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特開2016-217505等速ジョイントのローラユニット及び等速ジョイントの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-217505(P2016-217505A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】等速ジョイントのローラユニット及び等速ジョイントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/205 20060101AFI20161125BHJP
   F16D 3/20 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   F16D3/205 M
   F16D3/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-105243(P2015-105243)
(22)【出願日】2015年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】三木 隆広
(72)【発明者】
【氏名】中川 義崇
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕也
(72)【発明者】
【氏名】安彦 明良
(57)【要約】
【課題】 ダブルローラ型の等速ジョイントのローラユニットからのグリースの漏出を防止する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】 等速ジョイント100の内側ジョイント部材20における球面凸状の複数の脚軸22と等速ジョイント100の外側ジョイント部材10の内周面の軌道溝11との間に配置される等速ジョイント100のローラユニット30であって、円筒形状に形成され、脚軸22の外周面を軸線方向に沿って摺動可能、且つ、脚軸22に傾動可能に配置される内ローラ31と、内ローラ31の外周側に内ローラ31に対して相対回転可能に配置され、軌道溝11を転動する外ローラ32と、を備え、ローラユニット30は、内ローラ31と脚軸22との間にあるグリースの脚軸22の先端から離れる方向への漏出を防止するグリース保持部32bを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
等速ジョイントの内側ジョイント部材における球面凸状の複数の脚軸と前記等速ジョイントの外側ジョイント部材の内周面の軌道溝との間に配置される等速ジョイントのローラユニットであって、
円筒形状に形成され、前記脚軸の外周面を軸線方向に沿って摺動可能、且つ、前記脚軸に傾動可能に配置される内ローラと、
前記内ローラの外周側に前記内ローラに対して相対回転可能に配置され、前記軌道溝を転動する外ローラと、
を備え、
前記ローラユニットは、前記内ローラと前記脚軸との間にあるグリースの前記脚軸の先端から離れる方向への漏出を防止するグリース保持部を備える、等速ジョイントのローラユニット。
【請求項2】
前記グリース保持部は、前記脚軸の先端面と対向している請求項1に記載の等速ジョイントのローラユニット。
【請求項3】
前記グリース保持部は、板形状であり、
前記グリース保持部の縦断面形状は、前記脚軸から離れる方向に膨出した円弧形状となっている請求項2に記載の等速ジョイントのローラユニット。
【請求項4】
前記外ローラは、前記内ローラの外周側に配置された筒形状の本体部と、前記本体部の開口部を閉塞する前記グリース保持部とが一体に形成されることにより構成されている請求項2又は3に記載の等速ジョイントのローラユニット。
【請求項5】
前記内ローラは、前記前記脚軸の外周側に配置された筒形状の本体部と、前記本体部の開口部を閉塞する前記グリース保持部とが一体に形成されることにより構成されている請求項2又は3に記載の等速ジョイントのローラユニット。
【請求項6】
内周面に複数の軌道溝を備える外側ジョイント部材と、
球面凸状の複数の脚軸を備えた内側ジョイント部材と、
前記脚軸と前記軌道溝との間に配置され、請求項1−5の何れか一項に記載のローラユニットと、
を備える等速ジョイントの製造方法であって、
前記ローラユニットを前記脚軸に組み付ける前に、各前記内ローラの内部にグリースを注入するローラユニットグリース注入工程と、
