特開2016-220147(P2016-220147A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-220147(P2016-220147A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/00 20060101AFI20161125BHJP
【FI】
   H01Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-105806(P2015-105806)
(22)【出願日】2015年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 達雄
(72)【発明者】
【氏名】大城 真宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 亨
(72)【発明者】
【氏名】秋田谷 健
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA10
5J046AB06
5J046TA05
5J046TA08
(57)【要約】
【課題】電気ケーブルが引っ張られてもはんだ付け部の健全性が維持されるアンテナを低コストで提供する。
【解決手段】車載用アンテナ1は、金属板を板金加工することにより一体的に形成され、同軸ケーブル40がはんだ付けされる第1はんだ付け部15,第2はんだ付け部16を有するエレメント部11と、エレメント部11に一体的に連なるグランド部20と、を有するアンテナ本体10と、アンテナ本体10を保持する樹脂製のアンテナホルダ20と、を備える。アンテナホルダは20、アンテナ本体10を保持するアンテナ保持部21と、同軸ケーブル40に生じた引張力や振動がはんだ付け部へ伝わるのを抑えつつ同軸ケーブル40を保持するケーブル保持部25と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を板金加工することにより一体的に形成され、電気ケーブルが電気的に接続される電線接続部を有するエレメント部と、前記エレメント部に一体的に連なるグランド部と、を有するアンテナ本体と、
前記アンテナ本体を保持する樹脂製のアンテナホルダと、を備え、
前記アンテナホルダは、
前記アンテナ本体を保持するアンテナ保持部と、前記電気ケーブルに生じた引張力や振動が前記電線接続部へ伝わるのを抑えつつ前記電気ケーブルを保持するケーブル保持部と、
を備えることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記ケーブル保持部は、
前記電線接続部から引き出される向きとは異なる向きに引き回される前記電気ケーブルを保持する、
請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記エレメント部の前記電線接続部は、
前記アンテナホルダの前記アンテナ保持部及び前記ケーブル保持部と重ならない位置に配置されている、
請求項1又は請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記アンテナホルダの前記アンテナ保持部は、
熱かしめにより前記アンテナ本体を固定するかしめボスを備える、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記アンテナ本体は、
前記横断面が門型の形状をなすことで受容溝を備える前記エレメント部と、
前記エレメント部に連なる前記グランド部と、が並列に配列され、
前記アンテナホルダは、
前記アンテナ保持部が、前記受容溝に嵌め込まれて前記エレメント部を保持し、
前記ケーブル保持部が、前記グランド部に沿って配置され、かつ、前記グランド部と部分的に重なるタブを介して前記グランド部を保持する、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機器との無線通信に好適なアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用電子機器、例えば、ナビゲーション装置のBluetooth(登録商標)モジュールの要素として車載用アンテナが組み付けられている。この種のアンテナは、低コスト化を図るために、金属板を板金加工して作製されたアンテナが用いられる例が多い(例えば、特許文献1)。
この板金アンテナには、電子機器との信号送受信のために同軸ケーブルが接続されるが、板金アンテナを電子機器の筐体に取り付ける際、あるいは、コネクタの嵌合時などの作業時に、同軸ケーブルが引っ張られることがある。そうすると、同軸ケーブルと板金アンテナを接続するはんだ付け部において、はんだが外れたり、同軸ケーブルがはんだ付け部で断線したりして、はんだ付け部の健全性が保てなくなる。慎重に作業を進めれば、不具合は生じないが、生産効率を落とすことになる。
