【課題】構造を複雑化させることなく簡単な構造かつ低コストで、人間の膝関節動き、特に深屈曲の状態から伸脚までの一連の動きを円滑かつ正確に再現することができる膝継手、並びに、それを用いた義足及びパワーアシスト装置の提供。
【解決手段】 略半球状部分を少なくとも有する内顆部24、及び略半球状部分を少なくとも有する外顆部34を備えた大腿骨コンポーネント20と、記内顆部24と接しつつ前記内顆部24を転動可能にする内顆部受溝34、及び前記外顆部22と接しつつ前記内顆部24の転動に伴って前記外顆部22を転動可能にしかつ前記内顆部24を回旋軸として回旋可能にする外顆部受溝32を有する脛骨コンポーネント30と、前記内顆部24及び前記内顆部受溝34が互いに離接しないように、かつ前記外顆部22及び前記外顆部受溝32が互いに離接しないようにする離接防止手段と、を有する膝継手10である。
【背景技術】
【0002】
外傷や病気等が原因で、手術により下肢(脚)を切断しなければならないことがある。このような外科的治療を受けなければならなかった人の多くは、義足を装着することにより前記下肢の本来の機能を獲得することになる。前記下肢の切断の位置が膝関節より近位(大腿切断)であるか遠位(下腿切断)であるかにより、前記義足による切断肢機能再建の方法が異なる。なお、解剖学上、体幹(体の中軸部)に近い側を「近位」といい、遠い側を「遠位」という。
前記下腿切断の場合、前記膝関節は残存するので、前記膝関節の機能は保持される。このため、下腿義足は、前記膝関節の機能を考慮することがないため、膝継手の必要がない。一方、前記大腿切断では、前記膝関節は切除されてしまうこととなる。前記膝関節は、股関節と足関節とのほぼ中央にあり、両関節と協調し、前記下肢の立位保持及び立ちしゃがみ(屈伸運動)に最も重要な機能を持つ関節である。前記大腿切断に対して用いられる大腿義足では、この膝の機能を再建しない限り、前記大腿義足による機能再建は不可能である。この膝機能の再建のために用いられる構造物が前記膝継手である。よって、前記膝継手の性能如何により生活の快適さ(QOL:Quality Of Life)が大きく異なってくる。
また、前記膝継手は、前記義足だけでなく、二足歩行ロボット、及び人間の下肢機能を補助するパワーアシスト装置などにも応用が可能である。このため、前記膝継手の性能如何により、これらの動きの性能が大きく異なってくる。
そこで、従来より、快適かつ運動性能を高めるため様々な膝継手が開発されている。
【0003】
前記義足には、構造の違いによって「殻構造」と「骨格構造」との2つのタイプがあるが、現在では、前記骨格構造の義足が主流である。例えば、自然な昇段を可能とする膝継手を備えた義足が開発されている(特許文献1参照)。前記膝継手は、ラチェット機構を用いて、伸展のみができる状態又は屈曲のみができる状態に制限することで、昇降段を可能にしている。
図1は、従来における膝継手を備えた義足を表す概略図である。
図1に表すように、膝継手500は、大腿側部材510と、アーム520と、膝関節軸ユニット530と、下腿側部材540と、ラチェット(不図示)とを備える。膝継手500における、一端は、足部570と接続された下腿部560に接続され、他端は、大腿ソケット550に接続されている。大腿ソケット550に接続した大腿側部材510は、アーム520に接続されている。アーム520は、一定方向における回転を許容する膝関節軸ユニット530に接続されている。アーム520は、膝関節軸ユニット530を回転中心とした回動のみが可能であり、蝶番のような屈伸運動だけが可能になっている。
前記膝継手は、前記ラチェット機構を切り替えることにより、前記伸展及び前記屈曲が可能な状態と、前記伸展のみができる状態と、前記屈曲のみができる状態とにそれぞれ切り替えが可能である。伸展方向の運動を制限すると、前記膝関節の屈曲不足又は過度な伸展により、前記義足の足部が階段等の蹴込面に衝突することが防止され、大腿義足や股義足の立脚期に前記膝関節の屈曲方向の運動を制限することにより、膝折れが防止される。
【0004】
しかし、人間の膝関節は、蝶番関節に見られるような単なる屈伸運動のみではなく、前記屈曲と共に前記脛骨が内旋し、前記伸展の時には、前記脛骨が外旋するという回旋運動を伴う構造となっている。この前記膝関節の屈伸に伴う前記回旋運動は、前記膝関節の膝を屈曲角90°以上曲げる、正座のような深屈曲を可能にするために必要不可欠なものである。なお、前記屈曲角とは、前記大腿骨の長手方向の軸と、前記脛骨の長手方向の軸とが成す角度のことである。前記膝関節の機能が前記蝶番関節のみであれば、前記屈曲の時に大腿と下腿が同一垂直面で接触するため、前記屈曲が制限されるが、前記回旋運動により前記下腿と前記大腿の軸にずれが生じ、前記深屈曲が可能となる。また、前記屈曲と共に前記脛骨が内旋するため、前記下腿から足部が内旋する。立位では前方を向いている前記足部が、前記下腿とともに、前記下腿の内旋により体幹部の下に畳み込まれていき、正座が可能となる。前記膝関節における屈曲運動と回旋運動との協調性が破損されてしまうと、前記膝関節の可動域は著しく制限される。人間の膝関節は、このように極めて複雑な動きをする精巧かつ神秘的な器官である。
【0005】
ここで、
図2A及び
図2Bを用いて人間の膝関節の動きを詳細に説明する。
図2Aは、左足の大腿骨1と脛骨2との当接部を人体背面側から見た模式図(略式図)である。
図2Bは、
図2Aにおける脛骨2の、大腿骨1と当接する端部を表す平面図である。
図2A及び
図2Bにおいて、左側が前記左足の外側(正中面と反対側)に、右側が前記左足の内側(正中面側)となる。
図2Aにおいて、大腿骨1における突出した遠位端は、内側と外側とに位置する大腿骨顆部からなる。外側(左側)の下端に突出した凸部が、大腿骨外顆6であり、内側(右側)の下端に突出した凸部が、大腿骨内顆5である。また、前記膝関節は、屈伸運動に伴って回旋運動するため、大腿骨1が固定されていると仮定すると、脛骨2の上端面から見た大腿骨内顆5及び大腿骨外顆6の当接部位は、前記膝関節の屈伸に伴って移動する。
図2Bにおいて、脛骨2の上端左側に位置する略楕円形部は、膝の屈伸運動時に大腿骨外顆6が当接してその上を回動乃至回旋する部分(脛骨外顆面溝4)であり、脛骨2の上端右側に位置する略楕円形部は、膝の屈伸運動時に大腿骨内顆5が当接してその上を回動乃至回旋する部分(脛骨内顆面溝3)である。更に、
図2Bにおいて、横線Zは、前記膝関節が伸展した状態(前記屈曲角0°)の時に、脛骨内顆面溝3に当接する大腿骨内顆5の表面と同一の曲面を有する仮想球体(
図2CにおけるA)と、脛骨外顆面溝4に当接する大腿骨外顆6の表面と同一の曲面を有する仮想球体(
図2CにおけるB)との球心を通過し、膝関節の前額面に平行な直線を脛骨2の上端面に投写した直線である。
【0006】
大腿骨1と脛骨2とは、互いに屈伸及び回旋運動が可能になるように当接している(非特許文献1参照)。人間の膝関節においては、
図2Bに表すように、膝屈曲運動に伴い矢印Y方向に略30°回旋(膝から足首を内から外方向にひねる動作)する。また、膝を十分に伸展した状態の最終段階では、脛骨2が5°程度外旋可能である(「終末回旋:Screw home」と称される)。
【0007】
従来における前記膝継手は、上述した回旋については全く検討されてなく、蝶番のような画一的な動きのみで前記膝関節の動きを実現しようとしていた。このため、人間本来の前記膝関節の動きを実現することができず、実際に前記膝継手を用いて義足を装着しても、不自然な屈曲運動しかできないばかりでなく、結果として、前記深屈曲することができなかった。具体的には、前記膝継手が回旋しないため、膝を屈曲させたときにつま先が大腿骨の真下にきてしまい、機能的なしゃがみ込みや正座をすることができなかった。特に、前記深屈曲の状態を再現するには、前記膝関節の回旋の動きが重要であるが、従来における前記膝継手では、前記回旋が全く考慮されておらず不可能であるため、前記深屈曲の状態を正確に再現することができなかった。また、前記膝継手を伸展させた状態においても、前記回旋が全く考慮されておらず不可能であるため、前記終末回旋を再現することができなかった。以上のように、従来における前記膝継手の場合、人間の膝関節の動きを正確に再現することが不可能であるという問題がある。
【0008】
一方、従来においては、膝関節が外傷や病気等が原因で変形乃至破損してしまったが、前記膝関節が温存できる状態の時には、前記膝関節に位置する部分の前記大腿骨の下端と前記脛骨の上端とを手術により切除乃至削り、前記大腿骨の下端に大腿骨コンポーネントを装着させ、前記脛骨の上端に脛骨コンポーネントを装着させる方法が用いられていた。これは、人工膝関節による膝機能再建方法である(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
しかし、前記膝関節を温存した場合における前記人工膝関節でさえ、手術により切除乃至削った前記大腿骨及び前記脛骨に対し、前記大腿骨コンポーネント及び前記脛骨コンポーネントを装着させたときに、変形乃至破損前の健全な膝の状態を復元することが極めて難しいというのが現状である。前記人工膝関節では、前記大腿骨と前記脛骨との間の再建のみでなく、膝蓋骨と、前記大腿骨及び前記脛骨との関連を考慮する必要がある。また、前記膝蓋骨に付着している腱が存在する状態において、前記大腿骨及び前記脛骨のそれぞれの端部を正しく切除乃至削る必要がある。前記人工膝関節の場合、高度な医療技術が必要な上に、未だ満足できる結果を残せてはいないのが現状である。
【0010】
したがって、人間の膝関節の正確な動き、特に深屈曲から伸展までの状態を正確に再現できる技術、特に膝継手は、全く提供されてなく、前記膝継手を必要とする大腿義足の使用者は、動きに違和感を覚え、前記QOLが低い状態が続いていた。そこで、この問題を解決するために様々な膝継手が検討されてはいるが、高コストで構造が複雑化しただけであり、前記深屈曲の問題は依然として解決されていない。そこで、構造を複雑化させることなく低コストで、より人間の膝関節の動きを再現できる、特に深屈曲から伸展に至るまで、更には、伸展位保持までの一連の動きを円滑かつ正確に再現できる膝継手及びその関連技術の開発が切望されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、構造を複雑化させることなく低コストで、人間の膝関節の動き、特に、前記屈曲角0°から前記深屈曲までの状態の一連の動きを円滑かつ正確に再現することができる膝継手、並びに、それを用いた義足及びパワーアシスト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者が鋭意検討した結果、後述するような、人間の膝関節の詳細な動作メカニズムを解明した。本発明は、膝継手において回旋動を取り入れ、前記膝関節の屈伸運動に伴い前記膝関節が30°程度回旋を可能とすることで、尻の下に脚を畳み込むことを可能にし、正座を可能とすることを本発明者が初めて見出し、かかる動作を再現し得るように前記膝継手を設計して初めて到達し得たものである。
ここで、
図3〜
図5Dを用いて、人間の大腿骨における前記脛骨と接する部分の形状について説明する。
図3は、左足の膝関節の大腿骨外顆6を表す左側面図(左足の外側から見た図)であり、
図4は、左足の膝関節の大腿骨内顆5を表す右側面図(左足の内側から見た図)である。
図3及び
図4に表すように、大腿骨外顆6及び大腿骨内顆5は、
図3においては外側及び
図4においては内側から見ると、前記脛骨2に接する部分においては、共に前後方向に長径を持つ卵形に近似することができる。内側前顆部5a及び外側前顆部6aは、それぞれ大腿骨内顆5及び大腿骨外顆6の前顆部であり、同様に、前記膝関節を、
図3においては外側及び
図4においては内側から見ると、前記脛骨2に接する部分においては、楕円形を半分にした半楕円形に近似することができる。これに対し、
図2にも表した、内側後顆部5b及び外側後顆部6bは、それぞれ大腿骨外顆6及び大腿骨内顆5の後顆部であり、同様に、前記膝関節を、
図3においては外側及び
図4においては内側から見ると、前記脛骨2に接する部分においては、真円形に近似することができる。
【0015】
図5A〜
図5Dは、人間の左足の膝関節を忠実に再現した模型を使い、人間の膝関節を動作させた際の各屈曲角における大腿骨外顆6側から見た図であり、
図5Aは、前記膝関節を伸展させた時の状態を表す図であり、
図5Bは、前記膝関節を前記屈曲角略45°に屈曲させた時の状態を表す図であり、
図5Cは、前記膝関節を前記屈曲角略90°に屈曲させた時の状態を表す図であり、
図5Dは、前記膝関節を深屈曲(前記屈曲角略150°)させた時の状態を表す図である。
図5A〜
図5Dに表すように、前記膝関節を動かすと、前記左足の外側の端面(前記膝関節を左側から見た端面)から見たときの外側後顆部6b(前記後顆部)の円弧の一部が、前記脛骨の上端面に当接しつつ動作することがわかる。また、
図5A〜
図5Dに表すように、外側前顆部6a(前記前顆部)は、前記膝蓋骨の誘導と伸展位保持の安定とが主たる機能であるため、前記膝蓋骨の誘導を必要としない前記膝継手では、前記前顆部(内側前顆部5a及び外側前顆部6a)を再建する必要が無い(不要である)ことがわかる。したがって、前記膝関節の屈曲及び伸展の動きだけを考えるのであれば、前記後顆部(内側後顆部5b及び外側後顆部6b)を、前記膝関節を前記外側の端面から見たときの前記円弧を有する球体に近似することができる。
