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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-220961(P2016-220961A)
(43)【公開日】2016年12月28日
(54)【発明の名称】皮膚抵抗測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20060101AFI20161205BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20161205BHJP
【FI】
   A61B5/05 B
   G01R27/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-110508(P2015-110508)
(22)【出願日】2015年5月29日
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 励治
(72)【発明者】
【氏名】森本 祐平
(72)【発明者】
【氏名】米田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 雅之
(72)【発明者】
【氏名】道田 奈々江
【テーマコード(参考)】
2G028
4C027
4C127
【Fターム(参考)】
2G028AA02
2G028BC07
2G028CG02
2G028CG08
2G028CG13
2G028CG20
2G028DH04
2G028DH11
2G028DH14
2G028GL07
2G028HN09
4C027AA07
4C027EE01
4C027GG07
4C027GG11
4C127AA07
4C127EE01
4C127GG07
4C127GG11
(57)【要約】
【課題】皮膚抵抗を精度良く測定可能であり、かつ、構成が簡易である皮膚抵抗測定装置を提供する。
【解決手段】高周波電源21によって生成された交流電圧が第1電極11に与えられ、第2電極12の電流が検出回路30によって検出される。誘導素子25が高周波電源21から第1電極11までの電気経路等に設けられている。制御部40は高周波電源21の周波数を変更制御するとともに、検出回路30から検出信号S1を受け、電極部10に接触した人体のインピーダンスを求める。インピーダンスが極小となる周波数におけるインピーダンスの値から、人体の皮膚抵抗が求められる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の皮膚抵抗を測定する装置であって、
第1および第2電極を有しており、人体が接触する接触面の表面が絶縁体で覆われている電極部と、
周波数を変更可能に構成された高周波電源を有しており、前記高周波電源によって生成された交流電圧を前記第1電極に与える駆動回路と、
前記第2電極と接続されており、前記第2電極の電流を検出し、検出した電流値を表す検出信号を出力する検出回路と、
前記高周波電源から前記第1電極までの電気経路、または、前記第2電極から前記検出回路までの電気経路のいずれかに設けられた誘導素子と、
前記高周波電源の周波数を変更制御するとともに、前記検出回路から前記検出信号を受ける制御部とを備え、
前記制御部は、前記高周波電源の出力電圧と前記検出信号が示す電流値とを用いて、前記電極部に接触した人体のインピーダンスを求め、このインピーダンスと前記高周波電源の周波数との関係において、インピーダンスが極小となる周波数におけるインピーダンスの値を基にして、人体の皮膚抵抗を求める
ことを特徴とする皮膚抵抗測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の皮膚抵抗測定装置において、
前記第1電極は、平面視で、第1方向に延びる電極であり、
前記第2電極は、平面視で、前記第1方向と垂直をなす第2方向において、前記第1電極の両側に、前記第1電極との間に間隔を空けてそれぞれ配置された2個の電極からなる
ことを特徴とする皮膚抵抗測定装置。
【請求項3】
請求項1記載の皮膚抵抗測定装置において、
第2電極は、平面視で、前記第1電極との間に間隔を空けて、前記第1電極を囲むように配置されている
ことを特徴とする皮膚抵抗測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項記載の皮膚抵抗測定装置において、
前記検出回路は、