また、車載機器は、振動や温度変化が継続的に加わる搭載環境にある。同軸ケーブルが振動することではんだ付け部にストレスが生ずることになると共に、温度の上昇や下降が繰り返されることで、はんだにクラックが容易に発生する。
はんだ付け部への引張り荷重を避けるには、同軸ケーブルが十分な余長を有することが必要である。しかし、車載機器では、ケーブルが長すぎると共振してはんだ付け部にストレスを与えたり、他の部品と接触して異音を発生させたりするという問題がある。同軸ケーブルが短い場合と長い場合の異なる課題を従来の構造で解決することは困難であった。
【0003】
特許文献2には、アンテナパターン(220)を有する樹脂製の放射体(200)に2個のケーブルコネクションピン(300)を用いてケーブル(400)を固定するアンテナとケーブルの固定構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−201511号公報
【特許文献2】特開2011−134701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献2が開示する固定構造は、ケーブル(400)の信号線(450)とアンテナパターン(220)をはんだ付けしないこととしており、信号線(450)とアンテナパターン(220)との接続信頼性が低い。また、特許文献2のケーブルコネクションピン(300)は、弾性を有する金属プレートをドローイング加工して作製し、別個に作製された樹脂製の放射体(200)に熱融着により固定されるものである。したがって、ケーブルコネクションピン(300)を製造するコストに加え、ケーブルコネクションピン(300)を固定する作業が必要となり、この作業もコストに跳ね返る。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、同軸ケーブル等の電気ケーブルが引っ張られてもはんだ付け部の健全性が維持されるアンテナを低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明のアンテナは、アンテナ本体と、アンテナ本体を保持する樹脂製のアンテナホルダと、を備える。
本発明におけるアンテナ本体は、金属板を板金加工することにより一体的に形成され、電気ケーブルが電気的に接続される電線接続部を有するエレメント部と、エレメント部に一体的に連なるグランド部と、を有するアンテナ本体と、を備える。
本発明におけるアンテナホルダは、アンテナ本体を保持するアンテナ保持部と、電気ケーブルに生じた引張力や振動が電線接続部へ伝わるのを抑えつつ電気ケーブルを保持するケーブル保持部と、を一体的に備えている。
【0007】
本発明によるアンテナによれば、アンテナ本体を保持するアンテナホルダがケーブル保持部を一体的に備えているので、ケーブルを保持する部材を別個に作製して組み付けるのに比べて低コストである。特に、本発明のアンテナホルダは、アンテナ保持部も一体的に形成されているので、より低コストなアンテナを提供することができる。
一方で、本発明のように、アンテナホルダがアンテナ保持部とケーブル保持部の両者を備えているので、電気ケーブルが引っ張られたときに生ずる引張力を、アンテナ保持部を介してアンテナホルダだけで受けることになる。これにより、電気ケーブルが引っ張られたときに、アンテナ本体、更にははんだ付け部に力が加わるのを避けることができる。
また、組み付け時に限らず、車輌搭載時の振動や製品輸送時の衝撃が生じた場合も同様に、アンテナ本体のはんだ付け部へのストレスを避けることができる。
【0008】
本発明によるアンテナにおいて、ケーブル保持部は、電線接続部から引き出される向きとは異なる向きに引き回される電気ケーブルを保持することが好ましい。
電線接続部から引き出される向きとは異なる向きに電気ケーブルが引き回されると、電気ケーブルが折り曲げられることになるが、この折り曲げ部分があることにより、電気ケーブルに生じた引張り力が電線接続部に伝わるのを阻止することができる。
【0009】
本発明によるアンテナにおいて、エレメント部の電線接続部は、アンテナホルダのアンテナ保持部及びケーブル保持部と重ならない位置に配置されていることが好ましい。
これにより、電線接続部から引き出される電気ケーブルを、不必要に折り曲げることなく、ケーブル保持部まで引き回すことができる。
【0010】
本発明によるアンテナにおいて、アンテナホルダのアンテナ保持部は、熱かしめによりアンテナ本体を保持するかしめボスを備えることが好ましい。
アンテナ本体をアンテナホルダに保持するのに、このボスを加熱溶融して加圧すれば足りるので、保持のための作業が簡便ですむ。
【0011】
本発明によるアンテナにおいて、アンテナ本体は、横断面が門型の形状をなすことで受容溝を備えるエレメント部と、エレメント部に連なるグランド部と、が並列に配列される形態を有する場合に、アンテナホルダは、アンテナ保持部が、受容溝に嵌め込まれてエレメント部を保持し、ケーブル保持部が、グランド部に沿って配置され、かつ、グランド部と部分的に重なるタブを介してグランド部を保持する、ことが好ましい。
