特開2016-220544(P2016-220544A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三井ハイテックの特許一覧

<>
  • 特開2016220544-積層鉄心の製造方法 図000003
  • 特開2016220544-積層鉄心の製造方法 図000004
  • 特開2016220544-積層鉄心の製造方法 図000005
  • 特開2016220544-積層鉄心の製造方法 図000006
  • 特開2016220544-積層鉄心の製造方法 図000007
  • 特開2016220544-積層鉄心の製造方法 図000008
  • 特開2016220544-積層鉄心の製造方法 図000009
  • 特開2016220544-積層鉄心の製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-220544(P2016-220544A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20161125BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   H02K15/03 Z
   H02K1/27 502D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-191404(P2016-191404)
(22)【出願日】2016年9月29日
(62)【分割の表示】特願2012-111760(P2012-111760)の分割
【原出願日】2012年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】大田 祐三
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】平山 雄一
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】磁石挿入孔の容積が大きい鉄心本体に対しても、樹脂の充填不良が発生しにくい積層鉄心の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の磁石挿入孔12、13を有する鉄心本体15のそれぞれの磁石挿入孔12、13に永久磁石14を挿入した後、上型17と下型18で挟んだ状態で、樹脂溜めポット30から、磁石挿入孔12、13に樹脂を充填して永久磁石14を固定する積層鉄心の製造方法において、樹脂溜めポット30から共通ランナー31及びゲート孔33、34を介して磁石挿入孔12、13に樹脂を充填し、永久磁石14を固定し、カルプレート16を取り外す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄心片を積層して形成され、中央に軸孔を、その周囲に複数の磁石挿入孔を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入孔に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に設けられた樹脂溜めポットから、前記磁石挿入孔に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する積層鉄心の製造方法において、
前記樹脂溜めポットが形成された金型と、前記鉄心本体との間に、前記樹脂溜めポットから前記樹脂を少なくとも2つの前記磁石挿入孔に導く溝状の共通ランナーと、前記磁石挿入孔と一部が重なるゲート孔を有し、中央には前記鉄心本体の軸孔を挿通する位置決め軸が貫通する抜き孔が形成された一枚板のカルプレートを配置し、前記共通ランナー及び前記ゲート孔を介して前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入して硬化させた後、前記カルプレートを前記鉄心本体から取り外すことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記共通ランナーの側壁が前記鉄心本体から離間する方向に開く傾斜面となり、前記共通ランナーの側壁に連続する前記ゲート孔の側面が、前記鉄心本体から離間する方向に開く傾斜面となっていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜めポットの一部が、前記ゲート孔に重なり、前記樹脂溜めポットから直接前記ゲート孔に前記樹脂の一部が押し込まれることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は載の積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜めポットから排出された前記樹脂は前記カルプレートに形成された溝状の前記共通ランナーを介して前記ゲート孔に押し込まれることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心(例えば、回転子積層鉄心)の製造方法に係り、特に磁石挿入孔への樹脂の未充填を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や家電製品に使用するモータの回転子積層鉄心(ロータコアともいう)の製造にあっては、鉄心本体の磁極数に対応して形成された複数の磁石挿入孔に、未磁化の永久磁石を入れて外側から樹脂を入れて樹脂封止にて固定することが行われていた。
