特開2016-218022(P2016-218022A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-218022(P2016-218022A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】酸化物の耐食性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/225 20060101AFI20161125BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20161125BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20161125BHJP
   G01N 17/00 20060101ALN20161125BHJP
【FI】
   G01N23/225 312
   C22C38/00 302Z
   C22C38/60
   C22C38/00 301F
   G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-106760(P2015-106760)
(22)【出願日】2015年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊弥
【テーマコード(参考)】
2G001
2G050
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA05
2G001CA01
2G001GA01
2G001KA01
2G001KA09
2G001LA02
2G001NA10
2G050BA02
2G050DA03
2G050EA01
2G050EA02
2G050EB07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】現実の環境暴露試験を行う際の鉄さび組成元素での評価法として適切なものの提供。
【解決手段】質量%で、C:0.01−0.50%、Si:0.03−3.3%、Mn:2.0%以下、P:0.01−0.14%、S:0.1%以下、Cr:0.35−8%、残部がFeと不可避的不純物からなる低合金耐食鋼であって、この低合金耐食鋼の表面に生成した鉄さびを対象として、エネルギー分散型X線分析を用いて鉄さび層に含まれる化学組成を定量的に測定して、鉄さび層に含まれる化学組成が所定の閾値を超えているか否かによって低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.01−0.50%、Si:0.03−3.3%、Mn:2.0%以下、P:0.01−0.14%、S:0.1%以下、Cr:0.35−8%、残部がFeと不可避的不純物からなる低合金耐食鋼であって、
この低合金耐食鋼の表面に生成した鉄さびを対象として、
エネルギー分散型X線分析を用いて前記鉄さび層に含まれる化学組成を定量的に測定して、
前記鉄さび層に含まれる化学組成が所定の閾値を超えているか否かによって前記低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、
前記低合金耐食鋼は、質量%で、Cu:0.30−0.50%、Ni:0.05−3.5%、Mo:0.15−0.70%の少なくとも一種類以上をさらに含むことを特徴とする低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、
前記エネルギー分散型X線分析の測定は前記鉄さび層に含まれるさび上層、さび内層および地金層について、前記低合金耐食鋼の耐食性評価にもちいる各成分元素に関して線分析することを特徴とする低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、
前記線分析結果を複数について平均して、各成分元素に関して平均的な線分析結果を得ると共に、当該線分析結果による濃度を各元素の母材組成(mass%)を基準として成分濃度を求めることを特徴とする低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法。
【請求項5】
請求項4に記載の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、
ここで、各成分元素における濃度の線分析結果から最大値(Imax;ピーク値、mass%)を求めることを特徴とする低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5に記載の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、
前記鉄さび層に含まれる化学組成として、CrとSiを対象とすると共に、
各さび化学組成元素における濃度の線分析結果の最大値の和
Imax(Cr)+Imax(Si)
の値(mass%)が高い程、耐食性が高いと判定することを特徴とする低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、
前記低合金耐食鋼における耐食性の高いさび層として、以下の式を満たすさび層の有無を判定することを特徴とする低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法。
Imax(Cr)+Imax(Si)>3.8mass%
