【課題】本発明の課題は、治療時に高エネルギーの患部に照射する光線治療と、光化学療法剤を併用する光線力学的療法を可能とし、かつ光治療時に患部への密着性及び曲面対応性に優れ、いかなる治療環境でも高い光治療効果を発揮することのできる光治療用装置を提供することである。
【解決手段】本発明の光治療用装置は、基板、好ましくはフレキシブル基板上に、面発光体である電界発光素子、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子と、薬剤を含有する薬剤層を有し、該薬剤層が光治療対象の患部に対する粘着性を有する粘着材料を含有することを特徴とする光治療用装置である。
前記電界発光素子が、発光波長が400〜2000nmの波長域にある有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光治療用装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の光治療用装置は、基板上に、面発光体である電界発光素子と、薬剤を含有する薬剤層を有し、該薬剤層が粘着材料を含有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項3に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0028】
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、前記基板が、フレキシブル基板であることが、光治療装置として高いフレキシブル性を付与することができ、その結果、様々な患部の形態に対応する光放射面形状を形成し、患部に安定して密着させることができる観点から好ましい。
【0029】
また、電界発光素子として、発光波長が400〜2000nmの波長域にある有機エレクトロルミネッセンス素子を適用することが、幅広い範囲で発光波長を設定でき、様々な病気の治療や美容的症状に対し、高い発光エネルギーで効果的な治療を行うことができる観点から好ましい構成である。
【0030】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0031】
《光治療用装置》
本発明の光治療用装置は、基板上に、面発光体である電界発光素子と、薬剤を含有する薬剤層を有し、該薬剤層が粘着材料を含有することを特徴とする。
【0032】
本発明の光治療用装置では、面発光体である電界発光素子により、治療対象である患部の治療目的に適合した波長の光を高いエネルギーで照射すると同時に、薬剤層が含有する薬剤(例えば、光化学療法剤)を患部に供給することにより、光の照射と共に、光化学療法剤等による治療を併用する治療方法を効果的に実施することができる。
【0033】
更に、薬剤層が含有する粘着材料により、患部に光治療用の発光光源である電界発光素子と、薬剤の供給源を、正確な位置で配置させることができ、また、治療時に患部が動いたりすることによるズレを防止することができ、ピンポイントで、患部に治療用の光を照射と薬剤の供給を行うことができるため、大面積の面発光部材を設ける必要がなくなり、安定した条件での光照射を可能とし、患部等での発熱等を抑制することにより、効率的な治療効果を得ることができる。
【0034】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて次に示す順に説明する。
【0035】
なお、以下に説明する各実施態様において同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、各構成要素のあとの括弧内に記載の数字は、各図に記載した構成要素の符号を表す。
【0036】
《光治療用装置の全体概要》
図1は、基板、電界発光素子、及び薬剤と粘着材料を含む薬剤層より構成される本発明の光治療用装置の構成の一例である実施態様1を示す概略断面図である。
【0037】
以下の説明においては、電界発光素子の代表例として、有機EL素子(OLED)を用いた構成について説明する。電界発光素子の他の例であるLEDについては、後述する。
【0038】
図1に示す光治療用装置(M)は、基板(100)上に、電界発光素子の一例である有機EL素子(OLED)を有し、その下部に薬剤を含む薬剤層(101)を有する構成である。
【0039】
図1で示す実施態様1においては、有機EL素子(OLED)より光治療用の発光光(L)が、下部に位置している患部に対し照射されるとともに、粘着材料により患部に密着させながら薬剤層が含有している薬剤(D)を患部に供給することにより、効率的に光線力学的療法(PDT)を実施することができる。
【0040】
図2は、
図1で示した有機EL素子(OLED)の構成を、更に詳細に説明するための部分構成図である。
【0041】
本発明に係る有機EL素子(OLED)は、透明基材(1)上に、一対の電極を構成する第1電極(6、例えば、陽極)と、その上に、正孔注入層や正孔輸送層等から構成される有機機能層群1(7)と、発光層(8)及び電子注入層や電子輸送層等から構成される有機機能層群2(9)で構成される有機機能層ユニット(2)を有している。
【0042】
図2では、便宜上、1つの有機機能層ユニット(2)のみを記載しているが、2つ以上の有機機能層ユニット(2)が積層された構造であってもよい。
【0043】
上記説明した有機機能層ユニット(2)上には、第2電極(10、例えば、陰極)が形成されて、第1電極(6)〜第2電極(10)までで、発光ユニット(U)を構成している。第2電極(10)の上部には、少なくとも有機機能層ユニット(2)を被覆する形態で、封止用接着層(3)及び封止基板(4)が設けられて、有機EL素子(OLED)を形成している。有機EL素子(OLED)を構成する発光ユニット(U)は、発光量、発光波長や発光時間を制御するための発光制御手段(不図示)や駆動電力を供給する電源(不図示)等に接続されている。本発明でいう基材は、上記透明基材(1)又は封止基板(4)がそれに相当する。また、上記各基材とは別に、他の基材を設ける構成であってもよい。
【0044】
上記
図1において示す基板(100)としては、
図2で示す有機EL素子(OLED)を構成する封止基材(4)が、それに相当する。
図1に示す構成においては、基板(100)は、光透過性であっても、不透過性であってもよい。
【0045】
光治療用装置(M)は、粘着材料を含有する薬剤層(101)により、患部(AP)に密着して保持する。この時、有機EL素子(OLED)を構成する透明基材及び封止基材は、フレキシブル性を有する材料で構成することが、患部(AP)の様々な表面形態に対応した形状を自由に形成することができる観点から好ましい。
【0046】
図2に示すような構成において、本発明では、透明基材(1)上に、一対の電極で挟持された発光層を含む有機機能層ユニット及封止部材を設けた構成を「有機EL素子(OLED)」と称し、一対の電極、例えば、陽極、発光層、有機機能層群、及び陰極によりなる構成を、「発光ユニット(U)」と称し、例えば、発光層及び有機機能層群により構成されるものを「有機機能層ユニット(2)」と称す。
【0047】
図3は、本実施形態の光治療用装置の他の構成である実施態様2を示す概略断面図である。
【0048】
図3で示す構成は、上記説明した
図1に示す構成に対し、有機EL素子(OLED)の配置する位置を、基板(100)の下面側から上面側に変更した構成である。
【0049】
図3で示す構成では、基板(100)に相当する構成は、
図2で示す有機EL素子(OLED)を構成する透明基材(1)がそれに相当する。
図3で示す構成では、有機EL素子(OLED)から放射される発光光(L)は、基板(100)を通過して、患部に照射されることになるため、基板(100)は光透過性であることが必要となる。
【0050】
上記
図1〜
図3で説明した構成において、更に必要に応じて、薬剤層(101)上に、薬剤層と同様の粘着材料のみで構成される粘着層を形成してもよい。
【0051】
図4は、薬剤と粘着材料を含む薬剤層を介して、曲面の患部に本実施形態の光治療用装置を密着して装着した状態を示す模式図である。
【0052】
図4には、先に
図1で説明した構成の光治療用装置(M)は、曲面形状の患部(AP)に対し、粘着材料を含む薬剤層を介して、密着して保持する。この時、光治療用装置(M)を構成している有機EL素子(OLED)は、フレキシブル性を有していることが好ましく、
図4で示すような患部(AP)の様々な表面形態に対応して、形状を自由に形成することができる。
【0053】
光治療時には、
図4で示すように患部(AP)に光治療用装置(M)を密着させた状態で、治療的疾患あるいは美容的症状の治療に対応した波長の発光光(L)を有機EL素子(OLED)より患部(AP)に照射するとともに、薬剤層(101)より、所望の薬剤成分(D)を患部に供給し、光線治療と薬剤治療を同時に行う。
