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特開2016-217972センサの異常検出装置及びセンサ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-217972(P2016-217972A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】センサの異常検出装置及びセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20161125BHJP
【FI】
   G01D5/12 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-105413(P2015-105413)
(22)【出願日】2015年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプス電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(72)【発明者】
【氏名】脇田 祥嗣
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA02
2F077AA04
2F077AA43
2F077TT11
2F077TT31
2F077TT66
(57)【要約】
【課題】回路構成を簡易化できるセンサの異常検出装置及びセンサ装置を提供する。
【解決手段】帰還抵抗Rfを介して反転入力端子に出力電圧が帰還される演算増幅器30の2つの入力端子(反転入力端子,非反転入力端子)と、ブリッジ回路10の2つのブリッジ中点(N1,N2)とが、スイッチ回路20を介して接続される。スイッチ回路20が第1の接続状態にある場合の演算増幅器30の出力信号Vi1と、スイッチ回路20が第2の接続状態にある場合の演算増幅器30の出力信号Vi2との差に基づいて、センサ素子(R1〜R4)の物理量の検出結果を示す検出信号が取得され、出力信号Vi1と出力信号Vi2との和に基づいて、当該検出信号の異常が判定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子を含んで構成されたブリッジ回路であって、前記センサ素子のインピーダンスの変化に応じて第1のブリッジ中点の電圧と第2のブリッジ中点の電圧とが所定の中間電圧に対して変化量が等しく極性が反対の変化を生じるブリッジ回路と、
演算増幅器と、
前記演算増幅器の出力端子と反転入力端子との間に設けられた帰還抵抗と、
第1の接続状態において、前記第1のブリッジ中点と前記演算増幅器の非反転入力端子とを接続するとともに前記第2のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記反転入力端子とを接続し、第2の接続状態において、前記第1のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記反転入力端子とを接続するとともに前記第2のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記非反転入力端子とを接続するスイッチ回路と、
前記第1の接続状態における前記演算増幅器の出力信号と前記第2の接続状態における前記演算増幅器の出力信号との和に基づいて、前記ブリッジ回路の出力から取得される前記物理量の検出結果の異常を判定する判定部と
を有することを特徴とするセンサの異常検出装置。
【請求項2】
検出対象の物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子を含んで構成されたブリッジ回路であって、前記センサ素子のインピーダンスの変化に応じて第1のブリッジ中点の電圧と第2のブリッジ中点の電圧とが所定の中間電圧に対して変化量が等しく極性が反対の変化を生じるブリッジ回路と、
前記第1のブリッジ中点に非反転入力端子が接続されるとともに前記第2のブリッジ中点に反転入力端子が接続された第1演算増幅器と、
前記第1演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に設けられた第1帰還抵抗と、
前記第2のブリッジ中点に非反転入力端子が接続されるとともに前記第1のブリッジ中点に反転入力端子が接続された第2演算増幅器と、