この永久磁石の樹脂封止にあっては、例えば、特許文献1に示すように、磁石挿入孔に永久磁石が挿入された鉄心本体を上型及び下型との間で挟持し、上型又は下型に設けられた樹脂溜めポットから溶融した熱硬化性樹脂を充填して行っていた。
【0003】
ところが、樹脂封止後、上型及び下型の間から樹脂封止した積層鉄心を取り出した後、磁石挿入孔の入口部分に付着して硬化した樹脂を除去し、更に表面を掃除する必要があり、著しく作業性に劣っていた。そこで、特許文献2に示すように、永久磁石の挿入された鉄心本体と、樹脂溜めポットが形成された上型又は下型の間に、カルプレート(ダミー板ともいう)を配置し、樹脂封止を終えた後、鉄心本体から樹脂滓をカルプレートと共に除去することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4865086号公報
【特許文献2】特開2008−54376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、積層鉄心からカルプレートを樹脂滓と共に除去するときに、磁石挿入孔に充填されて硬化していた樹脂の表面が剥離してその部分に凹部が発生するという問題があった。そこで、本出願人は、特願2010−272769号(以下、文献3という)にて、図8(A)、(B)に示すように、樹脂溜めポット90の吐出領域91の一部が、カルプレート92のゲート孔93に重なるようにして設けられ、樹脂溜めポット90から直接ゲート孔93に樹脂が流れ込む樹脂の充填方法を提案した。この発明では、ランナーを形成していない分だけ、樹脂滓の残りが少なく、樹脂の使用量を削減できるという利点があった。なお、図8(A)において、94は鉄心本体を、95は磁石挿入孔を、96は永久磁石を、97はプランジャをそれぞれ示す。
【0006】
しかしながら、樹脂溜めポット90からランナーを介さず直接ゲート孔93に樹脂を流し込む方法の場合、鉄心本体94の磁石挿入孔95の容積が大きくなるほど、樹脂の充填不良が発生する割合が増加する。その理由は、例えば、鉄心本体94の高さが高くなると、磁石挿入孔95の容積も必然的に大きくなるが、磁石挿入孔95の容積が大きくなるとこれに合わせて樹脂量も増やす必要があり、使用する樹脂タブレット(樹脂原料)のサイズも大きくなる。これを溶融させて、磁石挿入孔95へ充填する際の充填時間(溶融から硬化するまでの時間)は、樹脂の持つ条件で決まり、磁石挿入孔95の容積とは関係がない。即ち、磁石挿入孔95の容積が大きなもの程、一定時間内で多量の樹脂を充填する必要がある。
【0007】
そして、樹脂溜めポット90から直接ゲート孔93に樹脂を流し込むものでは、樹脂タブレットのサイズも大きくなったことで、時間内で完全に溶融できない流動性の低い樹脂が発生し、これがゲート孔93への樹脂の流入を阻害する働きをするため、定められた樹脂の充填時間に対して樹脂充填が間に合わず、その結果、磁石挿入孔95への充填不良が発生していることが判明した。
【0008】
また、文献3にはカルプレートにそれぞれ磁石挿入孔に対応するランナーを形成し、このランナーを介して樹脂溜めポットとゲート孔を連通するものも開示されており、上記の樹脂溜めポットから直接ゲート孔に樹脂を流し込むものに比べて、充填不良の発生は少なくなるものの、やはり、磁石挿入孔の容積が大きくなっていくと、樹脂の充填不良が発生する割合が増すことが判明している。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、磁石挿入孔の容積が大きい鉄心本体に対しても、樹脂の充填不良が発生しにくい積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片を積層して形成され、複数の磁石挿入孔を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入孔に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に設けられた樹脂溜めポットから、前記磁石挿入孔に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する積層鉄心の製造方法において、
前記樹脂溜めポットが形成された金型と、前記鉄心本体との間に、前記樹脂溜めポットから前記樹脂を少なくとも2つの前記磁石挿入孔に導く共通ランナーと、前記磁石挿入孔と一部が重なるゲート孔を有するカルプレートを配置し、前記共通ランナー及び前記ゲート孔を介して前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入して硬化させた後、前記カルプレートを前記鉄心本体から取り外す。
【0011】
本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜めポットの一部が、前記ゲート孔に重なり、前記樹脂溜めポットから直接前記ゲート孔に前記樹脂の一部が押し込まれるのが好ましい。
【0012】
