【解決手段】金属板を板金加工することにより一体的に形成され、エレメント部10とグランド部20を備える。グランド部20は、エレメント部10に一体的に連なり、組み付け相手3のグランド板31に機械的に接触し及び電気的に導通するおもて面を有するグランド板21と、グランド板21とともに組み付け相手3を弾性力により挟み込む挟持部としてのばね片23,23と、を備える。グランド板21には、組み付け相手3からの抜け止め手段である抜け止め突起22,22が設けられ、この抜け止め突起22,22は、組み付け相手3の抜け止め孔35,35に嵌り込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載用アンテナとしては、車両のエンジンの駆動及び走行に伴う振動及び衝撃が加わっても、組み付け状態が安定していることが必要である。板金アンテナはそのグランド部、組み付け相手に設けられるグランド部と接触するが、振動及び衝撃が加わっても、機械的な接触及び電気的な導通が安定して維持されることが必要である。
そこで本発明は、組み付けの作業が簡便であるとともに、振動及び衝撃が加わっても互いのグランド部が接触状態を確保できるアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明のアンテナは、金属板を板金加工することにより一体的に形成され、エレメント部と、エレメント部に一体的に連なり、組み付け相手のグランド面に機械的に接触し及び電気的に導通するおもて面を有するグランド部と、グランド部とともに組み付け相手を弾性力により挟み込む挟持部と、を備え、このグランド部には、組み付け相手からの抜け止め手段が設けられていることを特徴とする。
本発明のアンテナは、グランド部とともに組み付け相手を挟み込む挟持部を備えており、グランド部と挟持部がクリップのように機能するので、組み付け相手、例えば筐体に組み付ける作業が簡便である。また、このグランド部には、筐体からの抜け止め手段が設けられているので、組み付け後に振動及び衝撃を受けたとしても、アンテナが組み付け相手から抜け出るのを防止することができる。
【0007】
本発明のアンテナにおいて、グランド部と挟持部を連結する連結部を備え、この連結部が、組み付け相手との間に案内手段を備えることが好ましい。
案内手段を設けることにより、組み付け相手に対して適切な位置にアンテナを容易に導くことができるので、組み付け作業がより簡便になる。
【0008】
本発明のアンテナにおいて、グランド部が、幅方向の中央に配置され、挟持部が、グランド部の幅方向の両側に配置される一対のばね片からなることが好ましい。
これにより、組み付け相手に対してグランド部の接触状態を安定して維持することができる。
【0009】
本発明のアンテナにおいて、抜け止め手段は、グランド部に、幅方向に間隔をあけて設けられる一対の抜け止め突起からなることが好ましい。
これにより、組み付け相手からの抜け止め状態を安定して維持することができる。
【0010】
本発明のアンテナにおいて、一対のばね片のそれぞれは、頂点を有するように湾曲し、この頂点が組み付け相手に接触することで、グランド部とともに組み付け相手を弾性力により挟み込むことが好ましい。
これにより、組み付け相手を受け入れ易くなり、組み付け相手の挟み込みの作業性を向上できるとともに、組み付け後には組み付け相手を挟み込む力を強くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアンテナによれば、グランド部とともに組み付け相手を挟み込む挟持部がクリップのように機能し、また、このグランド部には筐体からの抜け止め手段が設けられている。したがって、本発明のアンテナは、筐体などの組み付け相手に組み付ける作業が簡便であり、かつ、組み付け後に振動及び衝撃を受けたとしても、組み付け相手から抜け出るのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、車載用アンテナ1を例にして本発明のアンテナを詳細に説明する。
本実施形態に係る車載用アンテナ1は、車両用ナビゲーション装置が収容されるインストルメントパネルのスロットに臨む筐体などの組み付け相手3に組み付けられる。
