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特開2016-218639出力回路、それを用いたリニアレギュレータ、オーディオアンプ、半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-218639(P2016-218639A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】出力回路、それを用いたリニアレギュレータ、オーディオアンプ、半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20161125BHJP
   H02H 9/02 20060101ALI20161125BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   G05F1/56 310S
   G05F1/56 310C
   H02H9/02 E
   H02J1/00 309R
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-101297(P2015-101297)
(22)【出願日】2015年5月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 克幸
【テーマコード(参考)】
5G013
5G065
5G165
5H430
【Fターム(参考)】
5G013AA02
5G013BA01
5G013CA10
5G065BA04
5G065EA01
5G065HA08
5G065JA01
5G065LA02
5G065MA09
5G065NA01
5G065NA02
5G065NA05
5G165BB04
5G165BB05
5G165EA01
5G165HA08
5G165JA01
5G165LA02
5G165MA09
5G165NA01
5G165NA02
5G165NA05
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB12
5H430EE04
5H430EE17
5H430HH03
(57)【要約】
【課題】突入電流や地絡電流などの急峻な電流上昇を抑制可能な出力回路を提供する。
【解決手段】出力トランジスタ102は、ドレインに出力ライン206を介して負荷が接続されるPチャネルMOSFETである。第1抵抗R1は、入力ライン204と出力トランジスタ102のソースの間に設けられる。第1トランジスタM1は、入力ライン204と出力トランジスタ102のゲートの間に設けられ、そのゲートに出力トランジスタ102と第1抵抗R1の接続ノードN1の電圧VN1が入力されたPチャネルMOSFETである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレインに出力ラインを介して負荷が接続されるPチャネルMOSFETである出力トランジスタと、
入力ラインと前記出力トランジスタのソースの間に設けられた第1抵抗と、
前記入力ラインと前記出力トランジスタのゲートの間に設けられ、そのゲートに前記出力トランジスタと前記第1抵抗の接続ノードの電圧が入力されたPチャネルMOSFETである第1トランジスタと、
を備えることを特徴とする出力回路。
【請求項2】
前記入力ラインと前記出力トランジスタのゲートの間に、前記第1トランジスタと直列に設けられた第2抵抗をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の出力回路。
【請求項3】
前記第1抵抗は、配線抵抗で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の出力回路。
【請求項4】
前記入力ラインと前記出力トランジスタのゲートの間に、前記第1トランジスタと直列に設けられる第2トランジスタをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の出力回路。
【請求項5】
前記出力トランジスタに流れる電流が第1しきい値電流を超えるとアサートされる過電流検出信号を生成する過電流検出回路と、
前記過電流検出信号がアサートされると、前記出力トランジスタのゲート電圧を上昇させる過電流抑制回路と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の出力回路。
【請求項6】
前記入力ラインと前記出力トランジスタのゲートの間に、前記第1トランジスタと直列に設けられ、前記過電流検出信号がアサートされるとオン状態となる第2トランジスタをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の出力回路。
【請求項7】
前記出力トランジスタに流れる電流が第1しきい値電流を超えるとアサートされる過電流検出信号を生成する過電流検出回路と、
