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特開2016-217959光干渉断層計、光干渉断層計を用いた観察装置及び光干渉断層計を用いた観察方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-217959(P2016-217959A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】光干渉断層計、光干渉断層計を用いた観察装置及び光干渉断層計を用いた観察方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20161125BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   G01N21/17 620
   G01N21/01 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】49
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-105107(P2015-105107)
(22)【出願日】2015年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】515006238
【氏名又は名称】米谷 新
(71)【出願人】
【識別番号】515006146
【氏名又は名称】黒田 寛人
(74)【代理人】
【識別番号】100169133
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】米谷 新
(72)【発明者】
【氏名】黒田 寛人
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE09
2G059EE11
2G059FF01
2G059FF09
2G059GG01
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ17
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】高精度且つ有益な情報を取得可能な光干渉断層計、光干渉断層計を用いた観察装置及び光干渉断層計を用いた観察方法を実現する。
【解決手段】コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、使用するコヒーレント光の帯域幅が150nm以上とした。具体的には、レーザー光源として多波長広帯域モードロックレーザーを用いる。また、使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光の帯域幅が150nm以上であることを特徴とする、
光干渉断層計。
【請求項2】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光の帯域幅が200nm以上であることを特徴とする、
請求項1記載の光干渉断層計。
【請求項3】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光の帯域が600nmより長波長であることを特徴とする、
光干渉断層計。
【請求項4】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
観察とともに物性の計測を行うことを特徴とする、
光干渉断層計。
【請求項5】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うことを特徴とする、
光干渉断層計。
【請求項6】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うにあたり、
該複数のピーク及び/又は帯域は100nm以上のギャップを有することを特徴とする、
請求項5記載の光干渉断層計。
【請求項7】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うにあたり、
該複数のピーク及び/又は帯域は100nm以上のギャップを有し、
該異なるピーク及び/又は帯域において得られるデータを比較することにより物性計測を行うことを特徴とする、
請求項5又は6記載の光干渉断層計。
【請求項8】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
コヒーレント光を供給するためのレーザー光源として、
多波長広帯域モードロックレーザーを用いたことを特徴とする、
請求項1乃至7の何れか一に記載の光干渉断層計。
【請求項9】
該多波長広帯域モードロックレーザーは、
半導体モードロックレーザーであることを特徴とする、
請求項8に記載の光干渉断層計。
【請求項10】
該多波長広帯域モードロックレーザーは、
その帯域を広帯域化するために、モードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化することを特徴とする、
請求項8又は9に記載の光干渉断層計。
【請求項11】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーは、
その出射光のスペクトルが400nmから2000nmの範囲にあることを特徴とする、
請求項8乃至10のうちの一請求項に記載の光干渉断層計。
【請求項12】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光は、
その出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であることを特徴とする、
請求項11記載の光干渉断層計。
【請求項13】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光は、
その出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であり、
該複数のピークのうち1または複数を深部の観察に用い、
且つ該複数のピークのうち他の1または複数を表面近傍の観察に用いることを特徴とする、
請求項12記載の光干渉断層計。
【請求項14】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光は、
その出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であり、