本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜めポットから排出された前記樹脂は前記カルプレートに形成された溝状の前記共通ランナーを介して前記ゲート孔に押し込まれるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心はインナーロータであって、前記ゲート孔は、前記磁石挿入孔の半径方向内側から前記磁石挿入孔に重なるのが好ましい。
【0014】
そして、本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心はアウターロータであって、前記ゲート孔は、前記磁石挿入孔の半径方向外側から前記磁石挿入孔に重なる場合もある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る積層鉄心の製造方法においては、カルプレートに少なくとも2つの磁石挿入孔に同時に樹脂を導く共通ランナーを設けたことにより、樹脂を溶かしながら流動させる溶融流動領域が確保され、樹脂の流動性を高めることができた。その結果従来のように、流動性の低い樹脂が無くなり、これによるゲート孔への樹脂流入が阻害されることも無くなったため、定められた時間内で充填する樹脂量を増やすことが可能となった。
これにより、磁石挿入孔の容積が大きい鉄心本体に対しても、樹脂の未充填を発生させることなく、樹脂を磁石挿入孔に充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図、(B)は同製造方法に用いるカルプレートの部分拡大図である。
図2】同積層鉄心の製造方法に用いるカルプレートの平面図である。
図3】同積層鉄心の製造方法を実施するための装置の説明図である。
図4】(A)、(B)はそれぞれ同積層鉄心の製造方法における樹脂の流れの説明図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用した樹脂溜めポットから磁石挿入孔に充填される樹脂の流れを示す説明図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法に使用するカルプレート周りの断面図である。
図7】(A)は本発明の第4の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用した樹脂封止部分の断面図、(B)は同部分平面図である。
図8】(A)は従来技術の積層鉄心の製造方法の説明図、(B)は同方法に使用するカルプレートの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を実施する装置10は、複数の鉄心片11を積層して形成され、複数の対となる磁石挿入孔12、13にそれぞれ未磁化の永久磁石14が挿入されている鉄心本体15を、カルプレート(ダミー板)16を介して挟持する、金型の一例である上型17と下型18とを有している。
【0018】
なお、この実施の形態では、鉄心本体15は中央に軸孔19を有し、矩形の搬送プレート20とその中心に設けられた位置決め軸21とを有する搬送治具22に搭載された状態で、上型17及び下型18の間に配置されている。上型17の上に固定上フレーム23が設けられ、下型18は可動フレーム24に搭載され、固定下フレーム25の上に設けられた油圧シリンダー26によって可動フレーム24が昇降し、上部の鉄心本体15を上型17及び下型18で挟持している。なお、28はポストを示す。
【0019】
鉄心本体15は、図2に破線で示すように、対となる磁石挿入孔12、13を有し、金属板によって構成されたカルプレート16は、上型17に形成された各樹脂溜めポット30(図2に二点鎖線で示す)に連通する共通ランナー31を有している。そして、この共通ランナー31の半径方向外側には、下部に位置する磁石挿入孔12、13に通じるゲート孔33、34を有している。溝状(即ち、有底状)の共通ランナー31の深さはこのカルプレート16の厚みの1/3〜2/3となっている。
【0020】
カルプレート16の中央には、位置決め軸21が貫通する抜き孔35が形成され、この抜き孔35の直径は鉄心本体15の軸孔19と同一になっている。なお、この実施の形態では、鉄心本体15の軸孔19に対向する突出キーが設けられ、位置決め軸21には、この突出キーに符合するキー溝が設けられており、カルプレート16の抜き孔35にも、位置決め軸21に設けられたキー溝に(図2では図示せず)に符合する突出キーが設けられ、カルプレート16と鉄心本体15の位置決めを行っている。なお、位置決め軸に突出キーを設け、鉄心本体及びカルプレートに突出キーに符合するキー溝を設けてもよい。また、カルプレート16と鉄心本体15との位置決めは、他の手段、例えば、鉄心本体15に設けられた孔や切欠き等にカルプレート16の突出片を嵌入させる等の手段であってもよい。
【0021】
図1(A)、(B)、図4(A)、(B)に示すように、ゲート孔33、34は磁石挿入孔12、13の半径方向内側で、磁石挿入孔12、13の略中央位置にそれぞれ配置されている。そして、ゲート孔33、34は平面視して長方形となって、幅(短幅)方向の中央位置を磁石挿入孔12、13の内側縁が通過している。即ち、平面視してゲート孔33、34はその一部がそれぞれ磁石挿入孔12、13と重なっている。断面円形の樹脂溜めポット30の軸心は、平面視して扇状の共通ランナー31の曲率半径中心位置側に設けられて、樹脂溜めポット30の半径方向外部37(鉄心本体15の中心に対して)がカルプレート16の上表面によって部分的に閉塞されている。樹脂溜めポット30は図4(A)に示すように、ゲート孔33、34にその一部が重なる大きさにしてもよいし、図4(B)に示すように、ゲート孔33、34には重ならない大きさとしてもよい。