前記入力ラインと前記出力トランジスタのゲートの間に、前記第1トランジスタと直列に設けられ、前記過電流検出信号がアサートされるとオン状態となる第2トランジスタと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の出力回路。
【請求項8】
前記第1しきい値電流は、前記第1トランジスタがターンオンし始める第2しきい値電流より小さいことを特徴とする請求項6または7に記載の出力回路。
【請求項9】
前記第1しきい値電流は、前記第1トランジスタがターンオンし始める第2しきい値電流より大きいことを特徴とする請求項5に記載の出力回路。
【請求項10】
前記過電流検出回路は、
前記出力トランジスタとゲート、ソースが共通に接続される第3トランジスタと、
前記第3トランジスタのドレインと接地ラインの間に設けられる第3抵抗と、
前記第3抵抗の電圧降下を、前記第1しきい値電流に対応する第1しきい値電圧と比較し、前記過電流検出信号を生成するコンパレータと、
を含むことを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の出力回路。
【請求項11】
前記第1しきい値電圧は、所定電圧であることを特徴とする請求項10に記載の出力回路。
【請求項12】
前記第1しきい値電圧は、前記出力ラインの電圧に応じた電圧であることを特徴とする請求項10に記載の出力回路。
【請求項13】
前記過電流抑制回路は、
前記過電流検出信号がゲート/ベースに入力され、ソース/エミッタが接地される第4トランジスタと、
前記第4トランジスタに流れる電流を折り返して前記出力トランジスタのゲートに供給するカレントミラー回路と、
を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の出力回路。
【請求項14】
前記過電流抑制回路は、前記カレントミラー回路と前記第4トランジスタの間に設けられた第4抵抗をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の出力回路。
【請求項15】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の出力回路。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の出力回路と、
前記出力回路の前記出力ラインの電圧に応じたフィードバック電圧が基準電圧に近づくように、前記出力回路の前記出力トランジスタのゲート電圧を調節するエラーアンプと、
を備えることを特徴とするリニアレギュレータ。
【請求項17】
請求項1から15のいずれかに記載の出力回路を備えることを特徴とするオーディオアンプ。
【請求項18】
請求項1から15のいずれかに記載の出力回路を備えることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力回路に関し、特にその過電流保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷に大電流を供給する出力回路には、パワートランジスタである出力トランジスタに流れる電流(出力電流)を監視し、出力電流がしきい値を超えると、出力トランジスタをオフして、あるいはゲートソース間電圧を低下させてチャネルの抵抗を増加させ、電流を制限する過電流保護機能が設けられる。
【0003】
図1は、本発明者が検討した過電流保護機能を備える出力回路100rの回路図である。出力回路100rは、出力トランジスタ102に加えて、過電流検出回路110r、過電流抑制回路120rを備える。出力トランジスタ102のゲート電圧Vは主たる制御回路202によって制御される。
【0004】
過電流検出回路110は、出力トランジスタ102に流れる出力電流IOUTを、所定のしきい値電流ITH1と比較し、IOUT>ITH1の過電流状態を検出すると、過電流検出信号S1をアサートする。たとえば過電流検出回路110は、出力トランジスタ102とゲート、ソースが共通に接続されるトランジスタ112を含む。トランジスタ112には、出力電流IOUTの電流に比例した検出電流Iが流れる。センス抵抗Rは、検出電流Iの経路上に設けられ、出力電流IOUTに比例した電圧降下(検出電圧)Vを発生する。コンパレータ114は、検出電圧Vをしきい値電流ITH1に対応するしきい値電圧VTH1と比較し、V>VTH1となると、言い換えればIOUT>ITH1となると、ハイレベルの過電流検出信号S1を出力する。
【0005】
過電流抑制回路120rは、過電流検出信号S1がアサートされると、出力トランジスタ102のゲートに電流を供給してゲート電圧Vをプルアップし、出力トランジスタ102のチャネルの抵抗を増大させる。過電流抑制回路120は、過電流検出信号S1がアサートされるとオンとなるスイッチ122と、スイッチ122がオンすると、出力トランジスタ102のゲートをプルアップするカレントミラー回路124と、を備える。
