【課題】 樹脂製ギヤ機構における歪み及び開弁スプリングの付勢力を考慮した駆動トルクでスロットル弁を閉弁駆動し、スロットル弁が全閉位置に到達したことをより適切に判定可能なスロットル弁制御装置を提供する。
【解決手段】 第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1でスロットル弁3を仮全閉位置まで制御し、第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1に応じた第1歪み相当開度THTHR1に応じて微少角度THSを設定し、仮全閉位置から微少開度THSだけスロットル弁3を開弁駆動する。次に第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1より小さい第2閉弁駆動デューティ比DUTZ2で緩やかにスロットル弁3を閉弁駆動する。その状態で検出されるスロットル弁開度THが変化しない状態となったときにスロットル弁3が全閉位置に到達したと判定する。
内燃機関のスロットル弁を樹脂製のギヤ機構を介して駆動するアクチュエータと、該アクチュエータによって前記スロットル弁を駆動しない状態で、前記スロットル弁の開度をデフォルト開度に保持するためのスプリングと、前記スロットル弁の開度を検出するスロットル弁開度センサとを有するスロットル弁駆動装置を備え、前記スロットル弁の開度を制御するスロットル弁制御装置において、
前記スロットル弁が全閉位置に到達したことを判定する全閉位置到達判定手段と、
前記スロットル弁が全閉位置に到達したと判定されたときに検出されるスロットル弁開度を全閉開度として学習する学習手段とを備え、
前記全閉位置到達判定手段は、
前記スロットル弁を第1駆動トルクで閉弁方向に駆動する第1閉弁駆動手段と、
前記第1閉弁駆動手段の作動中に検出されるスロットル弁開度が変化しない状態となった時点において、前記スロットル弁が仮全閉位置に到達したと判定する仮全閉位置到達判定手段と、
前記ギヤ機構の歪み量をスロットル弁開度の変化量に換算した第1歪み相当開度を、前記第1駆動トルクに応じて推定する第1歪み相当開度推定手段と、
前記スロットル弁が前記仮全閉位置に到達した後に、前記スロットル弁を前記仮全閉位置から微少角度だけ開弁させた微少開度位置まで開弁駆動する開弁駆動手段と、
前記微少開度位置から前記第1駆動トルクより小さい第2駆動トルクで前記スロットル弁を閉弁方向に駆動する第2閉弁駆動手段とを備え、
前記第2閉弁駆動手段の作動中に検出されるスロットル弁開度が変化しない状態となった時点において、前記スロットル弁が前記全閉位置に到達したと判定し、
前記開弁駆動手段は、前記第1歪み相当開度に応じて前記微少角度を設定することを特徴とするスロットル弁制御装置。
前記第1歪み相当開度推定手段は、前記ギヤ機構の温度と相関する温度パラメータに応じて前記第1歪み相当開度を推定することを特徴とする請求項1に記載のスロットル弁制御装置。
前記ギヤ機構の歪み量をスロットル弁開度の変化量に換算した第2歪み相当開度を、前記第2駆動トルク及び前記温度パラメータに応じて推定する第2歪み相当開度推定手段と、
前記全閉開度及び前記第2歪み相当開度を用いて前記スロットル弁駆動装置の故障判定を行う故障判定手段とをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のスロットル弁制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の
図6にはデューティ比と樹脂ギヤしなり量との関係が示されているが、この関係が制御に適用されることはなく、バッテリ電圧に応じて突き当たりを判定する基準となる判定デューティの補正が行われる。そのため、樹脂製ギヤ機構における歪み(しなり)の影響を排除する上では改善の余地があった。
【0005】
また特許文献1に示された実施例では比較的大きなデューティ比でモータが駆動されるが、スロットル弁を全閉位置まで閉弁駆動する場合に、樹脂製ギヤ機構における歪みを抑制するためには、全閉位置に近い開度ではデューティ比(駆動トルク)を可能な限り小さくすることが望まれる。ただし、スロットル弁駆動装置には、モータへの通電をオフしたときにスロットル弁開度をデフォルト開度に保持するために、スロットル弁を全閉位置から開弁方向に付勢する開弁スプリングが設けられているため、駆動トルクが小さすぎるとスロットル弁が全閉位置まで閉弁駆動されない可能性がある。
