【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成26年11月29日にイオンモール岡山にて販売 平成27年3月10日に株式会社ビザビリレーションズが発行の月刊タウン情報おかやま別冊LLIO、vol.38、Spring 2015、27頁に掲載 平成27年5月2日に神戸ワイナリーにて販売
【課題】コルク材料に対して、経済性に優れ、且つ柄模様や色相、濃度の自由度が高く、堅牢で精細・鮮明な着色を施し得るコルク材料の転写捺染法、これに用いられる捺染紙及び同転写捺染法によって転写捺染されたコルク材料を提供する。
【解決手段】コルク材料の転写捺染法は、水溶性合成系樹脂及び/又は天然系糊剤並びに助剤を含む混合糊液を原紙に付与した捺染用紙を作る工程と、この捺染用紙に水不溶性着色剤を含むインクをプリントした捺染紙を作る工程と、該捺染紙をコルク材料に密着して加圧・加熱することによって前記水不溶性着色剤を前記コルク材料に転写する工程と、該捺染紙を前記コルク材料から除去した後、該コルク材料に転写された前記水不溶性着色剤を固着化させる仕上剤を該コルク材料に塗布する工程、又は前記転写する工程において、該転写する工程の前に前記コルク材料に塗布された前処理剤によって前記水不溶性着色剤を固着化させて該コルク材料に転写し該捺染紙を前記コルク材料から除去する工程と、を備えている。
水溶性合成系樹脂及び/又は天然系糊剤並びに助剤を含む混合糊液を原紙に付与した捺染用紙を作る工程と、この捺染用紙に水不溶性着色剤を含むインクをプリントした捺染紙を作る工程と、該捺染紙をコルク材料に密着して加圧・加熱することによって前記水不溶性着色剤を前記コルク材料に転写する工程と、該捺染紙を前記コルク材料から除去した後、該コルク材料に転写された前記水不溶性着色剤を固着化させる仕上剤を該コルク材料に塗布する工程と、を備えていることを特徴とするコルク材料の転写捺染法。
水溶性合成系樹脂及び/又は天然系糊剤並びに助剤を含む混合糊液を原紙に付与した捺染用紙を作る工程と、この捺染用紙に水不溶性着色剤を含むインクをプリントした捺染紙を作る工程と、コルク材料に前処理剤を塗布する工程と、前記捺染紙を前記前処理剤が塗布された前記コルク材料に密着して加圧・加熱し、前記前処理剤によって前記水不溶性着色剤を固着化させて該コルク材料に転写する工程と、該捺染紙を前記コルク材料から除去する工程と、を備えていることを特徴とするコルク材料の転写捺染法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1や特許文献2に記載された方法では、柄模様や色相、濃度の自由度が低くなるという問題があった。また、上記特許文献3に記載されたようなインクジェット方式で直接的に素材表面に描写する方法では、インクが多量に必要となり、また、滲みや色むらが生じ易くなることが考えられた。また、上記特許文献4に記載された方法においても、コルク板を酸化処理する必要があり、また、その後の着色処理についても具体的には開示がない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、コルク材料に対して、経済性に優れ、且つ柄模様や色相、濃度の自由度が高く、堅牢で精細・鮮明な着色を施し得るコルク材料の転写捺染法、これに用いられる捺染紙及び同転写捺染法によって転写捺染されたコルク材料を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、第1の本発明に係るコルク材料の転写捺染法は、水溶性合成系樹脂及び/又は天然系糊剤並びに助剤を含む混合糊液を原紙に付与した捺染用紙を作る工程と、この捺染用紙に水不溶性着色剤を含むインクをプリントした捺染紙を作る工程と、該捺染紙をコルク材料に密着して加圧・加熱することによって前記水不溶性着色剤を前記コルク材料に転写する工程と、該捺染紙を前記コルク材料から除去した後、該コルク材料に転写された前記水不溶性着色剤を固着化する仕上剤を該コルク材料に塗布する工程と、を備えていることを特徴とする。
