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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-220635(P2016-220635A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】真空凍結乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/44 20060101AFI20161205BHJP
   F26B 5/06 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   A23L3/44
   F26B5/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-111342(P2015-111342)
(22)【出願日】2015年6月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】出雲 洋助
(72)【発明者】
【氏名】川島 充
(72)【発明者】
【氏名】井下 ちづる
(72)【発明者】
【氏名】朝日 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小竹 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】西田 英里
(72)【発明者】
【氏名】矢部 正明
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓未
(72)【発明者】
【氏名】仲島 孔明
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】松井 繁佳
【テーマコード(参考)】
3L113
4B022
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB06
3L113AC22
3L113AC24
3L113AC52
3L113AC54
3L113AC67
3L113AC82
3L113BA16
3L113CA04
3L113CA16
3L113CB01
3L113CB14
3L113CB16
3L113CB24
3L113CB25
3L113CB38
3L113DA08
4B022LB06
4B022LR06
4B022LT04
(57)【要約】
【課題】多種多様な食材の種類及び調理方法に対し、専門的な知識を必要とすることなく容易に適切な真空凍結乾燥処理を施すことができる真空凍結乾燥装置を提供する。
【解決手段】真空凍結乾燥装置において、乾燥室、冷却手段、減圧手段及び加熱手段、並びに、これらの各手段を制御する制御手段を備え、制御手段は、被乾燥物の食材の種類及び調理方法のそれぞれに対応する加熱可能温度を予め記憶する記憶手段と、乾燥室内に収容された被乾燥物の食材の種類及び調理方法に応じて、記憶手段に記憶されている加熱可能温度を取得し、当該被乾燥物の加熱可能温度を決定する加熱可能温度決定手段と、乾燥室内に収容された被乾燥物の温度が加熱可能温度決定手段により決定された加熱可能温度以下となるように加熱手段を制御する加熱制御手段と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材である被乾燥物を収容する乾燥室と、
前記乾燥室内の被乾燥物を冷却して、当該被乾燥物に含まれる水分を凝固させる冷却工程を行うための冷却手段と、
前記乾燥室内を予め設定された圧力以下に減圧する減圧工程を行うための減圧手段と、
前記減圧手段により前記乾燥室内が減圧された状態で、前記乾燥室内の被乾燥物を加熱して当該被乾燥物に含まれる凝固した水分を昇華させる乾燥工程を行うための加熱手段と、
前記冷却手段、前記減圧手段及び前記加熱手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
被乾燥物の食材の種類及び調理方法のそれぞれに対応する加熱可能温度を予め記憶する記憶手段と、
前記乾燥室内に収容された被乾燥物の食材の種類及び調理方法に応じて、前記記憶手段に記憶されている加熱可能温度を取得し、当該被乾燥物の加熱可能温度を決定する加熱可能温度決定手段と、
前記乾燥室内に収容された被乾燥物の温度が前記加熱可能温度決定手段により決定された加熱可能温度以下となるように前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、を備えた真空凍結乾燥装置。
【請求項2】
前記乾燥室内に収容された被乾燥物の食材の種類及び調理方法を入力するための入力手段を備え、
前記加熱可能温度決定手段は、前記入力手段により入力された被乾燥物の食材の種類及び調理方法に対応して前記記憶手段に記憶されている加熱可能温度を当該被乾燥物の加熱可能温度として決定する請求項1に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項3】
前記入力手段は、前記乾燥室内に収容された被乾燥物の食材の種類及び調理方法を複数入力可能であり、
前記加熱可能温度決定手段は、前記入力手段により入力された複数の被乾燥物の食材の種類及び調理方法に対応して前記記憶手段に記憶されている加熱可能温度のうち、最低のものを加熱可能温度として決定する請求項2に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項4】
前記加熱制御手段は、前記入力手段により入力された複数の被乾燥物の食材の種類及び調理方法のうち、被乾燥物の水分量が最大のものの水分量が予め設定された規定量以下となるように、前記乾燥工程の乾燥時間を乾燥温度に応じて変化させる請求項3に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項5】
前記入力手段は、前記乾燥工程における乾燥温度、乾燥時間及び被乾燥物の含水率を入力可能であり、