車載用アンテナ1は、組み付け相手3に弾性力を介して組み付けられるものであり、振動及び衝撃が加わっても、この弾性力により組み付け状態が安定し、電気的な接触抵抗も乱れることなく維持され得る構成を備えている。
【0014】
[車載用アンテナ1の構成]
車載用アンテナ1は、
図1及び
図2に示すように、エレメント部10とグランド部20を備えており、このエレメント部10とグランド部20は板金により一体的に成形されたものである。車載用アンテナ1は、導電性及びばね性に優れる金属材料、例えばりん青銅により構成される。以下、車載用アンテナ1についてより詳しく説明する。
【0015】
エレメント部10は、通信距離内にある通信端末から放射された電波を受信し、受信された電波は、電気信号として無線通信モジュール内の無線通信回路に送られる。また、無線通信回路で生成された電気信号は、図示を省略する給電線を通じてエレメント部10に送られ、通信距離内にある通信端末に向けて電波として放射される。なお、グランド部20は、筐体などの組み付け相手3のグランド部に接続され基準電位となる。
本実施形態のエレメント部10は、二種類の周波数帯に対応するために、二つのアンテナ要素11,13を備える。ただし、これはあくまで一例であり、本発明を限定する要素ではない。
【0016】
グランド部20は、組み付け相手3のグランド板31に接触するグランド板21と、グランド板21とともに組み付け相手3に弾性力を持って挟み込む挟持部としてのばね片23,23と、を備えている。
グランド板21は、平坦な板状の形態をなしており、組み付け相手3のグランド板31と接触する側のおもて面21Aと、その反対側のうら面21Bと、を備えている。うら面21Bには、幅方向Xに所定の間隔をあけて一対の抜け止め突起22,22がグランド板21を切り起こして設けられている。それぞれの抜け止め突起22,22は、車載用アンテナ1が組み付け相手3の所定位置に組み付けられたときに、グランド板31の抜け止め孔35,35に挿入されることで、抜け止め手段を構成する。
【0017】
ばね片23,23は、接続部25を介してグランド板21と繋がれており、幅方向Xの中央に設けられるグランド板21を挟んで幅方向Xの両側に設けられている。ばね片23,23のそれぞれは、グランド板21との間に幅方向Xに微小な隙間が設けられており(
図3(a)参照)、グランド板21と独立して撓むことができる。
それぞれのばね片23は、接続部25に接続される固定端部23Aと、固定端部23Aに連なり、エレメント部10に向けて延びる弾性湾曲部23Bと、を備えている。
【0018】
固定端部23Aは、側方から視ると、
図3(b)に示すように、グランド板21よりもうら面21Bの側に所定の間隔だけ後退した位置に設けられ、かつ、グランド板21と平行をなしている。固定端部23Aとグランド板21の間隔は、組み付け相手3のグランド板31の板厚よりも大きく設定されており、車載用アンテナ1が組み付け相手3に組み付けられると、グランド板31の該当部分は固定端部23Aとグランド板21の間に挿入される。
固定端部23Aに繋がる弾性湾曲部23Bは、
図3(b)に示すように、うら面21B側からおもて面21A側に向けて登る傾斜部23Cと、頂点23Eを境にしてうら面21B側に向けて下る傾斜部23Dと、を備えており、概ねL字状の縦断面を有している。この傾斜部23Dは、その先端に向けてグランド板21から離れる向きに延びている。
それぞれのばね片23は、頂点23E及びその近傍だけがグランド板21を境にしておもて面21A側に突出しているが、他の部分はグランド板21を境にしてうら面21B側に配置されている。なお、これはばね片23,23が無負荷の状態であることを前提にしている。
【0019】
接続部25は、
図1〜
図3に示すように、グランド板21に対して垂直に折り曲げられて形成されており、グランド板21とばね片23,23を繋いでいる。
接続部25は、グランド板21よりも幅広に形成されており、グランド板21よりも幅方向Xの両側に突き出している部分に、ばね片23,23が繋がっている。