【0054】
次いで、本発明の光治療用装置(M)を構成する電界発光素子及び薬剤層の構成の詳細について説明する。
【0055】
《電界発光素子》
本発明に係る電界発光素子は、発光する化合物(無機化合物又は有機化合物)を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、電界を印加することにより、陽極から注入された正孔と陰極から注入された電子が発光層内で再結合させること励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用した発光素子である。
【0056】
次いで、本発明に適用可能な電界発光素子(発光ダイオードともいう。)について、その代表例として、無機発光ダイオード(LED)及び有機EL素子について、その構成の詳細を説明する。
【0057】
[無機発光ダイオード:LED]
以下、電界発光素子である無機発光ダイオード(LED)について説明する。
【0058】
図5は、本発明に適用可能な電界発光素子の一例である無機発光ダイオード(LED)を光源とするLED発光デバイスの構成例を示す断面図である。
【0059】
図5において、LED発光デバイス(301)は、電界発光素子であるLED光源(302)と、広範囲に、かつ均一に発光光(L)させるための、導光体(304)、反射板(305)及び拡散板(306)よりなる光学系より構成されている。導光体(304)としては、例えば、アクリル板を用いることができ、本発明においては、拡散板(306)に、光取り出し効率を上げるためのアウトカップリングフィルムとして、層中に散乱粒子を含有する光散乱フィルムや、表面の凹凸構造を有する光散乱フィルム、内部散乱層等を具備させることにより、本発明で規定する半値幅特性を得ることができる。
【0060】
任意の波長の発光を得るためには、任意の波長のLED発光デバイス(301)の発光光(L)を放出するLED光源(302)を用いてもよいし、任意の発光波長を有する発光物質を塗布した層、もしくは含有させた層を、拡散板(306)の上面又は下面に配置、または任意の発光波長を有する発光物質を含有する拡散板(306)を用い、LED光源(302)で励起して発光させることにより、発光極大波長の角度依存性を抑制することができる。
【0061】
このような機能を有する発光物質としては、例えば、量子ドットや蛍光材料がある。または、白色のLED光源(302)の光を、拡散板(306)の上面又は下面に設置したカラーフィルター、あるいはカラーフィルターの機能を有する拡散板(306)を用い、白色を変換して任意の波長の発光を得る方式であってもよい。
【0062】
[有機EL素子]
本発明においては、電界発光素子として、上記説明したLEDに対し、更には有機EL素子を適用することがより好ましい態様である。有機EL素子は、LEDに対し、柔軟性の高い樹脂基板等を適用することができ、電界発光素子として優れたフレキシブル性を付与することにより、曲面を有する患部にフィットした形状に安定して応答することができる。加えて、有機EL素子は、発光輝度が高く、光治療時の発熱がほぼなく、やけど等の危険性がないという利点を有している。
【0063】
〔1.有機EL素子の基本構成〕
前記
図2で示したように、本発明に係る有機EL素子(OLED)は、透明基材(1)上に、一対の電極を構成する第1電極(6)、有機機能層群1(7)と、発光層(8)及び有機機能層群2(9)で構成される有機機能層ユニット(2)を有している。
【0064】
更に、
図2で示すように、有機機能層ユニット(2)上には、第2電極(10)が形成されて、第1電極(6)〜第2電極(10)までで、発光ユニット(U)を構成している。第2電極(10)の上部には、少なくとも有機機能層ユニット(2)を被覆する形態で、封止用接着層(3)及び封止基板(4)が設けられて、有機EL素子(OLED)を形成している。
【0065】
〔2.有機EL素子の代表的な構成例〕
次いで、本発明において、電界発光素子として好適に用いることができる有機EL素子の具体的な構成例について、図を交えてその一例を説明する。なお、以下で説明する有機EL素子の構成は、一例を示すものであり、ここで例示する構成のみに限定されるものではない。
【0066】
(2.1:シングル型の有機EL素子(実施態様3))
図6は、基材、好ましくはフレキシブル基材上に、一対の電極に挟持される1つの有機機能層ユニットを有する構成(実施態様3)の有機EL素子を示す概略断面図である。なお、各構成要素の詳細については、後述する。
【0067】
図6に示す構成の有機EL素子(OLED)では、フレキシブル基材(1)上に、透明電極として陽極(6)を配置し、その上に、正孔注入層(HIL)及び正孔輸送層(HTL)を積層して、第1の有機機能層群(7)が形成されている。第1の有機機能層群(7)上には、第1発光層(12)及び第2発光層(13)が中間層(14)を介して積層されて、発光層群(8)を構成している。また、中間層(14)は、中間コネクター層とも呼ばれ、電荷発生層であってもよく、マルチフォトンユニット構成であってもよい。
【0068】
この発光層群(8)上に、電子輸送層(ETL)及び電子注入層(EIL)を積層した第2の有機機能層群(9)が形成されている。第1の有機機能層群(7)、発光層群(8)及び第2の有機機能層群(9)を、有機機能層ユニット(2)と称す。
【0069】
この第2の有機機能層群(9)上に反射電極として陰極(10)が設けられて、発光ユニット(U)を構成している。最終的な有機EL素子を構成する場合には、
図2で示すように、有機EL素子を封止部材で封止する構造をとるが、
図6ではその記載は省略している。
【0070】
図6に記載の構成では、透明な陽極(6)と陰極(10)の間に、電圧(V1)を印加することにより、2つの発光層(12及び13)又は発光層界面で発光し、透明電極である陽極(6)側から発光光(L)が放射される。
【0071】
図6に示す発光層(12)及び発光層(13)は、発光材料としては、後述する発光ドーパント(例えば、燐光発光性化合物や蛍光発光性化合物)とホスト化合物により形成されている。
【0072】
図6で示す構成の有機EL素子(EL)を具備する光治療用装置により、治療時の発熱が少なく、患部との密着性及び曲面対応性に優れ、薬剤層からの薬剤の供給を併用することにより、高い光治療効果を発現する光治療用装置を実現することができる。
【0073】
(2.2:2つ有機機能層ユニットを有するタンデム型の有機EL素子(実施態様4))
図7は、一対の電極に挟持される2つの有機機能層ユニットを有し、当該2つの有機機能層ユニットが、発光波長の異なる発光材料を含むタンデム型の有機EL素子の構成(実施態様4)を示す概略断面図である。
【0074】
図7に示す有機EL素子(OLED)の構成は、フレキシブル基板(1)上に、透明な陽極(6)を形成し、その上に、第1の正孔注入層(HIL1)及び第1の正孔輸送層(HTL1)を積層して、その上に第1の発光層(12)を積層し、更にその上に、第1の電子輸送層(ETL1)及び第1の電子注入層(EIL1)を積層して有機機能層ユニット1(2A)を構成している。
【0075】
次いで、有機機能層ユニット1(2A)上に中間層(14)を形成し、当該中間層(23)を介して、その上に、有機機能層ユニット1(2A)と同様の構成で、第2の正孔注入層(HIL2)及び第2の正孔輸送層(HTL2)を積層して、その上に第2の発光層(13)を積層し、更にその上に、第2の電子輸送層(ETL2)及び第2の電子注入層(EIL2)を積層して有機機能層ユニット2(2B)を構成している。最後に、最上層に陰極(10)が設けられて、フレキシブル基材(1)上に、発光ユニット(U)を構成している。
【0076】
図7に記載の構成で、透明な陽極(6)と陰極(10)の間に、リード線(11)を介して電圧(V1)を印加することにより、発光層あるいは発光層界面で発光し、透明な陽極(6)側から発光光(L)が放射される。
【0077】
このような構成においては、第1の発光層(12)と、第2の発光層(13)においては、それぞれ発光波長の異なる発光材料を含有している。また、中間層(14)は、中間コネクター層とも呼ばれ、電荷発生層であってもよく、マルチフォトンユニット構成であってもよい。
【0078】
図7で示す構成の有機EL素子(EL)を具備する光治療用装置により、治療時の発熱が少なく、患部との密着性及び曲面対応性に優れ、薬剤層からの薬剤の供給を併用することにより、高い光治療効果を発現する光治療用装置を実現することができる。
【0079】
(2.3:2つの独立した発光ユニットを有する独立駆動型の有機EL素子(実施態様5))