前記加熱制御手段は、前記入力手段により入力された乾燥温度、乾燥時間及び被乾燥物の含水率に基づいて前記加熱手段を制御する請求項2又は請求項3に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項6】
前記入力手段により入力された乾燥温度が、前記加熱可能温度決定手段により決定された加熱可能温度を超える場合、その旨を使用者に報知する報知手段を備えた請求項5に記載の真空凍結乾燥装置。
【請求項7】
前記入力手段は、乾燥時間及び被乾燥物の含水率の両者のいずれか一方を選択的に入力可能であり、
前記加熱制御手段は、前記入力手段により入力された前記両者の一方に基づいて、前記両者の他方を決定して前記加熱手段を制御する請求項5又は請求項6に記載の真空凍結乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、真空凍結乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空凍結乾燥方法を用いて卵スープ製品を製造する方法として、卵スープ製品を真空凍結乾燥機の乾燥室内に仕込む工程と、乾燥室内を卵スープ製品を真空凍結乾燥可能な所定の圧力以下となるように真空引きする工程と、卵スープ製品の表面温度が約55℃〜約60℃の範囲を超えないように、卵スープ製品を加熱棚の最高温度を約85℃〜約230℃以下に設定してその輻射熱により卵スープ製品の内部温度が表面温度とほぼ等しくなるまで加熱して乾燥させる第1の乾燥工程と、卵スープ製品の表面温度が約55℃〜約60℃の範囲を超えないように卵スープ製品の水分値が3重量%以下となるまで加熱して乾燥させる第2の乾燥工程と、第1及び第2の乾燥工程により真空凍結乾燥された卵スープ製品を真空凍結乾燥機の乾燥室から取り出す工程と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、加熱加工を施したサツマイモを破砕し作成したサツマイモペーストの固形分100重量部に対して、単糖類及び/又は二糖類を5重量部より多く、45重量部以下、アミノ酸を0.05重量部以上、1重量部未満の割合で混合し、混合物の水分値を50%より多く、90%未満に調整した後、クッキング・バリューが特定の値となるようにドラムドライヤーにて加熱乾燥させてからパウダーにする方法も、従来において知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−139427号公報
【特許文献2】特開2012−000046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示された従来における真空凍結乾燥装置(又はドラムドライヤー)においては、卵スープ製品又はサツマイモパウダー等の特定の食材及び調理方法に特化して、乾燥時の温度及び乾燥時間を設定するものである。このため、例えば一般家庭での調理等において、多種多様な食材及び調理方法に対応することについて全く考慮がなされていない。多種多様な食材及び調理方法に対して風味等を損なうことがないように、真空凍結乾燥処理における適切な乾燥時の温度及び乾燥時間を設定することは、知識、熟練等を要し、一般家庭において多種多様な食材及び調理方法に対して、風味等を損なうことなく適切な真空凍結乾燥処理を施すことは極めて困難である。
【0006】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、食材の種類及び調理方法のそれぞれに対して、専門的な知識を必要とすることなく容易に適切な真空凍結乾燥処理を施すことができる真空凍結乾燥装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る真空凍結乾燥装置においては、食材である被乾燥物を収容する乾燥室と、前記乾燥室内の被乾燥物を冷却して、当該被乾燥物に含まれる水分を凝固させる冷却工程を行うための冷却手段と、前記乾燥室内を予め設定された圧力以下に減圧する減圧工程を行うための減圧手段と、前記減圧手段により前記乾燥室内が減圧された状態で、前記乾燥室内の被乾燥物を加熱して当該被乾燥物に含まれる凝固した水分を昇華させる乾燥工程を行うための加熱手段と、前記冷却手段、前記減圧手段及び前記加熱手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、被乾燥物の食材の種類及び調理方法のそれぞれに対応する加熱可能温度を予め記憶する記憶手段と、前記乾燥室内に収容された被乾燥物の食材の種類及び調理方法に応じて、前記記憶手段に記憶されている加熱可能温度を取得し、当該被乾燥物の加熱可能温度を決定する加熱可能温度決定手段と、前記乾燥室内に収容された被乾燥物の温度が前記加熱可能温度決定手段により決定された加熱可能温度以下となるように前記加熱手段を制御する加熱制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る真空凍結乾燥装置においては、食材の種類及び調理方法のそれぞれに対して、専門的な知識を必要とすることなく容易に適切な真空凍結乾燥処理を施すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る真空凍結乾燥装置の基本構成を模式的に示す図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る真空凍結乾燥装置の制御系統を示すブロック図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る真空凍結乾燥装置の真空凍結乾燥工程の概略を説明する図である。
図4】この発明の実施の形態1に係る真空凍結乾燥装置の冷却工程の温度履歴を模式的に示す図である。
図5】この発明の実施の形態1に係る真空凍結乾燥装置の乾燥工程の温度履歴を模式的に示す図である。
図6】この発明の実施の形態1に係る真空凍結乾燥装置が備える表示部及び操作部の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0011】
実施の形態1.
