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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-220850(P2016-220850A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】医療用X線測定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20161205BHJP
【FI】
   A61B6/00 350Z
   A61B6/00 333
   A61B6/00 330Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-109141(P2015-109141)
(22)【出願日】2015年5月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 高敬
(72)【発明者】
【氏名】実政 光久
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA18
4C093EA07
4C093FD08
4C093FF22
4C093FF25
4C093FF28
4C093FF35
4C093FG01
(57)【要約】
【課題】骨密度画像と軟組織画像(脂肪率画像)とを形成する医療用X線測定システムにおいて、複数の関心領域の設定に当たってユーザーの負担を軽減する。また、軟組織画像用の関心領域を適正に設定する。
【解決手段】骨密度画像に対して基準関心領域78をマニュアルで設定すると、その基準関心領域78の座標情報に基づいて、軟組織エリア76内に外側関心領域90及び内側関心領域96が自動的に設定される。それらの関心領域内の脂肪率分布から、関心領域ごとに平均脂肪率が演算される。大転子の外側に第2の外側関心領域を設定し、その範囲内において平均軟組織厚が演算されてもよい。軟組織画像として色付け処理された脂肪率画像が表示される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検部位を含む二次元領域に対して複数のエネルギーを有するX線を照射し、前記複数のエネルギーに対応する複数の検出データを取得する測定装置と、
前記複数の検出データに基づいて前記被検部位中の骨密度の分布を表す骨密度画像を形成する骨密度画像形成手段と、
前記複数の検出データに基づいて前記被検部位中の軟組織を表す軟組織画像を形成する軟組織画像形成手段と、
前記骨密度画像に対して与えられた座標情報に基づいて前記軟組織画像に対して軟組織解析用の関心領域を設定する設定手段と、
前記軟組織画像における前記軟組織解析用の関心領域内の画像部分に基づいて解析を実行する解析手段と、
を含むことを特徴とする医療用X線測定システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記座標情報は、前記骨密度画像に基づいてユーザーにより設定された骨密度解析用の基準関心領域を特定する座標情報である、
ことを特徴とする医療用X線測定システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、
前記被検部位は、股関節及びその付近を含む部位であり、
前記基準関心領域は、大腿骨像における少なくとも骨頭部分及び大転子部分を囲む領域である、
ことを特徴とする医療用X線測定システム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、
前記設定手段は、
前記大腿骨像の外側に、前記軟組織解析用の関心領域として外側関心領域を設定し、
前記大腿骨像の内側に、前記軟組織解析用の関心領域として内側関心領域を設定する、
ことを特徴とする医療用X線測定システム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、
前記軟組織画像形成手段は、前記軟組織画像として、脂肪率の分布を表す脂肪率画像を形成し、
前記外側関心領域及び前記内側関心領域はそれぞれ脂肪率解析用の関心領域であり、
前記解析手段は、
前記骨密度画像における前記基準関心領域内の画像部分に基づいて平均骨密度を演算し、
前記脂肪率画像における前記外側関心領域内の画像部分に基づいて外側平均脂肪率を演算し、
前記特定成分画像における前記内側関心領域内の画像部分に基づいて内側平均脂肪率を演算する、
ことを特徴とする医療用X線測定システム。
【請求項6】
請求項3記載のシステムにおいて、
前記基準関心領域は、前記大腿骨像の長手方向に平行な又は略平行な方向をY方向とし、前記Y方向に直交する方向をX方向とした場合、前記X方向に平行な第1のXライン及び第2のXライン、並びに、前記Y方向に平行な第1のYライン及び第2のYラインによって画定され、
前記第1のXラインは、前記骨頭部分に外接するラインとして定められ、
前記第2のXラインは、前記第1のXラインから遠位側へ隔たって前記大腿骨像を横切るラインとして定められ、
前記第1のYラインは、前記骨頭部分に外接するラインとして定められ、
前記第2のYラインは、前記大転子部分に外接するライン又は前記大転子部分から外側へ隔たったラインとして定められる、
ことを特徴とする医療用X線測定システム。
【請求項7】
請求項5記載のシステムにおいて、
前記脂肪率画像における個々の画素値に対して色付け処理を施すカラー処理手段を含む、ことを特徴とする医療用X線測定システム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記被検部位は大腿骨を含む部位であり、