【0006】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、樹脂製ギヤ機構における歪み及び開弁スプリングの付勢力を考慮した駆動トルクでスロットル弁を閉弁駆動し、スロットル弁が全閉位置に到達したことをより適切に判定可能なスロットル弁制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、内燃機関(1)のスロットル弁(3)を樹脂製のギヤ機構(4)を介して駆動するアクチュエータ(7)と、該アクチュエータによって前記スロットル弁を駆動しない状態で、前記スロットル弁の開度(TH)をデフォルト開度(THDEF)に保持するためのスプリング(5,6)と、前記スロットル弁の開度(TH)を検出するスロットル弁開度センサ(9)とを有するスロットル弁駆動装置を備え、前記スロットル弁の開度を制御するスロットル弁制御装置において、前記スロットル弁が全閉位置に到達したことを判定する全閉位置到達判定手段と、前記スロットル弁が全閉位置に到達したと判定されたときに検出されるスロットル弁開度を全閉開度(THZ)として学習する学習手段とを備え、前記全閉位置到達判定手段は、前記スロットル弁を第1駆動トルク(DUTZ1)で閉弁方向に駆動する第1閉弁駆動手段と、前記第1閉弁駆動手段の作動中に検出されるスロットル弁開度(TH)が変化しない状態となった時点において、前記スロットル弁が仮全閉位置に到達したと判定する仮全閉位置到達判定手段と、前記ギヤ機構(4)の歪み量をスロットル弁開度の変化量に換算した第1歪み相当開度(THTHR1)を、前記第1駆動トルク(DUTZ1)に応じて推定する第1歪み相当開度推定手段と、前記スロットル弁が前記仮全閉位置に到達した後に、前記スロットル弁を前記仮全閉位置から微少角度(THS)だけ開弁させた微少開度位置まで開弁駆動する開弁駆動手段と、前記微少開度位置から前記第1駆動トルク(DUTZ1)より小さい第2駆動トルク(DUTZ2)で前記スロットル弁を閉弁方向に駆動する第2閉弁駆動手段とを備え、前記第2閉弁駆動手段の作動中に検出されるスロットル弁開度が変化しない状態となった時点において、前記スロットル弁が前記全閉位置に到達したと判定し、前記開弁駆動手段は、前記第1歪み相当開度(THTHR1)に応じて前記微少角度(THS)を設定することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、スロットル弁を第1駆動トルクで閉弁方向に駆動しているときに検出されるスロットル弁開度が変化しない状態となった時点において、スロットル弁が仮全閉位置に到達したと判定され、その時点のギヤ機構の歪み量をスロットル弁開度の変化量に換算した第1歪み相当開度が、第1駆動トルクに応じて推定される。スロットル弁が仮全閉位置に到達した後に、仮全閉位置から微少角度だけ開弁させた微少開度位置まで開弁駆動され、さらに微少開度位置から第1駆動トルクより小さい第2駆動トルクでスロットル弁を閉弁方向に駆動しているときに検出されるスロットル弁開度が変化しない状態となった時点において、スロットル弁が全閉位置に到達したと判定され、微少角度は、第1歪み相当開度に応じて設定される。スロットル弁が全閉位置に到達したと判定されたときに検出されるスロットル弁開度が全閉開度として学習される。
【0009】
このように先ず第1駆動トルクでスロットル弁を仮全閉位置まで閉弁駆動し、第1駆動トルクに応じて推定される第1歪み相当開度に応じて微少角度を設定することにより、微少角度を第1歪み相当開度に対応した適切な値に設定し、次に第1駆動トルクより小さい第2駆動トルクで緩やかにスロットル弁を閉弁駆動することによって、樹脂製ギヤ機構の歪み量を最小限に抑制しつつスロットル弁を全閉位置に確実に到達させることができる。