【0006】
図1の出力回路100rによれば、IOUT>ITH1の過電流状態において、出力トランジスタ102のゲート電圧Vを上昇させ、そのチャネルの抵抗を高めて、出力電流IOUTを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−315852号公報
【特許文献2】特開2002−304225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、図1の出力回路100rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。コンパレータ114は有限の応答速度を有し、従ってある検出遅延が生ずる。また過電流抑制回路120が、過電流検出信号S1のアサートを検知してから、出力トランジスタ102のゲート電圧Vが上昇するまでにも遅延が生ずる。
【0009】
ここで、回路の起動直後には、出力トランジスタ102から突入電流が流れる場合がある。あるいは、OUT端子がショート(たとえば地絡)すると、出力電流IOUTが増大する。これらの状況では、出力電流IOUTは急峻に変化することから、図1の過電流検出回路110および過電流抑制回路120による過電流保護では、その応答遅れにより、過電流が流れてしまうという問題がある。
【0010】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、突入電流や地絡電流などの急峻な電流上昇を抑制可能な出力回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は、出力回路に関する。出力回路は、ドレインに出力ラインを介して負荷が接続されるPチャネルMOSFETである出力トランジスタと、入力ラインと出力トランジスタのソースの間に設けられた第1抵抗と、入力ラインと出力トランジスタのゲートの間に設けられ、そのゲートに出力トランジスタと第1抵抗の接続ノードの電圧が入力されたPチャネルMOSFETである第1トランジスタと、を備える。
【0012】
出力トランジスタに流れる出力電流が増大すると、第1抵抗の電圧降下が増大し、これにより第1トランジスタのチャネルの抵抗が減少する。その結果、出力トランジスタのゲート電圧が上昇し、ゲートソース間電圧が小さくなってチャネルの抵抗が増大し、出力電流が抑制される。つまり第1トランジスタが、過電流の検出機能と過電流の抑制機能を併せ持つため、それらの機能が個別の回路に割り当てられる回路に比べて応答性を高めることができ、突入電流などの急峻な電流上昇を抑制できる。
また、第1抵抗の抵抗値がばらつきにより増大すると、それにより出力電流が小さくなるが、このとき第1抵抗の電圧降下が減少するため、保護の程度(電流抑制量)が弱まる。反対に第1抵抗の抵抗値がばらつきにより減少すると、それにより出力電流が大きくなるが、第1抵抗の電圧降下が増大するため、保護の程度が強くなる。したがって第1抵抗の抵抗値の変動に対して、高い安定度(ロバスト性)を実現できる。
【0013】
ある態様において出力回路は、入力ラインと出力トランジスタのゲートの間に、第1トランジスタと直列に設けられた第2抵抗をさらに備えてもよい。
第2抵抗の抵抗値に応じて、電流の抑制量を調節できる。
【0014】
ある態様において第1抵抗は、配線抵抗で構成されてもよい。
上述のように第1抵抗のばらつきに対する安定性が高いため、配線抵抗を用いることができ、微小抵抗の形成が可能となる。
【0015】
ある態様の出力回路は、入力ラインと前記出力トランジスタのゲートの間に、第1トランジスタと直列に設けられる第2トランジスタをさらに備えてもよい。
この場合、第2トランジスタのオン/オフに応じて、第1トランジスタによる過電流の抑制を、有効化/無効化できる。
【0016】
ある態様において出力回路は、出力トランジスタに流れる電流が第1しきい値電流を超えるとアサートされる過電流検出信号を生成する過電流検出回路と、過電流検出信号がアサートされると、出力トランジスタのゲート電圧を上昇させる過電流抑制回路と、をさらに備えてもよい。
第1トランジスタによる過電流の抑制が不十分な場合には、過電流検出回路、過電流抑制回路を追加することで、確実な保護が実現できる。
【0017】
ある態様において出力回路は、入力ラインと出力トランジスタのゲートの間に、第1トランジスタと直列に設けられ、過電流検出信号がアサートされるとオン状態となる第2トランジスタをさらに備えてもよい。
これにより、通常の過電流保護を過電流抑制回路により行いつつ、突入電流や出力ラインのショート(特に地絡)時において出力電流が第1しきい値電流を超える状態では第2トランジスタによる抑制を行うことができる。
【0018】