前記第2演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に設けられた第2帰還抵抗と、
前記第1演算増幅器の出力信号と前記第2演算増幅器の出力信号との和に基づいて、前記ブリッジ回路の出力から取得される前記物理量の検出結果の異常を判定する判定部と
を有することを特徴とするセンサの異常検出装置。
【請求項3】
検出対象の物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子を含んで構成されたブリッジ回路であって、前記センサ素子のインピーダンスの変化に応じて第1のブリッジ中点の電圧と第2のブリッジ中点の電圧とが所定の中間電圧に対して変化量が等しく極性が反対の変化を生じるブリッジ回路と、
演算増幅器と、
前記演算増幅器の出力端子と反転入力端子との間に設けられた帰還抵抗と、
第1の接続状態において、前記第1のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記反転入力端子とを接続するとともに前記第2のブリッジ中点と前記演算増幅器の非反転入力端子とを接続し、第2の接続状態において、前記第1のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記非反転入力端子とを接続するとともに前記第2のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記反転入力端子とを接続するスイッチ回路と、
前記第1の接続状態における前記演算増幅器の出力信号と前記第2の接続状態における前記演算増幅器の出力信号との差に基づいて、前記物理量の検出結果を示す検出信号を取得する検出信号取得部と、
前記第1の接続状態における前記演算増幅器の出力信号と前記第2の接続状態における前記演算増幅器の出力信号との和に基づいて、前記検出信号の異常を判定する判定部と
を有することを特徴とするセンサ装置。
【請求項4】
検出対象の物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子を含んで構成されたブリッジ回路であって、前記センサ素子のインピーダンスの変化に応じて第1のブリッジ中点の電圧と第2のブリッジ中点の電圧とが所定の中間電圧に対して変化量が等しく極性が反対の変化を生じるブリッジ回路と、
前記第1のブリッジ中点に非反転入力端子が接続されるとともに前記第2のブリッジ中点に反転入力端子が接続された第1演算増幅器と、
前記第1演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に設けられた第1帰還抵抗と、
前記第2のブリッジ中点に非反転入力端子が接続されるとともに前記第1のブリッジ中点に反転入力端子が接続された第2演算増幅器と、
前記第2演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に設けられた第2帰還抵抗と、
前記第1演算増幅器の出力信号と前記第2演算増幅器の出力信号との差に基づいて、前記物理量の検出結果を示す検出信号を取得する検出信号取得部と、
前記第1演算増幅器の出力信号と前記第2演算増幅器の出力信号との和に基づいて、前記検出信号の異常を判定する判定部と
を有することを特徴とするセンサ装置。
【請求項5】
前記ブリッジ回路は、
所定の電圧を供給する電圧供給ラインと前記第1のブリッジ中点との間に設けられた第1センサ素子と、
前記第1のブリッジ中点と基準電位との間に設けられた第2センサ素子と、
前記電圧供給ラインと前記第2のブリッジ中点との間に設けられた第3センサ素子と、
前記第2のブリッジ中点と前記基準電位との間に設けられた第4センサ素子とを含む
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば磁気センサなどのセンサ素子を用いて構成されたブリッジ回路の出力から検出信号を取得するセンサにおいて、故障等により生じた検出信号の異常を検出する異常検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば磁気センサや温度センサ、湿度センサなど、検出対象の物理量に応じてインピーダンスが変化する様々なセンサ素子が存在し、センシングの分野で多く使用されている。このようなセンサ素子から感度よく検出信号を得るためには、センサ素子の微小なインピーダンスの変化を検出する必要があり、そのための回路方式として従来よりブリッジ回路が知られている。
