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特開2016-217896転動体挙動解析方法及び転動体研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-217896(P2016-217896A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】転動体挙動解析方法及び転動体研磨方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/00 20060101AFI20161125BHJP
   B24B 11/10 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   G01B15/00 H
   B24B11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-103454(P2015-103454)
(22)【出願日】2015年5月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楼 黎明
(72)【発明者】
【氏名】春山 朋彦
【テーマコード(参考)】
2F067
3C049
【Fターム(参考)】
2F067AA01
2F067BB06
2F067BB07
2F067BB09
2F067BB21
2F067HH04
2F067HH07
2F067LL16
2F067NN04
2F067RR35
2F067TT04
2F067TT08
3C049AA02
3C049AA12
3C049AA18
3C049BC02
3C049CA01
3C049CB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】転動体の研磨時の挙動の解析に適用可能であり、転動体及びマーカが露出しない場合であってもマーカの位置を適切に抽出可能でマーカ及び転動体の挙動の解析を行うことができる転動体挙動解析方法、及び当該転動体挙動解析方法を用いた転動体研磨方法を提供する。
【解決手段】転動体70の密度とは異なる密度の材質で形成されて転動体よりも小さなサイズに形成された単数または複数のマーカ81が埋め込まれた転動体、を用いて、回転している転動体を所定のタイミング毎に放射線撮影装置40を用いて撮像して画像データを得る撮像ステップと、それぞれの画像データの中からマーカを抽出するマーカ抽出ステップと、それぞれの画像データの中から抽出されたマーカからマーカの挙動を解析するマーカ挙動解析ステップと、解析したマーカの挙動に基づいて、マーカが埋め込まれた転動体の挙動を解析する転動体挙動解析ステップと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転動体挙動解析方法であって、
鋼球または円筒ころまたは円錐ころまたは針状ころのいずれかを含む単数または複数の転動体であって、前記転動体の密度とは異なる密度の材質で形成されて前記転動体のサイズよりも小さなサイズに形成された単数または複数のマーカが内部の所定位置に埋め込まれた転動体、を用いて、
回転している前記転動体を所定のタイミング毎に放射線撮影装置を用いて撮像して画像データを得る撮像ステップと、
それぞれの前記画像データの中から前記マーカを抽出するマーカ抽出ステップと、
それぞれの前記画像データの中から抽出された前記マーカから、前記マーカの挙動を解析するマーカ挙動解析ステップと、
解析した前記マーカの挙動に基づいて、前記マーカが埋め込まれた前記転動体の挙動を解析する転動体挙動解析ステップと、を有する、
転動体挙動解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転動体挙動解析方法を用いた転動体研磨方法であって、
前記転動体が前記鋼球である場合、
対向させて配置した一対の砥石盤の間に前記マーカが埋め込まれた転動体を含む複数の転動体を挟み込み、前記砥石盤に直交する回転軸回りに、一対の前記砥石盤を互いに反対方向となるように相対的に回転させて、挟み込んだ前記転動体を研磨し、
請求項1に記載の転動体挙動解析方法を用いて前記マーカが埋め込まれた転動体の挙動を解析して当該転動体の自転軸を求め、
求めた前記自転軸が、前記転動体の公転軌跡を含む仮想平面内を移動するのでなく、前記仮想平面に交差する角度を変化させながら移動するように、一対の前記砥石盤の動作状態を変更する、
転動体研磨方法。
【請求項3】
請求項1に記載の転動体挙動解析方法を用いた転動体研磨方法であって、
前記転動体が前記円筒ころまたは円錐ころまたは前記針状ころである場合、