ある態様において出力回路は、出力トランジスタに流れる電流が第1しきい値電流を超えるとアサートされる過電流検出信号を生成する過電流検出回路と、入力ラインと出力トランジスタのゲートの間に、第1トランジスタと直列に設けられ、過電流検出信号がアサートされるとオン状態となる第2トランジスタと、をさらに備えてもよい。
これにより、第1トランジスタによる抑制を、出力電流が第1しきい値電流より高い領域に制限することができる。
【0019】
第1しきい値電流は、第1トランジスタがターンオンし始める第2しきい値電流より小さくてもよい。これにより、通常の過電流状態を過電流抑制回路により抑制し、それより急峻かつ大電流を第1トランジスタにより抑制することができる。
【0020】
第1しきい値電流は、第1トランジスタがターンオンし始める第2しきい値電流より大きくてもよい。
【0021】
過電流検出回路は、出力トランジスタとゲート、ソースが共通に接続される第3トランジスタと、第3トランジスタのドレインと接地ラインの間に設けられる第3抵抗と、第3抵抗の電圧降下を、第1しきい値電流に対応する第1しきい値電圧と比較し、過電流検出信号を生成するコンパレータと、を含んでもよい。
【0022】
ある態様において第1しきい値電圧は、所定電圧であってもよい。第1しきい値電圧は、入力ラインの電圧を分圧して生成されてもよい。
【0023】
ある態様において第1しきい値電圧は、出力ラインの出力電圧に応じた電圧であってもよい。第1しきい値電圧は、出力電圧を分圧して生成されてもよい。これにより、フの字特性や垂下特性、逆L字特性を実現できる。
【0024】
過電流抑制回路は、過電流検出信号がゲート/ベースに入力され、ソース/エミッタが接地される第4トランジスタと、第4トランジスタに流れる電流を折り返して出力トランジスタのゲートに供給するカレントミラー回路と、を含んでもよい。
【0025】
過電流抑制回路は、カレントミラー回路と第4トランジスタの間に設けられた第4抵抗をさらに含んでもよい。
第4抵抗の抵抗値に応じて、過電流抑制回路による電流の抑制量を調節できる。
【0026】
出力回路はひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0027】
本発明の別の態様は、リニアレギュレータに関する。リニアレギュレータは、上述のいずれかの出力回路と、出力回路の出力ラインの電圧に応じたフィードバック電圧が基準電圧に近づくように、出力回路の出力トランジスタのゲート電圧を調節するエラーアンプと、を備えてもよい。
【0028】
本発明の別の態様は、オーディオアンプ回路に関する。このオーディオアンプ回路は、上述のいずれかの出力回路を備えてもよい。
【0029】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0030】
本発明のある態様によれば、突入電流や地絡電流などの急峻な電流上昇を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明者が検討した過電流保護機能を備える出力回路の回路図である。
図2】第1の実施の形態に係る出力回路を備える半導体装置の回路図である。
図3図2の半導体装置の起動時の動作波形図である。
図4】比較技術に係る半導体装置の回路図である。
図5】第2の実施の形態に係る出力回路を備える半導体装置の回路図である。
図6】半導体装置を備えるリニアレギュレータの回路図である。
図7】半導体装置を備えるオーディオ出力回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0033】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0034】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態に係る出力回路100を備える半導体装置200の回路図である。半導体装置200は、半導体基板に一体集積化された機能ICである。入力端子(IN)には、外部から直流電圧VINが供給される。半導体装置200は、生成した出力電圧VOUTを、出力端子(OUT)に接続される負荷(不図示)に供給する。
【0035】
半導体装置200は、出力回路100および制御回路202を備える。出力回路100の出力トランジスタ102は、入力ライン204および出力ライン206の間に設けられる。制御回路202は、所望の出力電圧VOUTが得られるように、出力トランジスタ102のゲート電圧Vを制御する。
【0036】
出力回路100は、出力トランジスタ102に加えて、第1抵抗R1、第1トランジスタM1および第2抵抗R2を備える。出力トランジスタ102はPチャネルMOSFETであり、そのドレインには、出力ライン206を介して負荷(不図示)が接続される。第1抵抗R1は、入力ライン204と出力トランジスタ102のソースの間に設けられる。第1抵抗R1の抵抗値をrと記す。第1トランジスタM1はPチャネルMOSFETであり、入力ライン204と出力トランジスタ102のゲートの間に設けられる。第1トランジスタM1のゲートには、出力トランジスタ102と第1抵抗R1の接続ノードN1の電圧VN1が入力される。