つまり、内側後顆部5b及び外側後顆部6bは、真球に近い形状として近似することができ、内側後顆部5b及び外側後顆部6bにより、前記膝関節の屈伸運動と回旋運動とが制御されていることがわかる。
【0016】
図6は、前記屈曲角0°の時の左足の膝関節における外側後顆部6bと内側後顆部5bとを略円形に近似して表し、これらを外側後顆部6b側から見た図である。
図7A及び
図7Bは、
図6における、内側後顆部5bと外側後顆部6bとの位置関係を表した図である。
図7Aは、前記屈曲角0°の時に、左足の膝関節を前記人体背面側から見たときに、大腿骨内顆5及び大腿骨外顆6における各後顆部を略円形に近似して表した概略図である。
図7Aの左側に位置する円形が外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)であり、右側に位置する円形が内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)である。
図7Bは、
図7Aにおいて略円形に近似した大腿骨内顆5及び大腿骨外顆6における各後顆部を、前記人体背面側と直交する人体頭部側から見たときの概略図である。
図6に表すように、左足の外側の端面から見た形状、及び
図7Aに表すように、前記屈曲角0°の時の前記人体背面側から見た形状は、遠位部に相当する部分(下半分)は真球を半分にした真円半球(半球)に、近位部に相当する部分(上半分)は楕円球(長球)を半分にした楕円半球(半長球)に近似することができ、前記真円半球の直径と前記楕円半球の長径とが同一である略楕円球体に近似することができる。
図7Bに表すように、前記屈曲角0°の時の内側後顆部5b及び外側後顆部6bの前記人体背面側と直交する人体頭部側から見た形状は、真球に近似することができる。つまり、人間の膝関節における大腿骨内顆5の内側後顆部5bにおける回転球心は、前記脛骨に当接して屈曲していく際に、前記屈曲角0°〜90°にかけては偏心しないが、前記屈曲角90°を超えると偏心するのである。このことは、本発明者が初めて見出したことである。したがって、脛骨2に当接する部分における、内側後顆部5bの形状は、下半分が前記真円半球であり、上半分が前記楕円半球であって、前記屈曲角0°〜90°にかけては、前記真円半球の表面が脛骨2の表面と当接し、前記屈曲角90°〜180°にかけては、連続的に径が短くなる扁平した前記楕円半球の表面が脛骨2の表面と当接する。なお、
図6、
図7A及び
図7Bにおいては、前記略楕円球体の外側後顆部6bを表しているが、外側後顆部6bは、略真球に近似してもよい。
人間の前記膝関節では、
図6に表すように、内側後顆部5bの球心DO2と、外側後顆部6bの球心DO1とは、地面に対し同一の略水平面C上にあり、かつ、前記屈曲角0°の時の外側後顆部6bにおける球心DO1は、内側後顆部5bにおける球心DO2の後方(膝関節背面側)に位置する。また、左足の外側の端面から見ると、外側後顆部6bは、内側後顆部5bの輪郭からはみ出ない状態で位置する。更に、前記状態においては、前記屈曲角135°から150°にかけての、2つの球(外側後顆部6b及び内側後顆部5b)の表面の輪郭は略同一となる。なお、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の球心DO2は、
図7Aの右側の内側後顆部5bの実線で表した下半分と、破線で表した上半分とからなる略真球の球心とし、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)の球心DO1は、
図7Aの左側の外側後顆部6bの実線で表した下半分と、破線で表した上半分とからなる略真球の球心に相当する。
【0017】
図7Aにおいて、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)の球心DO1と、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の球心DO2とを結ぶ球心間線AX6の長さは、常に一定である。
図7Aに表す、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)及び外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)は、厳密には真球ではなく、球心より遠位部(下半分)の前記真円半球と、球心より近位部(上半分)の前記楕円半球とを組み合わせた形状に近似している。遠位部の前記真円半球(下半分)の直径と、近位部の前記楕円半球(上半分)の長径との長さは、同一であるが、前記楕円半球(上半分)の短径は、前記真円半球(下半分)の直径よりも短い。また、
図7Aに表す、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)と、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)の上部に表す破線は、それぞれの前記真円半球を上部に反転して転写したものである。
図7Bに表すように、内側後顆部5bを水平面に沿って外側に前記球心間線AX6の距離を移動した仮想球を、第3顆EC(Extra Condyle)とし、第3顆ECの輪郭を点線で示し、球心DO2と同様の球心をDO3とすると、第3顆ECの球心DO3と、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)の球心DO1とは、同一ではなく、前後方向にズレがある。
図7Aに表すように、前記屈曲角0°の時に、膝関節を前記人体背面側から見た場合、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)及び第3顆ECの、それぞれの前記真円半球と前記楕円半球との接合面は、同一平面であるため、球心DO1と球心DO3とは、同一平面上にある。また、膝関節を前記人体背面側から見た場合、前記人体背面側から球心DO1を見た軸上に、球心DO3が位置するため、
図7Aにおいて、球心DO1と球心DO3とは、同一点として見ることができる。このため
図7Aに表すように、前記球心間線AX6、及び、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の球心DO2と第3顆ECの球心DO3とを結ぶ線分AX66は、同一線となる。
図7Aに表すように、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)の内径は、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の内径よりも短く、かつ、前記屈曲角0°の時の前記球心間線AX6は水平線HLと平行であるため、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)と、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)との最遠位点間(下半球の最下点)を結ぶ線を遠位顆線DCLとすると、遠位顆線DCLは、水平線HLに対し外側後顆部6b側に向けて傾いた(内反)状態となる。また、
図7Bに表すように、内側後顆部5bの後端と外側後顆部6bの後端とを結ぶ線を遠位顆線PCLとすると、遠位顆線PCLは、前記脛骨の上端の前記大腿骨内顆と前記大腿骨外顆とが当接する平面と略平行となる。このことは、前記屈曲角0°の時の前記脛骨の上端の前記大腿骨内顆と前記大腿骨外顆とが当接する平面は内反していることを示している。前記球心間線AX6と、外科的顆上線SELとは、互いに平行な関係を保つ。
【0018】
図7Bにおいて、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)及び外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)は、略真球に近似することができる。内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)及び第3顆ECは、同一平面上を移動するため、前記線分AX66は、
図7Bにおいては、前額面線CL(FP)に平行であり、
図7Aにおいては、水平線HLに平行である。このとき球心DO1は、球心DO3の後方にある。このため前記球心間線AX6は、外反する。
【0019】
次に、膝関節の動作を説明する。
前記膝関節の屈伸運動では、回旋運動を伴う。この回旋運動は、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)が固定点となり、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)が回旋する運動である。
図8Aは、左足内側から見た左足の膝の屈伸運動における、左足の大腿骨内顆の、楕円球に近似した内側後顆部の球心の移動状態を表す説明図である。
図8Bは、
図8Aにおいて内側後顆部の球心の移動と最下点の関係を示す説明図である。
図8A及び
図8Bは、前記屈曲角0°から前記屈曲角90°において、大腿骨内顆5における内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の前記遠位部(下半分)である前記真円半球が、脛骨2と接しているときの球心DO2の位置と、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の前記近位部(上半分)である前記楕円半球が、脛骨2と接するときの球心DO2の位置と、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)と脛骨2とが当接している最下点Pの位置との関係を示している。なお、
図8Aの右側が左足の膝関節の前方であり、左側が後方である。
図8A及び
図8Bに表すように、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の遠位側(下半分)が前記真円半球であるため、前記屈曲角0°から前記屈曲角90°の間は、脛骨(模式)2の表面と当接する部分が前記真円半球の表面部分であり、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の球心DO2は、前記屈曲角0°と同じ位置を維持する。前記屈曲角90°超では、脛骨2の表面と当接する部分が前記楕円半球の表面部分となるため、球心DO2は、前記屈曲角の増加と共に膝関節の後下方に移動する。しかし、総ての前記屈曲角において内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の最下点Pの位置は、同一である。したがって、
図8A及び
図8Bに表すように、球心DO2の移動は、最下点Pの位置には全く影響していない。
【0020】
図9は、左足外側から見た左足の膝の屈伸運動における、左足の大腿骨外顆の真球に近似した外側後顆部の球心の移動状態を表す説明図である。なお、
図9の左側が左足の膝関節の前方であり、右側が後方である。
図6及び
図9に表すように、球心DO1と球心DO2とは、前後方向においてズレがあり、球心DO1は、球心DO2より後方に位置する。一方、これらの球心は、前記屈曲角0°において同一水平面上にある。外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)は、膝の屈伸運動に伴い略30°内外旋する。このため、球心DO2とは異なり球心DO1は、
図9に表すように、前記屈曲と共に後方移動し、前記伸展と共に前方移動する。球心DO2よりも球心DO1は、後方に位置しているため、前記屈曲と共に後遠位方向に移動していく。外側後顆部6bの形状が、厳密な真球ではなく、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)と外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)との、脛骨2との当接面となる球面の輪郭が、前記屈曲角135°から150°の間に略同一となるような略楕円球体であるとすると、この間において外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)の遠位方向の移動は生じない。屈曲運動を考えると、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)は、遠位方向への移動を伴いつつ、脛骨(模式)2の前記人体頭部側から見た面上(顆面上)の後下方に傾斜する面である遠位点連続線DPL上をA1方向に移動する。なお、遠位点連続線DPLは、左足の外側の端面から見た形状が、直線である。
【0021】
図10は、前記人体頭部側から見た左足の膝の屈伸運動において、真球に近似した大腿骨内顆5の内側後顆部5b、及び、大腿骨外顆6の外側後顆部6bの各球心の移動状態を表す説明図であり、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)は、屈曲と共に外旋する運動が加わるため、前記屈曲角の増加と共に、前記屈曲角90°超では、球心DO2の位置が膝関節の外側(正中面側)に移動する。なお、