該複数のピークから得られる画像を比較することにより観察対象の物性情報を得ることを特徴とする、
請求項12記載の光干渉断層計。
【請求項15】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
コヒーレント光を供給するためのレーザー光源として、
フェムト秒モード同期多波長広帯域モードロックレーザーを用いたことを特徴とする、
請求項1乃至14の何れか一に記載の光干渉断層計。
【請求項16】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光の帯域幅が150nm以上であることを特徴とする、
光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項17】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光の帯域幅が200nm以上であることを特徴とする、
請求項16記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項18】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光の帯域が600nmより長波長であることを特徴とする、
光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項19】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
観察とともに物性の計測を行うことを特徴とする、
光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項20】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うことを特徴とする、
光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項21】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うにあたり、
該複数のピーク及び/又は帯域は100nm以上のギャップを有することを特徴とする、
請求項20記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項22】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うにあたり、
該複数のピーク及び/又は帯域は100nm以上のギャップを有し、
該異なるピーク及び/又は帯域において得られるデータを比較することにより物性計測を行うことを特徴とする、
請求項20又は21記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項23】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
コヒーレント光を供給するためのレーザー光源として、
多波長広帯域モードロックレーザーを用いたことを特徴とする、
請求項17乃至22の何れか一に記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項24】
該多波長広帯域モードロックレーザーは、
半導体モードロックレーザーであることを特徴とする、
請求項23に記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項25】
該多波長広帯域モードロックレーザーは、
その帯域を広帯域化するために、モードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化することを特徴とする、
請求項23又は24に記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項26】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーは、
その出射光のスペクトルが400nmから2000nmの範囲にあることを特徴とする、
請求項23乃至25のうちの一請求項に記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項27】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光は、
その出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であることを特徴とする、
請求項26記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項28】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光は、
その出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であり、
該複数のピークのうち1または複数を深部の観察に用い、
且つ該複数のピークのうち他の1または複数を表面近傍の観察に用いることを特徴とする、
請求項27記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項29】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光は、
その出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であり、
該複数のピークから得られる画像を比較することにより物性情報を得ることを特徴とする、
請求項27記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項30】
コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、
コヒーレント光を供給するためのレーザー光源として、
フェムト秒モード同期多波長広帯域モードロックレーザーを用いたことを特徴とする、
請求項17乃至29の何れか一に記載の光干渉断層計を用いた観察装置。
【請求項31】
観察対象に帯域幅が150nm以上のコヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得ることを特徴とする、
光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項32】
