特開2016-215853(P2016-215853A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2016215853-空気入りタイヤ 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-215853(P2016-215853A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/08 20060101AFI20161125BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20161125BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   B60C9/08 L
   B60C9/18 N
   B60C9/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-103482(P2015-103482)
(22)【出願日】2015年5月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100080540
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 敬士
(72)【発明者】
【氏名】横倉 宏行
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 淳子
(72)【発明者】
【氏名】星野 佑太
(57)【要約】
【課題】補強層52に埋設されているスチール製補強コード54の座屈、コード折れを効果的に抑制する。
【解決手段】補強コード54のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを40〜90度の範囲内とするとともに、補強コード54に平行な方向における補強層52の50mm幅当たりの圧縮剛性Fを1000N以上としたので、補強層52(補強プライ53)が、ベルト層24の変形、トレッド部15の径成長の影響を受けて、幅方向に狭くなろうとすることで、補強コード54に圧縮力を付与しても、該補強コード54は圧縮力に有効に耐えることができ、補強コード54が座屈してコード折れに進展するような事態を効果的に抑制することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向両端部が一対のビードコア回りに折り返されるとともに、内部にタイヤ赤道Sに対して傾斜した有機繊維からなる複数本のカーカスコードが埋設された2枚以上のカーカスプライから構成され、トロイド状に延びるカーカス層と、カーカス層の半径方向外側に配置されたベルト層と、該ベルト層の半径方向外側に配置されたトレッドと、隣接するカーカスプライ間でベルト層と半径方向に重なり合う位置に配置された補強層とを備え、該補強層を、内部にタイヤ赤道Sに対して傾斜した複数本のスチールからなる補強コードが埋設された少なくとも1枚の補強プライから構成した空気入りタイヤにおいて、前記補強コードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを40〜90度の範囲内とするとともに、補強コードに平行な方向における補強層の50mm幅当たりの圧縮剛性Fを1000〜2400Nの範囲内としたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記トレッドの踏面を溝により複数の陸部に区画する一方、前記補強層と半径方向に重なる位置に位置している内側陸部のタイヤ幅方向長さを、前記補強層よりタイヤ幅方向両外側に位置している外側陸部のタイヤ幅方向最大長さより小とした請求項1記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記補強コードを複数本のフィラメントを撚ることで構成する一方、該フィラメントの撚りピッチQを、フィラメント径に補強コードを構成するフィラメント本数を乗じた値Vの 1.3〜10.0倍の範囲内とした請求項1または2記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記補強コードとして、曲げ剛性Dが 230〜 300N・m2 の範囲内のコードを用い、また、補強コードを補強層に50mm幅当たり40〜80本打ち込むようにした請求項1〜3のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記補強コードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを55度以上とした請求項1〜4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カーカスプライ間にスチール製補強コードが埋設された補強層が配置されている空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気入りタイヤとしては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−153214公報
