【解決手段】複数の格子12、14、15と、被写体台13と、被写体Hに放射線を照射する放射線発生装置11と、モアレ画像Moを撮影する放射線検出器16とを備えるX線タルボ撮影装置1は、被写体台13上で、放射線発生装置11から照射される放射線に対して被写体Hの関節部分の位置を固定する固定ユニット20を備え、固定ユニット20は、関節部分の体幹側を位置固定する第1固定部22と、関節部分の末梢側を位置固定する第2固定部23と、第1固定部22と第2固定部23を支持する支持部21と、第1固定部22と第2固定部23の少なくとも一方を支持部21に対して放射線の照射方向(z方向)に略直交する平面内で所定の曲線上を移動可能とする移動機構25とを有する。
前記固定ユニットは、さらに、前記第1固定部と前記第2固定部の少なくとも一方を、前記支持部に対して、前記平面に直交する第2平面内で移動可能とする第2移動機構を有することを特徴とする請求項1に記載のX線タルボ撮影装置。
前記固定ユニットは、さらに、前記関節部分の前記体幹側と前記末梢側との相対的なねじり角度を変えることができるように、前記第1固定部と前記第2固定部の少なくとも一方を回転可能とする回転機構を有することを特徴とする請求項2に記載のX線タルボ撮影装置。
前記固定ユニットの前記第1固定部は、前記支持部に対して、前記第2固定部に近づく方向および前記第2固定部から遠ざかる方向に移動可能とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のX線タルボ撮影装置。
前記固定ユニットの前記第2固定部の前記ハンドルは、右手用と、前記傾斜が前記右手用とは逆の左手用とを交換可能とされていることを特徴とする請求項6に記載のX線タルボ撮影装置。
前記固定ユニットの前記第2固定部の前記ハンドルは、180°回転されることで、右手用と、前記傾斜が前記右手用とは逆の左手用との間で変更可能とされていることを特徴とする請求項6に記載のX線タルボ撮影装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るX線タルボ撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
[X線タルボ撮影装置の原理について]
まず、X線タルボ撮影装置の原理、すなわちX線タルボ撮影装置に用いられるタルボ干渉計やタルボ・ロー干渉計に共通する原理について、
図1を用いて簡単に説明する。なお、
図1では、タルボ干渉計の場合が示されているが、タルボ・ロー干渉計の場合も基本的に同様に説明される。
【0020】
タルボ干渉計では、放射線発生装置11と、第1格子14と、第2格子15と、放射線検出器16が、
図1に示すように放射線の照射方向(すなわちz方向)に順番に配置される。なお、タルボ・ロー干渉計の場合には、
図1では図示を省略するが、放射線発生装置11の近傍に線源格子12(後述する
図2や
図3等参照)が配置される。
【0021】
図2に示すように、第1格子14や第2格子15には(タルボ・ロー干渉計の場合は線源格子12にも)、放射線の照射方向であるz方向と直交するx方向に、所定の周期dで複数のスリットSが配列されて形成されている。なお、所定の周期dは、第1格子14や第2格子15、線源格子12でそれぞれ異なる。
【0022】
そして、放射線発生装置11から照射された放射線(タルボ・ロー干渉計の場合は放射線発生装置11から照射された放射線が線源格子12で多光源化された放射線)が第1格子14を透過すると、透過した放射線がz方向に一定の間隔で像を結ぶ。この像を自己像(格子像等ともいう。)といい、このように自己像がz方向に一定の間隔をおいて形成される現象をタルボ効果という。
【0023】
そして、
図1等に示すように、第1格子14の自己像が像を結ぶ位置に、第1格子14と同様にスリットSが設けられた第2格子15を配置するが、その際、第2格子15のスリットSの延在方向(すなわち
図1等ではy軸方向)が、第1格子14のスリットSの延在方向に対して僅かに角度を持つように配置する。そして、このように配置することで、第2格子15上にモアレ縞のみからなるモアレ画像Moが現れる。
【0024】
なお、
図1では、モアレ画像Moを第2格子15上に記載するとモアレ縞とスリットSとが混在する状態になって分かりにくくなるため、モアレ画像Moを第2格子15から離して記載しているが、実際には第2格子15上やその下流側でモアレ画像Moが形成される。
【0025】
一方、被写体Hが存在すると、被写体Hによって放射線の位相がずれる。そのため、モアレ画像Moのモアレ縞に被写体の辺縁を境界とした乱れが生じ、第2格子15上やその下流側に、
図1に示すように被写体Hにより乱れが生じたモアレ画像Moが現れる。
【0026】
以上が、タルボ干渉計やタルボ・ロー干渉計の原理である。そして、第2格子15の下流側に配置された放射線検出器16(後述する
図3参照)で上記のモアレ画像Moを撮影するように構成される。そして、上記の原理に従ってX線タルボ撮影装置が構成される。
【0027】
[X線タルボ撮影装置の構成]
以下、上記の原理に基づいて構成される本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1について説明する。
図3は、本実施形態に係るX線タルボ撮影装置の全体像を表す概略図である。
【0028】
なお、本実施形態では、X線タルボ撮影装置1が、線源格子(G0格子やマルチ格子、マルチスリット等ともいう。)12を備えるタルボ・ロー干渉計を用いたX線タルボ撮影装置である場合について説明するが、線源格子12を備えず、第1格子(G1格子ともいう。)14と第2格子(G2格子ともいう。)15のみを備えるタルボ干渉計を用いたX線タルボ撮影装置であっても同様に説明される。
【0029】