前記第2電極から受けた電流信号を、電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプ回路と、
前記トランスインピーダンスアンプ回路の出力を受け、その包絡線波形を表す信号を生成するエンベロープ回路とを備えている
ことを特徴とする皮膚抵抗測定装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項記載の皮膚抵抗測定装置において、
前記電極部の接触面に人体が接触したとき、前記第1および第2電極から前記人体を経由してアースに至る電気的経路が形成される
ことを特徴とする皮膚抵抗測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項記載の皮膚抵抗測定装置において、
前記第1電極と前記第2電極との間に、リーク抵抗および相互容量が存在する
ことを特徴とする皮膚抵抗測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の皮膚抵抗を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、例えば車内でのドライバーの生理情報(心拍、発汗、呼吸等)を、簡単に、低コストで、かつ、ドライバーの体勢や状況によらず正確に測定できるシステムが求められている。その中で、人体の精神性発汗を電気的に測定する指標である皮膚電気活動(EDA: electrodermal activity)を、簡易な構成で測定可能な装置の研究開発が進められている。
【0003】
非特許文献1では、定電流による交流通電法を用いて、EDAを皮膚インピーダンスとして測定する方法が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】橋間他、「皮膚電気活動の交流通電法における測定条件の検討」、信学技報、社団法人電子情報通信学会、1995年7月、Vol.95、No.177、P.9-16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、非特許文献1に開示された方法では、3個の電極を必要としたり、あるいは、長時間にわたりインピーダンスレベルが安定しやすく、かつ短期のインピーダンスの変動をよく表す電極ペーストを用いたりする必要があった。このため、ドライバーの生理状態を日常的に測定する装置に適用するのは、きわめて困難である。
【0006】
本発明は、皮膚抵抗を精度良く測定可能であり、かつ、構成が簡易である皮膚抵抗測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、人体の皮膚抵抗を測定する装置は、第1および第2電極を有しており、人体が接触する接触面の表面が絶縁体で覆われている電極部と、周波数を変更可能に構成された高周波電源を有しており、前記高周波電源によって生成された交流電圧を前記第1電極に与える駆動回路と、前記第2電極と接続されており、前記第2電極の電流を検出し、検出した電流値を表す検出信号を出力する検出回路と、前記高周波電源から前記第1電極までの電気経路、または、前記第2電極から前記検出回路までの電気経路のいずれかに設けられた誘導素子と、前記高周波電源の周波数を変更制御するとともに、前記検出回路から前記検出信号を受ける制御部とを備え、前記制御部は、前記高周波電源の出力電圧と前記検出信号が示す電流値とを用いて、前記電極部に接触した人体のインピーダンスを求め、このインピーダンスと前記高周波電源の周波数との関係において、インピーダンスが極小となる周波数におけるインピーダンスの値を基にして、人体の皮膚抵抗を求める。
【0008】
この態様によると、駆動回路の高周波電源によって生成された交流電圧が第1電極に与えられ、第2電極の電流が検出回路によって検出される。また、誘導素子が、高周波電源と第1電極までの電気経路、または、第2電極から検出回路までの電気経路のいずれかに設けられている。制御部は、高周波電源の周波数を変更制御するとともに、検出回路から検出信号を受け、第1および第2電極に接触した人体のインピーダンスを求める。そして、インピーダンスが極小となる周波数におけるインピーダンスの値から人体の皮膚抵抗が求められる。ここで、人体が電極部に接触したときには皮膚と電極との間に静電容量が生じるが、この静電容量と、電気経路に設けた誘導素子とによって共振が生じる。このため、インピーダンスが極小となる周波数におけるインピーダンスの値から人体の皮膚抵抗を求めることによって、皮膚と電極との間に生じる静電容量を誘導素子によってキャンセルすることができる。したがって、人体の接触状態によることなく、皮膚抵抗を精度良く測定することができる。しかも、電極の個数は2個であり、また、電極ペーストを用いる必要もないため、簡易な構成によって実現可能である。
