25(
図5(a)参照)を有している。従って、Y軸方向駆動源23を駆動してY軸方向駆動軸22を回動させれば、これに螺合した第2ナット部25はY軸方向駆動軸22に沿って移動するので、Y軸方向移動部MYはY軸方向案内軸21,21に案内されてY軸方向に移動することができる。
【0031】
図4及び
図5に示すように、製版装置6は、保持台7上のスクリーン版1の表面をサーマルヘッド27で押圧する押圧機構として、スクリーン3の表面に垂直な方向に沿ってサーマルヘッド27を任意に往復移動させる第2移動手段と、サーマルヘッド27をスクリーン3の表面に所定の力で接触させるための付勢手段を有している。
【0032】
図5及び
図6に示すように、Y軸方向移動部MYには、Z軸方向にサーマルヘッド27を任意に往復移動させる第2移動手段として、Z軸方向移動部MZが設けられている。
図5及び
図6に示すように、Z軸方向移動部MZは、Y軸方向移動部MYに対してZ軸方向に沿って所定の範囲で往復移動することができる。このZ軸方向移動部MZをZ軸方向に任意に往復移動させるための機構について説明する。Y軸方向移動部MYは、Z軸方向に平行な2本のZ軸方向案内軸28,28と、2本のZ軸方向案内軸28,28の間にZ軸方向に平行に設けられた1本のZ軸方向駆動軸29とを有している。このZ軸方向駆動軸29はY軸方向移動部MYに設けられたZ軸方向駆動源30により所望の方向に回転駆動することができる。そして、Z軸方向移動部MZは、2本のZ軸方向案内軸28,28に摺動自在にそれぞれ挿通されるとともに、Z軸方向駆動軸29に螺合した第3ナット部31を有している。従って、Z軸方向駆動源30を駆動してZ軸方向駆動軸29を回動させれば、これに螺合した第3ナット部31の作用により、Z軸方向移動部MZはZ軸方向案内軸28,28に案内されてZ軸方向に移動することができる。
【0033】
図5(a)及び
図6(a)に示すように、Z軸方向移動部MZのスクリーン版1に近い側には、Y軸方向に平行な支軸32が設けられており、この支軸32には、Y軸に平行な視線で略L字形に見える形状の支持板33が、その角部において回動自在に軸支されている。この支持板33の先端側には製版手段としてのサーマルヘッド27が取りつけられている。また、この支持板33の後端側には孔34が設けられており、Z軸方向移動部MZに設けられた係止部35が孔34に対して挿入されている。係止部35の先端は曲折されて抜け止めとなっており、支持板33が係止部35から抜けないようになっている。従って、サーマルヘッド27が先端に取りつけられた当該支持板33は、その後端部が、Z軸方向移動部MZと係止部35の抜け止めの間で旋回できる範囲においてのみ、支持軸32を中心として回動可能である。
【0034】
詳細は図示しないが、このサーマルヘッド27は、支軸32から遠い側の先端縁に、Y軸方向に沿って所定の製版幅に並んだ多数の発熱素子を有している。
図6に示すように、Z軸方向移動部MZが、Z軸方向についてスクリーン版1に近い所定の位置に設定された状態で、支持板33がスクリーン版1に向けて揺動すると、サーマルヘッド27の先端縁にある発熱素子がスクリーン3に接する。この状態で発熱素子を製版情報に従って駆動しながら、Z軸方向移動部MZをX軸方向移動部MXによってX軸方向に移動させれば、スクリーン3の製版面において、X軸方向に平行でY軸方向に所定の製版幅を有する帯状の領域を連続的に製版することができる。
図3に示すスクリーン版1のスクリーン3には、Y軸方向について製版幅で区画した4つの帯状のレーンL1〜L4が想像線(一点鎖線)で示してあるが、これら各レーンLが、サーマルヘッド27をY軸方向の各位置においてX軸方向に移動させることで製版できる領域である。なお、
図3には、製版画像例としてA、B、Cの3文字の図柄を示している。
【0035】
図5及び
図6に示すように、サーマルヘッド27をスクリーン3の表面に所定の力で接触させるための付勢手段として、Z軸方向移動部MZには、アーム板40と重り41が設けられている。
Z軸方向移動部MZには、X軸方向に平行な回動軸36が設けられている。この回動軸36には、X軸に平行な視線で略L字形に見える形状のアーム板40が取りつけられている。アーム板40は、相対的に長いL字形の長半部40aが、相対的に短いL字形の短半部40bよりも、Y方向の上方に位置するような姿勢で配置され、その角部において回動軸36で回動自在に軸支されている。ここで、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、アーム板40が取りつけられている回動軸36はY方向に所定の長さを有しており、アーム板40はその先端に取りつけられているため、回動するアーム板40は、その短半部40bの先端を除いて、前述した回動する支持板33とは干渉することがない。
【0036】