これによって、スロットル弁の全閉位置に対応する検出開度を精度良く学習できる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスロットル弁制御装置において、前記第1歪み相当開度推定手段は、前記ギヤ機構(4)の温度と相関する温度パラメータ(TW)に応じて前記第1歪み相当開度(THTHR1)を推定することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、ギヤ機構の温度と相関する温度パラメータに応じて第1歪み相当開度が推定される。樹脂製ギヤ機構の歪み量は、そのギヤ機構の温度が高くなるほど増加する傾向があるため、温度パラメータが増加するほど第1歪み相当開度が増加するように推定することにより、歪み量を正確に推定できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のスロットル弁制御装置において、前記ギヤ機構(4)の歪み量をスロットル弁開度の変化量に換算した第2歪み相当開度(THTHR2)を、前記第2駆動トルク(DUTZ2)及び前記温度パラメータ(TW)に応じて推定する第2歪み相当開度推定手段と、前記全閉開度(THZ)及び前記第2歪み相当開度(THTHR2)を用いて前記スロットル弁駆動装置の故障判定を行う故障判定手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、スロットル弁を第2駆動トルクで閉弁駆動した場合における歪み量を示す第2歪み相当開度が推定され、全閉開度及び第2歪み相当開度を用いてスロットル弁駆動装置の故障判定が行われる。スロットル弁駆動装置が正常であれば、スロットル弁の全閉位置に対応する検出開度(全閉開度)は、第2歪み相当開度とほぼ等しくなると考えられるので、全閉開度が第2歪み相当開度を中心とした正常範囲外にあるときは、スロットル弁開度センサ、ギヤ機構などの何れかに故障があると判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる内燃機関(以下「エンジン」という)1の吸気通路2に配置されたスロットル弁3の駆動装置及びその制御装置を模式的に示す図であり、スロットル弁3はモータ7によって樹脂製のギヤ機構4を介して駆動可能に構成されている。スロットル弁3には該スロットル弁3を閉弁方向に付勢する閉弁スプリング5と、開弁方向に付勢する開弁スプリング6とが取り付けられており、モータ7による駆動力がスロットル弁3に加えられない状態(非駆動状態)では、スロットル弁3の開度THは、閉弁スプリング5の付勢力と開弁スプリング6の付勢力とがつり合うデフォルト開度THDEF(例えば全閉位置から7deg程度開弁した開度)に保持される。また図示はしていないが、スロットル弁3が全閉位置より閉弁側に作動することを規制するための全閉ストッパが設けられており、スロットル弁3の弁軸に固定されたレバーが全閉ストッパに当接したときのスロットル弁3の位置が全閉位置に相当する。
【0016】
モータ7は電子制御ユニット(以下「ECU」という)8に接続されており、その作動がECU8により制御される。スロットル弁3には、スロットル弁開度THを検出するスロットル弁開度センサ9が設けられており、その検出信号はECU8に供給される。またECU8には当該車両の運転者の要求出力を示すアクセルペダルの操作量(以下「アクセルペダル操作量」という)APを検出するアクセルセンサ10、エンジン1の冷却水温TWを検出する冷却水温センサ11、及び図示しない他のセンサが接続されており、それらのセンサの検出信号はECU8に供給される。本実施形態では、ギヤ機構4、閉弁スプリング5、開弁スプリング6、モータ7、スロットル弁開度センサ9、全閉ストッパなどによってスロットル弁駆動装置が構成される。本実施形態では、スロットル弁開度センサ9は、実際にはギヤ機構4の入力軸の回転角度を検出し、ギヤ機構4のギヤ比を用いてスロットル弁開度THに換算した角度を出力する。
【0017】
ECU8は、アクセルペダル操作量APに応じてスロットル弁3の目標開度THCMDを決定し、検出されるスロットル弁開度THが目標開度THCMDと一致するように、モータ7の制御量(具体的にはモータ駆動信号のデューティ比であり、以下単に「デューティ比」という)DUTを算出し、デューティ比DUTに相当する駆動信号をモータ7に供給する。デューティ比DUTが大きくなるほど、モータ7の出力トルク、すなわちスロットル弁3の駆動トルクは増加する。
【0018】