【0003】
例えば回転角検出装置に用いられる磁気センサのブリッジ回路の場合、一方のブリッジ中点と他方のブリッジ中点から、それぞれ回転角に応じたレベルを持つ正弦波信号が出力される。この2つの正弦波信号は互いに位相が逆であるため、両者の差を演算することにより、振幅が2倍の正弦波信号が得られる。
【0004】
このような回転角検出装置のブリッジ回路では、例えば磁気センサの特性の経年変化や故障などにより、回転角に応じた正弦波信号の振動の中心レベル(オフセットレベル)に対してドリフトが発生する場合がある。ドリフトが発生すると、ブリッジ回路の2つのブリッジ中点から出力される2つの正弦波信号の差には、回転角に応じた正弦波信号の振動の他にドリフトの成分が含まれることとなり、正確な回転角の検出が行えなくなる。
【0005】
下記の特許文献1に記載される故障検出回路では、ブリッジ回路の2つのブリッジ中点から出力される2つの正弦波信号が加算され、その加算信号が所定の正常範囲から外れる場合、ドリフトの発生を示す異常信号が生成される
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−49097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載される故障検出回路では、ブリッジ回路の2つのブリッジ中点から2つの正弦波信号を取り出して加算するために、2つのブリッジ中点のそれぞれにバッファ部が設けられている。この故障検出回路には2つのブリッジ回路が存在するため、バッファ部は全部で4つになっている。従って、バッファ部を設けることによって回路規模が多くなっているという問題がある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路構成を簡易化できるセンサの異常検出装置及びセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係るセンサの異常検出装置は、検出対象の物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子を含んで構成されたブリッジ回路であって、前記センサ素子のインピーダンスの変化に応じて第1のブリッジ中点の電圧と第2のブリッジ中点の電圧とが所定の中間電圧に対して変化量が等しく極性が反対の変化を生じるブリッジ回路と、演算増幅器と、前記演算増幅器の出力端子と反転入力端子との間に設けられた帰還抵抗と、第1の接続状態において、前記第1のブリッジ中点と前記演算増幅器の非反転入力端子とを接続するとともに前記第2のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記反転入力端子とを接続し、第2の接続状態において、前記第1のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記反転入力端子とを接続するとともに前記第2のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記非反転入力端子とを接続するスイッチ回路と、前記第1の接続状態における前記演算増幅器の出力信号と前記第2の接続状態における前記演算増幅器の出力信号との和に基づいて、前記ブリッジ回路の出力から取得される前記物理量の検出結果の異常を判定する判定部とを有する。
【0010】
上記の構成によれば、ブリッジ回路の2つのブリッジ中点(第1のブリッジ中点,第2のブリッジ中点)と前記演算増幅器の入力端子(反転入力端子,非反転入力端子)とが前記スイッチ回路を介して接続されるため、当該2つのブリッジ中点から信号を取り出すためのバッファ回路を省略することが可能となる。
【0011】