そして、このアーム板40の長半部40aの端部には重り41が取り付けられているため、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、X軸方向に平行な視線で見た場合、アーム板40は常に反時計周り方向の付勢力を受けている。また、アーム板40の短半部40bの先端は、前述した回動する支持板33の先端側の裏面にある半球状の押圧部37に当接している。従って、アーム板40の短半部40bの先端は、支持板33の押圧部37をスクリーン版1に向けて常に重り41の自重で押圧し、サーマルヘッド27をスクリーン3の方向に押圧するようになっている。
【0037】
次に、以上説明した第1実施形態の製版装置6における作用効果を説明する。
図3及び
図4(a)に示すように、この製版装置6によれば、スクリーン版1を保持台7に設置した場合、スクリーン版1は、その自重を保持台7に支持され、背面板9と位置決め片10に支えられて固定部材11で背面板9に固定される。このため、スクリーン版1の位置決めは精密に行うことができる。
【0038】
保持台7に設置されたスクリーン版1は、水平面に対して垂直な状態で位置決めされる。このため、埃等がスクリーン版1のスクリーン3上に落下しても、この埃等はスクリーン3の表面を滑って製版領域の外に落ちるので、スクリーン3の製版領域に付着する可能性は小さい。従って、製版時には、サーマルヘッド27はスクリーン3に対して埃等を介在させることなく正規の状態で接触でき、製版の品質が埃等のために低下することはない。
【0039】
製版時には、サーマルヘッド27をスクリーン3に適当な圧力で当接させ、サーマルヘッド27を製版信号で駆動しながら、X軸方向移動部MXとY軸方向移動部MYを適宜制御してサーマルヘッド27を移動させることにより、スクリーン3の製版領域に所望の製版を施すことができる。
【0040】
製版時にサーマルヘッド27がスクリーン3を押圧する押圧力は、Z軸方向移動部MZのZ軸方向の位置を調整することによって調整できる。
図5に示すように、Z軸方向移動部MZが相対的にスクリーン3から十分離れた位置にある時、アーム板40は重り41の重量によってスクリーン版1へ向けて回動し、その短半部40bの先端が支持板33の押圧部37を押す。押された支持板33及びサーマルヘッド27は、スクリーン3に向けて最も突出した位置に設定される。支持板33は、Z軸方向移動部MZにある係止部35の抜け止めに引っ掛かるので、これ以上スクリーン版1に向けて回動することはなく、サーマルヘッド27はこの位置で停止した状態になる。
【0041】
図5に示した位置からZ軸方向移動部MZをスクリーン3に近接させ、
図6に示すようにサーマルヘッド27をスクリーン3に接触させる。Z軸方向移動部MZをスクリーン3により近接させ、サーマルヘッド27がスクリーン3を押し込む量が大きくなるほど、
図6(b)に示すようにアーム板40はY−Z面内において時計方向の回転を受け、重り41がより高く持ちあげられるため、サーマルヘッド27がスクリーン3に加える圧力も増大する。
【0042】
第1実施形態によれば、スクリーン版1は垂直に設置されるため、スクリーン3にはスクリーン3の自重が面に垂直な方向に加わることはなく、従って、スクリーン3が自重で撓んだ状態になることはない。そして、製版時、サーマルヘッド27がスクリーン3の表面を押圧する押圧力は、スクリーン3からの反力によって押し戻されたアーム板40の重り41による付勢力によって定まる。従って、スクリーン3の表面に垂直な方向に関するサーマルヘッド27の位置をZ軸方向移動部MZで調整することにより、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の押し込み量を調整すれば、重り41の位置が調整され、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の押圧力の微妙な調整を確実に行うことができ、製版の品質を向上させることができる
【0043】
なお、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の押圧力を調整するため、サーマルヘッド27をZ軸方向に移動させる量(長さ)は、スクリーン版1のサイズやスクリーン3の張力その他の諸条件にもよるが、一般的には( )ミリ程度である。一台の本実施形態の製版装置6で諸条件が異なる複数種類のスクリーン版1に対応しようとする場合には、付勢手段(本実施形態では重り41)を他のものに変更することにより、付勢力(本実施形態では重り41の重さ)を変えてスクリーン3に対するサーマルヘッド27の押圧力の調整範囲を変更することとしてもよい。
【0044】
次に、本発明の第2実施形態に係る製版装置について
図7及び
図8を参照して説明する。第2実施形態と第1実施形態の相違点は、スクリーン3の表面をサーマルヘッド27で押圧する押圧機構にある。以下、当該相違点の構成及び作用を中心に説明し、その他の部分は第1実施形態の図示及び説明を援用して省略する。