またECU8は以下に説明するように、スロットル弁3が全閉位置にあるときに、スロットル弁開度センサ9によって検出されるスロットル弁開度(以下「全閉開度」という)THZを学習する処理を実行するとともに、スロットル弁駆動装置の故障判定を行う。スロットル弁開度センサ9は、設計上はスロットル弁3が全閉位置にあるときスロットル弁開度THが所定全閉開度となるように構成されるが、スロットル弁駆動装置を構成する部品の特性や寸法のばらつきに起因して実際には所定全閉開度と等しくならないため全閉開度の学習を行う。さらにECU8は、エンジン1の燃料供給制御(燃料噴射弁の制御)及び点火時期制御を実行する。
【0019】
本実施形態では、通常駆動トルクでスロットル弁3を閉弁作動させた場合には、全閉位置到達時におけるギヤ機構4の歪みが大きくなって、検出されるスロットル弁開度THと、実際のスロットル弁3の位置との対応関係のずれが大きくなること、すなわち比較的大きな駆動トルクが印加された状態で全閉位置に到達すると(スロットル弁3の弁軸に固定されたレバーが全閉ストッパに当接すると)、ギヤ機構4の歪み量が急激に増加し、検出されるスロットル弁開度THが、スロットル弁3が全閉位置に停止しているにもかかわらず、より閉弁側の位置にあることを示す開度となる(正確な全閉開度より小さい開度となる)可能性があることを考慮し、以下のように全閉開度学習を行う。
【0020】
先ず通常駆動トルクで閉弁作動させてスロットル弁3が停止した位置を仮全閉位置とし、その仮全閉位置に対応する検出開度を仮全閉開度THTZとして記憶する。さらに、仮全閉開度THTZから微少角度THSだけスロットル弁3を開弁し、次いで通常駆動トルクより小さいトルクでスロットル弁3を閉弁作動させ、その状態で検出スロットル弁開度が変化しない状態となった時点の開度を全閉開度THZとして学習する。微少角度THSを、仮全閉位置へ到達したときのギヤ機構4の歪み量(推定値)に応じて設定することにより、適切な開度から全閉位置への閉弁作動を実現し、学習に要する時間を短縮するとともに全閉ストッパへ当接した時点で発生する歪み量を最小限に抑制することができる。すなわち、微少角度THSが大きすぎると小さい駆動トルクによって全閉位置に到達するまでの時間が長くなる一方、微少角度THSが小さすぎるとギヤ機構4の歪み量に相当する角度より小さくなってスロットル弁3が全閉位置からほとんど開弁していない状態となる可能性が高くなるという不具合が発生するが、微少角度THSを、仮全閉位置へ到達したときのギヤ機構4の推定歪み量に応じて設定することにより、そのような不具合を防止することができる。
【0021】
図2は、モータ7の制御量であるデューティ比DUTと、そのデューティ比でスロットル弁3が全閉ストッパに当接したときのギヤ機構4の歪み量との関係(テーブル)を示す図であり、歪み量は、スロットル弁開度の変化量に換算した歪み相当開度THTHRとして示されている。歪み相当開度THTHRは、スロットル弁3が全閉位置に停止した状態でデューティ比DUTを変化させ、スロットル弁開度センサ9から出力される開度THを計測することによって実験的に取得される。
【0022】
歪み相当開度THTHRは、デューティ比DUTが増加するほど増加し、またギヤ機構4の温度TGが高くなるほど増加する。本実施形態では、ギヤ機構4の温度TGと相関のある温度パラメータとしてエンジン1の冷却水温TWを使用する。
図2に示す破線及び実線はそれぞれ冷却水温TWが所定低水温TWL(例えば−25℃)である状態、及び所定高水温TWH(例えば80℃)である状態に対応する。以下に説明する全閉開度学習処理では、
図2に示す関係を用いて歪み相当開度THTHRが算出される。
【0023】
図3は、上述した全閉開度学習を行う処理を説明するためのフローチャートである。本実施形態では、ECU8はイグニッションスイッチがオフされた後に、全閉開度学習処理を実行し、全閉開度学習が完了すると、シャットダウン処理を実行してECU8の電源をオフする。
【0024】