【0009】
上の態様の皮膚抵抗測定装置において、前記第1電極は、平面視で、第1方向に延びる電極であり、前記第2電極は、平面視で、前記第1方向と垂直をなす第2方向において、前記第1電極の両側に、前記第1電極との間に間隔を空けてそれぞれ配置された2個の電極からなる。
【0010】
これにより、電極部について、第2電極の表面積を大きくしやすい構成にすることができる。
【0011】
また、上の態様の皮膚抵抗測定装置において、第2電極は、平面視で、前記第1電極との間に間隔を空けて、前記第1電極を囲むように配置されている。
【0012】
これにより、電極部について、第2電極の表面積を大きくしやすい構成にすることができる。
【0013】
また、上の態様の皮膚抵抗測定装置において、前記検出回路は、前記第2電極から受けた電流信号を、電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプ回路と、前記トランスインピーダンスアンプ回路の出力を受け、その包絡線波形を表す信号を生成するエンベロープ回路とを備えている、としてもよい。
【0014】
また、上の態様の皮膚抵抗測定装置において、前記電極部の接触面に人体が接触したとき、前記第1および第2電極から前記人体を経由してアースに至る電気的経路が形成される。
【0015】
また、上の皮膚抵抗測定装置において、前記第1電極と前記第2電極との間に、リーク抵抗および相互容量が存在する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、人体の接触状態によることなく、皮膚抵抗を精度良く測定することが可能な皮膚抵抗測定装置を、簡易な構成によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る人体の皮膚抵抗測定装置の回路構成例
図2図1の回路構成の簡略化した等価回路
図3図2の等価回路におけるインピーダンス特性を示すグラフ
図4図2の等価回路を現実の状況に即して修正した図
図5A】回路シミュレーション結果を示すグラフ
図5B】回路シミュレーション結果を示すグラフ
図6A】回路シミュレーション結果を示すグラフ
図6B】回路シミュレーション結果を示すグラフ
図7】電極形状の例
図8】電極形状の他の例
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は実施形態に係る人体の皮膚抵抗測定装置1の回路構成例を示す図である。図1の構成において、電極部10は、第1電極(TX)11と第2電極(RX)12とを備えている。第1および第2電極11,12は電気的に絶縁されている。電極部10は、人体が接触する接触面の表面が絶縁体13で覆われている。なお、図1および他の図において、電極部10の表面には人の指FNが接触するものとして図示している。ただし、電極部10の表面に接触するのは、指に限定されるものではなく、人体の他の部位でもかまわない。
【0020】
駆動回路20は、周波数を変更可能に構成された高周波電源21を有しており、高周波電源21によって生成された交流電圧を、第1電極11に与える。高周波電源21としては例えば、100kHzから5MHzまでの間で周波数スキャン可能な波形発生器を用いる。駆動回路20はここでは、バッファアンプ22を備えており、高周波電源21によって生成された交流電圧が、バッファアンプ22を介して第1電極11に与えられる。そして、高周波電源21から第1電極11までの電気経路に、インダクタンスLの誘導素子25が設けられている。
【0021】
検出回路30は、第2電極12と接続されており、第2電極12の電流値を検出し、検出した電流値を示す検出信号S1を出力する。検出回路30はここでは、第2電極12から受けた電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプ回路31と、トランスインピーダンスアンプ回路31の出力を受け、その包絡線波形を表す信号を生成するエンベロープ回路32とを備えている。エンベロープ回路32の出力が検出信号S1となる。
【0022】