【0045】
図7及び
図8に示すように、Z軸方向移動部MZには、第1実施形態と同様、サーマルヘッド27が設けられたL字形の支持板33が支軸32を中心に回動自在に軸支されている。
図7(b)に示すように、この支持板33の支軸32には、付勢手段としてのねじりコイルばね50が介装されており、支持板33及びサーマルヘッド27をスクリーン版1に向けて付勢している。
【0046】
図7に示すように、サーマルヘッド27をスクリーン3から離すと、支持板33及びサーマルヘッド27はねじりコイルばね50に付勢されて支持板33が係止部35の抜け止めに係止する位置で停止するが、
図8に示すように、サーマルヘッド27をスクリーン3に接触させると、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の位置で決まるねじりコイルばね50の変形量に応じた押圧力がスクリーン3に加わる。すなわち、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の位置を変えることでサーマルヘッド27がスクリーン3に与える押圧力を調整することができる。
【0047】
第2実施形態によれば、製版時、サーマルヘッド27がスクリーン3の表面を押圧する押圧力は、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の位置で決まるねじりコイルばね50の変形量で決まる。従って、スクリーン3の表面に垂直な方向に関するサーマルヘッド27の位置をZ軸方向移動部MZで調整することにより、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の押し込み量を調整すれば、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の押圧力の微妙な調整を確実に行うことができ、製版の品質を向上させることができる。
【0048】
なお、第2実施形態の製版装置で複数種類のスクリーン版1に対応しようとする場合には、付勢手段(本実施形態ではねじりコイルばね50)を他のものに変更することにより、付勢力(本実施形態ではねじりコイルばね50のばね定数で決まる)を変えてスクリーン3に対するサーマルヘッド27の押圧力の調整範囲を変更することとしてもよい。
【0049】
次に、本発明の第3実施形態に係る製版装置について
図9及び
図10を参照して説明する。第3実施形態と第1実施形態の相違点は、スクリーン3の表面をサーマルヘッド27で押圧する押圧機構にある。以下、当該相違点の構成及び作用を中心に説明し、その他の部分は第1実施形態の図示及び説明を援用して省略する。
【0050】
図9及び
図10に示すように、Z軸方向移動部MZは、Z軸方向案内軸に摺動自在に挿通されるとともにZ軸方向駆動軸29に螺合した第3ナット部材31と、この第3ナット部材31とは別体であってZ軸方向案内軸28及びZ軸方向駆動軸29に挿通されたブロック体51とを有している。また第3ナット部材31とブロック体51の間のZ軸方向案内軸28には付勢手段としての圧縮コイルばね52が介装されている。また、第3ナット部材31の上面及び下面のブロック体51側には係止体43が設けられている。係止体43は、ブロック体51の上面及び下面に沿って延設され、その先端がブロック体51側に折り曲げられている。従って、第3ナット部材31がスクリーン版1へ接近する方向に移動する場合には、第3ナット部材31は圧縮コイルばね52を介してブロック体51を同方向に押し、第3ナット部材31がスクリーン版1から離れる方向に移動する場合には、第3ナット部材31は係止体43をブロック体51に係止させてブロック体51を同方向に引っ張って移動させる。そして、前記ブロック体51には、支持板44を介してサーマルヘッド27が取りつけられている。
【0051】
図9に示すように、Z軸方向駆動軸29を回動させて第3ナット部材31をスクリーン版1から離す方向に移動させると、係止体43によって第3ナット部材31に引っ張られたブロック体51及びこれに取りつけられたサーマルヘッド27もスクリーン3から離れる方向に移動する。
図10に示すように、Z軸方向駆動軸29を回動して第3ナット部材31をスクリーン版1に接近する方向に移動させると、ブロック体51に取りつけられたサーマルヘッド27もスクリーン3に接近する方向に移動し、スクリーン3に押し付けられる。これにより、圧縮コイルばね52が縮退し、その変形量に応じた押圧力がスクリーン3に加わる。すなわち、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の位置を変えることでサーマルヘッド27がスクリーン3に与える押圧力を調整することができる。