この本発明のアンテナによれば、受容溝にアンテナ保持部が入り込んでエレメント部を保持することで、アンテナ本体の剛性を確保するとともに、ケーブル保持部に設けたタブを用いてグランド部をも保持するので、アンテナ本体の全体の剛性を保って保持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるアンテナによれば、アンテナ本体を保持するアンテナホルダがケーブル保持部を一体的に備えているので、ケーブルを保持する部材を別個に作製して組み付けるのに比べて低コストである。特に、本発明のアンテナホルダは、アンテナ保持部も一体的に形成されているので、より低コストのアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の車載用アンテナを示し、表側から示す斜視図である。
図2】本実施形態の車載用アンテナを示し、裏側から示す斜視図である。
図3図1の車載用アンテナを構成する板金製のアンテナ本体をおもて側から示す斜視図である。
図4図1の車載用アンテナを構成する樹脂製のホルダを示し、(a)は表側から示す斜視図、(b)は裏側から示す斜視図である。
図5】同軸ケーブルをはんだ付けした後のアンテナを示し、(a)は背面図、(b)は(a)の拡大図、(c)は底面図、(d)は平面図である。
図6図5のアンテナにホルダを取り付けた後を示し、(a)は背面図、(b)は底面図、(c)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて、車載用アンテナ1を例にして本発明のアンテナを詳細に説明する。
本実施形態の車載用アンテナ1は、図1及び図2に示すように、アンテナ本体10とアンテナホルダ20を備える。車載用アンテナ1は、アンテナ本体10がアンテナホルダ20に保持されるとともに、アンテナ本体10にはんだ付けされる同軸ケーブル40がアンテナホルダ20に保持されることで、同軸ケーブル40が引っ張られたとしても、はんだ付け部の健全性(integrity)を確保する。なお、車載用アンテナ1において、図1に示されている側をおもて側とし、図2に示されている側をうら側と定義するものとする。
以下、車載用アンテナ1の構成を説明し、次いで車載用アンテナ1による作用及び効果を説明する。
【0015】
[車載用アンテナ1の構成]
車載用アンテナ1は、金属板を板金加工して作製されたアンテナ本体10を備える。
アンテナ本体10は、図3に示すように、エレメント部11と、エレメント部11に対するグランド部17とを備え、エレメント部11とグランド部17は板金加工により一体的に成形されたものであり、並列に配列されている。車載用アンテナ1は、安価な金属材料、例えば鉄又は鉄基合金により構成される。
【0016】
エレメント部11は、通信距離内にある通信端末から放射された電波を受信し、受信された電波は、電気信号として無線通信モジュール内の無線通信回路に送られる。また、無線通信回路で生成された電気信号は、同軸ケーブル40(図1参照)を通じてエレメント部11に送られ、通信距離内にある通信端末に向けて電波として放射される。
本実施形態のエレメント部11は、二種類の周波数帯に対応するために、それぞれにスリット18,19が形成されている二つのアンテナ素子12,13を備える。ただし、これはあくまで一例であり、本発明を限定する要素にはならない。
【0017】
エレメント部11は、横断面が門型の構造をなしており、後述するアンテナホルダ20の一部を受容する受容溝14を有している。エレメント部11には、受容溝14に受容されたアンテナホルダ20との熱かしめに供される三つのかしめ孔H1,H2,H3が表裏を貫通して形成されている。
また、エレメント部11は、同軸ケーブル40の芯線41がはんだ付けされる第1はんだ付け部15と、同軸ケーブル40の編組45がはんだ付けされる第2はんだ付け部16と、を備えている。本実施形態の車載用アンテナ1は、同軸ケーブル40がはんだ付けされた第1はんだ付け部15と第2はんだ付け部16に応力が加わって、はんだがはがれたり、同軸ケーブル40の芯線41が断線したりするのを防止する構造をアンテナホルダ20が備えている。
【0018】
グランド部17は、図示を省略する電子機器の筐体の導体部分に接触することで、当該筐体とともに、エレメント部11のグランドとして機能する。
図3に示すように、グランド部17にも、アンテナホルダ20との熱かしめに供されるかしめ孔H4が、表裏を貫通して形成されている。
【0019】
次に、アンテナホルダ20について説明する。
アンテナホルダ20は、アンテナ本体10と一体的に組み付けられることで、アンテナ本体10の剛性を確保する機能と、同軸ケーブル40が引っ張られたとしてもアンテナ本体10と同軸ケーブル40のはんだ付け部分に応力を生じさせない機能(ストレインリリーフ:strain relief)と、を備えている。この機能を発揮するために、アンテナホルダ20は以下の構成を備えている。
【0020】