また、前記目的を達成するために、第2の本発明に係るコルク材料の転写捺染法は、水溶性合成系樹脂及び/又は天然系糊剤並びに助剤を含む混合糊液を原紙に付与した捺染用紙を作る工程と、この捺染用紙に水不溶性着色剤を含むインクをプリントした捺染紙を作る工程と、コルク材料に前処理剤を塗布する工程と、前記捺染紙を前記前処理剤が塗布された前記コルク材料に密着して加圧・加熱し、前記前処理剤によって前記水不溶性着色剤を固着化させて該コルク材料に転写する工程と、該捺染紙を前記コルク材料から除去する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
前記水溶性合成系樹脂としては、水溶性ポリビニルアルコール系、水溶性アクリル系、水溶性ウレタン系、水溶性ウレタン変性エーテル系、水溶性ポリエチレンオキサイド系、水溶性ポリアミド系、水溶性フェノール系、水溶性酢酸ビニル系、水溶性スチレンアクリル酸系、水溶性スチレンマレイン酸系、水溶性スチレンアクリルマレイン酸系、水溶性ポリエステル系、水溶性ポリビニルアセタール系、水溶性ポリエステル・ウレタン系、水溶性ポリエーテル・ウレタン系及び水溶性ホットメルト接着剤からなる群より選択された1種又は2種以上の混合物を用いるようにしてもよい。
前記天然系糊剤としては、動物系糊料、植物系糊料及び鉱物系糊料から選択された1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、具体例を挙げると、天然ガム糊(エーテル化タマリンドガム、エーテル化ローカストビーンガム、エーテル化グアガム、アカシアアラビア系ガム)、繊維素誘導糊(エーテル化カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、多糖類(澱粉、グリコーゲン、デキストリン、アミロース、ヒアルロン酸、葛、こんにゃく、片栗粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉)、海藻類(アルギン酸ソーダ、寒天)、鉱物性糊料(ベントナイト、陶土、珪酸アルミニューム及びその誘導体、シリカ、珪藻土、クレイ、カオリン、酸性白土)及び動物性糊料(カゼイン、ゼラチン、卵蛋白)から選択された1種又は2種以上の混合物を用いるようにしてもよい。
【0008】
前記助剤としては、界面活性剤、増粘剤、保湿剤、pH調整剤、濃染化剤、防腐剤、防黴剤、脱気剤、消泡剤及び還元防止剤からなる群より選択された1種又は2種以上を用いるようにしてもよい。
前記水不溶性着色剤としては、分散染料、スレン染料及び顔料からなる群より選択された1種又は2種以上を用いるようにしてもよい。
前記仕上剤及び前記前処理剤としては、前記水不溶性着色剤と親和性のあるものとしてもよい。
前記捺染用紙に塗布する水溶性合成系樹脂及び/又は天然系糊剤の付着量は、ドライ換算で5〜30g/m
2が好ましい。混合糊液は、例えば、コンマコーター、グラビアコーター、リバースコーター、エアナイフコーター、ジェットコーター、パッディングマシン等の塗布装置によって塗工するようにしてもよい。
前記混合糊液を原紙に付与して乾燥することによって得たインク受容層を有する前記捺染用紙に、前記インクをインクジェットプリントすることによって前記捺染紙を得るようにしてもよい。
前記コルク材料としては、天然コルクをシート状に加工したコルクシート又はこのコルクシートの非転写面にシート状基材を貼り付けた複層シートとしてもよい。
また、紙業界や染色業界で多用されている塗工機や、ローラ型又は平板型の加圧・加熱設備、皮業界で使用されている仕上げ機を活用してコルク材料に対して着色を施すようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る捺染紙は、本発明に係るコルク材料の転写捺染法に用いられる捺染紙であって、水溶性合成系樹脂及び/又は天然系糊剤並びに助剤の混合糊液を原紙に付与した捺染用紙に水不溶性着色剤を含むインクがプリントされていることを特徴とする。