制御部40は、駆動回路20が有する高周波電源21の周波数を変更制御するとともに、検出回路30から出力された検出信号S1を受ける。制御部40はここでは、検出信号S1をデジタル信号に変換するA/D変換部42を有するCPU41と、CPU41と例えばBluetooth(登録商標)によって通信可能なPC(Personal Computer)43とを備えている。CPU41は、高周波電源21の出力電圧と、デジタル信号に変換された検出信号S1とを用いて、電極部10に接触した人体のインピーダンスを求める。そしてPC43に、人体のインピーダンスと高周波電源21の周波数のデータを送信する。PC43は、CPU41から、人体のインピーダンスと高周波電源21の周波数のデータを受信する。そして、このインピーダンスと高周波電源21の周波数との関係において、インピーダンスが極小となる周波数におけるインピーダンスの値から、人体の皮膚抵抗Rを求める。
【0023】
本発明における測定原理について、説明する。
【0024】
図1の電極部10において図示したように、第1電極11と人体との間、および、第2電極12と人体との間には、それぞれ、静電容量Cが生じる。なお、ここでは説明を簡単にするために、2つの静電容量は同じとしている。このため、図1の回路構成は、図2のような簡略化した等価回路によって表すことができる。図2から分かるように、図1の回路構成は、人体の皮膚抵抗R、インダクタンスL、静電容量Cを備えた直列共振回路になっている。本実施形態の皮膚抵抗測定装置1では、この共振回路に交流電圧を印加し、電流を測定することによって、人体インピーダンスZを測定する。ただし、このときの人体インピーダンスZは、
【0025】
【数1】
【0026】
となり、電極と人体との間の静電容量Cを含むものになる。しかも、この静電容量Cは、人体の接触状態、例えば、指FNの接触時の圧力、接触面積等の要因によって変化する。
【0027】
そこで、図3のグラフに示すように、交流電圧の周波数をスイープさせてインピーダンスZを測定し、共振点(共振周波数f)におけるインピーダンスZminを、人体抵抗Rとして求める。共振周波数fと静電容量Cとの関係は、次のようになる。
【0028】
【数2】
【0029】
すなわち、測定結果により得られた人体インピーダンスZと高周波電源21の周波数との関係において、インピーダンスZが極小となる周波数におけるインピーダンスZの値から、人体の皮膚抵抗Rを求める。これにより、電極と人体との間の静電容量の影響を受けることなく、すなわち、人体と電極との接触状態に寄ることなく、精度高く、人体の皮膚抵抗Rを求めることができる。
【0030】
以上のように、本発明では、インピーダンスの共振点で皮膚抵抗を測定することによって、皮膚と電極との間の静電容量を誘導素子によってキャンセルしている、といえる。
【0031】
<動作例>
ユーザが電極部10に接触すると、皮膚抵抗測定装置1は測定を開始する。なお、測定開始のタイミングは、例えば、電極部10へのユーザの接触を他のセンサによって認識したとき、あるいは、ユーザがスイッチ等を操作して測定指示を行ったとき、などとすればよい。
【0032】
測定が開始されると、制御部40のCPU41は、駆動回路20の高周波電源21を作動させる。これにより、高周波電源21によって生成された交流電圧が、第1電極11に与えられる。そしてCPU41は、高周波電源21の周波数をスイープさせながら、検出回路30から出力された検出信号S1を受ける。ここでスイープさせる周波数は例えば、1〜3MHzの範囲とする。検出信号S1は、第2電極12に流れる交流電流の電流値(例えば最大値や実効値)を示す。CPU41は、所定の複数の周波数において、高周波電源21の出力電圧と検出信号S1が示す電流値とを用いて、人体のインピーダンスZを演算する。そして、演算したインピーダンスZを周波数とセットにして、PC43に送信する。
【0033】
PC43は、CPU41から受信したインピーダンスZと周波数の複数のセットを用いて、インピーダンスZと周波数との関係を得る。そして、インピーダンスZが極小となる周波数におけるインピーダンスZの値から、人体の皮膚抵抗Rを求める。
【0034】
以上のように本実施形態に係る皮膚抵抗測定装置1によると、駆動回路20の高周波電源21によって生成された交流電圧が第1電極11に与えられ、第2電極12の電流が検出回路30によって検出される。また、誘導素子25が、高周波電源21から第1電極11までの電気経路、または、第2電極12から検出回路30までの電気経路のいずれかに設けられている。制御部40は、高周波電源21の周波数を変更制御するとともに、検出回路30から検出信号S1を受け、電極部10に接触した人体のインピーダンスを求める。そして、インピーダンスが極小となる周波数におけるインピーダンスの値から人体の皮膚抵抗が求められる。したがって、人体の接触状態によることなく、皮膚抵抗を精度良く測定することができる。しかも、電極の個数は2個であり、また、電極ペーストを用いる必要もないため、簡易な構成によって実現可能である。