図10において、前額面線FPは、
図7Aに表す前額面線FPを、内側後顆部5bの球心DO2上に平行に移動させた線として表している。11Aは、
図10における外側後顆部の軌跡において、外側後顆部が脛骨と当接する接地面の状態を表した説明図である。
図11Bは、
図11Aにおける内側後顆部及び外側後顆部の球心の移動状態を、人体背面側から見た説明図である。
【0022】
図10に表すように、前記線分AX66は、前額面線FPに平行である。これに対し、前記球心間線AX6は、外反位となる。球心DO2は、前記屈曲角90°よりも大きな屈曲では後外方(図面右下方向)に移動するが、最下点Pの位置は一点に固定されている。球心DO1は、前記線分AX66を半径とする円周線上を、略30°移動する。内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)では、最下点Pは固定点であるため、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)が前記脛骨の上端面と接する面積は、略一定である。一方、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)は、
図11Aに表すように、円弧状の動きと共に後傾し、
図11Bに表すように、球心DO1が
図11Bの右下方向に移動するように斜面上を移動するため、前記脛骨の上端面と接する面積は、前記屈曲が進むと共に拡大する。つまり、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)と、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)とがそれぞれ当接する脛骨2の上端面の部位が、
図2Bに表す脛骨外顆面溝4及び脛骨内顆面溝3である。
【0023】
なお、上述した内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)と、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)とは、計算式で形状を近似することができ、以下の計算式を一例として、
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は、左足の大腿骨内顆5の内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の脛骨2に接する部分における輪郭線を、前記屈曲角0°の時の内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の最下点を原点とする座標上に表した図である。なお、上述したように、大腿骨1の内側前顆部5a及び外側前顆部6aは、前記膝関節の前記屈曲の動作に直接関与しないため、それぞれの後顆部の近似式のみを説明する。
【0024】
内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の上半分の前記楕円半球の輪郭は、実線で示すように、以下の(式1)で表すことができる。
x
2/26
2+(y−26)
2/23
2=1・・・(式1)
【0025】
また、同図中に表す外側の破線は、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)の下半分の前記真円半球の輪郭であり、以下の(式2)で表すことができる。
x
2+(y−26)
2=(±26)
2・・・(式2)
【0026】
図13は、左足の大腿骨外顆6の外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)の脛骨2に接する部分における輪郭線を、前記屈曲角0°の時の外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)の最下点を座標(2,3)とする座標上に表した図である。
外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)の上半分の前記楕円半球の輪郭は、図中に破線で示すように、以下の(式3)で表すことができる。
x
2/26
2+(y−26)
2/22.95
2=1・・・(式3)
【0027】
また、同図中に表す外側の破線は、外側後顆部5b(大腿骨外顆LC)の下半分の前記真円半球の輪郭であり、以下の(式4)で表すことができる。
(x−2)
2+(y−26)
2=(±23)
2・・・(式4)
【0028】
上述したように、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)と、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)との形状は、内側後顆部5b(大腿骨内顆MC)を膝関節の内側から、外側後顆部6b(大腿骨外顆LC)を膝関節の外側から見ると、脛骨2に接する部分においては、すべて円及び楕円で近似することができる。
【0029】
以上が、本発明者が鋭意検討した結果、初めて見出した膝の動きのメカニズムの詳細であり、かかるメカニズムを再現させる膝継手を提供することにより、人間の膝関節の動き、特に深屈曲の状態から伸脚までの一連の動きを円滑かつ正確に再現することができる本発明の膝継手に到達したのが本発明である。
【0030】
前記課題を解決するための手段は、以下のとおりである。即ち、
本発明の膝継手は、略半球状部分を少なくとも有する内顆部、及び略半球状部分を少なくとも有する外顆部を備えた大腿骨コンポーネントと、前記内顆部と接しつつ前記内顆部を転動可能にする内顆部受溝、及び前記外顆部と接しつつ前記内顆部の転動に伴って前記外顆部を転動可能にしかつ前記内顆部を回旋軸として回旋可能にする外顆部受溝を有する脛骨コンポーネントと、前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないようにする離接防止手段と、を有する。
本発明の前記膝継手においては、屈曲運動の際、前記大腿骨コンポーネントにおける、略半球状部分を少なくとも有する前記内顆部及び略半球状部分を少なくとも有する前記外顆部が、前記脛骨コンポーネントにおける前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝にそれぞれ接した状態で各溝の形状に沿って転動及び回旋をする。このとき、前記離接防止手段が、前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないようにする。本発明の前記膝継手によると、前記内顆部及び前記外顆部が蝶番のような画一的な動きではなく、前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝のそれぞれによって、前記内顆部が転動可能となり、前記外顆部が転動及び回旋可能となるため、人間の膝関節と同様の動きが正確に再現され、特に深屈曲の状態から伸脚までの一連の動きが円滑かつ正確に再現される。また、人工膝関節とは違い、前記膝継手においては、膝蓋骨に該当する部材が要らず、複雑な機構は必要なく、簡単な構造で人間の膝関節の動きが正確に再現される。
【0031】
本発明の義足は、本発明の前記膝継手と、前記膝継手における脛骨コンポーネントと接続された足部とを有する。
本発明の前記義足においては、前記膝継手が、屈曲運動の際、前記大腿骨コンポーネントにおける、略半球状部分を少なくとも有する前記内顆部及び略半球状部分を少なくとも有する前記外顆部が、前記脛骨コンポーネントにおける前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝にそれぞれ接した状態で各溝の形状に沿って転動及び回旋する。このとき、前記膝継手における前記離接防止手段が、前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないようにする。そして、前記膝継手には前記足部が接続されているので、前記義足は、前記膝継手において、人間の膝の屈曲運動と同じ動きが正確に再現される。前記義足においては、複雑な機構は必要なく、簡単な構造で人間の膝関節の動きが再現される。
【0032】
本発明のパワーアシスト装置は、本発明の前記膝継手と、前記膝継手を駆動させるアクチュエータとを有する。
本発明のパワーアシスト装置においては、前記膝継手が、屈曲運動の際、前記大腿骨コンポーネントにおける、略半球状部分を少なくとも有する前記内顆部及び略半球状部分を少なくとも有する前記外顆部が、前記脛骨コンポーネントにおける前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝にそれぞれ接した状態で各溝の形状に沿って転動及び回旋する。このとき、前記膝継手における前記離接防止手段が、前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないようにする。そして、前記膝継手は、前記アクチュエータにより駆動され、駆動時には、前記膝継手において人間の膝の屈曲運動と同じ動きが忠実に再現される。前記パワーアシスト装置においては、複雑な機構は必要なく、簡単な構造で人間の膝関節の動きが再現される。
【発明の効果】
【0033】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、簡単な構造かつ低コストで、人間の膝関節の動き、特に前記屈曲角0°から前記深屈曲までに至る一連の動きを円滑かつ正確に再現することができる膝継手、並びに、それを用いた義足及びパワーアシスト装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1の膝継手につき、図面を参照しながら説明するが、本発明はこの実施例1に何ら限定されるものではない。なお、以下の各図面における「10」等の符号は、それぞれ同じものを意味している。
図14A〜
図20は、人間の左足に装着する、実施例1に係る膝継手10を表す概略説明図である。
図14Aは、膝継手10の概略斜視図(背面側)である。
図14Bは、膝継手10の概略斜視図(正面側)である。
図15は、膝継手10の概略平面図である。
図16は、膝継手10の概略正面図である。
図17は、膝継手10の概略背面(裏面)図である。
図18は、
図15における膝継手10のA−A断面で切断したものの背面(裏面)方向から見た概略図である。
図19は、膝継手10の概略右側面図(膝継手10を装着した際における内側から見た概略図)である。
図20は、膝継手10の概略左側面図(膝継手10を装着した際における外側から見た概略図)である。
【0036】
<膝継手>
図14A〜
図20に表す膝継手10は、大腿骨コンポーネント20と、脛骨コンポーネント30と、大腿骨側接続部材40と、脛骨側接続部材50とを有する。
【0037】
−大腿骨コンポーネント20−
図14A〜
図20に表す大腿骨コンポーネント20は、外顆部22と、内顆部24と、両顆接続部26と、案内部28とを有する。
【0038】
−−外顆部22−−
外顆部22は、略球状であって、略球体の表面が、互いに平行な一対の平面と、該一対の平面と略直交方向に位置し、かつ互いに略直交方向に位置する2つの平面とに沿って切除された外形を有する。即ち、外顆部22は、表面に4つの平面を有する。なお、人体に装着された状態の膝継手10において、外顆部22における前記一対の平面は、人体足首側から人体頭部側にかけての方向に略平行であり、以下、「立設平面」と称することがある。また、人体に装着された状態の膝継手10において、外顆部22における前記一対の平面と略直交方向に位置し、かつ互いに略直交方向に位置する2つの平面の内の一つは、地面に対し略平行であり、以下、「水平面」と称することがあり、他の一つは、地面に対し略垂直であり、以下、「垂直面」と称することがある。また、外顆部22には、前記垂直面側に前記垂直面に連続した切欠部22dが設けられている。切欠部22dには、前記水平面と平行な載置平面部22eが形成されている。載置平面部22eには、後述する大腿骨側接続部材40を接続するための略L字状接続部材42が載置される。載置平面部22eには、ネジ穴が設けられており、ネジによって略L字状接続部材42が後述する大腿骨側接続部材40と共に載置平面部22eに脱離不能に螺合される。
【0039】
ここで、外顆部22の形状について、更に詳細に説明する。外顆部22は、
図21A〜
図21Cに表すように、略球状であって、略球体の表面が、互いに平行な一対の平面と、該一対の平面と略直交方向に位置し、かつ互いに略直交方向に位置する2つの平面とに沿って切除された外形を有する。
図21Aは、大腿骨コンポーネント20を脛骨コンポーネント30上に載置した場合において、前記屈曲角0°のときに前記人体背面側から見た概略図である。
図21Bは、
図21Aにおける大腿骨コンポーネント20を、前記人体背面側と直交する人体頭部側から見た概略図である。
図21Cは、