図8に示す有機EL素子は、一対の電極に2つの有機機能層ユニットを有し、2つの有機機能層ユニット間に中間電極を配置し、それぞれの2つの発光ユニットを独立して形成している独立駆動型(調色方式)の有機EL素子の構成の一例(実施態様5)を示す概略断面図である。
【0080】
図8に示す有機EL素子(OLED)の構成は、フレキシブル基板(1)上に、透明な陽極(6)を形成し、その上に、第1の正孔注入層(HIL1)及び第1の正孔輸送層(HTL1)を積層して、その上に第1の発光層(12)を積層し、更にその上に、第1の電子輸送層(ETL1)及び第1の電子注入層(EIL1)を積層して有機機能層ユニット1(2A)を構成し、有機機能層ユニット1(2A)上に中間電極(15)を形成し、陽極(6)と中間電極(15)間をリード線(11A)で接続して、独立制御が可能な第1の発光ユニット(U1)を構成している。
【0081】
次いで、中間電極(15)上に、第2の正孔注入層(HIL2)及び第2の正孔輸送層(HTL2)を積層して、その上に第2の発光層(13)を積層し、更にその上に、第2の電子輸送層(ETL2)及び第2の電子注入層(EIL2)を積層して有機機能層ユニット2(2B)を構成し、最上層に陰極(10)が設けられている。更に、中間電極(15)と陰極(10)間をリード線(11B)で接続して、独立制御が可能な第2の発光ユニット(U2)を構成している。
【0082】
図8に記載の構成では、透明な陽極(6)と中間電極(15)間に、リード線(11A)を介して電圧(V1)を印加することにより、発光ユニット1(U1)を独立して駆動し、中間電極(15)と陰極(10)の間に、リード線(11B)を介して電圧(V2)を印加することにより、発光ユニット2(U2)を独立駆動し、いずれも、透明な陽極(5)側から発光光(L)が放射される。
【0083】
図8で示す構成の有機EL素子(EL)を具備する光治療用装置により、治療時の発熱が少なく、患部との密着性及び曲面対応性に優れ、かつ調色機能を付与することができ、薬剤層からの薬剤の供給を併用することにより、高い光治療効果を発現する光治療用装置を実現することができる。
【0084】
(2.4:3つの発光ユニットを有する独立駆動型の有機EL素子(実施態様6))
図9に示す有機EL素子は、一対の電極に3つの有機機能層ユニットを有し、3つの有機機能層ユニット間にそれぞれ中間電極を配置し、3つの発光ユニットを独立して駆動することができる独立駆動型(調色方式)の有機EL素子の構成の一例(実施態様6)を示す概略断面図である
図9に示す有機EL素子(OLED)の構成は、フレキシブル基板(1)上に、透明な陽極(6)を形成し、その上に、
図6に記載の構成と同様にして、第1の発光層を含む有機機能層ユニット1(2A)を構成し、有機機能層ユニット1(2A)上に中間電極1(15A)を形成し、陽極(6)と中間電極1(15A)間をリード線(11A)で接続して、独立制御が可能な第1の発光ユニット(U1)を構成している。
【0085】
次いで、中間電極1(15A)上に、
図6の構成と同様にして、第2の発光層を含む有機機能層ユニット2(2B)を構成し、有機機能層ユニット2(2B)上に中間電極2(15B)を形成し、中間電極1(15A)と中間電極2(15B)間をリード線(11B)で接続して、独立制御が可能な第2の発光ユニット(U2)を構成している。
【0086】
次いで、中間電極2(15B)上に、同様にして、第2の発光層を含む有機機能層ユニット3(2C)を構成し、最上層に陰極(10)が設けられ、中間電極2(15B)と陰極(6)間をリード線(11C)で接続して、独立制御が可能な第3の発光ユニット(U3)を構成している。
【0087】
図9に記載の構成では、透明な陽極(6)と中間電極1(15A)間には、リード線(11A)を介して電圧(V1)を印加することにより、発光ユニット1(U1)を独立して駆動することでき、中間電極1(15A)と中間電極2(15B)の間に、リード線(11B)を介して電圧(V2)を印加することにより、発光ユニット2(U2)を独立駆動し、更に、中間電極2(15B)と陰極(10)の間に、リード線(11C)を介して電圧(V3)を印加することにより、発光ユニット3(U3)を独立駆動し、いずれも、透明な陽極(6)側から発光光(L)が放射される。
【0088】
〔有機EL素子の構成材料〕
(1.全体構成)
本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013−157634号公報、特開2013−168552号公報、特開2013−177361号公報、特開2013−187211号公報、特開2013−191644号公報、特開2013−191804号公報、特開2013−225678号公報、特開2013−235994号公報、特開2013−243234号公報、特開2013−243236号公報、特開2013−242366号公報、特開2013−243371号公報、特開2013−245179号公報、特開2014−003249号公報、特開2014−003299号公報、特開2014−013910号公報、特開2014−017493号公報、特開2014−017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
【0089】
また、タンデム型の有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号公報、特許第3496681号公報、特許第3884564号公報、特許第4213169号公報、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/009087号、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0090】
更に、有機EL素子を構成する各層について説明する。
【0091】
(2:基板)
有機EL素子(EL)に適用可能な基板(1)としては、特に制限はなく、例えば、ガラス、プラスチック等の種類を挙げることができる。更には、基板がフレキシブル性を有していることが好ましい。本発明でいうフレキシブル性とは、直径5mmのABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエンースチレン共重合体樹脂)製の棒に10回巻きつけと開放を繰り返した後、目視確認にて基板に割れや欠け等の損傷がない特性をいう。
【0092】
本発明において、最表面(光放射面側)に配置される基板(3)は、少なくとも電界発光素子、例えば、有機EL素子により照射される光を、治療する患部に照射するため、400〜2000nmの波長域で光透過性を有していることが必要である。本発明でいう光透過性とは、基板(1)としては、400〜2000nmの波長域における透過率が60%以上であることをいい、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0093】
すなわち、本発明においては、基板(1)側から光Lを取り出す構成では、基板(1)は透明材料であることが必要となり、好ましく用いられる透明なフレキシブル基板(1)としては、ガラス、石英、樹脂基板を挙げることができる。更に好ましくは、有機EL素子にフレキシブル性を付与することができ、かつ安全性の観点から樹脂基板である。
【0094】
本発明に適用可能な樹脂基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート(略称:PC)、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、アートン(商品名、JSR社製)及びアペル(商品名、三井化学社製)等のシクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0095】
これら樹脂基板のうち、コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)、ポリカーボネート(略称:PC)等のフィルムが可撓性の樹脂基板として好ましく用いられる。
【0096】
樹脂基板の厚さとしては、10〜500μmの範囲内にある薄膜の樹脂基板であることが好ましいが、より好ましくは30〜400μmの範囲内であり、特に好ましくは、50〜300μmの範囲内である。厚さが10μmであれば、光照射用発光ダイオードを安定して保持することができ、厚さが500μm以下であれば、光治療時に発生する熱エネルギーを効率的に拡散させることができ、また、患者が衣服を着用したままでも肌に密着させることができる。
【0097】
また、本発明に係るフレキシブル性を有する基板として適用可能な薄板フレキシブルガラスは、湾曲できるほど薄くしたガラス板である。薄板フレキシブルガラスの厚さは、薄板フレキシブルガラスがフレキシブル性を示す範囲で適宜設定できる。
【0098】