アンテナホルダ20は、電気絶縁性を有する樹脂を射出成形することにより一体的に形成された部材であり、図4に示すように、アンテナ保持部21とケーブル保持部25を備えている。アンテナ保持部21とケーブル保持部25は、それぞれの一端側が接続されて、L字状の形態をなしている。
【0021】
アンテナ保持部21は、アンテナ本体10の受容溝14にほぼ隙間なく嵌め込まれるサイズの概ね直方体状の形態をなしている。アンテナ保持部21のうら側には、エレメント部11のかしめ孔H1,H2,H3に挿入されるかしめボスE1,E2,E3が形成されている。
アンテナ保持部21には、ケーブル保持部25との接続部分の近傍に、他の部分よりも幅が狭くされた括れ22が形成されており、同軸ケーブル40はここを通ってケーブル保持部25に引き回される。なお、アンテナ保持部21において、括れ22が形成されている側を内側、その反対側を外側とし、ケーブル保持部25においても同様に内側、外側を定義する。
【0022】
ケーブル保持部25は、保持床26と、保持床26の幅方向の一端側から立ち上がる保持壁27と、保持床26の幅方向の他方側から立ち上がり、保持壁27と間隔を空けて対向する保持爪28,28と、を備える。保持壁27は、一端側が切り欠かれることで同軸ケーブル40が通る通路23を形成するとともに、他端側がL字状に屈曲しており、保持床26のうら側に通じる保持スロット29と連なっている。保持スロット29には、保持スロット29の内部に向けて突き出す保持爪30が形成されている。保持壁27のうら側にはタブ31が設けられ、このタブ31には、おもて側に熱かしめボスE4が形成されている。
【0023】
同軸ケーブル40は、保持床26の表側を、括れ22、通路23、保持壁27と保持爪28,28の間を順に通り、保持スロット29を通って、保持床26のうら側に引き出される。
ここで、本実施形態の車載用アンテナ1は、エレメント部11の電線接続部である第1はんだ付け部15、第2はんだ付け部16は、アンテナホルダ20のアンテナ保持部21及びケーブル保持部25と重ならずに配置されている。したがって、第2はんだ付け部16から引き出される同軸ケーブル40を、不必要に折り曲げることなく、括れ22、通路23を通して保持壁27と保持爪28,28の間まで引き回すことができる。
【0024】
つぎに、車載用アンテナ1を組み立てる手順の概要を図5及び図6を参照して説明する。
はじめに、図5に示すように、アンテナ本体10に同軸ケーブル40をはんだ付けする。
はんだ付けは、同軸ケーブル40の芯線41とアンテナ本体10の第1はんだ付け部15を、かつ、同軸ケーブル40の編組45とアンテナ本体10の第2はんだ付け部16とを位置合わせして、この2か所で行われる。なお、図5及び図6において、はんだ自体の記載を省略している。
【0025】
次に、図6に示すように、同軸ケーブル40がはんだ付けされたアンテナ本体10とアンテナホルダ20を組み付ける。
この際、アンテナ本体10の受容溝14とアンテナホルダ20のアンテナ保持部21とが対応するように位置決めしてから、アンテナ保持部21に受容溝14が嵌り込むようにアンテナホルダ20を押し込む。この時、かしめ孔H1,H2,H3,H4のそれぞれに対応するかしめボスE1,E2,E3,E4が嵌め入れられることで、アンテナ本体10とアンテナホルダ20の位置決めがなされる。
アンテナ本体10とアンテナホルダ20が所定の位置関係まで嵌合されたなら、かしめ孔H1,H2,H3,H4のそれぞれから突出するボスE1,E2,E3,E4を熱融着して熱かしめを行う。この熱かしめにより、アンテナ本体10とアンテナホルダ20は互いに固定される。同軸ケーブル40は、未だ真っ直ぐのままであるから、次に、同軸ケーブル40をケーブル保持部25に保持させる作業を行う。
【0026】
同軸ケーブル40は、図5に示すように、第2はんだ付け部16から真直ぐに引き出されるが、図1に示すように、括れ22及び通路23を通ってから、第2はんだ付け部16から引き出される向きとは異なり、概ね垂直に内側に折り曲げられて保持壁27と保持爪28,28により保持される。さらに、同軸ケーブル40は保持壁27と保持爪28,28の間よりも先の部分がうら側に向けて折り曲げられ、保持スロット29を通ってうら側に引き出される。
以上のようにして、アンテナ本体10がアンテナホルダ20に保持されるとともに、アンテナ本体10にはんだ付けされた同軸ケーブル40がアンテナホルダ20に保持された、車載用アンテナ1が作製される。
【0027】
次に、以上説明した車載用アンテナ1が奏する作用及び効果を説明する。
車載用アンテナ1は、アンテナ本体10の剛性を確保するためのアンテナホルダ20が、同軸ケーブル40を保持するケーブル保持部25を一体的に備えている。したがって、ケーブル保持部25に相当する部材を個別に作製して組み付けるのに比べて、部品コストを低減できるとともに、組み付け作業に関するコストも低減できる。特に、アンテナホルダ20は、エレメント部11を保持するアンテナ保持部21をも一体で形成されているので、より低コストで車載用アンテナを提供することができる。
【0028】
