【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
水系サイズ剤、ガラス繊維、ガラス繊維クロスおよび硬化した複合材料の特性を測定、評価する方法は下記のとおりである。
(1)水系サイズ剤のガラス繊維への付着量
JIS R 3420に準拠し、強熱減量として以下のように測定した。
水系サイズ剤の付着したガラス繊維を110℃で1時間熱風乾燥し、ガラス繊維から水分(水系サイズ剤由来の水分)を除去した。水を除去した後のガラス繊維の重量W
1を測定した後、そのガラス繊維を電気炉用いて625℃の環境下で30分間静置し、ガラス繊維からさらに水系サイズ剤(固形分)を除去した。水系サイズ剤(固形分)を除去した後のガラス繊維の重量W
2を測定した。
水系サイズ剤のガラス繊維への付着量は、以下の式から求めた。
ガラス繊維への付着量=[(水分除去後のガラス繊維重量W
1)−(水系サイズ剤(固形分)除去後のガラス繊維重量W
2)]/(水分除去後のガラス繊維重量W
1)×100
【0040】
(2)ガラス繊維とエポキシ樹脂との界面剪断強度
未処理のガラス繊維フィラメントから一本のガラス繊維を引き出し、その一本のガラス繊維に4〜8%で調整したサイズ剤で処理を行い20〜25℃の環境下で24時間乾燥した。乾燥後、ガラス繊維に液状のエポキシ樹脂(ADEKA社製エポキシ樹脂 EP4500)と硬化剤(ADEKA社製硬化剤 GM650)を接触させ、繊維上に樹脂の玉を10個以上作製した。作製後、40℃で1時間エージングし、さらに100℃で1時間のエージングを行い、繊維上にある樹脂玉を硬化させた。
得られた樹脂玉を有する繊維から、界面剪断測定装置(東栄産業社製)を用いて、引張速度0.12mm/分で、樹脂玉を引き抜き、その際の引抜強力(=F)を測定した。界面剪断強度は、以下の式から求めた。
界面剪断強度=F/(πDL)
式中、Dはガラス繊維の直径、Lは繊維軸方向の樹脂玉の長さを示す。
本発明においては、界面剪断強度が40MPa以上の場合、合格とした。
【0041】
(3)ガラス繊維クロスの通気度
東洋精機製のフラジールパーミヤメーターを用いて測定した。
本発明においては、通気度が60cc/(cm
2・s)未満の場合、開繊性が良好と判断し、60cc/(cm
2・s)以上の場合、開繊性が不良と判断した。
【0042】
(4)複合材料の機械物性(曲げ強度、曲げ弾性率)
JIS K 6911の3点曲げ試験に準拠し、曲げ強度および曲げ弾性率を求めた。なお、測定速度は5mm/分、支点間距離は16mmで行なった。
本発明においては、曲げ強度が600MPa以上の場合、合格とした。
【0043】
(5)(B)の水酸基価
(B)10gを、無水酢酸およびピリジン(無水酢酸/ピリジン(体積比)=1/5)の混合液5mLに溶解させた後、100℃で1時間、無水酢酸と(B)中の水酸基とを反応させた。その後、さらに蒸留水を添加し、100℃で10分間撹拌して、過剰の無水酢酸を分解し、試料液を得た。0.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて試料液の滴定を行い、滴定量W
3(mL)を求めた。同様に、(B)を用いない場合(上記の混合液のみ)についても滴定を行い、滴定量W
4(mL)を求めた。
下記式より、水酸基価を算出した。
水酸基価(mgKOH/g)=(W
4−W
3)×f×28.05/10
(f:0.5モル/L水酸化カリウム水溶液の力価)
【0044】
水系サイズ剤を構成する材料を、以下に示す。
(1)(A)
(A1)N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩と、90%酢酸と、水とからなる混合溶液(東レ・ダウコーニング社製、Z6032)
【0045】
(2)(B)
(B1)ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(吉村油化学社製、GF690、水酸基価123mgKOH/g)
(B2)ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル(三洋化成社製、ニューポール BPE−60、水酸基価228mgKOH/g)
(B3)ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル(三洋化成社製、ニューポール BP−5P、水酸基価211mgKOH/g)
【0046】
(3)(C)
(C1)ポリオキシエチレンアルキルエステル(一方社油脂工業社製、ノイラン)
【0047】
(4)(D)
(D1)カチオン性脂肪酸アミド(一方社油脂工業社製、KSK)
【0048】
(5)(E)
(E1)ヒンダードアミン(吉村油化学社製、VL−1、平均粒子径40nm)
(E2)ベンゾトリアゾール(センカ社製、シャインガード BZ−07)
(E3)トリアジン(センカ社製、シャインガード TA−04)
(E4)ヒンダードフェノール(センカ社製、シャインガード HP−12)