【0022】
なお、対となる磁石挿入孔12、13は平面視して樹脂溜めポット30の軸心を通過する鉄心本体15の半径線rに対して左右対称に形成されている。
このような構成となっているので、固定フレーム23に搭載されている油圧シリンダー38を延ばして、樹脂溜めポット30内の樹脂をプランジャ39で押し出すと、半径方向外部37にある樹脂は、カルプレート16の表面に遮られて、半径方向内側に流れ込み、共通ランナー31側に流れる。このとき、共通ランナー31の外側は半径線rに対して左右対称となっている円弧壁(曲り壁)41、42に沿ってゲート孔33、34に向かい、磁石挿入孔12、13に入る。
【0023】
これによって、プランジャ39によって押し出された樹脂を溶かしながら流動させる溶融流動領域が、共通ランナー31によって確保され、樹脂の流動性を高めることができる。その結果、従来のように、流動性の低い樹脂が無くなり、これによるゲート孔への樹脂流入が阻害されることも無くなったため、定められた時間内で充填する樹脂量を増やすことが可能となった。
【0024】
続いて、図5を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法に使用するカルプレート43の詳細について説明する。
この実施の形態では、樹脂溜めポット30、共通ランナー44、及びこれに続くゲート孔45、46及び磁石挿入孔12、13は実線で表し、平面視した相互の関係を表している。
【0025】
対となる磁石挿入孔12、13は中心線mに対して左右対称に形成され、ゲート孔45、46も左右の磁石挿入孔12、13の半径方向内側壁の中央に、その幅方向中心線が位置するように配置されている。樹脂溜めポット30の半径方向外側は、カルプレート43の表面で閉塞され、共通ランナー44の半径方向内側には円弧壁47がその両側に直線壁48、49が、更にその外側には、通過する樹脂をゲート孔45、46に導くガイド壁50、51が設けられている。共通ランナー44の深さはカルプレート43の板厚の1/3〜2/3となっている。
【0026】
従って、樹脂溜めポット30から押し出された樹脂は、半径方向内側に向かい、その後、左右に分かれて、ゲート孔45、46に流れ込む。この場合、共通ランナー44の容積が大きいので、樹脂溜めポット30内で一部未溶融の樹脂があっても、共通ランナー44に滞在中に溶融し、流動性がよくなって磁石挿入孔12、13内に充填される。なお、樹脂溜めポット30は樹脂突出領域の一部がゲート孔45、46に重なり、樹脂溜めポット30から直接ゲート孔45、46に樹脂の一部が押し込まれる。
【0027】
次に、図6に示す本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。この実施の形態では、カルプレート53について説明するが、共通ランナー54の側壁55が上方に開く傾斜面となっている。また、ゲート孔56の一方の側面は上方に開く(即ち、半径方向外側に開く)傾斜面56aとなっている。この傾斜面56aによって、カルプレート53を僅かに回転させることで、カルプレート53を鉄心本体15から容易に除去できる。また、カルプレート53から樹脂を除去する場合も、側壁55と傾斜面56aのテーパー効果によって容易に抜くことができる。この実施の形態は、第1、第2の実施の形態、及び以下に説明する第4の実施の形態にも容易に適用できる。
【0028】
続いて、図7(A)、(B)に示す本発明の第4の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。この実施の形態では、鉄心本体57の一つの磁極に3つの磁石挿入孔58〜60を有し、それぞれに永久磁石14が挿入されている。
この例では、樹脂溜めポット30の直下に共通ランナー61が設けられたカルプレート61aを有し、共通ランナー61からゲート孔62〜64を介して磁石挿入孔58〜60に樹脂を充填している。この実施の形態においては、共通ランナー61の容積が大きいので、樹脂溜めポット30から押し出された樹脂は、共通ランナー61で溶けて、円滑に磁石挿入孔58〜60に流れ込む。
【0029】
なお、以上のいずれの実施の形態においても、磁石挿入孔へ永久磁石の樹脂封止をした後は、搬送治具22ごと、鉄心本体及びカルプレートを金型装置から取り出す。そして、カルプレートを取り外し、付着した樹脂を清掃して再使用する。
【0030】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、共通ランナーの形状は、円滑に樹脂溜めポットからの樹脂をある程度の時間をかけてゲート孔に流すものであれば、他の形態でもよい。
また、前記実施の形態においては、鉄心本体の上にカルプレートを配置していたが、樹脂溜めポットを下型に設ける場合、鉄心本体の下にカルプレートを配置することになる。この場合、搬送治具を上下逆にして使用することもできる。