図1から図6は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は真空凍結乾燥装置の基本構成を模式的に示す図、図2は真空凍結乾燥装置の制御系統を示すブロック図、図3は真空凍結乾燥装置の真空凍結乾燥工程の概略を説明する図、図4は真空凍結乾燥装置の冷却工程の温度履歴を模式的に示す図、図5は真空凍結乾燥装置の乾燥工程の温度履歴を模式的に示す図、図6は真空凍結乾燥装置が備える表示部及び操作部の一例を示す正面図である。
【0012】
図1に示すように、真空凍結乾燥装置は乾燥室1を備えている。乾燥室1は、食材である被乾燥物100を収容するためのものである。乾燥室1は、その内部に被乾燥物100を気密に封入することができる。
【0013】
真空凍結乾燥装置は、真空装置20を備えている。乾燥室1は、風路を介して機械室30と通じている。真空装置20は、機械室30を介して乾燥室1に接続されている。したがって、真空装置20は機械室30を介して乾燥室1内の空気を乾燥室1外へと排出して乾燥室1内を減圧することができる。このようにして、真空装置20は、乾燥室1内が予め設定された圧力以下となるように減圧する減圧手段を構成している。
【0014】
真空凍結乾燥装置は、冷凍サイクル回路を備えている。冷凍サイクル回路は、第1の熱交換器31a、第2の熱交換器31b、膨張弁33及び圧縮機34等を備えている。第1の熱交換器31aは、機械室30内に配置されている。圧縮機34は、冷凍サイクル回路内の冷媒を圧縮する。第2の熱交換器31bは、圧縮機34により圧縮された冷媒の熱を外部に排熱する。膨張弁33は、第2の熱交換器31bを通過した冷媒を膨張させる。そして、第1の熱交換器31aは、膨張弁33により膨張された冷媒によって、機械室30内の空気を冷却する。
【0015】
冷凍サイクル回路により冷却されて生成された冷気は、機械室30内に設けられたファン35により乾燥室1内へと送られる。乾燥室1内へと送られた冷気は、乾燥室1内の水蒸気を凍結させてコールドトラップする。そして、真空凍結乾燥装置は、こうしてコールドトラップした氷を融解させることで、乾燥室1内の水蒸気を除去するデフロスト装置40を備えている。
【0016】
また、冷凍サイクル回路により冷却されて生成された冷気は、機械室30内に設けられたファン35により乾燥室1内へ急速に送られて、乾燥室1内の被乾燥物100を急速に冷却する。このようにして、第1の熱交換器31a等から構成された冷凍サイクル回路及びファン35は、乾燥室1内の被乾燥物100を冷却して、当該被乾燥物100に含まれる水分を凝固させる冷却手段を構成している。
【0017】
乾燥室1内には、加熱装置50、温度センサ61、水分センサ62、トレー70及び気流制御板71が備えられている。加熱装置50は、乾燥室1内の被乾燥物100を加熱して乾燥させるためのものである。加熱装置50は、被乾燥物100の外部及び内部両方から、被乾燥物100に含まれる水分を加熱する方式とすることが好ましい。
【0018】
具体的に例えば、加熱装置50は、ヒータ、マイクロ波(915MHz〜2450MHz)加熱装置、高周波(4MHz〜80MHz)発生装置、コンベクショングリル、又は、電磁誘導(IH)加熱装置、若しくは、これらの組み合わせにより構成することができるが、これらの例に限られない。加熱装置50は、乾燥室1内の被乾燥物100を加熱して当該被乾燥物100に含まれる凝固した水分を昇華させる加熱手段である。
【0019】
トレー70は、乾燥室1内において被乾燥物100を載置するための平板状の部材である。温度センサ61は、乾燥室1内のトレー70上に置かれた被乾燥物100の温度を計測するためのものである。また、水分センサ62は、乾燥室1内のトレー70上に置かれた被乾燥物100の含水量を計測するためのものである。水分センサ62は、例えば電気容量式又は加熱乾燥式等のものを使用することができるが、水分量の検出方式はこれらに限定されない。気流制御板71は、機械室30から乾燥室1へと通じる風路の出口部分に取り付けられている。この気流制御板71は、機械室30からの冷気が直接にトレー70上の被乾燥物100に当たらないようにするためのものである。