薄板フレキシブルガラスとしては、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。薄板フレキシブルガラスの厚さとしては、例えば、10〜500μmの範囲であり、好ましくは50〜300μmの範囲である。
【0099】
(3:第1電極:陽極)
有機EL素子を構成する陽極としては、Ag、Au等の金属又は金属を主成分とする合金、CuI、あるいはインジウム−スズの複合酸化物(ITO)、SnO
2及びZnO等の金属酸化物を挙げることができるが、金属又は金属を主成分とする合金であることが好ましく、更に好ましくは、銀又は銀を主成分とする合金である。
【0100】
透明陽極を、銀を主成分として構成する場合、銀の純度としては、99%以上であることが好ましい。また、銀の安定性を確保するためにパラジウム(Pd)、銅(Cu)及び金(Au)等が添加されていてもよい。
【0101】
透明陽極は銀を主成分として構成されている層であるが、具体的には、銀単独で形成しても、あるいは銀(Ag)を含有する合金から構成されていてもよい。そのような合金としては、例えば、銀−マグネシウム(Ag−Mg)、銀−銅(Ag−Cu)、銀−パラジウム(Ag−Pd)、銀−パラジウム−銅(Ag−Pd−Cu)、銀−インジウム(Ag−In)などが挙げられる。
【0102】
上記陽極を構成する各構成材料の中でも、本発明に係る有機EL素子を構成する陽極としては、銀を主成分として構成し、厚さが2〜20nmの範囲内にある透明陽極であることが好ましいが、更に好ましくは厚さが4〜12nmの範囲内である。厚さが20nm以下であれば、透明陽極の吸収成分及び反射成分が低く抑えられ、高い光透過率が維持されるため好ましい。
【0103】
本発明でいう銀を主成分として構成されている層とは、透明陽極中の銀の含有量が60質量%以上であることをいい、好ましくは銀の含有量が80質量%以上であり、より好ましくは銀の含有量が90質量%以上であり、特に好ましくは銀の含有量が98質量%以上である。また、本発明に係る透明陽極でいう「透明」とは、波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。
【0104】
透明陽極においては、銀を主成分として構成されている層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
【0105】
また、本発明においては、陽極が、銀を主成分として構成する透明陽極である場合には、形成する透明陽極の銀膜の均一性を高める観点から、その下部に、下地層を設けることが好ましい。下地層としては、特に制限はないが、窒素原子又は硫黄原子を有する有機化合物を含有する層であることが好ましく、当該下地層上に、透明陽極を形成する方法が好ましい態様である。
【0106】
(4:中間電極)
本発明に係る有機EL素子においては、ハイパワーを得ることができる点から、陽極と陰極との間に、有機機能層群と発光層から構成される有機機能層ユニットを二つ以上積層、さらに、二つ以上積層した有機機能層層ユニット間で電気的接続を得るため、独立した接続端子を有する中間電極層ユニットで分離した構造をとることが好ましい。
【0107】
中間電極についても、上記説明した第1電極(陽極)の形成材料を同様に用いることができる。
【0108】
(5:発光層)
有機EL素子(OLED)を構成する発光層は、電極又は電子輸送層から注入された電子と、正孔輸送層から注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接する層との界面であってもよい。
【0109】
このような発光層としては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。この場合、各発光層間には非発光性の中間層を有していることが好ましい。
【0110】
発光層の厚さの総和は、1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmの範囲内がさらに好ましい。なお、発光層の厚さの総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む厚さである。
【0111】
以上のような発光層は、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)及びインクジェット法等の公知の方法により形成することができる。
【0112】
また発光層は、複数の発光材料を混合してもよく、リン光発光材料と蛍光発光材料(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)とを同一発光層中に混合して用いてもよい。発光層の構成としては、ホスト化合物(発光ホスト等ともいう)及び発光材料(発光ドーパント化合物ともいう。)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
【0113】
〈ホスト化合物〉
発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらにリン光量子収率が0.01未満であることが好ましい。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
【0114】
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、あるいは、複数種のホスト化合物を用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
【0115】
発光層に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
【0116】
本発明に適用可能なホスト化合物としては、例えば、特開2001−257076号公報、同2001−357977号公報、同2002−8860号公報、同2002−43056号公報、同2002−105445号公報、同2002−352957号公報、同2002−231453号公報、同2002−234888号公報、同2002−260861号公報、同2002−305083号公報、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2012/023947号、特開2007−254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0117】
〈発光材料〉
本発明で用いることのできる発光材料としては、リン光発光性化合物(リン光性化合物、リン光発光材料又はリン光発光ドーパントともいう。)及び蛍光発光性化合物(蛍光性化合物又は蛍光発光材料ともいう。)が挙げられるが、特に、リン光発光性化合物を用いることが、高い発光効率を得ることができる観点から好ましい。
【0118】
〈リン光発光性化合物〉
リン光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
【0119】
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は、種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明においてリン光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて、上記リン光量子収率として0.01以上が達成されればよい。
【0120】
リン光発光性化合物は、一般的な有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、白金化合物(白金錯体系化合物)又は希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
【0121】
本発明においては、少なくとも一つの発光層が、二種以上のリン光発光性化合物が含有されていてもよく、発光層におけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層の厚さ方向で変化している態様であってもよい。
【0122】
本発明に使用できる公知のリン光発光性化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
【0123】
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78, 1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
【0124】
