特開2016-220165(P2016-220165A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-220165(P2016-220165A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】マイクロホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20161125BHJP
【FI】
   H04R1/34 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-106401(P2015-106401)
(22)【出願日】2015年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100177367
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 崇
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【テーマコード(参考)】
5D018
【Fターム(参考)】
5D018BB02
(57)【要約】
【課題】 使用される環境に影響されることなく一定の指向特性を得られる。
【解決手段】 管状の第1音響管12と、第1音響管12の壁面に設けられている第1開口部121と、第1音響管121の壁面の内側との間に間隙15を有して設けられている管状の第2音響管13と、第2音響管13の壁面に設けられている第2開口部131と、第2音響管13の内部に設けられていて外部からの音波を取得するマイクロホンユニットと、第1開口部12と間隙15と第2開口部13とにより形成されていて外部からの音波をマイクロホンユニットに伝達する音波導入路と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の第1音響管と、
前記第1音響管の壁面に設けられている第1開口部と、
前記第1音響管の壁面の内側との間に間隙を有して設けられている管状の第2音響管と、
前記第2音響管の壁面に設けられている第2開口部と、
前記第2音響管の内部に設けられていて外部からの音波を取得するマイクロホンユニットと、
前記第1開口部と前記間隙と前記第2開口部とにより形成されていて外部からの音波を前記マイクロホンユニットに伝達する音波導入路と、
を有する、マイクロホン。
【請求項2】
前記間隙には、音響抵抗となる空気の境界層が形成されている、
請求項1記載のマイクロホン。
【請求項3】
前記第1音響管の内壁または前記第2音響管の外壁の少なくとも一方の周方向における複数個所には、前記間隙を維持する間隙維持部材を有する、
請求項1または2記載のマイクロホン。
【請求項4】
前記第1音響管は、前記壁面の周方向で前記第2音響管に対して回動可能であり、
前記音波導入路は、前記第1音響管を回動させることにより前記第1開口部から前記第2開口部までの長さが変化する、
請求項1乃至3のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項5】
前記第1開口部は、前記第1音響管の壁面の周方向において複数個所に設けられている、
請求項1乃至4のいずれかに記載のマイクロホン。
【請求項6】
前記第2開口部は、前記第2音響管の壁面の周方向において複数個所に設けられている、
請求項1乃至5のいずれかに記載のマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
音響管を有する狭指向性マイクロホンでは、音響管の前端から入る音波と管壁の開口部から入った音波との位相差が振動板の前面で干渉することによって狭指向性が得られる。開口部には、音響抵抗材が貼り付けられている。
【0003】
また、狭指向性マイクロホンでは、長い音響管を有する場合には収音角度が狭く、短い音響管を有する場合には収音角度が比較的広く設計できる。つまり、狭指向性マイクロホンは、音源の状況に合わせて音響管の長さが定まる。狭指向性マイクロホンでは、音響管の管壁にある開口部の音響抵抗値を調整すると収音角度が変化する。
【0004】
なお、音孔を音響抵抗材で覆った第1の音響管と、開孔部を備え第1の音響管の内部に密着して挿入された第2の音響管と、を有する、可変指向性のマイクロホンに関する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−336588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