また、本発明に係るコルク材料は、本発明に係るコルク材料の転写捺染法によって転写捺染されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコルク材料の転写捺染法及びこれに用いられる捺染紙は、上述のような構成としたことで、コルク材料に対して、経済性に優れ、且つ柄模様や色相、濃度の自由度が高く、堅牢で精細・鮮明な着色を施すことができる。また、本発明に係るコルク材料は、経済性及び意匠性に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本発明の第1実施形態に係るコルク材料の転写捺染法は、水溶性合成系樹脂及び/又は天然系糊剤並びに助剤を含む混合糊液を原紙に付与した捺染用紙を作る工程と、この捺染用紙に水不溶性着色剤を含むインクをプリントした捺染紙を作る工程と、この捺染紙をコルク材料に密着して加圧・加熱することによって水不溶性着色剤をコルク材料に転写する工程と、捺染紙をコルク材料から除去した後、コルク材料に転写された水不溶性着色剤を固着化させる仕上剤をコルク材料に塗布する工程と、を備えている。
【0012】
本実施形態で捺染用紙の作製に用いられる原紙(捺染用原紙)は、一般的に使用、市販されている安価な紙で、コート紙等の加工紙でもよい。重さは10〜150g/m
2、好ましくは20〜80g/m
2のクラフトパルプ又はグラインドパルプ等のパルプ或いはリサイクル紙を原料として抄紙されたパルプ紙、再生紙等が用いられる。作業性の観点等から厚さは0.01〜0.5mm程度が好ましい。具体例を挙げると、日本製紙社製の上質紙、晒し又は未晒しクラフト紙、片艶クラフト紙、グラシン紙、各種コート紙などが挙げられ、また、日本製紙社製の銘柄で銀竹(登録商標)、銀嶺(登録商標)、白銀(登録商標)などを挙げる事が出来るが、これらはほんの一例に過ぎない。
【0013】
この原紙の上(厚さ方向一方側)に、混合糊液を塗布等して付与し、インク受容層を形成する。この混合糊液としては、水溶性合成系樹脂、例えば、水溶性ポリビニルアルコール系、水溶性アクリル系、水溶性ウレタン系、水溶性ウレタン変性エーテル系、水溶性ポリエチレンオキサイド系、水溶性ポリアミド系、水溶性フェノール系、水溶性酢酸ビニル系、水溶性スチレンアクリル酸系、水溶性スチレンマレイン酸系、水溶性スチレンアクリルマレイン酸系、水溶性ポリエステル系、水溶性ポリビニルアセタール系、水溶性ポリエステル・ウレタン系、水溶性ポリエーテル・ウレタン系、水溶性ホットメルト樹脂、天然系糊剤、例えば、天然ガム糊(エーテル化タマリンドガム、エーテル化ローカストビーンガム、エーテル化グアガム、アカシアアラビア系ガム等)、繊維素誘導糊(エーテル化カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)、多糖類(澱粉、グリコーゲン、デキストリン、アミロース、ヒアルロン酸、葛、こんにゃく、片栗粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉等)、海藻類(アルギン酸ソーダ、寒天等)、鉱物性糊料(ベントナイト、陶土、珪酸アルミニューム及びその誘導体、シリカ、珪藻土、クレイ、カオリン、酸性白土等)、動物性糊料(カゼイン、ゼラチン、卵蛋白等)から選定された1種又は2種以上と各種助剤との混合物が使用できる。また、助剤としては、界面活性剤、増粘剤、保湿剤、pH調整剤、濃染化剤、防腐剤、防黴剤、脱気剤、消泡剤及び還元防止剤からなる群より選択された1種又は2種以上を用いるようにしてもよい。
【0014】