【0052】
第3実施形態によれば、製版時、サーマルヘッド27がスクリーン3の表面を押圧する押圧力は、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の位置で決まる圧縮コイルばね52の変形量で決まる。従って、スクリーン3の表面に垂直な方向に関するサーマルヘッド27の位置をZ軸方向移動部MZで調整することにより、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の押し込み量を調整すれば、スクリーン3に対するサーマルヘッド27の押圧力の微妙な調整を確実に行うことができ、製版の品質を向上させることができる。
【0053】
なお、第3実施形態の製版装置で複数種類のスクリーン版1に対応しようとする場合には、付勢手段(本実施形態では圧縮コイルばね52)を他のものに変更することにより、付勢力(本実施形態ではねじり圧縮コイルばね52のばね定数で決まる)を変えてスクリーン3に対するサーマルヘッド27の押圧力の調整範囲を変更することとしてもよい。
【0054】
次に、本発明の第4実施形態に係る製版装置6について
図11の右側面図を参照して説明する。
図11に示すように、背面板9の上面には、保持台7の平面視形状のほぼ全面を覆う形状、面積である庇状のカバー45が水平な姿勢で着脱可能に取りつけられており、保持台7に保持されたスクリーン版1を上方から覆っている。この製版装置6’によれば、スクリーン3の表面に埃等が落下しにくく、スクリーン3の製版領域に埃等が付着する可能性は前記第1乃至第3実施形態よりもさらに小さくなる。また、このようなカバー45を設けてもスクリーン版1の製版面が作業者にとって見にくくなることはなく、作業上の支障にはならない。
なお、第4実施形態と前記第1乃至第3実施形態の相違点は上記カバー45のみであり、その他の構成は同一であり説明を省略する。
【0055】
次に、本発明の第5実施形態に係る製版装置6”について
図12の右側面図を参照して説明する。
図12に示すように、この製版装置6の基台8aは、上面が平坦面である点は第1乃至第4実施形態と同一であるが、奥行き方向の寸法が大きく、後方に向けて下がるように傾斜している点で、第1乃至第4実施形態と異なっている。そして、基台8aの上面には、その奥行き方向の中央よりやや後方に、奥側の一長辺に平行に背面板9を垂直に立設し、背面板9の背面と基台8aの上面との間には三角形の支持部材46を設けた。なお、
図12において水平面から時計周り方向に測った基台8aの上面までの角度は約5度であり、従って
図12において水平面から反時計周り方向に測った背面板9の表面までの角度は約85度になる。この製版装置6によれば、スクリーン3の表面に埃等が落下しにくく、スクリーン3の製版領域に埃等が付着する可能性が小さい点は、前記第1乃至第3実施形態と概ね同程度であるが、前記第1乃至第4実施形態に比べ、装置の近傍で作業する作業者がスクリーン版1の全面を視認しやすく、製版領域の奥側の見通しが良好で操作ミスが起こりにくい効果は前記第1乃至第4実施形態よりもむしろ大きい。
【0056】
さらに、この製版装置6”によれば、背面板9の上側が後方に傾いているため、背面板9の表面の上に配置したスクリーン版1に加わる重力のZ軸方向分力は、背面板9の表面に加わり、スクリーン版1をZ軸方向に位置決めする作用も得られる。さらに、この背面板9を、XY平面を一致させたままの状態で、表面の略中央に設けたZ軸に平行な仮想的な回転軸を中心として若干角度回動させ、傾斜したスクリーン版1の枠体2の底面と一側面を保持台側の位置決め部材等にそれぞれ突き当てて保持する構成とすれば、さらに自重によるX軸方向及びY軸方向の位置決め作用も得られる。
なお、背面板9自体及びその他の構成は第4実施形態と同一であり説明を省略する。
【0057】
また、
図12に示すように、この実施形態では、第4実施形態の場合と同様、カバー45を背面板9の上面に設ける構成を加えてもよい。
図12の例では、カバー45を背面板9の上面に平行に取りつけているが、カバー45の配置を水平面と平行にし、かつ、背面板9が水平面に近づくにつれてカバー45の長さを大きくしてカバー45で背面板9の前面を覆うようにすることが好ましい。このようにすれば、背面板9の傾斜が水平面に近い角度になっても、鉛直方向の視線で見た場合、背面板9に設置したスクリーン版1の製版面の全面をカバー45で隠すことができるので、埃等の付着を防止する効果を確実に得ることができる。
【0058】
なお、以上説明した各実施形態では、矩形のスクリーン版1を横長の状態で設置できるように装置を構成したが、矩形のスクリーン版1を縦長の状態で設置できるように装置を構成してもよい。すなわち、
図3に示す製版装置6を紙面に垂直な軸を中心として反時計方向に90度回転させた状態で設置面上に設置できるように基台8等の構成を修整してもよい。