【解決手段】 移動型医用装置1は、床材を判別する床材判別機構を有する。床材判別機構は例えばブラシ付きスイッチを使用し、床材が走行に与える負荷の大きさを判別する。例えば床材を「パネル材」であるか、「毛足の短い絨毯」であるか、「毛足の長い絨毯」であるかを判別する。X線型X線装置1は、床材判別機構による判別結果及びハンドルの操作量に応じて、駆動装置(モータアシスト)の駆動量を算出し、走行を制御する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明に係る移動型医用装置の一例である移動型X線装置1の構成について説明する。
【0012】
移動型X線装置1とは、X線装置を台車に搭載して移動可能にしたものであり、回診車とも呼ばれる。X線装置とは、X線を発生する各種の装置を含む。例えば、被検体にX線を連続的に照射して動画像からなるX線画像(透視画像)を生成する透視撮影装置でもよいし、被検体に一瞬だけX線を照射して静止画像からなるX線画像を生成する一般撮影装置でもよい。
【0013】
また、
図1に示す例では、移動型X線装置1にX線受像装置やX線画像を生成する画像処理装置及び画像表示装置等を含まない構成としているが、例えばCアーム型の移動型X線撮影装置のように、略C型形状のアームの一端にX線管装置を搭載し、他端にX線受像装置を搭載したもの等も、本発明を適用可能である。また、移動型X線装置1と組み合わせて移動型の画像表示装置(モニタ台車)を使用することもあるが、この移動型画像表示装置についても本発明を適用可能である。移動型画像表示装置とは、医用画像表示装置や医用画像処理装置等を移動型X線装置1とは別の台車に搭載したものであり、移動型X線装置1にケーブル等で接続されて使用される。移動型画像表示装置は移動型X線装置1により撮影された透過X線データを収集し、X線画像を生成して表示する。
【0014】
図1に示すように、移動型X線装置1は、X線管装置103を支持するアーム102と、アーム102を台車108に対して連結する支柱101と、本体部104と、支柱101及び本体部104を床面上において移動させる台車108とを備える。台車108には、移動走行用の車輪(左右の前輪109a及び後輪109b)が設けられる。本体部104にはハンドル105が設けられ、操作者がハンドル105を押したり引いたりすることで移動型X線装置1を移動可能となっている。
【0015】
X線管装置103は、X線管及び高電圧発生部により構成され、制御装置107の制御により所定強度のX線を照射する。また、X線管装置103にはX線の照射領域を制限するX線絞り103aが設けられる。X線管装置103及びX線絞り103aの動作は本体部104に設けられる制御装置107により制御される。
【0016】
支柱101は支柱軸方向(上下方向)にアーム102をスライド可能に支持する。また、アーム102は水平方向に伸縮自在となっている。また、支柱101は台車108に対して支柱軸を中心に回転可能となっている。支柱101内にはアーム102の上下位置を移動(昇降)するアーム移動機構が設けられている。アーム移動機構の動作は本体部104に設けられる制御装置107により制御される。
【0017】
本体部104は筐体の上面に操作パネル106、内部に制御装置107を備える。また、本体部104には、操作者が台車108を移動させる際に把持される手押し用のハンドル105が設けられる。
【0018】
操作パネル106は、例えばキーボード、マウス、テンキー等の入力装置、及び各種スイッチボタン等を有する操作部と、液晶パネル等のディスプレイ装置及びディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路等を有する表示部を備える。操作パネル106は、操作部と表示部とが一体化したタッチパネル式のものとしてもよい。操作部は、操作者によって入力される各種の指示や情報を制御装置107に出力する。表示部は、制御装置107が取り扱う種々の情報を表示する。
【0019】
ハンドル105は、操作者が台車108を押したり引いたりして走行させる際に把持する部位である。また、ハンドル105は台車108の走行を補助する駆動装置110の駆動量を調整するための操作入力部としても機能する。ハンドル105は、ハンドル機構105aと操作検出器105bとを備える。
