【解決手段】使い捨ておむつ1の上部弾性部材45は、胴部開口11から胴周り部407に亘って外装シート本体40に接合される。上部弾性部材45は1枚の弾性フィルムである。これにより、パンツタイプの使い捨ておむつ1の外観性を向上することができる。使い捨ておむつ1では、上部弾性部材45が収縮することにより、胴部開口周辺部408に胴部開口ギャザーが形成され、胴周り部407に中間ギャザーが形成される。上部弾性部材45では、胴周り部407に配置される第2領域452の引張応力が、胴部開口周辺部408に配置される第1領域451の引張応力よりも小さい。このため、胴部開口11近傍の部位における比較的強い密着と、着用者の下腹部および臀部に接する胴周り部407の比較的柔らかな着用感とを、1枚の弾性フィルムである上部弾性部材45により実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および
図2はそれぞれ、本発明の一の実施の形態に係る使い捨て着用品1の正面図および背面図(すなわち、着用者の腹側および背側に位置する部位の図)である。
図1および
図2に示すように、使い捨て着用品1は、上端(すなわち、
図1および
図2中の上側の端部)に胴部開口11を有し、下部に一対の脚部開口12を有するパンツタイプの着用品である。使い捨て着用品1は、着用者からの排泄物を受ける使い捨て吸収性物品であり、以下の説明では「使い捨ておむつ1」という。
図1および
図2では、左右方向に伸張した状態の使い捨ておむつ1を示す。
【0018】
図3は、使い捨ておむつ1を展開した状態で着用者側から見た平面図である。
図1ないし
図3に示すように、使い捨ておむつ1は、外装シート4と、吸収体20とを備える。外装シート4は、上端に胴部開口11を有し、下部に一対の脚部開口12を有する。吸収体20は、外装シート4の内面(すなわち、着用者側の面)上に取り付けられ、着用者からの排泄物を吸収する略シート状の部材である。外装シート4は、外装シート本体40と、股下弾性部材43と、上部弾性部材45とを備える。外装シート本体40は、上述の胴部開口11を上端に有し、上述の一対の脚部開口12を下部に有する。股下弾性部材43および上部弾性部材45は、外装シート本体40に伸張状態にて接合される。
【0019】
使い捨ておむつ1では、
図3中の上側の部位が着用者の前側(腹側の肌)を覆い、
図3中の下側の部位が着用者の後側(背側の肌)を覆う。以下の説明では、外装シート4の着用者の腹側および背側に位置する部位をそれぞれ、「前方部401」および「後方部403」と呼び、前方部401と後方部403との間で前方部401および後方部403から連続するとともに着用者の股間部を覆う部位を「股下部402」と呼ぶ。使い捨ておむつ1では、外装シート4が前方部401、股下部402および後方部403を備え、吸収体20は、外装シート4の前方部401から股下部402を経由して後方部403へと至る。
【0020】
使い捨ておむつ1が製造される際には、外装シート4が吸収体20と共に股下部402にて折り曲げられ、股下部402を下側に向けた際の前方部401の左右両側に位置する帯状の部位404の内面と、後方部403の左右両側に位置する帯状の部位405の内面とが、加熱および押圧による熱融着によりそれぞれ接合される。帯状の部位404の内面とは、前方部401の着用者に接する面である内面の両側端から側方に連続する面であり、
図3中の手前側の面である。また、帯状の部位405の内面とは、後方部403の着用者に接する面である内面の両側端から側方に連続する面であり、
図3中の手前側の面である。
【0021】
このように、一対の帯状の部位404と一対の帯状の部位405とが接合されることにより、
図1および
図2に示すように、前方部401の両側端と後方部403の両側端とが接続され、前方部401および後方部403の上端に胴部開口11が形成される。また、前方部401および後方部403の下側において股下部402の左右に一対の脚部開口12が形成されるとともに、胴部開口11と一対の脚部開口12とのそれぞれの間において上下方向に伸びる一対の帯状突出部13が形成される。各帯状突出部13は、前方部401と後方部403との間の接続線400から側方へと突出する帯状の部位である。
【0022】
図4は、使い捨ておむつ1を
図3中に示すA−Aの位置(すなわち、股下部402)で切断した断面図である。