【0031】
前記実施の形態で製造した積層鉄心はインナーロータであって、ゲート孔は、磁石挿入孔の半径方向内側から磁石挿入孔に重なっているが、積層鉄心がアウターロータの場合は、ゲート孔は、磁石挿入孔の半径方向外側から磁石挿入孔に重なることになる。
【符号の説明】
【0032】
10:装置、11:鉄心片、12、13:磁石挿入孔、14:永久磁石、15:鉄心本体、16:カルプレート、17:上型、18:下型、19:軸孔、20:搬送プレート、21:位置決め軸、22:搬送治具、23:固定フレーム、24:可動フレーム、25:固定下フレーム、26:油圧シリンダー、28:ポスト、30:樹脂溜めポット、31:共通ランナー、33、34:ゲート孔、35:抜き孔、37:半径方向外部、38:油圧シリンダー、39:プランジャー、41、42:円弧壁、43:カルプレート、44:共通ランナー、45、46:ゲート孔、47:円弧壁、48、49:直線壁、50、51:ガイド壁、53:カルプレート、54:共通ランナー、55:側壁、56:ゲート孔、56a:傾斜面、57:鉄心本体、58〜60:磁石挿入孔、61:共通ランナー、61a:カルプレート、62〜64:ゲート孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2016年10月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄心片を積層して形成され、中央に軸孔を、その周囲に複数の磁石挿入孔を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入孔に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に設けられた樹脂溜めポットから、前記磁石挿入孔に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する積層鉄心の製造方法において、
前記樹脂溜めポットが形成された金型と、前記鉄心本体との間に、前記樹脂溜めポットから前記樹脂を少なくとも2つの前記磁石挿入孔に導く溝状の共通ランナーと、前記磁石挿入孔と一部が重なるゲート孔を有し、中央には前記鉄心本体の軸孔を挿通する位置決め軸が貫通する抜き孔が形成された一枚板のカルプレートを配置し、前記共通ランナー及び前記ゲート孔を介して前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入して硬化させた後、前記カルプレートを前記鉄心本体から取り外すことを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の積層鉄心の製造方法において、前記共通ランナーの側壁が前記鉄心本体から離間する方向に開く傾斜面となり、前記共通ランナーの側壁に連続する前記ゲート孔の側面が、前記鉄心本体から離間する方向に開く傾斜面となっていることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜めポットの一部が、前記ゲート孔に重なり、前記樹脂溜めポットから直接前記ゲート孔に前記樹脂の一部が押し込まれることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜めポットから排出された前記樹脂は前記カルプレートに形成された溝状の前記共通ランナーを介して前記ゲート孔に押し込まれることを特徴とする積層鉄心の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心(例えば、回転子積層鉄心)の製造方法に係り、特に磁石挿入孔への樹脂の未充填を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や家電製品に使用するモータの回転子積層鉄心(ロータコアともいう)の製造にあっては、鉄心本体の磁極数に対応して形成された複数の磁石挿入孔に、未磁化の永久磁石を入れて外側から樹脂を入れて樹脂封止にて固定することが行われていた。
この永久磁石の樹脂封止にあっては、例えば、特許文献1に示すように、磁石挿入孔に永久磁石が挿入された鉄心本体を上型及び下型との間で挟持し、上型又は下型に設けられた樹脂溜めポットから溶融した熱硬化性樹脂を充填して行っていた。
【0003】
ところが、樹脂封止後、上型及び下型の間から樹脂封止した積層鉄心を取り出した後、磁石挿入孔の入口部分に付着して硬化した樹脂を除去し、更に表面を掃除する必要があり、著しく作業性に劣っていた。そこで、特許文献2に示すように、永久磁石の挿入された鉄心本体と、樹脂溜めポットが形成された上型又は下型の間に、カルプレート(ダミー板ともいう)を配置し、樹脂封止を終えた後、鉄心本体から樹脂滓をカルプレートと共に除去することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4865086号公報