狭指向性マイクロホンの音響抵抗材には、網や不織布などの繊維状の材料が用いられる。音響抵抗材は、吸湿すると繊維が膨張して音響抵抗値が高まる。狭指向性マイクロホンでは、音響抵抗材の音響抵抗値が過度に増加すると、上記位相差による振動板の前面での音波の干渉が得られず狭指向性を損ねてしまう。つまり、狭指向性マイクロホンでは、使用される環境の湿度により音響抵抗値が変化してしまい、一定の指向特性が得られなくなってしまう。
【0007】
本発明は、使用される環境に影響されることなく一定の指向特性を得られるマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、管状の第1音響管と、第1音響管の壁面に設けられている第1開口部と、第1音響管の壁面の内側との間に間隙を有して設けられている管状の第2音響管と、第2音響管の壁面に設けられている第2開口部と、第2音響管の内部に設けられていて外部からの音波を取得するマイクロホンユニットと、第1開口部と間隙と第2開口部とにより形成されていて外部からの音波をマイクロホンユニットに伝達する音波導入路と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用される環境に影響されることなく一定の指向特性を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るマイクロホンの実施の形態を示す側面の部分断面図である。
図2図1のマイクロホンの第1音響管と第2音響管との例を示す正面断面図である。
図3図1のマイクロホンの第1音響管と第2音響管との例を示す側面図である。
図4図1のマイクロホンの第1音響管と第2音響管との別の例を示す正面断面図である。
図5図1のマイクロホンの第1音響管と第2音響管との別の例を示す側面図である。
図6図1のマイクロホンの第1開口部と第2開口部と音波導入路との位置の例を示す正面断面図である。
図7図1のマイクロホンの第1開口部と第2開口部と音波導入路との位置の別の例を示す正面断面図である。
図8図1のマイクロホンの(a)指向性パターンを示す特性図と、(b)指向周波数特性を示すグラフである。
図9】参考例のマイクロホンの(a)指向性パターンを示す特性図と、(b)指向周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
●マイクロホン(1)●
以下、本発明に係るマイクロホンの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1に示すように、マイクロホン10は、振動板を備え外部からの音波を取得するマイクロホンユニット11と、内側すなわち内部が空洞の管状の第1音響管12および第2音響管13とを有している。第2音響管13は、第1音響管12の内側に設けられている。マイクロホンユニット11は、第2音響管13の開放端の一方(以下「後端」という。)付近の内側に設けられている。また、マイクロホン10は、第1音響管12の後端の開放端とは反対側の開放端(以下「前端」という。)に前カバー14を有している。
【0013】
マイクロホン10は、前カバー14に設けられている前側開口部141からの音波と第1音響管12と第2音響管13に設けられている後述の開口部から入った音波との位相差がマイクロホンユニット11に備える振動板の前面で干渉することで、狭指向性を得ている。このようなマイクロホン10は、一般にショットガンマイクなどと称される。
【0014】
図2に示すように、第2音響管13の外径d2は、第1音響管12の内径d1より小さい。このため、第2音響管13は、第1音響管12の内側に挿入することができる。第1音響管12と第2音響管13との間には、音響抵抗材は設けられず、間隙15のみを有する。間隙15の幅は、第2音響管13の外径d2と第1音響管12の内径d1の寸法の相違により、第1音響管12の内壁と第2音響管13の外壁との間に薄い空気の抵抗層が生じる程度に設定する。
【0015】
第1音響管12には、壁面を貫通して第1開口部121が設けられている。また、第2音響管13にも、壁面を貫通して第2開口部131が設けられている。
【0016】
図3に示すように、第1開口部121は、例えば第1音響管12の長手方向にわたって設けられている長孔形状である。また、第2開口部131も、例えば第2音響管13の長手方向にわたって設けられている長孔形状である。
【0017】
間隙15は、第1開口部121と第2開口部131との間に設けられていて、空気、つまり音波が流通可能である。このため、第1音響管12の外部からの音波は、第1開口部121、間隙15、および第2開口部131を経由して第2音響管13の内部に導入される。つまり、マイクロホン10では、第1開口部121と間隙15と第2開口部131とにより、外部からの音波を第2音響管13の内部に伝達する音波導入路が形成されている。第2音響管13の内部に伝達された音波は、図1に示したマイクロホンユニット11の振動板に伝達される。
