【実施例】
【0019】
図1に示すように、移動物体検出装置10は、スティ21を一体的に有しているケース20と、このケース20に取付けられるカバー40とを備える。
【0020】
図2に示すように、移動物体検出装置10は、磁気検出素子11と、この磁気検出素子11に磁界を加える磁石12と、磁気検出素子11と電気的に接続された基板13と、磁石12及び基板13を配設し基板13と電気的に接続するリード端子14を備えたケース20と、磁気検出素子11と磁石12と基板13とを覆うカバー40とを備えている。
【0021】
磁気検出素子11は、ホールICなどからなり、カバー40に接するように配置され、被検出体である移動物体の移動を検出する。磁気検出素子11は、被検出体の移動に伴なう磁力の変化を電気信号に変換して、リード端子14を介して外部に出力する。
磁石12は、立方体形状の永久磁石からなり、基板13を貫通し、ケース20に接着剤にて固定される。
【0022】
基板13は、ガラスエポキシ樹脂などの硬質の絶縁材に、銅などの導電材料からなる配線パターンを設けたものである。この基板13は、磁気検出素子11及びリード端子14と電気的に接続している。
リード端子14は、3本のリードフレーム(
図1、符号15)からなり、ケース20に主要部が内蔵されている。リード端子14の一端部14aは、ケース20に設けたコネクタ部22から露出している。また、リード端子14の他端部14bは、半田によって基板13と電気的に接続されている。コネクタ部22は、磁気検出素子11からの出力を外部機器へ接続伝達する役割を果たす。
【0023】
ケース20は、円柱形状を呈する樹脂成形品であり、一端にコネクタ部22を有すると共に他端に磁石12、基板13及び磁気検出素子11を収納する容器である。
【0024】
図3に示すように、円柱形状を呈するケース20は、外周に第1周溝部23と、この第1周溝部23より小径の第2周溝部24を有している。この第2周溝部24は、第1周溝部23より先端側に設けられる。
第1周溝部23には第1Oリング25が取付けられ、第2周溝部24には第1Oリング25より小径の第2Oリング26が取付けられる。カバー40は、この第2Oリング26を潰すようにしてケース20に取付けられる。
【0025】
カバー40は、樹脂材料からなり、円板状の底部41と、この底部41の縁から延びる周壁部42とを備えるカップ若しくはキャップである。周壁部42は、内径側がくり抜かれた薄肉部43を先端側に備える。薄肉部43に、第2孔部47や第4孔部49等が設けられている。
好ましくは、薄肉部43の先端に、外へ開くテーパー面44を設ける。
【0026】
図4に示すように、カバー40の薄肉部43に、第1〜第4孔部46〜49が設けられると共に内周面に図面表裏方向へ延びる第1直線溝51と第2直線溝52が設けられている。
第1〜第4孔部46〜49は、カバー40の中心53に対して、左上に第1孔部46が設けられ、右上に第4孔部49が設けられ、左下に第3孔部48が設けられ、右下に第2孔部47が設けられている。
詳細には、カバー40の中心53に対して、第1孔部46と第2孔部47は点対称となるように配置され、第3孔部48と第4孔部49は点対称となるように配置される。
【0027】
次に、第1〜第4孔部46〜49の方向を説明する。
第1孔部46の中心線54に対して、第2〜第4孔部の中心線55〜57は、平行とされる。第1〜第4孔部46〜49の外縁部46a〜49aは互いに平行になる。なお、中心線54と中心線57は同軸とすることが好ましいが、非同軸であってもよい。同様に、中心線55と中心線56は同軸とすることが好ましいが、非同軸であってもよい。
好ましくは、第1直線溝51と第2直線溝52を通る線58に、中心線54〜57が平行になるようにする。
【0028】
このような構造のカバー40は、樹脂射出成形法で製造することができる。
すなわち、
図5に示すように、中心型61と、この中心型61を囲う第1側型62及び第2側型63からなる金型60を準備する。
【0029】
第1側型62には第1孔部46を形成するための第1角柱部64と第3孔部48を形成するための第3角柱部66とが設けられ、第1・第3角柱部64、66の先端が中心型61に嵌められる。
第2側型63には第2孔部47を形成するための第2角柱部65と第4孔部49を形成するための第4角柱部67とが設けられ、第2・第4角柱部65、67の先端が中心型61に嵌められる。
【0030】
加えて、第1側型62には、第1角柱部64と第3角柱部66との中間位置に、スプル68及びゲート69が設けられる。スプル68に射出機71のノズル72を当て、射出機71から可塑化し計量した溶融樹脂材料をキャビティ73へ射出する。
樹脂材料が凝固したら、第1側型62を左に、第2側型63を右に開く。次に、成形品を図面表裏方向へ移動して中心型61から外す。
【0031】
図5で述べたように、
図4に示すカバー40は、4個もの孔部46〜49を備えているにも拘わらず、射出成形で容易に製造することができ、樹脂化が達成できた。
【0032】
次に、ケース20について、説明する。
図6に示すように、ケース20は外周において、図左上に第1突起部27を有し、図右下に第2突起部28を有し、図左下に第3突起部29を有し、図右上に第4突起部30を有している。加えて、第1突起部27と第3突起部29との間、好ましくは中間に、第1凸条部31を備え、第2突起部28と第4突起部30との間に、第2凸条部32を備えている。