図4では、図示の都合上、使い捨ておむつ1の各構成を離して描いている(
図5においても同様)。
図3および
図4に示すように、吸収体20は、略シート状の本体部2と、一対のサイドシート3とを備える。一対のサイドシート3は、本体部2の両側部上(すなわち、上下方向に垂直な左右方向の両側)に配置され、本体部2の長手方向のおよそ全長に亘って設けられる。本体部2は、
図4に示すように、トップシート21と、吸収コア22と、バックシート23とを備える。吸収コア22は、トップシート21とバックシート23との間に配置される。
図3では、図の理解を容易にするために、吸収体20の吸収コア22の輪郭を太破線にて描いている(
図1および
図2においても同様)。
【0023】
図3に示すように、吸収コア22の長手方向の両端部における幅は、吸収コア22の長手方向の中央部における幅よりも大きい。換言すれば、吸収コア22は、いわゆる砂時計型である。
図4のバックシート23はホットメルト接着剤等により外装シート4上に接合され、これにより、吸収体20が外装シート4に固定される。
【0024】
図4に示すように、一対のサイドシート3はそれぞれ、長手方向の全長に亘って設けられた折り曲げ線39の一方側の部位である帯状の接合部33、および、折り曲げ線39の他方側の部位である側壁部34を備える。一対の接合部33は、本体部2の側方エッジ近傍において長手方向のおよそ全長に亘って本体部2の上側(すなわち、着用者側)にホットメルト接着剤を用いて接合される。一対の側壁部34は、折り曲げ線39である接合部33の左右方向の外側のエッジにて一対の接合部33から連続する部位であり、本体部2の両側部上において本体部2の長手方向のおよそ全長に亘って伸びる。
【0025】
一対の側壁部34はそれぞれ、長手方向における両端部において接合部33上に重ねられ、熱融着接合または超音波接合、あるいは、ホットメルト接着剤等による接着により接合部33上に固定される。側壁部34の自由端には側壁部弾性部材35が接合されており、側壁部弾性部材35が収縮することにより、いわゆる立体ギャザーが形成される。
【0026】
図5は、使い捨ておむつ1を
図3中に示すB−Bの位置で切断した部分断面図である。
図5では、使い捨ておむつ1の前側を示す。使い捨ておむつ1の後側の構造は、
図5に示す前側の構造と同様である。
図4および
図5に示すように、外装シート4の外装シート本体40は、外側シート41と、内側シート42と、エンドシート48とを備える。外側シート41は、外装シート本体40の最外層のシートである。
図5に示すように、内側シート42およびエンドシート48は、外側シート41の内面上(すなわち、着用者側)に積層され、ホットメルト接着剤等により外側シート41に接合される。外装シート本体40では、外側シート41は、着用者の前側、股間部および後側を覆う第1外装シートであり、エンドシート48および内側シート42は、第1外装シートの内面を覆う第2外装シート49である。
【0027】
エンドシート48は、外装シート本体40の前側および後側である前方部401および後方部403において、胴部開口11に沿って外装シート本体40の上部(すなわち、着用者に着用された状態の使い捨ておむつ1の上部)に配置される。内側シート42は、エンドシート48の下側において、前方部401から股下部402を経由して後方部403に亘って配置される。エンドシート48の下端部は、前方部401および後方部403において、内側シート42の上端部および吸収体20の上端部と重なり、吸収体20の上端部の内面上に接合される。換言すれば、エンドシート48は、外側シート41および内側シート42との間に、吸収体20の上端部を挟んで固定する。
図3に示すように、エンドシート48は、使い捨ておむつ1の左右方向(すなわち、
図3中における横方向)に関して外装シート4の幅のおよそ全体に亘って設けられる。
【0028】
図4に示す吸収体20のトップシート21は、透液性のシート材料であり、着用者からの排泄物の水分を速やかに捕捉して吸収コア22へと移動させる。トップシート21としては、例えば、表面を界面活性剤により親水処理した疎水性繊維(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン等)にて形成された透液性の不織布(ポイントボンド不織布やエアスルー不織布、スパンボンド不織布等)が利用される。なお、トップシート21として、セルロースやレーヨン、コットン等の親水性繊維により形成された不織布(例えば、スパンレース不織布)が利用されてもよい。