また、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.lnt.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2009/000673号、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許第7090928号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
【0125】
また、Angew.Chem.lnt.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書等に記載の化合物も挙げることができる。
【0126】
さらには、国際公開第2005/076380号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/073149号、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−363552号公報等に記載の化合物も挙げることができる。
【0127】
本発明においては、好ましいリン光発光性化合物としてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも1つの配位様式を含む錯体が好ましい。
【0128】
上記説明したリン光発光性化合物(リン光発光性金属錯体ともいう)は、例えば、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of Organic Chemistry,第4巻、695〜709頁(2004年)、さらにこれらの文献中に記載されている参考文献等に開示されている方法を適用することにより合成することができる。
【0129】
〈蛍光発光性化合物〉
蛍光発光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
【0130】
(6:有機機能層群)
次いで、有機機能層ユニットを構成する各層について、電荷注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び阻止層の順に説明する。
【0131】
〈6.1:電荷注入層〉
電荷注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、電極と発光層の間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)にその詳細が記載されており、正孔注入層と電子注入層とがある。
【0132】
電荷注入層としては、一般には、正孔注入層であれば、陽極と発光層又は正孔輸送層との間、電子注入層であれば陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させることができるが、本発明においては、透明電極に隣接して電荷注入層を配置させることを特徴とする。また、中間電極で用いられる場合は、隣接する電子注入層及び正孔注入層の少なくとも一方が、本発明の要件を満たしていれば良い。
【0133】
正孔注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、透明電極である陽極に隣接して配置される層であり、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0134】
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、それらの化合物を正孔注入層に用いることができる。
【0135】
また、特表2003−519432号公報や特開2006−135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
【0136】
電子注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、陰極と発光層との間に設けられる層のことであり、陰極が本発明に係る透明電極で構成されている場合には、当該透明電極に隣接して設けられ、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されている。
【0137】
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、これらに記載されている材料を、電子注入層に好ましく用いることができる。電子注入層はごく薄い膜であることが望ましく、構成材料にもよるが、その層厚は1nm〜10μmの範囲が好ましい。
【0138】
〈6.2:正孔輸送層〉
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層及び電子阻止層も正孔輸送層の機能を有する。正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
【0139】
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。
【0140】
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることができ、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0141】
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法及びLB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲である。この正孔輸送層は、上記材料の一種又は二種以上からなる一層構造であってもよい。
【0142】
また、正孔輸送層の材料に不純物をドープすることにより、p性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報及びJ.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
【0143】
このように、正孔輸送層のp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
【0144】
〈6.3:電子輸送層〉
電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する材料から構成され、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は、単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。
【0145】
単層構造の電子輸送層及び積層構造の電子輸送層において、発光層に隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層に伝達する機能を有していれば良い。このような材料としては、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層の材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した高分子材料又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0146】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(略称:Alq
3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(略称:Znq)等及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層の材料として用いることができる。
【0147】
電子輸送層は、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法及びLB法等の公知の方法により、薄膜化することで形成することができる。電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。電子輸送層は上記材料の一種又は二種以上からなる単一構造であってもよい。
【0148】
〈6.4:阻止層〉
阻止層としては、正孔阻止層及び電子阻止層が挙げられ、上記説明した有機機能層ユニット3の各構成層の他に、必要に応じて設けられる層である。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層等を挙げることができる。
【0149】
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0150】
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層の機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ、電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に適用する正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲である。