観察対象に帯域幅が200nm以上のコヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得ることを特徴とする、
請求項31記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項33】
観察対象に帯域が600nmより長波長のコヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得ることを特徴とする、
光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項34】
観察対象に帯域幅が150nm以上及び/又は帯域が600nmより長波長の、コヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計を用いた観察方法において、
観察とともに物性の計測を行うことを特徴とする、
光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項35】
観察対象に帯域幅が150nm以上及び/又は帯域が600nmより長波長の、コヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計を用いた観察方法において、
使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うことを特徴とする、
光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項36】
観察対象に帯域幅が150nm以上及び/又は帯域が600nmより長波長の、コヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計を用いた観察方法において、
使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うにあたり、
該複数のピーク及び/又は帯域は100nm以上のギャップを有することを特徴とする、
請求項35記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項37】
観察対象に帯域幅が150nm以上及び/又は帯域が600nmより長波長の、コヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計を用いた観察方法において、
使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うにあたり、
該複数のピーク及び/又は帯域は100nm以上のギャップを有し、
該異なるピーク及び/又は帯域において得られるデータを比較することにより物性計測を行うことを特徴とする、
請求項35又は36記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項38】
観察対象に帯域幅が150nm以上及び/又は帯域が600nmより長波長の、コヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計を用いた観察方法において、
コヒーレント光を供給するためのレーザー光源として、
多波長広帯域モードロックレーザーを用いたことを特徴とする、
請求項32乃至37の何れか一に記載の光干渉断層計。
【請求項39】
該多波長広帯域モードロックレーザーは、
半導体モードロックレーザーであることを特徴とする、
請求項38に記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項40】
該多波長広帯域モードロックレーザーは、
その帯域を広帯域化するために、モードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化することを特徴とする、
請求項38又は39に記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項41】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーは、
その出射光のスペクトルが400nmから2000nmの範囲にあることを特徴とする、
請求項38乃至40のうちの一請求項に記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項42】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光は、
その出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であることを特徴とする、
請求項41記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項43】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光は、
その出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であり、
該複数のピークのうち1または複数を深部の観察に用い、
且つ該複数のピークのうち他の1または複数を表面近傍の観察に用いることを特徴とする、
請求項42記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項44】
該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光は、
その出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であり、
該複数のピークから得られる画像を比較することにより物性情報を得ることを特徴とする、
請求項42記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項45】
観察対象に帯域幅が150nm以上及び/又は帯域が600nmより長波長の、コヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計を用いた観察方法において、
コヒーレント光を供給するためのレーザー光源として、
フェムト秒モード同期多波長広帯域モードロックレーザーを用いたことを特徴とする、
請求項32乃至44の何れか一に記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項46】