また、以下では、
図3に示すように、X線タルボ撮影装置1が、上側に設けられた放射線発生装置11から下方の被写体Hに向けて放射線を照射するように構成されている場合について説明するが、本発明はこの場合に限定されず、放射線発生装置11から放射線を水平方向や任意の方向に照射するように構成することも可能である。
【0030】
本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1は、
図3に示すように、放射線発生装置11と、線源格子12と、被写体台13と、第1格子14と、第2格子15と、放射線検出器16と、支柱17と、基台部18と、コントローラー19とを備えている。
【0031】
放射線発生装置11は、例えば医療現場で広く一般に用いられているクーリッジX線源や回転陽極X線源等を備えている。また、それ以外の放射線源(管球)を備えるように構成することも可能である。
【0032】
そして、本実施形態では、放射線発生装置11の、放射線の照射方向(すなわちz方向)下流側に線源格子12が設けられている。そして、放射線発生装置11の振動が線源格子12等に伝わらないようにするために、本実施形態では、線源格子12は、放射線発生装置11には取り付けられておらず、支柱17に設けられた基台部18に取り付けられた固定部材12aに取り付けられるようになっている。
【0033】
そして、上記の固定部材12aには、線源格子12のほか、線源格子12を透過した放射線の線質を変えるためのろ過フィルター(付加フィルター等ともいう。)112や、照射される放射線の照射野を絞るための照射野絞り113、放射線を照射する前に放射線の代わりに可視光を被写体Hに照射して位置合わせを行うための照射野ランプ114等が取り付けられている。そして、線源格子12等の周囲には、それらを保護するための第1のカバーユニット120が配置されている。
【0034】
また、線源格子12の、放射線の照射方向(すなわちz方向)下流側には、被写体Hを保持する被写体台13や、第1格子14、第2格子15、放射線検出器16等が設けられている。その際、前述したように、放射線発生装置11から照射され第1格子14を透過した放射線が第1格子14からz方向に一定の間隔で自己像を結ぶ位置に第2格子15が配置されるように、第1格子14と第2格子15との間隔が調整される。
【0035】
そして、第2格子15の直下に放射線検出器16が配置され、上記のように第2格子15上に生じたモアレ画像Moが放射線検出器16で撮影されるように構成される。そして、本実施形態では、
図3に示すように、患者の脚等が第1格子14や第2格子15、放射線検出器16等にぶつかったり触れたりしないようにして放射線検出器16等を防護するために、第2のカバーユニット130が設けられている。
【0036】
なお、図示を省略するが、放射線検出器(FPD)16は、照射された放射線に応じて電気信号を生成する変換素子が二次元状(マトリクス状)に配置されて構成されており、変換素子により生成された電気信号を画像信号として読み取るように構成されている。そして、本実施形態では、放射線検出器16は、第2格子15上に形成される放射線の像である上記のモアレ画像Moを変換素子ごとの画像信号として撮影するようになっている。
【0037】
また、X線タルボ撮影装置1がいわゆる縞走査法を用いてモアレ画像Moを複数枚撮影するように構成されている場合には、第1格子14と第2格子15との相対位置を
図1〜
図2におけるx軸方向(すなわちスリットSの延在方向(y軸方向)に直交する方向)にずらしながらモアレ画像Moを複数枚撮影する。そして、図示を省略するが、第1格子14と第2格子15との相対位置をx軸方向ずらすための移動装置等が設けられる。なお、X線タルボ撮影装置1でモアレ画像Moを1枚撮影し、それをフーリエ変換する等して微分位相画像等を再構成して生成するように構成されている場合には移動装置等を設ける必要はない。
【0038】
コントローラー19(
図3参照)は、本実施形態では、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターで構成されている。なお、コントローラー19を、本実施形態のような汎用のコンピューターではなく、専用の制御装置として構成することも可能である。また、図示を省略するが、コントローラー19には、入力手段や表示手段等の適宜の手段や装置が設けられている。
【0039】
そして、コントローラー19は、放射線発生装置11に管電圧や管電流、照射時間等を設定するなどX線タルボ撮影装置1に対する全般的な制御を行うようになっている。また、X線タルボ撮影装置1が縞走査法によりモアレ画像Moを複数枚撮影するように構成されている場合には、コントローラー19は、上記の移動装置を制御して、第1格子14(或いは第2格子15或いはその両方)を所定量ずつ移動させるように制御する。
【0040】
また、コントローラー19は、放射線検出器16から送信されてきた1枚或いは複数枚のモアレ画像Moに基づいて自ら吸収画像(
図7参照)や微分位相画像(
図8参照)等を再構成して生成したり、或いは図示しない外部の画像処理装置に、放射線検出器16から送信されてきた1枚或いは複数枚のモアレ画像Moを転送して吸収画像や微分位相画像等を再構成して生成させるように構成される。
【0041】
[固定ユニットについて]
次に、本実施形態に係る固定ユニットについて説明する。固定ユニットは、X線タルボ撮影装置1の被写体台13上に載置されたり固定されたりして使用されるものである。固定ユニットを被写体台13と一体的に形成することも可能である。そして、固定ユニットは、被写体台13上で、放射線発生装置11から照射される放射線に対して被写体Hの関節部分(例えば手首の関節部分)の位置を、体動が生じないように固定するための装置である。なお、以下では、被写体Hである関節部分が手首の関節部分であり、撮影対象である軟骨が舟状骨(手根骨のうち第1指(親指)側にある骨)の軟骨である場合について説明する。