前記座標情報は、前記骨密度画像中の大腿骨像に基づいてユーザーにより設定された骨密度解析用の基準関心領域についての座標情報であり、
前記設定手段は、前記基準関心領域に基づいて、前記軟組織画像上であって前記大腿骨像の外側に前記軟組織解析用の関心領域を設定し、
前記解析手段は、前記軟組織画像における前記軟組織解析用の関心領域内の画像部分に基づいて平均軟組織厚を演算する、
ことを特徴とする医療用X線測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用X線測定システムに関し、特に、骨密度測定及び軟組織測定を行う医療用X線測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
健康管理あるいは疾病診断のために、X線を利用して、骨及び軟組織が測定される。軟組織は、脂肪と除脂肪(脂肪以外)とに大別される。大腿骨測定の場合、除脂肪としては、筋肉が支配的である。例えば、老年者の健康管理のためには、定期的に骨密度及び脂肪率(脂肪量)を測定することが望まれる。骨密度が低い場合、骨折リスクが高まるからである。また、脂肪率は成人病に関連する指標だからである。なお、股関節の外側(体中心軸から見て外側)に存在する皮下脂肪は外部からの衝撃を吸収する役割を担っており、その皮下脂肪の厚みの測定が望まれる。そのような厚みを知ることにより、衝撃吸収用のヒッププロテクターを装着する場合に、その厚みを適正に選定することが可能となる。
【0003】
X線を利用して骨密度及び軟組織を測定する場合において、1回のX線照射で(例えば1回のX線ビーム走査で)両者を同時に測定できるならば、被検者の負担を軽減でき、特に被曝量を低減できる。骨密度の測定方法としては、二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA法)が知られている。DEXA法を利用して脂肪率を演算することも可能である。
【0004】
特許文献1には、骨密度分布を表した骨密度画像と脂肪率分布を表した脂肪率画像とが合成された合成画像を表示する医療用X線測定システムが開示されている。骨密度及び脂肪率は上記DEXA法に基づいて演算されている。この特許文献1には、骨密度解析用の関心領域及び脂肪率解析用の関心領域の設定については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−147863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
骨及び軟組織の測定結果の解析に先立って、骨の画像上に関心領域を設定し、また、軟組織の画像上に別の関心領域を設定する必要がある。それらの関心領域の設定の全部をユーザー(検査者)に求めるならば、検査者の負担が増大し、また、検査時間も長引くことになる。軟組織画像においては、一般に、軟組織エリアの内部に形態的な特徴を見出し難く、形態的な特徴に基づく関心領域の設定は一般に困難である。検査の再現性の観点からも、骨用の関心領域と軟組織用の関心領域とが常に所定の空間的関係にあることが望まれる。
【0007】
本発明の目的は、骨と軟組織とを測定する医療用X線測定システムにおいて、複数の関心領域の設定に際し、検査者の負担を軽減することにある。あるいは、軟組織を表す画像上に精度良く又は再現性良く関心領域を設定することにある。あるいは、骨用の関心領域と軟組織用の関心領域との空間的関係を常に適正化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシステムは、被検部位を含む二次元領域に対して複数のエネルギーを有するX線を照射し、前記複数のエネルギーに対応する複数の検出データを取得する測定装置と、前記複数の検出データに基づいて前記被検部位中の骨密度の分布を表す骨密度画像を形成する骨密度画像形成手段と、前記複数の検出データに基づいて前記被検部位中の軟組織を表す軟組織画像を形成する軟組織画像形成手段と、前記骨密度画像に対して与えられた座標情報に基づいて前記軟組織画像に対して軟組織解析用の関心領域を設定する設定手段と、前記軟組織画像における前記軟組織解析用の関心領域内の画像部分に基づいて解析を実行する解析手段と、を含むものである。
【0009】
上記構成によれば、骨密度画像に対して手動で又は自動的に座標情報が与えられると、その座標情報に基づいて軟組織画像上に軟組織解析用の関心領域が自動的に設定される。骨密度画像には一般に骨における複数の形態的な特徴が含まれる。よって、1又は複数の形態的な特徴を拠り所として、被部位中の特定部分(特定領域又は特定位置)の座標を比較的に容易に決定することが可能である。一方、軟組織画像においては輪郭を除いて被検部位内部に形態的な特徴が存在せず又はそれが乏しい。そこで、上記構成では、骨の形態的な特徴を拠り所として与えられた座標情報を軟組織のための座標情報としても援用して、軟組織用の関心領域が自動的に設定されるようにしている。これにより、ユーザーの負担を軽減できる。また、骨用の関心領域と軟組織用の関心領域の空間的な関係を常に適正化できるので、軟組織測定の客観性及び再現性を向上できる。
【0010】
上記の座標情報は、骨密度解析用の関心領域(後述の基準関心領域)を特定する座標情報であるのが望ましい。但し、骨における1又は複数の形態的な特徴が存在する領域又は位置を示す情報であってもよい。骨密度解析用の関心領域が、単純な矩形の領域(その場合、通常、骨領域と軟組織領域の両方を含む領域)として定められてもよいが、骨領域だけを含む領域として定められてもよい。上記の軟組織画像は例えば脂肪率又は除脂肪率の二次元分布を表す画像であるのが望ましいが、レントゲン画像のように単に軟組織を表す画像であってもよい。軟組織解析用の関心領域は、例えば、特定成分の平均値を演算する領域、特定部分の平均厚を演算する領域、等として機能するものである。