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低合金耐食鋼に生成した鉄さび(酸化物、腐食生成物)の評価方法に関し、特に低合金耐食鋼に生成した鉄さびの定量的な耐食性評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低合金耐食鋼の耐食特性は形成される表面の鉄さび(酸化物、腐食生成物)に依存している。そのため多くの表面分析が使用されて鉄さびの表面観察がなされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、鋼構造物の一部にセンサー電極を挿入することにより、2電極式で連続測定を行う鋼構造物の腐食速度のその場測定法が提案されている。特許文献2では、X線分析法を用いた大気腐食環境中で安定な密着さび層を有する耐候鋼のさび構造の評価法が提案されている。特許文献3では、亜鉛を含む表面処理を施した鋼材のマグネシウム塩を使用した耐食性評価方法が提案されている。特許文献4では、鋼材自体の特性からみた当該鋼材の腐食のしやすさを示す鋼材腐食指数と、当該鋼材が使用される大気環境の特性からみた当該鋼材の腐食のしやすさを示す環境腐食指数とを用いて、当該大気環境で使用される鋼材の腐食状態を推定するための腐食状態推定方法が提案されている。
【0004】
しかし、特許文献1に示すような電気化学的評価方法では、非破壊で構造物の腐食状況を連続的にモニタすることが可能であり、鋼製の橋梁、鉄骨構造を有する建造物の全体的なさびの進行を評価できるものの、ミクロのさび構造・組成を評価し、耐食性との関係を定量的に評価するものではなかった。
また、特許文献2に示すようなX線分析法を用いた評価方法では、耐候性鋼や普通鋼のさび層中に存在するゲーサイト(α−FeOOH)、アカガネイト(β−FeOOH)、レピドクロサイト(γ−FeOOH)、マグネタイト(Fe)等の結晶構造を評価している。しかし、結晶構造的な評価を行っているために、鉄さびの組成元素に関する評価ができていないという課題があった。
【0005】
特許文献3に示すような自動車の車体用塗装鋼板の耐食性評価法は、塩水噴霧試験で知られる5%のNaClを35℃で連続噴霧する方法や、Mg系融雪剤散布地域を想定した寒冷地域を走行する自動車の最適な車体用防錆鋼板を選定・開発するために必要な促進腐食試験に関するものであり、鉄さび自体の物性を評価しようとするものではなかった。
特許文献4に示すような鋼材腐食指数と環境腐食指数を用いる場合でも、鋼材表面に生じる錆が安定に保護層として形成するかあるいは層状に剥離するかに大きな影響を与えるCu、Ni、Cr、Tiの添加量に基づき算出した鋼材腐食指数を使用している点で信頼性は増すものの、現実の腐食実験をするのに比較して、確実性が低下してしまう。
【0006】
さらに、非特許文献1では、文化資源の保存のために、錆びた金属製品から製作当初の表面状態を復元するための科学技術が提案されている。しかし、鋼材の耐食性の観点からは、鉄さび組成が鋼材の耐食性に大きく寄与するが、非特許文献1は鋼材の耐食性を評価する観点には沈黙している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−071616号公報
【特許文献2】特開2003−315290号公報
【特許文献3】特開2005−181102号公報
【特許文献4】特開2011−247642号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】文化資源の保存、活用及び創造を支える科学技術の振興、科学技術・学術審議会・資源調査分科会報告書、平成16年2月19日http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1332156.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、低合金鋼や耐候性鋼における通説的見解では、各環境下において、鋼材の表面に形成される腐食生成物により防食がされる。そして、鉄さび組成元素が鋼材の耐食性に大きく寄与するが、現実の環境暴露試験を行う際の鉄さび組成元素での評価法として適切なものは、本発明者の知る限り存在していない。
本発明は上記課題を解決したもので、現実の環境暴露試験を行う際の鉄さび組成元素での評価法として適切なものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、低合金耐食鋼の耐食特性について評価することに関して、鋭意研究を継続して、低合金耐食鋼に生成した鉄さびの耐食性を評価するために、電子顕微鏡(SEM)を用いた解析結果から手法を確立した。特に、エネルギー分散型X線分析(EDS:Energy dispersive X−ray spectrometry)を用いたさび層の断面観察において、定量的な評価方法を提示する。従来からEDS測定は、元素の濃度分布を示す重要な手法であったが、考古学の分野のような分野では遺跡の埋蔵物の情報復元に主眼が置かれ、さび層の物性を評価するという概念はなかった。本発明では、EDS測定結果からパラメータを纏め、それにより低合金鋼の鉄さびの耐食性を評価することを可能とした。
【0011】
本発明の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法は、低合金耐食鋼の表面に生成した鉄さびを対象として、エネルギー分散型X線分析を用いて前記鉄さび層に含まれる化学組成を定量的に測定して、前記鉄さび層に含まれる化学組成が所定の閾値を超えているか否かによって低合金耐食鋼の耐食性を評価することを特徴とする。
ここで、低合金耐食鋼の具体的な化学元素組成は、例えば耐候鋼ではJIS G3114に規定されるSMA鋼があり、機械構造用合金鋼鋼材ではJIS G4053に規定されるSCr鋼、SCM鋼、SNC鋼、SNCM鋼、SACM鋼等がある。具体的な組成は、例えばSMA400AWでは、C:0.18%以下、Si:0.15−0.65%、Mn:1.25%以下、P:0.035%以下、S:0.035%以下、Cu:0.30−0.50%、Cr:0.45−0.75%、Ni:0.05−0.30%である。また、SCr415では、C:0.13−0.18%、Si:0.15−0.35%、Mn:0.60−0.90%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Ni:0.25%以下、Cr:0.90−1.20%である。
