特開2016-217469(P2016-217469A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧
特開2016-217469ウォーム減速機およびステアリング装置
<>
  • 特開2016217469-ウォーム減速機およびステアリング装置 図000003
  • 特開2016217469-ウォーム減速機およびステアリング装置 図000004
  • 特開2016217469-ウォーム減速機およびステアリング装置 図000005
  • 特開2016217469-ウォーム減速機およびステアリング装置 図000006
  • 特開2016217469-ウォーム減速機およびステアリング装置 図000007
  • 特開2016217469-ウォーム減速機およびステアリング装置 図000008
  • 特開2016217469-ウォーム減速機およびステアリング装置 図000009
  • 特開2016217469-ウォーム減速機およびステアリング装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-217469(P2016-217469A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】ウォーム減速機およびステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/16 20060101AFI20161125BHJP
   F16H 55/22 20060101ALI20161125BHJP
   B23F 11/00 20060101ALI20161125BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   F16H1/16 Z
   F16H55/22
   B23F11/00
   B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-103717(P2015-103717)
(22)【出願日】2015年5月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100183450
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 太知
(72)【発明者】
【氏名】菊地 新
【テーマコード(参考)】
3D333
3J009
3J030
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CC14
3D333CD09
3D333CD11
3D333CD12
3D333CD13
3D333CD16
3D333CD37
3D333CD45
3D333CD47
3D333CE09
3D333CE20
3J009DA02
3J009EA06
3J009EA19
3J009EA23
3J009EA43
3J030BA03
3J030BB13
3J030BC02
(57)【要約】
【課題】組み付け誤差や加工誤差を許容しつつ、トルク変動を低減できるウォーム減速機およびこのウォーム減速機を含むステアリング装置を提供すること。
【解決手段】ウォーム減速機19では、ウォーム20の外径D1と、ウォームホイール21を切削して歯溝42を形成するためのホブの外径D2との関係が以下の式(1)を満足する。ウォーム20およびウォームホイール21の噛み合いピッチ円Pにおけるウォームホイール21の圧力角αとウォーム20の圧力角βとの関係が以下の式(2)を満足する。
3≧D2/D1≧1.7 …式(1)
0.1度≦α−β≦0.5度 …式(2)
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォームと、前記ウォームと噛み合う歯溝を有するウォームホイールとを含み、
前記ウォームの外径D1と、前記ウォームホイールを切削して前記歯溝を形成するためのホブの外径D2との関係が以下の式(1)を満足し、
前記ウォームおよび前記ウォームホイールの噛み合いピッチ円における前記ウォームホイールの圧力角αと前記ウォームの圧力角βとの関係が以下の式(2)を満足することを特徴とする、ウォーム減速機。
3≧D2/D1≧1.7 …式(1)
0.1度≦α−β≦0.5度 …式(2)
【請求項2】