観察対象に帯域幅が150nm以上及び/又は帯域が600nmより長波長の、コヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計を用いた観察方法において、
コヒーレント光を供給するためのレーザー光源として、
フェムト秒モード同期多波長広帯域モードロックレーザーを用いたことを特徴とする、
請求項32乃至44の何れか一に記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項47】
観察対象に帯域幅が150nm以上及び/又は帯域が600nmより長波長の、コヒーレント光を照射して観察対象に於いて干渉させ、
反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計を用いた観察方法において、
観察対象に予め使用波長の電磁波と相互作用を惹起するトレーサー材料を包含させたことを特徴とする、
請求項32乃至47の何れか一に記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項48】
該観察対象に予め包含せしむる使用波長の電磁波と相互作用を惹起する材料は、
使用波長の電磁波に感応して双極子モーメントが変化する感応因子であることを特徴とする、
請求項47に記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【請求項49】
該観察対象に予め包含せしむる使用波長の電磁波と相互作用を惹起する材料は、
ナノパーティクルであることを特徴とする、
請求項47に記載の光干渉断層計を用いた観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度且つ有益な情報を取得可能な光干渉断層計、光干渉断層計を用いた観察装置及び光干渉断層計を用いた観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層計(以下、OCT装置ともいう)は光源からの光を一つは参照光とし、もう一方は観察対象からの反射光として干渉させて断層像を得る手法である。イメージ分解能は市販の製品では超音波エコーより2桁程度高い10μ m の程度であり、本質的に非接触・無侵襲であり、さまざまな応用領域、特に生体組織の観察用途においては必須の装置となっている。
【0003】
従来のOCT装置は光源に連続発光の高輝度ダイオード(SLD)を使用しているため、生体組織からの後方散乱強度が低く、一回の測定に時間がかかり(一般に1秒以上を要する)、中心波長帯は0.8μ m 帯で生体への侵達長が短く、OCT信号の減衰が大きかった。(SLDは、その本質上スペクトルコーヒレンスが低く、見かけのスペクトル幅に比べてコーヒレンスの保たれるスペクトル幅が狭いため、軸方向の分解能は、その理論分解能より低くなる。)
【0004】
特定の用途における精細な観察のために、2μ m 以下の高分解能で深部に至るまで観察することが求められるが、市販OCT装置ではせいぜい7乃至10μ m の分解能で実測された例はなく、高解像度化及び到達深度の向上が求められていた。
【0005】
これらの問題を解決するために波長1μm帯の波長掃引光源を用いたOCT開発が盛んに進められているが、2μ m の高分解能を得るためには光源のスペクトル幅が均一コヒーレンスの幅で150nm以上、望ましくは200nm以上必要であるのに対し、実際に得られているスペクトル幅は110nm以下程度と不足しているため、フーリエ分光理論が成り立つと仮定した分解能でも6μ m 程度に留まり、実際には改善されておらず、詳細な観察は未だできていない。
【0006】
分解能向上には波長掃引光源の掃引波長幅を広げなければならないが、この光源である半導体レーザーの広帯域化はその構成原理上困難であったため、これ以上の分解能の向上は難しかった。また、従来のOCT光源に用いられるSLDでは、光の位相がロッックされていないので、波長間の位相にランダムのふらつきがあり、原理的に位相がロックされているコーヒレンシーの高いレーザー光源に比べて取得情報の質が劣っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013ー83449号公報
【特許文献2】特開2007ー327935号公報
【特許文献3】特開2012ー103235号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Masayuki Suzuki, Motoyoshi Baba, Shin Yoneya, and Hiroto Kuroda: “Efficient spectral broadening of supercontinuum in photonic crystal fiber with self-phase modulation induced by femtosecond laser pulse,” Appl. Phys. Lett. 101, 191110 (2012)
【非特許文献2】Tianqing Jia, Motoyoshi Baba, Masayuki Suzuki, Rashid A.Ganeev, Hiroto Kuroda, Jianrong Qiu, Xinshun Wang, Ruxin Li, and Zhizhan Xu., “Fabrication of two-dimensional periodic nanostructures by two-beam interference of femtosecond pulses,” Opt. Express Vol. 16, No. 3, PP1874-1878 (2008)