本発明の対象とする低合金耐食鋼の組成は、質量%で、C:0.01−0.50%、Si:0.03−3.3%、Mn:2.0%以下、P:0.01−0.14%、S:0.1%以下、Cr:0.35−8%、残部がFeと不可避的不純物からなる。また、本発明の対象とする低合金耐食鋼の組成は、任意的組成物として、質量%で、Cu:0.30−0.50%、Ni:0.05−3.5%、Mo:0.15−0.70%の少なくとも一種類以上をさらに含んでいても良い。
低合金耐食鋼の具体的な化学元素組成として定められた範囲の上限を超えると、低合金耐食鋼としての機械的特性又は耐食性が損なわれるので好ましくない。他方で、この範囲の下限以下では、工業的に通常使用される原材料と比較して、不可避的不純物の混入許容範囲が狭くなりすぎて、化学組成の純度を高めるための処理が必要となってコストが上がるためと、また、機械的特性又は耐食性が損なわれて好ましくない。
【0012】
本発明の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、好ましくは、前記エネルギー分散型X線分析の測定は前記鉄さび層に含まれるさび上層、さび内層および地金層について、前記低合金耐食鋼の耐食性評価にもちいる各成分元素に関して線分析することを特徴とする。
【0013】
本発明の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、好ましくは、前記線分析結果を複数について平均して、各成分元素に関して平均的な線分析結果を得ると共に、当該線分析結果による濃度を各元素の母材組成(mass%)を基準として成分濃度を求めることを特徴とする。
【0014】
本発明の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、好ましくは、各成分元素における濃度の線分析結果から最大値(Imax; ピーク値, mass%)を求めることを特徴とする。
【0015】
本発明の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、好ましくは、
前記鉄さび層に含まれる化学組成として、CrとSiを対象とすると共に、
各さび化学組成元素における濃度の線分析結果の最大値の和
Imax(Cr)+Imax(Si)
の値(mass%)が高い程、耐食性が高いと判定することを特徴とする。
【0016】
本発明の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法において、好ましくは、
前記低合金耐食鋼における耐食性の高いさび層として、以下の式を満たすさび層の有無を判定することを特徴とする。
Imax(Cr)+Imax(Si)>3.8mass%
【発明の効果】
【0017】
本発明の低合金耐食鋼の耐食性を評価する方法によれば、鉄さびの耐食性を定量的に評価できるので、環境によりことなる鉄さびを耐食性の観点から評価可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、腐食試験サイクル条件を説明する模式図である。
図2図2は、腐食試験結果を説明するグラフである。
図3図3は、(1Cr)材のEDS結果により観察した写真とライン走査の積分強度図である。
図4図4は、(3Cr)材のEDS結果により観察した写真とライン走査の積分強度図である。
図5図5は、(5Cr)材のEDS結果により観察した写真とライン走査の積分強度図である。
図6図6は、(7Cr)材のEDS結果により観察した写真とライン走査の積分強度図である。
図7図7は、CR2(7Cr−2Si)のEDS結果により観察した写真である。
図8図8は、Cr量のライン走査を纏めた図である(1、3、5Cr材)。
図9図9は、Cr量のライン走査を纏めた図である(5、7Cr材)。
図10図10は、試料の腐食量と各パラメータ値の比較図である。
図11図11は、CR2材(7Cr−2Si)のCr量およびSi量のライン走査の強度図である。
図12図12は、試料の腐食量と各パラメータ値の比較図である
図13図13は、耐食性の高い鉄さびの範囲を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
低合金鋼の大気中における耐食性を促進評価する方法として、以下の腐食促進法を発案するに至った。図1は、考案した乾湿繰り返し腐食試験のサイクル条件である。試験片に0.5%NaClを40μl/cm滴下し、恒温恒湿室において、30℃、60%RH(Relative Humidity:相対湿度)で12時間乾燥させる。これを1サイクルとして繰り返えし、最大4週間(28日)まで行った。また、毎回の溶液滴下の直前に純水で試料表面を濯ぎ、塩分の蓄積を抑制した。
【0020】
試料は、普通炭素鋼(SM)とそれにクロム(Cr)成分を、1、3、5、7mass%増加した低合金鋼を使用した。さらに、CR(2)材は、7Cr−2Si鋼である。試験片形状は、6x5x0.2cmであり、脱脂後に端部をシールテープで被覆して、試験面を5x4=20cmとして試験に供した。図2に腐食試験結果を示す。試験後にさびの掻き取りとさび剥離を行って、重量減から腐食量を求めた。図より、炭素鋼の腐食量が最も大きく、Cr量が、1、3、5、7mass%と増加するに従って、腐食量が少なくなることが分かる。また、CR(2)材(7Cr−2Si鋼)の腐食量が最も少ない。本来、Crは、Feよりもイオン化傾向が高く、活性な金属である。このため、耐食性にCrが効果があるのは、地金の耐食性を向上させたのではなく、形成した鉄さびの特性に依存するといえる。従って、表面分析を用いたさび層の観察および解析が必要となる。