図21Aにおける大腿骨コンポーネント20を外顆部22側から見た概略図である。外顆部22は、伸展状態(前記屈曲角0°)の時の形状が、真球を垂直に2等分し、分割した半球と半球の間に前記半球の分割面と同じ形状及び大きさの面を有する円柱を介在させて、前記半球を前記円柱を介して密着させた、略球形の外顆部Pre22を切除してなる形状を有する。
図22Aは、切除前の外顆部Pre22及び内顆部Pre24を脛骨コンポーネント30上に載置したと仮定した場合において、前記屈曲角0°のときに前記人体背面側から見た概略図である。なお、
図22Bは、
図22Aにおける、切除前の外顆部Pre22及び内顆部Pre24を、前記人体背面側と直交する人体頭部側から見た概略図である。外顆部Pre22の大きさとしては、例えば、後述する内顆部24の大きさに合わせた略楕円球とすることができる。外顆部22の材質としては、例えば、ニューライト(作新工業株式会社製)製とすることができる。
外顆部22における略球状の表面部分は、
図23A〜
図23Cに表す、脛骨コンポーネント30における受溝形成プレート部30aに形成された、外顆部受溝32に接しつつ、転動乃至回旋可能である。
【0040】
外顆部22には、前記一対の平面及び外顆部22の略中心を貫通させた貫通孔22cが形成されている。貫通孔22cは、略円柱形状の両顆接続部26に貫通され、両顆接続部26の外形と同様の形状を有する。貫通孔22cの軸方向に直交方向の断面形状は略円形である。貫通孔22cは、軸方向の断面形状において段差を有する。即ち、貫通孔22cは、互いに直径の異なる小径部と大径部とを有する。前記大径部は、軸方向に直交方向の断面形状が真円形である。前記小径部は、軸方向に直交方向の断面形状が、前記大径部の前記真円形を半分した形状(半円形)と、前記大径部よりも小径の真円形を半分した形状(半円形)とを合わせた略円形である。貫通孔22cの直径は、貫通孔22cから露出する両顆接続部26の外形よりも少し大きい。外顆部22における前記一対の平面のうち、貫通孔22cにおける前記大径部が露出する一の平面上には、貫通孔22cの外周を覆うようにして、円筒形状の凸部22aが形成されている。
【0041】
−−内顆部24−−
内顆部24は、略球状であって、略球体の表面が、互いに平行な一対の平面と、該一対の平面と略直交方向に位置し、かつ互いに略直交方向に位置する2つの平面とに沿って切除された外形を有する。即ち、内顆部24は、表面に4つの平面を有する。なお、人体に装着された状態の膝継手10において、内顆部24における前記一対の平面は、人体足首側から人体頭部側にかけての方向に略平行であり、以下、「立設平面」と称することがある。また、人体に装着された状態の膝継手10において、内顆部24における前記一対の平面と略直交方向に位置し、かつ互いに略直交方向に位置する2つの平面の内の一つは、地面に対し略平行であり、以下、「水平面」と称することがあり、他の一つは、地面に対し略垂直であり、以下、「垂直面」と称することがある。また、内顆部24には、前記垂直面側に前記垂直面に連続した切欠部24dが設けられている。切欠部24dには、前記水平面と平行な載置平面部24eが形成されている。載置平面部24eには、後述する大腿骨側接続部材40を接続するための略L字状接続部材42が載置される。載置平面部24eには、ネジ穴が設けられており、ネジによって略L字状接続部材42が後述する大腿骨側接続部材40と共に載置平面部24eに脱離不能に螺合される。
【0042】
ここで、内顆部24の形状について、更に詳細に説明する。内顆部24は、
図21A〜
図21Cに表すように、略球状であって、略球体の表面が、互いに平行な一対の平面と、該一対の平面と略直交方向に位置し、かつ互いに略直交方向に位置する2つの平面とに沿って切除された外形を有する。
図21Aは、大腿骨コンポーネント20を脛骨コンポーネント30上に載置した場合において、前記屈曲角0°のときに前記人体背面側から見た概略図である。
図21Bは、
図21Aにおける大腿骨コンポーネント20を、前記人体背面側と直交する人体頭部側から見た概略図である。
図21Cは、
図21Aにおける大腿骨コンポーネント20を外顆部22側から見た概略図である。内顆部24は、上半分が楕円半球(長球(楕円球)を半分にした形状)であり、下半分が真円半球(真球を半分にした形状)であり、かつ、前記楕円半球と前記真円半球とが合着された略球形の内顆部Pre24を切除してなる形状を有する。なお、
図22Aは、切除前の外顆部Pre22及び内顆部Pre24を脛骨コンポーネント30上に載置したと仮定した場合において、前記屈曲角0°のときに前記人体背面側から見た概略図である。
図22Bは、
図22Aにおける、切除前の外顆部Pre22及び内顆部Pre24を、前記人体背面側と直交する人体頭部側から見た概略図である。内顆部Pre24の大きさとしては、例えば、前記真円半球における半径を26mmとし、前記楕円半球における長径を52mm、かつ短径を23mmとすることができる。内顆部24の材質としては、例えば、ニューライト(作新工業株式会社製)製とすることができる。
内顆部24における略球状の表面部分は、
図23A〜
図23Cに表す、脛骨コンポーネント30における受溝形成プレート部30aに形成された、内顆部受溝34に接しつつ、転動乃至回旋可能である。
【0043】
内顆部24には、前記一対の平面及び内顆部24の略中心を貫通させた貫通孔24cが形成されている。貫通孔24cは、軸方向の断面形状において段差を有する。即ち、貫通孔24cは、互いに直径の異なる小径部と大径部とを有する。前記大径部は、軸方向に直交方向の断面形状が真円形である。前記小径部は、軸方向に直交方向の断面形状が、前記大径部の前記真円形を半分した形状(半円形)と、前記大径部よりも小径の真円形を半分した形状(半円形)とを合わせた略円形である。貫通孔22cの直径は、貫通孔22cから露出する両顆接続部26の外形よりも少し大きい。外顆部24における前記一対の平面のうち、貫通孔24cにおける前記大径部が露出する一の平面上には、貫通孔24cの外周を覆うようにして、円筒形状の凸部24aが形成されている。
【0044】
−−両顆接続部26−−
両顆接続部26は、略円柱状の部材であり、互いに直径の異なる小径部と中径部と大径部とを有する。前記小径部は、両顆接続部26の両端部に位置する。前記小径部は、後述する脛骨コンポーネント30に係合されるため、以下、「係合凸部26a」と称することがある。前記中径部は、前記小径部に隣接して、両顆接続部26における前記大径部の両側に位置する。前記大径部は、一対の前記中径部に挟まれて位置する。
【0045】
−−案内部28−−
案内部28は、
図18に表すように、略円柱状の棒状体28aであり、両顆接続部26に貫通される円筒状の接続部を一端に有する。即ち、案内部28は、前記円筒状の接続部の周側面に、該接続部の軸方向と直交方向に略円柱状の棒状体28aが延設された形状を有する。棒状体28aにおける、前記円筒状の接続部が形成された一端側とは反対側の他端側は、前記一端側よりも大径となっている。棒状体28aにおける前記他端側には、棒状体28aにおける前記一端側よりも大径の抜止防止部材28bが螺合されており、その結果、前記他端側が前記一端側よりも大径となっている。
【0046】
−−大腿骨コンポーネント20の組立て−−
実施例1において、大腿骨コンポーネント20は、以下のようにして組み立てることが可能である。案内部28における前記円筒状の接続部を、両顆接続部26で貫通させる。次に、外顆部22及び内顆部24を両顆接続部26で貫通させる。このとき、外顆部22における凸部22aと、内顆部24における凸部24aとが、案内部28における前記円筒状の接続部と接するようにする。また、外顆部22における前記水平面及び載置平面部22eと、内顆部24における、前記水平面及び載置平面部24eとが、互いに平行に位置するようにする。以上により、大腿骨コンポーネント20を組み立てることができる。なお、この状態の大腿骨コンポーネント20は、両顆接続部26が、外顆部22、案内部28及び内顆部24から容易に脱離可能である。しかし、膝継手10においては、両顆接続部26における両端に位置する小径部(係合凸部26a)が、後述するように、脛骨コンポーネント30に脱離不能かつ回動乃至移動可能に係合されるので、大腿骨コンポーネント20における、両顆接続部26、外顆部22、案内部28及び内顆部24は互いに脱離不能に一体化された状態となる。
【0047】
−脛骨コンポーネント30−
図14A〜
図20に表す脛骨コンポーネント30は、受溝形成プレート部30aと、係合凸部係合用壁部30bとを有する。脛骨コンポーネント30の材質としては、例えば、ニューライト(作新工業株式会社製)製である。
【0048】
−−受溝形成プレート部30a−−
受溝形成プレート部30aは、
図23A〜
図23Cに表すように、一方の表面に、外顆部受溝32及び内顆部受溝34が形成されている。また、外顆部受溝32と内顆部受溝34との間には、案内孔36が形成されている。
図23Aは、受溝形成プレート部30aの概略斜視図である。
図23Bは、受溝形成プレート部30aの概略平面図である。
図23Cは、受溝形成プレート部30aの概略底面図である。
受溝形成プレート部30aを平面視したときの形状は、
図23A〜
図23Cに表すように、略L字状である。即ち、第一の長方形と、該第一の長方形における一の長辺側に、該第一の長方形よりも小さな長辺を有する第二の長方形が延設された形状である。前記第一の長方形における前記一の長辺側に、外顆部受溝32、案内孔36、及び内顆部受溝34が形成されており、外顆部受溝32が形成されている側に、前記第二の長方形が位置している。
受溝形成プレート部30aにおける、外顆部受溝32及び内顆部受溝34が形成された側とは反対側の面には、
図23Cに表すように、ネジ穴が形成されている。受溝形成プレート部30aは、
図14A〜
図20に表すように、ネジによって後述する脛骨側接続部材50と共に脱離不能に螺合される。
【0049】
−−−外顆部受溝32−−
外顆部受溝32は、人間の膝関節における脛骨外顆面溝を模した形状であり、
図23A〜
図23Cに表すように、その開口形状が、内顆部受溝34を回動中心とした湾曲形状(略楕円形状、そら豆形状)となっている。外顆部受溝32の深さ方向の断面形状は、最下点から一端側にかけてなだらかな傾斜を有し、前記最下点から他端側かけて急な傾斜を有する形状である。前記一端側が膝継手10の前方側であり、前記他端側が膝継手10の後方側である。前記湾曲形状(略楕円形状)の外顆部受溝32上を、外顆部22が転動乃至回動するため、人間の膝関節と同様の転動及び回旋が再現可能となる。
【0050】
−−−内顆部受溝34−−
内顆部受溝34は、内顆部24における球面状部分の表面形状と近似した略半球状の溝である。このため、内顆部受溝34上において、内顆部24は、所定の回動運動が可能となる。内顆部受溝34の深さ方向の断面形状は、扇形の円弧形状である。なお、前記円弧形状における左端開口部側が膝継手10の前方側であり、前記円弧形状における右端開口部側が膝継手10の後方側である。前記内顆部受溝34上を、内顆部24が転動乃至回動するため、人間の膝関節と同様の転動及び回旋が再現可能となる。
【0051】
−−−案内孔36−−
案内孔36は、外顆部受溝32と内顆部受溝34との略中間に位置する。案内孔36の開口形状は、内顆部受溝34を回動中心とした湾曲形状(略楕円形状)である。案内孔36は、大腿骨コンポーネント20を脛骨コンポーネント30上に載置した場合において、大腿骨コンポーネント20における案内部28に貫通される。案内部28における、両顆接続部26と接続された側とは反対側であって、脛骨コンポーネント30における、外顆部受溝32及び内顆部受溝34が形成された側とは反対側は、
図23Cに表すように、その開口面積が、大腿骨コンポーネント20が配される側よりも大きくなっている。そして、大腿骨コンポーネント20が配される側とは反対側からは、上述した大径の抜止防止部材が案内孔36に挿入され、案内部28における前記棒状体に対し螺合されている。このため、案内部28が、案内孔36から脱離することが防止される。案内孔36が前記湾曲形状を有するため、外顆部受溝34上で外顆部22が回動乃至転動するのと合わせて、案内部28が案内孔36内を円滑に移動可能である。案内孔36に挿入された、案内部28における棒状体28aに抜止防止部材28bが螺合すると、大腿骨コンポーネント20が脛骨コンポーネント30から離接不能となる。よって、案内部28及び案内孔36が、前記離接防止手段として機能する。
【0052】
−−係合凸部係合用壁部30b−−
係合凸部係合用壁部30bは、
図14A〜
図20に表すように、受溝形成プレート部30aの両端部に、かつ受溝形成プレート30aと直交方向に、一組立設される。係合凸部係合用壁部30bには、ネジ穴が2つ設けられており、係合凸部係合用壁部30bは、ネジによって受溝形成プレート部30aに脱離不能に螺合される。係合凸部係合用壁部30bには、両顆接続部26における係合凸部26aが貫通して係合凸部係合用壁部30bに係合可能にする係合凸部案内孔30cが形成されている。係合凸部案内孔30cの形状は、大腿骨コンポーネント20における、外顆部22及び内顆部24が、脛骨コンポーネント30における、外顆部受溝32及び内顆部受溝34の上を転動乃至回旋する動作を阻害しない形状である。より詳しくは、外顆部22における係合凸部26aが係合する係合凸部案内孔30cの形状は、外顆部22の転動乃至回旋の軌跡に合わせた形状であり、