【特許文献2】特開2008−54376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、積層鉄心からカルプレートを樹脂滓と共に除去するときに、磁石挿入孔に充填されて硬化していた樹脂の表面が剥離してその部分に凹部が発生するという問題があった。そこで、本出願人は、特願2010−272769号(以下、文献3という)にて、図8(A)、(B)に示すように、樹脂溜めポット90の吐出領域91の一部が、カルプレート92のゲート孔93に重なるようにして設けられ、樹脂溜めポット90から直接ゲート孔93に樹脂が流れ込む樹脂の充填方法を提案した。この発明では、ランナーを形成していない分だけ、樹脂滓の残りが少なく、樹脂の使用量を削減できるという利点があった。なお、図8(A)において、94は鉄心本体を、95は磁石挿入孔を、96は永久磁石を、97はプランジャをそれぞれ示す。
【0006】
しかしながら、樹脂溜めポット90からランナーを介さず直接ゲート孔93に樹脂を流し込む方法の場合、鉄心本体94の磁石挿入孔95の容積が大きくなるほど、樹脂の充填不良が発生する割合が増加する。その理由は、例えば、鉄心本体94の高さが高くなると、磁石挿入孔95の容積も必然的に大きくなるが、磁石挿入孔95の容積が大きくなるとこれに合わせて樹脂量も増やす必要があり、使用する樹脂タブレット(樹脂原料)のサイズも大きくなる。これを溶融させて、磁石挿入孔95へ充填する際の充填時間(溶融から硬化するまでの時間)は、樹脂の持つ条件で決まり、磁石挿入孔95の容積とは関係がない。即ち、磁石挿入孔95の容積が大きなもの程、一定時間内で多量の樹脂を充填する必要がある。
【0007】
そして、樹脂溜めポット90から直接ゲート孔93に樹脂を流し込むものでは、樹脂タブレットのサイズも大きくなったことで、時間内で完全に溶融できない流動性の低い樹脂が発生し、これがゲート孔93への樹脂の流入を阻害する働きをするため、定められた樹脂の充填時間に対して樹脂充填が間に合わず、その結果、磁石挿入孔95への充填不良が発生していることが判明した。
【0008】
また、文献3にはカルプレートにそれぞれ磁石挿入孔に対応するランナーを形成し、このランナーを介して樹脂溜めポットとゲート孔を連通するものも開示されており、上記の樹脂溜めポットから直接ゲート孔に樹脂を流し込むものに比べて、充填不良の発生は少なくなるものの、やはり、磁石挿入孔の容積が大きくなっていくと、樹脂の充填不良が発生する割合が増すことが判明している。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、磁石挿入孔の容積が大きい鉄心本体に対しても、樹脂の充填不良が発生しにくい積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片を積層して形成され、中央に軸孔を、その周囲に複数の磁石挿入孔を有する鉄心本体のそれぞれの前記磁石挿入孔に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を上型と下型で挟んだ状態で、前記上型及び前記下型のいずれか一方の金型に設けられた樹脂溜めポットから、前記磁石挿入孔に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する積層鉄心の製造方法において、
前記樹脂溜めポットが形成された金型と、前記鉄心本体との間に、前記樹脂溜めポットから前記樹脂を少なくとも2つの前記磁石挿入孔に導く溝状の共通ランナーと、前記磁石挿入孔と一部が重なるゲート孔を有し、中央には前記鉄心本体の軸孔を挿通する位置決め軸が貫通する抜き孔が形成された一枚板のカルプレートを配置し、前記共通ランナー及び前記ゲート孔を介して前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入して硬化させた後、前記カルプレートを前記鉄心本体から取り外す。
【0011】
本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜めポットの一部が、前記ゲート孔に重なり、前記樹脂溜めポットから直接前記ゲート孔に前記樹脂の一部が押し込まれるのが好ましい。
【0012】
本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜めポットから排出された前記樹脂は前記カルプレートに形成された溝状の前記共通ランナーを介して前記ゲート孔に押し込まれるのが好ましい。
【0013】
本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心はインナーロータであって、前記ゲート孔は、前記磁石挿入孔の半径方向内側から前記磁石挿入孔に重なるのが好ましい。
【0014】
そして、本発明に係る積層鉄心の製造方法において、前記積層鉄心はアウターロータであって、前記ゲート孔は、前記磁石挿入孔の半径方向外側から前記磁石挿入孔に重なる場合もある。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る積層鉄心の製造方法においては、カルプレートに少なくとも2つの磁石挿入孔に同時に樹脂を導く共通ランナーを設けたことにより、樹脂を溶かしながら流動させる溶融流動領域が確保され、樹脂の流動性を高めることができた。その結果従来のように、流動性の低い樹脂が無くなり、これによるゲート孔への樹脂流入が阻害されることも無くなったため、定められた時間内で充填する樹脂量を増やすことが可能となった。