本発明の第2の観点に係るセンサの異常検出装置は、検出対象の物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子を含んで構成されたブリッジ回路であって、前記センサ素子のインピーダンスの変化に応じて第1のブリッジ中点の電圧と第2のブリッジ中点の電圧とが所定の中間電圧に対して変化量が等しく極性が反対の変化を生じるブリッジ回路と、前記第1のブリッジ中点に非反転入力端子が接続されるとともに前記第2のブリッジ中点に反転入力端子が接続された第1演算増幅器と、前記第1演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に設けられた第1帰還抵抗と、前記第2のブリッジ中点に非反転入力端子が接続されるとともに前記第1のブリッジ中点に反転入力端子が接続された第2演算増幅器と、前記第2演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に設けられた第2帰還抵抗と、前記第1演算増幅器の出力信号と前記第2演算増幅器の出力信号との和に基づいて、前記ブリッジ回路の出力から取得される前記物理量の検出結果の異常を判定する判定部とを有する。
【0012】
上記の構成によれば、ブリッジ回路の2つのブリッジ中点(第1のブリッジ中点,第2のブリッジ中点)と前記第1演算増幅器の入力端子(反転入力端子,非反転入力端子)とが接続されるとともに、当該2つのブリッジ中点と前記第2演算増幅器の入力端子(反転入力端子,非反転入力端子)とが接続されるため、当該2つのブリッジ中点から信号を取り出すためのバッファ回路を省略することが可能となる。
【0013】
本発明の第3の観点に係るセンサ装置は、検出対象の物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子を含んで構成されたブリッジ回路であって、前記センサ素子のインピーダンスの変化に応じて第1のブリッジ中点の電圧と第2のブリッジ中点の電圧とが所定の中間電圧に対して変化量が等しく極性が反対の変化を生じるブリッジ回路と、演算増幅器と、前記演算増幅器の出力端子と反転入力端子との間に設けられた帰還抵抗と、第1の接続状態において、前記第1のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記反転入力端子とを接続するとともに前記第2のブリッジ中点と前記演算増幅器の非反転入力端子とを接続し、第2の接続状態において、前記第1のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記非反転入力端子とを接続するとともに前記第2のブリッジ中点と前記演算増幅器の前記反転入力端子とを接続するスイッチ回路と、前記第1の接続状態における前記演算増幅器の出力信号と前記第2の接続状態における前記演算増幅器の出力信号との差に基づいて、前記物理量の検出結果を示す検出信号を取得する検出信号取得部と、前記第1の接続状態における前記演算増幅器の出力信号と前記第2の接続状態における前記演算増幅器の出力信号との和に基づいて、前記検出信号の異常を判定する判定部とを有する。
【0014】
本発明の第4の観点に係るセンサ装置は、検出対象の物理量の変化に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子を含んで構成されたブリッジ回路であって、前記センサ素子のインピーダンスの変化に応じて第1のブリッジ中点の電圧と第2のブリッジ中点の電圧とが所定の中間電圧に対して変化量が等しく極性が反対の変化を生じるブリッジ回路と、前記第1のブリッジ中点に非反転入力端子が接続されるとともに前記第2のブリッジ中点に反転入力端子が接続された第1演算増幅器と、前記第1演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に設けられた第1帰還抵抗と、前記第2のブリッジ中点に非反転入力端子が接続されるとともに前記第1のブリッジ中点に反転入力端子が接続された第2演算増幅器と、前記第2演算増幅器の出力端子と前記反転入力端子との間に設けられた第2帰還抵抗と、前記第1演算増幅器の出力信号と前記第2演算増幅器の出力信号との差に基づいて、前記物理量の検出結果を示す検出信号を取得する検出信号取得部と、前記第1演算増幅器の出力信号と前記第2演算増幅器の出力信号との和に基づいて、前記検出信号の異常を判定する判定部とを有する。
【0015】