対向させて配置した一対の砥石盤の間に前記マーカが埋め込まれた転動体を含む複数の転動体を挟み込み、前記砥石盤に直交する回転軸回りに、一対の前記砥石盤を互いに反対方向となるように相対的に回転させて、挟み込んだ前記転動体を研磨し、
請求項1に記載の転動体挙動解析方法を用いて前記マーカが埋め込まれた転動体の挙動を解析して当該転動体の自転軸を求め、
求めた前記自転軸が、前記仮想平面内を移動するように、一対の前記砥石盤の動作状態を変更する、
転動体研磨方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の転動体研磨方法であって、
一対の前記砥石盤の動作状態は、一対の前記砥石盤を互いに近接する方向に押付ける押付け圧力、互いに反対方向となるように相対的に回転させる回転速度、の少なくとも一方を含む、
転動体研磨方法。
【請求項5】
請求項1に記載の転動体挙動解析方法であって、
挙動計測対象とした等速ジョイントまたは軸受、に用いられている鋼球または円筒ころまたは円錐ころまたは針状ころのいずれかを含む転動体の中の単数または複数の転動体に前記マーカを埋め込み、
請求項1に記載の転動体挙動解析方法を用いて、前記マーカが埋め込まれた前記転動体の挙動を解析する、
転動体挙動解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼球または円筒ころまたは円錐ころまたは針状ころのいずれかを含む単数または複数の転動体の挙動を解析する転動体挙動解析方法、及び当該転動体挙動解析方法を用いた転動体研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば深溝玉軸受の転動体である鋼球は、高い真球度が要求される。鋼球の真球度を向上させる研磨工程では、例えば、円板状の表面の縁部に深溝が円周方向に沿って形成された一対の砥石盤が、互いの深溝が対向するように配置されている。そして深溝内に複数の鋼球を配置し、一対の砥石盤を、それぞれ反対方向となるように相対的に回転させ、深溝に挟み込んだ鋼球を研磨している。この方法を用いて鋼球を研磨した場合、砥石盤の相対回転速度や、砥石盤の押圧力や、研磨時間等、種々の要因で、真球度が向上する場合もあれば、鋼球が楕円状に研磨されてしまって真球度が低下する場合もある。
【0003】
そこで特許文献1には、楕円球体の表面に複数のマーカを設け、一対の軌道輪の間で転動する楕円球体を、一対の軌道輪の隙間から撮影し、画像データ中に撮影されている各マーカの相対位置に基づいて、楕円球体の挙動を解析する、楕円球体の挙動解析方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−037326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の挙動解析方法を用いて、研磨時の楕円球体の挙動を解析できれば、どのような挙動の場合に、どのような真球度で研磨されるか、を知ることができる。従って、所望する真球度が得られた際の挙動のときの砥石盤の相対回転速度や、砥石盤の押圧力や、研磨時間等と一致するように研磨を行えば、所望する真球度を得られる可能性が高い、と考えられる。
【0006】
しかし、特許文献1に記載された発明では、転動体の表面の所定個所を、薬品処理やレーザ等によって変色させてマーカを形成している。特許文献1に記載の発明を、転動体の研磨時の挙動の解析に適用しようとしても、転動体の表面に設けられたマーカが研磨で消滅してしまうので、適用することができない。また特許文献1に記載の発明では、転動体及びマーカが露出する場合でなければ利用できない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、転動体の研磨時の挙動の解析に適用可能であり、転動体及びマーカが露出しない場合であってもマーカの位置を適切に抽出可能でマーカ及び転動体の挙動の解析を行うことができる転動体挙動解析方法、及び当該転動体挙動解析方法を用いた転動体研磨方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る転動体挙動解析方法及び転動体研磨方法は、次の手段をとる。まず、本発明の第1の発明は、転動体挙動解析方法であって、鋼球または円筒ころまたは円錐ころまたは針状ころのいずれかを含む単数または複数の転動体であって、前記転動体の密度とは異なる密度の材質で形成されて前記転動体のサイズよりも小さなサイズに形成された単数または複数のマーカが内部の所定位置に埋め込まれた転動体、を用いて、回転している前記転動体を所定のタイミング毎に放射線撮影装置を用いて撮像して画像データを得る撮像ステップと、それぞれの前記画像データの中から前記マーカを抽出するマーカ抽出ステップと、それぞれの前記画像データの中から抽出された前記マーカから、前記マーカの挙動を解析するマーカ挙動解析ステップと、解析した前記マーカの挙動に基づいて、前記マーカが埋め込まれた前記転動体の挙動を解析する転動体挙動解析ステップと、を有する。