【0004】
このものは、幅方向両端部が一対のビードコア回りに折り返されるとともに、内部にタイヤ赤道に対して傾斜した有機繊維からなる複数本のカーカスコードが埋設された2枚以上のカーカスプライから構成され、トロイド状に延びるカーカス層と、カーカス層の半径方向外側に配置されたベルト層と、該ベルト層の半径方向外側に配置されたトレッドと、隣接するカーカスプライ間でベルト層と半径方向に重なり合う位置に配置された補強層とを備え、該補強層を、内部にタイヤ赤道に対して傾斜した複数本のスチールからなる補強コードが埋設された補強プライから構成したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、前述した補強プライ内に埋設されている補強コードのタイヤ赤道に対する傾斜角が40度以上という大きな値である場合には、該補強コードに走行時に繰り返し大きな圧縮力が作用し、この結果、空気入りタイヤを長期間走行させると、該補強コードが座屈しコード折れが発生することがあるという課題を、本発明者は見出した。これは、前記空気入りタイヤが路面に接地して平坦となるよう変形すると、ベルト層内のベルトコードのパンタグラフ効果により、前記補強プライは周方向の引っ張り変形を受けて周方向に伸長し、また、高速走行によるトレッド部の径成長により、ベルト層、補強プライが周方向に伸長するが、このような伸長により該補強プライは幅が狭くなるよう変形しようとする。このとき、補強プライ内には傾斜角が前述した値のスチール補強コードが埋設されているため、該補強コードが突っ張りとなって補強プライの幅の狭小化をある程度抑える一方、補強コードには該補強コードに平行な方向(長手方向)の圧縮力が繰り返し作用するためであると考えられる。なお、旋回走行時に空気入りタイヤに作用する横力や、走行時にトレッドに対し突起入力が入ることによって前記補強コードに作用する圧縮力はさらに大きな値となる。
【0006】
この発明は、補強層内の補強コードの座屈、コード折れを効果的に抑制することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、幅方向両端部が一対のビードコア回りに折り返されるとともに、内部にタイヤ赤道Sに対して傾斜した有機繊維からなる複数本のカーカスコードが埋設された2枚以上のカーカスプライから構成され、トロイド状に延びるカーカス層と、カーカス層の半径方向外側に配置されたベルト層と、該ベルト層の半径方向外側に配置されたトレッドと、隣接するカーカスプライ間でベルト層と半径方向に重なり合う位置に配置された補強層とを備え、該補強層を、内部にタイヤ赤道Sに対して傾斜した複数本のスチールからなる補強コードが埋設された少なくとも1枚の補強プライから構成した空気入りタイヤにおいて、前記補強コードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを40〜90度の範囲内とするとともに、補強コードに平行な方向における補強層の50mm幅当たりの圧縮剛性Fを1000〜2400Nの範囲内とすることにより、達成することができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明においては、補強コードのタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを40〜90度の範囲内とするとともに、補強コードに平行な方向における補強層の50mm幅当たりの圧縮剛性Fを1000N以上としたので、補強層(補強プライ)が幅方向に狭くなろうとして補強コードに圧縮力を付与しても、該補強コードは圧縮力に有効に耐えることができ、補強コードが座屈してコード折れに進展するような事態を効果的に抑制することができる。なお、前記圧縮剛性Fが2400Nを超えると、空気入りタイヤの耐久性、接地性が低下するため、使用することはできない。
【0009】
また、請求項2に記載のように構成すれば、排水性、グリップ力を確保しながら陸部の破損を効果的に抑制することができる。さらに、請求項3に記載のように構成すれば、補強コードが圧縮ばねのように機能するため、補強コードの座屈、折れを強力に抑制することができる。また、請求項4に記載のように構成すれば、補強層の50mm幅当たりの圧縮剛性Fを容易に1000〜2400Nの範囲内に収めることができる。さらに、本発明は請求項5に記載のような角度範囲内の補強コードに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施形態1を示す空気入りタイヤの子午線断面図である。