接続部25からグランド板21にかけて、表裏を貫通する孔からなるガイド孔27が形成されている。このガイド孔27の幅は、組み付け相手3のガイド突起33の幅とほぼ同じに設定されている。車載用アンテナ1を組み付け相手3に組み付ける際に、グランド板31のガイド突起33がガイド孔27に挿入されることで、組み付け相手3に対して車載用アンテナ1が位置決めされながら組み付け作業を進めることができる。このように、ガイド孔27とガイド突起33とでガイド手段が構成される。
【0020】
車載用アンテナ1は、組み付け相手3に組み付けられた状態で、
図6及び
図7(c)に示すように、グランド板31のおもて面31Aの側にグランド板21が配置される一方、グランド板31のうら面31Bの側にばね片23,23が配置される。このように、車載用アンテナ1は、グランド板21とばね片23,23がクリップのように作用してグランド板31を弾性力により挟み込むことで、組み付け相手3に組み付けられる。この組み付け完了の状態で、グランド板21の抜け止め突起22,22がグランド板31の抜け止め孔35,35に挿入されるので、車載用アンテナ1が組み付け相手3から抜け出るのが防止される。
【0021】
[車載用アンテナ1の組み付け手順]
次に、
図4〜
図6及び
図7を参照して、車載用アンテナ1を組み付け相手3に組み付ける手順を説明する。
はじめに、車載用アンテナ1を、エレメント部10の側を組み付け相手3に向けるとともに、組み付け相手3を境にして、おもて面31Aの側にグランド板21が配置され、かつ、うら面31Bの側にばね片23,23が配置されるように位置決めをする。これを作業開始位置とする。なお、この位置決め及びこれに引き続く一連の組み付け作業は、作業者が接続部25を持って行うことができる。
次に、作業開始位置から、グランド板21とばね片23の傾斜部23Dの間にグランド板31が挟み込まれるようにして、車載用アンテナ1を組み付け相手3のグランド板31に向けて押し込む。そうすると、
図4及び
図7(a)に示すように、エレメント部10及びグランド板21がグランド板31のおもて面31側に、また、ばね片23,23がグランド板31のうら面31B側に配置され、グランド板21とばね片23,23による挟み込みがなされる。ばね片23,23は、無負荷の状態に比べて傾きが小さくなるように撓んで弾性力を生じさせ、この弾性力はグランド板31のうら面31Bに接する頂点23Eからグランド板31に加えられる。
なお、この組み付け初期の段階には、ガイド孔27とガイド突起33は未だ離れている。
【0022】
さらに車載用アンテナ1を押し込むが、ガイド突起33がガイド孔27に挿入されるように、位置合わせをしながら押し込む。
図5は、ガイド突起33がガイド孔27に挿入される直前の状態を示しているが、
図7(b)に示すように、グランド板21の抜け止め突起22,22がグランド板31の上端の縁に突き当たっている。さらに車載用アンテナ1を押し込むと、二隅が面取りされたガイド突起33がガイド孔27に挿入され、かつ、抜け止め突起22,22はグランド板31のおもて面31Aに乗り上げることになる。
【0023】
車載用アンテナ1をさらに押し込むが、車載用アンテナ1はガイド突起33に案内されるので、位置ずれを起こすことがない。
図6及び
図7(c)に示すように、グランド板21の抜け止め突起22,22のせん断された上縁がグランド板31の抜け止め孔35,35の上縁に係止するまで、つまり車載用アンテナ1を組み付け相手3に対して奥まで押し込むと、車載用アンテナ1の組み付けが完了する。ガイド突起33は接続部25のガイド孔27を貫通し、組み付け相手3のグランド板31の図中の上端縁は接続部25に突き当たる。
【0024】
[車載用アンテナ1の効果]
以上説明した車載用アンテナ1によれば、以下の効果を奏する。
はじめに、車載用アンテナ1は、グランド板21とばね片23,23をクリップのようにしてグランド板31に対して押し込むだけで組み付け作業を行うことができる。したがって、車載用アンテナ1によれば、組み付け相手3への組み付け作業が簡便である。