【0029】
吸収コア22は、トップシート21を透過した水分を吸収して迅速に固定する。吸収コア22は、例えば、粉砕したパルプ繊維やセルロース繊維等の親水性繊維に、粒状の高吸収性ポリマー(SAP(Super Absorbent Polymer))や高吸収性ファイバー等の高吸収性材料を混合したものを、ティッシュペーパーや透液性不織布等により包み込んで形成される。親水性繊維を包むティッシュペーパーや透液性不織布等は、親水性繊維および吸水性材料とホットメルト接着剤により接合されて、親水性繊維の型崩れ、および、吸水性材料の脱落(特に、吸水後における脱落)を防止する。
図1に示す使い捨ておむつ1では、吸収コア22はパルプ繊維およびSAPを含む。
【0030】
バックシート23は、トップシート21および吸収コア22を透過した排泄物の水分等を受け、当該水分等が本体部2の外側にしみ出すのを防止する。バックシート23としては、例えば、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布(スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS(スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド)不織布等)や、撥水性または不透液性のプラスチックフィルムが利用される。バックシート23にプラスチックフィルムが利用される場合、使い捨ておむつ1のムレを防止して着用者の快適性を向上するという観点からは、透湿性(通気性)を有するプラスチックフィルムが利用されることが好ましい。
【0031】
サイドシート3のシート本体としては、例えば、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布(スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS不織布等)が利用される。側壁部弾性部材35としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が利用される。
図1に示す使い捨ておむつ1では、ポリウレタン糸が側壁部弾性部材35として利用される。
【0032】
図5に示す外装シート本体40の外側シート41、内側シート42およびエンドシート48としては、例えば、バックシート23と同様に、疎水性繊維にて形成された撥水性または不透液性の不織布(スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、SMS不織布、エアスルー不織布等)、プラスチックフィルム、あるいは、当該不織布とプラスチックフィルムとが積層された積層シートが利用される。プラスチックフィルムとしては、透湿性(通気性)を有するものが利用されることが好ましい。また、外側シート41、内側シート42およびエンドシート48として、トップシート21と同様に、親水性繊維により形成された不織布、または、親水処理した疎水性繊維にて形成された透液性の不織布が利用されてもよい。外側シート41、内側シート42およびエンドシート48は、それぞれ異なる材料により形成されてもよく、同じ材料により形成されてもよい。
【0033】
外装シート4の外側シート41は、胴部開口11のエッジ111にて着用者側に折り返される折り返し部46を備える。折り返し部46の下端は、エンドシート48の上端よりも下側、かつ、吸収体20の上端よりも上側に位置する。エンドシート48の上端部は、外側シート41の折り返し部46に対向する部位である対向部47と、折り返し部46との間に挟まれる。折り返し部46は、対向部47およびエンドシート48の上端部に接合される。
【0034】
以下の説明では、外装シート本体40のうち、胴部開口11のエッジ111近傍の部位を「胴部開口周辺部408」と呼ぶ。具体的には、胴部開口周辺部408は、胴部開口11のエッジ111から、折り返し部46とエンドシート48との重複部に至る部位である。
図1および