【0020】
ハンドル機構105aは、ハンドル105を走行させる際に押したり引いたりする力に応じて僅かに変位するレバーハンドルとすればよい。レバーハンドルの機構及び操作検知の仕組みについては、例えば特開2001−258872号公報等に記載されている。
【0021】
具体的には、レバーハンドルはハンドル機構105a及び操作検出器105bとして、例えば板バネ等のバネ部材と、磁石と、圧力センサとを用いる。バネ部材は本体部104とハンドル105とを連結する部位(例えば、ハンドルの両端部)に介在させる。また、レバーハンドル105の両端(左右)にはレバーハンドル105とともに動く一対の線形磁石がそれぞれ取り付けられる。そして、本体部104側のレバーハンドル取り付け位置の近傍には、操作検出部105bとして一対の圧力センサ(ホール効果センサ)が設けられる。この圧力センサ(圧力センサ)が磁石に対して中心位置にあるとき、圧力センサの出力信号はゼロ・レベルとなり、磁石をずらすとホール効果センサの出力信号は正の最大値と負の最大値の間で変化する。センサの出力信号の極性(正負)はレバーハンドルの移動方向(押す/引く)を表し、センサの出力信号の大きさは磁石の変位量に比例する。バネ部材のバネの作用により、レバーハンドルは比較的容易に変位させることができるとともに、レバーハンドルを離したときに中性位置または中心位置に素早く復帰させることができる。
【0022】
操作検出器105b(圧力センサ)は、ハンドル105に対する押圧力、すなわちハンドルの変位量に応じた出力信号をハンドルの操作量として制御装置107に送出する。制御装置107は、例えば10[ms]毎等、所定の時間刻みにハンドル105の操作量(操作検出器105bからの入力信号)をサンプリング(取得)する。
【0023】
制御装置107は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only
Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の記憶部、外部機器とのインターフェイス等を備えたコンピュータである。制御装置107は、操作パネル106の操作部から入力された入力信号に基づいてX線管装置103におけるX線照射の動作制御を行ったり、支柱101に設けられるアーム移動機構の移動制御を行ったり、X線絞り103aの制御を行ったりする。また制御装置107は、ハンドル105の操作検出器105bから入力される操作量に応じて台車108の走行制御を行う。台車の走行制御に関しては後述する。
【0024】
制御装置107のROMまたは記憶部には、移動型X線装置1がX線装置として機能するための基本プログラム(X線照射制御及びアームの移動動作に必要なプログラム)やデータが記憶される。また、本実施の形態の走行制御に必要なプログラム及びデータ等が記憶される。
【0025】
台車108は、左右の前輪109a及び後輪109bと、後輪109bをモータ駆動する駆動装置110と、駆動装置110に電源を供給するバッテリー111を備える。駆動装置110は、前後の両車輪109a、109bに備えてもよいが、一方の車輪(例えば後輪109a)のみを駆動し、他方は自走式のキャスターとしてもよい。
【0026】
駆動装置110は駆動モータであり、例えば左右の後輪109bに取り付けられる。駆動装置107は制御装置107から入力される駆動制御信号に応じた駆動量でモータを回転する。駆動量とは、モータの回転数や回転トルク等、駆動モータをどの程度の速さで回転させるかを決定するパラメータである。
【0027】
バッテリー111は、台車108の駆動装置110を駆動するための電源である。なお、X線管装置103に高電圧を供給するための電源としてはAC電源を用いてもよいし、高電圧供給用のバッテリーを別に搭載してもよい。
【0028】
次に、
図2〜
図3を参照して、移動型X線装置1の走行制御動作について説明する。
図2は第1の実施の形態の走行制御に関する機能構成を示す図である。
【0029】
図2に示すように、移動型X線装置1は、ハンドル機構105a、操作検出器105b、床材判別機構201(床材判別部)、操作パネル106、駆動量算出部41、走行制御部42、ファン制御部43、駆動装置110、及びゴミ付着防止ファン113を備える。駆動量算出部41、走行制御部42、及びファン制御部43は、例えば制御装置107に設けられる機能である。