混合糊液の組成は、後記するインクに含まれる水不溶性着色剤の種類に応じて、適宜の組成としてもよい。例えば、昇華型の分散染料を含むインクの場合、昇華型の分散染料は、比較的に熱で移行し易いので、シンプルな組成の混合糊液を採用し、且つ比較的に少量の塗布量でもよい。
また、混合糊液と原紙の種類によっては、塗布時に水はじき或いは紙の収縮現象を生じ原紙への均一塗布が困難な場合がある。これらの現象は、混合糊液(糊剤)の種類と糊固形分、表面張力低下剤の種類と添加量(アニオン系、ノニオン系界面活性剤、アルコール類等)等、紙の種類や処方条件によって個々に調整すれば均一塗布が可能である。塗布する糊剤の付着量は、ドライ換算で5〜30g/m
2が好ましい。混合糊液の塗布装置の具体例を挙げると、コンマコーター、グラビアコーター、リバースコーター、エアナイフコーター、ジェットコーター、含浸装置等がある。
【0015】
この様にして得られた捺染用紙、即ち、原紙にインク受容層が付与された捺染用紙に、水不溶性着色剤を含むインクをプリントし、乾燥して捺染紙を作製する。水不溶性着色剤を含むインクのプリントは、インクジェットプリントが好ましいが、グラビア印刷やスクリーン印刷等の他の方法でプリントするようにしてもよい。
また、水不溶性着色剤としては、分散染料、スレン染料及び顔料からなる群より選択された1種又は2種以上を用いるようにしてもよい。
中でも、色相を鮮明化する上では分散染料が好ましく、分散染料には非昇華型(難昇華型)から昇華型まで全ての分散染料が好ましく採用される。
また、分散染料を含むインクとしては、分散染料を、分散剤と共に0.1〜0.3mmのジルコニウムビーズを用いて染料の平均粒径を0.1μm程度に微粒化した後、インク化する事が望ましい。インク化する際の助剤はイオン交換水にポリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、分散剤等と、必要に応じて乾燥防止剤、表面張力調整剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、金属イオン封鎖剤、消泡剤、脱気剤等を添加・混合して、微量の不溶物を1μm以下のメンブレンフィルターでろ過・脱気したものとしてもよい。
【0016】
この様にして得られた捺染紙、即ち、捺染用紙にインクが付与された捺染紙と被染物となるコルク材料とを合わせ、加圧・加熱によりコルク材料に水不溶性着色剤(分散染料)を転写する。この場合の圧力は平板圧着機の場合、0.1〜1.0MPa、温度は150℃〜200℃、時間は5分〜20分程度としてもよい。
この様に、水不溶性着色剤(分散染料)をコルク材料に転写した後、コルク材料から捺染紙を剥離して除去し、コルク材料に転写された水不溶性着色剤(分散染料)を固着化させる仕上剤をインク転写面(表面)に塗布すれば、転写捺染されたコルク材料が得られる。
この仕上剤としては、水不溶性着色剤(分散染料)と親和性のあるもので、油性又は水性の合成樹脂系バインダー等のクリヤーが挙げられる。この仕上剤の塗布によってコルク材料に転写された水不溶性着色剤(分散染料)と仕上剤とが混和したり、仕上剤が水不溶性着色剤(分散染料)を被覆したりするようにして水不溶性着色剤(分散染料)が固着化され、コルク材料の表面が透明に被覆されて水不溶性着色剤(分散染料)の堅牢度が向上する。
仕上げ方法にはカゼイン仕上げ、熱可塑性ポリマーエマルジョンバインダー仕上げ、水性ポリマー仕上げ、硝化綿を主成分とするラッカー仕上げ、ポリウレタンを用いて皮膜を形成するウレタン仕上げ等が適用できる。
【0017】
また、仕上剤として使用可能な合成系樹脂類は、例えば、油性又は水性ポリビニルアルコール系、アクリル系、ウレタン系、ウレタン変性系、ポリエチレンオキサイド系、ポリアミド系、フェノール系、酢酸ビニル系、スチレンアクリル酸系、スチレンマレイン酸系、スチレンアクリルマレイン酸系、ポリエステル系、ポリビニルアセタール系、ポリエステル・ウレタン系、ポリエーテル・ウレタン系、ホットメルト系樹脂等が使用できる。また、仕上剤は、水不溶性着色剤の種類に応じて適宜のものを採用するようにしてもよい。