【0020】
以上のように構成された減圧手段(真空装置20)、冷却手段(圧縮機34等)、デフロスト装置40及び加熱手段(加熱装置50)は、図2に示す制御装置90により制御される。すなわち、制御装置90は、冷却手段、減圧手段及び加熱手段を制御する制御手段である。なお、図2において、デフロスト装置40は、圧縮機34等の冷却手段も含むものとして図示している。
【0021】
制御装置90は、冷却手段、減圧手段及び加熱手段を制御して、真空凍結乾燥装置により図3に示す工程1から工程4までをこの順に実施させる。図3は工程1から工程4における乾燥室1内の温度及び気圧の関係を説明するものである。まず、これらの工程に先立って、1種類又は複数種類の食材の被乾燥物を乾燥室1内のトレー70に載せ、乾燥室1の扉を閉める。
【0022】
工程1は冷却工程である。冷却工程は、冷却手段により、乾燥室1内の被乾燥物100を冷却して、当該被乾燥物100に含まれる水分を凝固させる工程である。この冷却工程について図4を参照しながら詳しく説明する。図4に示すのは本実施の形態の冷却工程における温度履歴の一例である。
【0023】
冷却工程における氷結晶生成温度帯を通過する方法によっては、氷結晶が大きくなり細胞組織を破壊し、味や食感の低下を招くおそれがある。そこで、この発明に係る真空冷凍乾燥装置においては、図4に示す温度履歴となるように冷却手段を制御することで、冷却工程で氷結晶が大きくなりにくいようにしている。
【0024】
すなわち、まず、前述したように機械室30からの冷気が被乾燥物100に直接当たらないように気流制御板71で制御しつつ、制御装置90は温度センサ61で被乾燥物100の温度を監視しながら細やかな冷却状態の制御を実施する。そして、被乾燥物100を過冷却状態にして、被乾燥物100の表面と内部とを即時に凍結させる。
【0025】
このようにすることで、被乾燥物100内において微細な氷結晶を均一に分散して形成させ、細胞組織の破壊を抑制することができる。また、過冷却凍結を行うことにより、被乾燥物100の表面と内部がほぼ同時に凝固するため、被乾燥物の表面だけが凍結し、内部の水分が凝固しないうちに次の減圧工程に進んでしまうことを防止できる。そして、コラプス(凍結不足が原因で蒸気乾燥が起こる発泡収縮現象)による加水時の復元性の低下を抑制することができる。
【0026】
図3に示すように、工程1が完了すると工程2に移行する。工程2は減圧工程である。減圧工程は、減圧手段により、乾燥室1内を予め設定された圧力以下に減圧する工程である。この減圧工程での減圧目標とする予め設定された圧力は、水の三重点である4.58Torr以下とする。あるいは、次工程の乾燥工程をより低い乾燥温度で行うために、減圧目標とする圧力を1Torr以下に予め設定してもよい。なお、減圧中すなわち工程2の減圧工程を開始してから工程4の大気圧復帰工程が完了するまでは、乾燥室1の扉を開放できないように自動的に施錠することが望ましい。
【0027】
工程2が完了すると工程3に移行する。工程3は乾燥工程である。乾燥工程は、減圧工程を終えて乾燥室1内が減圧された状態で、加熱手段により、乾燥室1内の被乾燥物100を加熱して当該被乾燥物100に含まれる凝固した水分を昇華させる工程である。
【0028】
この乾燥工程における加熱装置50の制御のため、この発明に係る真空凍結乾燥装置においては、制御手段である制御装置90は、図2に示すように、記憶部91、加熱可能温度決定部92及び加熱制御部93を備えている。記憶部91は、被乾燥物100の食材の種類及び調理方法のそれぞれに対応する加熱可能温度を予め記憶している。加熱可能温度とは、被乾燥物100の味、風味、栄養素、色等の特性が変化することのない加熱温度のことである。
【0029】