【0009】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る転動体挙動解析方法を用いた転動体研磨方法であって、前記転動体が前記鋼球である場合、対向させて配置した一対の砥石盤の間に前記マーカが埋め込まれた転動体を含む複数の転動体を挟み込み、前記砥石盤に直交する回転軸回りに、一対の前記砥石盤を互いに反対方向となるように相対的に回転させて、挟み込んだ前記転動体を研磨し、請求項1に記載の転動体挙動解析方法を用いて前記マーカが埋め込まれた転動体の挙動を解析して当該転動体の自転軸を求め、求めた前記自転軸が、前記転動体の公転軌跡を含む仮想平面内を移動するのでなく、前記仮想平面に交差する角度を変化させながら移動するように、一対の前記砥石盤の動作状態を変更する。
【0010】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明に係る転動体挙動解析方法を用いた転動体研磨方法であって、前記転動体が前記円筒ころまたは円錐ころまたは前記針状ころである場合、対向させて配置した一対の砥石盤の間に前記マーカが埋め込まれた転動体を含む複数の転動体を挟み込み、前記砥石盤に直交する回転軸回りに、一対の前記砥石盤を互いに反対方向となるように相対的に回転させて、挟み込んだ前記転動体を研磨し、請求項1に記載の転動体挙動解析方法を用いて前記マーカが埋め込まれた転動体の挙動を解析して当該転動体の自転軸を求め、求めた前記自転軸が、前記仮想平面内を移動するように、一対の前記砥石盤の動作状態を変更する。
【0011】
次に、本発明の第4の発明は、上記第2の発明または第3の発明に係る転動体研磨方法であって、一対の前記砥石盤の動作状態は、一対の前記砥石盤を互いに近接する方向に押付ける押付け圧力、互いに反対方向となるように相対的に回転させる回転速度、の少なくとも一方を含む。
【0012】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明に係る転動体挙動解析方法であって、挙動計測対象とした等速ジョイントまたは軸受、に用いられている鋼球または円筒ころまたは円錐ころまたは針状ころのいずれかを含む転動体の中の単数または複数の転動体に前記マーカを埋め込み、請求項1に記載の転動体挙動解析方法を用いて、前記マーカが埋め込まれた前記転動体の挙動を解析する。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、転動体の内部の所定位置に、転動体の密度とは異なる密度の材質のマーカを埋め込み、放射線撮影装置を用いて画像データを得て、画像データ中のマーカを抽出する。従って、転動体を研磨してもマーカが消滅することは無いので、転動体の研磨時の挙動の解析に適用可能である。また、放射線撮影装置を用い、放射線を透過させてマーカを撮影するので、転動体の裏側のマーカであっても撮影することができる。従って、転動体及びマーカが露出しない場合であってもマーカの位置を適切に抽出可能であり、マーカ及び転動体の挙動の解析を行うことができる。
【0014】
第2の発明によれば、転動体が鋼球である場合、鋼球の真球度を適切に向上させる転動体研磨方法を提供することができる。
【0015】
第3の発明によれば、転動体が円筒ころまたは円錐ころまたは針状ころである場合、転動体の真円度(回転軸回りの真円度)を適切に向上させる転動体研磨方法を提供することができる。
【0016】
第4の発明によれば、転動体を研磨加工する際の加工条件である一対の砥石盤の動作状態を、適切に調整することができる。
【0017】
第5の発明によれば、転動体及びマーカが露出しない等速ジョイントの転動体や、軸受の転動体の挙動であっても、適切に解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】転動体挙動解析方法を適用した転動体研磨システムの全体構成の例を説明する図である。
図2】転動体に埋め込んだマーカの例(第1実施例)を説明する図である。
図3図2に示した転動体の断面図である。
図4】転動体に埋め込んだマーカの例(第2実施例)を説明する図である。
図5図4に示した転動体の断面図である。
図6】処理装置の処理手順の例を説明するフローチャートである。
図7】転動体が鋼球である場合において、転動体の自転軸の挙動が、所望する挙動でない場合の例を説明する図である。
図8】転動体が鋼球である場合において、転動体の自転軸の挙動が、所望する挙動である場合の例を説明する図である。