また、これら仕上剤の塗装方法は、刷毛塗り、スプレーガン、カーテンフローコート、ロールコート等の方法がある。このような表面仕上げ処理によって、コルク材料のインク転写面の耐水性や耐摩擦性、堅牢度を向上させることができる。
この仕上剤の塗布量は、コルクの風合いや柔軟性等を阻害しないように適宜の塗布量としてもよい。また、仕上剤の乾燥は、仕上剤の種類に応じて、造膜温度以上の好適な温度で乾燥するようにしてもよく、室温程度で自然乾燥するようにしてもよく、加熱乾燥するようにしてもよい。
また、本実施形態の場合、混合糊剤と水不溶性着色剤(分散染料)との親和性が低いため、捺染紙にプリントされた水不溶性着色剤(分散染料)は混合糊剤上に乗ったような状態となる。そのため、分散染料をコルク材料に転写した後に除去される捺染紙には余分な未固着染料と混合糊剤の大部分が付着しており、コルク材料には余剰染料や糊剤が殆ど付着していないので、このまま仕上剤で処理することができる。即ち、分散染料が転写されたコルク材料を洗浄することなく、仕上剤で処理することができる。
【0018】
被染物としてのコルク材料は、板状やシート状などの種々の形状に加工されたものが挙げられる。また、コルク材料としては、天然コルクをシート状に加工したコルクシート(コルクレザー)又はこのコルクシート(天然コルクシート)の非転写面(裏面)にシート状基材を貼り付けた複層シート(コルクレザー)が好ましく採用される。この場合は、コルク粒に接着剤を添加して圧搾して得られる圧搾コルクを加工したものと比べて、自然な風合いとなる。中でも、天然コルクシートの非転写面に裏地となるシート状基材を貼り付けた複層シート(コルクレザー)とすれば、強度を向上させることができる。
天然コルクシートとしては、単一のブロック状天然コルク材をスライスして得られたものとしもてよく、複数のブロック状天然コルク材を適宜の接着剤によって集成した集成コルク材をスライスして得られたものとしてもよい。
【0019】
コルクシート(天然コルクシート又は圧搾コルクシート)の厚さは、用途に応じて必要となる強度や柔軟性に応じて適宜の寸法としてもよく、例えば、0.1mm〜2.0mm、好ましくは0.2mm〜0.5mmとしてもよい。
このコルクシートの裏面に貼り付けられるシート状基材としては、合成繊維シートや、凝固ポリウレタン(ポリウレタンシート)等の多孔質シート、不織布が挙げられ、また、これらを複層したものでもよい。また、シート状基材としては、目付が50〜200g/m
2のものとしてもよい。
また、コルクシートとシート状基材とを貼り付ける接着剤としては、シート状基材の種類に応じて適宜の接着剤を採用するようにしてもよい。この接着剤としては、例えば、ポリウレタン系やビニール系、ポリエチレン系の接着剤や、さらにはこれら接着剤に種々の合成樹脂等の接着剤組成物を添加した接着剤が挙げられ、耐熱性の観点からはポリウレタン系接着剤が好ましく採用される。
【0020】
次に、本発明の第2実施形態に係るコルク材料の転写捺染法について説明する。
なお、上記した第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、その説明を省略または簡略に説明する。
第2実施形態に係るコルク材料の転写捺染法は、水溶性合成系樹脂及び/又は天然系糊剤並びに助剤を含む混合糊液を原紙に付与した捺染用紙を作る工程と、この捺染用紙に水不溶性着色剤を含むインクをプリントした捺染紙を作る工程と、コルク材料に前処理剤を塗布する工程と、捺染紙を前処理剤が塗布されたコルク材料に密着して加圧・加熱することによって水不溶性着色剤を前処理剤によって固着化させてコルク材料に転写する工程と、捺染紙をコルク材料から除去する工程と、を備えている。
【0021】