図20に表すように、前記屈曲角0°の時の外顆部22における係合凸部26aの位置を始点とすると、膝継手10の後方向かつ下方向に傾斜する長孔形状である。一方、内顆部24における係合凸部26aが係合する係合凸部案内孔30cの形状は、内顆部24の転動乃至回旋の軌跡に合わせた形状であり、
図19に表すように、前記屈曲角0°の時の内顆部24における係合凸部26aの位置を始点とすると、膝継手10の前方向かつ下方向に傾斜する長孔形状である。係合凸部案内孔30cに係合凸部26aが係合すると、大腿骨コンポーネント20が脛骨コンポーネント30から離接不能となる。よって、係合凸部案内孔30c及び係合凸部26aが、前記離接防止手段として機能する。
互いに対向する一組の係合凸部係合用壁部30bが、受溝形成プレート部30aの両端部に螺合されると、係合凸部係合用壁部30bに係合凸部26aが貫通した状態で係合する。このとき、大腿骨コンポーネント20における、両顆接続部26、外顆部22、案内部28及び内顆部24は互いに脱離不能に一体化された状態となる。
【0053】
−大腿骨側接続部材40−
図14A〜
図20、及び
図24に表す、大腿骨側接続部材40は、大腿骨側からの延設部材と接続される延設部材接続部40aと、連結部40bと、大腿骨コンポーネント20と接続される大腿骨コンポーネント接続部40cとを有する。
延設部材接続部40aは、一端有底の筒状体である。該筒状体の内部に、前記大腿骨側からの延設部材を収容可能である。該筒状体の周側面部には、該筒状体における開口径を調節可能なネジ穴40fが設けられていて、ネジによって、前記大腿骨側からの延設部材は、前記筒状体の内部に脱落不能に接続される。
連結部40bは、円柱状部材であり、一端に延設部材接続部40aが接続され、他端に大腿骨コンポーネント接続部40cが接続されている。
大腿骨コンポーネント接続部40cは、平板状部材であり、ネジ孔が4つ設けられている。この内の2つのネジ孔40dは、ネジによって、外顆部22及び内顆部24における、それぞれの切欠部22d及び24dの載置平面部22e及び24eに脱離不能に螺合される。また、残りの2つのネジ孔40eは、ボルトとナットによって、略L字状接続部材と共に脱離不能に螺合される。
【0054】
−脛骨側接続部材50−
図14A〜
図20、及び
図25に表す、脛骨側接続部材50は、脛骨側からの延設部材と接続される延設部材接続部50aと、連結部50bと、脛骨コンポーネント30と接続される脛骨コンポーネント接続部50cとを有する。
延設部材接続部50aは、一端有底の筒状体である。該筒状体の内部に、前記脛骨側からの延設部材を収容可能である。該筒状体の周側面部には、該筒状体における開口径を調節可能なネジ穴50fが設けられていて、ネジによって、前記脛骨側からの延設部材は、前記筒状体の内部に脱落不能に接続される。
連結部50bは、円柱状部材であり、一端に延設部材接続部50aが接続され、他端に脛骨コンポーネント接続部50cが接続されている。
脛骨コンポーネント接続部50cは、平板状部材であり、ネジ孔50dが4つ設けられている。脛骨コンポーネント接続部50cは、4つのネジによって、脛骨コンポーネント30における受溝形成プレート部30aに脱離不能に螺合される。
【0055】
膝継手10においては、大腿骨側接続部材40における連結部40bの中心軸と、脛骨側接続部材50における連結部50bの中心軸とが、
図26Aに表す、前記屈曲角0°の時の人間の大腿骨及び前記脛骨における中心軸(破線)と同軸に位置している。このため、膝継手10においては、人間の膝関節の動きが忠実に再現される。
【0056】
−実施例1の膝継手の作用(動作メカニズム)−
次に、本発明の実施例1に係る膝継手10の動作原理について、
図8A、
図9、
図10.
図26A〜
図26Cを用いて詳細に説明する。なお、外顆部22と内顆部24の動作は、人間の膝関節における、外側後顆部6b及び内側後顆部5bの動作を再現しているため、
図8A、
図9、及び
図10を代用して説明する。
図26Aは、膝継手10の動作について、前記屈曲度0°の時の状態を、外顆部22側から見た概略説明図である。
図26Bは、膝継手10の動作について、前記屈曲度90°の時の状態を、外顆部22側から見た概略説明図である。
図26Cは、膝継手10の動作について、前記屈曲度150°の時の状態を、外顆部22側から見た概略説明図である。
【0057】
膝継手10の伸展状態(前記屈曲角0°の時)においては、
図26Aに表すように、大腿骨側接続部材40における連結部40bの中心軸と、脛骨側接続部材50における連結部50bの中心軸とが、
図26Aに表す、前記屈曲角0°の時の人間の大腿骨及び前記脛骨における中心軸(破線)と同軸に位置している。また、大腿骨コンポーネント20における外顆部22及び内顆部24は、上述の
図9におけるのと同様に左側(前方側)に、上述の
図10におけるのと同様に上側(前方側)に、即ち膝継手10の前方側に位置している。この時、外顆部22における係合凸部26aの位置は、
図26Aにおいて、係合凸部案内孔30cの最も左端側にある。
膝継手10において屈曲運動を開始すると、大腿骨側接続部材40及び脛骨側接続部材50の少なくともいずれか一方が動き、前記屈曲角が0°よりも漸次大きくなっていく。この時、
図14A及び
図15に表すように、内顆部受溝34が内顆部24の外形と略同形状であるため、内顆部受溝34に当接する内顆部24は、
図8Aに表すように、ピポット軸として機能する。これに対し、
図14A及び
図15に表すように、外顆部22は、外顆部受溝32に接した状態で転動しつつ回旋し、外顆部受溝32の断面形状に沿って、
図23Aの下側に、上述の
図9におけるのと同様に中央側に、上述の
図10におけるのと同様に上側から下側にかけての中央付近に移動する。
【0058】
膝継手10の前記屈曲角90°の時においては、
図26Bに表すように、外顆部22における係合凸部26aの位置は、
図26Bにおいて、係合凸部案内孔30cの略中央部にある。
図26Bは、
図26Aと同じ側から見た図であるにもかかわらず、
図26Bでは、外顆部22のみならず内顆部24も見えているのは、外顆部22が内顆部24を回動中心として回動(回旋)していることを意味する。前記屈曲角90°の時は、上述の
図9に表すのと同様に、前記屈曲角0°の時よりも外顆部受溝32の落ち込んだ場所に外顆部22が位置する。また、上述の
図10に表すのと同様に、回旋が開始されると、前記屈曲角0°の場所よりも若干右側かつ下側に外顆部22が位置する。
更に屈曲運動を継続すると、内顆部24は、転動を継続しつつ、外顆部22は、転動しつつ回旋(内顆部24を回動中心として回動)する。外顆部22は、外顆部受溝32に接した状態で転動しつつ回旋し、外顆部受溝32の断面形状に沿って、
図23Aの下側に、上述の
図9におけるのと同様に右側に、上述の
図10におけるのと同様に下側に移動する。
【0059】
膝継手10の前記屈曲角150°の時においては、
図26Cに表すように、外顆部22における係合凸部26aの位置は、
図26Cにおいて、係合凸部案内孔30cの右端側にある。
図26Cは、
図26A及び
図26Bと同じ側から見た図であるにもかかわらず、
図26Cでは、外顆部22のみならず内顆部24もよく見えているのは、外顆部22が内顆部24を回動中心として回動(回旋)していることを意味する。前記屈曲角150°の時は、上述の
図9に表すのと同様に、外顆部受溝32の最下点に外顆部22が位置する。また、上述の
図10に表すのと同様に、回旋が終わると、前記屈曲角0°及び前記屈曲角90°の時よりも、右側かつ下側に外顆部22が位置する。なお、内顆部24は、外顆部22の動きに連動して所定の転動を生ずる。
更に屈曲運動を継続すると、内顆部24は、転動を継続しつつ、外顆部22は、転動しつつ回旋(内顆部24を回動中心として回動)し、いわゆる深屈曲の状態(正座をしている状態)となる。
なお、この状態から膝継手10が伸展運動を開始すると、前記伸展運動は前記屈曲運動の逆であり、前記屈曲角150°から前記屈曲角0°の時まで先程と逆の動きをすることになり、
図26Cから
図26Aにかけて動作していくことになる。
【0060】
実施例1の膝継手10によれば、簡単な構造かつ低コストで、人間の膝関節の動き、特に前記屈曲角0°から前記深屈曲までに至る一連の動きを円滑かつ正確に再現することができる。また、複数の前記離接防止手段を備えているため、大腿骨コンポーネント20と脛骨コンポーネント30とを確実に当接させて、膝継手10を動作させることができる。
【0061】
実施例1の膝継手10の大腿骨コンポーネント20における、内顆部24及び外顆部22は、
図3〜
図5Dにおいて、人間の膝関節における内側後顆部5b及び外側後顆部6bと同位置に位置する。膝継手10における外顆部22は、
図3〜
図5Dにおいて、人間の膝関節における外側後顆部6bに相当する。膝継手10における内顆部24は、
図3〜
図5Dにおいて、人間の膝関節における内側後顆部5bに相当する。このため、外顆部22と内顆部24との動きにより、人間の膝関節の動きが再現可能となる。
【0062】
外顆部22は、外側後顆部6bに相当するため、球心DO1に相当する中心(前記外顆部を略球形状とした時の球心を意味する)を有している。同様に、内顆部24は、内側後顆部5bに相当するため、球心DO2に相当する中心(前記内顆部を略球形状とした時の球心を意味する)を有している。つまり、膝継手10の前記屈曲角が0°の時の外顆部22及び内顆部24の位置関係は、膝継手10の前記人体背面側から見た場合は、人間の膝関節の内側後顆部5bと外側後顆部6bとの位置関係と同様であり、膝継手10の前記人体頭部側から見た場合は、少なくとも、内側後顆部5bと外側後顆部6bとが、それぞれ上下に均等に分断された下半分の位置関係と同様である。また、膝継手10は、人間の膝関節における前記球心間線AX6と前記線分AX66(屈伸軸)とに相当する軸をそれぞれ有している。
【0063】
膝継手10の内顆部24は、ピポット軸として機能するため、転動以外の動作を考慮しなくてもよい。即ち、
図10に表す内側後顆部5bの動きの前記屈曲角0°の時に相当する位置での動きだけを考慮すればよい。これに対し、外顆部22は、内顆部24が移動しないため、外側後顆部6bに近似した軌跡を描くように動く。つまり、膝継手10において、内顆部24は、前記屈曲角0°の時に内側後顆部5bが位置する場所において、外顆部22の動きに合わせて転動をする。前記屈曲角0°の時において、外顆部22は、外側後顆部6bに近似した動きをするため、外顆部22の中心と内顆部24の中心を結ぶ軸が、前記球心間線AX6に相当し、内顆部24よりも内後方に位置している。外顆部22の球心と内顆部24の球心の距離は一定のまま維持され、外顆部22が転動及び回旋する。外顆部22は、前記屈曲角0°から屈曲角度を増す毎に、内顆部24を中心とした弧を描くように、内顆部24の内後方に移動する。この時、外顆部22を、外顆部22側から見た場合、上述の
図9に表すのと同様に、前記屈曲角135°の時に最下点となるように、屈曲開始から、前記屈曲角135°にかけて、前記傾斜DPLに相当する傾斜面を転動しつつ、前記外顆部が前記屈曲角135°で最下点に位置する。そして、前記屈曲角150°までは、最下点上を水平に転動する。
【0064】
上記動作原理により、膝継手10の屈伸に伴い、外側後顆部6bの球心DO1に相当する外顆部22の球心は、内側後顆部5bの球心DO2に相当する内顆部24の球心からの距離がほとんど変化しない円弧に沿って、後内方向かつ遠位方向に移動する。膝継手10の屈曲に伴う外顆部22の移動により、大腿骨コンポーネント20の内旋、脛骨コンポーネント30から見た場合は脛骨コンポーネント30の外旋が生じる。
この動作原理により、膝継手10は、人間の膝関節の動きを再現することができる。なお、上述したように、人間の膝関節は僅かな内旋をしているが、屈伸運動では外旋が重要であり、一般的な生活では膝関節の内旋は重要ではないため、実施例1では前記内旋については考慮していない。しかし、外顆部受溝32の形状を予め変形させて形成することで、内顆部24を軸とした内旋を実現することも可能である。
【0065】
[変形例]
本発明の膝継手は、上述した各実施例に記載したものに限られず、目的に応じて以下のような変形を加えてもよい。
【0066】
<大腿骨コンポーネント>
前記大腿骨コンポーネントとしては、前記脛骨コンポーネントに対し、接触しつつ、膝の屈曲運動の際に、前記脛骨コンポーネント上を転動(回動)及び回旋可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、内顆部と外顆部とを少なくとも有しているものが好適に挙げられ、更に必要に応じて適宜選択したその他の部を有していてもよい。
【0067】
―内顆部―