各前記外ローラを各前記軌道溝に係合させて、前記内側ジョイント部材を前記外側ジョイント部材に組み付ける前に、前記外側ジョイント部材の内部にグリースを注入する外側ジョイント部材グリース注入工程と、を有する等速ジョイントの製造方法。
【請求項7】
前記ローラユニットグリース注入工程において注入する前記グリースの量は、前記ローラユニットが前記脚軸に組み付けられた際に、少なくとも前記脚軸と前記内ローラとの摺動部に前記グリースが存在する量である請求項6に記載の等速ジョイントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速ジョイントのローラユニット及び等速ジョイントの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、ダブルローラ型のトリポード型等速ジョイントがある。この等速ジョイントは、トリポードに設けられた3本の脚軸にそれぞれ支持された内ローラと、内ローラの外周側に設けられた外ローラと、内ローラと外ローラの間に設けられた複数のニードルローラとから構成されたローラユニットを有する。外ローラと外側ジョイント部材との間の潤滑、内ローラ及び外ローラとニードルベアリングとの潤滑、及び内ローラとトリポードの脚軸との潤滑を確保することにより、摺動する各部材の焼き付きを防止するために、外側ジョイント部材内には、グリースが注入されている。
【0003】
このような等速ジョイントがジョイント角を付与された状態でトルク伝達を行うと、ローラユニットが外側ジョイント部材の軌道溝を摺動するとともに、ローラユニットがトリポードの脚軸の軸線方向に沿って摺動しつつ、脚軸に対して傾動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−144898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される内ローラ及び外ローラは、略円筒形状であり、トリポードの脚軸の軸線方向の外側に開口している。このため、内ローラとトリポードの脚軸との間にあるグリースが、等速ジョイントが回転した際に内ローラとトリポードの脚軸との間にあるグリースに遠心力が作用して、当該グリースが内ローラ及び外ローラの開口部から漏出する。また、ローラユニットがトリポードの脚軸の軸線方向に沿って摺動したり、脚軸に対して傾動したりする際に、内ローラとトリポードの脚軸との間にあるグリースが、内ローラ及び外ローラの開口部側、つまり、脚軸の先端から離れる方向に押し出されて、内ローラ及び外ローラの開口部から漏出する。
【0006】
等速ジョイントに用いられるグリースは二硫化モリブデングリース等の高価なグリースである。上述したように、内ローラ及び外ローラの開口部から漏出する分のグリースだけ余分にグリースを外側ジョイント部材内に注入していたため、等速ジョイントがコスト高になっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ダブルローラ型の等速ジョイントのローラユニットからのグリースの漏出を防止する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る等速ジョイントのローラユニットは、等速ジョイントの内側ジョイント部材における球面凸状の複数の脚軸と前記等速ジョイントの外側ジョイント部材の内周面の軌道溝との間に配置される等速ジョイントのローラユニットであって、円筒形状に形成され、前記脚軸の外周面を軸線方向に沿って摺動可能、且つ、前記脚軸に傾動可能に配置される内ローラと、前記内ローラの外周側に前記内ローラに対して相対回転可能に配置され、前記軌道溝を転動する外ローラと、を備え、前記ローラユニットは、前記内ローラと前記脚軸との間にあるグリースの前記脚軸の先端から離れる方向への漏出を防止するグリース保持部を備えている。
【0009】
これにより、ローラユニットが、トリポードの脚軸の軸線方向に沿って摺動したり、脚軸に対して傾動したりする際に、内ローラとトリポードの脚軸との間にあるグリースの脚軸の先端から離れる方向への漏出が、グリース保持部によって防止される。このため、内ローラとトリポードの脚軸との間にあるグリースから漏出する分のグリースだけ余分にグリースを外側ジョイント部材内に注入する必要が無いので、等速ジョイントがコスト高にならない。
【0010】