図2】その一部が破断された平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2において、11は乗用車に装着される高速走行用の空気入りタイヤであり、この空気入りタイヤ11は一対のビード部13を有し、これらビード部13にはそれぞれリング状を呈するビードコア12が埋設されている。この結果、前記空気入りタイヤ11は一対のビードコア12を有していることになる。また、前記空気入りタイヤ11は、前記ビード部13から略半径方向外側に向かって延びる一対のサイドウォール部14と、両サイドウォール部14の半径方向外端同士を連結する略円筒状のトレッド部15とをさらに備えている。そして、この空気入りタイヤ11は前記ビードコア12間をトロイド状に延びてサイドウォール部14、トレッド部15を補強するカーカス層16を有し、このカーカス層16のタイヤ幅方向両端部は前記一対のビードコア12の回りに内側から外側に向かって折り返されており、この結果、該カーカス層16はビードコア12間に位置する本体部16aと、本体部16aの両側端に連続し前記ビードコア12より外側に位置する一対の折返し部16bとに区分される。
【0012】
前記カーカス層16は2枚以上、ここでは2枚のカーカスプライ18、19から構成され、これらカーカスプライ18、19はタイヤ赤道Sに対し70〜90度(ここでは80度)のコード角で傾斜した複数本の互いに平行なカーカスコード20、21をコーティングゴムで被覆することにより構成している。この結果、前記カーカスプライ18、19の内部にはタイヤ赤道Sに対して傾斜した複数本のカーカスコード20、21が埋設されていることになる。ここで、前記カーカスコード20、21はナイロン、ポリエステル等の有機繊維(ここでは、ナイロン)から構成されており、また、前述のようにコード角が90度未満である場合には、これらカーカスコード20、21は隣接するカーカスプライ18、19でタイヤ赤道Sに対し逆方向に傾斜している。また、前記カーカスコード20、21として、2種類の有機繊維、例えば、ナイロンと芳香族ポリアミドとのフィラメントを撚り合わせて構成したハイブリッドコードを用いるようにしてもよい。このようにすれば、高負荷、高温時に芳香族ポリアミドの剛性が発揮され、タイヤ赤道Sに対するコード角が90度程度の大きな場合でも高い剛性を確保することができる。
【0013】
24はトレッド部15において前記カーカス層16の半径方向外側に重ね合わされて配置されたベルト層であり、このベルト層24は少なくとも2枚(ここでは2枚)のベルトプライ25、26を半径方向に積層することで構成され、各ベルトプライ25、26は、例えばスチール、あるいは芳香族ポリアミド、ナイロン等の有機繊維(ここでは芳香族ポリアミド)からなる互いに平行な複数本のベルトコード27、28をコーティングゴムで被覆することにより構成している。この結果、前記ベルトプライ25、26の内部には複数本のベルトコード27、28が埋設されていることになる。ここで、前記ベルトコード27、28はタイヤ赤道Sに対し10〜40度(ここでは25度)のコード角で傾斜するとともに、少なくとも2枚のベルトプライ(ここでは2枚のベルトプライ25、26)においてタイヤ赤道Sに対し傾斜方向が逆方向となり互いに交差している。また、半径方向内側に配置されているベルトプライ25の幅は半径方向外側に配置されているベルトプライ26の幅より若干広く形成されるとともに、該ベルトプライ25の幅方向両端部はベルトプライ26の半径方向外側に折り返されている。この結果、前記ベルトプライ25の幅方向両端部によりベルトプライ26の幅方向両端部は包み込まれており、これらベルトプライ25、26の幅方向両端における歪みは効果的に抑制されている。
【0014】
ここで、前記カーカスプライ18はその両端部が前記ベルト層24(ベルトプライ25)の幅方向両端部とカーカスプライ19との間に介装されるまで、半径方向外側に向かって大きく延在している。なお、この発明においては、前記カーカスプライ18の両端はタイヤ最大幅位置近傍まで延在して終了してもよい。また、この発明においては、ベルトプライ25の幅方向両端部は折り返されることなく、ベルトプライ26とほぼ平行に延びていてもよい。31は前記カーカス層16、ベルト層24の半径方向外側に配置されたゴムからなるトレッドであり、このトレッド31の踏面(外周)30中央部にはタイヤ周方向に連続して延びる一対の主溝32、33が形成され、これら主溝32、33はタイヤ赤道Sを挟むよう該タイヤ赤道Sの両側に形成されている。この結果、これら主溝32、33間にはタイヤ赤道Sを跨ぎタイヤ周方向に連続して延びる一定幅の中央陸部34が、また、前記主溝32と一側のトレッド端35との間、および、前記主溝33と他側のトレッド端36との間にはタイヤ周方向に連続して延び、前記中央陸部34より広幅の両側陸部37、38がそれぞれ画成される。なお、この発明においては、主溝は周方向に延びながらジグザグ状の折れ曲がっていてもよい。