これにより、磁石挿入孔の容積が大きい鉄心本体に対しても、樹脂の未充填を発生させることなく、樹脂を磁石挿入孔に充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法の説明図、(B)は同製造方法に用いるカルプレートの部分拡大図である。
図2】同積層鉄心の製造方法に用いるカルプレートの平面図である。
図3】同積層鉄心の製造方法を実施するための装置の説明図である。
図4】(A)、(B)はそれぞれ同積層鉄心の製造方法における樹脂の流れの説明図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用した樹脂溜めポットから磁石挿入孔に充填される樹脂の流れを示す説明図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法に使用するカルプレート周りの断面図である。
図7】(A)は本発明の第4の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を適用した樹脂封止部分の断面図、(B)は同部分平面図である。
図8】(A)は従来技術の積層鉄心の製造方法の説明図、(B)は同方法に使用するカルプレートの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しながら、本発明を具体化した実施の形態について説明する。
図1図3に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法を実施する装置10は、複数の鉄心片11を積層して形成され、複数の対となる磁石挿入孔12、13にそれぞれ未磁化の永久磁石14が挿入されている鉄心本体15を、カルプレート(ダミー板)16を介して挟持する、金型の一例である上型17と下型18とを有している。
【0018】
なお、この実施の形態では、鉄心本体15は中央に軸孔19を有し、矩形の搬送プレート20とその中心に設けられた位置決め軸21とを有する搬送治具22に搭載された状態で、上型17及び下型18の間に配置されている。上型17の上に固定上フレーム23が設けられ、下型18は可動フレーム24に搭載され、固定下フレーム25の上に設けられた油圧シリンダー26によって可動フレーム24が昇降し、上部の鉄心本体15を上型17及び下型18で挟持している。なお、28はポストを示す。
【0019】
鉄心本体15は、図2に破線で示すように、対となる磁石挿入孔12、13を有し、金属板によって構成されたカルプレート16は、上型17に形成された各樹脂溜めポット30(図2に二点鎖線で示す)に連通する共通ランナー31を有している。そして、この共通ランナー31の半径方向外側には、下部に位置する磁石挿入孔12、13に通じるゲート孔33、34を有している。溝状(即ち、有底状)の共通ランナー31の深さはこのカルプレート16の厚みの1/3〜2/3となっている。
【0020】
カルプレート16の中央には、位置決め軸21が貫通する抜き孔35が形成され、この抜き孔35の直径は鉄心本体15の軸孔19と同一になっている。なお、この実施の形態では、鉄心本体15の軸孔19に対向する突出キーが設けられ、位置決め軸21には、この突出キーに符合するキー溝が設けられており、カルプレート16の抜き孔35にも、位置決め軸21に設けられたキー溝に(図2では図示せず)に符合する突出キーが設けられ、カルプレート16と鉄心本体15の位置決めを行っている。なお、位置決め軸に突出キーを設け、鉄心本体及びカルプレートに突出キーに符合するキー溝を設けてもよい。また、カルプレート16と鉄心本体15との位置決めは、他の手段、例えば、鉄心本体15に設けられた孔や切欠き等にカルプレート16の突出片を嵌入させる等の手段であってもよい。
【0021】
図1(A)、(B)、図4(A)、(B)に示すように、ゲート孔33、34は磁石挿入孔12、13の半径方向内側で、磁石挿入孔12、13の略中央位置にそれぞれ配置されている。そして、ゲート孔33、34は平面視して長方形となって、幅(短幅)方向の中央位置を磁石挿入孔12、13の内側縁が通過している。即ち、平面視してゲート孔33、34はその一部がそれぞれ磁石挿入孔12、13と重なっている。断面円形の樹脂溜めポット30の軸心は、平面視して扇状の共通ランナー31の曲率半径中心位置側に設けられて、樹脂溜めポット30の半径方向外部37(鉄心本体15の中心に対して)がカルプレート16の上表面によって部分的に閉塞されている。樹脂溜めポット30は図4(A)に示すように、ゲート孔33、34にその一部が重なる大きさにしてもよいし、図4(B)に示すように、ゲート孔33、34には重ならない大きさとしてもよい。
【0022】
なお、対となる磁石挿入孔12、13は平面視して樹脂溜めポット30の軸心を通過する鉄心本体15の半径線rに対して左右対称に形成されている。
このような構成となっているので、固定フレーム23に搭載されている油圧シリンダー38を延ばして、樹脂溜めポット30内の樹脂をプランジャ39で押し出すと、半径方向外部37にある樹脂は、カルプレート16の表面に遮られて、半径方向内側に流れ込み、共通ランナー31側に流れる。このとき、共通ランナー31の外側は半径線rに対して左右対称となっている円弧壁(曲り壁)41、42に沿ってゲート孔33、34に向かい、磁石挿入孔12、13に入る。
【0023】