前記内顆部としては、後述する内顆部受溝に接して転動可能であればよく、その形状としては少なくとも略半球状の部分を有していればよく、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記内顆部における少なくとも略半球状の部分としては、前記真円半球(真球の半球)であってもよいし、前記楕円半球(楕円球の半球)であってもよい。前記楕円半球の形状としては、人間の膝関節における前記大腿骨内顆の前記内側後顆部の形状と近似させる観点からは、前記略半球の前記内顆部の球面ではない部分を平面としたときに、前記平面と直交し、前記略半球の球心を通る垂直面による断面形状において、1/2円弧が真円の円弧であり、前記1/2円弧と連続する残りの1/2円弧が、連続的に径が短くなる扁平した楕円弧である形状の前記楕円半球が好ましい。上述した人間の膝の動作原理として説明したとおり、人間の大腿骨において、前記大腿骨内顆及び前記大腿骨外顆が膝の屈曲運動に関与しており、少なくとも前記大腿骨内顆における前記内側後顆部と、前記大腿骨外顆における前記外側後顆部とに相当する略半球状の部分さえあれば、人間の膝関節の動きを再現し得る。このため、前記内顆部は、前記略半球状の部分を少なくとも有していればよい。即ち、膝関節の稼働域が前記屈曲角0°から180°の間であると仮定すると、前記膝継手を前記屈曲角0°(膝を伸展した状態)とした時は、前記略半球状の前記内顆部における球面ではない部分が、前記膝継手の前方側を向いて略垂直に立った状態で、後述する内顆部受溝に接し、ここから徐々に前記膝継手を屈曲させていくと、前記略半球状の前記内顆部における球面部分が前記内顆部受溝の表面に当接しながら転動し、前記膝継手を前記屈曲角180°とした時は、前記内顆部における球面ではない部分が、前記膝継手の後方側を向いて略垂直に立った状態で、前記内顆部受溝に接することで、前記膝継手により人間の膝関節の動きが再現される。よって、前記膝継手の動作に必要な、前記内顆部における前記略半球状の前記内顆部受溝に当接する球面部分以外の形状としては、膝継手の屈曲運動には関与しないため特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記離接防止手段として後述する箱体などを採用する場合には、前記略半球状の部分と一体となって球体を成す、略真円半球状、及び略楕円半球状(楕円体)などが好適に挙げられる。また、前記真円半球、及び前記楕円半球における、前記膝継手の屈伸運動時に前記脛骨コンポーネントと当接しない部分を適宜切除することにより、前記膝継手を小型化することができる。
前記内顆部の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、中空の構造、表面が連続面及び不連続面の構造、表面に孔が形成されている構造、突起を有する構造などが挙げられる。前記突起を有する内顆部の構造としては、例えば、前記内顆部の、前記外顆部側の端部とは逆側の端部に、突起を設ける構造が挙げられる。なお、前記突起は、上述した前記膝関節の動作原理に基づく、前記大腿骨コンポーネントの前記線分AX66(屈伸軸)と同一となる軸上に設けることが好ましく、後述する箱体の側面係合孔に挿入し、係合するように形成することができる。
前記内顆部の大きさとしては、特に制限はなく、前記内顆部受溝の大きさに応じて適宜選択することができる。また、後述する外顆部に合わせて大きさを決定してもよく、前記内顆部及び前記外顆部を、上述した人間の膝関節における前記内側後顆部及び前記外側後顆部の大きさと同じ大きさとすること、あるいは前記内側後顆部及び前記外側後顆部の大きさと相似関係のある大きさとすることが好ましい。
前記内顆部の材質としては、前記内顆部受溝に対して転動が可能な耐久性のある素材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。前記金属としては、例えば、クロム−ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ABS、FRP、テフロン(登録商標)、ニューライト(作新工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、転動が滑らかに行えるように低摩擦係数の素材が好ましく、また、人間の体重が掛かるため、耐荷重性に優れ、変形しない素材が好ましく、ニューライト(作新工業株式会社製)が特に好ましい。なお、前記内顆部の表面に、公知の潤滑剤が塗布乃至コーティングされていてもよい。
上述した原理のとおり、人間の膝関節における前記内側後顆部に相当する前記内顆部を軸として、人間の膝関節における前記外側後顆部に相当する前記外顆部が転動及び回旋できればよく、前記内顆部及び前記外顆部のそれぞれの大きさや位置関係としては、必ずしも特に制限はないが、人間の膝関節における前記内側後顆部と前記外側後顆部との大きさや位置に近似させることが好ましい。
【0068】
―外顆部―
前記外顆部としては、前記内顆部の転動に伴って後述する外顆部受溝に接して転動及び回旋可能であればよく、その形状としては少なくとも略半球状の部分を有していればよく、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記外顆部における少なくとも略半球状の部分としては、前記真円半球であってもよいし、前記楕円半球であってもよい。前記内顆部と同様に、人間の大腿骨において、前記大腿骨内顆及び前記大腿骨外顆が膝の屈曲運動に関与しており、少なくとも前記大腿骨内顆における前記内側後顆部と、前記大腿骨外顆における前記外側後顆部とに相当する略半球状の部分さえあれば、人間の膝関節の動きを再現し得る。このため、前記外顆部は、略半球状の部分を少なくとも有していればよい。即ち、膝関節の稼働域が前記屈曲角0°から180°の間であると仮定すると、前記膝継手を前記屈曲角0°(膝を伸展した状態)とした時は、前記略半球状の前記外顆部における球面ではない部分が、前記膝継手の前方側を向いて略垂直に立った状態で、後述する外顆部受溝に接し、ここから徐々に前記膝継手を屈曲させていくと、前記略半球状の前記外顆部における球面部分が、前記外顆部受溝の表面に接しながら転動及び回旋し、前記膝継手を前記屈曲角180°とした時は、前記外顆部における球面ではない部分が、前記膝継手の後方側を向いて略垂直に立った状態で、前記外顆部受溝に接することで、前記膝継手により人間の膝関節の動きが再現される。なお、前記外顆部の前記略半球状の部分の形状は、前記真円半球が好ましく、前記楕円半球がより好ましく、前記楕円半球の中でも、前記内顆部と同様に、前記略半球の前記外顆部の球面ではない部分を平面としたときに、前記平面と直交し、前記略半球の球心を通る垂直面による断面形状が、1/2円弧が真円の円弧であり、前記1/2円弧と連続する残りの1/2円弧が、連続的に径が短くなる扁平した楕円弧となる楕円半球が特に好ましい。前記断面形状を有する前記楕円半球の場合、前記屈曲角135°〜150°にかけて、前記外顆部が人間の膝関節と同様に略水平に移動するため、より人間の膝関節の動作を再現することができるため有利である。しかし、前記膝継手の場合、前記略水平の移動を前記外顆部受溝によってでも実現可能なため、前記外顆部の形状によって前記略水平の移動を実現しなくても問題はない。
よって、前記膝継手の動作に必要な、前記外顆部における前記略半球状の前記外顆部受溝に当接する球面部分以外の形状としては、膝継手の屈曲運動には関与しないため特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記離接防止手段として後述する箱体などを採用する場合には、前記略半球状の部分と一体となって球体を成す、略真円半球状、及び略楕円半球状(楕円体)などが好適に挙げられる。また、前記真円半球、及び前記楕円半球における、前記膝継手の屈伸運動時に前記脛骨コンポーネントと当接しない部分を適宜切除することにより、前記膝継手を小型化することができる。
前記外顆部の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、中空の構造、表面が連続面及び不連続面の構造、表面に孔が形成されている構造、突起を有する構造などが挙げられる。前記突起を有する外顆部の構造としては、例えば、前記外顆部の、前記内顆部側の端部とは逆側の端部に、突起を設ける構造が挙げられる。なお、前記突起は、上述した前記膝関節の動作原理に基づく、前記大腿骨コンポーネントの前記線分AX66(屈伸軸)と同一となる軸上に設けることが好ましく、後述する箱体の側面係合孔に挿入し、係合するように形成することができる。
前記外顆部の大きさとしては、特に制限はなく、前記外顆部受溝の大きさに応じて適宜選択することができる。また、前記内顆部に合わせて大きさを決定してもよく、前記内顆部及び前記外顆部を、上述した人間の膝関節における前記内側後顆部及び前記外側後顆部の大きさと同じ大きさとすること、あるいは前記内側後顆部及び前記外側後顆部の大きさと近似した大きさとすることが好ましい。
前記外顆部の材質としては、前記外顆部受溝に対して確実に転動及び回旋可能となるように、適度な摩擦力を有し、耐久性のある素材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。前記金属としては、例えば、クロム−ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ABS、FRP、テフロン(登録商標)、ニューライト(作新工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、人間の体重が掛かるため、耐荷重性に優れ、変形しない点から、ニューライト(作新工業株式会社製)が好ましい。なお、前記外顆部の表面に公知の潤滑剤が塗布乃至コーティングされていてもよい。
前記内顆部と同様に、前記内側後顆部に相当する前記内顆部を軸として、人間の膝関節における前記外側後顆部に相当する前記外顆部が転動及び回旋できればよく、前記内顆部及び前記外顆部のそれぞれの大きさや位置関係としては必ずしも特に制限はないが、人間の膝関節における前記内側後顆部と前記外側後顆部との大きさや位置に近似させることが好ましい。
【0069】
―その他の部―
前記その他の部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、両顆接続部などが挙げられる。
前記両顆接続部は、前記内顆部と前記外顆部とを接続する。前記両顆接続部により、前記内顆部と前記外顆部とが接続されると、人間の前記大腿骨の足側の先端(前記大腿骨の遠位端)と同様の動作を正確に再現でき、かつ確実に連動させて動作させることができる。
前記両顆接続部としては、前記内顆部及び前記外顆部とは別個独立した部材として、これらと接合及び接着されていてもよいし、前記内顆部及び前記外顆部と一体成形されていてもよい。
前記両顆接続部としては、前記内顆部と前記外顆部とを接続することができるものであれば、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0070】
<脛骨コンポーネント>
前記脛骨コンポーネントとしては、前記大腿骨コンポーネントの前記内顆部と前記外顆部とが、前記脛骨コンポーネントに接した状態で前記内顆部が転動しつつ、前記外顆部が前記内顆部を回旋中心として回旋できるものであれば、その形状、構造、大きさ、材質などとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記脛骨コンポーネントの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記大腿骨コンポーネントの動作を阻害しないために、前記人体頭部側から見た形状が前記膝継手の後方側に延設部を有する略L字形状又は湾曲形状とすることが好ましい。なお、後述する外顆部受溝が形成される部分を、前記膝継手の後方側に延設させた略L字形状又は湾曲形状とすることがより好ましい。
前記脛骨コンポーネントの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、複数の部材を組み合わせた構造、中空の構造などが挙げられる。
前記脛骨コンポーネントの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。前記金属としては、例えば、クロム−ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ABS、FRP、テフロン(登録商標)、ニューライト(作新工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、人間の体重が掛かるため、耐荷重性に優れ、変形しない点から、ニューライト(作新工業株式会社製)が好ましい。
前記脛骨コンポーネントの具体例としては、外顆部受溝と、内顆部受溝と、を少なくとも有しているものが好適に挙げられ、更に必要に応じて適宜選択したその他の部を有していてもよい。
【0071】
―内顆部受溝―