【0011】
望ましくは、前記座標情報は、前記骨密度画像に基づいてユーザーにより設定された骨密度解析用の基準関心領域を特定する座標情報である。望ましくは、前記被検部位は、股関節及びその付近を含む部位であり、前記基準関心領域は、大腿骨像における少なくとも骨頭部分及び大転子部分を囲む領域である。例えば、大腿骨像の軸体部分の長手方向を画像垂直方向とした場合、骨頭部分は、骨軸部分から斜め上方へ突出した形態を有し、大転子像は、骨軸部分から体の外側へ膨らんだ形態を有する。それらはいずれも特徴部位になり得るものである。大腿骨の骨端部には海綿骨が多く含まれ、その部分は骨密度測定対象として好適な部分である。よって、上記のように骨頭部分及び大転子部分を囲む領域として基準関心領域を設定するのが望ましい。
【0012】
望ましくは、前記設定手段は、前記大腿骨像の外側に、前記軟組織解析用の関心領域として外側関心領域を設定し、前記大腿骨像の内側に、前記軟組織解析用の関心領域として内側関心領域を設定する。この構成によれば、骨用の基準関心領域の座標情報に基づいて、軟組織用の2つの関心領域(骨の一方側及び他方側に設けられる関心領域ペア)が自動的に設定される。これにより2つの関心領域を用いて演算された2つの測定結果を付き合わせたり、それらの平均を演算したりすることが可能となる。なお、X線測定時には、生殖器の被曝を防止又は低減するための所定の遮蔽部材を利用するのが望ましい。
【0013】
望ましくは、前記軟組織画像形成手段は、前記軟組織画像として、脂肪率の分布を表す脂肪率画像を形成し、前記外側関心領域及び前記内側関心領域はそれぞれ脂肪率解析用の関心領域であり、前記解析手段は、前記骨密度画像における前記基準関心領域内の画像部分に基づいて平均骨密度を演算し、前記脂肪率画像における前記外側関心領域内の画像部分に基づいて外側平均脂肪率を演算し、前記特定成分画像における前記内側関心領域内の画像部分に基づいて内側平均脂肪率を演算する。
【0014】
望ましくは、前記基準関心領域は、前記大腿骨像の長手方向に平行な又は略平行な方向をY方向とし、前記Y方向に直交する方向をX方向とした場合、前記X方向に平行な第1のXライン及び第2のXライン、並びに、前記Y方向に平行な第1のYライン及び第2のYラインによって画定され、前記第1のXラインは、前記骨頭部分に外接するラインとして定められ、前記第2のXラインは、前記第1のXラインから遠位側へ隔たって前記大腿骨像を横切るラインとして定められ、前記第1のYラインは、前記骨頭部分に外接するラインとして定められ、前記第2のYラインは、前記大転子部分に外接するライン又は前記大転子像から外側へ隔たったラインとして定められる。
【0015】
望ましくは、前記脂肪率画像における個々の画素値に対して色付け処理を施すカラー処理手段を含む。色相の変化によって脂肪率の大小を表現してもよいし、単色の輝度の変化によって脂肪率の大小を表現してもよい。一般に骨密度画像は白黒画像として構成されるので、それと一緒に表示される脂肪率画像をカラー画像とするのが望ましい。特定の脂肪率を表すラインを表示するようにしてもよい。複数の脂肪率を複数のラインで表現してもよい。
【0016】
望ましくは、前記被検部位は大腿骨を含む部位であり、前記座標情報は、前記骨密度画像中の大腿骨像に基づいてユーザーにより設定された骨密度解析用の基準関心領域についての座標情報であり、前記設定手段は、前記基準関心領域に基づいて、前記軟組織画像上であって前記大腿骨像の外側に前記軟組織解析用の関心領域を設定し、前記解析手段は、前記軟組織画像における前記軟組織解析用の関心領域内の画像部分に基づいて平均軟組織厚を演算する。この構成によれば、大腿骨の外側の軟組織厚を自動的に求めることができる。その演算結果と骨密度演算結果とから骨折のリスクを総合判断するようにしてもよい。また、軟組織厚に基づいて、被検者に装着するヒッププロテクターの厚さを調整するようにしてもよい。
【0017】
望ましくは、白黒の骨密度画像とカラーの脂肪率画像とが合成された複合画像が表示される。その場合に、複合画像上に、基準関心領域、外側関心領域、内側関心領域等を特定するグラフィック要素を表示するのが望ましい。また、複合画像に重畳して、又は、その隣に、平均骨密度、外側平均脂肪率、内側平均脂肪率等が数値で表示されるのが望ましい。その際、更に、平均軟組織厚、全平均脂肪率等が数値で表示されてもよい。本願明細書において、「外側」は、注目骨(以下において大腿骨)を基準として、体の中心から遠い側であり、「内側」は、注目骨を基準として、体の中心に近い側である。遠位は体幹部(ボディ)から遠い側(体肢端側)を差し、近位は体幹部に近い側を差す。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の関心領域の設定に際し、検査者の負担を軽減できる。あるいは、軟組織を表す画像上に精度良く又は再現性良く関心領域を設定できる。あるいは、骨用の関心領域と軟組織用の関心領域との空間的関係を常に適正化できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る医療用X線測定システムの好適な実施形態を示すブロック図である。
図2図1に示した演算部が有する複数の機能を図示したブロック図である。
図3】レシオ値から脂肪率を求めるための換算関数を示す図である。
図4】骨密度像上における基準関心領域の設定方法を示す図である。
図5】複合画像(骨密度画像及び脂肪率画像)及び基準関心領域を示す図である。
図6】脂肪率画像上に設定された外側関心領域及び内側関心領域を示す図である。
図7】軟組織厚の測定を説明するための図であり、特に最短幅の特定方法を説明するための図である。