本実施形態においても、上記同様の原紙に、上記同様の混合糊液を付与した捺染用紙を作製し、この捺染用紙に上記同様の水不溶性着色剤(分散染料)を含むインクをプリントした捺染紙を作製する。
本実施形態では、捺染紙をコルク材料に密着させる前に、コルク材料のインク転写面に水不溶性着色剤(分散染料)を固着化させる前処理剤を塗布する工程を備えている点が、上記第1実施形態とは主に異なる。
この前処理剤としては、水不溶性着色剤(分散染料)と親和性のあるもので、上記仕上剤と同一のものの採用が可能であり、また、上記仕上剤と同様な塗装方法の採用が可能である。また、前処理剤を上記同様にして乾燥するようにしてもよい。
【0022】
この様に前処理剤が塗布されたコルク材料に、上記同様にして捺染紙を合わせ、加圧・加熱により水不溶性着色剤(分散染料)を前処理剤によって固着化させるように転写する。これにより、上記同様、水不溶性着色剤(分散染料)と前処理剤とが混和したり、前処理剤が水不溶性着色剤(分散染料)を被覆したりするようにして水不溶性着色剤(分散染料)が固着化され、コルク材料の表面が透明に被覆されて水不溶性着色剤(分散染料)の堅牢度が向上する。そして、コルク材料から捺染紙を剥離して除去すれば、転写捺染されたコルク材料が得られる。この様に前処理剤が塗布されたコルク材料に捺染紙を転写することで、高温処理であるため前処理剤に対して水不溶性着色剤(分散染料)が溶け込むようにより効果的に混和して転写され、色相をより鮮明化することができる。
本実施形態においても、転写後に、上記同様の仕上剤を更に塗布するようにしてもよい。
【0023】
上記各実施形態によれば、従来の方法に比べて、コルクの風合を維持しながらも、繊細性、堅牢性、発色性等を向上させることができ、設備費の削減、加工の再現性向上、排水負荷の削減、生産効率の向上が図れ、エコロジカルで、且つエコノミカルなコルク捺染法となる。また、従来困難視されていたコルク材料に、精細・堅牢な捺染図柄の表現を優れた経済性とエコロジー性の元に再現性良く捺染することができる。特に、上記各実施形態に係る方法は、少量多品種生産や多様性のニーズに敏速で効率的に対応できる生産システムを構築でき、環境適合性と共に経済性と品質効果も優れた方法であり、コルク捺染製品の付加価値向上と用途拡大に大きく寄与することができる。
【0024】
上記各実施形態において転写捺染された板状やシート状のコルク材料は、壁材や天井材、床材等の建材として用いられるものとしてもよく、また、鞄や靴、帽子、財布、名刺入れ、キーケース、その他、種々の服飾品、小物、雑貨等として用いられるものとしてもよい。
【0025】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。なお、各実施例中における%は重量%を意味する。
【0026】
実施例1
インク受容層として、ポバールAP-17(水溶性ポリビニルアルコール系バインダー15%水溶液:日本酢ビ・ポバール社製)200g、ハイドラン(登録商標)AP-20(水性ポリエステル・ウレタン系バインダー45%液:DIC社製)100g、尿素20g、硫安2g、FDアルギンBL(古川化学工業社製:アルギン酸ソーダ)15gの混合物を、5,000rpmの高速デスパー型攪拌機でよく攪拌し、高粘度のペーストを作った。この糊液をコーティング機を使用して紙(日本製紙社製、上質紙、坪量70g/m
2)に塗布し乾燥した。この糊液の乾燥付与量はドライ換算(固形分換算)で10g/m
2であった。この様にして分散染料用の捺染用紙を得た。
次いで分散染料インク液(C.I.Disperse Blue60コンクパウダー6%、エチレングリコール5%、グリセリン15%、ノニオン系分散剤5%、アニオン系分散剤5%、イオン交換水64%)を上記捺染用紙上にインクジェットプリンター(HYPERECO(登録商標):武藤工業社製:オンデマンド型ピエゾインクジェットプリンター)によってプリントを行い乾燥して捺染紙を得た。