【0042】
図4は、本実施形態に係る固定ユニットの外観を示す斜視図であり、
図5(A)は正面図、
図5(B)は平面図を表す。なお、
図5(A)、(B)では、固定ユニットで被写体Hである手首の関節部分の位置が固定された状態が示されている。
【0043】
固定ユニット20は、
図4や
図5(A)、(B)に示すように、関節部分の体幹側(この場合は前腕部や肘)を位置固定する第1固定部22と、関節部分の末梢側(この場合は手指)を位置固定する第2固定部23とを備えており、さらに、第1固定部22と第2固定部23とを支持する支持部21を有している。
【0044】
そして、
図5(A)、(B)に示すように、患者が肘や前腕部を固定ユニット20の第1固定部22上に載せた状態で第2固定部23の後述するハンドル23aを把持することで、被写体Hである患者の手首の関節部分が固定ユニット20に固定されるようになっている。以下、
図4や
図5(A)、(B)等に基づいて具体的に説明する。
【0045】
略平板状の支持部21は、中央部分に開口部24を有しており、放射線発生装置11(
図3参照)から被写体Hに照射された放射線が開口部24を通過して、開口部24の下方に設けられている第1格子14(
図3参照)に入射するようになっている。また、固定ユニット20の第1固定部22と第2固定部23は、両者の間に支持部21の開口部24が位置するように、支持部21に取り付けられている。
【0046】
本実施形態では、このように、固定ユニット20の支持部21に開口部24を設け、第1固定部22や第2固定部23を開口部24の両側に設けることで、放射線が固定ユニット20の支持部21や第1固定部22、第2固定部23によって遮られることなく開口部24を通過させるようになっている。このように構成することで、モアレ画像や微分位相画像等に撮影された関節部分に、固定ユニット20の支持部21や第1固定部22、第2固定部23が重なって写り込むことが的確に防止されるようになっている。
【0047】
また、本実施形態では、第1固定部22は、固定ユニット20の支持部21に対して、放射線発生装置11から照射される放射線の照射方向(z方向)に略直交する平面内で、所定の曲線上を移動可能とする移動機構25を介して支持部21に取り付けられている。なお、後述するように、本実施形態では、第1固定部22が、上下方向(z方向)の角度等を調整可能とされており、厳密には、放射線の照射方向(z方向)に直交する平面ではなく、放射線の照射方向に対する直交方向に対してやや傾いた平面(例えば
図5(A)参照)内で移動する場合があるため、「略直交する平面」と表現されている。
【0048】
具体的には、本実施形態では、第1固定部22は、平板状に形成された移動機構25の上面側に取り付けられている。移動機構25には、円弧状の線状の孔25a(或いは溝。以下同じ。)が形成されており、第1固定部22の下面側から下方に突出された凸部(図示省略)が移動機構25の孔25aに挿入されている。そして、このような構成により、第1固定部22を、移動機構25の円弧状の孔25aに沿って所定の曲線上を移動させることができるようになっている。なお、本実施形態では、上記のように、所定の曲線を円弧状に形成する場合について示したが、例えば楕円状等であってもよい。
【0049】
そして、移動機構25は、昇降機構26を介して固定ユニット20の支持部21に取り付けられており、昇降機構26により支持部21に対する高さや上下方向の角度を変更させて調整することができるようになっている。本実施形態では、昇降機構26は、移動機構25の開口部24に近い側と遠い側の2箇所に設けられており、各昇降装置26の昇降度合をそれぞれ調整することで、移動機構25を全体的に昇降させたり上下方向の角度を変更することができるようになっている。
【0050】
なお、上記のように構成する代わりに、例えば、移動機構25を全体的に昇降させるための昇降機構と、それらの上下方向の角度を変更するための角度調整装置とを別々に設けることも可能であり、移動機構25の高さや角度を調整するための機構は特定の機構に限定されない。
【0051】
また、本実施形態では、上記のようにして移動機構25の固定ユニット20の支持部21に対する高さや上下方向の角度を調整することで、移動機構25の上面側に取り付けられた第1固定部22の支持部21に対する高さや角度を調整することができるようになっている。そして、本実施形態では、昇降機構26をネジ締めする等して昇降機構26を固定することで、移動機構25や第1固定部22の高さや角度を、上記のようにして調整された高さや角度に維持することができるようになっている。
【0052】
また、本実施形態では、昇降機構26は、固定ユニット20の支持部21に設けられた溝状のレールに沿って移動し、支持部21に対して、第2固定部23に近づく方向や第2固定部23から遠ざかる方向に移動することができるように構成されている。そのため、昇降機構26に取り付けられた移動機構25や第1固定部22も、全体として、支持部21に対して、第2固定部23に近づく方向や第2固定部23から遠ざかる方向に移動することができるようになっている。
【0053】
前腕部の長さ(すなわち肘から手までの長さ)は患者の体格によって異なるが、上記のように、第1固定部22を、第2固定部23に近づく方向や第2固定部23から遠ざかる方向に移動することができるように構成することで、第1固定部22を、第2固定部23のハンドル23aを把持した状態での患者の肘や前腕部の位置にあわせて移動させることが可能となる。そして、患者の体格にあわせて第1固定部22を移動させることで、患者が第2固定部23のハンドル23aを把持し、肘や前腕部を第1固定部22上に載せて、患者の手首の関節部分を的確に固定ユニット20で固定した状態で撮影を行うことが可能となる。