好適に、前記ブリッジ回路は、所定の電圧を供給する電圧供給ラインと前記第1のブリッジ中点との間に設けられた第1センサ素子と、前記第1のブリッジ中点と基準電位との間に設けられた第2センサ素子と、前記電圧供給ラインと前記第2のブリッジ中点との間に設けられた第3センサ素子と、前記第2のブリッジ中点と前記基準電位との間に設けられた第4センサ素子とを含んでよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ブリッジ回路のブリッジ中点毎にバッファ回路を設けなくてよいため、回路構成を簡易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。
図2】スイッチ回路が第1の接続状態にある場合を示す図である。
図3】スイッチ回路が第2の接続状態にある場合を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る異常検出装置及びセンサ装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。
図1に示すセンサ装置は、ブリッジ回路10と、スイッチ回路20と、演算増幅器30と、帰還抵抗Rfと、抵抗Rbと、AD変換部40と、処理部50を有する。このセンサ装置は、物理量の検出結果を示す検出信号を取得する動作の他に、ドリフトの発生等による検出信号の異常を検出する異常検出装置としても動作する。
【0019】
ブリッジ回路10は、検出対象の物理量(磁界など)の変化に応じてインピーダンスが変化するセンサ素子(R1〜R4)を含んで構成される。このブリッジ回路10では、センサ素子(R1〜R4)のインピーダンスの変化に応じて、第1のブリッジ中点の電圧と第2のブリッジ中点の電圧とが所定の中間電圧Vofsに対して変化量が等しく極性が反対の変化を生じる。第1のブリッジ中点N1の電圧を「Vsp」、第2のブリッジ中点N2の電圧を「Vsn」とすると、電圧Vsp,Vsnはそれぞれ次式で表わされる。
【0020】
Vsp = A・sinθ+Vofs …(1)
Vsn = −A・sinθ+Vofs …(2)
【0021】
この式(1),(2)において、「A」は一定の係数を示し、「sinθ」は−1から1までの値を持つ変数を示す。「sinθ」の値は、センサ素子(R1〜R4)による物理量の検出結果に応じて変化する。例えば、回転体に配置された磁石の磁界をセンサ素子(R1〜R4)によって検出するようにした回転角センサの場合、回転の角度θに応じて電圧Vsp,Vsnが式(1),(2)に示す変化を生じるように磁石とセンサ素子(R1〜R4)が配置される。
【0022】
なお、式(1),(2)の関係は、第1のブリッジ中点N1,第2のブリッジ中点N2がそれぞれ演算増幅器30に接続されていない場合に成立する。第1のブリッジ中点N1,第2のブリッジ中点N2が後述のスイッチ回路20を介して演算増幅器30に接続された場合、電圧Vsp,Vsnはほぼ等しい電圧となる。
【0023】
図1の例に示すブリッジ回路10は、第1センサ素子R1と、第2センサ素子R2と、第3センサ素子R3と、第4センサ素子R4を有する。第1センサ素子R1は、電源電圧Vccを供給する電圧供給ラインと第1のブリッジ中点N1との間に設けられる。第2センサ素子R2は、第1のブリッジ中点N1と基準電位GNDとの間に設けられる。第3センサ素子R3は、電源電圧Vccの電圧供給ラインと第2のブリッジ中点N2との間に設けられる。第4センサ素子R4は、第2のブリッジ中点N2と基準電位GNDとの間に設けられる。
【0024】
正常な状態において、これらのセンサ素子(R1〜R4)は、検出対象の物理量の変化に応じたインピーダンスの変化量がほぼ等しい。検出対象の物理量の変化に応じたインピーダンスの変化の極性は、第1センサ素子R1及び第2センサ素子R2が逆、第3センサ素子R3及び第4センサ素子R4が逆であり、第1センサ素子R1及び第4センサ素子R4が同一、第2センサ素子R2及び第3センサ素子R3が同一である。
【0025】
第1センサ素子R1及び第2センサ素子R2のインピーダンスが等しくなる場合、第3センサ素子R3及び第4センサ素子R4のインピーダンスも等しくなる。この場合、式(1),(2)の関係から、電圧Vsp,Vsnは共に中間電圧Vofsと等しくなる。従って、中間電圧Vofsは、電源電圧Vccの半分の電圧(Vcc/2)に等しくなる。
【0026】
スイッチ回路20は、ブリッジ回路10の2つのブリッジ中点(N1,N2)と演算増幅器30の2つの入力端子(反転入力端子,非反転入力端子)との接続を切り替える回路であり、第1の接続状態と第2の接続状態を有する。