図8】軟組織厚の測定を説明するための図であり、特に特定された最短幅に基づく関心領域(演算範囲)を示す図である。
図9】軟組織厚の測定を説明するための図であり、特に平均軟組織厚の演算方法を説明するための図である。
図10】表示例を示す図である。
図11】脂肪率画像の第1例を示す図である。
図12】脂肪率画像の第1例を形成する際に利用される色付け関数を示す図である。
図13】脂肪率画像の第2例を示す図である。
図14】脂肪質画像の第2例を形成する際に利用される色付け関数を示す図である。
図15】脂肪質画像上に付加された特定脂肪率ラインを示す図である。
図16】高エネルギーX線の減衰量と、脂肪面密度及び除脂肪面密度の関係を示す図である。
図17図1に示した第1実施形態における演算原理を説明するための図である。
図18】第2実施形態における演算原理を説明するための図である。
図19】第3実施形態における演算原理を説明するための図である。
図20】第4実施形態における演算原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(1)医療用X線測定システム
本発明に係る医療用X線測定システムは病院等の医療機関に設置されるものである。本実施形態のX線測定システムは、図1に示されるように、測定装置10と演算装置12とにより構成される。測定装置10はX線の照射及び検出を行う装置であり、演算装置12は制御機能及び演算機能を有する装置である。演算装置12は例えばコンピュータで構成される。
【0022】
測定装置10は検査台としてのベッド14を有している。ベッド14上には被検者16が載せられる。被検者16中の測定対象部位(被検部位)がX線の照射エリアに含まれるように、被検者16の位置及び姿勢が調整される。測定対象部位は、本実施形態において、大腿骨の近位側端部及びその周囲に存在する軟組織である。換言すれば、股関節及びその付近である。実際には、大腿骨の骨頭を中心とした二次元範囲に対してX線測定が実行される。
【0023】
ベッド14は載置台としての天板を有し、天板の下方には下部機構18が設けられている。下部機構18はX線発生器20を有している。X線発生器20はファンビーム形状をもったX線ビームを生成するものである。そのX線ビームが被検者の左右方向(図1の紙面貫通方向)に移動するように、X線発生器20が機械的に走査される。天板の上方、具体的には被検者16の上方には、上部機構22が設けられている。上部機構22はX線検出器24を有する。X線検出器24はX線ビーム広がり方向に並んだ複数の検出素子により構成される。X線検出器24は、X線発生器20と共に移動する。X線発生器20及びX線検出器24の移動により、つまり、X線ビームの走査により、二次元の測定領域が構成される。X線発生器とX線検出器とを入れ換えることも可能である。
【0024】
本実施形態では、X線ビームの走査中にX線のエネルギーが切り換えられており、具体的には高エネルギーと低エネルギーとが交互に切り換えられている。これにより、画素単位で(つまり検出座標ごとに)、高エネルギーX線検出値と、低エネルギーX線検出値とが取得される。換言すれば、二次元領域に対応した高エネルギーX線検出値アレイ(高エネルギーX線検出データ)及び低エネルギーX線検出値アレイ(高エネルギーX線検出データ)が取得される。
【0025】
演算装置12は、演算部26、入力部28及び表示部30を有している。演算部26は、後に図2を用いて説明するように、骨密度画像形成機能、軟組織画像形成機能、関心領域設定機能等を有している。それはCPU及びプログラムにより構成されるものである。入力部28を利用して、ユーザーにより、骨密度画像上に基準関心領域(骨密度解析用関心領域)が設定される。表示部30には、骨密度画像と軟組織画像(具体的には脂肪率画像)とからなる複合画像(合成画像)が表示され、また各種の測定結果が表示される。
【0026】
(2)演算部の構成例
図2には、図1に示した演算部が備える複数の機能が複数のブロックにより表現されている。骨密度画像形成部32は、高エネルギーX線検出データ及び低エネルギーX線検出データに基づいて、DEXA法に従って骨密度画像を形成するモジュールである。骨密度画像は、骨エリア内における骨密度の二次元分布を表した画像である。骨密度画像においては、軟組織エリア、及び、エアエリア(被検体が存在しないエリア)は通常、画像化されない。ここで、軟組織エリアは、骨が存在しないエリアであってエアエリア以外のエリアである。それらのエリアについては閾値処理により画素値(骨密度値)が0とされる。形成された骨密度画像は、表示処理部52及び平均骨密度演算部42へ送られる。
【0027】
軟組織領域抽出部34は、骨密度画像の形成過程において、軟組織領域を抽出、特定するモジュールである。閾値処理前の個々の画素値から、当該画素が属するエリアの種別が判定される。高エネルギーX線検出データ及び低エネルギーX線検出データの一方又は両方に基づいて、軟組織エリア(及びエアエリア)を特定することも可能である。抽出された軟組織エリアの情報は、脂肪率画像形成部36及び平均軟組織厚演算部44へ送られる。
【0028】
脂肪率画像形成部36は、高エネルギーX線検出データ及び低エネルギーX線検出データに基づいて、DEXA法に従って脂肪率画像を形成するモジュールである。脂肪率画像は、軟組織エリア内における脂肪率の二次元分布を表した画像である。脂肪率画像に代えて除脂肪率画像が形成されてもよい。除脂肪は脂肪以外の軟組織であり、それは専ら筋肉である。脂肪率の演算については後に詳述する。その演算の際、後に図3に示す換算関数が参照される。図2において、形成された脂肪率画像は、外側平均脂肪率演算部46、内側平均脂肪率演算部48、脂肪量/除脂肪量演算部50、及び、表示処理部52へ送られている。
【0029】