【非特許文献3】Povazay B , et.al.,“Submicrometer axial resolution optical cohorence tomography,“ Optics Letter, Vol.27, No.20, pp.1800-1802s, 15 Oct. 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、高精度且つ有益な情報を取得可能な光干渉断層計、光干渉断層計を用いた観察装置及び光干渉断層計を用いた観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、使用するコヒーレント光の帯域幅が150nm以上、望ましくは200nm以上であることを特徴とする、光干渉断層計である。また本発明は、コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて使用するコヒーレント光の帯域が600nmより長波長であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、観察とともに物性の計測を行うことを特徴とする。また本発明は、コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うことを特徴とし、さらに、該複数のピーク及び/又は帯域は100nm以上のギャップを有することを特徴とし、該異なるピーク及び/又は帯域において得られるデータを比較することにより物性計測を行うことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、コヒーレント光を供給するためのレーザー光源として、多波長広帯域モードロックレーザーを用いたことを特徴とし、該多波長広帯域モードロックレーザーは、半導体モードロックレーザーであることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、使用するコヒーレント光の帯域幅が150nm以上、望ましくは200nm以上であることを特徴とする、光干渉断層計である。
【0014】
また本発明は、コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、該多波長広帯域モードロックレーザーは、その帯域を広帯域化するために、モードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化することを特徴とする。
【0015】
また本発明は、該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーが、その出射光のスペクトルが400nmから2000nmの範囲にあることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、該光干渉断層計のレーザー光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーの出射光はその出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光であることを特徴とし、さらに、該複数のピークのうち1または複数を深部の観察に用い、且つ該複数のピークのうち他の1または複数を表面近傍の観察に用いることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、該複数のピークから得られる画像を比較することにより観察対象の物性情報を得ることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明は、前記の特徴を有する光干渉断層計を用いた観察装置である。
【0019】
さらに本発明は、前記の特徴を有する光干渉断層計を用いた観察装置を使用した観察方法である。かかる観察方法は特に生体組織(人を除く)の観察に有効であり、広帯域から得られる情報により深度に対応した観察情報や物性情報を得ることが出来る。また、生体組織の観察に際しては、使用波長の電磁波と相互作用を惹起するトレーサー材料を観察対象に予め包含せしむることにより情報量及び/又は精度を向上させることが出来、かかるトレーサー材料としては典型的には使用波長の電磁波に感応して双極子モーメントが変化する感応因子或いはナノパーティクル等を挙げることができるが、使用波長の電磁波と相互作用を有する材料であれば有効に使用することができる。
【0020】
筆者らは、従前よりOCTの研究開発を行い、その高精度化・高機能化を目指して来た。(特許文献1及び特許文献3参照)また筆者らはレーザー光源の改良に関しても鋭意研究開発を行い、その広帯域化を実現して、様々な応用用途を開発してきている。(特願2015−000851参照)
【0021】
今般筆者らは、フェムト秒モード同期レーザーの高強度電界でおこる非線形ファイバー中の高次非線形効果でスペクトル幅を1600nm以上の超広帯域にまで広げた。これを用いて、さらにもう一度光ファイバーを通してパルス整形をおこない、この広帯域光からブロードバンド・マルチバンド光源を切り出す手法を発明した。さらにこの新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源を搭載した同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計を開発して、高侵達で高分解能、高感度、高速性を解決し、本発明を完成させたのである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源を搭載した同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計は、必要なスペクトルを切り出して断層像を得、同時に白色光源または単色光源下での平面的な形態観察が同時に行える。これによって生体組織等の観察対象物の詳細が観察されるとともにその物性情報を得ることも可能となり、もって産業及び社会に貢献すること大であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明にかかる多波長広帯域モードロックレーザー光をビームスプリッター或いはミラーで空間的に分割した、多波長広帯域モードロックレーザーのスペクトルの一例を示すグラフである。(非特許文献1より引用)
図2図2は本発明にかかるモードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化するにあたり、ゼロ拡散波長(ZDW)835nmのフォトニック結晶ファイバー(PCF)により帯域拡張を行う場合に入力レーザーの強度を変化させた場合の出力を示すグラフである。(非特許文献1より引用)
図3図3は本発明にかかる新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源を搭載した同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
今般、筆者らは安定に動作する紫外から可視、赤外域に至る非常に広帯域な多波長広帯域モードロックレーザーを開発し、これを用いた太新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源を搭載した同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計を開発して、本発明を完成させたのである。