加熱可能温度決定部92は、乾燥室1内に収容された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法に応じて、当該被乾燥物100の加熱可能温度を決定する。この加熱可能温度の決定は、具体的には次のようにして行う。すなわち、まず、加熱可能温度決定部92は、乾燥室1内に収容された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法に対応して記憶部91に記憶されている加熱可能温度を取得する。そして、加熱可能温度決定部92は、記憶部91から取得した加熱可能温度を当該被乾燥物100の加熱可能温度として決定する。
【0030】
加熱制御部93は、加熱手段である加熱装置50を制御する。この際、加熱装置50による被乾燥物100の加熱中には、加熱制御部93は、温度センサ61による被乾燥物100の温度の検出結果を随時確認している。そして、加熱制御部93は、乾燥室1内に収容された被乾燥物100の温度が加熱可能温度決定部92により決定された加熱可能温度以下となるように加熱装置50を制御する。
【0031】
このようにして加熱制御部93により加熱装置50を制御した際の乾燥室1内及び被乾燥物100の温度変化の一例を図5に示す。この図5に示す例のように、乾燥工程を開始すると加熱制御部93は加熱装置50による加熱を行い、庫内温度(乾燥室1内の温度)は上昇する。庫内温度の上昇に伴い、被乾燥物100の表面温度及び内部温度も上昇する。この際、加熱装置50により加えられた熱は、被乾燥物100の表面から内部へと伝わるため、表面温度の方が内部温度より高い状態が維持される。
【0032】
そして、被乾燥物100の表面温度が加熱可能温度に達する前に加熱制御部93は加熱装置50による加熱を弱め、被乾燥物100の表面温度が加熱可能温度以下の温度でほぼ一定となるようにする。その後、加熱制御部93は加熱装置50による加熱をさらに弱め、被乾燥物100の内部温度も加熱可能温度以下の温度でほぼ一定となるようにする。このように、被乾燥物100を加熱して被乾燥物100の表面温度及び内部温度が加熱可能温度以下の一定の状態とするまでの過程が1次乾燥である。また、1次乾燥が完了した後には、被乾燥物100の表面温度及び内部温度を一定の状態で維持する2次乾燥が行われる。
【0033】
そして、2次乾燥により、被乾燥物100中の水分量が予め設定された規定量以下となると、加熱制御部93は加熱装置50による加熱を停止させ、乾燥を終了する。このように、加熱制御部93は、被乾燥物100の表面及び内部の両方ともが、当該被乾燥物100の加熱可能温度を超えないように加熱装置50の制御を行う。
【0034】
図2に示すように、この発明に係る真空凍結乾燥装置は、表示部80、操作部81及び音源82を備えている。表示部80、操作部81及び音源82の構成の一例について図6を参照しながら説明する。図6に示すように、この例においては、表示部80、操作部81及び音源82は、真空凍結乾燥装置の操作パネルに集中的に設けられている。
【0035】
表示部80は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置である。表示部80は、当該真空凍結乾燥装置の動作及び状態に関する各種情報を表示する事ができる。操作部81は、ここではタッチパネル式を採用している。したがって、この例では、タッチパネルが表示部80と操作部81の両方を兼ね、表示部80と操作部81とが一体に形成されている。なお、操作部81をタッチパネルではなく各種のボタン、スイッチダイヤル等で構成してもよく、音声入力方式を採用してよい。また、表示部80と操作部81とを別々に設けるようにしてもよい。
【0036】
音源82は、例えばスピーカ等の音声鳴動装置である。音源82は、真空凍結乾燥の全工程が完了し被乾燥物100が乾燥室1から取り出せる状態となったことを使用者に知らせる音を鳴動する。この際に鳴動させる音は、アラーム音でも音声メッセージでもよい。また、装置に異常があったときの警告音、被乾燥物100又は装置本体が高温であることの注意喚起音等を音源82が鳴動するようにしてもよい。
【0037】