これによって、プランジャ39によって押し出された樹脂を溶かしながら流動させる溶融流動領域が、共通ランナー31によって確保され、樹脂の流動性を高めることができる。その結果、従来のように、流動性の低い樹脂が無くなり、これによるゲート孔への樹脂流入が阻害されることも無くなったため、定められた時間内で充填する樹脂量を増やすことが可能となった。
【0024】
続いて、図5を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法に使用するカルプレート43の詳細について説明する。
この実施の形態では、樹脂溜めポット30、共通ランナー44、及びこれに続くゲート孔45、46及び磁石挿入孔12、13は実線で表し、平面視した相互の関係を表している。
【0025】
対となる磁石挿入孔12、13は中心線mに対して左右対称に形成され、ゲート孔45、46も左右の磁石挿入孔12、13の半径方向内側壁の中央に、その幅方向中心線が位置するように配置されている。樹脂溜めポット30の半径方向外側は、カルプレート43の表面で閉塞され、共通ランナー44の半径方向内側には円弧壁47がその両側に直線壁48、49が、更にその外側には、通過する樹脂をゲート孔45、46に導くガイド壁50、51が設けられている。共通ランナー44の深さはカルプレート43の板厚の1/3〜2/3となっている。
【0026】
従って、樹脂溜めポット30から押し出された樹脂は、半径方向内側に向かい、その後、左右に分かれて、ゲート孔45、46に流れ込む。この場合、共通ランナー44の容積が大きいので、樹脂溜めポット30内で一部未溶融の樹脂があっても、共通ランナー44に滞在中に溶融し、流動性がよくなって磁石挿入孔12、13内に充填される。なお、樹脂溜めポット30は樹脂突出領域の一部がゲート孔45、46に重なり、樹脂溜めポット30から直接ゲート孔45、46に樹脂の一部が押し込まれる。
【0027】
次に、図6に示す本発明の第3の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。この実施の形態では、カルプレート53について説明するが、共通ランナー54の側壁55が上方に開く傾斜面となっている。また、ゲート孔56の一方の側面は上方に開く(即ち、半径方向外側に開く)傾斜面56aとなっている。この傾斜面56aによって、カルプレート53を僅かに回転させることで、カルプレート53を鉄心本体15から容易に除去できる。また、カルプレート53から樹脂を除去する場合も、側壁55と傾斜面56aのテーパー効果によって容易に抜くことができる。この実施の形態は、第1、第2の実施の形態、及び以下に説明する第4の実施の形態にも容易に適用できる。
【0028】
続いて、図7(A)、(B)に示す本発明の第4の実施の形態に係る積層鉄心の製造方法について説明する。この実施の形態では、鉄心本体57の一つの磁極に3つの磁石挿入孔58〜60を有し、それぞれに永久磁石14が挿入されている。
この例では、樹脂溜めポット30の直下に共通ランナー61が設けられたカルプレート61aを有し、共通ランナー61からゲート孔62〜64を介して磁石挿入孔58〜60に樹脂を充填している。この実施の形態においては、共通ランナー61の容積が大きいので、樹脂溜めポット30から押し出された樹脂は、共通ランナー61で溶けて、円滑に磁石挿入孔58〜60に流れ込む。
【0029】
なお、以上のいずれの実施の形態においても、磁石挿入孔へ永久磁石の樹脂封止をした後は、搬送治具22ごと、鉄心本体及びカルプレートを金型装置から取り出す。そして、カルプレートを取り外し、付着した樹脂を清掃して再使用する。
【0030】
本発明は前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。例えば、共通ランナーの形状は、円滑に樹脂溜めポットからの樹脂をある程度の時間をかけてゲート孔に流すものであれば、他の形態でもよい。
また、前記実施の形態においては、鉄心本体の上にカルプレートを配置していたが、樹脂溜めポットを下型に設ける場合、鉄心本体の下にカルプレートを配置することになる。この場合、搬送治具を上下逆にして使用することもできる。
【0031】
前記実施の形態で製造した積層鉄心はインナーロータであって、ゲート孔は、磁石挿入孔の半径方向内側から磁石挿入孔に重なっているが、積層鉄心がアウターロータの場合は、ゲート孔は、磁石挿入孔の半径方向外側から磁石挿入孔に重なることになる。
【符号の説明】
【0032】
10:装置、11:鉄心片、12、13:磁石挿入孔、14:永久磁石、15:鉄心本体、16:カルプレート、17:上型、18:下型、19:軸孔、20:搬送プレート、21:位置決め軸、22:搬送治具、23:固定フレーム、24:可動フレーム、25:固定下フレーム、26:油圧シリンダー、28:ポスト、30:樹脂溜めポット、31:共通ランナー、33、34:ゲート孔、35:抜き孔、37:半径方向外部、38:油圧シリンダー、39:プランジャー、41、42:円弧壁、43:カルプレート、44:共通ランナー、45、46:ゲート孔、47:円弧壁、48、49:直線壁、50、51:ガイド壁、53:カルプレート、54:共通ランナー、55:側壁、56:ゲート孔、56a:傾斜面、57:鉄心本体、58〜60:磁石挿入孔、61:共通ランナー、61a:カルプレート、62〜64:ゲート孔