【0037】
第2抵抗R2は、入力ライン204と出力トランジスタ102のゲートの間に、第1トランジスタM1と直列に設けられる。
【0038】
以上が出力回路100を備える半導体装置200の構成である。続いてその動作を説明する。
【0039】
図3は、図2の半導体装置200の起動時の動作波形図である。本明細書における波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0040】
図3には過電流の抑制を行わないときの動作が破線で示され、突入電流の抑制動作が実線で示される。初めに破線を参照して、突入電流の発生を説明する。
【0041】
OUT端子には、大容量のキャパシタが接続される。時刻t0に、IN端子に入力電圧VINが供給され、半導体装置200が起動し、OUT端子の出力電圧VOUTが所望の電圧レベルとなるように、ゲート電圧Vが制御される。起動直後、OUT端子に接続されるキャパシタの電荷はゼロであり、キャパシタを充電するために大電流の出力電流IOUTが流れる。これが突入電流である。
【0042】
続いて、実線を参照し、突入電流の抑制動作を説明する。
時刻t0に半導体装置200が起動し、出力電流IOUTが急峻に増大する。出力電流IOUTが増大すると、第1抵抗R1の電圧降下r×IOUTが大きくなり、したがって第1トランジスタM1のゲートソース間電圧VGS1が増大する。第1抵抗R1の電圧降下r×IOUTが、第1トランジスタM1のゲートソース間しきい値電圧VGS(TH)を超えると、第1トランジスタM1がターンオンし、さらに出力電流IOUTが増加すると、チャネルの抵抗値が低下していく。
【0043】
つまり半導体装置200における過電流保護のしきい値電流ITH2は、以下の式(1)で与えられる。
TH2=VGS(TH)/r …(1)
【0044】
チャネルの抵抗値の減少にともない、第2抵抗R2および第1トランジスタM1を介して、出力トランジスタ102のゲートに電流が供給され、ゲート電圧Vが一点鎖線のそれよりも高くなる。その結果、出力トランジスタ102のゲートソース間電圧VGSが小さくなり、出力電流IOUTの上昇が抑制される。
【0045】
通常動作状態において、OUT端子が地絡した場合にも、同様の動作により過電流が防止される。
【0046】
以上が半導体装置200の動作である。出力回路100では、第1トランジスタM1が、過電流の検出機能と過電流の抑制機能を併せ持つため、それらの機能が個別の回路に割り当てられる図1の回路に比べて応答性を高めることができ、起動時の突入電流や出力ショート時の地絡電流など、急峻な電流上昇を抑制できる。
【0047】
また、第1抵抗R1の抵抗値rがばらつきにより増大すると、それにより出力電流IOUTが小さくなるが、このとき第1抵抗R1の電圧降下r×IOUTが減少するため、第1トランジスタM1のチャネルの抵抗が大きくなり、ゲート電圧Vの上昇幅が小さなくなり保護の程度(電流抑制量)が弱まる。反対に第1抵抗R1の抵抗値rがばらつきにより減少すると、それにより出力電流IOUTが大きくなるが、第1抵抗R1の電圧降下r×IOUTが増大するため、第1トランジスタM1のチャネルの抵抗が小さくなり、ゲート電圧Vの上昇幅が大きくなり、保護の程度が強くなる。したがって第1抵抗R1の抵抗値rのばらつき、変動に対して、安定度(ロバスト性)が高くなっている。
【0048】
第1抵抗R1の抵抗値rのばらつきに対するロバスト性については、図4の比較技術との対比によって明確となる。図4は、比較技術に係る半導体装置200sの回路図である。図4は、比較技術に係る過電流検出回路110sを備える半導体装置200sの回路図である。過電流検出回路110sは、抵抗R11、電流源CS1、コンパレータ114を備える。電流源CS1は定電流IC1を生成し、抵抗R11に電圧降下R×IC1を発生させる。Rは抵抗R11の抵抗値である。コンパレータ114は、抵抗R11と電流源CS1の接続ノードN2の電圧VN2を、接続ノードN1の電圧VN1と比較し、VN1<VN2のとき過電流検出信号S1をアサートする。
接続ノードN1、N2それぞれの電圧VN1、VN2は、式(2)、(3)で与えられる。
N1=VIN−IOUT×r …(2)
N2=VIN−IC1×R …(3)
したがって式(4)のしきい値電流ITH1を基準として、過電流抑制回路120による過電流抑制が行われる。
TH1=IC1×R/r …(4)
【0049】