基準関心領域設定部38は、骨密度画像を参照したユーザーにより指定される座標情報に基づいて、骨密度画像上に基準関心領域(骨密度解析用のROI)を設定するモジュールである。ユーザーは入力部を利用して基準関心領域の指定を行う。本実施形態では、基準関心領域は後に図5に示すように矩形の領域である。基準関心領域を表す座標情報は、表示処理部52及び平均骨密度演算部42の他、軟組織画像用関心領域設定部40にも送られている。
【0030】
軟組織画像用関心領域設定部40は、上記座標情報に基づいて、軟組織画像としての脂肪率画像上に、軟組織解析用の関心領域として、外側関心領域及び内側関心領域を自動的に設定するモジュールである。外側関心領域は軟組織エリア内であって大腿骨像の外側に設定され、内側関心領域は軟組織エリア内であって大腿骨像の内側に設定される。外側は被検者の体中心軸から見て遠い側であり、内側は被検者の背骨から見て近い側である。それらの関心領域については後に図6を用いて詳しく説明する。本実施形態では、骨密度画像を基礎として基準関心領域を設定すると、その座標情報に基づいて、軟組織画像(脂肪率画像)上に自動的に外側関心領域と内側関心領域とが設定される。よって、それらの関心領域をマニュアルで指定する必要がない。骨用の基準関心領域を基準として、軟組織用の2つの関心領域を正確に設定することが可能である。
【0031】
本実施形態の軟組織画像用関心領域設定部40は、更に、平均軟組織厚を演算するための外側関心領域を設定する機能を有している。それに関しては、後に図7乃至図10を用いて説明する。なお、平均脂肪率を演算するための外側関心領域を第1の外側関心領域と称し、平均軟組織厚を演算するための外側関心領域を第2の外側関心領域と称することにする。
【0032】
第2の外側関心領域の座標情報は平均軟組織厚演算部44へ送られる。第1の外側関心領域の座標情報は外側平均脂肪率演算部46へ送られる。内側関心領域の座標情報は内側平均脂肪率演算部48へ送られる。更に、第1の外側関心領域の座標情報及び内側関心領域の座標情報は脂肪量/除脂肪量演算部50にも送られている。表示処理部には、第1の外側関心領域、第2の外側関心領域及び内側関心領域の座標情報が送られている。
【0033】
平均骨密度演算部42は、骨密度画像における基準関心領域内の画像部分に基づいて平均骨密度を演算するモジュールである。本実施形態では、海綿骨を比較的に多く含む骨端部についての平均骨密度が演算されている。演算された平均骨密度は表示処理部52へ通知される。平均骨密度から、骨粗鬆症を診断したり、骨折のリスクを評価したりすることが可能である。
【0034】
平均軟組織厚演算部44は、第2の外側関心領域内における複数の箇所で軟組織厚を演算し、それらの平均値を平均軟組織厚として演算するモジュールである。第2の外側関心領域の設定に際しては、本実施形態において、最初に、大転子の外側における最短の軟組織厚が特定されており、それを特定する過程で演算された複数の軟組織厚の内の全部又は一部が軟組織画像用関心領域設定部40から平均軟組織厚演算部44へわたされてもよい。軟組織画像用関心領域設定部40と平均軟組織厚演算部44を単一のモジュールとして構成してもよい。演算された平均軟組織厚は表示処理部52へ通知される。
【0035】
外側平均脂肪率演算部46は、脂肪率画像における第1の外側関心領域内の画像部分に基づいて外側平均脂肪率を演算するモジュールである。演算された外側平均脂肪率は表示処理部52へ通知される。内側平均脂肪率演算部48は、脂肪率画像における内側関心領域内の画像部分に基づいて内側平均脂肪率を演算するモジュールである。演算された内側平均脂肪率は表示処理部52へ通知される。
【0036】
脂肪量/除脂肪量演算部50は、例えば、第1の外側関心領域内における脂肪率分布から脂肪量(及び除脂肪量)を演算し、内側関心領域内における脂肪率分布から脂肪量(及び除脂肪量)を演算するモジュールである。任意の領域について脂肪量(及び除脂肪量)を演算することも可能である。演算結果は表示処理部52へ通知される。尚、平均脂肪率の他の演算方法として、関心領域内の脂肪量および除脂肪量をそれぞれ求め、さらに軟組織量に対する脂肪量の割合(脂肪量/軟組織量)を演算するようにしてもよい。ここで、軟組織量は脂肪量と除脂肪量との和として定義される。脂肪量は体厚に影響されるため、この方法によれば、関心領域内の画素毎の脂肪率を平均化する方法よりも体厚分布を反映した平均脂肪率を得ることができる。
【0037】
表示処理部52は、画像合成機能、カラー処理機能等を備え、表示画面上に表示する画像を生成するものである。本実施形態においては後に図10に示すような画像が表示される。その画像内には複数の解析結果を示す複数の数値が含まれる。表示処理部52は、脂肪率画像に対して色付け処理を施す機能も有している。その場合においては、任意の色付け関数を選択することが可能である。
【0038】
(3)脂肪率の演算
以下に脂肪率の演算について説明する。測定領域中の軟組織エリアは、骨エリア及びエアエリア以外のエリアである。軟組織エリア中には、脂肪と脂肪以外の軟組織(もっぱら筋肉)とが存在する。前者の存在割合を示すインデックスとして脂肪率が知られており、後者の存在割合を示すインデックスとして除脂肪率が知られている。
【0039】
DEXA法において、低エネルギーX線減衰量RL及び高エネルギーX線減衰量RHは以下の計算式(1),(2)によって特定される。
【0040】
L=ln(DLO/DL)=μL1・X1+μL2・X2 ・・・(1)
H=ln(DHO/DH)=μH1・X1+μH2・X2 ・・・(2)
【0041】