本発明に係る等速ジョイントの製造方法は、内周面に複数の軌道溝を備える外側ジョイント部材と、球面凸状の複数の脚軸を備えた内側ジョイント部材と、前記脚軸と前記軌道溝との間に配置されたローラユニットと、を備える等速ジョイントの製造方法であって、前記ローラユニットを前記脚軸に組み付ける前に、各前記内ローラの内部にグリースを注入するローラユニットグリース注入工程と、各前記外ローラを各前記軌道溝に係合させて、前記内側ジョイント部材を前記外側ジョイント部材に組み付ける前に、前記外側ジョイント部材の内部にグリースを注入する外側ジョイント部材グリース注入工程と、を有する。
【0011】
このように、外側ジョイント部材グリース注入工程の前に、ローラユニットグリース注入工程によって、各内ローラの内部にグリースが注入されるので、等速ジョイントの使用時に、内ローラと脚軸との摺動部にグリースに存在し、この摺動部の焼き付き等の損傷が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態におけるトリポード型等速ジョイントの軸線方向断面図である。
図2図1における外側ジョイント部材の開口部側から見た断面図である。
図3】等速ジョイントの製造方法のフローチャートである。
図4】別の実施形態におけるトリポード型等速ジョイントの軸線方向断面図である。
図5】別の実施形態におけるトリポード型等速ジョイントの軸線方向断面図である。
図6】別の実施形態におけるトリポード型等速ジョイントの軸線方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(等速ジョイント100の全体構成)
本実施形態に係るダブルローラ型のトリポード型等速ジョイント100(以下、単に等速ジョイント100と略す)について、図1及び図2を参照して説明する。等速ジョイント100は、車両のエンジン等の原動機と車両の駆動輪との間に設けられ、原動機と駆動輪との間でトルク伝達するものである。
【0014】
等速ジョイント100は、図1に示すように、シャフト3と、ブーツ4、外側ジョイント部材10と、内側ジョイント部材20と、3つのローラユニット30とを備える。内側ジョイント部材20(トリポード)は、外側ジョイント部材10の軸線方向(図1の左右方向)に沿って移動可能であると共に、外側ジョイント部材10に対して傾動可能である。
【0015】
外側ジョイント部材10は、軸線方向一端側に開口部を有する筒状に形成される。外側ジョイント部材10は、本実施形態においては有底筒状に形成されるが、貫通する筒状に形成される場合もある。外側ジョイント部材10の内周面には、図1に示すように、外側ジョイント部材10の内周面の開口部から奥側(図1の左側)に向かって、外側ジョイント部材10の軸線方向に沿って延びる3つの軌道溝11が、外側ジョイント部材10の周方向に等間隔に形成されている。
【0016】
内側ジョイント部材20は、ボス21と、ボス21から径方向外方に延びる3本(複数)の脚軸22とを備える。図2に示すように、脚軸22の外周面は、球面凸状に形成されている。つまり、脚軸22の外周面の軸線方向断面形状は、円弧凸状に形成されている。また、脚軸22の先端面は、球面凸状に形成されている。
【0017】
ローラユニット30は、内ローラ31、外ローラ32、ニードルローラ33、及び止め輪34を有する。このような構成からなるローラユニット30は、径方向に2つのローラ(外ローラ32、内ローラ31)を重ねて配置されたダブルローラタイプである。ローラユニット30は、脚軸22と軌道溝11との間に配置されている。
【0018】
図2に示すように、内ローラ31は、円筒形状である。内ローラ31は、各脚軸22の外周側に配置されて取り付けられている。内ローラ31の内周面と球面凸状に形成された脚軸22は接触している。このような構成によって、内ローラ31は、脚軸22の外周面を軸線方向に沿って移動可能、且つ、脚軸22に対して傾動可能となっている。
【0019】
外ローラ32は、筒形状の本体部32aと、本体部32aの一方側の開口部を閉塞するグリース保持部32bとが一体に形成されることにより構成されている。外ローラ32は、鍛造や鋳造によって製造される。本体部32aの外周面32cは、球面凸状となっている。つまり、本体部32aの外周面32cの軸線方向断面形状は、円弧凸状に形成されている。図2に示すように、外ローラ32の開口部側の本体部32aの内周面には、リング溝32dが全周にわたって凹んで形成されている。
【0020】