この比較技術において、第1抵抗R1の抵抗値がばらつくと、過電流抑制回路120による保護の程度は一定のまま、しきい値電流ITH1が変動し、したがって、第1抵抗R1の抵抗値rのばらつきや変動が回路動作に大きく影響を及ぼす。これに対して実施の形態に係る出力回路100では、第1抵抗R1の抵抗値に応じて、式(1)のしきい値電流ITH2が変動するが、それにともなって過電流抑制の程度も変化するため、ロバスト性を高めることができている。
【0050】
上述のように、第1抵抗R1のばらつきに対するロバスト性が高いため、第1抵抗R1を、配線抵抗で構成することができる。配線抵抗は、アルミ配線、銅配線、ボンディングワイヤ、ビアホール(スルーホール)などを利用して形成できる。第1抵抗R1は、出力電流IOUTとの積により熱損失を発生させるところ、配線抵抗とすることで第1抵抗R1の抵抗値を数百mΩ〜数Ωと微小値にすることができ、回路の損失を低減できる。
【0051】
入力ライン204と出力トランジスタ102のゲートの間に、第1トランジスタM1と直列に設けられた第2抵抗R2を設けることで、その抵抗値に応じて、電流の抑制量を調節できる。すなわち第2抵抗R2の抵抗値を高くすれば、過電流状態において、第2抵抗R2および第1トランジスタM1を介して出力トランジスタ102のゲートに供給される電流量を減らすことができ、したがって抑制効果は小さくなる。反対に第2抵抗R2の抵抗値を低くすれば、過電流状態において、第2抵抗R2および第1トランジスタM1を介して出力トランジスタ102のゲートに供給される電流量を増やすことができ、したがって抑制効果を高めることができる。
【0052】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態に係る出力回路100aを備える半導体装置200aの回路図である。半導体装置200aは、出力トランジスタ102、図示しない制御回路に加えて、過電流検出抑制回路130、過電流検出回路110、過電流抑制回路120を備える。
【0053】
過電流検出抑制回路130は、第1抵抗R1、第1トランジスタM1、第2抵抗R2を含む。その構成、動作は、第1の実施の形態で説明した通りである。過電流検出抑制回路130は、第1トランジスタM1と直列に設けられた第2トランジスタM2をさらに含む。第2トランジスタM2は、過電流検出抑制回路130のオン(イネーブル)、オフ(ディセーブル)を切り替えるために設けられる。第2トランジスタM2がオフの状態では、接続ノードN1の電圧VN1にかかわらず、過電流検出抑制回路130による抑制動作は発生しない。
【0054】
過電流検出回路110は、出力トランジスタ102に流れる出力電流IOUTが第1しきい値電流ITH1を超えると、過電流検出信号S1をアサート(たとえばハイレベル)する。過電流抑制回路120は、過電流検出信号S1がアサートされると、出力トランジスタ102のゲート電圧Vを上昇させる。
【0055】
過電流検出回路110における第1しきい値電流ITH1は、第1トランジスタM1がターンオンし始める第2しきい値電流ITH2より小さく設定される。
【0056】
第1トランジスタM1による過電流の抑制が不十分な場合に、過電流検出回路110、過電流抑制回路120を追加することで、確実な保護が実現できる。特に、図2の出力回路100においては、第1抵抗R1の抵抗値rが、出力トランジスタ102の1/gm(gmはトランスコンダクタンス)と出力負荷抵抗RLOADの合成抵抗値より小さい場合に、電流抑制の効果が薄れる。このような図5の構成は、アプリケーションに好適である。
【0057】
第2トランジスタM2のゲートには、過電流検出信号S1の反転信号を入力してもよい。これにより、過電流検出信号S1がアサートされる状態において、第2トランジスタM2がオンとなり、過電流検出抑制回路130による抑制動作が有効となる。
【0058】
つまり通常の過電流保護を過電流抑制回路120により行いつつ、突入電流や出力ラインのショート(特に地絡)時において出力電流IOUTが第1しきい値電流ITH1より大きな第2しきい値電流ITH2を超える状態では第1トランジスタM1による抑制を行うことができる。
【0059】
過電流検出回路110は、第3トランジスタM3、第3抵抗R3、コンパレータ114および抵抗R21、R22を含む。第3トランジスタM3は出力トランジスタ102と同型のPチャネルMOSFETであり、出力トランジスタ102とゲート、ソースが共通に接続される。第3抵抗R3は、第3トランジスタM3のドレインと接地ライン208の間に設けられる。
【0060】
コンパレータ114は、第3抵抗R3の電圧降下を、第1しきい値電流ITH1に対応する第1しきい値電圧VTH1と比較し、過電流検出信号S1を生成する。抵抗R21、R22は、入力ライン204の電圧VINを分圧し、しきい値電圧VTH1を生成する。
【0061】
過電流抑制回路120は、第4トランジスタM4、第4抵抗R4、カレントミラー回路124を含む。
【0062】