【0049】
(6)その他
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(シキボウ社製、エポリカ)
・澱粉(日澱化学社製、パイオスターチ)
【0050】
実施例1〜14、比較例1〜13
表1に示す種類と質量部の(A)〜(E)と、水とを混合して、固形分濃度が4〜8質量%である水系サイズ剤を作製した。
得られた水系サイズ剤を、ノズルから紡出した複数のガラス繊維フィラメント(繊維総本数:40本)からなるガラスヤーンに付着させ、ガラス繊維を1本の束(ストランド)に集束させた。次いで、このストランドを、撚りをかけずにケークに巻き取った。得られたケークから解舒したガラスロービングを、撚りをかけながら(撚り数:0.5Z)、ボビンに巻き付け、ガラス繊維ヤーン(平均繊維径:4.1μm、番手:1.3tex)を得た。このようにして、表面が処理されたガラス繊維を得た。
得られた製織用のガラス繊維を、経糸、緯糸いずれにも用いて、津田駒工業社製のエアージェット織機で製織し、ガラス繊維クロスを得た。
得られたガラス繊維クロスを、水で開繊処理し、シランカップリング処理を行い、120℃の乾燥工程にて乾燥を実施した後、エポキシ樹脂のワニスに浸漬し、ワニスから取り上げた後、150℃で5分間、170℃で1.5〜2時間の加熱処理を行い、硬化した複合材料を作製した。なお、水での開繊処理は、0.1〜5.0MPaの水圧を加えて行い、シランカップリング処理は、アミノシランカップリング剤を用いて行った。またエポキシ樹脂のワニスとして、NBMA規格のFR−4組成のエポキシ樹脂100質量部をメチルエチルケトン14質量部で希釈したワニスを用いた。
【0051】
実施例1〜14、比較例1〜13で得られた水系サイズ剤、ガラス繊維、ガラス繊維クロス、および硬化した複合材料について、各種測定、評価を行った。測定結果および評価結果を表1、2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
実施例1〜14は、(E)を含む水系サイズ剤を用いたため、ガラス繊維とエポキシ樹脂間の界面剪断強度が高かった。また、(E)を含む水系サイズ剤を用いて得られた実施例1〜14の複合材料は、いずれも、(E)を含まない水系サイズ剤を用いて得られた比較例9の複合材料と対比して、曲げ強度や曲げ弾性率が高かった。
実施例1は、水酸基価が200mgKOH/g以下の(B)を含む水系サイズ剤を用いたため、水酸基価が200mgKOH/gを超える(B)を含む水系サイズ剤を用いた実施例10、11よりも、ガラス繊維とエポキシ樹脂間の界面剪断強度がやや高かった。その結果、実施例1で得られた複合材料は、実施例10、11で得られた複合材料よりも、曲げ強度や曲げ弾性率がやや高かった。
【0055】
比較例1は、水系サイズ剤中の(B)の含有量が本発明で規定する範囲より少なかったため、紡糸の際に糸切れが頻発しガラス繊維を得ることができなかった。
比較例2は、水系サイズ剤中の(B)の含有量が本発明で規定する範囲より多かったため、ガラス繊維とエポキシ樹脂間の界面剪断強度が低かった。その結果、得られた複合材料は、曲げ強度や曲げ弾性率が低かった。
比較例3は、水系サイズ剤中の(C)の含有量が本発明で規定する範囲より少なかったため、製織時に静電気が大量に発生しガラス繊維クロスを得ることができなかった。
比較例4は、水系サイズ剤中の(C)の含有量が本発明で規定する範囲より多かったため、ガラス繊維とエポキシ樹脂間の界面剪断強度が低かった。その結果、得られた複合材料は、曲げ強度や曲げ弾性率が低かった。
比較例5は、水系サイズ剤中の(D)の含有量が本発明で規定する範囲より少なかったため、紡糸の際に糸切れが頻発しガラス繊維を得ることができなかった。
比較例6は、水系サイズ剤中の(D)の含有量が本発明で規定する範囲より多かったため、ガラス繊維とエポキシ樹脂間の界面剪断強度が低かった。その結果、得られた複合材料は、曲げ強度や曲げ弾性率が低かった。
比較例7は、水系サイズ剤中の(E)の含有量が本発明で規定する範囲より少なかったため、ガラス繊維とエポキシ樹脂間の界面剪断強度が低かった。その結果、得られた複合材料は、曲げ強度や曲げ弾性率が低かった。
比較例8は、水系サイズ剤中の(E)の含有量が本発明で規定する範囲より多かったため、製織時に大量の静電気が発生しガラス繊維クロスを得ることができなかった。
比較例9は、水系サイズ剤中に(E)を含んでいなかったため、ガラス繊維とエポキシ樹脂間の界面剪断強度が低かった。その結果、得られた複合材料は、曲げ強度や曲げ弾性率が低かった。
比較例10、11は、水系サイズ剤中にエポキシ樹脂を含んでいたため、製織時に静電気が大量に発生しガラス繊維クロスを得ることができなかった。
比較例12、13は、水系サイズ剤中に澱粉を含んでいたため、ガラス繊維とエポキシ樹脂間の界面剪断強度が低かった。その結果、得られた複合材料は、曲げ強度や曲げ弾性率が低かった。