【0015】
ここで、前述した両側陸部37および38には周方向に連続して延び主溝32、33より溝幅が狭い2本の周方向溝65、66および67、68がそれぞれ形成され、該周方向溝65と主溝32との間には周方向に連続して延びる陸部69が、また、周方向溝67と主溝33との間には周方向に連続して延びる陸部70が形成されている。一方、前記周方向溝65、66間、および、周方向溝67、68間にはそれぞれ周方向に連続して延びる陸部71、72が画成されている。これら陸部69、71および70、72は、タイヤ回転方向前側から回転方向後側に向かうに従いタイヤ赤道Sからタイヤ幅方向外側に向かうよう傾斜し周方向に離れた複数の傾斜溝73、74および75、76がこれら陸部69、71および70、72にそれぞれ形成されることで、周方向に離れた複数のブロック77、78および79、80に区画されている。
【0016】
さらに、前記周方向溝66と一側のトレッド端35との間に画成され周方向に連続して延びる陸部83は、前記傾斜溝73、74と同一方向に傾斜するとともに、タイヤ赤道Sに対する傾斜角が前記傾斜溝73、74より大である複数の周方向に離れた傾斜溝84により、周方向に離れた複数のブロック85に区画され、また、前記周方向溝68と他側のトレッド端36との間に画成され周方向に連続して延びる陸部86は、前記傾斜溝75、76と同一方向に傾斜するとともに、タイヤ赤道Sに対する傾斜角が前記傾斜溝75、76より大である複数の周方向に離れた傾斜溝87により、周方向に離れた複数のブロック88に区画されている。46、47はベルト層24の幅方向両端部でその半径方向外側に設けられた一対のベルト補強層であり、これらのベルト補強層46、47は前記ベルト層24の幅方向両端を跨ぐよう配置されている。これらベルト補強層46、47は周方向に延びる互いに平行な複数本のナイロン、ポリエステル等の有機繊維(ここではナイロン)からなる補強コード48、49をコーティングゴムで被覆することにより構成しており、この結果、これらベルト補強層46、47の内部にはタイヤ赤道Sに平行な複数本の補強コード48、49が埋設されていることになる。
【0017】
52は隣接するいずれかのカーカスプライ間に、ここではカーカスプライ18とカーカスプライ19との間であるが、カーカスプライが3枚以上である場合には、いずれかの隣接するカーカスプライ間に介装された補強層であり、この補強層52は前記ベルト層24と半径方向に重なり合う、ここでは半径方向内側において重なり合う位置のトレッド部15に配置されている。前記補強層52は少なくとも1枚(ここでは1枚)の補強プライ53から構成され、該補強プライ53はスチールからなる互いに平行な複数本の補強コード54をコーティングゴムで被覆することにより構成している。ここで、前記補強コード54はタイヤ赤道Sに対し40〜90度の範囲内の傾斜角A(ここでは60度)で傾斜しており、この結果、前記補強層52の内部にはタイヤ赤道Sに対して傾斜した複数本のスチール製補強コード54が埋設されていることになる。なお、前記補強層が複数枚の補強プライから構成されているときには、補強コードを隣接する2枚の補強プライにおいてタイヤ赤道Sに対し傾斜方向を逆方向とし互いに交差させる。また、前記補強コード54は複数本のフィラメントを撚ることで構成している。そして、このように傾斜角Aが40度以上であると、前述のように補強コード54に繰り返し圧縮力が付与され、該補強コード54が座屈しコード折れ(フィラメントの破断)が発生することがある。
【0018】
このため、この実施形態では、前記補強層52として、補強コード54に平行な方向における50mm幅当たりの圧縮剛性(補強コード54に平行に延びる帯状体を仮定するとともに、該帯状体体の幅を50mmとしたときの該帯状体の長手方向圧縮剛性)Fの値が1000N〜2400Nの範囲内のものを用いるようにしたのである。そして、前述のように補強コード54のタイヤ赤道Sに対する傾斜角Aを40〜90度の範囲内とするとともに、補強コード54に平行な方向における補強層52の50mm幅当たりの圧縮剛性Fを1000N以上とすれば、前述のように補強プライ53がベルト層24の変形、トレッド部15の径成長の影響を受けて幅方向に狭くなろうとすることで、補強コード54に圧縮力が付与されても、該補強コード54は該圧縮力に有効に耐えることができ、後述のように該補強コード54が座屈してコード折れに進展するような事態を効果的に抑制することができる。そして、前記補強コード54として、曲げ剛性Dが 230〜 300N・m2 の範囲内のコードを用い、また、補強コード54を補強層52(補強プライ53)に50mm幅当たり40〜80本の打込み本数Uだけ打ち込むようにすれば、後述のように補強層52の50mm幅当たりの圧縮剛性Fの値を容易に1000N〜2400Nの範囲内に収めることができる。そして、タイヤ赤道Sに対する傾斜角Aが55度以上となると、前述のようなコード折れが頻繁に発生するので、補強コード54の傾斜角Aが55度以上である補強層52に特に有効である。