【0018】
間隙15には、第1音響管12の内壁と第2音響管13の外壁に空気の境界層が形成されることにより、音響抵抗となる薄い空気抵抗層が生じる。間隙15内で生じる抵抗は、空気と第2音響管13の外壁132および第1音響管12の内壁122との間で生じる粘性抵抗層である。間隙15内の空気による粘性抵抗層は、網や不織布を用いた繊維状の音響抵抗材とは異なり、空気中の湿度の変化によっては音響抵抗値が変化しない。
【0019】
そのため、マイクロホン10では、使用される環境に影響されることなく一定の音響抵抗を得ることができる。つまり、マイクロホン10では、使用される環境に影響されることなく一定の指向特性を得ることができる。
【0020】
また、図4図5とに示すように、第1音響管12または第2音響管13の管壁には、第1音響管12と第2音響管13との間にある間隙15の距離を維持する、間隙維持部材として突起部133を有していてもよい。
【0021】
突起部133は、第1音響管12の内壁122または第2音響管13の外壁132の少なくとも一方に設けられていればよい。突起部133は、第1音響管12の内壁122または第2音響管13の外壁132に、樹脂材料などを印刷して形成することができる。また、樹脂成型などの材料を型に流し込んで第1音響管12と第2音響管13を形成する場合には、突起部133を形成できるような型を作成すればよい。
【0022】
突起部133を有することにより、マイクロホン10では、間隙15の間隔が維持されるため、使用される環境に影響されることなくより安定して一定の音響抵抗を得ることができる。
【0023】
図6に示すように、第1音響管12は、壁面の周方向(矢印の方向)において第2音響管13に対して回動可能であってもよい。第1音響管12が第2音響管13に対して回動可能であることで、間隙15により生じる音波導入路の長さC1は、例えば図7に示す長さC2のように変化させることができる。
【0024】
音波導入路の長さはマイクロホン10の音響抵抗値、つまり収音角度に影響するため、マイクロホン10では、音波導入路の長さを変えることで収音角度を変化させることができる。マイクロホン10の収音角度は、図6に示すように第1開口部121と第2開口部131が180°離れた位置にある場合には、図7の場合と比較して、音響抵抗値が大きくなり収音角度が狭くなる。
【0025】
なお、第1開口部121は、第1音響管12の壁面の周方向において複数個所に設けられていてもよい。同様に、第2開口部131は、第2音響管13の壁面の周方向において複数個所に設けられていてもよい。
【0026】
図8は、マイクロホン10の(a)指向性パターンを示す特性図と、(b)指向周波数特性を示すグラフである。図8によれば、マイクロホン10では、第1音響管12と第2音響管13との間の間隙15による音波導入路を有することで、0°において優れた狭指向性と指向周波数特性を有する。
【0027】
図9は、参考例のマイクロホンの(a)指向性パターンを示す特性図と、(b)指向周波数特性を示すグラフである。参考例のマイクロホンは、音響管の開口部に水分を含んだ状態の繊維状の音響抵抗材を有する。
【0028】
図9(a)に示すように、参考例のマイクロホンでは、図8(a)に示したマイクロホン10の指向性パターンと比較して0°より広い角度でも指向性を持ってしまっている。
【0029】
また、図9(b)に示すように、参考例のマイクロホンでは、音響抵抗材が水分を含みすぎると音響抵抗値が上がりすぎて、開口部のない音響管のようになってしまう。つまり、図9(b)によれば、参考例のマイクロホンでは、図8(b)に示したマイクロホン10の指向周波数特性と比較して特定の音域のみが強調されてしまっている。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態に係るマイクロホン10によれば、使用される環境に影響されることなく一定の音響抵抗を得られるため、優れた狭指向性と指向周波数特性を得られる。
【0031】
また、マイクロホン10によれば、収音角度を変化させることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 :マイクロホン
11 :マイクロホンユニット
12 :第1音響管
13 :第2音響管
14 :前カバー
15 :間隙
121 :第1開口部
122 :内壁
131 :第2開口部
132 :外壁
133 :突起部
141 :前側開口部
d1 :内径
d2 :外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9