第1の接続状態において、スイッチ回路20は、第1のブリッジ中点N1と演算増幅器30の非反転入力端子とを接続するとともに第2のブリッジ中点N2と演算増幅器30の反転入力端子とを接続する(図2)。
第2の接続状態において、スイッチ回路20は、第1のブリッジ中点N1と演算増幅器30の反転入力端子とを接続するとともに第2のブリッジ中点N2と演算増幅器30の非反転入力端子とを接続する(図3)。
【0027】
帰還抵抗Rfは、演算増幅器30の出力端子と反転入力端子との間に設けられる。
【0028】
抵抗Rbは、スイッチ回路20及び帰還抵抗Rfの一端が接続されるノードと演算増幅器30の反転入力端子との間を流れる電流の経路に設けられる。この抵抗Rbは、演算増幅器30の反転入力端子及び非反転入力端子に流れる微小な入力電流の影響によって発生する演算増幅器30のオフセット電圧を低減するためのものである。抵抗Rbの抵抗値は、演算増幅器30の反転入力端子につながる回路のインピーダンスと、演算増幅器30の非反転入力端子につながる回路のインピーダンスとが近似するように設定される。
【0029】
AD変換部40は、演算増幅器30の出力信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換する。
【0030】
処理部50は、センサ装置の全体的な動作を統括的に制御する回路である。例えば、処理部50は、不図示の上位装置から所定のコマンドが与えられた場合や、予め設定された周期的なタイミングにおいて、演算増幅器30の第1の接続状態(図2)及び第2の接続状態(図3)の出力信号がそれぞれ得られるように、スイッチ回路20の切り替え動作及びAD変換部40の変換動作を制御する。
【0031】
例えば、処理部50は、メモリに格納されたプログラムの命令コードに従って処理を実行するコンピュータや、専用のハードウェアによるロジック回路(ASIC等)を含んで構成される。処理部50の処理は、全てをコンピュータにおいて実行してもよいし、少なくとも一部をハードウェアのロジック回路によって実行してもよい。
【0032】
処理部50は、AD変換部40においてデジタル信号に変換された演算増幅器30の出力信号を処理するブロックとして、検出信号取得部51と判定部52を有する。
【0033】
検出信号取得部51は、第1の接続状態(図2)における演算増幅器30の出力信号と第2の接続状態(図3)における演算増幅器30の出力信号との差に基づいて、物理量の検出結果を示す検出信号を取得する。
【0034】
判定部52は、第1の接続状態(図2)における演算増幅器30の出力信号と第2の接続状態(図3)における演算増幅器30の出力信号との和に基づいて、検出信号取得部51により取得される検出信号の異常を判定する。
【0035】
ここで、上述した構成を有する図1に示すセンサ装置の動作について、正常時と異常時に分けて説明する。
【0036】
(正常時)
第1の接続状態(図2)における演算増幅器30の出力信号を「Vi1」、第2の接続状態(図3)における演算増幅器30の出力信号を「Vi2」とすると、出力信号Vi1,Vi2はそれぞれ次の式で表わされる。
【0037】
Vi1 = G1・(Vsp−Vsn)+Vsp …(3)
Vi2 = G2・(Vsn−Vsp)+Vsn …(4)
【0038】
式(3)における「G1」は、ブリッジ回路10のセンサ素子R1,R2と帰還抵抗Rfの各抵抗値によって定まる電圧ゲインを示す。また、式(4)における「G2」は、ブリッジ回路10のセンサ素子R3,R4と帰還抵抗Rfの各抵抗値によって定まる電圧ゲインを示す。センサ素子R1,R2,R3,R4の抵抗値をそれぞれ「R1」,「R2」,「R3」,「R4」とし、帰還抵抗Rfの抵抗値を「Rf」とすると、電圧ゲインG1,G2はそれぞれ次式で表わされる。
【0039】
G1 = Rf・(R1+R2)/(R1・R2) …(5)
G2 = Rf・(R3+R4)/(R3・R4) …(6)
【0040】
ここで、(R1+R2)≒(R3+R4)、(R1・R2)≒(R3・R4)の関係が成り立つものとすると、電圧ゲインG1とG2はほぼ等しくなる。この電圧ゲインを「G」とすると、式(3),(4)は次の式で表わされる。
【0041】
Vi1 = G・(Vsp−Vsn)+Vsp …(7)
Vi2 = G・(Vsn−Vsp)+Vsn …(8)
【0042】
式(1),(2),(7),(8)から、出力信号Vi1,Vi2はそれぞれ次の式で表わされる。
【0043】