補助操舵用の電動モータと、前記電動モータの回転を減速する請求項1記載のウォーム減速機とを含むことを特徴とする、ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ウォーム減速機およびこのウォーム減速機を含むステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された電動パワーステアリング装置では、操舵補助力発生用モータの回転が、ウォームと、このウォームに噛み合うウォームホイールとを介して、舵角が変化するように車輪に伝達される。ウォームホイールは、ホブ加工によって成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−334724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウォームホイールのホブ加工に用いられるホブの外径をウォームの外径に近づけると、ホブ加工後のウォームホイールの歯溝の形状がウォームの歯の形状に近似するので、理論上では、ウォームとウォームホイールとの間でのトルクの伝達誤差(いわゆるトルク変動)を小さく抑えることができる。しかし、この場合には、ウォームホイールの組み付け誤差や加工誤差を許容する余裕がないので、これらの誤差が生じると、ウォームの歯とウォームホイールの歯とで互いに接触する位置が適正位置から変わってしまう虞がある。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、組み付け誤差や加工誤差を許容しつつ、トルク変動を低減できるウォーム減速機およびこのウォーム減速機を含むステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、ウォーム(20)と、前記ウォームと噛み合う歯溝(42)を有するウォームホイール(21)とを含み、前記ウォームの外径D1と、前記ウォームホイールを切削して前記歯溝を形成するためのホブ(50)の外径D2との関係が以下の式(1)を満足し、前記ウォームおよび前記ウォームホイールの噛み合いピッチ円(P)における前記ウォームホイールの圧力角αと前記ウォームの圧力角βとの関係が以下の式(2)を満足することを特徴とする、ウォーム減速機(19)である。
【0007】
3≧D2/D1≧1.7 …式(1)
0.1度≦α−β≦0.5度 …式(2)
請求項2記載の発明は、補助操舵用の電動モータ(18)と、前記電動モータの回転を減速する請求項1記載のウォーム減速機とを含むことを特徴とする、ステアリング装置(1)である。
【0008】
なお、上記において、式(1)および式(2)以外における括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明の効果】
【0009】
請求項1および2記載の発明によれば、式(1)を満足するようにホブの外径D2をウォームの外径D1よりも大きく設定することによって、ホブ加工後のウォームホイールの歯溝は、ある程度の余裕を持ってウォームの歯を受け入れることができるので、組み付け誤差や加工誤差を許容できる形状になる。
そして、式(2)を満足するようにウォームおよびウォームホイールの噛み合いピッチ円におけるウォームの圧力角βをウォームホイールの圧力角αよりも小さく設定することによって、ウォームとウォームホイールとの間におけるトルク変動を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置の概略図である。
図2図2は、ステアリング装置に備えられるウォーム減速機における要部の側面図である。
図3図3は、ウォーム減速機のウォームホイールをホブ加工により成形する様子を示す模式図である。
図4図4は、ウォーム減速機におけるウォームとウォームホイールとの噛み合い部分を示す模式図である。
図5図5は、ウォームホイールの斜視図である。
図6図6は、ウォームの回転角度と、ウォームホイールの歯面に作用する負荷荷重との関係を示すグラフである。
図7図7は、ウォームの圧力角とウォームホイールの圧力角との差と、噛み合い変動との関係を示すグラフである。
図8図8は、ウォームの回転角度とトルクとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るステアリング装置1の概略図である。図1を参照して、ステアリング装置1は、電動式パワーステアリング装置であって、操舵機構2および転舵機構3を含み、運転者のステアリングホイール4(操舵部材)の操舵(ステアリング操作)に基づき、転舵輪5を転舵させる。操舵機構2は、運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構6を備えている。
【0012】
操舵機構2は、入力シャフト7、出力シャフト8、インターミディエイトシャフト9およびピニオンシャフト10を有している。入力シャフト7は、ステアリングホイール4に連結されている。出力シャフト8では、一端がトーションバー11を介して入力シャフト7に連結され、他端が自在継手12を介してインターミディエイトシャフト9に連結されている。インターミディエイトシャフト9は、自在継手13を介して、ピニオン10Aを有するピニオンシャフト10に連結されている。
【0013】