【0151】
(7:第2電極:陰極)
陰極は、有機機能層群や発光層に正孔を供給するために機能する電極膜であり、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物若しくはこれらの混合物が用いられる。具体的には、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO
2及びSnO
2等の酸化物半導体などが挙げられる。
【0152】
陰極は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させて作製することができる。また、第2電極としてのシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。
【0153】
なお、有機EL素子が、陰極側からも発光光Lを取り出す、両面発光型の場合には、光透過性の良好な陰極を選択して構成すればよい。
【0154】
(8:封止部材)
有機EL素子を封止するのに用いられる封止手段としては、例えば、フレキシブル封止部材と、陰極及び透明基板とを封止用接着剤で接着する方法を挙げることができる。
【0155】
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また透明性及び電気絶縁性は特に限定されない。
【0156】
また、前記
図1で示すような構成においては、この封止部材(4)が、光治療用装置(M)を構成する基板(100)となる。
【0157】
具体的には、フレキシブル性を備えた薄膜ガラス板、ポリマー板、フィルム、金属フィルム(金属箔)等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属フィルムとしては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコーン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属又は合金が挙げられる。
【0158】
本発明においては、封止部材としては、有機EL素子を薄膜化することできる観点から、ポリマーフィルム及び金属フィルムを好ましく使用することができる。さらに、ポリマーフィルムは、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10
−3g/m
2・24h以下であることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10
−3ml/m
2・24h・atm(1atmは、1.01325×10
5Paである)以下であって、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10
−3g/m
2・24h以下であることが好ましい。
【0159】
封止部材と有機EL素子の表示領域(発光領域)との間隙には、気相及び液相では窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することもできる。また、封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙を真空とすることや、間隙に吸湿性化合物を封入することもできる。
【0160】
また、有機EL素子における発光機能層ユニットを完全に覆い、かつ有機EL素子における第1電極である陽極(3)と、第2電極である陰極(6)の端子部分を露出させる状態で、透明基板上に封止膜を設けることもできる。
【0161】
以上のような封止材は、有機EL素子における第1電極である陽極(3)と、第2電極である陰極(6)の端子部分を露出させると共に、少なくとも発光機能層を覆う状態で設けられている。
【0162】
〔有機EL素子への駆動電力の供給方法〕
本発明の光治療用装置を光治療に適用する場合には、発光光を患部に照射する電界発光素子である有機EL素子を駆動するため、電力供給手段を具備する。
【0163】
電力供給手段としては、方法1としては、光治療用装置の内部に薄型電池を内蔵する方式であり、方法2としては、有機EL素子に引き出し配線を装備し、外部に設けた電源より電力を供給する方法である。
【0164】
(方法1:薄型電極を内蔵した光治療用装置)
図10は、本実施形態の光治療用装置内に、駆動用の薄膜電池を装着した一例(実施態様7)を示す概略断面図である。このような構成とすることにより、使用する場所の制限を受けることなく、本発明の光治療用装置による光治療を行うことができる。
【0165】
図10の(a)で示す構成では、前記
図1で示した構成に対し、基板(100)と有機EL素子(OLED)の間に、有機EL素子に電力を供給ための薄型電池(50)を設ける構成を示しており、薄型電池(50)と有機EL素子(OLED)は、電気的に接合する部材(不図示)により接合されている。
【0166】
図10の(b)では、有機EL素子(OLED)と、薄型電池(50)を並列配置し、その間を電気的に接合する部材(106)により接合されている構成を示す。
【0167】
次いで、本発明の光治療用装置を構成する薄型電池について説明する。
【0168】
本発明に適用可能な薄型電池としては、いかなる電池でも適用可能であり、一次電池であっても、二次電池であってもよく、例えば、アルカリ蓄電池、有機電解液電池、太陽電池等を挙げることができ、厚さとしては1.5mm以下であることが好ましい。
【0169】
本発明においては、その中でも、有機電解液電池、更には、リチウム電池が好ましく、特に、厚さが1.5mm以下のリチウムイオン電池が好ましい。すなわち、本発明においては、リチウムイオン電池を用いることが、1.5mm以下に薄膜化した形態であっても、有機EL素子の駆動に十分な電力を供給することが可能となる点で好ましい。
【0170】
リチウムイオン電池の詳細については、例えば、特開2001−266946号公報、特開2003−317695号公報、特開2004−087432号公報、特開2006−278141号公報、特開2007−257885号公報、特開2008−251342号公報、特開2010−033937号公報、特開2011−023361号公報、特開2012−084547号公報等に記載されている内容及び構成を参照することができる。
【0171】
図11は、先の
図10の(b)で示した平行配置した薄型電池の一例であるリチウムイオン二次電池と、有機EL素子との接合状態を示す概略断面図である。
【0172】
図11の左側には、薄型電池が薄型のリチウムイオン二次電池である場合、リチウムイオン二次電池(50)の構成を示してある。リチウムイオン電池(50)は、正極集電体(51)、正極活物質層(52)、電解質層(53)、セパレーター(54)、電解質層(53)、負極活物質層(55)、負極集電体(56)の各層が積層されて、周囲が封止材(57)により封止されている構成である。正極集電体(51)及び負極集電体(56)には、取り出しタグ(51a:電極端子)及び取り出しタグ(56a:電極端子)が、封止材(57)の外部に延びて形成されている。
【0173】
図11に示すように、リチウムイオン二次電池(50)と有機EL素子(OLED)を接合する場合には、リチウムイオン二次電池(50)側の正極端子(51a)及び負極端子(56a)と、有機EL素子(EL)側の陽極からの陽極端子(6a)及び陰極端子(10a)と、電気的に接続する部材によりそれぞれ接続して、接続部(106)を構成している。
【0174】
電気的に接続する部材としては、導電性を備えた部材であれば特に制限はないが、異方性導電膜(ACF)、導電性ペースト、又は金属ペーストであることが好ましい態様である。
【0175】
(方法2:外部電源より電力供給する方法)
図12は、本実施形態の光治療用装置の外部に、有機EL素子を駆動するための電源を設けた一例(実施態様8)を示す概略断面図である。
【0176】
図12で示すように、例えば、
図1で示す光治療用装置(M)を構成する有機EL素子(OLED)の電極間に電圧を印加して発光させるため、外部に設置してある外部駆動電源(108、例えば、AC電源)より、電力供給用配線(107)を介して、電力を供給する方法をとることにより、高輝度で有機EL素子を発光させることができ、好ましい態様の一つである。
【0177】
《薬剤層》
本発明の光治療用装置においては、患部に接する面側に、薬剤層を有することが大きな特徴である。
【0178】
本発明に係る薬剤層は、薬剤及び粘着材料を含有していることを構成の特徴とする。薬剤層は、患部に対し、光化学療法剤等の薬剤を供給するとともに、粘着材料により、光治療用装置を、光治療を行う患部の位置に密着させる機能を有している。