ここで、DLO は被検体が存在しない状況下における低エネルギーX線の検出値(エアバリュー)である。検出値は具体的には検出器出力値である。DLは低エネルギーX線を被検者に照射した場合における被検体通過後のX線の検出値である。DHO は被検体が存在しない状況下における高エネルギーX線の検出値(エアバリュー値)である。Dは高エネルギーX線を被検者に照射した場合における被検体通過後のX線の検出値である。μL1は脂肪成分についての低エネルギーX線吸収係数であり、μL2は除脂肪成分についての低エネルギーX線吸収係数である(いずれも単位は1/cm)。μH1は脂肪成分についての高エネルギーX線吸収係数であり、μH2は除脂肪成分についての高エネルギーX線吸収係数である(同じくいずれも単位は1/cm)。X1は脂肪成分の厚みであり、X2は除脂肪成分の厚みである(いずれも単位はcm)。
【0042】
以下のように、上記RL及びRHについての比がレシオ値αとして定義される。
α=RL/RH
【0043】
上記のレシオ値αから所定の換算関数により脂肪率(体脂肪率)Wが求まる。所定の換算関数は、例えば、脂肪率が既知の複数のファントム(例えば脂肪率100%のファントム及び脂肪率0%のファントム)に対してX線照射を行って得られた2つのX線検出から求めることが可能である。
【0044】
図3には換算関数54が例示されている。横軸はレシオ値に対応しており、縦軸は脂肪率に対応している。脂肪率100%のファントムに対する測定により得られたレシオ値α100に対応するのがA点であり、脂肪率0%のファントムに対する測定により得られたレシオ値αに対応するのがB点である。2つの点に基づいて換算関数54が求められる。なお、除脂肪率は(1−脂肪率)として定義される。除脂肪について換算関数を用意しておき、それを利用してレシオ値αから除脂肪率を求めることも可能である。
【0045】
(4)関心領域の設定
図4には、骨密度画像56が示されている。この骨密度画像56は、上述したように二次元領域に対応する低エネルギーX線検出データ及び高エネルギーX線検出データに基づいて形成されるものである。骨密度画像56には、股関節及びその付近の像58として、骨盤像62及び大腿骨像60が含まれる。骨盤像62には座骨部分72が含まれる。大腿骨像60には骨頭部分64、大転子部分66、小転子部分68及び軸体部分70が含まれる。なお、図4において、横軸方向がX方向であり、縦軸方向がY方向である。Y方向は、大腿骨像60における中心軸と平行あるいは略平行である。
【0046】
骨密度画像56に対して基準関心領域をマニュアルで設定する場合、4つのラインL1,L2,L3,L4がユーザーによって指定される。具体的には、骨頭部分64のY方向頂点に外接するように水平ラインL1が定められる。また、小転子部分68の下側のエッジを横切るように水平ラインL2が定められる。水平ラインL1,L2はいずれもX方向に平行なラインである。
【0047】
一方、骨頭部分64の左端に接するように垂直ラインL3が定められる。また、大転子部分66の右端に外接するように、あるいは、その右端から一定の距離隔てた位置に垂直ラインL4が定められる。なお図4に示す各ラインの設定はいずれも例示であり、それ以外の条件によって個々のラインを定めることも可能である。いずれにしても、大腿骨像60における近位側端部の全体が含まれるように、すなわち、それを囲むように4つのラインL1,L2,L3,L4が定められるのが望ましい。
【0048】
それらのラインによって画定されるのが図5に示す基準関心領域78である。その基準関心領域78は矩形のエリアであり、それは上辺78a、下辺78b、左辺78c、右辺78dによって定義される。ちなみに、図5においては複合画像74が示されており、その複合画像74は、骨密度画像56と軟組織画像76とからなるものである。それら以外のエリアはエア領域である。軟組織画像76は、本実施形態において脂肪率画像である。
【0049】
以上のように基準関心領域78が求められると、骨密度画像56における基準関心領域78内の画像部分に基づいて平均骨密度が演算される。
【0050】
本実施形態においては、図6に示されるように、基準関心領域78の座標情報に基づいて、外側関心領域(第1の外側関心領域)90及び内側関心領域96が設定される。これについて以下に説明する。
【0051】
図6において、軟組織画像76が軟組織エリアに相当している。骨密度画像が骨エリア80に相当している。軟組織エリア及び骨エリア80以外のエリアがエアエリア82である。上述したように、大腿骨像を基準として基準関心領域78が設定されている。骨エリア80には大腿骨部分60Aが含まれる。
【0052】
本実施形態においては、大腿骨像の外側であって、軟組織エリアに属する所定範囲として外側関心領域90が定められる。具体的には、基準関心領域78の上辺及びその延長線と、基準関心領域78の下辺78bから下方へ一定距離84だけ離れた水平ライン86と、の間の範囲88として、外側関心領域90が定められている。軟組織エリアは既に抽出されており、その内で大腿骨像の左側の部分を特定することは容易である。それを前提として、Y方向の上限レベル及び下限レベルを指定することにより、外側関心領域90が画定される。本実施形態においては、基準関心領域78が設定されると、その座標情報に基づいて自動的に外側関心領域90が設定される。この外側関心領域90は、脂肪率解析エリアに相当し、具体的には、その外側関心領域90内の脂肪率に基づいて平均脂肪率が演算される。
【0053】
一方、本実施形態においては、座骨下端92が例えば自動的に特定され、そこを通過する垂直ライン94が特定される。そして、大腿骨像の内側であって、垂直ライン94と水平ライン86とで囲まれる軟組織エリアが内側関心領域96として定められる。内側関心領域96も基本的に基準関心領域78の座標情報に基づいて設定され、つまり基準関心領域78が設定されると、それに基づいて自動的に内側関心領域96が設定される。ただし、座骨下端92をマニュアルで指定するようにしてもよい。そのような場合においても、関心領域の指定にあたってユーザーの負担を軽減することが可能である。本実施形態では内側関心領域96内の脂肪率分布に基づいて平均脂肪率が演算される。