転舵機構3は、ラックシャフト14およびタイロッド15を有している。ラックシャフト14は、ピニオン10Aに噛み合ったラック14Aを有している。タイロッド15は、一端がラックシャフト14に連結されて、他端が転舵輪5に連結されている。
運転者のステアリングホイール4の操作に応じて、ステアリングホイール4が回転すると、入力シャフト7、出力シャフト8およびインターミディエイトシャフト9を介して、ピニオンシャフト10が回転する。ピニオンシャフト10の回転は、転舵機構3により、ラックシャフト14の軸方向の往復運動に変換される。ラックシャフト14の軸方向の往復運動により、転舵輪5の転舵角が変化する。
【0014】
アシスト機構6は、トルクセンサ16と、ECU(Electronic Control Unit) 17と、補助操舵用の電動モータ18と、ウォーム減速機19とを含む。
ウォーム減速機19は、ウォーム20と、ウォーム20と噛み合うリダクションギヤであるウォームホイール21と、ウォーム20およびウォームホイール21を収容するハウジング22とを含む。ウォーム20は、電動モータ18の回転軸(図示せず)に連結されている。ウォームホイール21は、出力シャフト8に一体回転可能に連結されている。
【0015】
運転者の操舵に伴ってステアリングホイール4が回転すると、トルクセンサ16は、入力シャフト7と出力シャフト8との間の捩れ量を検出する。ECU17は、トルクセンサ16により検出された捩れ量から得られる操舵トルクTや、車速センサ23によって検出された車速V等に基づいてアシストトルクを決定する。電動モータ18は、ECU17により駆動制御される。このようにステアリングホイール4の操舵に基づいて駆動された電動モータ18は、ウォーム20に出力回転を伝達してウォーム20を回転させる。すると、ウォーム20と噛み合ったウォームホイール21がウォーム20よりも低速で回転し、ウォームホイール21および出力シャフト8が一体回転する。このように、ウォーム減速機19は、電動モータ18の出力回転をウォームホイール21によって減速し、アシストトルクとして操舵機構2の出力シャフト8に伝達する。これにより、運転者によるステアリングホイール4のステアリング操作が補助される。
【0016】
次に、ウォーム減速機19について詳しく説明する。図2は、ウォーム減速機19における要部の側面図である。
図2では、前述したハウジング22の図示が省略されている。図2を参照して、ウォーム20は、円柱状の軸部30と、軸部30の外周面30Aに一体形成された歯31とを含む。軸部30の中心軸Jの延びる方向を軸方向Xと呼ぶことにする。歯31は、中心軸Jを中心とした螺旋を描くように、外周面30Aにおいて軸方向Xの両端部よりも内側の領域に形成されている。軸方向Xから見たときの歯31は、中心軸Jを円中心とする円形状の輪郭を有している。この輪郭の直径がウォーム20の外径D1である。
【0017】
また、中心軸Jを通って軸方向Xに延びる仮想の平面で切断したときの歯31の断面は、中心軸Jから離れる方向へ向けて幅狭となった略等脚台形状に形成されている(後述する図4を参照)。歯31の軸方向Xにおける両側の側面を歯面32と呼ぶことにする。
軸方向Xにおける軸部30の両端部には、軸受33が1つずつ取り付けられており、ウォーム20は、これらの軸受33を介してハウジング22によって回転自在に支持されている。軸方向Xにおける軸部30の一端部(図2では右端部)において軸受33からはみ出した部分には、継手34が取り付けられている。継手34は、電動モータ18の回転軸(図示せず)に連結されている。そのため、前述したように、電動モータ18が駆動されるとウォーム20が中心軸Jまわりに回転する。
【0018】
ウォームホイール21は、円盤形状である。ウォームホイール21の中心軸Kは、ウォームホイール21の厚さ方向と一致した軸方向Yに延びている。以下では、ウォームホイール21の周方向を周方向Sと呼び、ウォームホイール21の径方向を径方向Rと呼ぶことにする。径方向Rのうち、中心軸Kに近づく側を径方向内側R1と呼び、中心軸Kから離れる側を径方向外側R2と呼ぶことにする。周方向Sは、ウォームホイール21の回転方向である。
【0019】
ウォームホイール21は、中心軸K側に位置する円盤状のスリーブ40と、中心軸Kから径方向外側R2へ離れた外周側においてスリーブ40を取り囲む環状の歯部41とを含む。スリーブ40と歯部41とは、同じ材料(例えば金属)で一体形成されてもよい。または、インサート成形により、樹脂製の歯部41が金属製のスリーブ40に一体化されてもよい。スリーブ40の円中心位置には、出力シャフト8が嵌め込まれる挿通穴40Aが形成されている。
【0020】