図2に示すように、胴部開口周辺部408は、胴部開口11のエッジ111に沿う略環状の部位である。また、外装シート本体40のうち、各脚部開口12のエッジ121近傍の部位を「脚部開口周辺部409」と呼ぶ。脚部開口周辺部409は、脚部開口12のエッジ121に沿う略環状の部位である。さらに、外装シート本体40のうち、胴部開口周辺部408の下端と一対の脚部開口周辺部409の上端との間の部位を「胴周り部407」と呼ぶ。胴周り部407は、胴部開口周辺部408の下側に沿って拡がる略環状の部位である。
【0035】
一対の脚部開口周辺部409では、股下弾性部材43が脚部開口12のエッジ121の略全周に沿って配置され、外装シート本体40の外側シート41と内側シート42(
図5参照)との間に接合される。股下弾性部材43としては、例えば、ポリウレタン糸、帯状のポリウレタンフィルム、糸状または帯状の天然ゴム等が利用される。
図1および
図2に示す例では、股下弾性部材43は、略平行に配置された複数の弾性糸(例えば、ポリウレタン糸)を備える。
【0036】
前方部401および後方部403のそれぞれにおいて、上部弾性部材45は、1枚の弾性フィルムであり、胴部開口11から胴周り部407に亘って拡がり、脚部開口12の上端に至る範囲にて外装シート本体40に接合される。
図1および
図2では、上部弾性部材45に平行斜線を付す(
図3においても同様)。上部弾性部材45としては、例えば、ポリウレタンフィルム等のプラスチックフィルムが利用される。
【0037】
上部弾性部材45は、
図5に示すように、胴部開口周辺部408において折り返し部46と対向部47との間に位置する。上部弾性部材45は、胴周り部407においてエンドシート48と外側シート41との間、および、内側シート42と外側シート41との間に位置する。換言すれば、上部弾性部材45は、胴周り部407において第1外装シートと第2外装シート49との間に位置する。また、上部弾性部材45は、一対の脚部開口周辺部409(
図1および
図2参照)の上端部、および、当該一対の上端部の左右方向の間の部位において、内側シート42と外側シート41との間に位置する。以下の説明では、一対の脚部開口周辺部409の上端部、および、当該一対の上端部の左右方向の間の部位を、「胴回り下部410」と呼ぶ。
【0038】
図1および
図2に示すように、前方部401および後方部403のそれぞれにおいて、上部弾性部材45は、一対の接続線400の間の左右方向の略全長(すなわち、前方部401および後方部403のそれぞれの左右方向の略全長)に亘って拡がる。
図1および
図2では、上部弾性部材45のうち、胴部開口周辺部408に位置する領域である第1領域451、および、胴回り下部410に位置する領域である第3領域453には、胴周り部407に位置する領域である第2領域452よりも密な平行斜線を付す(
図3においても同様)。上部弾性部材45の第3領域453は、脚部開口12の上方にて股下弾性部材43の上端部と重なる。
【0039】
使い捨ておむつ1では、上部弾性部材45が左右方向に収縮することにより、胴部開口11の周囲の胴部開口周辺部408に胴部開口ギャザーが形成される。また、上部弾性部材45が左右方向に収縮することにより、胴周り部407に、着用者の下腹部および臀部に接する中間ギャザー(いわゆる、ボディーフィットギャザー)が形成される。
【0040】
使い捨ておむつ1では、一対の脚部開口周辺部409において股下弾性部材43が収縮し、胴回り下部410において上部弾性部材45が左右方向に収縮する。これにより、外装シート本体40が収縮し、着用者の脚周りに接する一対の脚部ギャザーが形成される。使い捨ておむつ1では、上部弾性部材45の胴回り下部410に位置する部位(すなわち、第3領域453)、および、股下弾性部材43は、一対の脚部ギャザーを形成する脚部弾性部材である。
【0041】
図6は、前方部401に配置される上部弾性部材45を拡大して示す正面図である。後方部403に配置される上部弾性部材45も、
図6に示す上部弾性部材45と同様の構造を有する。上部弾性部材45は、略矩形状の弾性シートである。上部弾性部材45の左右方向の伸縮性は、好ましくは、上下方向の伸縮性よりも大きい。換言すれば、上部弾性部材45の上下方向の保形性は、好ましくは、左右方向の保形性よりも大きい。
【0042】
上部弾性部材45の上端部には、胴部開口11に沿って左右方向に拡がる略帯状の第1領域451が位置し、上部弾性部材45の下端部には、左右方向に拡がる略帯状の第3領域453が位置する。また、上部弾性部材45の中央部、すなわち、第1領域451と第3領域453との間には、第1領域451および第3領域453に隣接して左右方向に拡がる略帯状の第2領域452が位置する。換言すれば、第2領域452は、第1領域451の下側にて胴周り部407(