【0019】
ここで、前記圧縮剛性Fの値は次のようにして求められる。即ち、直径25mm、高さが25mmの円柱ゴムの中心軸上に、長さが25mmである1本の補強コードを埋設した補強コード入りサンプルと、前述した補強コードが埋設されていないゴムだけのゴムサンプルをそれぞれ形成する。次に、室温下で各サンプルを高さ方向に 1mmだけ圧縮し、そのときに要する圧縮力を測定する。そして、補強コード入りサンプルでの圧縮力から、ゴムサンプルでの圧縮力を減じた値を、1本の補強コードの圧縮剛性とする。次に、50mm幅の空間に前記補強コードを40〜80本のうちの、いずれかの本数(例えば30本)だけ並列配置させたと仮定し、この状態での合計圧縮剛性を求める、具体的には、前記求めた1本の補強コードの圧縮剛性に、前記いずれかの本数(例えば30)を乗じて、補強コード54に平行な方向における50mm幅当たりの圧縮剛性Fの値とする。但し、補強コード54の曲げ剛性Dが300N・m2 を超えたり、あるいは、50mm幅当たりの補強コード54の打込み本数が80本を超えると、前記圧縮剛性Fが2400Nを超えることがある。このように圧縮剛性Fの値が2400Nを超えると、隣接する補強コード54間のコーティングゴムゲージが小さくなってコーティングゴムが破断し、空気入りタイヤ11の耐久性が低下したり、あるいは、補強層52の曲げ剛性が高くなって走行時におけるトレッド部15の接地変形が少なくなり、空気入りタイヤ11の操縦安定性が低下するため、使用することができない。なお、前述したコードの曲げ剛性D(N・m2 )は、以下の数1に示した、良く知られているコードの曲げ剛性の簡易モデル計算式により求めることができる。
【0020】
【数1】
【0021】
この式において、Nはフィラメント本数、αはフィラメントの撚り角度、Eはフィラメントの縦弾性係数、Gはフィラメントの横弾性係数、Iは断面2次モーメント、Ipは断面2次極モーメント、dはフィラメントの直径、μfはフィラメントのポアソン比である。
【0022】
ここで、前述のように補強コード54が複数本のフィラメントを撚ることで構成されている場合、該フィラメントの撚りピッチQを、フィラメント径に補強コード54を構成するフィラメントの本数を乗じた値Vの 1.3〜10.0倍の範囲内(ここでは 3.0倍)とすることが好ましい。それは、前記Q/Vの値を前述のような範囲内とすれば、補強コード54が圧縮ばねのように機能するため、補強コード54に繰り返し大きな圧縮力が作用しても、該補強コード54の座屈、折れを強力に抑制することができるからである。また、この実施形態では、前述のようにトレッド31の踏面30を複数の溝(主溝32、33、周方向溝65、66、67、68、傾斜溝73、74、75、76、84、87)により複数の陸部(中央陸部34、ブロック77、78、79、80、85、88)に区画しているが、これら陸部を前記補強層52と半径方向に重なる位置に位置している(補強層52の幅方向一端52aと幅方向他端52bと間に位置する)内側陸部57と、前記補強層52よりタイヤ幅方向両外側に位置している(補強層52の幅方向一端52aおよび幅方向他端52bと、トレッド端35、36との間にそれぞれ位置する)一対の外側陸部58、59とに区分したとき、前記内側陸部57のいずれの部位におけるタイヤ幅方向長さも、前記外側陸部58、59におけるタイヤ幅方向最大長さより小としている。
【0023】
例えば、この実施形態では、外側陸部58、59に形成された陸部はブロック85、88のみであるため、該ブロック85、88の幅方向長さが、外側陸部58、59における陸部のタイヤ幅方向最大長さJである。一方、内側陸部57の範囲内には中央陸部34、ブロック77、78、79、80が形成されているが、これら中央陸部34、ブロック77、78、79、80のタイヤ幅方向長さKは同一値であり、この結果、前記タイヤ幅方向最大長さKが内側陸部57における陸部のタイヤ幅方向長さの最大値となる。そして、この実施形態ではタイヤ幅方向最大長さKを前記タイヤ幅方向最大長さJより小としたのである。このように内側陸部57のいずれの部位におけるタイヤ幅方向長さも、外側陸部58、59におけるタイヤ幅方向最大長さJより小とすれば、排水性、グリップ力を確保しながら内側陸部57の破損を効果的に抑制することができる。