前記内顆部受溝としては、前記脛骨コンポーネントの前記人体頭部側から見た面に形成され、前記内顆部と接しつつ前記内顆部の所定の転動を可能にする溝であれば、形状、形成箇所に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記内顆部受溝の形状としては、前記内顆部が所定の転動を可能とする形状の溝であれば制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記内顆部の球面と同形状の内表面を有する溝形状であることが好ましい。
前記内顆部受溝の形成箇所としては、前記内顆部が所定の転動が可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記脛骨コンポーネントの前記人体頭部側から見た面の内側(左足の前記膝継手の場合は右側、右足の前記膝継手の場合は左側)のいずれの場所に形成してもよい。前記膝継手の内旋を可能としたい場合は、前記外顆部受溝よりも後方に形成することにより、前記内顆部受溝に接する前記内顆部がピボット軸となり、外旋可能な上に内旋も可能となる。
例えば、前記内顆部が接しつつ転動可能となるように、断面が中心角180°未満の扇形の円弧からなる形状の溝としてもよく、人間の前記脛骨に近い構造とすることができる。
前記内顆部受溝は、前記脛骨コンポーネントとは別の材質を表面に積層することも可能であり、前記内顆部受溝の材質としては、前記内顆部の転動が可能な素材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。前記金属としては、例えば、クロム−ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ABS、FRP、テフロン(登録商標)、ニューライト(作新工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、低摩擦係数の点からニューライト(作新工業株式会社製)が好ましい。なお、前記内顆部受溝の表面に公知の潤滑剤が塗布乃至コーティングされていてもよい。
【0072】
―外顆部受溝―
前記外顆部受溝としては、前記内顆部受溝と同様に、前記脛骨コンポーネントの前記人体頭部側から見た面に形成され、前記外顆部と接しつつ前記外顆部の所定の転動及び回旋可能にする溝であれば、形状、形成箇所などに特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記外顆部受溝の形状としては、前記外顆部が所定の転動及び回旋可能とする形状の溝であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、開口形状が前記内顆部受溝の略中心を中心とした略楕円弧状であることが好ましい。また、その他にも、湾曲した略楕円形状や、略そら豆形状、いずれかの箇所で切断された略円弧形状であってもよい。更に、前記外顆部受溝が、長さ方向における両端のうちの一端側近傍に最下点を有する形状が好ましい。
前記外顆部受溝の形成箇所としては、前記脛骨コンポーネントの前記人体頭部側から見た面の外側(左足の前記膝継手の場合は左側、右足の前記膝継手の場合は右側)であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記外顆部受溝は、前記脛骨コンポーネントとは別の材質を表面に積層することも可能であり、前記外顆部受溝の材質としては、前記外顆部が転動及び回旋が可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。前記金属としては、例えば、クロム−ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ABS、FRP、テフロン(登録商標)、ニューライト(作新工業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、ニューライト(作新工業株式会社製)が好ましい。なお、前記外顆部受溝の表面に公知の潤滑剤が塗布乃至コーティングされていてもよい。
【0073】
―その他の部―
前記その他の部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、挿入穴、凹部、球状部、底面凹部などが挙げられる。
前記挿入穴としては、後述する接続部材の他端が挿入される穴であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記脛骨コンポーネントの前記人体頭部側から見た面の前記内顆部受溝の略中心、及び前記外顆部受溝の略中心から略等距離の位置に設けられる。更に、前記接続部材が前記外顆部及び前記内顆部に連動して揺動可能となるように、前記脛骨コンポーネントを前記人体頭部側から見た面から前記足首側から見た面に貫通させて前記外顆部受溝の形状に相似した形状に形成されているか、又は、後述する球状部側を頂点とする略円錐形状に穴が形成されていることが好ましく、前記外顆部と連動する関係で、前記外顆部受溝と同様に、開口形状が前記内顆部受溝の略中心を中心とする略楕円弧状の穴であることが好ましい。また、その他にも、湾曲した略楕円形状や、略そら豆形状、いずれかの箇所で切断された略円弧形状であってもよく、前記外顆受溝と同じ形状を用いてもよい。
【0074】
<離接防止手段>
前記離接防止手段としては、前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないようにすることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないように、かつ前記外顆部及び前記外顆部受溝が互いに離接しないようにすることができるものがより好ましい。該離接防止手段により、前記大腿骨コンポーネントと、前記脛骨コンポーネントとが動作中も互いの距離を保ちつつ、かつ、離接せずに動作させることができる。
前記離接防止手段の具体例としては、前記大腿骨コンポーネントから延設させた案内棒を前記脛骨コンポーネントに貫通させ、該案内棒に抜止防止部材を装着させた態様、前記大腿骨コンポーネントの両端、即ち前記内顆部及び前記外顆部から突出させた係合凸部を前記脛骨コンポーネントから立設させた壁面に貫通させた態様、前記大腿骨コンポーネント及び前記脛骨コンポーネントを収容する箱体を使用する態様、前記大腿骨コンポーネント及び前記脛骨コンポーネントを接続する接続部材を使用する態様、などが好適に挙げられる。
【0075】
前記箱体としては、前記大腿骨コンポーネントと、前記脛骨コンポーネントとを収容することができれば、その形状、構造、大きさ、材質などに特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記箱体の材質としては、前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとが動作しても破損しない素材であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。前記金属としては、例えば、クロム−ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ABS、FRP、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
【0076】
前記接続部材としては、前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとの互いの動作が可能なように接続することができれば、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記接続部材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、略T字形状、円筒体を有する形状などが挙げられる。
前記接続部材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記略T字形状の前記接続部材及び前記円筒体を有する前記接続部材において、一端を前記大腿骨コンポーネントと接続する構造とし、他端を前記脛骨コンポーネントと接続する構造が挙げられる。前記略T字形状の前記接続部材の構造としては、略棒状体の一端が前記略棒状体の長さ方向と直交方向に二股に延設され、かつ前記略棒状体の他端が前記略棒状体の最大径よりも大きな直径を有する球体を有する略T字状部材であって、前記略球状に形成された前記他端が脛骨コンポーネントに係合され、前記二股に延設された一端が大腿骨コンポーネントに係合された構造などが好適に挙げられる。
前記接続部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。前記金属としては、例えば、クロム−ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ABS、FRP、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
【0077】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、大腿骨側接続部材、脛骨側接続部材、駆動源、などが挙げられる。
【0078】
前記大腿骨側接続部材としては、前記大腿骨コンポーネントと接続できれば特に制限はなく、形状、構造、大きさ、接続箇所などについて適宜選択することができる。
前記大腿骨側接続部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。前記金属としては、例えば、クロム−ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ABS、FRP、テフロン(登録商標)、ニューライト(作新工業株式会社製)などが挙げられる。
【0079】
前記脛骨側接続部材としては、前記脛骨コンポーネントと接続できれば特に制限はなく、形状、構造、大きさ、接続箇所などについて適宜選択することができる。
前記脛骨側接続部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。前記金属としては、例えば、クロム−ニッケル合金、チタン合金、ステンレススチール、アルミニウム、鉄などが挙げられる。前記樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ABS、FRP、テフロン(登録商標)、ニューライト(作新工業株式会社製)などが挙げられる。
【0080】
前記駆動源としては、膝継手を駆動することができるものであれば、駆動源の取り付け方、駆動方式、制御方法などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記膝継手に前記駆動源を用いることにより、センサなどの制御によって、前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとが成す角度を所定の角度で固定をしたり、別の角度から所定の角度へ動かすことが可能となる。例えば、階段の昇降などで、前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとが成す角度を一定の角度から別の角度に移行させることにより、階段の昇段を補助したりすることが可能となる。
【0081】
前記膝継手の取り付け及び装着方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。公知の取り付け及び装着方法を用いることができる。例えば、前記大腿骨側のその他の部材と接続させる際には、前記大腿骨側接続部材を介して接続させることができる。また、前記脛骨側のその他の部材と接続させる際には、前記脛骨側接続部材を介して接続させることができる。前記接続の方法としては、公知の接続方法を用いることができ、例えば、前記大腿骨側接続部材と前記大腿骨側のその他の部材とを、螺合、嵌合、接合、接着する接続方法などが挙げられる。また、前記頚骨側接続部材も同様に、前記頚骨側接続部材と前記頚骨側接続部材とを、螺合、嵌合、接合、接着する接続方法などが挙げられる。
【0082】
(義足)
本発明の義足100は、
図27に表すように、本発明の膝継手10と、足部120と、ソケット110と、を有し、膝継手10とソケット110とは、大腿骨側からの延設部材60を介して接続され、膝継手10と足部120とは、脛骨側からの延設部材70を介して接続される。また、本発明の義足100は、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0083】
<足部>
前記足部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、踏み返し動作と歩行を容易にする役割を有し、装着者が一般的な歩行や、スポーツなどの激しい運動などの用途に応じて、公知の足部を適宜選択して使用することができ、単軸足部、多軸足部、エネルギー蓄積足部などが挙げられる。
前記単軸足部は、足関節に相当する部分に継手が配置され、前記継手は前後に動く継手であり、踵を着いた際にバンパーが撓んで衝撃を吸収する足部である。
前記多軸足部は、軸が2つ以上設置されており、例えば、前後及び左右の動きのある足部とすることができる。また、用途に応じて更に軸が追加される。
前記エネルギー蓄積足部は、踵着床から体重負荷のエネルギーを蓄積し、踏み切りに利用する機能を有する足部である。