ステップS11では、エンジン1の作動/非作動を切り換えるためのイグニッションスイッチがオフされたか否かを判別する。この答が否定(NO)であって、イグニッションスイッチがオンされているときは、図示しない他の処理で通常のエンジン作動制御が実行される。イグニッションスイッチがオフされるとステップS12に進み、スロットル弁3を全閉位置に到達させるべく閉弁方向に駆動する。具体的には、全閉開度THZ(前回までの学習処理によって得られている全閉開度)より所定開度DTHZ(例えば0.3度)だけ閉弁側の開度を目標開度THCMDとして、通常のフィードバック制御(例えばスライディングモード制御)による閉弁方向への駆動が行われる。したがって、モータ7の制御量であるデューティ比DUTは、スロットル弁3の通常駆動トルクを発生させる値に設定され、かつスロットル弁3は全閉ストッパによって規制される全閉位置まで確実に到達する。
【0025】
ステップS13では、一定周期(例えば200ミリ秒)で検出されるスロットル弁開度の今回値TH(k)が前回値TH(k-1)と等しくなるまで待機し、等しくなるとスロットル弁3が全閉ストッパに当接したと判定し(仮全閉位置に到達した判定し)、そのときの検出スロットル弁開度TH(k)を仮全閉開度THTZとして記憶するとともに、そのときのデューティ比DUTを第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1として記憶する(ステップS14)。
【0026】
ステップS15では、第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1及び冷却水温TWに応じて
図2に示すテーブルを検索し、第1歪み相当開度THTHR1を算出する。冷却水温TWは、図示しない他の処理によって200ミリ秒毎に更新される最新の検出値が使用され、必要に応じて補間演算が適用される。
【0027】
ステップS16では、下記式(1)に仮全閉開度THTZ及び第1歪み相当開度THTHR1を適用して目標開度THCMDを設定し、その目標開度THCMDに向かってスロットル弁3を開弁方向へ駆動する(通常のフィードバック制御)。式(1)のTHMGNは、例えば0.2度程度に設定され、スロットル弁3を仮全閉位置から開弁方向へ確実に駆動するための余裕開度である。(THTHR1+THMGN)が微少角度THSに相当する。
THCMD=THTZ+THTHR1+THMGN (1)
【0028】
ステップS17では、スロットル弁開度THが式(1)で設定された目標開度THCMDに到達するまで待機し、到達すると、第2閉弁駆動デューティ比DUTZ2を第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1から所定値DDT(例えば20%)を減算した値に設定して、スロットル弁3を閉弁駆動する。これにより、最初の閉弁駆動時における通常駆動トルクより小さい駆動トルクでスロットル弁3が閉弁駆動される。
【0029】
ステップS19では、検出されるスロットル弁開度の今回値TH(k)が前回値TH(k-1)と等しくなるまで待機し、等しくなるとスロットル弁3が全閉ストッパに当接したと判定し(全閉位置に到達した判定し)、そのときの検出スロットル弁開度TH(k)を全閉開度THZとして記憶する(ステップS20)。ステップS21では、第2閉弁駆動デューティ比DUTZ2(=DUTZ−DDT)及び冷却水温TWに応じて
図2に示すTHTHRテーブルを検索し、第2歪み相当開度THTHR2を算出する。第2歪み相当開度THTHR2は、第1歪み相当開度THTHR1より小さく「0」に近い値をとる。
【0030】
ステップS22では、全閉開度THZが第2歪み相当開度THTHR2を中心とした所定正常範囲内にあるか否かを判別する。所定正常範囲は、(THTHR2−THZFS)から(THTHR2+THZFS)までの範囲であり、THZFSは例えば0.1度程度に設定される故障判定設定値である。故障判定設定値THZFSは、ギヤ機構4の材質に依存して異なる値に設定される。
【0031】
ステップS22の答が肯定(YES)であるときは、ECU8のシャットダウン処理(電源をオフするための処理)を実行する(ステップS24)。一方ステップS22の答が否定(NO)であるときは、スロットル弁駆動装置の故障(モータ7,スロットル弁開度センサ9などの何れかが故障している)と判定する(ステップS23)。
【0032】