図9】転動体が円筒ころまたは円錐ころまたは針状ころである場合において、転動体の自転軸の挙動が、所望する挙動である場合の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて順に説明する。
●[転動体研磨システム1の全体構成(図1)]
複数の転動体70を研磨する転動体研磨システム1は、電動モータ10、電動モータ20、アクチュエータ30、放射線撮影装置40、処理装置50、一対の砥石盤90L、90R等にて構成されている。なお本実施の形態の説明では、球体である鋼球を転動体の例として説明する。
【0020】
転動体70は、例えば鋼球であり、図2図5を用いて後述するように、自身の密度とは異なる密度の材質で形成されたマーカであって自身のサイズよりも小さなサイズに形成された単数または複数のマーカ81〜84が、自身の内部の所定位置に埋め込まれている。
【0021】
電動モータ10は、砥石盤90Lを、図1中のVLの方向に、角速度VLにて、砥石盤90Lに直交する回転軸回りに回転させる。電動モータ10は、処理装置50から角速度VLが調整される。
【0022】
電動モータ20は、砥石盤90Rを、図1中のVRの方向に、角速度VRにて、砥石盤90Rに直交する回転軸回りに回転させる。電動モータ20は、処理装置50から角速度VLが調整される。電動モータ10及び電動モータ20は、少なくとも一方があればよい。しかし、電動モータ10による角速度VLと、電動モータ20による角速度VRを調整して、転動体70の公転をほぼ停止状態にして、転動体70が公転することなくその場で自転するようにすれば、転動体70の挙動の解析が、より容易となる。
【0023】
アクチュエータ30は、電動モータ20及び砥石盤90Rを、砥石盤90Lの方向に、押圧力FRにて押圧する。アクチュエータ30は、処理装置50から押圧力FRが調整され、砥石盤90Lと砥石盤90Rとが互いに近接する方向に押付ける押付け圧力を調整する。
【0024】
放射線撮影装置40は、例えばX線や中性子等の放射線を用いた撮影装置またはCT撮影装置(コンピュータ断層撮影装置)である。放射線撮影装置40は、所定時間経過毎等の所定タイミング毎に、放射線を用いて転動体70及びマーカが撮影された画像データを作成し、作成した画像データを処理装置50に出力する。転動体70とマーカとは密度が異なるので、マーカが転動体70の裏側に隠れていても、画像データ中には、マーカが写り込んでいる。放射線撮影装置40は、転動体を含めて砥石盤90L、90Rの全体を撮像できるように設定されていることが好ましい。
【0025】
処理装置50は、例えばパーソナルコンピュータであり、電動モータ10、電動モータ20、アクチュエータ30へ駆動信号を出力し、放射線撮影装置40から画像データを受け取る。そして処理装置50は、受け取った画像データ中のマーカを抽出し、抽出したマーカの挙動を解析する。
【0026】
砥石盤90Lは、略円板状であり、砥石盤90Rに対向する表面における縁部には、研磨用溝90Mが円周方向に形成されている。また砥石盤90Rも同様に略円板状であり、砥石盤90Lに対向する表面における縁部には、同様に研磨用溝が円周方向に形成されている。そして砥石盤90Lの研磨用溝と砥石盤90Rの研磨用溝は対向しており、当該研磨用溝には、複数の転動体70が配置されている。そして複数の転動体70における単数または複数には、後述するマーカが内部に埋め込まれている。
【0027】
●[転動体へのマーカの埋め込み方法(図2図5)]
転動体70の材質は、例えば鉄である。そしてマーカ81〜84の材質は、転動体70の密度とは異なる密度の材質であり、例えば鉄よりも原子番号が小さなアルミニウムや樹脂やリチウム、あるいは鉄よりも原子番号が大きな銅や鉛やビスマス等である。マーカの材質は、放射線撮像装置を用いて撮像した場合に、転動体に対して放射線の透過率が異なる材質であればよい。マーカ81〜84のサイズは、転動体70よりも小さく、転動体70に埋め込むことができるサイズであればよい。マーカの形状は、どのような形状でもよいが、孔71、72に埋め込むため、本実施の形態では、略円柱状の形状としている。
【0028】
図2及び図3は、転動体70にマーカ81〜84を埋め込んだ第1実施例を示している。転動体70には、転動体70の中心Cを通る孔71、72が形成されている。また孔71と孔72は、互いに直交している。なお、孔71、72は、マーカの挙動の演算を容易にするために、中心Cを通り且つ直交、としたが、中心Cを通らなくてもよいし、直交していなくてもよい。また、マーカは単数でも複数でもよいので、孔は1本以上であればよい。マーカ81は、孔71の一方端から埋め込まれ、マーカ82は、孔71の他方端から埋め込まれている。同様にマーカ83は孔72の一方端から埋め込まれ、マーカ84は孔72の他方端から埋め込まれている。そしてマーカ81〜84が埋め込まれた後、転動体70のマーカ及びマーカの周囲は、簡易的に滑らかに研磨される。なおマーカ81〜84は、それぞれが区別できるように、それぞれ密度が異なる物質としてもよい。