図1および
図2参照)に配置され、第3領域453は第2領域452の下側にて胴回り下部410に配置される。
図6では、第1領域451と第2領域452とのおよその境界、および、第2領域452と第3領域453とのおよその境界を二点鎖線にて示す。
【0043】
使い捨ておむつ1では、好ましくは、第2領域452の上下方向の幅は、第1領域451および第3領域453のそれぞれの上下方向の幅よりも大きい。第2領域452の上下方向の幅は、好ましくは、上部弾性部材45の上下方向の幅の10%以上20%以下であり、より好ましくは、12%以上15%以下である。第1領域451の上下方向の幅は、例えば、第3領域453の上下方向の幅におよそ等しい。第3領域453の上下方向の幅は、例えば、第1領域451の上下方向の幅よりも小さくてもよい。
【0044】
上部弾性部材45である弾性フィルムは、好ましくは、延伸フィルムである。上部弾性部材45では、第2領域452に複数の開孔455が設けられる。複数の開孔455は、第2領域452のおよそ全体に亘って略均等に配置される。複数の開孔455は、左右方向および上下方向に略等間隔にて配列される。また、
図6に示す例では、第1領域451および第3領域453には、開孔は設けられない。上部弾性部材45では、第2領域452に設けられた複数の開孔455により、第2領域452の引張応力が、第1領域451の引張応力および第3領域453の引張応力よりも小さくなる。第3領域453の引張応力は、例えば、第1領域451の引張応力におよそ等しい。また、例えば、第3領域453の引張応力は、第2領域452の引張応力よりも大きく、かつ、第1領域451の引張応力よりも小さくてもよい。
【0045】
図7は、延伸される前の状態の(すなわち、形成途上の)上部弾性部材45である弾性フィルム450を示す正面図である。
図7に示すように、延伸前の弾性フィルム450には、左右方向および上下方向に配列される複数のスリット456が設けられる。スリット456は、およそ左右方向に延びる略直線状の貫通切り込みである。そして、
図7に示す弾性フィルム450が左右方向および上下方向に延伸される際に、複数のスリット456が拡張されることにより、
図6に示す上部弾性部材45の複数の開孔455となる。弾性フィルム450の延伸の際に形成される複数の開孔455はそれぞれ、例えば、略菱形状や略楕円状である。弾性フィルム450は、左右方向および上下方向共に延伸しやすい部材である。弾性フィルム450の延伸は、例えば、噛み合いギアにより行われる。これにより、弾性フィルム450を略均一に延伸することができる。
【0046】
図5に示すように、外装シート4では、第1外装シートである外側シート41と、第2外装シート49であるエンドシート48および内側シート42とが、上部弾性部材45の第2領域452の複数の開孔455を介して直接的に対向し、複数の開孔455を介して接合される。複数の開孔455を介しての外側シート41と第2外装シート49との接合は、例えば、ホットメルト接着剤等の接着剤により行われる。当該接着剤は、好ましくは、外側シート41および第2外装シート49のうち一方に塗布される。接着剤の塗布は、好ましくは、カーテン塗工やスパイラル塗工により行われる。
【0047】
以上に説明したように、パンツタイプの使い捨ておむつ1は、外装シート本体40と、上部弾性部材45とを備え、上部弾性部材45は、胴部開口11から胴周り部407に亘って外装シート本体40に接合される。上部弾性部材45は、外装シート本体40の前側および後側において、1枚の弾性フィルムであり、第1領域451と第2領域452とを備える。第1領域451は、胴部開口11に沿って左右方向に拡がる帯状であり、胴部開口11の周囲の胴部開口周辺部408に配置される。第2領域452は、左右方向に拡がる帯状であり、第1領域451の下側にて胴周り部407に配置される。
【0048】