【0054】
なお、本実施形態では、第1固定部22の上面側には窪み22aが形成されており、患者の肘や前腕部をその窪み22aの部分に載せることで患者の肘や前腕部が第1固定部22により固定されるようになっているが、図示を省略するが、例えば、第1固定部22の上面側の窪み22aをより深くしたり、或いは、第1固定部22に載せた患者の肘や前腕部を締結して第1固定部22に固定するためのベルト状の締結具等を設けるように構成することも可能である。
【0055】
また、本実施形態では、移動機構25に対して第1固定部22が移動しないようにしたり、固定ユニット20の支持部21に対して昇降機構26が移動しないようにするためのストッパー22s、26sがそれぞれ設けられており、移動させて位置等が調整された第1固定部22や昇降機構26をストッパー22s、26sで固定することで、第1固定部22や昇降機構26が移動機構25や支持部21に対して位置固定されるようになっている。
【0056】
また、本実施形態では、第2固定部23は、前述したように、固定ユニット20の支持部21に設けられた開口部24を挟んで第1固定部22に対向する位置に設けられている。そして、第2固定部23には、患者が把持するための握り棒23bを備えるハンドル23aが取り付けられている。
【0057】
[作用]
次に、本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1の作用、特に固定ユニット20の作用について説明する。
【0058】
図4に示した状態の固定ユニット20に対して、被写体Hである患者が、肘や前腕部を第1固定部22の窪み22aの部分に載せることで、患者の手首の関節部分の体幹側(すなわち肘や前腕部)が第1固定部22により固定される。また、患者が、第2固定部23のハンドル23aの握り棒23bを把持することで、患者の手首の関節部分の末梢側(すなわち手指の部分)が第2固定部23により固定される。
【0059】
そして、この状態で、
図5(B)に示したように、移動機構25の孔25aに沿って第1固定部22を患者の第5指(小指)側に移動させることで、撮影対象である舟状骨(手根骨のうち第1指(親指)側にある骨)の部分が開き、舟状骨とその周囲の骨との間隔が開く。そのため、舟状骨の軟骨が撮影され易くなる。
【0060】
その際、本実施形態では、上記のように、第1固定部22は、固定ユニット20の支持部21に対して、放射線発生装置11から照射される放射線の照射方向(z方向)に略直交する平面内で、移動機構25の円弧状の孔25aに沿って所定の曲線上を移動することができるように構成されている。そのため、第1固定部22に固定された患者の肘や前腕を所定の曲線上で移動させることが可能となり、撮影対象である舟状骨が的確に放射線の照射方向の位置に配置された状態を変えることなく(すなわち手首の位置を動かさずに)、患者の手首の角度を的確に変更したり調整したりすることが可能となる。
【0061】
また、例えば、移動機構25の孔25aが仮に直線状に形成されていると、第1固定部22が移動機構25の直線状の孔25aに沿って移動する際、第1固定部22と第2固定部23との距離が長くなったり短くなったりして変化する。しかし、患者の手首と肘等との長さは変わらないため、結局、第1固定部22が移動機構25の直線状の孔25aに沿って移動する際に、第1固定部22と患者の肘や前腕との間にずれが生じ、患者が苦痛を覚えたり、或いは患者がいちいち第1固定部22に肘や前腕を固定し直す等しなければならず、患者の肘や前腕の移動をスムーズに行えない等の問題が生じ得る。
【0062】
しかし、本実施形態のように、移動機構25の孔25aを円弧状に形成し、第1固定部22が、移動機構25の円弧状の孔25aに沿って所定の曲線上を移動することができるように構成することで、上記のような問題を生じることなく、第1固定部22を所定の曲線上を移動させ、患者に苦痛を与えずにスムーズに肘や前腕を移動させて、患者の手首の角度を的確に変更したり調整したりすることが可能となる。
【0063】
そして、放射線技師等の撮影者は、X線タルボ撮影装置1の放射線発生装置11(
図3等参照)から弱い放射線を、固定ユニット20に固定された患者の関節部分に連続的に照射しながら、放射線検出器16で撮影されるモアレ画像Mo(この場合は動画的に表示される。)を図示しないモニター上に表示させ、それを視認しながら、固定ユニット20の位置(すなわち関節部分の放射線の照射方向に対する位置)を調整したり、第1固定部22を移動機構25の孔25aに沿って患者の第5指(小指)側に移動させる角度を、舟状骨の軟骨が撮影される角度に調整したりする。
【0064】
また、必要に応じて、昇降機構26を昇降させて患者の体幹側の高さや上下方向の角度を調整する。そして、このようにしてポジショニングが完了すると、第1固定部22や昇降機構26をストッパー22s、26sで固定する。そして、その状態で、放射線発生装置11から、縞走査法の場合は複数回、フーリエ変換法の場合は1回、放射線を照射して本撮影を行い、複数枚或いは1枚のモアレ画像Moを撮影する。その後、モアレ画像Moが再構成されて微分位相画像(
図8参照)等が生成されることは前述した通りである。
【0065】
[効果]
以上のように、本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1によれば、固定ユニット20の第1固定部22を、移動機構25によって、固定ユニット20の支持部21に対して、放射線の照射方向(z方向)に略直交する平面内で、所定の曲線上を移動させることが可能となり、その状態で関節部分を的確に固定することが可能となる。