【0029】
図4及び図5は、転動体70にマーカ81〜83を埋め込んだ第2実施例を示している。転動体70には、転動体70の中心Cに向かう孔71から孔73が形成されている。図4及び図5の例では、マーカの挙動の演算を容易にするために、孔71〜孔73は同一平面内にあり、中心Cを通り、隣り合う孔との角度が約120度に形成されているが、中心Cを通らなくてもよいし、同一平面内になくてもよく、隣り合う孔との角度も120度でなくてもよい。また、マーカは単数でも複数でもよいので、孔は1本以上であればよい。マーカ81は孔71に埋め込まれ、マーカ82は孔72に埋め込まれ、マーカ83は孔73に埋め込まれている。また上記と同様、転動体のマーカ及びマーカの周囲は、マーカが埋め込まれた後、簡易的に滑らかに研磨される。
【0030】
●[転動体研磨方法の処理手順(図6)]
図6のフローチャートにて示す制御プログラムは、処理装置50の記憶装置に記憶されている。処理装置50が起動されて制御プログラムが実行されると、処理装置50は、ステップS10に処理を進める。図1に示す転動体研磨システムにて、複数の転動体70の中で単数または複数の転動体には、図2及び図3、または図4及び図5の例に示すようにマーカが埋め込まれている。
【0031】
ステップS10にて処理装置50は、電動モータ10を駆動して砥石盤90Lを予め設定された角速度VLにて図1に示すVL方向に回転させる。また処理装置50は、電動モータ20を駆動して砥石盤90Rを予め設定された角速度VRにて図1に示すVR方向に回転させる。そして処理装置50は、角速度VL=角速度VRとなるように電動モータ10、20の回転速度を調整する。これにより、各転動体は、公転がほぼ停止され、その場で自転するようになるので、撮像タイミングの自由度が向上し、解析が容易となる。また処理装置50は、アクチュエータ30を駆動して、予め設定された押圧力にて砥石盤90Rを砥石盤90Lに押付け、ステップS15に進む。
【0032】
ステップS15にて処理装置50は、測定タイミングであるか否かを判定し、測定タイミングである場合(Yes)はステップS20に進み、測定タイミングでない場合(No)はステップS15に戻る。例えば測定タイミングは、所定時間間隔である。
【0033】
ステップS20に進んだ場合、処理装置50は、放射線撮影装置40を用いて画像データを作成させ、作成させた画像データを取り込み、ステップS25に進む。ステップS20は、撮像ステップに相当している。
【0034】
ステップS25にて処理装置50は、画像データの中に撮像されているマーカと、当該マーカが埋め込まれている転動体の輪郭を抽出し、ステップS30に進む。放射線撮影装置がCT撮影装置であれば、転動体内におけるマーカの3次元の位置がわかるので、撮像されているマーカが手前側にあるのか、奥の側にあるのか、適切に区別できる。ステップS25は、マーカ抽出ステップに相当している。
【0035】
ステップS30にて処理装置50は、今回の測定タイミングにおける転動体内のマーカの3次元の位置と、n回前の測定タイミングにおける転動体内のマーカの3次元の位置と、に基づいてマーカの挙動を解析し、ステップS35に進む。なお、マーカの3次元の位置からマーカの挙動を解析する具体的な方法については、説明を省略する。ステップS30は、マーカ挙動解析ステップに相当している。
【0036】
ステップS35にて処理装置50は、マーカの挙動の解析結果に基づいて、今回の測定タイミングにおける当該マーカが埋め込まれている転動体の自転軸の位置を求める。また処理装置50は、今回の測定タイミングにおける自転軸の位置と、n回前の測定タイミングにおける自転軸の位置と、に基づいて自転軸の挙動を解析し、ステップS40に進む。処理装置50は、マーカの挙動に基づいて、当該マーカが埋め込まれている転動体の挙動を解析できる。転動体の挙動を解析できれば、当該転動体の自転軸の位置を解析することができる。ステップS35は、転動体挙動解析ステップに相当している。
【0037】
ステップS40にて処理装置50は、転動体の自転軸の挙動が所望する挙動であるか否かを判定し、所望する挙動である場合(Yes)はステップS50に進み、所望する挙動でない場合はステップS45に進む。なお、所望する挙動であるか否かの判定方法については、図7図9の例を用いて説明する。
【0038】