グリース保持部32bは、板状であり、本体部32aの一方側の開口部を閉塞するように形成されている。グリース保持部32bは、球面凸状となっている。つまり、グリース保持部32bの外面32fは球面凸状となっていて、グリース保持部32bの内面32eは球面凹状となっている。言い換えると、グリース保持部32bの縦断面形状は、脚軸22の先端から離れる方向に膨出した湾曲形状となっている。本実施形態では、グリース保持部32bの縦断面形状は、円弧形状であるが、楕円弧形状であっても差し支え無い。内ローラ31の外周側に本体部32a(外ローラ32)が配置されている。グリース保持部32bは、脚軸22の先端面と離間して対向している。
【0021】
ニードルローラ33は、内ローラ31の外周面と外ローラ32の内周面との間に複数配置されている。止め輪34は、外ローラ32のリング溝32dに係合して取り付けられている。止め輪34は、内ローラ31及びニードルローラ33の端面と当接し、内ローラ31及びニードルローラ33の外ローラ32からの抜け止めを行う。
【0022】
このような構成によって、外ローラ32は、内ローラ31に対して相対回転可能となっている。そして、3つのローラユニット30の各々は、3本の脚軸22の各々の外周側に回転可能であり、脚軸22の各々の軸心方向に摺動可能であり、且つ、脚軸22の各々に対して傾動可能に支持される。
【0023】
3つのローラユニット30の各々は、軌道溝11に沿って転動可能に配置される。3つのローラユニット30は、3つの軌道溝11に対して姿勢を維持した状態で転動する。外側ジョイント部材10の軌道溝11において、底部12に対して溝幅方向(図2の左右方向)の両側に位置する溝側面13には、外ローラ32の外周面32cと接触して、トルク伝達を行う伝達面13aが形成されている。伝達面13aの断面形状は、所定の曲率または複数の曲率を組み合わせられた凹状に形成される。
【0024】
外ローラ32(ローラユニット30)は、図2に示すように、2つの伝達面13aに外ローラ32の外周面32cが嵌め込まれるように配置される。外ローラ32(ローラユニット30)は、外側ジョイント部材10が回転した場合に、当該回転方向に応じて軌道溝11の2つの伝達面13aのうち一方と接触して転動し、外側ジョイント部材10との間でトルク伝達を行う。つまり、外側ジョイント部材10の回転方向が逆方向となった場合には、外ローラ32(ローラユニット30)は、2つの伝達面13aのうち他方と接触して、外側ジョイント部材10との間でトルク伝達を行う。
【0025】
シャフト3は、内側ジョイント部材20のボス21に連結される。つまり、シャフト3と外側ジョイント部材10とに角度を付与した状態で、内側ジョイント部材20及びローラユニット30を介して、両部材間でトルク伝達が行われる。以下では、シャフト3と外側ジョイント部材10とがなす角度を、等速ジョイント2の「ジョイント角」とも称する。
【0026】
ブーツ4は、軸心方向に伸縮可能で、且つ、軸心を屈曲可能な蛇腹筒状に形成される。ブーツ4の一端が外側ジョイント部材10の外周面の開口側に取り付けられ、ブーツ4の他端がシャフト3の外周面に取り付けられる。このようにして、ブーツ4は、外側ジョイント部材10の開口側を閉塞する。外側ジョイント部材10の内部領域にはグリースが収容されており、ブーツ4は、グリースが外側ジョイント部材10の開口部から漏出しないようにシールする。
【0027】
シャフト3、外側ジョイント部材10、内側ジョイント部材20、内ローラ31、外ローラ32、ニードルローラ33、及び止め輪34は、炭素鋼等の鉄系金属で構成されている。ブーツ4は、ゴムや合成樹脂等の柔軟な材料で構成されている。
【0028】
(等速ジョイント100の製造方法)
図3に示すように、等速ジョイント100は、ローラユニット組立工程、ローラユニットグリース注入工程、ローラユニット組付工程、外側ジョイント部材グリース注入工程、内側ジョイント部材組付工程、ブーツ装着工程の順に行われて製造(組付)される。
【0029】
[ローラユニット組立工程]
ローラユニット組立工程において、内ローラ31の外周側に外ローラ32を配置し、内ローラ31の外周面と外ローラ32の内周面の間に複数のニードルローラ33を配置し、止め輪34を外ローラ32のリング溝32dに取り付けて、ローラユニット30を組み立てる。この際に、ニードルローラ33が内ローラ31の外周面と外ローラ32の内周面の間で潤滑できるように、内ローラ31の外周面と外ローラ32の内周面の間にグリースを注入する。本実施形態では、グリースは、二硫化モリブデングリースを用いる(以下、同じ)。
【0030】
[ローラユニットグリース注入工程]