【0179】
(粘着材料)
本発明に係る薬剤層の形成に用いる粘着材料としては、400〜2000nmの波長域において、光透過率が50%以上で、かつ患部である皮膚に対し、有機EL素子を安定して固定することができる密着性を得ることができる材料であれば、特に制限はない。
【0180】
本発明に適用可能な粘着材料としては、湿布剤等の外用貼付剤等で広く用いられている粘着剤とその形成方法を適用することができ、その詳細としては、例えば、特開2001−097857号公報、特開2001−348329号公報、特開2002−087954号公報、特開2002−104957号公報、特開2004−174202号公報、特開2004−224701号公報、特開2005−263756号公報、特開2007−112991号公報、特開2011−068610号公報、特開2011−20997号公報、特開2012−97108号公報、特開2012−140460号公報、特開2013−095749号公報等を挙げることができる。
【0181】
例えば、粘着材料としては、ポリアクリル酸系粘着剤に代表される親水性アクリルポリマー系粘着剤、ポリビニルアセタール系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、酢酸ビニル系粘着剤、ゴム系粘着剤(例えば、天然ゴム、合成ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、イソプレンゴム、ポリイソブチレン(PIB)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブテン等)を挙げることができる。
【0182】
粘着材料により形成する薬剤層の厚さは特に制限はないが、100〜1000μmの範囲内で選択することが好ましい。
【0183】
(薬剤)
本発明に係る薬剤層には、光治療に有効な薬剤を添加する。本発明に適用可能な薬剤としては、光線力学的療法(PDT)に適用する光化学療法剤の他に、薬効成分、美肌成分等を、治療の目的に応じて選択することができる。
【0184】
〈光線力学的療法(PDT)の適用〉
本発明の光治療用装置を用いる光治療法においては、有機EL素子による光照射と共に、薬剤層より光化学療法剤を供給する光線力学的療法(PDT)を適用することが好ましい態様である。
【0185】
本発明に係るPDTでは、治療されるべき体の領域に、光化学療法剤(photopharmaceutical)として公知の感光性の療法用剤を、薬剤層より付与し、同時に、その領域に、電界発光素子より適切な波長及び強度の光に放射して、光化学療法剤を活性化させる方法である。例えば、光化学療法剤として光増感性の物質を腫瘍細胞に取り込ませ、光を照射することにより、細胞を死滅させる腫瘍の治療方法である。より具体的には、腫瘍細胞又は腫瘍組織内の新生血管の内皮細胞内に、光増感性蛍光タンパク質等を導入し、適当な光を照射することにより、活性酸素を発生させる。この活性酸素により、腫瘍細胞又は腫瘍組織が傷害され、腫瘍が消失する方法である。
【0186】
上記光線力学的療法(PDT)に適用される光化学療法剤(光増感性化合物ともいう。)としては、光活性化する光線の照射を受けて、細胞毒性の形態に変換されるか、細胞毒性種を生じさせる光増感性の物質を含有する製剤をいう。
【0187】
光化学療法剤としては、例えば、5−アミノレブリン酸塩酸塩(クロフォード・ファーマスーティカルズ(Crawford Pharmaceuticals))、メチルアミノレブリン酸(メトフィックス(登録商標)(Metfix(登録商標))、フォトキュア(Photocure))等の局所用剤がある。また、たとえばフォトフィン(登録商標)(Photofin(登録商標))(アクスカン(Axcan)から)およびフォスカン(登録商標)(Foscan(登録商標))(バイオリテック・リミテッド(Biolitech Ltd)から)など、内部の悪性疾患に対して主に用いられる注射用薬剤がある。薬剤は、不活性な形態で適用されることが多く、この薬剤は、感光性の光化学療法剤へと代謝される。
【0188】
〈その他の薬剤〉
本発明に適用可能な薬剤としては、その他には、特開2004−174202号公報の段落(0025)〜(0033)に記載の薬効成分等、特開2005−263756号公報の段落(0029)や特開2007−112991号公報の段落(0033)に記載されている鎮痛消炎剤、抗真菌剤、抗尿失菌剤、筋弛緩剤、鎮けい剤、強心剤、禁煙補助剤、抗アレルギー剤、美白剤、抗しわ剤、保湿剤、皮膚刺激剤等、特開2012−97108号公報の段落(0053)〜(0142)に記載されている血行促進剤、抗炎症剤、角質柔軟剤、抗真菌剤、抗菌剤、鎮痛剤、静菌・殺菌・消毒剤、止血剤、抗凝血剤、局所麻酔剤、鎮痒剤、抗ヒスタミン剤、凝血剤、アミノ酸、ビタミン類、美白剤、真皮構造改善剤、抗生物質、化学療法剤、制癌剤、向精神剤、抗パーキンソン病剤、性ホルモン剤、抗発汗剤、サンスクリーン剤、抗アレルギー剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、血管拡張剤、血管補強剤、筋弛緩剤、制吐剤、乾癬治療剤、皮膚軟化剤又は皮膚緩和剤、プロスタグランジン類、脂溶性ビタミン類、酵素製剤、ペプチドホルモン類、糖尿病治療剤、多糖類、動植物抽出エキス類、菌体エキス類、抗しわ剤、皮脂抑制剤、角質剥離・溶解剤、制汗剤、清涼剤、収斂剤、局所刺激剤、抗男性ホルモン作用剤、毛賦活剤、抗脂漏剤、耐酸性増強・再石灰化剤、酵素、再石灰化促進剤、歯石沈着防止剤、歯磨剤、消炎剤、等が挙げられる。
【0189】
(光散乱粒子の添加)
本発明に係る薬剤層には、有機EL素子からの発光光の効率を高める観点から、発光光が通過する薬剤層に、光散乱粒子の添加することが好ましい。
【0190】
図13は、薬剤層中に、光散乱粒子(109)を存在させた構成の一例(実施態様9)を示す概略断面図である。
【0191】
図13に示す光治療用装置(M)において、構成する薬剤層(101)に光散乱粒子(109)を存在させることにより、そこを通過する発光光(L)を拡散させ、光治療の領域を拡大させ、光治療効率を高めることができる。
【0192】
本発明に係る薬剤層に適用可能な光散乱粒子としては、無機微粒子や有機微粒子を挙げることができ、無機微粒子としては、例えば、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ケイ酸ソーダ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン及びこれらの混合粒子等を用いることができる。無機微粒子の無機材料としては、これらのうち、酸化ケイ素が特に好ましい。
【0193】
また、有機微粒子としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合、ジビニルベンゼン樹脂、アクリロニトリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等より構成される微粒子を挙げることができる。
【0194】
《有機EL素子を用いた光治療法の概要》
次いで、本発明の光治療用装置を用いる光治療法(以下、本発明に係る光治療法ともいう。)の概要について説明する。
【0195】
本発明でいう光治療法、あるいは光線療法とは、前述のとおり、特定の疾病に対し、光照射による治療、いわゆる光治療を行う方法であり、本発明の光治療用装置とは、上記説明した本発明に係る有機EL素子を装備し、当該有機EL素子を、薬剤層を介して、患部である皮膚等に密着配置して、光治療に有効な光線を、患部に対し的確に照射する装置である。
【0196】
例えば、肩こりや腰痛などの疼痛緩和や薄毛治療には、赤色光や赤外線の照射による治療が行われている。この赤外線による治療は、例えば、患部に近赤外線光の照射を行うことにより、血管を拡張させることにより組織血流を増加させ、交感神経系の興奮を抑制したり、細胞組織を活性化して創傷治癒を促進したり、炎症性サイトカインや発痛物質に働きかけて抗炎症作用や鎮痛作用をもたらしたりする。特に、水、ヘモグロビン、メラニンに対する吸収が少ない波長800〜900nm近傍の近赤外線領域は生体透過度に優れ、温熱効果とは異なる作用機序によって炎症抑制や疼痛緩和されることができ、また、アトピー性皮膚炎の治療には青色や紫外線の照射による治療が行われている。
【0197】
このように、様々な疾患の治療に対し、光を用いる方法を光線療法といい、光の照射と共に、光化学療法剤を併用する治療法を光線力学的療法(PDT)という。このPDTにおいては、光化学療法剤として知られる感光性治療剤を、予め身体の被処置領域に外部から又は内部から供給したのち、その上に、粘着剤層を介して有機EL素子を配置する方法である。