図7及び図8は、転動体70が鋼球である場合の例を説明する図であり、図7は自転軸の挙動が所望する挙動でない場合の例を示し、図8は自転軸の挙動が所望する挙動である場合の例を示している。図7は各転動体(鋼球)の自転軸RAが、転動体の公転軌跡RTを含む仮想平面VM上にある例を示している。転動体が鋼球である場合に自転軸RAが常に仮想平面VM上にある場合、鋼球は楕円状に研磨される可能性が高い。従って、転動体が鋼球である場合、自転軸の挙動の解析結果、例えば自転軸が仮想平面VM内を移動している確率が所定の確率以上である場合、所望する挙動ではない、と判定する。また図8は、各鋼球の自転軸RAが、仮想平面に交差する角度θを変化させながら移動している様子の例を示している。図8の例に示すように、鋼球の自転軸RAの角度及び方向がランダムに変化している場合、所望する挙動である、と判定する。
【0039】
図9は、転動体70が円筒ころまたは円錐ころまたは針状ころの場合の例を説明する図であり、自転軸の挙動が所望する挙動である場合の例を示している。この場合、各転動体の自転軸RAは、転動体の公転軌跡RTを含む仮想平面VM上にあることが好ましい。かつ各自転軸RAの方向は、公転軌跡RTの中心に向かっていることが、より好ましい。従って、転動体が円筒ころまたは円錐ころまたは針状ころである場合、自転軸の挙動の解析結果、例えば自転軸が仮想平面VM内を移動している確率が所定の確率以上である場合は所望する挙動である、と判定し、そうでない場合は所望する挙動ではない、と判定する。
【0040】
ステップS45に進んだ場合、処理装置50は、転動体の研磨条件(加工条件)である一対の砥石盤90L、90Rの動作状態を変更してステップS15に戻る。例えば処理装置50は、電動モータ10と電動モータ20による砥石盤90L、90Rの角速度を、予め設定された微小角速度ΔVだけ増加(または減少)させる。あるいは処理装置50は、アクチュエータ30による押付け圧を、予め設定された微小圧力ΔFだけ増加(または減少)させる。
【0041】
ステップS50に進んだ場合、処理装置50は、所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間経過した場合(Yes)は研磨が完了したと判定してステップS55に進み、まだ所定時間が経過していないと判定した場合(No)はステップS15に戻る。
【0042】
ステップS55に進んだ場合、処理装置50は、電動モータ10、電動モータ20、アクチュエータ30の駆動を停止させ、処理を終了する。
【0043】
以上、ステップS10〜S55にて、図1に示す転動体研磨システムを用いた転動体研磨方法が実現されている。なお、ステップS10〜S35にて、転動体挙動解析方法が実現されている。本実施の形態にて説明した転動体挙動解析方法、または転動体研磨方法では、転動体に埋め込んだマーカを用いることで、転動体を研磨してもマーカが消滅することがないので、転動体の研磨時の挙動の解析に適用可能である。また、放射線撮影装置を用いることで、転動体及びマーカが露出しない場合であってもマーカの位置を適切に抽出可能であり、マーカ及び転動体の挙動の解析を行うことができる。従って、等速ジョイント内の転動体や、種々の軸受の転動体等、露出していない転動体や露出していないマーカであっても、マーカの挙動を適切に解析することが可能であり、転動体の挙動を適切に解析することができる。
【0044】
本発明の転動体挙動解析方法、転動体研磨方法は、本実施の形態にて説明した処理手順等に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0045】
本発明の転動体挙動解析方法は、例えば軸受の鋼球の自転軸の挙動を解析することができるので、軌道輪に対する鋼球のすべりや、軸受の理論計算結果の検証に活用することもできる。
【0046】
転動体に形成する孔の数、当該孔に埋め込むマーカの数は、本実施の形態にて説明した数に限定されず、単数または複数の任意の数とすることができる。
【0047】
転動体の材質、及びマーカの材質は、本実施の形態にて説明した材質に限定されるものではない。
【0048】
本実施の形態の説明では、砥石盤90Lの角速度VLと、砥石盤90Rの角速度VRとを調整して転動体の公転を停止させる例を説明した。しかし、砥石盤90Lと砥石盤90Rとが互いに反対方向となるように相対的に回転させればよく、砥石盤90Lと砥石盤90Rとの少なくとも一方を回転させ、転動体の公転を停止させなくてもよい。
【0049】
本実施の形態にて説明した転動体挙動解析方法、転動体研磨方法は、等速ジョイントの転動体や軸受の転動体に限定されず、種々の物体の動作の解析に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 転動体研磨システム
10、20 電動モータ
30 アクチュエータ
40 放射線撮影装置
50 処理装置
70 転動体
71〜73 孔
81〜84 マーカ
90L、90R 砥石盤

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9