【0025】
本発明にかかる広帯域に亘って同期励起させたレーザーは凡そ400nmの紫外域から凡そ2000nmの赤外域に至る範囲で位相の揃ったフェムト秒超短パルスを発生する。
【0026】
図1は、本発明にかかる多波長広帯域モードロックレーザー光をビームスプリッター或いはミラーで空間的に分割した、多波長広帯域モードロックレーザーのスペクトルの一例を示すグラフである。(非特許文献1より引用)
【0027】
本発明にかかる多波長広帯域モードロックレーザー光は、400nmから2000nmまでの広帯域を有する。このため、本発明に於いてはモードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化して用いる。これによって、図1に示すように特に短波長側を400nm近傍まで範囲拡大することに成功し、これを用いて必要なスペクトルを切り出して断層像を得、同時に白色光源または単色光源下での平面的な形態観察が行える。これによって生体組織等の観察対象物の詳細が観察されるとともにその物性情報を得ることも可能になった。なお、グラフ中で1、2及び3はフォトニック結晶ファイバー(PCF)のゼロ拡散波長(ZDW)による出力スペクトルの差異を示しており、1はZDWが853nm、2はZDWが1039nm、3はZDWが1606nmの場合であり、これらにより出力スペクトルを制御することが出来ることがわかる。
【0028】
図2は、同様に本発明にかかるモードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化するにあたり、ゼロ拡散波長(ZDW)835nmのフォトニック結晶ファイバー(PCF)により帯域拡張を行う場合に入力レーザーの強度を変化させた場合の出力を示している。(非特許文献1より引用)このように、入力強度を変調することにより、出力スペクトルを制御することが出来る。
【0029】
かかるスペクトル幅を1600nm以上の超広帯域に広帯域化されたソース光をさらにもう一度光ファイバーを通してパルス整形を行い、この広帯域光からブロードバンド・マルチバンド光源を切り出し、これを応用することによって新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源を搭載した同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計を開発して、高侵達で高分解能、高感度、高速性を実現した。
【0030】
OCT光源には必要なスペクトルを切り出して断層像を得、同時に白色光源または単色光源下での平面的な形態観察が同時におこなえることで生体組織の詳細が観察される。従来機OCTと同じ波長域(800nm帯)や高侵達な1μm帯など、いずれの波長域を使用するときでも150nm以上の広帯域スペクトルで2μmの高解像度を達成した。
【0031】
例えばブロードバンド・マルチバンド観察を使うと、赤血球のヘモグロビンは還元時と酸素飽和時で吸収スペクトルが両波長帯で正反対であるので、使用バンドによって、観察画像の陰影が逆転する。ブロードバンド・マルチバンドで観察することで生体組織における血流の観察が可能となる。
【0032】
深部を観察するには1μm帯が侵達性から有利であり、細部を最高解像度で観察するには800nm帯が有利であることが理論上導かれる。このようにブロードバンド・マルチバンドOCT装置は深部を1μm帯で観察し、その場で光源を800nm帯に切り替えてさらに詳細に観察したり、白色光や単色光のもとで平面形状観察したりすることが出来るだけでなく、それぞれのシグナルの比較により同じ場所でも物性の違いが明らかとなる。
【0033】
シグナル解析をより多面的に行う事により、予め物性の分っている物質の局在を、OCT画像上で描出する事が可能となる。この際、観察対象に予め使用波長の電磁波と相互作用を惹起するトレーサー材料を包含させることも、精度向上及び情報量の向上に効果がある。
【0034】
フェムトセカンドレーザーを光源としたOCTは、画像の取り込みが速いことも特長の一つであり、従来のSLDを光源としたOCT装置が立体画像取得に10秒程度必要であるのに対して、3秒程度以下で取得可能であり、更に高速化する事が可能である。さらに、立体画像で物性の違いを描出することにより、組織構成の変化を観察することが容易となり、生理学・病理学的な解明に於いても有為な装置となる。
【実施例1】
【0035】
図1は、本発明にかかる多波長広帯域モードロックレーザー光をビームスプリッター或いはミラーで空間的に分割した、多波長広帯域モードロックレーザーのスペクトルの一例を示すグラフである。(非特許文献1より引用)
【0036】
本発明にかかる多波長広帯域モードロックレーザー光は、400nmから2000nmまでの広帯域を有する。このため、本発明に於いてはモードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化して用いる。これによって、図1に示すように特に短波長側を400nm近傍まで範囲拡大することに成功し、これによって太陽光の全範囲をカバーする微小構造を構成することが可能になった。なお、グラフ中で1、2及び3はフォトニック結晶ファイバー(PCF)のゼロ拡散波長(ZDW)による出力スペクトルの差異を示しており、1はZDWが853nm、2はZDWが1039nm、3はZDWが1606nmの場合であり、これらにより出力スペクトルを制御することが出来ることがわかる。
【0037】
図2は、同様に本発明にかかるモードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化するにあたり、ゼロ拡散波長(ZDW)835nmのフォトニック結晶ファイバー(PCF)により帯域拡張を行う場合に入力レーザーの強度を変化させた場合の出力を示している。(非特許文献1より引用)このように、入力強度を変調することにより、出力スペクトルを制御することが出来る。
【0038】
図3は、本発明にかかる新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源を搭載した同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計の構成を示す概念図である。光学系の構成は一般的なマイケルソン干渉計である。なお、実際の装置構成においては光ファイバーベースで光学系を構成することが多いが、本発明はこれらのいずれの構成においても用いることが出来る。
【0039】