【0066】
そのため、被写体Hの関節部分の、放射線の照射方向(z方向)に対する位置や、放射線の照射方向に略直交する平面内で角度が適切な位置や角度に維持されるように手首の関節部分を的確に固定することが可能となる。そして、その際、第1固定部22が、固定ユニット20の支持部21に対して、放射線発生装置11から照射される放射線の照射方向(z方向)に略直交する平面内で、移動機構25の円弧状の孔25aに沿って所定の曲線上を移動することができるように構成されているため、第1固定部22に固定された患者の肘や前腕を所定の曲線上で移動させることが可能となり、撮影対象である舟状骨が的確に放射線の照射方向の位置に配置された状態を変えることなく(すなわち手首の位置を動かさずに)、しかも、患者に苦痛を与えずにスムーズに肘や前腕を移動させて、患者の手首の角度を的確に変更したり調整したりすることが可能となる。
【0067】
そのため、本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1によれば、患者の手首の角度を的確に調整して固定して、患者の手首の関節部分の軟骨(この場合は舟状骨の軟骨)を、例えば
図9(A)、(B)に示したように他の骨によって遮られることなく、モアレ画像Mo中に的確に撮影することが可能となり、モアレ画像Moを再構成して生成される微分位相画像中に撮影対象の軟骨を的確に撮影することが可能となる。
【0068】
なお、移動機構25に、第1固定部22の移動機構25に対する角度(すなわち第1固定部22を移動機構25上で円弧状の孔25aに沿って移動させた場合の基準点からの角度)を計測するための目盛りや、第1固定部22の支持部21からの高さや上下方向の角度等を計測するための目盛り等が設けられているが、これらを自動的に計測する計測器を設けてもよい。
【0069】
そして、上記の角度等を調節した際に、その角度等の目盛りを記録しておいたり、計測器で自動的に計測した角度等を記録しておくことで、次回以降の撮影の際に、上記の角度等を、以前の撮影の際に記録しておいた角度等に合わせるだけで、角度調節等のポジショニングを容易且つ的確に行うことが可能となる。
【0070】
[変形例]
ところで、上記のように、移動機構25に所定の曲線状(本実施形態の場合は円弧状)の線状の孔25aを設け、その孔25aに沿って第1固定部22を移動可能とするように構成する代わりに、或いはそれとともに、例えば
図4や
図5(B)に示すように固定ユニット20の支持部21等に所定の曲線状(例えば円弧状)の線状の孔21aを設け、第2固定部23を、この孔21aに沿って、放射線の照射方向(z方向)に略直交する平面内で、所定の曲線上(例えば円弧上)を移動可能とするように構成することも可能である。
【0071】
この場合、第1固定部22は、放射線の照射方向に略直交する平面内では移動させず、第2固定部23のみを放射線の照射方向に略直交する平面内で所定の曲線上を移動可能とするように構成することも可能である。この場合は、上記の孔21aが移動機構ということになる。また、第1固定部22も第2固定部23もそれぞれ放射線の照射方向に略直交する平面内で所定の曲線上を移動可能とするように構成することも可能である。この場合は、上記の移動機構25と孔21aが移動機構ということになる。
【0072】
すなわち、固定ユニット20において、第1固定部22を移動機構25の曲線状の孔25aに沿って(第1固定部22のみを移動可能とする場合)、或いは第2固定部23を移動機構である曲線状の孔21aに沿って(第2固定部23のみを移動可能とする場合)、或いは両者をそれぞれ孔21a、25aに沿って(第1固定部22と第2固定部23の両方を移動可能とする場合)、放射線の照射方向(z方向)に略直交する平面内で、所定の曲線上(例えば円弧上)を移動可能とするように構成することが可能である。
【0073】
そして、このように構成することで、上記と同様に、第1固定部22や第2固定部23を孔25aや孔21aに沿って所定の曲線上を移動させることが可能となり、撮影対象である舟状骨が的確に放射線の照射方向の位置に配置された状態を変えることなく(すなわち手首の位置を動かさずに)、しかも、患者に苦痛を与えずにスムーズに肘や前腕を移動させて、患者の手首の角度を的確に変更したり調整したりすることが可能となる。
【0074】
そのため、手首の関節部分の、放射線の照射方向(z方向)に対する位置や、放射線の照射方向に略直交する平面内で角度が適切な位置や角度に維持されるように手首の関節部分を的確に固定することが可能となり、例えば
図9(A)、(B)に示したように撮影対象の手根骨(この場合は舟状骨)の軟骨が他の骨によって遮られることがない状態で手首の関節部分のモアレ画像Moを的確に撮影することが可能となり、モアレ画像Moを再構成して生成される微分位相画像中に手根骨(この場合は舟状骨)の軟骨を的確に撮影することが可能となる。
【0075】
なお、
図5(A)、(B)では、患者の左手の舟状骨を撮影する場合について説明したが、本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1や固定ユニット20を用いて患者の右手の舟状骨を撮影することも可能である。図示を省略するが、この場合、
図4に示した状態の固定ユニット20に対して、患者が、肘や前腕部を第1固定部22に載せ、第2固定部23のハンドル23aを把持する。その場合、患者の第5指(小指)は、
図5(B)とは逆に図中上側に位置することになる。
【0076】
そして、この状態で、
図5(B)に示した方向とは逆に、移動機構25の孔25aに沿って第1固定部22を図中上側、すなわち患者の第5指(小指)側に移動させることで、撮影対象である舟状骨(手根骨のうち第1指(親指)側にある骨)の部分が開き、舟状骨とその周囲の骨との間隔が開くため、舟状骨を的確に撮影することができる。