【0030】
ハンドル機構105aは台車108のハンドル105に設けられ、その操作量が操作検出器105bにより検出される。
操作検出器105bは、ハンドル機構105aの操作量を制御装置107の駆動量算出部41に出力する。
【0031】
床材判別機構201は、走行面の素材(以下、床材という)を判別する機構であり、例えば、
図1に示すように台車108の底面に設けられる。
図1に示す床材判別機構201は、床面に接するブラシ付きバーと、ブラシ付きバーに連結されブラシ付きバーの傾きに連動してつまみ位置がスライドするスライドスイッチとを有する。床材判別機構201は、床材から受ける負荷に応じてブラシ付きバーの傾きが変化し、その傾き方によって例えば5段階にスイッチが切り替わる仕組みとなっている(
図3参照)。
【0032】
図3はスイッチの状態から判別される床材と、床材係数との関係を示す床材判別テーブル5の一例である。床材係数は、設定された駆動量(モータ出力)に乗じる係数であり、予め、または操作パネル106を介してユーザから入力された値等により定義されるものとする。
【0033】
図3に示すように、移動型X線装置1を毛足の長い絨毯等の高負荷素材の上を前方に移動させた場合は、床材判別機構201のスイッチは「0」の状態となる。また、毛足の短い絨毯等の中負荷素材の上を前方に移動させた場合は、床材判別機構201はスイッチ「1」の状態となる。またパネル材等のように低負荷素材の上を前方(又は後方)に移動させた(又は停止させた)場合は、床材判別機構201はスイッチ「2」の状態となる。また中負荷素材の上を後方に移動させた場合は、床材判別機構201はスイッチ「3」の状態となる。また高負荷素材の上を後方に移動させた場合は、床材判別機構201はスイッチ「4」の状態となる。
【0034】
床材判別機構201はスイッチの状態を制御装置107の駆動量算出部41に通知する。なお床材判別機構201のスライドスイッチ数は5段階に限定されず、判別すべき床材や走行方向等の種類に応じた数だけスイッチを切り替える仕組みとすればよい。
【0035】
操作パネル106は、床材判別機構201のスイッチ状態と駆動量との関係を表す値や各種のパラメータを設定したり、各種の指示等が入力され、制御装置107の駆動量算出部41に通知する。
【0036】
駆動量算出部41は、床材判別機構201による床材判別結果(スイッチ状態)に応じて駆動装置110の駆動量を算出する。なお、このとき駆動量算出部41は、ハンドル機構105aから入力される操作量に応じて決定される駆動量を基準として床材に応じた駆動量を求める。
また操作パネル106から指示またはパラメータ等が入力された場合は、その入力値を考慮して駆動量を算出する。駆動量とは、駆動モータ(駆動装置110)の回転速度等のパラメータであり、駆動量算出部41により決定される値である。
【0037】
具体的には、駆動量算出部41は、ハンドル105の操作量に応じて決定される駆動量に対して床材に応じて決定される所定値(床材係数)を乗算し、これを駆動量として走行制御部に通知する。例えば、
図3の示す床材判別テーブル5に従って駆動量を決定する場合には、床材が高負荷素材の場合は、ハンドル105の操作量に応じた駆動量の3倍の駆動量とする。また、床材が中負荷素材の場合は、ハンドル105の操作量に応じた駆動量の2倍とし、床材が低負荷素材の場合は、ハンドル105の操作量に応じた駆動量の1倍の駆動量とする。
【0038】
なお、台車の移動方向、すなわちハンドルを押す場合(前方移動)とハンドルを引く場合(後方移動)とでは、ハンドル105の操作量に応じて決定される駆動量や、床材係数を異なるものとしてもよい。
【0039】
走行制御部42は駆動量算出部41により算出された駆動量に基づいて駆動装置110への出力値(モータ出力)を決定し、モータ駆動を制御する。
【0040】
ゴミ付着防止ファン113は、駆動装置110のモータ軸付近に送風するファンである。ゴミ付着防止ファン113は、例えば毛足の長い絨毯等の上を走行する際にモータ軸付近に空気を送り、軸に繊維やゴミが絡まるのを防ぐ。ファン制御部43は、床材判別機構201により判別される床材に応じてON/OFFされる。例えば、床材判別機構201により床材が高負荷(毛足の長い絨毯等)であると判別された場合に、ファン制御部43はゴミ付着防止ファン113のスイッチをONに切り替える。