【0198】
本発明に係る光治療法は、任意の病気、症候群、疾患、症状、又は光治療に反応する様々な病気の治療や美容的症状に適用することができる。
【0199】
光治療法を適用することが可能な治療的疾患及び美容的症状としては、例えば、皮膚疾患、並びに、皮膚の老化及びセルライトを含む皮膚に関連する症状、肥大した毛穴、油性肌、毛嚢炎、前癌状態の日光性角化症、皮膚損傷、老化、皺の多い皮膚及び太陽で傷んだ皮膚、目じりの皺、皮膚潰瘍(糖尿病性、褥瘡、静脈うっ滞)、酒さ性座瘡、セルライト;脂腺及び周辺組織の光調整、皺とり、ニキビの痕及びニキビの細菌、炎症、痛み、外傷、精神的及び神経系に関連する疾患及び症状、面皰、浮腫、パジェット病、原発腫瘍及び転移性腫瘍、結合組織病、コラーゲン処置、線維芽細胞、及び哺乳類の組織における線維芽細胞由来の細胞レベル、網膜照射、腫瘍性疾患、新生血管疾患及び肥大性疾患、炎症反応及びアレルギー反応、汗、エクリン汗腺(汗腺)又はアポクリン腺からの汗かき及び過剰な発汗(hyper−hydrosis)、黄疸、白斑、眼球新生血管疾患、神経性大食症、疱疹、季節性情動障害、憂うつ、睡眠障害、皮膚癌、クリーグラー・ナジャー病、アトピー性皮膚炎、糖尿病性皮膚潰瘍、褥瘡、膀胱感染症、筋肉痛の軽減、痛み、関節のこわばり、細菌の低減、歯肉炎、歯のホワイトニング、歯及び口中の組織の治療、創傷治癒が含まれる。
【0200】
美容的症状としては、ニキビ、肌の若返り並びに皮膚の皺、セルライト、及び、白斑、乾癬(軽度、軽度から重度、及び、重度)から選択される。
【0201】
〔光治療法に適用する波長〕
本発明の光治療用装置においては、有機EL素子の発光波長が400〜2000nmの波長域にあることを特徴とする。
【0202】
更に、有機EL素子の発光波長としては、好ましくは400〜1000nm、より好ましくは400〜950nm、特に好ましくは430〜950nmの範囲である。
【0203】
より具体的には、前述のとおり、可視光を用いる光治療においては、発光層が2種以上の発光波長の異なる発光材料が含有し、それらの発光材料が400nm以上、700nm未満の波長域に発光極大波長を有する材料より選択されること、更には、発光波長の異なる発光材料を3種有し、それぞれの発光材料の発光極大波長が、430〜470nm、500〜540nm、及び610〜650nmの範囲内である構成が好ましい態様である。
【0204】
また、近赤外光を用いる光治療においては、2種以上の発光波長の異なる発光材料が、700nm以上、950nm未満の波長域に発光極大波長を有する材料より選択されること、更には、それぞれの発光材料の発光極大波長が、780〜820nmの範囲内と、880〜920nmの範囲内である構成が好ましい態様である。
【0205】
本発明の光治療用装置を用いた光治療法の主たる効果の一つは、皮膚面に対し様々な波長の光を照射することにより、例えば、コリや痛みを緩和することができることが知られている。すなわち、ミトコンドリアにおける代謝の刺激である。光治療法を施した後、細胞は代謝が増大して伝達がより向上し、よいストレス等に対する耐性が向上する。
【0206】
本発明に係る有機EL素子は、細胞刺激のために使用することができる。細胞刺激のための好ましい波長又は波長の範囲は600〜900nmであり、より好ましくは620〜880nmであり、特に好ましくは650〜870nmである。細胞刺激のための特に好ましい波長の例は、683.7nm、667.5nm、772.3nm、750.7nm、846nm、及び812.5nmである。
【0207】
また、スキンケア及び皮膚修復のために適用される波長又は波長の範囲としては400〜800nmの範囲が好ましく、より好ましくは450〜750nmの範囲であり、更に好ましくは500〜700nmの範囲であり、特に好ましくは580〜640nmの範囲である。
【0208】
また、ニキビの治療に用いられる有機EL素子としては、赤色光と青色光の組み合わせが特に好ましい。上記赤色光は、好ましくは590〜750nm、より好ましくは600〜720nm、更に好ましくは620〜700nmの範囲内から選択される。ニキビの治療に好ましい2つの更なる波長は、633nm及び660nmである。
【0209】
又、面皰の場合には、500nmの波長、又は500〜700nmの範囲の波長を有する光を放射する有機EL素子を適用することが特に好ましい。
【0210】
また、セルライト(皮下脂肪)の治療又は予防のための波長は、400〜1000nmの範囲であり、好ましくは400〜900nmの範囲であり、より好ましくは450〜900nmであり、特に好ましくは500〜850nmである。
【0211】
また、皮膚の老化の治療や防止や、しわの形成を減少あるいは予防するための波長としては、400〜950nmの範囲である。この波長は、好ましくは550〜900nmの範囲であり、より好ましくは550〜860nmの範囲である。
【0212】
また、皮膚の若返りに対して適用する有機EL素子は、700〜1000nmの範囲、好ましくは750〜900nmの範囲、より好ましくは750〜860nmの範囲、特に好ましくは800〜850nmの範囲の光を放出する有機EL素子である。
【0213】
また、皮膚の赤みの治療や予防のための波長は、460〜660nmの範囲である。波長は、好ましくは500〜620nmの範囲であり、より好ましくは540〜580nmの範囲である。この目的のための1つの特に好ましい波長は、560nmである。
【0214】
また、皮膚炎の治療や予防のための波長は、470〜670nmの範囲である。波長は、好ましくは490〜650nmの範囲であり、より好ましくは530〜610nmの範囲である。この目的のための2つの特に好ましい波長は、550nmと590nmである。
【0215】
また、アトピー性湿疹の治療や予防のための波長は、470〜670nmの範囲である。波長は、好ましくは490〜650nmの範囲であり、より好ましくは530〜610nmの範囲である。
【0216】
また、浮腫の治療に使用される波長としては、好ましくは、760〜940nmの範囲、より好ましくは780〜920nmの範囲、更に好ましくは800〜900nmの範囲、特に好ましくは820〜880nmの範囲である。
【0217】
また、本発明の光治療用装置は、創傷を治療するための使用することができる。光線療法による創傷の治療に好ましい波長は、600〜950nmの範囲であり、より好ましくは650〜900nmの範囲であい、特に好ましい波長は、660、720、880nmである。
【0218】
また、特表2002−51916号公報に記載されているように、1917nmの赤外線を照射することにより、免疫システムに刺激を与えることにより、正常な細胞に害を及ぼすことなしに、細胞レベルでの治療を行うことができる。
【0219】
また、神経系及び精神的疾患、症状の治療及び予防のための波長は、350〜600nmの範囲である。波長は、好ましくは400〜550nmの範囲であり、より好ましくは440〜500nmの範囲である。この目的のための好ましい2つの波長は460nmと480nmである。
【0220】
〔光治療用装置のその他の機能〕
本発明の光治療用装置には、上記説明した有機EL素子と共に、必要に応じ様々な機能を付与させることができる。
【0221】
例えば、
1)過度の光照射を防止するための「やりすぎ防止タイマー」を設置し、有機EL素子の発熱あるいは過熱時に自動的に装置をオフにする機能を付与する方法、
2)ハイパワーの有機EL素子を用い、患部の温度が高くなる場合には、放熱構造、放熱板、放熱層等の放熱手段を併用する方法、
3)冷却機能を付与する。例えば、患部に密着させる面をメッシュ状、冷却層の付与、湿布層の設置する方法、あるいは光治療用装置そのものを、治療前に、冷蔵庫や冷凍庫で冷却した後、光治療を行う方法、
4)熱源と併用して、温熱治療効果を利用する方法、
5)患部に優しい光治療方法として、肌等に対し影響のある400nm未満の紫外線を遮断するUVカットフィルターを併用する方法、
6)患部のムレ等を防止するため、患部に接する面側に、細かな穴を有するシートを、有機EL素子とやや間隔をあけて設置する方法。この際、形成した穴部に光照射効果を付与するためには、光取出しフィルムや内部散乱層を有する構成であることが好ましい、
7)光治療の完了を通知するため、設定時間になったら有機EL素子の発光色を変化させる調色機能を有していること、
8)放射光の色調を変えずに、光照射強度の切り替えができる機能を付与する方法、
9)水を使用する環境でも安全に使用することができる防水機能の付与、あるいは、この防水機能を利用して、入浴時に温熱と光治療を併用する方法、
10)有機EL素子として、広い発光面積を有し、かつ発光均一性が高い機能を付与する方法(この機能に対しては、グリッド電極を適用することが有効)、
等を挙げることができる。