前記足部は、前記膝継手の前記脛骨コンポーネントと、所定の部材を介して接続するものであり、例えば、前記脛骨側接続部材を介して、前記足部の上部と、前記膝継手の前記脛骨コンポーネントとが接続される。
【0084】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソケット、股継手、アクチュエータ、センサなどが挙げられる。
【0085】
前記ソケットとしては、断端末を覆うことで義足の安定と装着者の体重を支える役割を有するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記ソケットは、股義足や大腿義足などの種類によって形状、材質が異なり、公知のソケットを使用することができ、例えば、股義足の股ソケット、大腿義足の大腿ソケットなどが挙げられる。
前記股ソケットとしては、例えば、骨盤全体を覆い、義足の懸垂を腸骨稜で行いつつ体重支持を断端下部と前後の支持面で行うもので、カナダ式ソケットなどが挙げられる。
前記大腿ソケットとしては、その上半部側が空洞部分になっており、空洞部分の上端側となる前記大腿ソケットの上端は開口されていて、この上端の開口部分から内部の空洞部分に、切断脚の断端部を挿入して装着するようになっている。例えば、四辺形ソケット、坐骨収納型ソケット(IRC)、MASソケットなどが挙げられる。
前記ソケットは、前記膝継手の前記大腿骨コンポーネントと、所定の部材を介して接続するものであり、例えば、大腿骨側接続部材を介して、前記ソケットの下部と、前記膝継手の前記大腿骨コンポーネントとが接続される。
【0086】
前記股継手は、前記股義足の場合、前記股ソケットの下部に配置され、人間の股関節などと同様の動きを模擬的に再現する継手である。
【0087】
前記アクチュエータとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、油圧シリンダ、空圧シリンダ、水圧シリンダ、ソレノイドなどが挙げられる。前記アクチュエータを前記義足に備えることにより、前記義足全体の必要か箇所に駆動力を伝達しつつ制御を行うことが可能であるため有利である。
【0088】
前記センサとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記足部が接地した瞬間を検知するセンサや、義足がどのような状態にあるか検知する角度センサ、また、歩行速度を検知する速度センサなどが挙げられる。前記センサを前記義足に備えることにより、義足の状態によって制御が可能であるため有利である。
【0089】
(パワーアシスト装置)
本発明のパワーアシスト装置は、本発明の膝継手と、アクチュエータとを有し、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0090】
<アクチュエータ>
前記アクチュエータとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記義足の前記アクチュエータと同様に、例えば、油圧シリンダ、空圧シリンダ、水圧シリンダ、及びソレノイドなどが挙げられる。前記アクチュエータを前記パワーアシスト装置に備えることにより、駆動力が前記膝継手を含む必要な箇所に伝達され、パワーアシスト装置を装着した操作者の負担を軽減させることができる。
【0091】
<その他の部材>
前記その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、駆動源、制御部、センサなどが挙げられる。
【0092】
前記駆動源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記アクチュエータや、前記パワーアシスト装置が備える他の部材に駆動力を供給することができる。例えば、モータなどが挙げられる。
【0093】
前記制御部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記アクチュエータ及び前記駆動源を制御する機能を有しており、例えば、前記駆動源からの動力の伝達経路を制御したり、動力の大きさを制御したり、様々な制御をすることができる。また、コンピュータ制御とすることにより、自動制御を可能としている。更に、外部に前記制御部を設けて、前記パワーアシスト装置に接続する構造としてもよい。
【0094】
前記センサとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記足部の前記センサと同様に、前記パワーアシスト装置の足部が接地した瞬間を検知するセンサや、角度を検知する角度センサ、また、歩行速度を検知する速度センサなどが挙げられる。前記制御部と接続することで、前記制御部に各前記センサの情報が伝達され、詳細な制御が可能となる。
【0095】
前記パワーアシスト装置とは、操作者が物体を移動させたりする動作の際に、操作する力に基づき、アクチュエータが駆動力を発生させて、操作者の負担を軽減する装置である。前記パワーアシスト装置としては、例えば、人間の腰から下の部分の背面に装着するもの、人間の腰から下の部分の両足の各両側面に装着するもの、体全体に装着するものなどがある。膝の部分においては、片足ごと両側に装着するもの、背面から支えるもの、全体を覆うものなどがある。
前記パワーアシスト装置が、本発明の膝継手を備えることにより、人間の膝関節と同様の動きを再現する膝継手を備えることができる上に、コストを抑えることができる。
【0096】
また、パワードスーツにも、本発明の膝継手を備えることで、好適に実施し得る。
更に、本発明の膝継手はロボットにも活用することが可能であり、より人間の膝関節の動きを模したロボットを提供することが可能となる。
【0097】
なお、ここで以下に本発明の好ましい態様を記載することとする。
<1> 略半球状部分を少なくとも有する内顆部、及び略半球状部分を少なくとも有する外顆部を有する大腿骨コンポーネントと、
前記内顆部と接しつつ前記内顆部を転動可能にする内顆部受溝、及び前記外顆部と接しつつ前記内顆部の転動に伴って前記外顆部を転動可能にしかつ前記内顆部を回旋軸として回旋可能にする外顆部受溝を有する脛骨コンポーネントと、
前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないようにする離接防止手段と、
を有することを特徴とする膝継手である。
前記<1>に記載の膝継手においては、屈曲運動の際、前記大腿骨コンポーネントにおける、略半球状部分を少なくとも有する前記内顆部及び略半球状部分を少なくとも有する前記外顆部が、前記脛骨コンポーネントにおける前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝にそれぞれ接した状態で各溝の形状に沿って転動及び回旋をする。このとき、前記離接防止手段が、前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないようにする。前記<1>に記載の膝継手によると、前記内顆部及び前記外顆部が蝶番のような画一的な動きではなく、前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝のそれぞれによって、前記内顆部が転動可能となり、前記外顆部が転動及び回旋可能となるため、人間の膝関節と同様の動きが正確に再現され、特に深屈曲の状態から伸脚までの一連の動きが円滑かつ正確に再現される。また、人工膝関節とは違い、前記膝継手においては、膝蓋骨に該当する部材が要らず、複雑な機構は必要なく、簡単な構造で人間の膝関節の動きが正確に再現される。
【0098】
<2> 前記内顆部受溝の開口形状が、略真円形であり、
前記外顆部受溝の開口形状が、前記内顆部受溝の略中心を中心とした略楕円弧状であり、長さ方向における両端のうちの一端側近傍に最下点を有する前記<1>に記載の膝継手である。
前記<2>に記載の膝継手においては、前記内顆部受溝の開口形状が、略真円形であるので、前記内顆部に載置された前記内顆部は、ピポット軸として機能する。前記内顆部が前記内顆部受溝上を転動すると、それに伴って、前記外顆部が、前記外顆部受溝上を転動しつつ、前記人体頭部側から見た前記外顆部受溝の形状が、内顆部受溝の略中心を中心とする略楕円弧状であるため、前記外顆部が前記内顆部を中心として回旋する。また、前記外顆部受溝の形状が、その長さ方向における両端のうちの一端側近傍に最下点を有するため、前記外顆部が前記内顆部を中心として円滑に回旋する。このため、前記膝継手は、人間の膝関節と同様の動きが再現可能となる。
【0099】
<3> 前記離接防止手段が、前記内顆部及び前記外顆部を貫通して接続する両顆接続部の両端に位置する係合凸部、並びに、前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝が形成された受溝形成プレート部の両端部にかつ該受溝形成プレート部と直交方向に立設された一対の係合凸部係合用壁部に設けられた係合凸部案内孔、である前記<1>から<2>のいずれかに記載の膝継手である。
前記<3>に記載の膝継手においては、前記係合凸部案内孔を前記係合凸部が貫通する。前記両顆接続部における両端に位置する前記係合凸部が、一対の係合凸部係合用壁部に儲けられた前記係合凸部案内孔に挟持され、支持される。このため、前記内顆部及び前記外顆部が前記受溝形成プレート部から離接することがない。
【0100】
<4> 前記離接防止手段が、前記脛骨コンポーネントにおける、前記内顆部受溝の略中心及び前記外顆部受溝の略中心から略等距離の位置に設けられ、かつ前記案内部が挿入される案内孔、並びに、前記内顆部及び前記外顆部を貫通して接続する両顆接続部から、該両顆接続部の長さ方向と直交方向に延設され、かつ前記案内孔を貫通すると共に脱離防止部材が設けられた案内部、である前記<1>から<2>のいずれかに記載の膝継手である。
前記<4>に記載の膝継手においては、前記案内孔を貫通する前記案内部に前記脱離防止部材が設けられているので、前記内顆部及び前記外顆部が前記受溝形成プレート部から離接することがない。
【0101】
<5> 前記脛骨コンポーネントにおける、前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝が形成された平面とは反対側に、脛骨側接続部材を有し、前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝に載置された前記内顆部及び前記外顆部における、前記平面と略平行な位置に大腿骨側接続部材を有し、前記脛骨側接続部材及び前記大腿骨側接続部材の中心軸を含み、かつ前記平面に対し略直交する方向に位置する第一の平面が、前記内顆部及び前記外顆部の略中心を含み、かつ前記平面に対し略直交する方向に位置する第二の平面よりも前方に位置する、前記<1>から<4>のいずれかに記載の膝継手である。
前記<5>に記載の膝継手においては、前記第一の平面が、前記第二の平面に対してオフセットの位置にあることから、人間の膝関節の動きが忠実に再現される。
【0102】
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の膝継手と、前記膝継手における脛骨コンポーネントと接続された足部とを有することを特徴とする義足である。
前記<6>に記載の義足においては、前記膝継手が、屈曲運動の際、前記大腿骨コンポーネントにおける、略半球状部分を少なくとも有する前記内顆部及び略半球状部分を少なくとも有する前記外顆部が、前記脛骨コンポーネントにおける前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝にそれぞれ接した状態で各溝の形状に沿って転動及び回旋する。このとき、前記膝継手における前記離接防止手段が、前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないようにする。そして、前記膝継手には前記足部が接続されているので、前記義足は、前記膝継手において、人間の膝の屈曲運動と同じ動きが正確に再現される。前記義足においては、複雑な機構は必要なく、簡単な構造で人間の膝関節の動きが再現される。
【0103】
<7> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の膝継手と、前記膝継手を駆動させるアクチュエータとを有することを特徴とするパワーアシスト装置である。
前記<7>に記載のパワーアシスト装置においては、前記膝継手が、屈曲運動の際、前記大腿骨コンポーネントにおける、略半球状部分を少なくとも有する前記内顆部及び略半球状部分を少なくとも有する前記外顆部が、前記脛骨コンポーネントにおける前記内顆部受溝及び前記外顆部受溝にそれぞれ接した状態で各溝の形状に沿って転動及び回旋する。このとき、前記膝継手における前記離接防止手段が、前記内顆部及び前記内顆部受溝が互いに離接しないようにする。そして、前記膝継手は、前記アクチュエータにより駆動され、駆動時には、前記膝継手において人間の膝の屈曲運動と同じ動きが忠実に再現される。前記パワーアシスト装置においては、複雑な機構は必要なく、簡単な構造で人間の膝関節の動きが再現される。