【0041】
次に
図4のフローチャートを参照して、走行制御動作の流れを説明する。
移動型X線装置1を病室に移動する際、操作者は移動型X線装置1のハンドル105を押し、走行を開始する(ステップS101)。ハンドル105の操作検出部105bは、ハンドル105の操作量を検出する。操作検出部105bにより検出されたハンドル105の操作量は、制御装置107の駆動量算出部41に入力される。制御装置107はハンドル105の操作量を所定時間刻みに読み込んでいる。また、制御装置107は床材判断機構201のスイッチの状態を常に(所定時間刻みに)監視している(ステップS102、S106、S108)。
【0042】
床材判別機構201のスイッチが「2」の状態である場合(ステップS102;Yes)、すなわち床材が低負荷素材であると判別された場合は、制御装置107(駆動量算出部41)は駆動量を初期のまま(ハンドル105の操作量に応じた駆動量)とし、走行制御部42へ通知する(ステップS103)。走行制御部42は算出した駆動量となるようモータ出力を決定する(ステップS104)。移動型X線装置1は決定されたモータ出力でアシストされながら走行を継続する(ステップS105)。
【0043】
床材判別機構201のスイッチが「1」または「3」の状態である場合(ステップS106;Yes)、すなわち床材が中負荷素材であると判別された場合は、制御装置107(駆動量算出部41)はスイッチ状態に応じて設定された床材係数をハンドル105の操作量に応じた駆動量に乗じ、走行制御部42へ通知する(ステップS107)。走行制御部42は算出した駆動量となるようモータ出力を決定する(ステップS104)。例えば、
図3の床材判別テーブル5の例では、中負荷素材に対する床材係数は「2倍」であるので、パネル材等、通常の床材と比較してモータ出力が2倍となる。
【0044】
床材判別機構201のスイッチが「0」または「4」の状態である場合(ステップS108;Yes)、すなわち床材が高負荷素材であると判別された場合は、制御装置107はゴミ付着防止ファン113を駆動する(ステップS109)。また制御装置107(駆動量算出部41)は、スイッチ状態に応じて設定された床材係数をハンドル105の操作量に応じた駆動量に乗じ、走行制御部42へ通知する(ステップS107)。走行制御部42は算出した駆動量となるようモータ出力を決定する(ステップS104)。例えば、
図3の床材判別テーブル5の例では、高負荷素材に対する床材係数は「3倍」であるので、パネル材等、通常の床材と比較してモータ出力が3倍となる。
【0045】
病室に到着し、移動型X線装置1が走行を一時停止すると、床材判別機構201のスイッチは「2」の状態となる。再び走行を開始すると、床材判別機構201のスイッチは床材に応じて切り替えられ、それぞれの床材に応じた動作を繰り返す。
【0046】
以上説明したように、第1の実施の形態の移動型X線装置1では、走行面から受ける負荷の大きさを判別する床材判別機構201を備え、ハンドル105から入力される操作量に加え、床材判別機構201による床材の判別結果に応じて車輪に設けられる駆動装置110の駆動量を変更する。
【0047】
従って、毛足の長い絨毯等のように負荷の大きい素材の場合はモータアシスト量が大きくなるように変更でき、快適な走行操作を行えるようになる。また、床材は走行中常に監視されるため、床材が変化する場所でも走行操作感の変化を小さくすることができる。
【0048】
また、第1の実施の形態では、床材判別部としてブラシ付きバーを備えたスライドスイッチ機構を利用するため、簡易な構成で走行面から受ける負荷の大きさを判別できる。そのため、取り付けやメンテナンスが簡単であり、かつ、例えば絨毯とパネル材とを判別できる。また、モータ軸付近のゴミの付着を防止するためのゴミ付着防止ファン113を設け、床材に応じて自動清掃するためゴミ等が絡みにくくなり、モータ寿命が向上する。
【0049】
[第2の実施の形態]
次に、
図5〜
図7を参照して、第2の実施の形態の移動型X線装置1Aについて説明する。