Vi1 = (1+2G)・A・sinθ+Vofs …(9)
Vi2 = −(1+2G)・A・sinθ+Vofs …(10)
【0044】
出力信号Vi1から出力信号Vi2を減算した結果は、式(9)及び(10)を用いて次式のよう表わされる。
【0045】
Vi1−Vi2 = (1+2G)・2A・sinθ …(11)
【0046】
式(11)から分かるように、検出動作が正常に行われている場合、出力信号Vi1から出力信号Vi2を減算した結果の信号は、センサ素子(R1〜R4)において検出される物理量の変化「sinθ」に比例した信号となる。検出信号取得部51は、この式(11)に示す減算結果の信号を検出信号として取得する。
【0047】
一方、出力信号Vi1と出力信号Vi2を加算した結果は、式(9)及び(10)を用いて次式のように表わされる。
【0048】
Vi1+Vi2 = 2・Vofs = Vcc …(12)
【0049】
式(12)から分かるように、検出動作が正常に行われている場合、出力信号Vi1と出力信号Vi2を加算した結果はほぼ一定の値となる。判定部52は、出力信号Vi1と出力信号Vi2の加算結果が電源電圧Vccを中心値とする所定の正常範囲内に含まれるか否かを判定し、加算結果が正常範囲内に含まれる場合、検出信号取得部51で取得される検出信号は正常であると判定する。
【0050】
(異常時)
第1のブリッジ中点N1の電圧Vspにドリフト電圧Δが発生した場合、電圧Vspの式(1)は次の式(1A)のよう変更される。
【0051】
Vsp = Vofs+A・sinθ+Δ …(1A)
【0052】
式(1A),(2),(7),(8)から、異常時の出力信号Vi1A,Vi2Aはそれぞれ次の式で表わされる。
【0053】
Vi1A = (1+2G)・A・sinθ+Vofs+(1+G)・Δ … (9A)
Vi2A = −(1+2G)・A・sinθ+Vofs−G・Δ …(10A)
【0054】
出力信号Vi1Aから出力信号Vi2Aを減算した結果は、式(9A)及び(10A)を用いて次式のよう表わされる。
【0055】
Vi1A−Vi2A = (1+2G)・(2A・sinθ+Δ) … (11A)
【0056】
式(11A)が示すように、検出信号取得部51において取得される検出信号には、ドリフト電圧Δに由来する誤差成分が含まれる。そのため、検出信号は、センサ素子(R1〜R4)において検出される物理量の変化「sinθ」を正しく表わしていない。
【0057】
出力信号Vi1Aと出力信号Vi2Aを加算した結果は、式(9A)及び(10A)を用いて次式のよう表わされる。
【0058】
Vi1A+Vi2A = 2・Vofs+Δ = Vcc+Δ …(12A)
【0059】
出力信号Vi1Aにドリフト電圧Δが含まれる場合、出力信号Vi1と出力信号Vi2を加算した結果は、正常時(式(12))に比べてドリフト電圧Δだけ電源電圧Vccから離れた電圧となる。従って、ドリフト電圧Δが一定の限度を超えて大きくなると、出力信号Vi1と出力信号Vi2の加算結果が電源電圧Vccを中心値とする所定の正常範囲から外れることとなり、判定部52は、検出信号取得部51で取得される検出信号が異常であると判定する。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係るセンサ装置によれば、帰還抵抗Rfを介して反転入力端子に出力電圧が帰還される演算増幅器30の2つの入力端子(反転入力端子,非反転入力端子)と、ブリッジ回路10の2つのブリッジ中点(N1,N2)とが、スイッチ回路20を介して接続される。スイッチ回路20が第1の接続状態(図2)にある場合の演算増幅器30の出力信号Vi1と、スイッチ回路20が第2の接続状態(図3)にある場合の演算増幅器30の出力信号Vi2との差に基づいて、センサ素子(R1〜R4)の物理量の検出結果を示す検出信号が取得され、出力信号Vi1と出力信号Vi2との和に基づいて、当該検出信号の異常が判定される。
これにより、ブリッジ回路10の2つのブリッジ中点(N1、N2)から信号を取り出すためのバッファ回路を省略できるため、回路構成を簡易化することができる。
【0061】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