操作部81は、乾燥室1内に収容された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法を入力するための入力手段である。なお、ここでは、食材の種類及び調理方法の組み合わせのそれぞれを「献立」として表現している。献立を指定すれば食材の種類及び調理方法が定まる。したがって、真空凍結乾燥装置の使用者は、操作部81のうちの第1の操作部81aを操作して所望する献立を指定することで、被乾燥物100の食材の種類及び調理方法を容易に入力することができる。
【0038】
そして、加熱可能温度決定部92は、入力手段である操作部81により入力された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法に基づいて当該被乾燥物100の加熱可能温度として決定する。すなわち、加熱可能温度決定部92は、操作部81により入力された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法に対応して記憶部91に記憶されている加熱可能温度を当該被乾燥物100の加熱可能温度として決定する。
【0039】
また、入力手段である操作部81は、乾燥室1内に収容された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法を複数入力可能である。図6に示す例では、使用者が操作部81(第1の操作部81a)により複数の献立を一度に指定することができる。そして、加熱可能温度決定部92は、操作部81により複数の被乾燥物100の食材の種類及び調理方法が入力された場合(複数の献立が指定された場合)、これらの入力された複数の被乾燥物100の食材の種類及び調理方法に対応して記憶部91に記憶されている加熱可能温度のうち、最低のものを加熱可能温度として決定する。
【0040】
具体的に図6に示す例のように献立Aと献立Bを同時に真空凍結乾燥する場合、献立Aの加熱可能温度が40℃、献立Bの加熱可能温度が60℃であれば、加熱可能温度決定部92は献立Aの加熱可能温度である40℃を今回の真空凍結乾燥処理における加熱可能温度に決定する。そして、加熱制御部93は献立Aの加熱可能温度である40℃を超えないように加熱装置50を制御する。
【0041】
加熱制御部93は、被乾燥物100の温度が加熱可能温度以下となるように乾燥工程の乾燥温度を制御する他、乾燥工程の乾燥時間も制御する。具体的には、乾燥工程の乾燥時間は、被乾燥物100の水分量が予め設定された規定量以下となるのに必要な時間として、乾燥温度に応じて決定される。この際、入力手段である操作部81に複数の被乾燥物100の食材の種類及び調理方法(献立)が入力された場合には、加熱制御部93は、これらの入力された複数の被乾燥物100の食材の種類及び調理方法のうち、被乾燥物100の水分量が最大のものの水分量が予め設定された規定量以下となるように、乾燥工程の乾燥時間を乾燥温度に応じて変化させる。
【0042】
この際、乾燥工程においては、加熱制御部93は水分センサ62により被乾燥物100の水分量又は含水率を随時確認している。そして、加熱制御部93は、被乾燥物100の水分量の実測値に応じて、乾燥時間を修正する。例えば、乾燥工程を終了して次の工程へと移行し、乾燥工程開始時は設定された乾燥時間まで加熱を行うように制御するが、本装置に具えられた水分センサ(電気容量式、加熱乾燥式など方式は問わない)により測定結果から乾燥時間の補正を行うことで当初の乾燥時間より短い時間で含水率又は水分量が前記規定値以下になる場合には、乾燥時間を短縮して乾燥工程を終了して次の工程へと移行する。また、逆に当初の乾燥時間では含水率又は水分量が前記規定値以下にならない場合には、乾燥時間を延長して不十分な乾燥のまま次の工程に移らないようにする。
【0043】
なお、入力手段である操作部81により、乾燥工程における乾燥温度、乾燥時間及び被乾燥物の含水率の少なくとも1以上について入力可能としてもよい。図6に示す例では、乾燥工程における乾燥温度及び乾燥時間を操作部81のうちの第2の操作部81bにより入力可能である。そして、加熱制御部93は、入力手段である操作部81により入力された乾燥温度、乾燥時間及び被乾燥物の含水率に基づいて加熱手段である加熱装置50を制御する。