第2の実施の形態の移動型X線装置1Aは、床材の凹凸に応じて無段階に出力を調整する。そのため、第2の実施の形態では、床材の凹凸間隔を判別する床材判別センサ202を用いることが好適である。
【0050】
床材の凹凸間隔を判別するセンサとしては、例えばレーザ型やフォトセンサ型等のラインセンサを用いることが好適である。また判別する凹凸のサイズは、想定される走行面の素材に適したものとすればよく、例えば、凹凸間隔が10mm以上(L1範囲)、5mm以上10mm未満(L2範囲)、2mm以上5mm未満(L3範囲)、0.8mm以上2mm未満(L4範囲)、0.05mm以上0.8mm未満(L5範囲)、0.05mm未満(L6範囲)等のように多段階に判別できることが望ましい。なお、判別する凹凸間隔のサイズはこの数値に限定されるものではなく、走行面に応じて適宜変更可能である。
【0051】
図5は第2の実施の形態の移動型X線装置1Aの外観を示す図である。
図5に示すように、床材判別センサ202が台車108の例えば底面に設けられる。なお、床材判別センサ202の設置位置はこれに限定されず、床面を判別可能な箇所に設けられればよい。また、
図5では、後輪109bの近傍に床材判別センサ02が設けられた例を示しているが、これに限定されない。
【0052】
図6は、第2の実施の形態における床材判別テーブル5aの例であり、床材判別センサ202で検知した凹凸間隔から判別される床材と床材係数との関係を示している。
図6に示すように、床材判別センサ202が検知した凹凸間隔が「10mm以上(L1範囲)」の場合は床材はパネル材(低負荷素材)と判別し、床材係数は「1」倍とする。また、床材判別センサ202が検知した凹凸間隔が「10mm未満5mm以上(L2範囲)」の場合は床材は毛足が短い絨毯(中負荷素材P1)と判別し、床材係数は「1.2」倍とする。床材判別センサ202が検知した凹凸間隔が「5mm未満2mm以上(L3範囲)」の場合は床材は毛足が短い絨毯(中負荷素材P2)と判別し、床材係数は「1.5」倍とする。床材判別センサ202が検知した凹凸間隔が「2mm未満0.8mm以上(L4範囲)」の場合は床材は毛足が短い絨毯(中負荷素材P3)と判別し、床材係数は「1.7」倍とする。床材判別センサ202が検知した凹凸間隔が「0.8mm未満0.05mm以上(L5範囲)」の場合は床材は毛足が長い絨毯(高負荷素材Q1)と判別し、床材係数は「2」倍とする。床材判別センサ202が検知した凹凸間隔が「0.5mm未満(L6範囲)」の場合は床材は毛足が長い絨毯(高負荷素材Q2)と判別し、床材係数は「2.5」倍とする。
【0053】
床材判別センサ202及び床材判別テーブル5a以外の各部は第1の実施の形態と同様であるため重複する説明を省略する。以下の説明では、第1の実施の形態の移動型X線装置1と同一の各部は同一の符号を付して説明する。
【0054】
次に
図7のフローチャートを参照して、走行制御動作の流れを説明する。
移動型X線装置1を病室に移動する際、操作者は移動型X線装置1のハンドル105を押し、走行を開始する(ステップS201)。第1の実施の形態と同様に、ハンドル105の操作検出部105bはハンドル105の操作量を検出し、制御装置107に入力する。制御装置107はハンドル105の操作量を所定時間刻みに読み込んでいる。走行中、制御装置107は床材判断センサ202からの出力を常に(所定時間刻みに)監視している(ステップS202、S206、S208)。
【0055】
床材判別センサ202が床の凹凸間隔が10mm以上(L1範囲)と検知した場合は、
図6のテーブルに示すように低負荷素材(パネル材)と判別して(ステップS202;Yes)、制御装置107の駆動量算出部41は駆動量を初期のまま(ハンドル105の操作量に応じた駆動量)とし、走行制御部42へ通知する(ステップS203)。走行制御部42は算出した駆動量となるようモータ出力を決定する(ステップS204)。移動型X線装置1は決定されたモータ出力でアシストされながら走行を継続する(ステップS205)。
【0056】
床材判別センサ202が床の凹凸間隔が10mm未満5mm以上(L2範囲)、5mm未満2mm以上(L3範囲)、2mm未満0.8mm以上(L4範囲)のいずれかと検知した場合は、