【0054】
図6に示した外側関心領域90及び内側関心領域96の設定方法は一例であって、いずれにしても、基準関心領域78の座標情報に基づいて自動的に又は半自動的に外側関心領域90及び内側関心領域96が定められるのが望ましい。
【0055】
そのような構成によれば、基準関心領域78と、外側関心領域90及び内側関心領域96と、の空間的な位置関係を常に適正化することが可能である。これにより測定の客観性及び再現性を高められる。
【0056】
(5)軟組織厚の測定
次に、図7乃至図9に基づいて軟組織厚の測定について説明する。図7において、符号76は軟組織画像を表しており、それは軟組織エリアに相当する。符号80は骨エリアを表している。符号82はエアエリアを表している。骨エリア80において、符号66Aは大転子部分を示しており、符号60Aは大腿骨像の部分を示している。符号60Bは大腿骨像における外側の輪郭を示している。また、符号98は軟組織エリアにおける外側の輪郭を表している。
【0057】
本実施形態においては大腿骨像の外側かつ輪郭60Bと輪郭98との間で、水平方向の距離102が演算される。例えば、基準関心領域78における上辺78aと下辺78bとの間において、各Y座標ごとに距離102が演算される。あるいは、大転子部分66Aが特定されている場合においては、その付近の一定範囲内において複数の距離102を演算するようにしてもよい。
【0058】
以上のような演算により、図8に示されるように、距離が最も短くなるY座標が特定される。符号102Aは最短距離を表しており、そのY座標が符号104で示されている。Y座標104から上側及び下側すなわちY方向両側に一定距離106だけ隔たった位置108,110が特定される。図9に示されるように、それらの間が平均演算区間112である。逆に言えば、大腿骨像の外側であって、軟組織エリアに属し、且つ、区間112に含まれる部分がもう1つの外側関心領域(第2の外側関心領域)として機能する。その区間112内におい、Y座標ごとに距離114が特定され、それらの平均値として平均軟組織圧が演算される。ちなみに、最短距離の特定にあたって、Y座標ごとに距離が演算されるため、それらの距離を平均組織厚の演算において援用するようにしてもよい。軟組織厚に代えて、最短距離に相当する軟組織厚を表示するようにしてもよい。
【0059】
(6)表示例
図10には、表示例が示されている。表示画面116内には複合画像118が表示されている。複合画像118は骨密度画像120及び軟組織画像122を含むものである。軟組織画像122は本実施形態において脂肪率画像である。複合画像118上には、基準関心領域を示すグラフィック要素78A、第1の外側関心領域を示すグラフィック要素90A、内側関心領域を示すグラフィック要素96A、及び、第2の外側関心領域を示すグラフィック要素112Aが表示されている。それぞれのグラフィック要素は、各領域の外枠を表示するものであってもよい。その内部に半透明の着色処理等が施されてもよい。それぞれの関心領域において解析又は演算された結果が数値として表示されている。具体的には、平均骨密度が表示され(符号124参照)、外側平均脂肪率が表示され(符号126参照)、内側平均脂肪率が表示され(符号128参照)、平均軟組織圧が表示される(符号130参照)。更に、外側平均脂肪率及び内側平均脂肪率に基づいて総平均脂肪率が表示されるようにしてもよい。
【0060】
(7)脂肪率分布の表示例
次に、図11乃至図15を用いて脂肪率分布の表示例について説明する。図11には第1の表示例が示されている。この例において、複合画像132は、骨密度画像134と脂肪率画像136とで構成される。脂肪率画像136はカラー画像であり、脂肪率の大小が色相の変化によって表現されている。その対応関係がカラーバー138によって表現されている。
【0061】
具体的には、例えば図12に示すような関数にしたがって色相が決定される。横軸は脂肪率を表しており、左端の縦軸は緑の輝度軸に対応しており、右側の縦軸が赤の輝度軸に対応している。脂肪率の増大にしたがって、緑の輝度が下げられつつ赤の輝度が引き上げられている。その結果、緑色から黄色を経由して赤色に至る色相変化が与えられている。もちろん、このようなカラーマップは一例である。
【0062】
図13には第2表示例が示されている。複合画像139は、上記同様に、骨密度画像140と脂肪率画像142とからなる。脂肪率画像142は例えば緑からなる単色の輝度画像であり、輝度と脂肪率との関係がカラーバー144によって表現されている。
【0063】
具体的には、例えば図14に示すような色付関数が用いられる。横軸は脂肪率に対応しており、縦軸は緑の輝度を表している。脂肪率の高まりに応じて緑の輝度が引き上げられている。
【0064】
図15には図13に示した複合画像と同じ複合画像139が示されている。脂肪率画像142は上記同様に緑色で表現されたている。図15に示す例においては、特定の脂肪率を示すライン145がグラフィック要素として表現されている。このようなライン145を描くことにより、例えば皮下脂肪に相当する部分の厚みを表現することが可能となる。
【0065】
(8)脂肪量及び除脂肪量の演算
脂肪についての面密度σ及び除脂肪についての面密度σと、高エネルギーX線減衰量との関係は以下に示すとおりである(面密度の単位はg/cm2)。h及びhは脂肪成分についての係数及び除脂肪成分についての係数である。
【0066】
σ= h1R ・・・(3)
σ= hR ・・・(4)
【0067】