歯部41の外周面には、ウォーム20と噛み合う複数の歯溝42が周方向Sに等間隔で形成されている。それぞれの歯溝42は、歯部41の外周部を軸方向Yに切り欠きつつ、径方向内側R1へ窪んでいる。軸方向Yから見て、それぞれの歯溝42は、径方向内側R1へ向けて幅狭となるように略等脚台形状に形成されている。歯部41において周方向Sに隣り合う歯溝42に挟まれた凸状の部分が、ウォームホイール21における1つの歯43である。中心軸Kに直交する仮想の平面で切断したときの歯43の断面は、径方向外側R2へ向けて幅狭となった略等脚台形状に形成されている(図4も参照)。1つの歯43の周方向Sにおける両側の側面を歯面44と呼ぶことにする。歯面44は、図2では平面的に図示されているが、厳密には湾曲している。周方向Sに隣り合う歯43において歯溝42を挟んで対向する一対の歯面44の間隔は、径方向内側R1へ向かうに従って狭くなっている。これら一対の歯面44によって1つの歯溝42が区画されており、歯溝42の溝底42Aは、歯底として、これら一対の歯面44の径方向内側R1の端部同士の間に架設されている。
【0021】
図3に示すホブ50を回転させてウォームホイール21に切削加工(ホブ加工)を施すことによって、歯溝42が形成される。ホブ50は、ウォームホイール21を切削するための複数の切り刃51が外周面にねじ状に並んで形成された円筒体である。ホブ50の軸方向Lから見て、切り刃51の刃先は、仮想の円上に配置されており、この円の直径がホブ50の外径D2である。なお、この円は、ホブ50が回転したときにおける切り刃51の刃先の回転軌跡でもある。ウォーム20の外径D1(図2参照)とホブ50の外径D2との関係は、以下の式(1)を満足するように設定されている。
【0022】
3≧D2/D1≧1.7 …式(1)
式(1)を満足するようにホブ50の外径D2をウォーム20の外径D1よりも大きく設定することによって、ホブ加工後のウォームホイール21の歯溝42は、ある程度の余裕を持ってウォーム20の歯31を受け入れることができるので、組み付け誤差や加工誤差を許容できる形状になる。つまり、組み付け誤差や加工誤差に鈍感な特性をウォームホイール21に付与することができる。
【0023】
ちなみに、D2/D1の値が3を上回るような外径D2の大きなホブ50を用いると、ホブ加工後のウォームホイール21の歯43の歯面44が、平面的になり、ウォームホイール21の歯溝42は、ウォーム20の歯31の形状から著しくかけ離れた形状となる。これでは、ウォーム20とウォームホイール21との噛み合いが悪化し、トルク変動が大きくなる虞がある。
【0024】
図4は、ウォーム20とウォームホイール21との噛み合い部分を示す模式図である。図4では、ウォーム20の歯31の歯面32とウォームホイール21の歯43の歯面44とが接触することによってウォーム20とウォームホイール21とが噛み合った状態におけるウォーム20およびウォームホイール21の噛み合いピッチ円Pの軌跡の一部が1点鎖線で図示されている。また、図4では、噛み合いピッチ円Pにおけるウォームホイール21の圧力角αとウォーム20の圧力角βとが図示されている。圧力角αは、径方向Rに沿う基準線Qと噛み合いピッチ円Pとの交点Uにおいて基準線Qと歯面44(厳密には、軸方向Yから見た歯面44の輪郭に対する接線)とがなす鋭角である。圧力角βは、交点Uにおいて基準線Qと歯面32(厳密には、軸方向Yから見た歯面32の輪郭に対する接線)とがなす鋭角である。圧力角αと圧力角βとの関係は、以下の式(2)を満足するように設定されている。
【0025】
0.1度≦α−β≦0.5度 …式(2)
式(2)を満足するように噛み合いピッチ円Pにおけるウォーム20の圧力角βをウォームホイール21の圧力角αよりも大きく設定することによって、ウォーム20とウォームホイール21との間におけるトルク変動を低減できる。詳しくは、以下で説明する。
図5は、ウォームホイール21の斜視図である。図5を参照して、ウォームホイール21において周方向Sに連続して並ぶ任意の3つの歯43に着目する。これらの3つの歯43を、周方向Sにおける一方側S1から順に、歯43A、歯43Bおよび歯43Cというように区別する。ウォーム20の回転に従動してウォームホイール21が周方向Sにおける一方側S1とは反対の他方側S2へ回転する場合には、歯43A、歯43Bおよび歯43Cのそれぞれでは、一方側S1における歯面44が、ウォーム20の歯面32によって接触される。歯面44において歯面32によって接触される領域を接触領域と呼ぶことにする。ウォームホイール21の回転中における所定のタイミングに着目すると、ウォーム20の歯31と噛み合い始めの状態にある歯43Aでは歯先側に接触領域Aが存在するときに、別の歯31と噛み合い途中の状態にある歯43Bでは、歯先と歯元との間に接触領域Bが存在し、さらに別の歯31と噛み合い終わりの状態にある歯43Cでは、歯元側に接触領域Cが存在する。
【0026】
図6は、ウォーム20の回転角度と、ウォーム20の回転によってウォームホイール21の歯面44に作用する負荷荷重との関係を示すグラフである。ここでの負荷荷重は、ウォームホイール21の歯面44に対するウォーム20の歯面32の押圧力に相当する。