図6の床材判別テーブル5aに示すように中負荷素材P1、P2、P3のいずれか(毛足の短い絨毯等)と判別される(ステップS206;Yes)。制御装置107(駆動量算出部41)は床材に応じて設定された床材係数をハンドル105の操作量に応じた駆動量に乗じ、走行制御部42へ通知する(ステップS207)。走行制御部42は算出した駆動量となるようモータ出力を決定する(ステップS204)。例えば、
図7の床材判別テーブル5aの例では、凹凸間隔が10mm未満5mm以上(L2範囲)に対する床材係数は「1.2倍」であるので、パネル材の場合と比較してモータ出力を1.2倍となる。また、凹凸間隔が5mm未満2mm以上(L3範囲)と検知された場合は床材係数は「1.5倍」であるので、パネル材の場合と比較してモータ出力が1.5倍となる。また凹凸間隔が2mm未満0.8mm以上(L4範囲)と検知された場合は床材係数は「1.7倍」であるので、パネル材の場合と比較してモータ出力が1.7倍となる(いずれも操作量が同じ場合)。
【0057】
床材判別センサ202が床の凹凸間隔が0.8mm未満0.05mm以上(L5範囲)、または0.05mm未満(L6範囲)のいずれかと検知した場合は、
図7のテーブルに示すように高負荷素材Q1、Q2のいずれか(毛足の長い絨毯等)と判別される(ステップS208;Yes)。このとき制御装置107はゴミ付着防止ファン113を駆動する(ステップS209)。また制御装置107(駆動量算出部41)は床材に応じて設定された床材係数をハンドル105の操作量に応じた駆動量に乗じ、走行制御部42へ通知する(ステップS207)。走行制御部42は算出した駆動量となるようモータ(駆動装置)出力を決定する(ステップS204)。例えば、
図7の床材判別テーブル5aの例では、凹凸間隔が0.8mm未満0.05mm以上(L5範囲)に対する床材係数は「2倍」であるので、パネル材の場合と比較してモータ出力が2倍となる。また、凹凸間隔が0.05mm未満(L6範囲)と検知された場合は床材係数は「2.5倍」であるので、パネル材等、通常の床材と比較してモータ出力が2.5倍となる(いずれも操作量が同じ場合)。
【0058】
以上説明したように床材判別センサ202は凹凸間隔から床材を判別し、制御装置107は、各床材に応じた動作を繰り返す。
【0059】
以上説明したように、第2の実施の形態の移動型X線装置1では、走行面の凹凸間隔を床材判別センサ202により検知し、ハンドル105から入力される操作量及び床材判別センサ202による床材の凹凸状態の判別結果に応じて車輪に設けられる駆動装置110の駆動量を変更する。
従って、毛足の長い絨毯等のように凹凸間隔が小さい素材の場合はモータアシスト量が大きくなるように変更でき、快適な走行操作を行えるようになる。また、床材は走行中常に監視されるため、床材が変化する場所でも走行操作感の変化を小さくすることができる。
また、第2の実施の形態ではレーザ型やフォトセンサ型等の非接触センサを床材判別センサ202を用いるため床材の凹凸の状態を細かく検知して分類できる。そのため、モータ出力もより多段階に切り替え可能である。より多くの床材が混在した病院でも快適かつスムーズに走行を補助できる。
【0060】
なお、制御装置107は、ゴミ付着防止ファン113についても、凹凸の細かさに応じて風量を変化させるように制御してもよい。すなわち、床材判別センサ202で検出した凹凸の状態に応じて、例えば、床の凹凸間隔が細かく高負荷の場合は風量を増やし、床の凹凸間隔が粗く低負荷の場合は風量を減らすよう制御してもよい。
【0061】
[第3の実施の形態]
次に、
図8を参照して、第3の実施の形態の移動型X線装置について説明する。
第3の実施の形態の移動型X線装置は、第1の実施の形態または第2に実施の形態の移動型X線装置1(1A)において、走行をフィードバック制御する機能を追加するものである。第3実施形態の移動型X線装置1(1A)の構成は第1または第2実施形態の移動型X線装置と同様であるため、重複する説明を省略し、同一の各部は同一の符号を付して説明する。
【0062】
移動型X線装置1(1A)の制御装置107は、走行中の駆動装置110の駆動量の変化を例えば制御装置107に設けられる記憶部に記憶する。制御装置107は、例えば過去0.5〜1秒間程度の駆動量を順次記憶する。駆動量は床材及びハンドルの操作量(力の入れ具合)によって変化している。記憶された駆動量は制御装置107の走行制御部42へフィードバックされる。