ローラユニットグリース注入工程において、ローラユニット30にグリースを注入する。グリースの注入量は、図2に示すように、ローラユニット30が脚軸22に組み付けられた状態において、少なくとも脚軸22の外周面と内ローラ31の内周面との摺動部に前グリースが存在する量である。つまり、グリースの注入量は、図2に示すように、ローラユニット30が脚軸22に組み付けられた状態において、少なくとも内ローラ31の開口端(図2において下端)の第一設計油面位置(図2の一点鎖線示)までグリースが存在する量である。
【0031】
[ローラユニット組付工程]
ローラユニット組付工程において、ローラユニット30に脚軸22を挿通させて、各ローラユニット30を各脚軸22に組み付ける。
【0032】
[外側ジョイント部材グリース注入工程]
外側ジョイント部材グリース注入工程において、外側ジョイント部材10の内部にグリースを注入する。グリースの注入量は、図1に示すように、外側ジョイント部材10に内側ジョイント部材20が組み付けられた状態で、等速ジョイント100の回転によるエンジン力がグリースに作用して、当該グリースが外側ジョイント部材10及びブーツ4の内壁面側に移動したとしても、少なくとも上記第一設計油面位置(図2の一点鎖線示)、及び、軌道溝11の伝達面13aの外ローラ32の外周面32cとの摺動部分の基端部(図2において下方側の端部)である第二設計油面位置(図1及び図2の2点鎖線示)までグリースが存在するような量である。
【0033】
[内側ジョイント部材組付工程]
内側ジョイント部材組付工程において、内側ジョイント部材20に組み付けられた各ローラユニット30が外側ジョイント部材10の各軌道溝11に係合するように、内側ジョイント部材20を外側ジョイント部材10に挿入させて、内側ジョイント部材20を外側ジョイント部材10に組み付ける。
【0034】
[ブーツ装着工程]
ブーツ装着工程において、ブーツ4の径が大きい方の開口端(図1において左側)を、内側ジョイント部材20の開口端側の外周面に被せたうえで、第一バンド部材51で締め付け、ブーツ4の径が小さい方の開口端(図1において右側)を、第二バンド部材52で締め付けて、ブーツ4を外側ジョイント部材10に装着する。
【0035】
(本実施形態の構成による効果)
以上の説明から明らかなように、本発明の等速ジョイント100のローラユニット30は、内側ジョイント部材20における球面凸状の複数の脚軸22と外側ジョイント部材10の内周面の軌道溝11との間に配置され、円筒形状に形成され、脚軸22の外周面を軸線方向に沿って摺動可能、且つ、脚軸22に傾動可能に配置される内ローラ31と、内ローラ31の外周側に内ローラ31に対して相対回転可能に配置され、軌道溝11を転動する外ローラ32と、を備え、ローラユニット30は、内ローラ31と脚軸22との間にあるグリースの脚軸22の先端から離れる方向への漏出を防止するグリース保持部32bを備える。
【0036】
これにより、ローラユニット30が、内側ジョイント部材20の脚軸22の軸線方向に沿って摺動したり、脚軸22に対して傾動したりする際に、内ローラ31と内側ジョイント部材20の脚軸22との間にあるグリースの脚軸22の先端から離れる方向への漏出が、グリース保持部32bによって防止される。このため、内ローラ31と内側ジョイント部材20の脚軸22との間にあるグリースから漏出する分のグリースだけ余分にグリースを外側ジョイント部材10内に注入する必要が無いので、等速ジョイント100がコスト高にならない。
【0037】
グリース保持部32bは、脚軸22の先端面と対向して形成されている。これにより、内ローラ31と内側ジョイント部材20の脚軸22との間にあるグリースの脚軸22の先端から離れる方向への漏出が、脚軸22の先端と対向しているグリース保持部32bによって確実に防止される。
【0038】
グリース保持部32bは板形状であり、グリース保持部32bの縦断面形状は、脚軸22から離れる方向に膨出した湾曲形状となっている。これにより、ローラユニット30が内側ジョイント部材20の脚軸22に対して傾動した際における、脚軸22の先端の外縁22a(図2示)と、グリース保持部32bの内面32eとの干渉が防止される。
【0039】
外ローラ32は、内ローラ31の外周側に配置され筒形状の本体部32aと、本体部32aの開口部を閉塞するグリース保持部32bとから構成されている。このように、本体部32aの開口部がグリース保持部32bによって閉塞されているので、内ローラ31と脚軸22との間にあるグリースの脚軸22の先端から離れる方向への漏出が確実に防止される。