第4トランジスタM4はNチャネルMOSFET(あるいはNPN型バイポーラトランジスタ)であり、過電流検出信号S1がゲート/ベースに入力され、ソース/エミッタが接地される。カレントミラー回路124は、第4トランジスタM4に流れる電流を折り返して出力トランジスタ102のゲートに供給する。第4抵抗R4は、過電流抑制回路120の入力と第4トランジスタM4の間に設けられる。
【0063】
過電流検出信号S1がアサートされると、第4トランジスタM4がオンする。カレントミラー回路124はこのときに第4抵抗R4および第4トランジスタM4に流れる電流に比例した電流を、出力トランジスタ102のゲートに供給し、出力トランジスタ102のゲート電圧Vをプルアップする。プルアップ量は、第4抵抗R4の抵抗値に応じて設定することができる。
【0064】
続いて、半導体装置200の用途を説明する。
1. リニアレギュレータ
図6は、半導体装置200bを備えるリニアレギュレータ300の回路図である。OUT端子には出力キャパシタC31が接続される。リニアレギュレータの出力電圧VOUTは、抵抗R31,R32によって分圧され、フィードバック(FB)端子に入力される。制御回路202bは、エラーアンプ210を含む。エラーアンプ210は、基準電圧VREFと出力電圧VOUTに応じたフィードバック電圧VFBを受け、それらの誤差がゼロに近づくように、出力トランジスタ102のゲート電圧Vを調節する。
【0065】
なお、出力回路100の構成は、図2と同様である。あるいは図5の出力回路100aと組み合わせてもよい。図6のリニアレギュレータ300によれば、起動時の出力キャパシタC31への突入電流を抑制し、および/または、OUT端子の地絡時の過電流を抑制できる。
【0066】
2. オーディオアンプ回路
図7は、半導体装置200cを備えるオーディオ出力回路の回路図である。半導体装置200cは、オーディオアンプ回路であり、外付けのフィルタ402およびスピーカやヘッドホンなどの電気音響変換素子404とともにオーディオ出力回路400を形成する。出力回路100cは、オーディオアンプ回路のプッシュプル形式の出力段である。出力回路100cは、図2の出力回路100あるいは図5の出力回路100aに加えて、ローサイド側の出力トランジスタ104を備える。制御回路202は、アナログオーディオ信号S2を受け、OUT端子に、アナログオーディオ信号S2に応じた電圧VOUTが発生するように、出力トランジスタ102および104それぞれのゲート電圧VGHVGLを制御する。オーディオアンプ回路は、A級やAB級のリニアアンプであってもよいし、D級アンプ(スイッチングアンプ)であってもよい。
【0067】
図7のオーディオアンプ回路200cによれば、起動時のフィルタのキャパシタC41への突入電流を抑制し、および/または、OUT端子の地絡時の過電流を抑制できる。
【0068】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0069】
(第1変形例)
図5のように、過電流検出抑制回路130と過電流検出回路110を併用する構成において、第1しきい値電流ITH1は、第1トランジスタM1がターンオンし始める第2しきい値電流ITH2より大きくてもよい。この場合、第2トランジスタM2は省略してもよい。
【0070】
(第2変形例)
図5において、第1しきい値電圧VTH1は、出力ライン206の電圧VOUTに応じた可変電圧としてよく、たとえば出力電圧VOUTを分圧して生成してもよい。これにより、フの字特性や垂下特性の過電流保護を実現できる。
【0071】
(第3変形例)
半導体装置200の用途は、リニアレギュレータやオーディオアンプには限定されない。たとえば半導体装置200は、モータドライバや、スイッチングレギュレータの制御回路など、パワートランジスタを出力段に有するさまざまな用途に適用可能である。
【0072】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0073】
100…出力回路、102,104…出力トランジスタ、M1…第1トランジスタ、M2…第2トランジスタ、M3…第3トランジスタ、M4…第4トランジスタ、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、R3…第3抵抗、R4…第4抵抗、110…過電流検出回路、112…トランジスタ、114…コンパレータ、R…センス抵抗、120…過電流抑制回路、122…スイッチ、124…カレントミラー回路、130…過電流検出抑制回路、S1…過電流検出信号、200…半導体装置、202…制御回路、204…入力ライン、206…出力ライン、208…接地ライン、210…エラーアンプ、300…リニアレギュレータ、400…オーディオ出力回路、402…フィルタ、404…電気音響変換素子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7