上述した第1の実施形態に係るセンサ装置は、帰還抵抗Rfを介して反転入力端子に出力電圧が帰還される1つの演算増幅器30とブリッジ回路10との接続をスイッチ回路20によって切り替えることで、2パターンの出力信号(Vi1,Vi2)を生成する。これに対し、本実施形態に係るセンサ装置は、第1の実施形態と同様な2パターンの出力信号を2つの演算増幅器によって生成する。
【0062】
図4は、第2の実施形態に係るセンサ装置の構成の一例を示す図である。
図4に示すセンサ装置は、ブリッジ回路10と、第1演算増幅器31及び第2演算増幅器32と、第1帰還抵抗Rf1及び第2帰還抵抗Rf2と、抵抗Rb1及びRb2と、スイッチ回路60と、AD変換部40と、処理部50とを有する。これらの構成要素において、ブリッジ回路10、AD変換部40及び処理部50は図1に示すセンサ装置と同じものであるため、以下ではその他の構成要素について説明する。
【0063】
第1演算増幅器31は、非反転入力端子が第1のブリッジ中点N1に接続されるとともに、反転入力端子が第2のブリッジ中点N2に接続される。
【0064】
第2演算増幅器32は、非反転入力端子が第2のブリッジ中点N2に接続されるとともに、反転入力端子が第1のブリッジ中点N1に接続される。
【0065】
第1帰還抵抗Rf1は、第1演算増幅器31の出力端子と反転入力端子との間に設けられる。第2帰還抵抗Rf2は、第2演算増幅器32の出力端子と反転入力端子との間に設けられる。第1帰還抵抗Rf1と第2帰還抵抗Rf2は、ほぼ等しい抵抗値を有する。また、第1帰還抵抗Rf1及び第2帰還抵抗Rf2は、ブリッジ回路10の抵抗(R1〜R4)に比べて十分に大きな抵抗値を持つ。
【0066】
抵抗Rb1は、第2のブリッジ中点N2及び帰還抵抗Rf1の一端が接続されるノードと第1演算増幅器31の反転入力端子との間を流れる電流の経路に設けられる。抵抗Rb2は、第1のブリッジ中点N1及び帰還抵抗Rf2の一端が接続されるノードと第2演算増幅器32の反転入力端子との間を流れる電流の経路に設けられる。抵抗Rb1,Rb2の機能は、図1における抵抗Rbと同様である。
【0067】
スイッチ回路60は、第1演算増幅器31の出力信号Vi1及び第2演算増幅器32の出力信号Vi2の一方を選択してAD変換部40に入力する。
【0068】
図4に示すセンサ装置では、第1演算増幅器31の出力信号Vi1と第2演算増幅器32の出力信号Vi2とがスイッチ回路60を介してAD変換部40に入力され、それぞれデジタル信号に変換された後、処理部50の検出信号取得部51及び判定部52に入力される。検出信号取得部51では、出力信号Vi1と出力信号Vi2との差に基づいて検出信号が取得される。判定部52では、出力信号Vi1と出力信号Vi2との和に基づいて検出信号の異常が判定される。
【0069】
図4に示すセンサ装置においても、ブリッジ回路10の2つのブリッジ中点(N1、N2)から信号を取り出すためのバッファ回路を省略できるため、図1に示すセンサ装置と同様に回路構成を簡易化することができる。
【0070】
本発明は上述した実施形態には限定されない。すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【0071】
上述した実施形態ではブリッジ回路10が4つのセンサ素子(R1〜R4)から構成される例を挙げたが、本発明の他の実施形態では、4つのセンサ素子(R1〜R4)の一部を固定値の抵抗に置き換えてもよい。
【0072】
図4に示すセンサ装置では、2つの演算増幅器(31,32)の出力信号を1つのAD変換部40によってデジタル信号に変換しているが、本発明の他の実施形態では、2つの演算増幅器(31,32)の出力にそれぞれAD変換部を設けてもよい。
【0073】
上述した実施形態では、検出信号取得部51及び判定部52の信号処理をデジタル回路で行っているが、本発明の他の実施形態では、これらの信号処理をアナログ回路で行ってもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…ブリッジ回路、20,60…スイッチ回路、30…演算増幅器、31…第1演算増幅器、32…第2演算増幅器、40…AD変換部、50…処理部、51…検出信号取得部、52…判定部、Rf…帰還抵抗、Rf1…第1帰還抵抗、Rf2…第2帰還抵抗、R1…第1センサ素子、R2…第2センサ素子、R3…第3センサ素子、R4…第4センサ素子、N1…第1のブリッジ中点、N2…第2のブリッジ中点。
図1
図2
図3
図4