また、外ローラ32には、筒形状の本体部32aの一方の開口部を閉塞するグリース保持部32bが形成されているので、筒形状の外ローラのように、外ローラを逆向きに内側ジョイント部材の脚軸に間違って組み付けられてしまうことが防止される。
【0040】
外ローラ32は、本体部32aとグリース保持部32bが一体に形成されることにより構成されている。これにより、本体部32aとグリース保持部32bが別体に構成されている構造と比較して、外ローラ32を低コストに製造することができ、ひいては、ローラユニット30及び等速ジョイント100を低コストに製造することができる。
【0041】
図3に示すように、等速ジョイント100の製造方法は、ローラユニット30を脚軸22に組み付ける前に、各内ローラ31の内部にグリースを注入するローラユニットグリース注入工程と、各外ローラ32を各軌道溝11に係合させて、内側ジョイント部材20を外側ジョイント部材10に組み付ける前に、外側ジョイント部材10の内部にグリースを注入する外側ジョイント部材グリース注入工程と、を有する。
【0042】
このように、外側ジョイント部材グリース注入工程の前に、ローラユニットグリース注入工程によって、各内ローラ31の内部にグリースが注入されるので、等速ジョイント100の使用時に、内ローラ31と脚軸22との摺動部にグリースに存在し、この摺動部の焼き付き等の損傷が防止される。
【0043】
ローラユニットグリース注入工程において注入するグリースの量は、ローラユニット30が脚軸22に組み付けられた際に、少なくとも脚軸22と内ローラとの摺動部にグリースが存在する量である。これにより、等速ジョイント100の使用時に、内ローラ31と脚軸22との摺動部にグリースが確実に存在し、この摺動部の焼き付き等の損傷が確実に防止される。
【0044】
(別の実施形態)
図4図5に示すように、外ローラ32が筒形状であり、グリース保持部39が板状であり、外ローラ32とグリース保持部39が別体に構成されている構造であっても差し支え無い。図4示す実施形態では、グリース保持部39は、筒形状の外ローラ32の開口部に圧入されて外ローラ32に取り付けられている。図5に示す実施形態では、グリース保持部39は外ローラ32の開口部に取り付けられ、外ローラ32の開口側の内周面に形成されたリング溝32dに係合された止め輪35によってグリース保持部39の外ローラ32の開口部からの脱落が防止される構造となっている。このような構成によって、外ローラ32の一方側の開口部が、グリース保持部39によって閉塞されている。
【0045】
このように、外ローラ32とグリース保持部39が別体に構成されているので、グリース保持部39を外ローラ32よりも比重がより軽い樹脂やアルミニウム等の軽量材料で構成すると、グリース保持部39を追加したことによるローラユニット30の質量の増加を抑制することができ、ひいては、等速ジョイント100の質量増加を防止することができる。また、既存の外ローラ32の開口部にグリース保持部39を取り付けることにすると、外ローラ32を新たに設計して製造する必要が無いので、外ローラ32のコスト増を抑制することができ、ひいては、等速ジョイント100のコスト増を抑制することができる。
【0046】
以上説明した実施形態では、内ローラ31と脚軸22との間にあるグリースの脚軸22の先端から離れる方向への漏出を防止するグリース保持部は、外ローラ32の一方の開口部を閉塞していた。しかし、図6に示すように、内ローラ31の一方の開口部を閉塞するグリース保持部31bが形成された実施形態であっても差し支え無い。この実施形態では、内ローラ31は、脚軸22の外周側に配置された円筒形状の本体部31aと、本体部31aの一方側の開口部を閉塞するグリース保持部31bが一体に形成されることにより、構成されている。この実施形態であっても、グリース保持部31bによって、内ローラ31と脚軸22との間にあるグリースの脚軸22の先端から離れる方向への漏出が防止される。なお、本体部31aとグリース保持部31bが別体に構成されている実施形態であっても差し支え無い。
【符号の説明】
【0047】
20…内側ジョイント部材、22…脚軸、30…ローラユニット、31…内ローラ、32…外ローラ、32a…本体部、32b…グリース保持部、39…グリース保持部、100…トリポード型等速ジョイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6