使い捨ておむつ1では、外装シート本体40の前側および後側のそれぞれにおいて、1枚の弾性フィルムを接合することで胴部開口ギャザーおよび中間ギャザーを形成することができるため、胴部開口ギャザー用の弾性部材と中間ギャザー用の弾性部材とを個別に設ける場合に比べて、使い捨ておむつ1の構造および製造工程を簡素化することができる。また、左右方向に延びる多数の弾性糸や線状弾性フィルムを胴部開口11から胴周り部407に亘って上下方向に配列する場合に比べて、着用者が胴部開口周辺部408および胴周り部407における弾性糸または弾性フィルムによる締め付けを意識することを抑制することができる。さらに、パンツタイプの使い捨ておむつ1の外観を、通常の下着であるパンツに近づけ、使い捨ておむつ1の外観性を向上することができる。
【0049】
使い捨ておむつ1では、上部弾性部材45が収縮することにより、胴部開口周辺部408に胴部開口ギャザーが形成され、胴周り部407に中間ギャザーが形成される。上述のように、各上部弾性部材45では、胴周り部407に配置される第2領域452の引張応力が、胴部開口周辺部408に配置される第1領域451の引張応力よりも小さい。このため、1枚の弾性フィルムである上部弾性部材45を胴部開口11から胴周り部407に亘って設けることにより、胴部開口11近傍の部位における比較的強い密着と、着用者の下腹部および臀部に接する胴周り部407の比較的柔らかな着用感とを実現することができる。その結果、使い捨ておむつ1の着用感を向上することができる。
【0050】
上部弾性部材45では、第2領域452に設けられた複数の開孔455により、第1領域451と第2領域452との引張応力の差を容易に実現することができる。また、第2領域452と第3領域453との引張応力の差も容易に実現することができる。さらに、複数の開孔455により第2領域452の通気性を向上することができるため、使い捨ておむつ1の胴周り部407の通気性を向上することができる。
【0051】
上述のように、上部弾性部材45は延伸フィルムであり、第2領域452の複数の開孔455は上部弾性部材45の延伸の際に形成される。これにより、上部弾性部材45の延伸後に開孔を形成する場合に比べて、複数の開孔455を容易に形成することができる。上部弾性部材45が形成される際には、延伸前の弾性フィルム450に複数のスリット456が設けられ、弾性フィルム450の延伸の際に、複数のスリット456が拡張されることにより複数の開孔455となる。これにより、複数の開孔455の形成をより一層容易とすることができる。また、スリット456の長さ等を変更することにより、上部弾性部材45における第2領域452の引張応力を容易に調節することができる。さらには、スリット456の向きを変更することにより、第2領域452において、引張方向による引張応力の差を容易に実現することもできる。
【0052】
使い捨ておむつ1では、第1外装シートである外側シート41と、第2外装シート49である内側シート42およびエンドシート48とが、上部弾性部材45の複数の開孔455を介して接合される。これにより、第1外装シートと第2外装シート49とを容易に接合することができる。また、上部弾性部材45の位置ずれを抑制することができる。さらに、外側シート41と第2外装シート49とが接着剤により接合される場合、外側シート41および第2外装シート49の一方のみに接着剤が塗布されることにより、外側シート41、上部弾性部材45および第2外装シート49の互いに対する固定に使用される接着剤の量を低減することができる。これにより、使い捨ておむつ1の外面の風合いを向上することもできる。
【0053】
上述のように、上部弾性部材45は、第2領域452の上側および下側に第2領域452よりも引張応力が大きい第1領域451および第3領域453を備える。このように、比較的変形しにくい第1領域451および第3領域453が上部弾性部材45の上下方向の両端部に設けられることにより、使い捨ておむつ1の製造の際に、上部弾性部材45の取り扱いを容易とすることができるとともに、上部弾性部材45の上端および下端の位置決めを容易とすることもできる。さらに、上部弾性部材45を形成する際に、第1領域451および第3領域453を保持することにより、延伸による引張応力の領域差を容易に実現することができる。
【0054】
上述の使い捨ておむつ1に関して、様々な変更が可能である。
【0055】
例えば、
図7に示す弾性フィルム450では、複数のスリット456の数、形状、向き等は適宜変更されてよい。例えば、
図8に示すように、上下方向に略平行に延びる複数のスリット456aが、弾性フィルム450の第2領域452に対応する部位に略均等に配置されてもよい。また、