図6を参照して、噛み合い始めの歯43Aおよび噛み合い途中の歯43Bのそれぞれでは、ウォーム20の回転角度が増加するとともに、負荷荷重が増加する。逆に、噛み合い終わりの歯43Cでは、ウォーム20の回転角度が増加するとともに、負荷荷重が減少する。図6では、式(2)を満足するように圧力角αおよび圧力角βが設定された本実施形態における負荷荷重の変化は、実線のカーブで示されていて、圧力角αと圧力角βとが等しい比較例における負荷荷重の変化は、破線、1点鎖線または2点鎖線のカーブで示されている。
【0027】
本実施形態では、圧力角βを小さくすることによって、ウォームホイール21の歯43の歯元とウォーム20との噛み合い(換言すれば、前述した接触領域)が増加する。これにより、負荷荷重の変化の勾配が緩やかになる。特に、噛み合い終わりの歯43Cでは、負荷荷重の変化の勾配が、比較例(破線のカーブを参照)と比べて格段に緩やかになる。また、本実施形態における負荷荷重は、比較例と比べて、噛み合い始めの歯43Aと噛み合い途中の歯43Bとでは減少しているが、噛み合い終わりの歯43Cでは大幅に増加しているので、ウォームホイール21全体では、平均の負荷荷重が増加する。これにより、ウォーム20からウォームホイール21へのトルクの伝達効率の向上を見込める。
【0028】
図7は、ウォーム20の圧力角βとウォームホイール21の圧力角αとの差と、噛み合い変動との関係を示すグラフである。噛み合い変動とは、ウォーム20からウォームホイール21のそれぞれの歯43に伝達されるトルクについての実際の値と目標値との差を示す指標である。
図7を参照して、前述したように圧力角βを小さくすると、α−βの値が大きくなっていく。α−βの値が0度を上回ると噛み合い変動が小さくなる。特に、α−βの値が式(2)を満足するように0.1度から0.5度までの範囲に収まる場合には噛み合い変動が著しく小さくなり、0.3度のときに噛み合い変動が最小になる。しかし、α−βの値がこの範囲から外れると、噛み合い変動が大きくなってしまう。特に、圧力角βを小さくし過ぎてα−βの値が0.5度を上回ると、ウォームホイール21における噛み合い始めの歯43Aの歯先とウォーム20との歯当たり(換言すれば、前述した接触領域A)が減少してウォーム20とウォームホイール21との噛み合い率が低下する。これでは、1つの歯43が分担するトルクについての噛み合い変動が大きくなる虞がある。よって、本実施形態では、α−βの値に対して、式(2)による0.1度以上0.5度以下という最適範囲(0.3度に対して±0.2度の範囲)が設定される。
【0029】
図8は、ウォーム20の回転角度と、ウォーム20からウォームホイール21に伝達されるトルクとの関係を示すグラフである。ここでのトルクは、ウォームホイール21における個々の歯43が分担するトルクではなく、ウォームホイール21全体に伝達されるトルクを指している。図8では、式(2)を満足するように圧力角αおよび圧力角βが設定された本実施形態におけるトルクの変化は、実線のカーブで示されていて、圧力角αと圧力角βとが等しい比較例におけるトルクの変化は、破線のカーブで示されている。
【0030】
α−βの値が前述した最適範囲に収まるように圧力角αおよび圧力角βが設定されることによって、噛み合い変動が小さくなる(図7参照)。さらに、ウォームホイール21における噛み合い終わりの歯43Cの歯元とウォーム20の歯31の歯先とが噛み合うときに伝達されるトルクの低下が抑制される。以上の結果、図8を参照して、本実施形態では、トルク変動が比較例に比べて低減されるので、トルクが、基準値(図8では、たとえば40.4N・mの近辺)に向けて収束する。
【0031】
なお、α−βの値は、好ましくは0.2度以上0.4度以下であれば、トルク変動の一層の低減を図れる。
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、ウォーム20とウォームホイール21とが噛み合った状態において、径方向外側R2から見て、ウォーム20の中心軸Jとウォームホイール21の中心軸Kとは、本実施形態のように直交していてもよいし(図2参照)、斜交していてもよい。
【0032】
また、図6に示された負荷荷重の具体的な数値や、図7に示された噛み合い変動の具体的な数値や、図8に示されたトルクの具体的な数値は、あくまで一例であり、ウォーム20およびウォームホイール21のサイズに応じて変動する。
【符号の説明】
【0033】
1…ステアリング装置、18…電動モータ、19…ウォーム減速機、20…ウォーム、21…ウォームホイール、42…歯溝、50…ホブ、D1…ウォームの外径、D2…ホブの外径、P…噛み合いピッチ円、α…ウォームホイールの圧力角、β…ウォームの圧力角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8