【0035】
なお、誘導素子25は、第2電極12から検出回路30までの電気経路に設けてもよい。この場合も、上述した原理によって、人体の皮膚抵抗を測定することができる。
【0036】
また、図1で示した装置構成は一例であって、各回路要素の構成は図1で示したものに限定されるものではない。例えば、検出回路30は、第2電極12に流れる高周波電流の電流値(例えば実効値や最大値)を表す検出信号S1を出力するものであればよく、図1で示したものに限られるものではない。例えば、エンベロープ回路32の代わりに、ログアンプおよびローパスフィルタを用いてもかまわない。
【0037】
また、制御部40は、CPU41とPC43との組合せに限られるものではない。すなわち、高周波電源21の周波数をスキャンしつつ検出回路30から検出信号S1を受け、インピーダンスZが極小となる周波数におけるインピーダンスZの値から、人体の皮膚抵抗Rfを求めることができる構成であれば、どのようなものであってもよい。
【0038】
<実験による課題とその考察>
上で説明した皮膚抵抗測定装置1について、本願発明者らは試作器による実験を行った。ところがこれらの実験では、測定結果には、当初期待したほどの確実性を得ることができなかった。試行錯誤の結果、本願発明者等は、その確実性を阻害している要因を突き止めることができた。
【0039】
図4図2の等価回路を現実の状況に即して修正した図である。図4に示すように、電極部10の接触面に人体が接触したとき、第1および第2電極11,12から人体を経由してアースに至る電気的経路(人体アース経路)P1が形成される。なお人体がアースに触れていなくても、人体は体表面積が大きいため、実質的に人体アース経路P1が形成される。この電気的経路における人体抵抗Rは一般に、2〜5kΩ程度といわれている。また図4に示すように、第1電極11と第2電極12との間にリーク抵抗Rおよび相互容量Cが存在する。リーク抵抗Rは電極部10表面の付着物(汗・汚れ)で形成される経路の抵抗であり、相互容量Cは第1電極11と第2電極12が設けられた基板内の浮遊容量である。
【0040】
人体アース経路P1の影響について考察する。上述したような手法によって皮膚抵抗Rを得るためには、次式を満たす必要がある。
【0041】
【数3】
【0042】
すなわち、第2電極12と人体との間の静電容量Cf_RXを十分に大きくとらなければならない。例えば、人体抵抗Rが2〜5kΩのとき、f=1MHzにおいて右辺第2項の値が人体抵抗Rと等しくなるときのCf_RXの値は、32〜80pFとなる。したがって、Cf_RXには、これよりも十分に大きい容量が要求される。なお、100pFの容量を得るためには、ε=10、d=10μmの絶縁膜で、約0.1cmの面積となる。
【0043】
また、リーク抵抗Rおよび相互容量Cは、人体が接触しないときの共振周波数f0とそのときのインピーダンスZを決定する。ここで、共振周波数fc0が、人体が接触したときの共振周波数fよりも高くなるように、相互容量Cは小さい方が好ましく、リーク抵抗Rは大きい方が好ましい。
【0044】
本願発明者らが行った回路シミュレーションの結果を図5A図5B図6Aおよび図6Bに示す。図5Aおよび図5BではCf_RX=17.5nFとしている。図5Aに示すように、Rを2Ωから5Ωまで変化したとき、インピーダンスZの極小値は変化せず、一方、図5Bに示すように、Rを50〜200Ωまで変化させたときは、インピーダンスの極小値は変化している。これに対して、図6Aおよび図6BではCf_RX=35pFとしている。図6Aに示すように、Rを2Ωから5Ωまで変化したとき、インピーダンスZの極小値は変化しているが、一方、図6Bに示すように、Rを50〜200Ωまで変化させたときは、インピーダンスの極小値は変化していない。
【0045】
すなわち、Cf_RXが十分大きくなるように、第2電極12の構造を特徴づけることが、精度良く測定するために必要となることが分かる。一方、Cf_TXについては、人体抵抗Rの影響の面では、特に大きくする必要はないと考えられる。
【0046】
<電極構造の特徴>