【0077】
[第2固定部の構成等について]
本実施形態では、第2固定部23は、固定ユニット20の支持部21から上方向に立設されている。なお、前述したように、本実施形態では、固定ユニット20の第1固定部22が第2固定部23に近づく方向や第2固定部23から遠ざかる方向に移動することができるように構成されているが、それに代えて、或いはそれとともに、第2固定部23を、第1固定部22に近づく方向や第1固定部22から遠ざかる方向に移動することができるように構成することも可能である。
【0078】
本実施形態では、第2固定部23は、放射線の照射方向(z方向)に平行な平面内で所定の曲線状(この場合は円弧状)に湾曲された湾曲面23c1を有する支柱23cと、第1固定部22と対向する支柱23cの湾曲面23c1に取り付けられ、第1固定部22に向かう方向に延出された基部23dと、基部23dの先端(すなわち第1固定部22に向かう側)に取り付けられたハンドル23aとを備えている。なお、前述した放射線の照射方向(z方向)に略直交する平面と区別するために、以下、この平面を第1平面といい、上記の放射線の照射方向(z方向)に平行な平面(すなわち前記平面に直交する平面)を第2平面という。
【0079】
本実施形態では、第2固定部23のハンドル23aは、基部23dに対して上下方向には屈曲できないように固定されている。そして、基部23dを支柱23cの湾曲面23c1に沿って上下方向に移動させることで、ハンドル23aの上下方向の角度(すなわちハンドル23a(および基部23d)の延在方向の上下方向の角度)を調整することができるようになっている。
【0080】
また、本実施形態では、固定ユニット20の第2固定部23のハンドル23aや基部23dが支柱23cに対して移動しないようにするためのストッパー23sが設けられており、支柱23cに対して上下方向に移動させた基部23dをストッパー23sで固定することでハンドル23aが支柱23cに対して位置固定され、ハンドル23aの延在方向(すなわちハンドル23a自体の上下方向の角度)が固定されるようになっている。
【0081】
また、第2固定部23のハンドル23aには、患者が把持するための握り棒23bが設けられている。そして、本実施形態では、ハンドル23aの握り棒23bの断面形状は、円形状ではなく、楕円状、角丸長方形状、或いは長方形の短辺両端に半円形を合わせた陸上競技トラックのような形状(以下、長円形状という。)等に形成されている。
【0082】
仮にハンドル23aの握り棒23bの断面形状が円形状であると、例えば
図5(A)に示すように水平方向に延在するように配置されたハンドル23aの握り棒23bを患者が把持する際に、握り棒23bを上側から把持したり(この場合は患者の手指(すなわち手首から先の部分)が手首よりも低い状態になる。)、下側から把持したり(この場合は患者の手指が手首よりも高い状態になる。)することが可能となり、上記のように基部23dを支柱23cに対して上下方向に移動させてハンドル23aの上下方向の角度を調整しても、それを把持する患者の手指の上下方向の角度を一定させることが難しい。
【0083】
しかし、本実施形態のように、ハンドル23aの握り棒23bの断面形状を、円形状ではなく、楕円状、角丸長方形状、長円形状等に形成することで、患者がハンドル23aの握り棒23bを把持する場合に、握り棒23bを上側から把持したり下側から把持したりするとうまく把持できず、或いは把持しても違和感を感じる状態になる。そして、患者がハンドル23aの延在方向に沿って握り棒23bを把持する場合には違和感を感じることなく自然に握り棒23bを把持することができる。
【0084】
そのため、ハンドル23aの握り棒23bを上記のように構成することで、例えば
図5(A)に示すように、患者にハンドル23aの握り棒23bを一定の方向から(すなわちハンドル23aの延在方向から)把持させるようにすることが可能となり、ハンドル23a(或いはその基部23d)に対する患者の手指(すなわち手首から先の部分)の角度が上下にぶれることなく的確にかつ一定の角度(すなわちハンドル23a(および基部23d)の延在方向の上下方向に対する角度)で把持させることが可能となる。
【0085】
このように、本実施形態では、患者が第2固定部23のハンドル23aの握り棒23bを把持することで、上記のように、患者の手指(すなわち手首から先の部分)の上下方向の角度がハンドル23a(および基部23d)の延在方向の上下方向に対する角度に固定されるようになっている。また、前述したように、患者が肘や前腕部を第1固定部22に載せることで、前腕部の上下方向の角度が第1固定部22の上下方向の角度に固定される。
【0086】
そのため、本実施形態では、固定ユニット20を以上のように構成することで、患者がハンドル23aの握り棒23bを把持すると、患者の手首の上下方向の角度(すなわち患者の前腕部と手指の部分との上下方向の相対的な角度)が自動的に固定されるようになっている。
【0087】
[第2移動機構について]
本実施形態では、上記のように、固定ユニット20の第2固定部23の基部23dが、支柱23cの湾曲面23c1に沿って上下方向に移動することができるように構成されている。すなわち、本実施形態では、第2固定部23の基部23dと支柱23cの湾曲面23c1が、第2固定部23のハンドル23aを固定ユニット20の支持部21に対して第2平面内で移動可能とする第2移動機構として機能するようになっている。
【0088】