また、ばね片23が弾性湾曲部23Bを備え、その傾斜部23Dの先端がグランド板21から離れる向きに延びているので、グランド板21と傾斜部23Dの先端部分との間隔が広い。つまり、車載用アンテナ1は、組み付け相手3を受け入れ易くなっているので、グランド板31を容易に挟み込むことができる。このばね片23は、弾性湾曲部23Bの頂点23Eがグランド板31に接触して弾性力を加えるので、全長が同じばね片と比べると、その先端(自由端)がグランド板31に接触するよりも、強い弾性力を生じさせる。このように、弾性湾曲部23Bを設けることにより、作業性を向上させるとともに、グランド板31を挟み込む力を強くすることができる。
【0025】
また、この組み付け作業の際に、グランド板31のガイド突起33がグランド板21のガイド孔27に誘い込まれながら、車載用アンテナ1を組み付け相手3に押し込むことができるので、車載用アンテナ1が位置ずれを起こすことなく、組み付け作業を行うことができる。
さらに、車載用アンテナ1は、ばね片23,23をグランド板21と繋ぐ接続部25が、グランド板21に対して折れ曲がっており、車載用アンテナ1を組み付け相手3に組み付ける作業者は、この接続部25を持って車載用アンテナ1を組み付け相手3に押し込むことができる。特に、この接続部25は、押し込み方向から見て、最も手前に位置するので、作業性がよい。
【0026】
次に、車載用アンテナ1が組み付け相手3に組み付けられた後には、グランド板21と一対のばね片23,23とによりグランド板31を挟み込むので、グランド板21とグランド板31とを面接触によるグランド接続をすることができる。特に、一対のばね片23,23は、幅方向Xの両側においてグランド板21を挟み込むので、振動及び衝撃が加わっても、グランド接続を安定して維持することができる。
【0027】
また、車載用アンテナ1を組み付け相手3に組み付けた後には、グランド板21の抜け止め突起22がグランド板31の抜け止め孔35に係止することで、車載用アンテナ1が組み付け相手3から抜け出るのを防止する。特に本実施形態は、幅方向Xに間隔をあけて設けられる二つの抜け止め突起22,22が抜け止め孔35,35に係止する構成を採用しているので、車載用アンテナ1が組み付け相手3から抜け出るのをより確実に防止することができる。
また、車載用アンテナ1は、グランド板21とばね片23,23の間にグランド板31を挟み込むが、ばね片23の固定端部23Aとグランド板21の間にグランド板31を挿入できる間隙を設けているので、グランド板21とばね片23の奥までグランド板31を差し込むことができる。これにより、グランド板21とグランド板31の接触面積を広く確保することができる。また、車載用アンテナ1を作製する板材の面積を比較的小さくできる。
【0028】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本実施形態の車載用アンテナ1は、一対のばね片23,23がグランド板21を挟んで幅方向Xの両側に設けられているが、グランド板21に対向するようにばね片を設けることもできる。
また、本実施形態は、組み付け相手3からの抜け止めのために、グランド板21に一対の抜け止め突起22,22を設けているが、組み付け相手3からの抜け止めの目的を達成する限り、抜け止め突起の数及び位置は任意である。また、本実施形態は、グランド板21に抜け止め突起22,22を設け、グランド板31に抜け止め孔35,35に設けているが、この逆に、グランド板21に抜け止め孔を設け、グランド板31に抜け止め突起を設けることもできる。また、抜け止め孔35,35は、グランド板31の表裏を貫通しているが、窪みであってもよい。
【0029】
また、本実施形態は、案内手段として、組み付け相手3にガイド突起33を設け、車載用アンテナ1にガイド孔27を設けたが、組み付け相手3にガイド孔を設け、車載用アンテナ1にガイド突起を設けることもできる。また、案内手段はこれに限るものでなく、例えば車載用アンテナ1を押し込む方向に延びる突起と、この突起が嵌る溝とにより案内手段を構成することもできる。
【0030】
さらに、本実施形態は、グランド板31を挟み込むグランド部20に特徴を有しているものであり、この特徴を享受できる限り、エレメント部10とグランド部20の形態は任意である。
また、本実施形態では車載用アンテナ1を例にして説明したが、本発明は車載用アンテナ以外のアンテナに広く適用することができる。