上述したような考察に基づいて、Cf_RXが十分大きくなるように、第2電極12の構造を構成する。例えば、次のような構成が考えられる。
【0047】
まず、第2電極12の表面を覆う絶縁体13について、誘電率を十分高くし、厚さを十分に薄くする。これにより、第2電極12の単位面積あたりの容量値を大きくすることができる。
【0048】
あるいは、第2電極12の接触面の面積を十分に大きくする。一方、第1電極11の接触面は特に大きくする必要がない。
【0049】
また、第2電極12の表面積を大きくしやすい電極形状を採用してもよい。図7は電極形状の一例を示す図であり、第1および第2電極11,12を平面視で見た図である。図7の電極構造では、第1電極11は、図面縦方向(第1方向)に延びる電極である。そして第2電極12は、図面横方向(第1方向と垂直をなす第2方向)において、第1電極11の両側に、第1電極11との間に間隔を空けて配置された2個の電極12a,12bからなっている。2個の電極12a,12bは第1電極11よりも幅広に形成されており、また、互いに電気的に接続されている。なお図7では、人体が接触すると想定される領域A1を図示している。このような電極形状を採用することによって、電極部10全体をさほど大きくすることなく、第2電極12の接触面を大きくすることができる。したがって、Cf_RXを大きくすることが容易になる。
【0050】
ここで、第1電極11は図面横方向において幅wを有しており、図面横方向において、第1電極11と2個の電極12a,12bとの間隔がそれぞれ、d1,d2であるとする。そして、第1電極11および電極12a,12bの図面縦方向における長さがlとする。また、領域A1は図面横方向において幅Wを有しており、図面縦方向において長さLを有しているものとする。この場合、
【0051】
【数4】
【0052】
であることが好ましい。このとき、領域A1における皮膚抵抗Rは長さLに反比例するが、容量Cは長さLに比例する。そして、容量Cは共振周波数fより求められるので、長さLに依らない単位接触幅当たりの皮膚抵抗Rを求めることができる。
【0053】
図8は電極形状の他の例を示す図であり、第1および第2電極11,12を平面視で見た図である。図8の電極構造では、第1電極11は矩形状の電極であり、第2電極12は、この第1電極11との間に所定間隔を空けて、第1電極11を囲むように配置されている。なお、第1電極11の形状は矩形状に限られるものではなく、例えば円形状であってもよい。なお図8では、人体が接触すると想定される領域A2を図示している。このような電極形状を採用することによって、電極部10全体をさほど大きくすることなく、第2電極12の接触面を大きくすることができる。したがって、Cf_RXを大きくすることが容易になる。
【0054】
ここで、第1電極11は図面横方向(所定の第1方向)において幅wを有しており、図面縦方向において長さlを有している。また図面横方向において、第1電極11と第2電極12との間隔がdであるとする。また、領域A2は図面横方向において幅Wを有しており、図面縦方向において長さLを有しているものとする。この場合、
【0055】
【数5】
【0056】
であることが好ましい。このとき、領域A2における皮膚抵抗Rは、幅W、長さLに依らず、幅wおよび間隔dによって決まる。したがって、接触面積に関係なく皮膚抵抗Rを求めることができる。
【0057】
以上のような電極構造を採用することによって、第2電極12の表面積を大きくしやすくなるので、電極部10を大きくすることなく、第2電極12と人体との間の静電容量Cf_RXを十分大きくすることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明では、人体の接触状態によることなく、皮膚抵抗を精度良く測定することが可能な皮膚抵抗測定装置を簡易な構成によって実現することができるので、例えば、車内でのドライバーの生理情報を測定するシステム等に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 皮膚抵抗測定装置
10 電極部
11 第1電極
12 第2電極
12a,12b 電極
13 絶縁体
20 駆動回路
21 高周波電源
25 誘導素子
30 検出回路
31 トランスインピーダンス回路
32 エンベロープ回路
40 制御部
S1 検出信号
P1 電気的経路
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8