しかし、例えば、第2の固定部23のハンドル23aや基部23dを支柱23cに対して移動できないように固定しておき、前述した昇降機構26で第1固定部22を昇降させたり上下方向の角度を変えたりして、第1固定部22を固定ユニット20の支持部21に対して第2平面内で移動可能とするように構成することも可能である。この場合は、昇降機構26が第2移動機構として機能することになる。
【0089】
また、第2固定部23のハンドル23aを支柱23cの湾曲面23c1に沿って移動可能とし、第1固定部22を昇降機構26で昇降させたり上下方向の角度を変えたりするように構成して、第2固定部23のハンドル23aも第1固定部22も両方とも固定ユニット20の支持部21に対して第2平面内で移動可能とするように構成することも可能である。
【0090】
以上のように構成すれば、第2固定部23のハンドル23a、或いは第1固定部22、或いはそれらの両方を、第2平面内で的確に移動させて、患者がハンドル23aの握り棒23bを把持した状態で、患者の手首の関節部分の第2平面内での位置や角度(すなわち患者の前腕部と手指の部分との上下方向の相対的な角度)が適切な位置や角度に維持されるように手首の関節部分を的確に固定することが可能となる。
【0091】
そのため、例えば
図9(A)、(B)に示したように撮影対象の手根骨(この場合は舟状骨)の軟骨が他の骨によって遮られることがない状態で手首の関節部分のモアレ画像Moを的確に撮影することが可能となり、モアレ画像Moを再構成して生成される微分位相画像中に手根骨(この場合は舟状骨)の軟骨を的確に撮影することが可能となる。
【0092】
また、関節部分の軟骨を、例えば
図9(A)、(B)に示したように他の骨によって遮られることなく的確に撮影するためには、複雑なポジショニング(放射線の照射方向に対する関節部分の位置や角度等の調整)が必要になる。しかし、第2移動機構を用いることで、上記のような移動機構25等を用いた放射線の照射方向(z方向)に略直交する第1平面内での調整だけでなく、それに直交する第2平面内での調整も行うことが可能となる。そのため、第2移動機構を用いない場合に比べて、関節部分のポジショニングを容易に且つ正確に、しかも短時間で行うことが可能となる。
【0093】
なお、本実施形態では、第2固定部23のハンドル23aが基部23dに対して上下方向に屈曲できないように固定されており、基部23dを支柱23cの湾曲面23c1に沿って上下方向に移動させることで、ハンドル23aの上下方向の角度を変えることができるように構成されている場合について説明した。
【0094】
しかし、この他にも、例えば、第2固定部23の基部23dを支柱23cに固定し、基部23dに対してハンドル23aの上下方向の角度を変えることができるように構成することも可能である。このように構成する場合、第2固定部23の基部23dが、第2固定部23のハンドル23aを支持部21に対して第2平面内で移動(この場合は上下方向に揺動)可能とする第2移動機構として機能することになる。そして、この場合、図示を省略するが、基部23dにストッパー等を設け、基部23dに対するハンドル23aの角度を調整した後でハンドル23aをストッパーで基部23dに固定するように構成することで、基部23dに対するハンドル23aの角度を的確に固定することができるように構成することも可能である。
【0095】
また、例えば、第2固定部23の支柱23cの湾曲面23c1等に、ハンドル23aの支持部21に対する角度を計測するための目盛りを設けておくように構成することも可能である。また、ハンドル23aの支持部21に対する角度を自動的に計測する計測器を設けてもよい。
【0096】
そして、ハンドル23aの角度を調節した際に、その角度の目盛りを記録しておいたり、計測器で自動的に計測した角度を記録しておくことで、次回以降の撮影の際に、上記の角度を、以前の撮影の際に記録しておいた角度に合わせるだけで、ハンドル23aの角度調節を容易且つ的確に行うことが可能となる。
【0097】
[回転機構について]
一方、固定ユニット20において、患者の手首等の関節部分を、上記の第1平面や第2平面に直交する平面内で回転させることができるように構成することも可能である。すなわち、関節部分の体幹側(この場合は前腕部)と末梢側(この場合は手指)との相対的なねじり角度を変えることができるように、固定ユニット20の第2固定部23側(或いは第2固定部22側、或いは両方)を回転可能とする回転機構を有するように構成することが可能である。
【0098】
このように、固定ユニット20で、患者の手首等の関節部分を3次元的に移動させたり回転させたりすることができるように構成することで、関節部分の放射線の照射方向に対する位置や角度を3次元的に調整することが可能となり、関節部分のより複雑なポジショニングを容易に且つ正確に、しかも短時間で行うことが可能となる。
【0099】
この場合、例えば、第2固定部23の基部23dに対して、ハンドル23aを基部23dの延在方向を中心として回転することができるように構成し、ストッパー23sの締結および解除により、基部23dに対してハンドル23aを固定したり回転可能としたりすることができるように構成することが可能である。
【0100】
また、この場合も、例えば、第2固定部23の基部23dに対するハンドル23aの回転角を計測するための目盛りを設けたり、或いは回転角を自動的に計測する計測器を設けてもよい。そして、ハンドル23aの回転角を調節した際に、その回転角の目盛りを記録しておいたり、計測器で自動的に計測した回転角を記録しておくことで、次回以降の撮影の際に、上記の回転角を、以前の撮影の際に記録しておいた回転角に合わせるだけで、ハンドル23aの回転角の調節を容易且つ的確に行うことが可能となる。
【0101】
なお、本実施形態では、
図4や