また、アンテナホルダ20がアンテナ保持部21とケーブル保持部25の両者を備えているので、同軸ケーブル40が引っ張られたときに生ずる引張力を、アンテナ保持部21を介してアンテナホルダ20だけで受けることになる。これにより、同軸ケーブル40が引っ張られたときに、アンテナ本体10に力が直接的に加わるのを避けることができるので、アンテナ本体10に不必要な応力が発生することがなく、アンテナとしての性能を確保できる。
【0029】
また、車載用アンテナ1を車載のために所定の部位に組み付ける作業中に、同軸ケーブル40が引っ張られることがあり、また、車載後には同軸ケーブル40に振動や衝撃が加わることがある。しかし、同軸ケーブル40はケーブル保持部25により保持されているので、同軸ケーブル40に引張力が生じたとしても、その力が第1はんだ付け部15、第2はんだ付け部16まで及ぶことがないので、はんだ付け部の健全性を保つことができる。特に、車載用アンテナ1は、図1に示すように、同軸ケーブル40が通路23を過ぎた所P1と、さらに、同軸ケーブル40をおもて側からうら側に引き出される所P2で、第2はんだ付け部16から引き出される向きとは異なる向きに折り曲げられている。したがって、図1において、同軸ケーブル40が下向きに引っ張られたとしても、P2の所で同軸ケーブル40の向きが変わっているので、保持壁27と保持爪28,28との間の部分にはその軸線方向に伝わる引張力は小さい。これはP1の所でも同様であり、うら側に引き出された同軸ケーブル40が引っ張られたとしても、引張力が第1はんだ付け部15、第2はんだ付け部16まで伝わるおそれほとんどない。
【0030】
同軸ケーブル40は、保持壁27と保持爪28,28との間で保持され、かつ、スロット29において保持爪30で保持されることによっても、引張力が第1はんだ付け部15、第2はんだ付け部16まで伝わるのを抑えている。これに加えて、本実施形態の車載用アンテナ1は、第2はんだ付け部16から引き出される向きとは異なる向きに同軸ケーブル40が引き回されることで、引張力が第1はんだ付け部15、第2はんだ付け部16まで伝わるのをより確実に抑えることができる。
【0031】
また、アンテナ本体10とアンテナホルダ20は、かしめ孔H1,H2,H3,H4にかしめボスE1,E2,E3,E4を挿入し、熱融着することで形成される複数個所(四か所)の熱かしめC1,C2,C3,C4で固定されているので、十分な固定強度を得ることができる。特に、アンテナ素子12を形成するためのスリット18を跨ぐ両側に、かしめ孔H1,H2とかしめボスE1,E2による熱かしめ部分が設けられており、振動及び衝撃が加わったとしても、第1スリット18の間隔を維持できるので、アンテナ本体10としての特性を維持することができる。
【0032】
さらに、車載用アンテナ1は、アンテナホルダ20のケーブル保持部25が、グランド部17に沿って配置され、かつ、グランド部17と部分的に重なるタブ31のかしめボスH4を介してグランド部17を保持する。したがって、アンテナ本体10は、受容溝14にアンテナ保持部21が嵌め込まれてエレメント部11を保持することと相まって、アンテナ本体10の全体の剛性を保って保持するので、振動に強い車載用アンテナ1が提供される。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本実施形態の車載用アンテナ1は、同軸ケーブル40を、保持壁27と保持爪28,28等により保持する要素とともに、第2はんだ付け部16から引き出される向きとは異なる向きに同軸ケーブル40を引き回す要素により、引張力が第2はんだ付け部16まで伝わるのを抑えている。しかし、これは好ましい実施形態であって、本発明は、いずれかの要素だけで、引張力が第2はんだ付け部16まで伝わるのを抑えてもよい。
また、同軸ケーブル40を異なる向きに同軸ケーブル40を引き回す場合、折り曲げる回数は一度でもよい。
【0034】
また、本実施形態では、電気ケーブルとして同軸ケーブル40を例にして説明したが、本発明は同軸ケーブル以外の種類の電気ケーブルに適用することができ、この場合にも上述した本発明の効果を享受できる。
また、本実施形態では車載用アンテナ1を例にして説明したが、本発明は車載用アンテナ以外のアンテナに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 車載用アンテナ
10 アンテナ本体
11 エレメント部
12,13 アンテナ素子
14 受容溝
15 第1はんだ付け部
16 第2はんだ付け部
17 グランド部
18 スリット
20 アンテナホルダ
21 アンテナ保持部
22 括れ
23 通路
25 ケーブル保持部
26 保持床
27 保持壁
28 保持爪
29 保持スロット
30 保持爪
31 タブ
40 同軸ケーブル
41 芯線
43 絶縁被覆
45 編組
47 外皮
E1,E2,E3,E4 かしめボス
H1,H2,H3,H4 かしめ孔
C1,C2,C3,C4 熱かしめ
図1
図2
図3
図4
図5
図6