【0044】
あるいは、入力手段である操作部81は、乾燥時間及び被乾燥物の含水率のうちのいずれか一方を選択して入力可能としてもよい。そして、加熱制御部93は、乾燥時間及び被乾燥物の含水率のうち操作部81により入力された方に基づいて、乾燥時間及び被乾燥物の含水率の他方(入力されなかった方)を決定して加熱手段である加熱装置50を制御するようにしてもよい。
【0045】
ここで、使用者が操作部81により乾燥温度を入力できるようにした場合、入力手段である操作部81により入力された乾燥温度が、加熱可能温度決定部92により決定された加熱可能温度を超えるときには、制御装置90が備える報知制御部94は、表示部80の表示内容及び音源82の鳴動内容の一方又は両方を制御して、入力された乾燥温度が、当該被乾燥物100の加熱可能温度を超えている旨を使用者に報知する。すなわち、表示部80及び音源82並びにこれらを制御する報知制御部94は、入力手段である操作部81により入力された乾燥温度が、加熱可能温度決定部92により決定された加熱可能温度を超える場合、その旨を使用者に報知する報知手段を構成している。
【0046】
なお、表示部80は、このような報知内容の他、通常時においては、図6に示すように、例えば、被乾燥物100の食材の種類及び調理方法(すなわち、献立)、並びに、乾燥工程の温度(乾燥温度)及び時間(乾燥時間)等の各種情報を表示する事ができる。また、表示部80に、真空凍結乾燥の全工程が完了するまでの時間、全工程が完了し被乾燥物100を取り出し可能になる時刻、乾燥室1内及び被乾燥物100の温度、被乾燥物100の含水率又は水分量等を表示するようにしてもよい。
【0047】
また、これらの献立(被乾燥物100の食材の種類及び調理方法)、各献立に応じた被乾燥物の加熱可能温度及び乾燥時間に関する情報は、記憶部91に記憶されている。そして、使用者は、操作部81を操作して所望の献立を選択することで、当該献立に関する情報を記憶部91から引き出して表示部80に表示させることができる。
【0048】
なお、以上においては、記憶部91は真空凍結乾燥装置に内蔵されるものとして説明したが、これに限られない。例えば、記憶部91を真空凍結乾燥装置の外部のサーバ等に設け、真空凍結乾燥装置と記憶部91を備えたサーバ等とを、通信ネットワーク等により通信可能に接続するようにしてもよい。また、真空凍結乾燥装置あるいはサーバの記憶部91に対し、通信ネットワーク等を介してスマートフォン等の端末からアクセス可能にしてもよい。そして、記憶部91に記憶されている情報を端末から更新することができるようにしてもよい。
【0049】
図3に示すように、工程3の乾燥工程が完了すると、工程4の大気圧復帰工程に移行する。大気圧復帰工程は、乾燥室1内に外気を導入し、乾燥室1内の圧力を外気圧に戻す工程である。乾燥室1内の圧力が外気圧に戻ると真空凍結乾燥の全工程は完了となり、制御装置90は、扉の施錠を自動的に解除し、表示部80、音源82等により被乾燥物100を乾燥室1から取り出してよいことを使用者に報知する。
【0050】
なお、以上においては、真空凍結乾燥装置の単体の構成を説明したが、真空凍結乾燥装置を他の装置に組み入れるようにしてもよい。以上のように構成された真空凍結乾燥装置を、組み入れる他の装置としては、例えば冷蔵庫が好適である。そして、この場合、冷蔵庫の製氷室と切り替え室とを風路により接続することで、製氷室を機械室30として利用し、切り替え室を乾燥室1として利用することが好ましい。このようにすることで、冷蔵庫に真空凍結乾燥装置専用の部屋を新設する必要がなくなる。さらに、真空凍結乾燥の工程において被乾燥物から昇華された水分を、機械室30である製氷室内の製氷皿の上でコールドトラップすることで、給水することなく製氷することが可能である。
【0051】