【0063】
走行制御部42は、床材やハンドル操作量に応じて決定された駆動量となるようにモータ出力を決定する際に、記憶部に記憶されている駆動量の変化に基づき、ハンドルを軽い力で操作できるようにフィードバックを反映させる。具体的には、過去(例えば、直前の1秒間程度)の駆動量の変化に基づいてフィードバックゲインを決定する。例えば、過去の駆動量の変化がプラス(増加傾向)に変化している場合は、ゲインを大きく設定する。また、過去の駆動量の変化がマイナス(減少傾向)に変化している場合は、ゲインを小さく設定する。これにより、床材の変化や操作者の操作の仕方から、適切な操作感度を判断して快適な走行性となるように走行を制御できる。
【0064】
図8のフローチャートを参照して、第3の実施の形態の走行制御動作の流れを説明する。なお、
図8のステップS301〜ステップS304は
図7(第2の実施の形態)のステップS201〜ステップS204と同様であり、
図8のステップS307〜ステップS310は
図7(第2の実施の形態)のステップS206〜ステップS209と同様である。
すなわち、移動型X線装置1Aを移動する際、操作者は移動型X線装置1Aのハンドル105を押し、走行を開始する(ステップS301)。ハンドル105の操作検出部105bはハンドル105の操作量を検出し、制御装置107に入力する。制御装置107はハンドル105の操作量を所定時間刻みに読み込んでいる。走行中、制御装置107は床材判断センサ202からの出力を常に(所定時間刻みに)監視している(ステップS302、S307、S309)。
【0065】
床材判別センサ202が床の凹凸間隔が低負荷(
図6のL1範囲)と検知した場合は(ステップS302;Yes)、制御装置107(駆動量算出部41)は駆動量を初期のまま(ハンドル105の操作量に応じた駆動量)とし、走行制御部42へ通知する(ステップS303)。走行制御部42は算出した駆動量となるようモータ出力を決定する(ステップS304)。
【0066】
制御装置107は、過去の一定期間(例えば、直前の1秒間程度)の駆動量の変化を記憶部に順次保存する(ステップS305)。走行制御部42はモータ出力を決定する際に、記憶部に記憶されている駆動量の変化に基づいてフィードバックゲインを決定する(ステップS304)。移動型X線装置1は決定されたモータ出力でアシストされながら走行を継続する(ステップS306)。
【0067】
床材判別センサ202が床の凹凸間隔が中負荷素材(
図6のL2〜L4範囲)のものと検知した場合は(ステップS307;Yes)、制御装置107(駆動量算出部41)は床材に応じて設定された床材係数をハンドル105の操作量に応じた駆動量に乗じ、走行制御部42へ通知する(ステップS308)。走行制御部42は駆動量算出部41により算出された駆動量となるようモータ出力を決定する(ステップS304)。このとき走行制御部42は記憶部に記憶されている過去の駆動量の変化を参照して、モータ出力を決定する。例えば、床材が低負荷から中負荷へ変化する場合は、駆動量が増加傾向となるが、この場合はフィードバックゲインを現在より大きな値とすることで、軽い操作感となる。一方、床材が高負荷から中負荷へと変化する場合は、駆動量が減少傾向となるが、この場合はフィードバックゲインを現在より小さな値とすることで、同じ操作量でモータ出力が小さくなり安定した走行を行える。
【0068】
制御装置107は出力変化を記憶部に保存する(ステップS305)。移動型X線装置1は決定されたモータ出力でアシストされながら走行を継続する(ステップS306)。
【0069】
床材判別センサ202が床の凹凸間隔が高負荷素材(
図6のL5、L6範囲)のものと検知した場合は(ステップS309;Yes)、制御装置107はゴミ付着防止ファン113を駆動する(ステップS310)。また制御装置107(駆動量算出部41)は床材に応じて設定された床材係数をハンドル105の操作量に応じた駆動量に乗じ、走行制御部42へ通知する(ステップS308)。走行制御部42は算出した駆動量となるようモータ出力を決定する(ステップS304)。
【0070】
このとき走行制御部42は記憶部に記憶されている過去の駆動量の変化を参照して、モータ出力を決定する。例えば、床材が低負荷または中負荷から高負荷へ変化する場合は、駆動量が増加傾向となるが、この場合はフィードバックゲインを現在より大きな値とすることで、軽い操作感となる。