図9に示すように、左右方向に略平行に延びる複数のスリット456が設けられる領域と、上下方向に略平行に延びる複数のスリット456aが設けられる領域とが、左右方向において交互に配置されてもよい。
【0056】
弾性フィルム450では、必ずしもスリット456が設けられる必要はなく、例えば、楕円形、矩形または菱形の開孔が弾性フィルム450に設けられ、当該開孔が延伸の際に拡張されることにより開孔455が形成されてもよい。
【0057】
上部弾性部材45では、複数の開孔455の数は、
図6に示すものよりも多くても少なくてもよい。また、各開孔455の大きさおよび形状は適宜変更されてよい。例えば、複数の略直線状の開孔455(すなわち、スリット)が第2領域452に設けられてもよい。複数の開孔455は、第2領域452において略均等に配置される必要はなく、必ずしも第2領域452のおよそ全体に配置される必要もない。例えば、複数の開孔455が略均等に形成された帯状の開孔存在領域と、開孔が形成されない帯状の開孔不在領域とが、第2領域452において上下方向に交互に配列されてもよい。
【0058】
上部弾性部材45では、第1領域451および第3領域453に開孔が設けられてもよい。また、第1領域451および第3領域453と第2領域452との引張応力の差は、例えば、第1領域451および第3領域453に設けられた複数の開孔の密度と、第2領域452に設けられた複数の開孔455の密度との差により実現されてもよい。
【0059】
第1領域451および第3領域453と第2領域452との引張応力の差は、必ずしも、開孔により実現される必要はない。例えば、上部弾性部材45に開孔を形成することなく、第1領域451および第3領域453に施される延伸の程度と、第2領域452に施される延伸の程度とを異ならせることにより、第1領域451および第3領域453と第2領域452との引張応力の差が実現されてもよい。
【0060】
上部弾性部材45では、第3領域453が省略されてもよい。上部弾性部材45は、必ずしも延伸シートである必要はない。
【0061】
外側シート41、上部弾性部材45および第2外装シート49の互いに対する固定は、必ずしも接着剤により行われる必要はなく、他の様々な方法により行われてもよい。例えば、超音波融着や熱圧着により外側シート41、上部弾性部材45および第2外装シート49が接合されてもよい。この場合の接合部は、例えば、複数の開孔455を避けて設けられる。
【0062】
1枚の弾性フィルムである上部弾性部材45は、外装シート本体40の前側および後側の少なくとも一方に設けられていればよい。これにより、上記と同様に、使い捨ておむつ1の外観性を向上することができるとともに、胴部開口11近傍の部位における比較的強い密着と、着用者の下腹部および臀部に接する胴周り部407の比較的柔らかな着用感とを実現することができる。
【0063】
上部弾性部材45は、1枚の弾性フィルムのみである必要はなく、第1領域451および第2領域452を備える1枚の弾性フィルムを含んでいればよい。例えば、上部弾性部材45は、胴部開口11のエッジ111から僅かに下方に離間した位置から下方へと拡がる上述の1枚の弾性フィルムと、胴部開口11のエッジ111と当該弾性フィルムの上端縁との間に配置される単数または複数の上端部弾性糸とを備えていてもよい。この場合、上端部弾性糸と弾性フィルムの第1領域451とが胴部開口周辺部408に配置され、弾性フィルムの第2領域452が胴周り部407に配置される。胴部開口周辺部408では、弾性フィルムの第1領域451と上端部弾性糸とが重なっていてもよい。いずれの場合も、使い捨ておむつ1の外観性を向上することができるとともに、胴部開口11近傍の部位における比較的強い密着と、着用者の下腹部および臀部に接する胴周り部407の比較的柔らかな着用感とを実現することができる。
【0064】
使い捨ておむつ1の構造は、使い捨ておむつ以外の使い捨て着用品に適用されてもよい。例えば、使い捨ておむつ1の構造は、吸収パッド等の吸収具が着脱可能に取り付けられる取付部が、吸収体20に代えて外装シート4の内面上に取り付けられた使い捨て着用品に適用される。当該取付部は、例えば、撥水性または不透液性のシートにより形成されたシート部材であり、吸収具を止着可能な面ファスナ、あるいは、吸収具の端部を被覆して吸収具のずれを制限する被覆ギャザーを備える。
【0065】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。