以上のように構成された真空凍結乾燥装置においては、冷却手段(冷凍サイクル回路及びファン35等)、減圧手段(真空装置20)及び加熱手段(加熱装置50)を制御する制御装置90は、被乾燥物100の食材の種類及び調理方法のそれぞれに対応する加熱可能温度を予め記憶する記憶部91と、乾燥室1内に収容された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法に応じて、記憶部91に記憶されている加熱可能温度を取得し、当該被乾燥物100の加熱可能温度を決定する加熱可能温度決定部92と、乾燥室1内に収容された被乾燥物100の温度が加熱可能温度決定部92により決定された加熱可能温度以下となるように加熱装置50を制御する加熱制御部93と、を備えている。
【0052】
このため、一般家庭等における真空凍結乾燥に関する知識を持たない者や加熱温度制御の技術が未熟な者であっても味、風味、栄養素等を劣化させることなく、多種多様な食材の種類及び調理方法のそれぞれに対し容易に適切な真空凍結乾燥処理を施すことができる。
【0053】
また、乾燥室1内に収容された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法を入力するための入力手段である操作部81を備え、加熱可能温度決定部92は、操作部81により入力された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法に対応して記憶部91に記憶されている加熱可能温度を当該被乾燥物100の加熱可能温度として決定することで、使用者が所望する食材の種類及び調理方法を指定して適切な真空凍結乾燥処理を行うことができる。
【0054】
また、入力手段である操作部81により、乾燥室1内に収容された被乾燥物100の食材の種類及び調理方法を複数入力可能とし、加熱可能温度決定部92は、操作部81により入力された複数の被乾燥物の食材の種類及び調理方法の加熱可能温度のうち、最も低いものを加熱可能温度として決定する。加えて、加熱制御部93は、操作部81により入力された複数の被乾燥物の食材の種類及び調理方法のうち、被乾燥物の水分量が最大のものの水分量が予め設定された規定量以下となるように、乾燥工程の乾燥時間を乾燥温度に応じて変化させる。このようにすることで、複数の食材の種類及び調理方法に対して、味、風味、栄養素等を劣化させることなく一度に真空凍結乾燥処理を行うことができる。
【0055】
入力手段である操作部81により、乾燥工程における乾燥温度、乾燥時間及び被乾燥物の含水率を入力可能とし、加熱制御部93は、操作部81により入力された乾燥温度、乾燥時間及び被乾燥物の含水率に基づいて加熱装置50を制御することで、必要又は好みに応じて使用者が乾燥温度、乾燥時間及び被乾燥物の含水率について細かく設定することができる。
【0056】
また、この際に、操作部81により入力された乾燥温度が、加熱可能温度決定部92により決定された加熱可能温度を超える場合、その旨を使用者に報知するようにすることで、入力された乾燥温度では食材の味、風味、栄養素等を損なってしまうおそれがあることを使用者に知らせて、適切な乾燥温度の入力を促すことができる。また、入力手段である操作部81において、乾燥時間及び被乾燥物の含水率のいずれか一方のみを選択的に入力可能とし、入力されなかった他方については自動的に決定することで、使用者の希望に従いつつも加熱可能温度を超えないように乾燥工程を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 乾燥室、 20 真空装置、 30 機械室、 31a 第1の熱交換器、 31b 第2の熱交換器、 33 膨張弁、 34 圧縮機、 35 ファン、 40 デフロスト装置、 50 加熱装置、 61 温度センサ、 62 水分センサ、 70 トレー、 71 気流制御板、 80 表示部、 81 操作部、 81a 第1の操作部、 81b 第2の操作部、 82 音源、 90 制御装置、 91 記憶部、 92 加熱可能温度決定部、 93 加熱制御部、 94 報知制御部、 100 被乾燥物
図1
図2
図3
図4
図5
図6