次いでこの捺染紙とコルクシートを密着させ、HASHIMA社製平板圧着機にて加熱・加圧(160℃、0.6MPa、10分)してコルクシートに分散染料を転写して紙を剥離した。
次いで、硝化綿(ラッカー)のクリヤータイプの仕上剤を用いてスプレーガン方式で塗膜を形成して仕上げた。この様にして得られたコルクシートの捺染製品は繊細なデザインを有し、コルクシートの風合は柔軟であり、各種堅牢性も実用性に耐える優れた堅牢度であった。
【0027】
実施例2
インク受容層として、ポバールJP-18(水溶性ポリビニルアルコール系バインダー紛体:日本酢ビ・ポバール社製)75g、ソルビトーゼC−5(エーテル化澱粉:AVEBE社製)56g、EX−100S(タマリンドガム:トモエ製糊社製)30g、消泡剤104(佐野社製)5g、水840g、ネオシントール(登録商標)LB(防腐剤:住化エンビロサイエンス社製)20g、ネオシントール(登録商標)TF−1(防黴剤:住化エンビロサイエンス社製)20gの混合物を、5,000rpmの高速デスパー型攪拌機でよく攪拌し、高粘度のペーストを作製した。この混合糊液をコーティング機を使用して未晒しクラフト紙(日本製紙社製、坪量65g/m
2)に塗布し乾燥した。この捺染用紙の糊塗布量はドライ換算で10g/m
2であった。この様にして分散染料用の捺染用紙を得た。
次いで分散染料インク液(C.I.Disperse Red86プレスケーキ4%、エチレングリコール5%、グリセリン15%、ノニオン系分散剤5%、アニオン系分散剤5%、イオン交換水66%)を上記捺染用紙上にインクジェットプリンター(HYPERECO(登録商標):武藤工業社製:オンデマンド型ピエゾインクジェットプリンター)によってプリントを行い乾燥し、捺染紙を得た。
次いでこの分散染料の捺染紙をコルクシートに密着させ、平板プレス機を用いて150℃、0.7MPa、12分間加熱・加圧してコルクシートに分散染料を転写して紙を剥離した。
次いで実施例1の仕上剤の代わりに水性ポリマーエマルジョン(バインダー)を用いて80℃で加熱して仕上げた。この様にして得たコルクシート捺染物は精細な柄模様を有し、コルクの風合は柔軟であり、各種堅牢性も優れていた。
【0028】
実施例3
コルクシートの前処理剤としてプラスコートRZ-105(互応化学社製、水溶性ポリエステル樹脂)とプラスコートZ-592の1:1混合液(25%水溶液)を用いてスプレーガン方式でコルクシートに10g/m
2塗工して100℃で5分間加熱乾燥した。インク受容層として、ソルビトーゼC−5(エーテル化澱粉:AVEBE社製)6g、EX−100S(タマリンドガム:トモエ製糊社製)3g、消泡剤104(佐野社製)1g、水90g、ネオシントール(登録商標)LB(防腐剤:住化エンビロサイエンス社製)0.2g、ネオシントール(登録商標)TF−1(防黴剤:住化エンビロサイエンス社製)0.2g、酢酸0.5gの混合物を、5,000rpmの高速デスパー型攪拌機でよく攪拌し、高粘度のペーストを作製した。この混合糊液をコーティング機を使用して晒しクラフト紙(日本製紙社製、坪量75g/m
2)に塗布し乾燥した。この捺染用紙の糊塗布量はドライ換算で5g/m
2であった。この様にして昇華転写用の捺染用紙を得た。
次いで分散染料インク液(C.I.Disperse Red60コンクケーキ5%、エチレングリコール5%、グリセリン15%、ノニオン系分散剤5%、アニオン系分散剤5%、イオン交換水65%)を上記捺染用紙上にインクジェットプリンター(HYPERECO(登録商標):武藤工業社製:オンデマンド型ピエゾインクジェットプリンター)によってプリントを行い乾燥し、捺染紙を得た。
次いでこの分散染料の捺染紙を前処理済のコルクシートに密着させ、平板プレス機を用いて160℃、0.7MPa、8分間加熱・加圧してコルクシートに分散染料を昇華転写して紙を剥離した。この様にして得たコルクシート捺染物は精細・鮮明な柄模様を有し、コルクの風合は柔軟であり、各種堅牢性も優れていた。