【0021】
図3図7に、1、3、5、7mass%Cr鋼の走査電子顕微鏡(SEM)結果を示す。さびの断面SEM(SEI)、鉄(Fe)およびクロム(Cr)のEDS(エネルギー分散X線分光器)結果を纏めている。素材のCr量が増加するに従って、地金(steel)に近い部分にCrが濃化している状況が示されている。
次に、さび層内におけるCrの分布を定量的に評価する方法について説明する。
【0022】
図3において、(1)さびと地金を横断するように線分析(ライン走査)を行った。そのような(1)の線分析結果を(2)の垂直方向に積分した。これにより、線分析の平均値が求められる。今回では、(2)の方向に256回の線分析の平均値が求められている。これにより、さび層内のCr濃度を強度(Count)として平均的に求めることが可能である。今回は、256本を積分したが、機器の制約がある場合では、10本程度でも可能である。
この場合、線分析機能がSEM機種にない場合は、線分析と垂直な方向に10点以上の複数の点の強度を平均して1点とし、同様な作業を繰り返して線分析方向に並べてスペクトルを取ることで、同様に平均的な線分析結果を得ることができる。いずれにしても各強度がデジタルであれば線分析の平均化は可能である。
【0023】
次にこの線分析結果の強度を組成比(mass%)に変換する。すでに、母材(base)の値は、それぞれ、1、3、5mass%と分かっているので、base強度と各強度から線上の全ての点について組成比(mass%)に変換できる。
【0024】
図8にCr量のライン走査の纏め(1、3、5Cr材)を示す。ここで、母材(base)の値を組成比(mass%)に一致させている。それぞれCr材の場合について、母材値(Ibase)、最大値(Imax)、最小値(Imin)をmass%単位で求めている。1Cr材では、母材値(Ibase)、最大値(Imax)、最小値(Imin)の差が小さい。3Cr材では、さび表層で最小値(Imin)を示し、内層で大きな最大値(Imax)を示している。さらに、5Cr材では、その傾向が顕著になっている。このように、本手法により、さび層内のCr濃度分布を定量的に示すことができる。
【0025】
1Cr材、3Cr材、5Cr材では、内層側のCr濃度が連続的で一様に高くなっていた。しかし、図6の7Cr材の場合では、内層側のCr濃度が高いが、濃淡の層状になっている。この様な場合の評価法を提案する。図9にCr量のライン走査の纏め(5、7Cr材)を示す。ここで、母材(base)の値を組成比(mass%)に一致させている。7Cr材では、2種類の最大値がある。これまでのように、単純に最大値(Imax)を求めたもの、そして、母材値(Ibase)より高い部分で平均値を求めた平均最大値(max(av))である。
【0026】
さび層のCr量の状態と耐食性との関係を検討するために、図10に試料の腐食量と各パラメータ値の比較を示す。腐食量は、図2における4週間目の値である。パラメータにおいて、Imaxは、腐食量(corrosion rate)と良い直線性を示している。これは、腐食量を説明するにあたり、Imaxでの整理が適していることを示す。また、(Imax/Ibase)、(Imax/Imin)は、Crの濃化の度合いを表す。(Imax/Ibase)は、腐食量が変化しても一定であり、耐食性の指標にならない。また、(Imax/Imin)は、腐食量が多い場合には、耐食性と相関があるが、腐食量が少ない場合には離れてくる。以上から、Cr鋼の耐食性と最も相関の高いパラメータは、さび層のCr量の最大値、Imaxであることが分かる。このことは、さび中で最も高いCr濃化層が腐食を抑えていることと理解できる。
【0027】
また、7Cr鋼では、最大値(Imax)、および、母材値(Ibase)より高い部分で平均値を求めた平均最大値(max(av))があるが、これを図10で比較する。まず、7Cr鋼の平均最大値(max(av))では、値が大きく下がり、腐食量との直線性が低い。一方、最大値(Imax)で評価すると、腐食量との直線性が高いことが分かる。この場合も、さび中で最も高いCr濃化層が腐食を抑えていることと理解できる。
【0028】
図11は、CR2材(7Cr-2Si)のCr量およびSi量のライン走査である。ここで、母材(base)の値を組成比(mass%)に一致させている。この場合、耐食性と相関があるのは、
Imax(Cr)、又は、Imax(Cr)+Imax(Si)であるかを図12で比較する。まず、Cr量だけの評価であるImax(Cr)では値が下がり、腐食量との直線性が低い。一方、Imax(Cr)+Imax(Si)で評価すると、腐食量との直線性が高いことが分かる。このことから、さび中でSiの濃化も腐食抑制に効果があることと理解できる。
【0029】
図13に耐食性の高い鉄さびの範囲を示す。ここでは、
Imax(Cr)+Imax(Si)>3.8mass% (1)
の領域において、腐食量は4週間で50mg/mgcm以下の値を示し、高い耐食性の鉄さびであるといえる。なお、ここでは耐食性の高い鉄さびのしきい値として、3.8mass%を示しているが、好ましくは6.0mass%でもよく、また一般的な好適範囲としては2.0mass%でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の酸化物の耐食性評価方法によれば、ある環境で形成した鉄さびの定量的な評価から低合金鋼の腐食状態を把握することが可能となって、適切な防食対策が可能となる。そこで、橋梁や港湾のような鋼構造の維持管理を適切かつ最小限にでき、大きな経済効果が期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13