以上のように本実施形態では、スロットル弁3を第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1で閉弁方向に駆動しているときに検出されるスロットル弁開度THが変化しない状態となった時点において、スロットル弁3が仮全閉位置に到達したと判定し、そのときのギヤ機構4の歪み量をスロットル弁開度THの変化量に換算した第1歪み相当開度THTHR1が、第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1に応じて推定される。スロットル弁3が仮全閉位置に到達した後に、仮全閉位置から微少角度THSだけ開弁させた微少開度位置までスロットル弁3を開弁駆動し、さらに微少開度位置から第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1より小さい第2閉弁駆動デューティ比DUTZ2でスロットル弁3を閉弁方向に駆動しているときに検出されるスロットル弁開度THが変化しない状態となった時点において、スロットル弁3が全閉位置に到達したと判定され、微少角度THSは、第1歪み相当開度THTHR1に応じて設定される。スロットル弁3が全閉位置に到達したと判定されたときに検出されるスロットル弁開度THが全閉開度THZとして学習される。
【0033】
このように先ず第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1でスロットル弁3を仮全閉位置まで閉弁駆動し、第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1に応じて推定される第1歪み相当開度THTHR1に応じて微少角度THSを設定することにより、微少角度THSを第1歪み相当開度THTHR1に対応した適切な値に設定し、次に第1閉弁駆動デューティ比DUTZ1より小さい第2閉弁駆動デューティ比DUTZ2で緩やかにスロットル弁3を閉弁駆動することによって、樹脂製のギヤ機構4の歪み量を最小限に抑制しつつスロットル弁3を全閉位置に確実に到達させることができる。これによって、スロットル弁3の全閉位置に対応する検出開度を精度良く学習できる。
【0034】
またギヤ機構4の歪み量は、その温度が高くなるほど増加する傾向があるため、冷却水温TWが高くなるほど第1歪み相当開度THTHR1が増加するように推定することにより、歪み量を示す歪み相当開度THTHRを正確に推定できる。
【0035】
またスロットル弁3を第2閉弁駆動デューティ比DUTZ2で閉弁駆動した場合における歪み量を示す第2歪み相当開度THTHR2が推定され、全閉開度THZ及び第2歪み相当開度THTHR2を用いてスロットル弁駆動装置の故障判定が行われる。スロットル弁駆動装置が正常であれば、スロットル弁3の全閉位置に対応する検出開度(全閉開度THZ)は、第2歪み相当開度THTHR2とほぼ等しくなると考えられるので、全閉開度THZが第2歪み相当開度THTHR2を中心とした正常範囲外にあるときは、スロットル弁開度センサ9、ギヤ機構4などの何れかに故障があると判定することができる。
【0036】
本実施形態では、ECU8が全閉位置到達判定手段、学習手段、第1閉弁駆動手段、仮全閉位置到達判定手段、第1歪み相当開度推定手段、開弁駆動手段、第2閉弁駆動手段、第2歪み相当開度推定手段、及び故障判定手段を構成する。具体的には、
図3のステップS12〜S19が全閉位置到達判定手段に相当し、ステップS20が学習手段に相当し、ステップS13が仮全閉位置到達判定手段に相当し、ステップS14及びS15が第1歪み相当開度推定手段に相当し、ステップS16及びS17が開弁駆動手段に相当し、ステップS18が第2閉弁駆動手段に相当し、ステップS21〜S23が故障判定手段に相当する。
【0037】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した
図3のステップS20では、全閉開度THZを検出されたスロットル弁開度TH(k)に設定するようにしたが、下記式(3)による重み付け平均化演算によって全閉開度THZを更新するようにしてもよい。
THZ=CW×TH(k)+(1−CW)×THZ (3)
ここで、右辺のTHZは更新前の全閉開度であり、CWは0から1の間の値(例えば0.5)に設定される重み係数である。