光干渉断層計(OCT)は、初期のタイムドメインOCTからフーリエドメインOCTが開発されたことにより飛躍的進化を遂げた。フー リエドメインOCTには、波長固定光源と分光器を用いてフーリエ空間で検出するスペクトラルドメ インOCTと、光源の発信波長を高速に変化させることにより光波の干渉を同じくフーリエ空間で行う方式である波長掃引型OCTとがある。
【0040】
タイムドメインOCTは1回のスキャンにより観察対象の1点の情報しか得られないため、深さ方向に 1 点づつ走査を行わねばならない。これ に対してスペクトラルドメインOCTは、一回のスキャンにより深さ方向の情報がすべて取得できるため、深さ方向の機械的走査が不要となり、その分だけ高速になり、情報取得のパフォーマンスは圧倒的が圧倒的に改善された。
【0041】
しかし、実用化されたOCTの光源の中心波長は800乃至900nm前後であるため、プローブ光の多くが観察対象の生体組織表面で吸収されてしまい、対象組織の画像が不鮮明となる。そこで、OCTの光源としてより長い波長域の特性を調べる研究が行われてきた。波長が長くなるほど生体組織の吸収が減り深達性が向上するが、逆に水への吸収が増えるため深部へ届く光量が減るというジレンマがある。このため、できるだけ長波長で水の吸収の谷間として用いられているのが1050nm前後の光源である。
【0042】
ここで、本発明が旨とするところではないが、本発明にかかるブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計を眼科領域に活用した場合を考えると、1 μ m 帯の光源を用いることにより脈絡膜など網膜色素上皮下の組織の描出が著しく改善するから、その結果、脈絡膜の厚みを3次元 的に評価可能となり、さらには強度近視の異常部位である強膜や緑内障の原因の場である篩状板の観察が向上することが期待される。
【0043】
この新型広帯域光マルチバンド光源を搭載した同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計は、高侵達で高分解能、高感度、高速性を解決した。本発明にかかるOCT光源から必要なスペクトルを切り出して断層像を得、同時に白色光源または単色光源下での平面的な形態観察が同時に行えることで患部の詳細が観察される。
【0044】
従来のOCTと同じ波長域(800nm帯)や高侵達な1 μ m 帯など、いずれの波長域を使用するときでも150nm以上の広帯域スペクトルで2μ m の高解像度を達成した。例えばマルチバンド観察を使うと、赤血球のヘモグロビンは還元時と酸素飽和時で吸収スペクトルが両波長帯で正反対であるので、使用バンドによって、観察画像の陰影が逆転する。マルチバンドで観察することで血流の診断が確定する。
【0045】
深部を観察するには1 μ m帯が侵達性から有利であり、細部を最高解像度で観察するには800nm帯が有利であることが理論上導かれる。このように本発明にかかるブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計は深部を1 μ m帯で観察し、その場で光源を800nm帯に切り替えてさらに詳細に観察したり、白色光や単色光のもとで平面形状観察したりすることが出来るだけでなく、それぞれのシグナルの比較により同じ場所でも物性の違いが明らかとなる。シグナル解析をより多面的に行う事により、予め物性の分っている物質の局在を、OCT画像上で描出する事が可能となる。
【0046】
ここで、本発明にかかるブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計に用いられる多波長広帯域モードロックレーザーによる新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源は波長掃引光源としても応用出来、高性能な波長掃引型OCT(スウェプトソースOCT)を実現できるから、その効果は非常に大である。
【0047】
本実施例に於いてはモードロックレーザー光源として自作の半導体モードロックレーザー装置を用いた。出力する照射光は、コヒーレントな光であるフェムト秒パルスレーザー光である。照射光の所望とする波長範囲を含む波長範囲を有するフェムト秒パルスレーザー光がレーザーユニットによって生成され、これをフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化した。これにより有効なバンド幅を拡大することが出来た。
【0048】
フェムト秒モード同期レーザーの高強度電界でおこる非線形ファイバー中の高次非線形効果により、スペクトル幅を1600nm以上の超広帯域にまで広げることが出来た。さらにもう一度光ファイバーを通してパルス整形をおこない、この広帯域光からマルチバンド光源を切り出した。かかる多波長広帯域モードロックレーザー光源は、図3中の31に示される。
【0049】
かかる多波長広帯域モードロックレーザー光をビームスプリッター或いはハーフミラー32で空間的に分割して、一方を観察対象33に照射し、その反射光と参照光を合成して光検出器34で検出する。ここで、検出される画像は観察対象の形状及び物性情報を反映した干渉像である。これを、FFTを用いてフーリエ解析することによって、深度方向の情報を含んだ観察対象の形状及び物性情報を得ることが出来る。
【0050】
ここで当然に、観察対象33に入射する光学系、参照光学系及び反射光と参照光を合成して光検出器34に至る光学系は結像光学系を含んでよく、さらに光検出器34は分光器を含んでよい。
【0051】
フーリエドメインOCTは観察対象からの反射光の波長スペクトルを分光器で取得し、このスペクトル強度分布に対してフーリエ変換することで、実空間上での信号を取り出すことを特徴とするものであり、このフーリエドメインOCTは奥行き方向の走査を行う必要がなく、X軸方向の走査を行うことで被計測物体の断面構造を計測可能である。また波長掃引型OCTは、高速波長スキャニングレーザーにより光源の波長を変え、スペクトル信号と同期取得された光源走査信号を用いて干渉信号を再配列し、信号処理を加えることで3次元光断層画像を得るものである。なお、光源の波長を変える手段として、モノクロメーターを利用したものでも、波長掃引型OCTとして利用可能である。これらのOCTに関して、本発明にかかる新型広帯域光マルチバンド光源は有効であって、同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計が実現されるとともに深度情報を含む観察精度向上、物性情報の取得に与って効果がある。