図5(A)に示すように、固定ユニット20の支持部21と第2固定部23との間に介在させる調整具23eの個数を変えることで、支持部21に対する第2固定部23の高さを変更することができるようになっているが、例えば、第2固定部23を支持部21に対して昇降させて高さを連続的に変えることを可能とする昇降装置を備えるように構成することも可能である。
【0102】
[握り棒に傾斜を設けることについて]
ところで、上記の実施形態では、
図4に示した状態の第1固定部22に患者の肘や前腕部(すなわち体右側)を載せ、第2固定部23のハンドル23cを把持した状態で、
図5(B)に示したように、移動機構25の孔25aに沿って第1固定部22を患者の第5指(小指)側に移動させることで、撮影対象である舟状骨(手根骨のうち第1指(親指)側にある骨)の部分が開き、その状態で撮影を行う場合について説明した。
【0103】
その際、
図5(B)や
図6(A)に示すように、予め、ハンドル23aの握り棒23bの第2指(人指し指)から第5指(小指)が握る部分に、第5指(小指)が第2指(人指し指)よりも関節部分の体幹側(すなわち肘や前腕部)に近くなるように傾斜を設けるように構成することが可能である。
【0104】
このように構成すれば、移動機構25に沿って第1固定部22(すなわち患者の肘や前腕部)を同じ角度だけ移動させた際に、握り棒23bに傾斜が設けられていない場合に比べて、撮影対象である舟状骨(手根骨のうち第1指(親指)側にある骨)の部分がより開いて舟状骨とその周囲の骨との間隔が的確に開く状態になる。そのため、舟状骨の軟骨を、周囲の骨に遮られることなく的確に撮影することが可能となる。
【0105】
また、
図5(B)や
図6(A)では、患者の左手の舟状骨を撮影する場合について説明したが、患者の右手の舟状骨を撮影する場合には、
図6(B)に示すように、第2固定部23のハンドル23aの握り棒23bに、
図5(B)や
図6(A)に示した場合とは逆の傾斜を設けるように構成することが可能である。なお、この場合は、図示を省略するが、患者の第5指(小指)が第2指(人指し指)よりの
図6(B)中の上側に位置するように把持されるため、やはり、握り棒23bに、第5指(小指)が第2指(人指し指)よりも関節部分の体幹側(すなわち肘や前腕部)に近くなるように傾斜を設けていることになる。
【0106】
なお、この場合、左手用(
図6(A)参照)と右手用(
図6(B)参照)のハンドル23aを予め用意しておき、ハンドル23aを固定ユニット20の第2固定部23に付け替えることで、交換することができるように構成することが可能である。
【0107】
或いは、前述したように、第2固定部23の基部23dに対して、ハンドル23aを基部23dの延在方向を中心として回転することができるように回転機構を設け、ハンドル23aを180°回転させることで、ハンドル23aを左手用(
図6(A)参照)と右手用(
図6(B)参照)との間で変更することができるように構成することも可能である。
【0108】
そして、以上のように構成することで、1台の固定ユニット20を用いて、患者の左手と右手のいずれの手においても、手首の関節部分の、放射線の照射方向(z方向)に対する位置や、放射線の照射方向に略直交する平面内で角度が適切な位置や角度に維持されるように手首の関節部分を的確に固定することが可能となる。そのため、左手と右手のいずれの手の舟状骨の軟骨も撮影することが可能となる。
【0109】
[本発明に係るX線タルボ撮影装置の撮影対象等について]
なお、以上の説明では、被写体Hである関節部分が手首の関節部分であり、撮影対象である軟骨が舟状骨(手根骨のうち第1指(親指)側にある骨)の軟骨である場合について説明したが、本発明に係るX線タルボ撮影装置1の固定ユニット20の撮影対象は舟状骨に限定されない。
【0110】
例えば、患者の手首の月状骨(手根骨のうち第5指(小指)側にある骨)の軟骨を撮影することも可能である。例えば患者の左手の手首の月状骨を撮影する場合、
図4に示した状態の固定ユニット20に対して、患者が肘や前腕部を第1固定部22に載せ、第2固定部23のハンドル23aの握り棒23bを把持した状態で、
図5(B)とは逆に、移動機構25の孔25aに沿って第1固定部22を患者の第1指(親指)側に移動させることで、撮影対象である月状骨の部分が開き、月状骨とその周囲の骨との間隔が開く。そのため、本実施形態に係るX線タルボ撮影装置1や固定ユニット20を用いて、舟状骨の軟骨を撮影することが可能である。
【0111】
また、患者の右手の手首の月状骨の軟骨を撮影する場合には、
図4に示した状態で患者が肘や前腕部を第1固定部22に載せ、第2固定部23のハンドル23aの握り棒23bを把持した状態で、
図5(B)と同じ方向に移動させることで、撮影対象である月状骨の部分が開くため、右手の舟状骨の軟骨を撮影することも可能となる。
【0112】
なお、この場合、第2固定部23のハンドル23aの握り棒23bは、上記の舟状骨を撮影する場合とは逆に、
図6(A)に示した場合を右手用、
図6(B)に示した場合を左手用として使用することができる。
【0113】
また、固定ユニット20の第1固定部22や第2固定部23の構造等を、撮影対象の固定すなわち関節部分の体幹側や末梢側の固定に適した構造等とすることで、上記のような手首の関節部分だけでなく、例えば肘や肩、足首、膝、股関節等の関節部分の体幹側と末梢側をそれぞれ第1固定部22と第2固定部23とで固定し、移動機構により、第1固定部22と第2固定部23の少なくとも一方を、固定ユニット20の支持部21に対して、放射線の照射方向(z方向)に略直交する第1平面内で所定の曲線上を移動させて、被写体Hの関節部分の位置や角度が適切な位置や角度に維持されるように関節部分を的確に固定することが可能となり、関節部分の軟骨を的確に撮影することが可能となる。
【0114】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。