上記(3)式に基づいて、密度(g/cm3)及び厚みが既知である100%脂肪ファントムについて高エネルギーX線減衰量R(=R)が測定される。脂肪ファントムの面密度σは容易に特定できるから、その面密度σと高エネルギーX線減衰量Rから係数h1が特定される。厚みを段階的に変化させて個々の厚みで係数h1を特定するようにしてもよい。同様に、(4)式に基づいて、密度(g/cm3)及び厚みが既知である100%除脂肪ファントムについて高エネルギーX線減衰量R(=R)が測定される。除脂肪ファントムの面密度σは容易に特定できるから、その面密度σと高エネルギーX線減衰量Rから係数hが特定される。厚みを段階的に変化させて個々の厚みで係数hを特定するようにしてもよい。図16には、高エネルギーX線減衰量R(=R)から、面密度σ及び面密度σを特定する2つの関数が例示されている。
【0068】
軟組織を測定して得られた高エネルギーX線減衰量Rは、実際には、脂肪と除脂肪の両方によって減衰しているので、仮に軟組織が同じ厚さであっても、脂肪と除脂肪の割合が異なれば、高エネルギーX線減衰量Rが異なることになる。そこで、以下のモデルに示されているように、高エネルギーX線減衰量Rが脂肪による減衰量成分と除脂肪による減衰量とに配分されるものとする。
【0069】
σxy=(hxy+h(1−Wxy))Rxy ・・・(5)
【0070】
ここで、σxyは画素(x,y)における脂肪及び除脂肪についての総面密度である。Rxyは画素(x,y)で検出された高エネルギーX線減衰量であり、それは実測値である。Wxyは画素(x、y)について演算された脂肪率である。h及びhは事前に特定されている係数である。脂肪についての面密度σ1xy及び除脂肪についての面密度σ2xyは以下のように特定される。
【0071】
σ1xy=hxyxy ・・・(6)
σ2xy=h(1−Wxy)Rxy ・・・(7)
【0072】
ある領域内の脂肪量及び除脂肪量は以下のように計算される。
【0073】
【数1】
【0074】
ここで、Δx及びΔyは1画素のx方向のサイズ及びy方向のサイズである。ある領域内の各画素について面密度に画素面積を乗じたものを、当該領域内のすべての画素について加算することにより、脂肪量及び除脂肪量が求められる。
【0075】
(9)他の実施形態
図17には、図2に示した演算部における演算処理が概念的に示されている。H検出値行列150は高エネルギーX線検出データであり、L検出値行列152は低エネルギーX線検出データである。それらのデータ150,152に基づいて、符号154で示すように、骨密度が演算され、それに基づいて、符号156で示すように骨密度画像が生成される。一方、骨密度の演算結果に基づいて符号158で示すように軟組織領域が特定される。そして、符号160で示されるように、軟組織領域及び2つの検出データ150,152に基づいて脂肪率が演算される。
【0076】
図18には第2実施形態が示されている。この実施形態においては、符号162で示すように、H検出値行列150に基づいて軟組織領域が特定されている。その場合、L検出値行列152に基づいて軟組織領域が特定されてもよい。他のブロックについては図17に示されたブロックと同様である。
【0077】
図19には第3実施形態が示されている。この実施形態においては、3つのエネルギーをもったX線が照射されている。これによりH検出値行列166、M検出値行列168及びL検出値行列170が取得されている。符号172で示す骨密度演算はH検出値行列166及びM検出値行列168に基づいて実行され、一方、脂肪率演算178はM検出値行列168及びL検出値行列170に基づいて実行されている。ちなみに、符号174に示すように、骨密度演算結果に基づいて骨密度演算画像が生成されており、また符号176で示すように、骨密度演算結果に基づいて軟組織領域が特定されている。
【0078】
図20には第4実施形態が示されている。この実施形態においては、4つのエネルギーをもったX線が照射されている。これにより、H1検出値行列180、L1検出値行列182、H2検出値行列184及びL2検出値行列186が取得されている。符号188で示されるように、骨密度演算は、H1検出値行列180及びL1検出値行列182に基づいて実行され、一方、脂肪率演算194は、H2検出値行列184及びL2検出値行列186に基づいて実行されている。骨密度画像190は骨密度演算結果に基づいて生成され、また符号192で示されるように、軟組織領域は骨密度演算結果に基づいて抽出されている。
【0079】
以上のように、本実施形態に係るシステムによれば、骨の形態に基づいて基準関心領域が設定されると、その座標情報に基づいて軟組織に対して1又は複数の関心領域が自動的に設定される。軟組織画像の内部には一般に形態的な特徴がほとんどないが、上記構成によれば、そのような画像であっても正しく軟組織用関心領域を設定できるという利点が得られる。また、大腿骨の外側及び内側のそれぞれについて平均脂肪率等を演算するようにしたので、それぞれの演算結果から被検者を総合的に診断することが可能となる。更に、平均軟組織厚を演算するようにしたので、それを骨折リスクの1つのファクターとして利用することが可能であり、また平均軟組織厚に基づいてヒッププロテクターの厚みの選定を行えるという利点が得られる。
【符号の説明】
【0080】
10 測定装置、12 演算装置、26 演算部、32 骨密度画像形成部、36 脂肪率画像形成部、38 基準関心領域設定部、40 軟組織画像用関心領域設定部、42 平均骨密度演算部、44 平均軟組織圧演算部、46 外側平均脂肪率演算部、48 内側平均脂肪率演算部。
図1
図2
図3
図12
図14
図16
図17
図18
図19
図20
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図13
図15