【0052】
本発明にかかるブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計は同時形態観察もその広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源の効果により可能となり、フーリエドメインOCTモードだけでなくさまざまなモードのOCT観察装置・観察モードに応用出来る。
【0053】
本実施例においては、前記の通りフェムト秒モード同期レーザーの高強度電界でおこる非線形ファイバー中の高次非線形効果により、スペクトル幅を1600nm以上の超広帯域にまで広げ、さらにもう一度光ファイバーを通してパルス整形して、この広帯域光からマルチバンド光源を切りして多波長広帯域モードロックレーザー光源とした。これを既存のフーリエドメインOCTの光学系及び処理装置と組み合わせ、ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計を構成した。
【0054】
ここで、本発明においては使用するコヒーレント光の帯域幅が150nm以上、望ましくは200nm以上である。かかる広帯域を
多波長広帯域モードロックレーザーによる新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源により実現したことにより、従来フーリエ分光理論が成り立つと仮定した分解能でも6μm程度であったものを2μm程度まで向上させることが出来た。
【0055】
使用するコヒーレント光の帯域は、600nmより長波長であることが望ましいが、これは生体組織への入射にあたっての到達深度、吸収の多寡及び侵襲性の強弱からの要請によるものである。
【0056】
本発明にかかるブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計は観察とともに物性の計測を行うことが可能である。コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、使用するコヒーレント光は複数のピーク及び/又は帯域を有し、且つ該複数のピーク及び/又は帯域を用いて観察及び/又は物性の計測を行うことが出来、さらに、該複数のピーク及び/又は帯域は100nm以上のギャップを有することを特徴とし、該異なるピーク及び/又は帯域において得られるデータを比較することにより物性計測を行うことが出来る。
【0057】
また本発明にかかるブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計は、コヒーレント光を観察対象に於いて干渉させ、反射光を観測することにより観察対象の断層像を得る光干渉断層計に於いて、コヒーレント光を供給するためのレーザー光源として、多波長広帯域モードロックレーザーを用いた。該多波長広帯域モードロックレーザーは、半導体モードロックレーザーである。
【0058】
該多波長広帯域モードロックレーザーは、その帯域を広帯域化するために、モードロックレーザー光をフォトニック結晶ファイバー(PCF)に導入し、これを通過させることによって多波長広帯域化する。
【0059】
光源として用いられる多波長広帯域モードロックレーザーが、その出射光のスペクトルが400nmから2000nmの範囲にあり、出射光はその出射光中に複数のピークを有するコヒーレント光である。該複数のピークのうち1または複数を深部の観察に用い、且つ該複数のピークのうち他の1または複数を表面近傍の観察に用いることが出来る。
【0060】
また本発明にかかるブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計は、該複数のピークから得られる画像を比較することにより観察対象の物性情報を得ることが出来る。
【0061】
前記のように、本発明にかかる新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源を搭載した同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計は、必要なスペクトルを切り出して断層像を得、同時に白色光源または単色光源下での平面的な形態観察が同時に行える。これによって生体組織等の観察対象物の詳細が観察されるとともにその物性情報を得ることも可能となり、もって産業及び社会に貢献すること大であった。
【実施例2】
【0062】
さらに、本発明は、前記の特徴を有する光干渉断層計を用いた観察装置である。本発明は生体組織等の観察装置として非常に有用であり、非侵襲でもって必要なスペクトルを切り出して断層像を得、同時に白色光源または単色光源下での平面的な形態観察が同時に行える。これによって生体組織等の観察対象物の詳細が観察されるとともに、その物性情報を得ることも可能となった。さらにその解像度、物性情報量は格段に改善され、測定時間も格段に短くすることが出来た。
【実施例3】
【0063】
さらに本発明は、前記の特徴を有する光干渉断層計を用いた観察装置を使用した観察方法である。かかる観察方法は特に生体組織(人を除く)の観察に有効であり、広帯域から得られる情報により深度に対応した観察情報や物性情報を得ることが出来る。また、生体組織の観察に際しては、使用波長の電磁波と相互作用を惹起するトレーサー材料を観察対象に予め包含せしむることにより情報量及び/又は精度を向上させることが出来、かかるトレーサー材料としては典型的には使用波長の電磁波に感応して双極子モーメントが変化する感応因子或いはナノパーティクル等を挙げることができるが、使用波長の電磁波と相互作用を有する材料であれば有効に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の新型広帯域光ブロードバンド・マルチバンド光源を搭載した同時形態観察ブロードバンド・マルチバンド光干渉断層計は、必要なスペクトルを切り出して断層像を得、同時に白色光源または単色光源下での平面的な形態観察が同時に行える。これによって生体組織等の観察対象物の詳細が観察されるとともにその物性情報を得ることも可能となり、もって産業及び社会に貢献するものである。
【符号の説明】
【0065】
1 ZDWが853nmの場合
2 ZDWが1039nmの場合
3 ZDWが1606nmの場合
4 入力が820mWの場合
5 入力が400mWの場合
6 入力が200mWの場合
31 多波長広帯域モードロックレーザー光源
32 ビームスプリッター或いはハーフミラー
33 観察対象
34 光検出器
図1
図2
図3