【0071】
制御装置107は出力変化を記憶部に保存する(ステップS305)。移動型X線装置1は決定されたモータ出力でアシストされながら走行を継続する(ステップS306)。
【0072】
上述したように、第3の実施の形態では、制御装置107は、駆動量の変化を記憶し、過去の駆動量の変化に基づいてフィードバックゲインを設定してモータ出力を決定する。これにより、床材が変化しても、床材の変化に応じて軽い操作で安定した走行を行える。これにより最適な走行性を維持できる。
【0073】
なお、
図8のフローチャートは、第2の実施の形態の処理フロー(
図7)を例に説明したが、第3の実施の形態のフィードバック制御は第1の実施の形態の移動型X線装置1にも適用できる。すなわち、
図4の処理フローにおいて、ステップS104の後段にステップS305の「各負荷のときの出力変化を保存」ステップを挿入し、ステップS305の後はステップS104へ戻る。
これにより、第1の実施の形態の移動型X線装置1についても第3の実施の形態の処理を適用できる。
【0074】
[第4の実施の形態]
次に
図9を参照して第4の実施の形態の移動型X線装置1Bについて説明する。
第4の実施の形態では、床材判別部として床面の上下方向の変位を検知する機構(床材判別機構203)を用いる例について説明する。
【0075】
図9は第4の実施の形態の移動型X線装置1Bの構成を示す図である。
図9に示すように、床材判別機構203は移動型X線装置1Bの台車108の例えば底面に設けられる。なお、床材判別機構203の設置位置は板31が床面に接するように設けられればよく、この例に限定されない。
【0076】
床材判別機構203について説明する。
なお、床材判別機構203以外の各部の構成は第1の実施の形態の移動型X線装置1と同様であるため、重複する説明を省略し、以下、同一の各部は同一の符号を付して説明する。
【0077】
床材判別機構203は、床面の上下方向の変位を検出する機構であり、板31、バネ部材32、及びスライド抵抗33を有する。
板31は床に接するように設けられる。板31は床面の上下方向の変位(突起や凸凹)で上下し、かつ走行を妨げないように床に接する面を曲面とすることが望ましい。
バネ部材32は、上部が台車108に固定され、台車108と板31との連結部に介在させる。またバネ部材32は、板31が床面に常に当接するよう適度な押圧力で板31を押圧しながら、床面の変位に応じて伸縮する。
【0078】
スライド抵抗33は、スライド式のつまみを有し、つまみ位置に応じて抵抗値が変化する可変抵抗である。スライド抵抗33のつまみは板31に連結され、板31の上下方向の変位に連動してつまみ位置が移動される。スライド抵抗33はつまみ位置の変位量、すなわち板31の変位量に応じた値を出力する。
【0079】
床材判別機構203は、例えば、第1の実施の形態のように5段階程度に変位を検出するようにしてもよいし、第2の実施の形態のように無段階に変位を検出するようにしてもよい。床材判別機構203は検出した床面の上下方向の変位量または変位量に応じたスイッチ状態を、制御装置107(駆動量算出部41)に通知する。
【0080】
制御装置107(駆動量算出部41)は、第1または第2の実施形態と同様に、床材判別機構203から通知された床材判別結果(スイッチ状態または変位量)と、ハンドル機構105aから入力される操作量とに応じて駆動装置110の駆動量を算出する。
【0081】
また、制御装置107(走行制御部42)は駆動量算出部41により算出された駆動量に基づいて駆動装置110を制御する。
走行制御部42は第3の実施の形態のようなフィードバック制御を行ってもよい。すなわち、走行制御部42は過去の所定期間の出力変化を記憶部に保存しておき、記憶部に記憶されている駆動量の変化に基づきフィードバックゲインを設定し、モータ出力を決定する。これにより、床材の上下方向の変位に応じて、より軽く、安定した操作性を提供できる。
【0082】
以上、各実施の形態において、本発明の好適な移動型X線装置について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。