図から明らかなように、アンダーとなる部位が無いため、ケース20も容易に射出成形法で製造できる。
【0033】
図7に示すように、仮想線で示す基準円33から、第1〜第4突起部27〜30及び第1・第2凸条部31、32が突出している。なお、仮想線で示す基準円33は、円筒状のカバー40の内周円にほぼ相当する。
【0034】
第1突起部27の幅中心を通る第1放射線34Aと、第3突起部29の幅中心を通る第3放射線34Cとがなす第1中心角θ1は、約74°に設定する。
第2突起部28の幅中心を通る第2放射線34Bと、第4突起部30の幅中心を通る第4放射線34Dとがなす第2中心角θ2は、第1中心角θ1と別であってもよいが、この例では同じ約74°に設定した。
【0035】
θ1,θ2が共に90°未満であるため、第1放射線34Aと第3放射線34Cで区分される第1弧部35の弧長は、第1放射線34Aと第4放射線34Dで区分される第2弧部36の弧長より、短い。
基準円33が拡径するような力が、基準円33に加わると仮定すると、第1弧部35に比較して支点間距離が長い第2弧部36が大きく変形することが想定される。
【0036】
図8に示すように、第1突起部27は、想像線で示す第1孔部46の中心線54に平行に延びる第1外辺27aと、この第1外辺27aより第3突起部29に近い部位に設けられる第1内辺27bと、これらの第1外辺27aと第1内辺27bの先端同士を結ぶ第1曲線部27cとからなる。
【0037】
そして、第1外辺27aと第1曲線部27cとが交差する角部27dを構成する半径R1は、小さく設定し、第1曲線部27cと第1内辺27bとが交差する角部27eを構成する半径R2は、R1より大きく設定する。すると、第1外辺27aは第1孔部46の外縁部46aに大きく掛かる。一方、第1内辺27bは第1孔部46の内縁部46bに掛からないか、掛かったとしても掛かりは小さい。
【0038】
図7に示す第2〜第4突起部28〜30についても同様であって、第2〜第4外辺28a〜30a、第2〜第4内辺28b〜30b及び第2〜第4曲線部28c〜30cが提起される。
すなわち、第1外辺27aと第3外辺29aは互い遠い部位に設けられ、同様に、第2外辺28aと第4外辺30aは互い遠い部位に設けられている。
【0039】
図9(a)に示すように、ケース20に、カバー40を近づける。このとき、
図6に示す第1・第2凸条部31、32に、
図4に示す第1・第2直線溝51、52を各々合わせるように、カバー40の方位を調整する。
図9(b)に示すように、カバー40側のテーパー面44を第1突起部27と第2突起部28に合わせる。そして、カバー40を強く嵌合方向へ付勢する。
【0040】
すると、
図9(c)に示すように、薄肉部43が第1突起部27と第2突起部28に乗り上がる。
図9(d)にて、円筒状の薄肉部43は、第1〜第4突起部27〜30で強制的に広げられるが、樹脂製の薄肉部43は殆ど延びない。すると、円筒状の薄肉部43は、第1〜第4突起部27〜30を頂点とした角筒状に変形しようとする。
【0041】
図5で説明したゲート69が第1突起部27と第3突起部29との間に位置するため、
図9(d)に示すように、ウェルドライン74は、第2突起部28と第4突起部30との間に出現する。
第2突起部28と第4突起部30との間に、直線溝としての第2直線溝52と、凸状部としての第2凸条部32からなる当接部76が設けられているため、第2突起部28と第4突起部30の間では、薄肉部43は殆ど変形しない。
【0042】
一方、第1突起部27と第4突起部30の間は、第1当接部75に相当する機構が無いため、薄肉部43はδ1だけ、変形する。加えて、
図7で説明したように、第2弧部36が長いため、変形量δ1が大きくなる。
そのため、第1突起部27と第4突起部30の間にて薄肉部43にウェルドラインがあれば、割れが起こる心配がある。しかし、第1突起部27と第4突起部30の間にはウェルドラインが無い。
【0043】
同様に、第2突起部28と第3突起部29の間は、第2当接部76に相当する機構が無いため、薄肉部43はδ2だけ、変形する。このδ2は大きい。
そのため、第2突起部28と第3突起部29の間にて薄肉部43にウェルドラインがあれば、割れが起こる心配がある。しかし、上述したように第2突起部28と第3突起部29の間にはウェルドラインが無い。
【0044】
本発明は、変形の大きな部位にウェルドラインを出現させず、変形のない部位にウェルドラインを出現させることで、ウェルドラインに起因する亀裂の発生を防止するようにした。
図9(c)から、薄肉部43を更に前進させる。すると、第1突起部27に第1孔部46が合致し、第2突起部28に第2孔部47が合致する。
【0045】
図10(a)に示すように、第1突起部27に第1孔部46が嵌り、第2突起部28に第2孔部47が嵌り、ケース20へのカバー40の取付けが完了する。
【0046】
図10(b)に示すように、第1孔部46の外縁部46aに第1外辺27aが掛かり、第3孔部48の外縁部48aに第3外辺29aが掛かっている。同様に、第2孔部47の外縁部47aに第2外辺28aが掛かり、第4孔部49の外縁部49aに第4外辺30aが掛かっている。
第1〜第4孔部46〜49に対して、第1〜第4突起部27〜30は、遊びが無い状態にあるため、ケース20に対してカバー40が、ガタつく心配はない。
【0047】
尚、
図9(d)に基づいて説明した当接部76は、凸状部32と直線溝52で構成したが、当接部76は、単に当接するケース20側の面と、カバー40側の面であってもよく、形態は任意である。