【0024】
その理由は、前述のように構成すれば、内側陸部57においては周方向に延びる溝の数が多くなって排水性を容易に確保することができる一方、外側陸部58、59においては陸部のタイヤ幅方向長さが長いことによって剛性が高くなり、グリップ力を容易に確保することができる。しかしながら、内側陸部57において陸部のタイヤ幅方向長さが短くなると、外力による変形量が大きくなって陸部に欠け等の破損が生じ易くなるが、この内側陸部57には補強層52が重ね合わされて配置されているため、陸部を支持する土台が強固となり、前述した陸部の破損を効果的に抑制することができるのである。
【実施例1】
【0025】
次に、試験例1について説明する。この試験に当たっては、圧縮剛性Fが754Nである補強層が設けられた比較タイヤ1と、圧縮剛性Fが 803Nである補強層が設けられた比較タイヤ2と、圧縮剛性Fが 947Nである補強層が設けられた比較タイヤ3と、圧縮剛性Fが 993Nである補強層が設けられた実施タイヤ1と、圧縮剛性Fが1224Nである補強層が設けられた実施タイヤ2と、圧縮剛性Fが1811Nである補強層が設けられた実施タイヤ3と、圧縮剛性Fが2407Nである補強層が設けられた実施タイヤ4と、圧縮剛性Fが2451Nである補強層が設けられた比較タイヤ4と、圧縮剛性Fが2510Nである補強層が設けられた比較タイヤ5と、圧縮剛性Fが2558Nである補強層が設けられた比較タイヤ6とを準備した。
【0026】
ここで、前述した各タイヤのサイズは245/45R18であり、その構造は実施形態1で説明したタイヤと同様である。次に、前述した各タイヤを9Jのリムに装着するとともに 210kPaの内圧を充填した後、キャンバ角0度、スリップ角1度の条件下で1kNの荷重を負荷しながらドラム外周上を速度 300km/hで走行させるとともに、このような走行中に荷重9kN、1秒間のインパルス入力を10サイクル付与した。その後、各タイヤを解剖し補強コードのコード折れ箇所数を計測し、その結果(コード折れ)を実施タイヤ2を指数 100として表1に示した。ここで、数値が小であるほどコード折れ箇所数が少なく優れていることを示している。
【0027】
【表1】
【0028】
次に、前記各タイヤに 210kPaの内圧を充填した後、排気量2000ccの乗用車に装着して1名乗車状態でテストコースを走行し、テストドライバーの官能で操縦安定性を評価した。その結果を表1に示すが、数値が大きいほど操縦安定性に優れている。次に、前記各タイヤに 210kPaの内圧を充填した後、キャンバ角0度、スリップ角1度の条件下で8kNの荷重を負荷しながらドラム外周上を速度 250km/hから10分毎に10km/hのステップで速度を増加させつつ走行させ、各タイヤの補強層に故障が発生したときの速度を求めた。その結果(耐久性)を表1に実施タイヤ2を指数 100として示した。ここで、数値が大であるほど耐久性が優れている。
【0029】
次に、試験例2について説明する。この試験に当たっては、撚りピッチQを値Vで除したQ/Vの値が 1.1である以外は実施タイヤ2と同様である実施タイヤ5と、Q/Vの値が 1.2である以外は実施タイヤ2と同様である実施タイヤ6と、Q/Vの値が 1.3である以外は実施タイヤ2と同様である実施タイヤ7と、前記実施タイヤ2(Q/Vの値は3.0)と、Q/Vの値が10.0である以外は実施タイヤ2と同様である実施タイヤ8と、Q/Vの値が10.3である以外は実施タイヤ2と同様である実施タイヤ9と、Q/Vの値が12.0である以外は実施タイヤ2と同様である実施タイヤ10とを準備した。次に、前述したコード折れ試験と同様の条件下でコード折れ試験を行った。その後、各タイヤを解剖して補強コードの折れ箇所数を計測し、その結果(コード折れ)を表1と同様に、実施タイヤ2を指数 100として表2に示した。ここで、数値が小であるほどコード折れ箇所数が少なく優れていることを示している。
【0030】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、空気入りタイヤのカーカスプライ間にスチール製補強コードが埋設された補強層を配置した産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0032】
11…空気入りタイヤ 12…ビードコア
16…カーカス層 18、19…カーカスプライ
20、21…カーカスコード 24…ベルト層
30…踏面 31…トレッド
32、33…溝 52…補強層
53…補強プライ 54…補強コード
57…内側陸部 58、59…外側陸部
図1
図2